説明

歯ブラシ

【課題】安全性を確保した上で、口腔内細菌の殺菌や口臭予防の効果を向上することを課題とする。
【解決手段】口腔洗浄時に口腔内に含まれる歯ブラシの部位に露出して形成されたブラシ部電極11と、このブラシ部電極11に所定の電流を印加する制御回路とを備え、ブラシ部電極11は、電流の印加により殺菌性を有した銀イオン、銅イオンもしくは亜鉛イオンの金属イオンを溶出可能な材質でメッキされ、口腔洗浄時に口腔内の唾液や歯みがき水溶液を介してブラシ部電極11に電流を印加することでブラシ部電極11から金属イオンを口腔内に溶出し、溶出した金属イオンで口腔内の細菌を殺菌して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の細菌の殺菌や口臭予防に効果的な歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術としては、例えば以下に示す文献に記載されたものが知られている(特許文献1参照)。この文献1には、紫外線を透過するブラシ毛が植設された歯ブラシの基端に紫外線を案内し、ブラシ毛を透過してブラシ毛の先端から紫外線を放出し、ブラシ毛の先端に対向する位置に存在する細菌を殺菌または減菌する紫外線発生歯ブラシの発明が記載されている。
【特許文献1】特開平11−155638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の歯ブラシで採用されている、口腔内に紫外線を照射して口腔内の細菌を殺菌する技術では、歯間部の奥など口腔内で紫外線が届きにくい部位があった。このため、歯ブラシから放出された紫外線が口腔内にもれなく行き渡らないおそれがあり、十分に殺菌を行うことが困難になるといった不具合を招いていた。
【0004】
また、口腔内で紫外線を放出することで、長期間使用した場合には、歯茎などが日焼けして歯茎が黒ずんでくるといったおそれもあった。
【0005】
そこで、本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、その目的とするとことは、安全性を確保した上で、口腔内細菌の殺菌や口臭予防の効果を向上した歯ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る歯ブラシは、口腔洗浄時に口腔内に含まれる歯ブラシの部位に露出して形成された電極と、前記電極に所定の電流を印加する電流印加手段とを備え、前記電極は、電流の印加により殺菌性を有した金属イオンを溶出可能な材質を含んで構成され、口腔洗浄時に口腔内の液体を介して電流印加手段により前記電極に電流を印加することで前記電極から金属イオンを口腔内に溶出することを第1の特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る歯ブラシは、第1の特徴において、殺菌性を有した金属イオンを溶出可能な前記材質は、銀、銅、または亜鉛であることを第2の特徴とする。
【0008】
本発明に係る歯ブラシは、第1または第2の特徴において、前記電流印加手段により前記電極に印加される電流に基づいて、金属イオンの溶出量を制御することを第3の特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る第1の特徴の歯ブラシは、殺菌性を有する金属イオンを口腔内の隅々まで十分に行き渡らせることが可能となる。これにより、口腔内の細菌を十分に殺菌することが可能となり、口腔内の洗浄効果を向上させることができる。
【0010】
また、本発明に係る第2の特徴の歯ブラシは、容易かつ安価に金属イオンを溶出させることができる。
【0011】
本発明に係る第3の特徴の歯ブラシは、金属イオンの濃度を安全基準以下に容易に制御することが可能となり、安全性を十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は本発明の実施例1に係る歯ブラシの構成を示す断面図である。図1に示す実施例1の歯ブラシは、口腔内の液体を介した通電機能を備え、ブラシ部が駆動される電動歯ブラシである。この歯ブラシは、大別して把持用柄部1とブラシ部9を備えて構成され、把持用柄部1は筒状構造で使用者が歯ブラシを使用する際に手で把持する。把持用柄部1の筒状内部は、外部に対して密封されて防水性を有し、駆動ブロック2、電池3、歯ブラシを駆動制御する駆動回路、ならびに電流発生回路、昇圧回路、電流制限回路等を含み本願発明に特徴的な金属イオンの発生を制御する制御回路が搭載された回路基板4が設けられている。回路基板4に搭載された電気回路は、電池3から給電される。
