説明

歯ブラシ用毛材および歯ブラシ

【課題】清掃性、耐久性および歯肉マッサージ効果に優れた新規な歯ブラシ用毛材およびそれを使用した歯ブラシの提供。
【解決手段】芯鞘複合構造を有する合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなるブラシ用毛材1であって、前記合成樹脂モノフィラメントの鞘部3は複数の凹部4と凸部5とを有する多葉断面形状であり、前記凹部4は前記モノフィラメントの側面長さ方向に沿って溝6を形成し、かつ前記カットブリッスルの少なくとも一端には、前記凸部5からなる分岐毛7が王冠状に形成されていることを特徴とする歯ブラシ用毛材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、清掃性、耐久性および歯肉マッサージ効果に優れた新規な歯ブラシ用毛材およびそれを使用した歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブラシ用毛材には、安価で容易に加工できることから合成樹脂モノフィラメントが主に使用されている。
【0003】
そして近年では、ブラシに様々な機能が要求されてきており、ブラシに使用される毛材にも様々な形態や機能を持つものが提案されている。
【0004】
例えば、毛先がテーパー状の歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献1参照)は、毛先が歯間に入りやすいために狭い部分の歯垢を落としやすく、また触感性にも優れているために歯茎へのマッサージ効果が得られるなど、従来の歯ブラシ用ブリッスルにはない特異的な機能を発揮するものであることから、今やデンタルケア商品の主流となっている。
【0005】
しかし、従来のテーパー状の歯ブラシ用毛材は、毛先に向かって徐々に細くなっているために毛腰が弱く、刷掃実感が不足しがちであるばかりか、歯の表面の汚れを掻き落とす力が弱いなどの問題点があった。
【0006】
また、ポリエステル樹脂製の海部の中にポリアミド樹脂製の2〜5つの島部を散在させた海島型複合繊維を使用し、その先端部に島部のみを露出させた歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献2参照)は、毛先に露出した芯毛が柔らかいものの、全体に毛腰を持っており、毛先が口腔細部に入り込んで汚れを掻き出すことができるばかりか、歯肉を傷つけにくいなどの特長を持っている。
【0007】
しかし、この歯ブラシ用毛材は、海部をアルカリ溶液で溶かし島部を露出せしめて芯毛を形成させているだけであるため、芯毛の先端部はフラットであり、結局は従来のテーパー状の歯ブラシ用毛材と同じ触感性となってしまい、芯毛の効果を上手く活かしきれていないというのが実状であった。
【0008】
さらに、多葉断面を有するモノフィラメントの先端部を、溶解処理によって多葉断面の葉部ごとに複数分岐させ、分岐されたそれぞれの長さが異なる先鋭なテーパー状の分岐毛に形成した歯ブラシ用毛材(例えば、特許文献3参照)は、毛先が歯と歯の間に入り易く、基部は断面積が大きいために適度な毛腰を持つことから、刷掃実感に優れ、歯肉を痛めないなどの特長を持っている。
【0009】
しかし、この歯ブラシ用毛材は、分岐毛の長さが異なるために、実際は歯と歯の間に挿入して汚れを掻き出す働きをしているのは一番長い分岐毛のみであり、短い分岐毛は清掃機能を十分活かしきれていない。また、触感性についても一番長い分岐毛によるものが殆どで、結局は従来のテーパー状の歯ブラシ用毛材と同じ触感性となってしまい、分岐毛の効果を上手く活かしきれていないばかりか、実際に歯ブラシに使用すると葉部同士が裂けてしまい、耐久性の低下を招くなどの問題を残しているのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3145213号公報
【特許文献2】特開平9−322821号公報
【特許文献3】特開2003−199626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、清掃性、耐久性および歯肉マッサージ効果に優れた新規な歯ブラシ用毛材およびそれを使用した歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明によれば、芯鞘複合構造を有する合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなるブラシ用毛材であって、前記合成樹脂モノフィラメントの鞘部は複数の凹部と凸部とを有する多葉断面形状であり、前記凹部は前記モノフィラメントの側面長さ方向に沿って溝を形成し、かつ前記カットブリッスルの少なくとも一端には、前記凸部からなる分岐毛が王冠状に形成されていることを特徴とする歯ブラシ用毛材が提供される。
【0013】
なお、本発明においては、
前記芯部の直径d1と前記凹部の頂点を結んだ内接円直径d2との比d1/d2が0.5〜0.95の範囲にあること、
前記芯部を構成する合成樹脂と前記鞘部を構成する合成樹脂が共にポリエステル系樹脂であること
がさらに好ましい条件として挙げられる。
【0014】
また、本発明の歯ブラシは、上記いずれかの歯ブラシ用毛材を毛材の少なくとも1部に使用したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、清掃性、耐久性および歯肉マッサージ効果に優れた新規な歯ブラシ用毛材およびそれを使用した歯ブラシを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の歯ブラシ用毛材の一例を示す拡大模式図であり、(b)および(c)はそれぞれ歯ブラシ用毛材の平面AおよびBにおける断面図である。
