説明

歩行補助装置の腰部装具および歩行補助装置

【課題】歩行補助装置用の腰部装具として、歩行補助力の発生源である動力発生手段が発生する動力の反力の受け止めを、使用者に対する装着性を阻害することなく、十分に行えるようにすること。
【解決手段】メインフレーム22の左右の先端部分22B、22Cと腹部ベルト30の中間部分とを接続する左右のスタビライザ部材80、90を設ける。スタビライザ部材80、90は、メインフレーム22との連結部分をなす連結部材82、92と、左右のベルト36、38を支持する支持部材84、94と、連結部材82、92と支持部材84、94とを接続する板状の接続部分をなす可撓性の接続部材86、96とを別部品により構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置の腰部装具および歩行補助装置に関し、更に詳細には、動力発生装置が発生する動力を使用者の下肢に歩行補助力として付与する歩行補助装置の腰部装具およびその腰部装具を用いられた歩行補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下肢部の筋力低下者の歩行補助や歩行リハビリテーション等のために、電動モータ等による動力発生装置を有し、動力発生装置が発生する動力を使用者の下肢に歩行補助力(歩行アシスト力)として付与する歩行補助装置が提案されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
この種の歩行補助装置は、使用者の腰部に装着されて使用者の腰背部から使用者の左右の腰側部に延在する略C字形の腰部フレーム(メインフレーム)と腰部フレームを使用者の腰部に取り付けるための腹部ベルトとからなる腰部装具を有しており、腰部フレームの左右先端部分に左右の動力発生装置が取り付けられて当該動力発生装置が発生する動力を使用者の下肢に歩行補助力として付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−320351号公報
【特許文献2】特開2008−134086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
腰部装具は、歩行補助力の発生源である動力発生手段を使用者の腰部に装着するためのものであり、使用者の腰部に装着された状態で、動力発生手段が発生する動力(トルク)の反力、特に、腰部フレームの前額軸周りの反力を適切に受け止めることと、使用者の身体に良好にフィットし、使用者に違和感を与えないこととを要求される。
【0006】
このことに対して従来の腰部装具は、上述の要求を十分に満たすことができない。特に、従来の腰部装具は、使用者の腰部に装着された状態での腰部フレームの前額軸周りの回転を阻止する能力が低いために、動力発生手段が発生する歩行補助力の反力によって腰部フレームが前額軸周りに回転し、反力の受け止めを十分に行えないと云う問題を残している。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、歩行補助装置用の腰部装具として、歩行補助力の発生源である動力発生手段が発生する動力の反力の受け止めを、使用者に対する装着性を阻害することなく、十分に行えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による歩行補助装置の腰部装具は、動力発生装置(26、28)が発生する動力を使用者の下肢に歩行補助力として付与する歩行補助装置の腰部装具であって、使用者の腰部に配置されて腰背部より左右の腰側部の外方へ延在する略C字形状をなし、左右の先端部分に前記動力発生装置を取り付けられるメインフレーム(22)と、前記メインフレーム(22)より内側にあって前記メインフレーム(22)に連結され、使用者の腹部に巻き付き装着される腹部ベルト(30)と、一端を前記メインフレーム(22)の左右の先端部分に連結され、他端部にて前記腹部ベルト(30)の中間部分を支持する左右のスタビライザ部材(80、90)とを有し、スタビライザ部材(80、90)は、前記メインフレーム(22)との連結部分(82、92)と、前記腹部ベルト(30)の支持部分(84、94)と、前記連結部分(82、92)と前記支持部分(84、94)とを接続する板状の接続部分(86、96)とを別部品により構成され、前記連結部分(82、92)と前記支持部分(84、94)は高剛性材により構成され、前記接続部分(86、96)は低剛性材により構成され、当該接続部分(86、96)は前後方向が板厚になる板状であることにより上下方向には剛性が高く、前後方向には上下方向に比して剛性が低い。
【0009】