【0014】
使用者の手が触れる把持用柄部1の表面の一部には、表面に沿って把持部電極5が配設され、この把持部電極5の一端側の把持用柄部1の内側には、把持部電極5に連続して内側に露出する突起部6が形成されている。この突起部6は通電端子7を介して回路基板4に搭載された制御回路(図示せず)に接続されている。これにより、把持部電極5は制御回路に電気的に接続される。
【0015】
把持用柄部1の内部には、長手方向に導電性の駆動軸8が設けられ、駆動軸8の一端側が把持用柄部1から突出している。この駆動軸8は、駆動ブロック2により選択的に往復直線運動または往復回転運動可能に駆動される。駆動ブロック2は、駆動力伝達、変換手段としてのギア、カム等を備えたモータ駆動機構、もしくはソレノイド等の磁気回路を備えて直接駆動軸8を駆動するアクチュエータで構成される。
【0016】
駆動軸8の他端側には、回路基板4に搭載された駆動回路に接続された通電板15が接続され、駆動軸8は、この通電板15を介して回路基板4に搭載された駆動回路に電気的に接続される。
【0017】
ブラシ部9は、ブラシヘッド部10と電極(以下、ブラシ部電極と呼ぶ)11とを備えて構成されている。ブラシヘッド部10は、ブラシ部9の一端側を構成し、正面側にブラシ毛12が植設されている。ブラシ部9の他端側には、長手方向(軸方向)に開口する嵌め込み穴13が設けられ、この嵌め込み穴13に把持用柄部1の駆動軸8が嵌入されて把持用柄部1とブラシ部9が連結される。
【0018】
ブラシ部電極11は、ブラシ部9の内部に長手方向に沿って配設されている。ブラシ部電極11は、例えばステンレス等の電極母材の表面に、殺菌性を有する金属イオンを発生可能な銀メッキ、銅メッキ、もしくは亜鉛メッキ等が施されて構成されている。ブラシ毛12が植設されたブラシヘッド部10の正面側には、ブラシ毛12の近傍であって、口腔洗浄時にブラシ毛12とともに口腔内に含まれる位置に開口部14が形成されている。この開口部14には、ブラシ部電極11の一端側が臨んで開口部14からブラシ部電極11の一部が露出されている。ブラシ部電極11の他端側は、嵌め込み穴13に臨み、ブラシ部電極11は、駆動軸8が嵌め込み穴13に嵌入されて連結された際に駆動軸8に電気的に接続される。これにより、ブラシ部電極11は、導電性の駆動軸8を介して回路基板4の制御回路に電気的に接続される。
【0019】
このような把持用柄部1とブラシ部9は、把持用柄部1の駆動軸8をブラシ部9の嵌め込み穴13に嵌め込んで両者を連結することで、ブラシ部9が把持用柄部1に取り付けられる。このようにして把持用柄部1に取り付けられたブラシ部9は、駆動ブロック2により駆動軸8を駆動することで駆動される。
【0020】
このような構成において、口腔洗浄時には、制御回路に含まれる電流発生回路において、例えば図2に示すような、正負が反転する略矩形波のイオン発生電流が生成される。生成されたイオン発生電流は、ブラシ部電極11に印加される。このときの通電経路は、電池3の+(正)極→回路基板4の制御回路→通電端子7→突起部6→把持部電極5→把持用柄部1に触れている使用者の手→口腔内(歯、歯茎)→唾液、歯みがき剤水溶液等の口腔内の液体→ブラシ部電極11→駆動軸8→通電板15→回路基板4の制御回路→電池3の−(負)極となる。
【0021】
このような通電経路にあっては、口腔内の唾液や歯みがき剤水溶液等の液体と接触した状態でブラシ部電極11に図2に示すような波形の電流が流れる。このような状態で、ブラシ部電極11が正極になると(図2の斜線部分)、ブラシ部電極11の表面では、電極にメッキされたそれぞれの金属に応じて、以下に示すように化学反応が生じ、銀イオン(Ag)、銅イオン(Cu2+)、もしくは亜鉛イオン(Zn2+)の金属イオンが発生する。