【図2】本発明の歯ブラシ用毛材の先端部に分岐毛が形成される様子を(I)〜(III)の順に表した断面図である。
【図3】本発明の歯ブラシ用毛材の断面における芯部の直径d1と凹部の頂点を結んだ内接円直径d2の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を図面に従って具体的に説明する。
【0018】
図1の(a)は本発明の歯ブラシ用毛材の一例を示す拡大模式図であり、1は歯ブラシ用毛材、2は芯部、3は鞘部、4は凹部、5は凸部、6は溝、7は分岐毛をそれぞれ示しており、図1の(b)および(c)は歯ブラシ用毛材1の平面Aおよび線Bにおける断面図である。
【0019】
図1に示すように、本発明の歯ブラシ用毛材1は、芯鞘複合構造を有する合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなるブラシ用毛材であって、前記合成樹脂モノフィラメントの鞘部3は複数の凹部4と凸部5とを有する多葉断面形状であり、前記凹部4は前記モノフィラメントの側面長さ方向に沿って溝6を形成し、かつ前記カットブリッスルの少なくとも一端には、前記凸部5からなる分岐毛7が王冠状に形成されていることを特徴とするものである。
【0020】
つまり、本発明の歯ブラシ用毛材1は、毛材の側面に形成された複数の溝6と、毛先に形成された複数の分岐毛7を有するため、歯と歯の間に入って汚れを掻き出したり、歯の表面の汚れを掻き落としたりするなど優れた清掃性を発揮し、さらには分岐毛7が歯ブラシ用毛材1に優れた触感性をもたらし、歯肉マッサージ効果が期待できるのである。
【0021】
なお、本発明の歯ブラシ用毛材1の毛先に王冠状の分岐毛7を形成する方法については、薬液を使用した化学的減量法が好ましく、化学的減量法を利用した場合の形成過程を図1および図2を基に説明すると次の通りになる。
【0022】
まず芯鞘複合構造を有する合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスル8の先端部を薬液に浸漬させて、芯部2をまず溶かして先端部に窪み9を形成させる(図2(II))。
【0023】
さらに薬液に浸漬させ、今度は鞘部3を溶かすが、鞘部3は複数の凹部4と凸部5とを有する多葉断面形状であるため、先に凹部4が溶けてなくなり、凸部5がそれぞれ分離する。そして分離した凸部5は先端に向かって徐々に細くなる分岐毛7となる(図2(III))。
【0024】
なお、本発明の歯ブラシ用毛材1に使用する合成樹脂としては、まず芯部2が溶けるように薬液の種類に応じて適宜選定すれば良い。
【0025】
例えば、芯部2がポリエステル系樹脂、鞘部3がポリアミド系樹脂の場合は、まず芯部2をアルカリ溶液で溶かし、次に鞘部3を酸性溶液で溶かすことで得られ、芯部2に材質の硬いポリエステル系樹脂を使用しているために適度な毛腰を持ち、鞘部3に材質が柔らかなポリアミド系樹脂を使用しているために歯肉マッサージ効果の高い分岐毛7が形成される。
【0026】
また、芯部2がポリアミド系樹脂、鞘部3がポリエステル系樹脂の場合は、まず芯部2を酸性溶液で溶かし、次に芯部3をアルカリ溶液で溶かすことで得られ、芯部2に材質の柔らかなポリアミド系樹脂を使用しているため毛腰が柔らかく、鞘部3には材質の硬いポリエステル系樹脂を使用しているために歯と歯の間に入りやすい分岐毛7が形成される。
【0027】
さらに、芯部2および鞘部3が共にポリエステル系樹脂またはポリアミド系樹脂の場合は、アルカリ溶液または酸性溶液のみで処理することができるという利点があり、特に芯部2および鞘部3が共にポリエステル系樹脂の場合は、適度な毛腰と耐久性を合わせ持ち、歯と歯の間に入り易く、適度な歯肉マッサージ効果を持った分岐毛7が得られ易い。
【0028】
ここで、本発明の歯ブラシ用毛材1に使用されるポリアミド系樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン410、ナイロン56、ナイロンMXD6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・66共重合体およびナイロン6・12共重合体、さらにはこれらの中から2種以上をブレンドしたものを挙げることができ、中でもナイロン610およびナイロン612は吸水性が低く、物理的特性も十分であることから、歯ブラシ用毛材1として特に好適である。
【0029】
一方、ポリエステル系樹脂についても、特に限定はされないが、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと言う)、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと言う)、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート(以下、PPTと言う)、ポリメチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどを挙げることができ、中でも適度な毛腰や耐久性が有し、分岐毛7を簡単に形成させることができることから、特にPET、PBTおよびPPTは歯ブラシ用毛材1として好適である。
【0030】