この構成によれば、スタビライザ部材(80、90)は、上下方向には高剛性で、前後方向には柔軟性をもつものになり、動力発生装置(26、28)の駆動時の反力の受け持ちが、メインフレーム(22)に加えてスタビライザ部材(80、90)によって行われ、反力受け持ちがメインフレーム(22)の動きを生じることなく確実に行われる。スタビライザ部材(80、90)は、連結部分(82、92)と支持部分(84、94)と接続部分(86、96)とを、別部品により構成されているので、それぞれの部位の性状を要求仕様に高度に適合できる。
【0010】
本発明による歩行補助装置の腰部装具は、好ましくは、前記接続部分(86、96)は複数枚の織布(88、98)を縫合してなる織布製ベルトにより構成されている。
【0011】
この構成によれば、接続部分(86、96)が上下方向には高い剛性を示しつつ織布(88、98)と云う柔軟材の使用によって使用者に対するフィッティング性が著しく向上する。
【0012】
本発明による歩行補助装置の腰部装具は、好ましくは、前記連結部分(82、92)と前記支持部分(84、94)は硬質合成樹脂により構成されている。
【0013】
この構成によれば、連結部分(82、92)と支持部分(84、94)に必要に機械的強度が的確に確保され、高い耐久性が得られる。
【0014】
本発明による歩行補助装置の腰部装具は、好ましくは、前記連結部分(82、92)と前記接続部分(86、96)との連結と、前記支持部分(84、94)と前記接続部分(86、96)との連結は、各々締結具(100)によって行われている。
【0015】
この構成によれば、接続部材(86、96)を連結部材(82、92)、支持部材(84、94)より取り外して交換することができ、当該部品の組み替え性が向上する。
【0016】
本発明による歩行補助装置は、上述の発明による腰部装具を具備している。
【発明の効果】
【0017】
本発明による歩行補助装置の腰部装具によれば、スタビライザ部材は、上下方向には高剛性で、前後方向には柔軟性をもつものになり、動力発生装置の駆動時の反力の受け持ちが、メインフレームに加えてスタビライザ部材によって行われるようになり、反力受け持ちがメインフレーム(22)の動きを生じることなく確実に行われる。スタビライザ部材は、連結部分と支持部分と接続部分とを、別部品により構成されているので、それぞれの部位の性状を要求仕様に高度に適合できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による歩行補助装置および腰部装具の一つの実施形態を示す斜視図。
【図2】本実施形態による歩行補助装置および腰部装具(スイングアームを取り外した状態)を示す平面図。
【図3】本実施形態による腰部装具の腹部ベルトの斜視図。
【図4】本実施形態による腰部装具のスタビライザ部材の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明による歩行補助装置および腰部装具の一つの実施例を、図1〜図4を参照して説明する。以下の説明では、歩行補助装置の方向を各図に示す方向に基づいて説明する。歩行補助装置は、使用者に装着された状態で、その前後方向が使用者の矢状軸に一致し、その左右方向が使用者の前額軸に一致する。
【0020】
歩行補助装置10は腰部装具20を有する。腰部装具20は、図1、図2に示されているように、使用者の腰部に配置されて腰背部より左右の腰側部の外方且つ前方へ延在し、平面視で略C字形状をなすメインフレーム(腰部フレーム)22を含む。メインフレーム22は、プラスチック成形品で、例えば、ポリアミド樹脂やガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等、高硬度で高剛性を有する材料により構成されている。
【0021】
メインフレーム22のうち、使用者の腰背部に対応する中間部分22A(図2参照)の内側には、背部当て板24が取り付けられている。背部当て板24は、プラスチック製であり、通気性と柔軟性を得るために、上下方向に延在するスリット24Aが左右方向に所定間隔をおいて多数形成されている。背部当て板24の左右方向の中央部には、使用者の背骨、尾てい骨との当たりを避けるために凹部24Bが形成されている。
【0022】
メインフレーム22の中間部分22Aには、図には示されていないが、制御装置、電池パック等が取り付けられている。
【0023】
メインフレーム22の左右の先端部分22B、22Cは、使用者の左右の腰側部外方に位置し、当該左右の先端部分22B、22Cの下側には、動力発生装置である左側電動モータユニット26、右側電動モータユニット28が、各々、ヒンジ(図示省略)によって使用者の矢状軸(前後方向の軸線)周りに所定角度だけ回動可能に吊り下げ支持されている。
【0024】
メインフレーム22の左右の先端部である前端部分22B、22Cは、使用者の左右の腰側部に位置する。各前端部分22B、22Cの下側には、ヒンジ部(図示省略)を介して動力発生装置である左側電動モータユニット26、右側電動モータユニット28が取り付けられている。ヒンジ部は、前後方向に延在する回転軸(図示省略)を有する。これにより、各電動モータユニット26、28は、使用者の矢状軸周りに回動可能である。各電動モータユニット26、28は、ケーシング内に、電動モータと、電動モータの出力部材の回動角度を検出する角度センサ等(図示省略)を内蔵している。