【0022】
Ag→Ag+e
Cu→Cu2++2e
Zn→Zn2++2e
発生した金属イオンは、口腔内の唾液や歯みがき剤水溶液に溶出し、口腔内の唾液や歯みがき剤水溶液とともに口腔内にもれなく行き渡る。このとき、溶出した金属イオンは、歯や歯茎の表面に付着している細菌に強く吸着し、細菌の細胞活動を抑制阻止して不活性化し、死滅に至らしめる。
【0023】
また、亜鉛イオンについては、上記作用効果に加えて口腔内に発生した口臭の原因の一つである揮発性硫黄化合物と結合し、口臭を抑制することができる。
【0024】
溶出する金属イオンの溶出量は、ブラシ部電極11に与える電流値、ならびにブラシ部電極11が正極になる割合により制御され、電流値が多くなるほど、正極になる時間が長いほど溶出量は増える。例えば、銀メッキされたブラシ部電極11に流れる電流の波形を、図3に示すような単純化した矩形波(パルス状)で、電流振幅が±0.1mA程度で、1周期当たり正極になる割合と負極になる割合が1:99程度として、2分間程度歯みがきを行った場合の銀イオンの溶出量をファラデーの法則に基づいて算出すると、銀イオンは0.13mg程度溶出されることになる。
【0025】
このように、金属イオンの溶出量を制御することが可能なので、殺菌性のある金属イオンの溶出量を確実に安全基準以下のイオン濃度に制御することが可能となり、安全性を確実に確保することができる。
【0026】
なお、本発明は、上記実施例に限ることはなく、ブラシ部電極11に含まれる、殺菌性の金属イオンを発生する金属は、複数種類であってもかまわない。
【0027】
また、ブラシ部電極11に印加される電流波形は、図2に示すような略矩形波に限ることはなく、略正弦波や略三角波でもよく、もしくは直流でもよく、ブラシ部電極11から金属イオンを発生させることが可能な電流波形であれば如何なる電流波形でもよい。
【0028】
さらに、上記実施例では、ブラシ部が電動で駆動される歯ブラシに本発明を適用した例を説明したが、使用者が自ら歯ブラシを動かして歯をみがく所謂手動式の歯ブラシであっても、本発明を採用して同様の効果を得るこは可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例1に係る歯ブラシの構成を示す図である。
【図2】ブラシ部電極に印加される電流波形の一例を示す図である。
【図3】ブラシ部電極に印加される電流波形の他の例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1…把持用柄部
2…駆動ブロック
3…電池
4…回路基板
5…把持部電極
6…突起部
7…通電端子
8…駆動軸
9…ブラシ部
10…ブラシヘッド部
11…ブラシ部電極
12…ブラシ毛
13…嵌め込み穴
14…開口部
15…通電板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔洗浄時に口腔内に含まれる歯ブラシの部位に露出して形成された電極と、
前記電極に所定の電流を印加する電流印加手段とを備え、
前記電極は、電流の印加により殺菌性を有した金属イオンを溶出可能な材質を含んで構成され、口腔洗浄時に口腔内の液体を介して電流印加手段により前記電極に電流を印加することで前記電極から金属イオンを口腔内に溶出する
ことを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
殺菌性を有した金属イオンを溶出可能な前記材質は、銀、銅、または亜鉛である
ことを特徴とする請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記電流印加手段により前記電極に印加される電流に基づいて、金属イオンの溶出量を制御する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−125125(P2009−125125A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300507(P2007−300507)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】