また、本発明の歯ブラシ用毛材1に使用するポリエステル系樹脂には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびジオール成分を共重合成分として含有せしめることができ、例えば、ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、シクロヘキサンジカルボン酸およびデカリンジカルボン酸などが挙げられ、ジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレングリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂肪族グリコール、o−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、m−キシリレングリコール、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン、4,4’−ビス(2−ヒドロキシエトキシエトキシ)ジフェニルスルホンなどの芳香族グリコール、およびヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、レゾルシン、カテコール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシジフェニルスルホンなどのジフェノール類などが挙げられ、これらの中から2種以上を選択して適宜使用することもできる。
【0031】
なお、本発明の歯ブラシ用毛材1には、発明の効果を阻害しない範囲であれば、その目的に応じて、各種無機粒子、各種金属粒子および架橋高分子粒子などの粒子類のほか、公知の抗酸化剤、耐光剤、耐侯剤、イオン交換剤、着色防止剤、耐電防止剤、各種着色剤、ワックス類、シリコーンオイル、各種界面活性剤および各種強化繊維類などを適宜添加せしめることも可能である。
【0032】
さらに、先端部の分岐毛7を形成しやすく、かつ芯部2と鞘部3とが剥離しにくい耐久性の高い歯ブラシ用毛材1が得られることから、本発明においては、芯部の直径d1と凹部4の頂点を結んだ内接円直径d2との比d1/d2が0.5〜0.95の範囲にあることが好ましい。
【0033】
つまり、d1/d2が上記範囲を下回ると、芯部2と凹部4との間が厚くなって溶けてなくなりにくくなり、しかも凸部5が分離しなくなって分岐毛7の長さが短くなり、歯肉への当たりが悪くなるばかりか、分岐毛7が形成され難くなる場合がある。逆にd1/d2が上記範囲を上回ると、先端部に分岐毛7が形成され易くなるものの、芯部2と鞘部3とが剥離しやすくなって、歯ブラシ用毛材としての耐久性が十分に得られ難くなる。
【0034】
ここで、本発明の歯ブラシ用毛材1の製造方法について説明する。
【0035】
本発明の歯ブラシ用毛材1の製造方法については特に限定されないが、一般的な方法としては、公知の複合型溶融紡糸機を使用して合成樹脂モノフィラメントを紡糸し、そのカットブリッスルの先端を薬液による化学的減量法で溶かして分岐毛7を形成させる方法が挙げられる。
【0036】
具体的に、芯部2にPET、鞘部3にPBTを使用した場合を例に挙げると、まず、PETおよびPBTをそれぞれ複合型溶融紡糸機に供給して、溶融紡糸機内で溶融混練した後、複合口金から合成樹脂の溶融物を共押し出しする。
【0037】
なお、本発明においては、鞘部3の断面形状が多葉断面形状になるように、複合口金の吐出孔を所望の形状にすればよい。
【0038】
また、本発明においては、多葉断面形状の凹部4と凸部5の個数は特に限定されないが、個数が少なすぎると歯肉への当たりが悪くなってマッサージ効果が得られ難くなり、逆に多すぎると凸部5が小さくなるために分岐毛7が細くなり、歯肉への当たりがソフトになるものの、歯と歯の間に入り難くなって清掃性効果が得られ難くなることから、清掃性と歯肉マッサージ効果とのバランスを考慮すれば、3〜10個が好ましく、さらには4〜8個が好ましい。
【0039】
さらに、溶融紡糸の際に、PETとPBTの吐出量を適宜調整することで、芯部の直径d1と凹部の頂点を結んだ内接円直径d2との比d1/d2を0.5〜0.95の範囲に調整することが可能である。
【0040】
さらにまた、芯部2と鞘部3とを剥離しにくくするためには、芯部の直径d1と凹部の頂点を結んだ内接円直径d2との比d1/d2を0.95以下にすることが効果的であるが、芯部2に鞘部3の合成樹脂を、または鞘部3に芯部2の合成樹脂を発明の効果を阻害しない範囲で添加するとより一層の効果が期待できる。
【0041】
なお、芯部は丸形以外の扁平、正方形、半月状、三角形、5角以上の多角形などの異形断面であっても良い。
【0042】
その後、共押し出された合成樹脂の溶融物は、冷却浴中で冷却固化された後、延伸および熱セットされて、合成樹脂モノフィラメントとなる。
【0043】
そして、得られた合成樹脂モノフィラメントを必要な長さにカットし、さらにカットブリッスルの先端部分をアルカリ溶液に浸漬して、分岐毛7を王冠状に形成する。
【0044】
こうして得られた歯ブラシ用毛材1は、歯ブラシのハンドルに植毛されるが、歯ブラシの植毛部分に全面植毛してもよく、あるいは他の歯ブラシ用毛材と組み合わせて部分植毛してもよい。
【実施例1】
【0045】
以下、本発明のテーパードブリッスルについて、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0046】
なお、清掃性評価、耐久性評価および触感性評価には、下記仕様の歯ブラシを使用した。
基台:ABS製(9mm×22mm)
植毛孔数:34箇
植毛本数:一つの孔につき20本
毛丈:10mm
【0047】
[清掃性]
10mm立方のアクリル板の上表面に歯垢染色液(プラークチェック液)を均一に付着させ、作成したブラシを使用して、アクリル板上表面を、垂直荷重350g、振幅長30mm、且つ振幅速度180往復/分の条件で3分間ブラッシングを行い、除去された歯垢染色液の面積を測定した。そして、ブラッシング前の歯垢染色液の付着面積と除去された歯垢染色液の面積から除去率(%)を求めた。除去率(%)の値が高いほど清掃性に優れていることを示す。