【0025】
電動モータユニット26、28には、電動モータの出力部材とトルク伝達関係で連結されるスイングアーム60、62の基端部60A、62Aが着脱可能に連結されている。
【0026】
スイングアーム60、62は、アルミニウム等の軽金属や、ガラス繊維強化プラスチック、炭素繊維強化プラスチック等の高剛性を有する材料により構成され、使用者の股関節部の外側から使用者の大腿部前側へと太腿に沿って延びるように捩れた状をし、大腿部前側に位置する先端部60B、62Bを有する。
【0027】
スイングアーム60、62の先端部60B、62Bには、球面式の連結部64、66によって大腿前部当て板68、70が、首振り可能に取り付けられている。大腿前部当て板68、70は、プラスチック製で、大腿前部の形状に合った湾曲形状をしており、通気性と柔軟性を高めるために、上下方向に延在する多数のスリット68A、70Aが形成されている。
【0028】
大腿前部当て板68、70には、フック形状部71、72が一体成形されている。大腿前部当て板68、70には、大腿部ベルト73、74の一端部が連結されている。大腿部ベルト73、74の先端部には、フック形状部71、72に係脱可能に係合する矩形開口部75A、76Aと、ベルト長さ調節バックル部75B、76Bとを含む係合部材75、76が取り付けられている。換言すると、大腿部ベルト73、74の先端部は、ベルト長さ調節バックル部75B、76Bにベルト長さ調節可能に取り付けられている。
【0029】
大腿部ベルト73、74は、係合部材75、76の矩形開口部75A、76Aをフック形状部71、72に離脱可能に引っ掛けることにより、先端部を大腿前部当て板68、70に係脱可能に連結され、大腿部を縛るループをなす。
【0030】
歩行補助装置10は、メインフレーム22が後述する腹部ベルト30によって使用者の腰部に装着され、スイングアーム60、62の先端部60B、62Bが大腿部ベルト73、74および大腿前部当て板68、70によって使用者の左右の大腿部に装着される。この状態で、使用者が歩行すると、歩行による大腿部の前後の振り運動によって各スイングアーム60、62が基端部60A、62Aを中心として前後に回動する。
【0031】
このスイングアーム60、62の回動が電動モータユニット26、28の角度センサによって検出されることにより、使用者の歩行に応じて電動モータユニット26、28の電動モータが駆動され、左右のスイングアーム60、62が使用者の歩行に応じて回動駆動される。これにより、電動モータが発生する動力が使用者の下肢に歩行補助力として付与される。
【0032】
腰部装具20の説明に戻る。メインフレーム22の内側には、使用者の腹部に巻き付けられる腹部ベルト30が設けられている。腹部ベルト30は、本実施形態では、図3に示されているように、左側ベルト36と、右側ベルト38と、前側ベルト40と、左横腹部ベルト44と、右横腹部ベルト46とにより構成されている。これらベルト36、38、40、44、46は、各々、織布、皮革等、可撓性を有する材料により構成されている。
【0033】
左側ベルト36は、中間部分にベルト長さを調節するベルト長さ調節バックル27を有し、両端をメインフレーム22の中間部分22Aの左側部分の上下部位に止め金(図示省略)によって連結され、当該連結部分より前方へ延出して折り返され、横転V形をしている。同様に、右側ベルト38は、中間部分にベルト長さを調節するベルト長さ調節バックル29を有し、両端をメインフレーム22の中間部分22Aの右側部分の上下部位に止め金(図示省略)によって連結され、当該連結部分より前方へ延出して折り返され、横転V形をしている。
【0034】
左側ベルト36の折り返し部分には、左側ベルト36のベルト幅と同等の横幅を有するフック形状部51Aと、ベルト通し開口51Bとを含むプラスチック製あるいは金属製のフック部材51が、ベルト通し開口51Bに左側ベルト36を折り返すようにして通された形態で取り付けられている。同様に、右側ベルト38の折り返し先端部には、右側ベルト38のベルト幅と同等の横幅を有するフック形状部52Aと、ベルト通し開口52Bとを含むプラスチック製あるいは金属製のフック部材52が、ベルト通し開口52Bに右側ベルト38を折り返すようにして通された形態で取り付けられている。
【0035】
前側ベルト40の両端部には、フック形状部51A、52Aに係脱可能に係合する矩形開口部56A、58Aと、ベルト長さ調節バックル部56B、58Bとを含む係合部材56、58が取り付けられている。換言すると、係合部材56、58のベルト長さ調節バックル部56B、58Bに前側ベルト40の端部が取り付けられている。
【0036】
前側ベルト40は、係合部材56、58の矩形開口部56A、58Aにフック部材51、52のフック形状部51A、52Aに離脱可能を引っ掛けられることにより、両端を、各々、左側ベルト36と右側ベルト38とに係脱可能に連結される。
【0037】
これにより、左側ベルト36、右側ベルト38、前側ベルト40は、メインフレーム22の中間部分22Aと共働して使用者の腹部を取り囲むベルト長さ調節自在の閉ループをなし、メインフレーム22を使用者の腰部に装着する腰ベルトをなす。
【0038】
左横腹部ベルト44は、左側ベルト36の内側にあって、一端をメインフレーム22の中間部分22Aの左側部分の上下部位に止め金(図示省略)によって左側ベルト36と共締め状態で連結される。同様に、右横腹部ベルト46は、右側ベルト38の内側にあって、一端をメインフレーム22の中間部分22Aの右側部分の上下部位に止め金(図示省略)によって右側ベルト36と共締め状態で連結される。左横腹部ベルト44、左横腹部ベルト46は、左側ベルト36、右側ベルト38より幅広で、使用者の横腹部に対するフィット性を損ねることなく、使用者の横腹部の形状に倣った湾曲形状を保ち、適度の剛性を有する。なお、図3において、符号45、47で示されている貫通孔は、左横腹部ベルト44、左側ベルト36、右横腹部ベルト46、右側ベルト38に明けられた貫通孔であり、貫通孔45、47に挿入される止め金(図示省略)によって、これらベルトの端部がメインフレーム22に固定される。
【0039】
メインフレーム22の左右の先端部22B、22Cの内側部分には、止め金(図示省略)によって左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90の一端部が各々固定されている。左側スタビライザ部材80は、先端部(他端部)にスロット形状のベルト通し部80Aを有し、ベルト通し部80Aに左側ベルト36の折り返し端近傍部、つまりフック部材51の近傍部分をベルト長手方向に変位可能に通され、これを支持している。同様に、右側スタビライザ部材90は、先端部(他端部)にスロット形状のベルト通し部90Aを有し、ベルト通し部90Aに右側ベルト38の折り返し端近傍部、つまりフック部材52の近傍部分をベルト長手方向に変位可能に通され、これを支持している。
【0040】
左側スタビライザ部材80は、メインフレーム22との連結部分をなす連結部材82と、左側ベルト36を支持する支持部分をなすベルト通し部84Aを形成された支持部材84と、連結部材82と支持部材84とを接続する板状の接続部分をなす接続部材86の3部品により構成されている。同様に、右側スタビライザ部材90は、メインフレーム22との連結部分をなす連結部材92と、右側ベルト38を支持する支持部分をなすベルト通し部94Aを形成された支持部材94と、連結部材92と支持部材94とを接続する板状の接続部分をなす接続部材96の3部品により構成されている。なお、図4は、右側スタビライザ部材90の分解斜視図である。
【0041】
連結部材82、92と支持部材84、94は、高剛性材、例えば、ポリアミド樹脂等の硬質合成樹脂やアルミニウム等の軽合金により構成されている。支持部材84、94には、軽量化のために肉抜き開口84B、94Bを明けられている。
【0042】
接続部材86、96は、可撓性、柔軟性を有する低剛性材、例えば、ポリエステル繊維等の合成繊維や木綿を平織した複数枚の織布88、98をミシン目89、99によって縫合してなる織布製ベルトにより構成され、歩行補助装置10の前後方向が板厚(厚み方向)で、上下方向が幅方向で、前後方向が長手方向になる板状であることにより、上下方向には高い剛性を示し、前後および左右方向には剛性が低くて高い柔軟性と可撓性を示す。つまり、接続部材86、96は、上下方向に比して前後および左右方向には剛性が低く、前後左右方向、つまり、使用者の腹部の形状になじむ方向には湾曲し易い構造になっている。
【0043】
連結部材82、92と接続部材86、96との連結と、支持部材84、94と接続部材86、96との連結は、各々、これらを貫通する締結具、例えばリベット100により行われている。なお、この連結は、ビスやクリップ等により行われてもよい。
【0044】
上述の構成による腰部装具20によれば、前側ベルト40の両端部の係合部材56、58の矩形開口部56A、58Aを、左側ベルト36、右側ベルト38のフック部材52、54のフック形状部52A、54Aに引っ掛け、使用者の腰腹回りの大きさに応じて前側ベルト40のベルト長さを調節することにより、腹部ベルト30が使用者の腰腹回りに締め付けられ、腰部装具20が使用者の腰部に装着される。
【0045】