【0048】
[耐久性評価]
表面に凹凸を有するステンレス板に歯ブラシを垂直荷重250gで押し当て、37℃の温水をかけながらで2万回摺動させた。その後、100本の歯ブラシ用毛材について、その先端部分をデジタルマクロスコープで観察し、芯部と鞘部とが剥離している本数を数えた。本数が少ないほど耐久性に優れていることを示す。
【0049】
[触感性評価]
歯ブラシ用毛材の触感性について、20名のモニターに実際に歯をブラッシングしてもらって、次の点数で評価し、合計点を人数(20名)で割った平均点で表した。なお従来の歯ブラシとはPBTのみからなるテーパー状の歯ブラシ用毛材を使用したものを言う。
10点:歯肉への触感は至って良好であり、十分にマッサージ効果が認められた、
5点:歯肉への触感およびマッサージ効果は従来の歯ブラシと同じであった、
1点:歯肉への触感が悪く、マッサージ効果もあまりなかった。
【0050】
[実施例1]
原料としてナイロン610ペレット(東レ社製 CM2001)とPBTペレット(東レ社製 トレコン1200S)を使用した。
【0051】
ナイロン610が鞘部、PBTが芯部となるように、各合成樹脂ペレットを複合溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、複合口金から合成樹脂の溶融物を共押し出しした。
【0052】
引き続き、共押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、外接円直径0.2mm(芯部の直径が0.12mm)でd1/d2が0.75の六葉断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0053】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、このカットブリッスルの両端を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して芯部を溶かし、さらにギ酸水溶液に浸漬して鞘部を溶かして分岐毛を形成させ、歯ブラシ用毛材を得た。
【0054】
[実施例2]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を十葉断面としたこと以外は、実施例1と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0055】
[実施例3]
d1/d2の値を0.98としたこと以外は、実施例2と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0056】
[実施例4]
PBTが鞘部、ナイロン610が芯部となるように各合成樹脂ペレットを複合溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、複合口金から合成樹脂の溶融物を共押し出しした。
【0057】
引き続き、共押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、外接円直径0.2mm(芯部の直径が0.12mm)でd1/d2が0.75の六葉断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0058】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、このカットブリッスルの両端をギ酸水溶液に浸漬して芯部を溶かし、さらにアルカリ水溶液に浸漬して鞘部を溶かして分岐毛を形成させ、歯ブラシ用毛材を得た。
【0059】
[実施例5]
原料としてPBTペレット(東レ社製 トレコン1200S)とPETペレット(東レ社製 T701T)を使用した。
【0060】
PBTが鞘部、PETが芯部となるように、各合成樹脂ペレットを複合溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、複合口金から合成樹脂の溶融物を共押し出しした。
【0061】
引き続き、共押し出しされた合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、外接円直径0.2mm(芯部の直径が0.12mm)でd1/d2が0.75の六葉断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0062】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、このカットブリッスルの両端を水酸化ナトリウム水溶液に浸漬して芯部を溶かし、さらに鞘部を溶かして分岐毛を形成させ、歯ブラシ用毛材を得た。
【0063】
[実施例6]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を四葉断面としたこと以外は、実施例4と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0064】
[実施例7]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を八葉断面としたこと以外は、実施例4と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0065】
[実施例8]
d1/d2の値を0.5としたこと以外は、実施例4と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0066】