この装着状態では、左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90の接続部材86、96が、各々、左側ベルト36、右側ベルト38を伴って使用者の腰部に倣うように左右方向内側(後方)に変形する。これにより、支持部材84、94が使用者の左右の上前腸骨棘の上部に位置する。接続部材86、96は、上下方向には高い剛性を示すものであるので、支持部材84、94の上下方向の位置が安定しているから、メインフレーム22は、左右の先端部分22B、22Cを左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90と協働して左右の上前腸骨棘の上部部位より支持され、中間部分22Aを背部当て板24が使用者の腰背部に当接する部位より支持され、3点支持されることになる。
【0046】
これにより、メインフレーム22が使用者の身体(腰部)に確実に固定され、歩行中に腹部ベルト30を含めてメインフレーム22がずれ動くことが確実に回避される。
【0047】
電動モータユニット26、28の電動モータが駆動されると、これら電動モータの回転中心軸線周りの反力をメインフレーム22が受け持つことになり、メインフレーム22が同回転中心軸線周りに回転しょうとする。このことに対して、電動モータユニット26、28を吊り下げ支持しているメインフレーム22の左右の端部22B、22Cが左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90とによって使用者の身体(上前腸骨棘の上部部位)より支持されているから、前記電動モータの駆動時の反力の受け持ちが、メインフレーム22の動きを生じることなく確実に行われる。
【0048】
この効果は、左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90が、上下方向には前後左右方向(板厚方向)に比して高い剛性(耐曲げ強度)を示す設定により、左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90によるメインフレーム22の支持剛性が高くなり、顕著なものになる。
【0049】
この左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90の剛性の方向性は接続部材86、96の性状により決まり、接続部材86、96の上下方向の剛性と前後左右方向の剛性、それら剛性の比率は、接続部材86、96を構成する織布88、98の材質、メッシュ、織布88、98の縫合枚数、ミシン目89、99の入れ方等によって高い自由度をもって設定することができる。これにより、接続部材86、96は、上下方向には高い剛性を示しつつ織布88、98と云う柔軟材の使用によって使用者に対するフィッティング性が著しく向上する。織布88、98によって構成された接続部材86、96の変形は、ばね材やエラストマ材におけるような弾性変形によるものでなく、織り目の撓み変形であるから、ばね材やエラストマ材によるものに比して疲労を生じ難く、繰り返しの変形に対して高い耐久性を示す。
【0050】
左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90のメインフレーム22に対する取付部をなす連結部材82、94と、左側ベルト36、右側ベルト38の支持部をなす支持部材84、94は、上述の性状を要求される接続部材86、96とは別に、硬質合成樹脂や軽合金等の堅牢な高剛性材により構成されているので、高い耐久性が得られる。つまり、連結部材82、92と支持部材84、94は、必要な機械的強度を的確に確保され、高い耐久性が得られるようになる。
【0051】
このように、左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90は、連結部材82、92と支持部材84、94と接続部材86、96とで、個別の部品により構成されているので、それぞれの部位の性状を要求仕様に高度に適合でき、性能向上が図られる。
【0052】
連結部材82、92と接続部材86、96との連結と、支持部材84、94と接続部材86、96との連結とが、リベット100等の締結具により行われているので、接続部材86、96を連結部材82、92、支持部材84、94より取り外して交換することができ、当該部品の組み替え性が向上する。
【0053】
また、本実施形態によれば、メインフレーム22の左右の端部22B、22Cが左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90によって使用者の身体(上前腸骨棘の上部部位)より支持されるから、メインフレーム22自体の必要剛性を低減でき、メインフレーム22を構成する材料を、炭素繊維強化プラスチックよりポリアミド樹脂等、射出成形可能な樹脂に置換することが可能になり、材料コストの低減、生産性の向上を図ることができる。
【0054】
また、本実施形態による腰部装具20によれば、腹部ベルト30の締結は、前側ベルト40の両端部の係合部材56、58の矩形開口部56A、58Aを、左側ベルト36、右側ベルト38のフック部材52、54のフック形状部52A、54Aに引っ掛けることにより行われるので、腹部ベルト30の締結を簡単に行うことができる。
【0055】
特に、左側ベルト36、右側ベルト38のフック部材52、54は、各ベルト36、38の折り返し先端部にあり、当該部分の近傍を、左側スタビライザ部材80、右側スタビライザ部材90の支持部材84、86より支持されていることにより、垂れ下がることがなく、メインフレーム22に対する配置位置が安定(動かない)しているから、前側ベルト40の両端部の係合部材56、58の矩形開口部56A、58Aを、左側ベルト36、右側ベルト38のフック部材52、54のフック形状部52A、54Aに引っ掛ける作業および外す操作を、片手で簡単に行うことができる。
【0056】
特に、本実施形態では、左側ベルト36、右側ベルト38の各々にフック部材52、54があり、前側ベルト40の両端部に係合部材56、58があるので、片手が不自由な使用者の場合、左右いずれかの不自由な手の側の引っ掛けを予め行っておき、腰部装具20の装着時に、自由が利く手の側の引っ掛けを行うことにより、左右いずれかの片手が不自由な使用者も腰部装具20の装着を行うことができる。
【0057】
なお、何れの実施形態においても、各部のバックルは、引っ掛け式のものに限られることはなく、多くのベルト用バックルとして用いられる爪係合によるクリップ式のバックルであってもよい。クリップ式のバックルでも、バックルの片側部材の配置位置がぐら付かない設定により、バックル締結・解放を片手で簡便におこなうことができる。また、各部のベルトの締結は、バックル以外に、面ファスナにより行われる構造であってもよい。また、腹部ベルト30の構成は、上述の実施形態のものに限られることなく、メインフレーム22を腰部に装着すべく、使用者の腹部を取り囲むものであればよい。また、腰部装具20は、大腿部だけでなく、下腿部にも歩行補助力を付与する型式の歩行補助装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 歩行補助装置
20 腰部装具
22 メインフレーム
24 背部当て板
26 左側電動モータユニット
28 右側電動モータユニット
30 腹部ベルト
36 左側ベルト
38 右側ベルト
40 前側ベルト
44 左横腹部ベルト
46 右横腹部ベルト
60、62
68、70 大腿前部パッド
76、78 大腿部ベルト
84、86 補助ベルト部
80 左側スタビライザ部材
82 連結部材
84 支持部材
86 接続部材
90 右側スタビライザ部材
92 連結部材
94 支持部材
96 接続部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力発生装置が発生する動力を使用者の下肢に歩行補助力として付与する歩行補助装置の腰部装具であって、
使用者の腰部に配置されて腰背部より左右の腰側部の外方へ延在する略C字形状をなし、左右の先端部分に前記動力発生装置を取り付けられるメインフレームと、
前記メインフレームより内側にあって前記メインフレームに連結され、使用者の腹部に巻き付き装着される腹部ベルトと、
一端を前記メインフレームの左右の先端部分に連結され、他端部にて前記腹部ベルトの中間部分を支持する左右のスタビライザ部材とを有し、
スタビライザ部材は、前記メインフレームとの連結部分と前記腹部ベルトの支持部分と、前記連結部分と前記支持部分とを接続する板状の接続部分とを別部品により構成され、
前記連結部分と前記支持部分は高剛性材により構成され、前記接続部分は低剛性材により構成され、当該接続部分は前後方向が板厚になる板状であることにより上下方向には剛性が高く、前後方向には上下方向に比して剛性が低い歩行補助装置の腰部装具。
【請求項2】
前記接続部分は複数枚の織布を縫合してなる織布製ベルトにより構成されている請求項1に記載に歩行補助装置の腰部装具。
【請求項3】
前記連結部分と前記支持部分は硬質合成樹脂により構成されされている請求項1または2に記載に歩行補助装置の腰部装具。
【請求項4】
前記連結部分と前記接続部分との連結と、前記支持部分と前記接続部分との連結は、各々締結具によって行われている請求項1から3の何れか一項に記載の歩行補助装置の腰部装具。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の腰部装具を具備した歩行補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254237(P2012−254237A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129952(P2011−129952)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)