[実施例9]
d1/d2の値を0.95としたこと以外は、実施例4と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0067】
[比較例1]
ナイロン610ペレットを溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、口金から合成樹脂の溶融物を押し出しした。
【0068】
引き続き、押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、ナイロン610のみからなる直径0.2mmの丸断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0069】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、さらにこのカットブリッスルをギ酸水溶液に浸漬してその両端を溶解し、両端にテーパー形状を有する歯ブラシ用毛材を得た。
【0070】
[比較例2]
PBTペレットを溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、口金から合成樹脂の溶融物を押し出しした。
【0071】
引き続き、押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、PBTのみからなる直径0.2mmの丸断面合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0072】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、さらにこのカットブリッスルを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してその両端を溶解し、両端にテーパー形状を有する歯ブラシ用毛材を得た。
【0073】
[比較例3]
合成樹脂モノフィラメントの断面形状を六葉断面としたこと以外は、比較例2と同じ方法で歯ブラシ用毛材を得た。
【0074】
[比較例4]
PBTペレットを溶融紡糸機に供給し、溶融紡糸機内で溶融混練した後、口金から合成樹脂の溶融物を押し出しした。
【0075】
引き続き、押し出された合成樹脂の溶融物を、冷却浴中で冷却固化した後、延伸および熱セットを行い、特開2003−199626号公報の図6に記載(中心葉部の周囲に4つの側設葉部を有する)の合成樹脂モノフィラメントを得た。
【0076】
次に、得られた合成樹脂モノフィラメントをカットし、さらにこのカットブリッスルを水酸化ナトリウム水溶液に浸漬してその両端を溶解し、短い分岐毛の長さが3.0mm、長い分岐毛の長さが6.0mmの歯ブラシ用毛材を得た。
【0077】
【表1】

【0078】
表1に示す結果から明らかなように、本発明の歯ブラシ用毛材(実施例1〜8)は、いずれもポリアミド系樹脂またはポリエステル系樹脂のみからなり、丸断面または異形断面の歯ブラシ用毛材(比較例1〜3)に比べて、清掃性、触感性および耐久性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の歯ブラシ用毛材は、清掃性、耐久性およびマッサージ効果に優れたものであるから、歯ブラシに使用した際にはこれらの効果を遺憾なく発揮する。また本発明の歯ブラシ用毛材は、その優れた効果を活かし、ヘアブラシ、ボディブラシ、クリーニングブラシ、化粧ブラシ、画筆などの各種ブラシの他にも、ロールブラシ、ホイールブラシ、カップブラシ、ナイブレットブラシなどの各種工業用ブラシに利用できるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 歯ブラシ用毛材
2 芯部
3 鞘部
4 凹部
5 凸部
6 溝
7 分岐毛
8 合成樹脂モノフィラメントのカットのブリッスル
9 窪み
A、B 平面
d1 芯部の直径
d2 凹部の頂点を結んだ内接円直径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯鞘複合構造を有する合成樹脂モノフィラメントのカットブリッスルからなるブラシ用毛材であって、前記合成樹脂モノフィラメントの鞘部は複数の凹部と凸部とを有する多葉断面形状であり、前記凹部は前記モノフィラメントの側面長さ方向に沿って溝を形成し、かつ前記カットブリッスルの少なくとも一端には、前記凸部からなる分岐毛が王冠状に形成されていることを特徴とする歯ブラシ用毛材。
【請求項2】
前記芯部の直径d1と前記凹部の頂点を結んだ内接円直径d2との比d1/d2が0.5〜0.95の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ用毛材。
【請求項3】
前記芯部を構成する合成樹脂と前記鞘部を構成する合成樹脂が共にポリエステル系樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ用毛材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の歯ブラシ用毛材を毛材の少なくとも1部に使用したことを特徴とする歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−105743(P2012−105743A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255452(P2010−255452)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】