説明

歯ブラシ

【課題】 歯間部や歯と歯茎の境目、或いは、その周辺に蓄積した除去しにくい歯垢の清掃能力を高めると共に、歯茎への当たり具合もソフトで使用感に優れ、又、フィラメントの乾燥性が速いので菌やカビの発生が抑制されるので、衛生的に良いことやフィラメントの単位当たりの重量が軽いため、コスト的に安価な歯ブラシを効率的に提供するものである。
【解決手段】 毛先が合成樹脂製のフィラメントを束ねて毛束とし、そのフィラメントの基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメントを植毛台の植毛穴に植毛した歯ブラシにおいて、前記フィラメントをテーパー状にすると共に、そのフィラメントの基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で形成したフィラメントを植毛して構成した歯ブラシ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、毛先が合成樹脂製のフィラメントをテーパー状にすると共に、そのフィラメントの基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で構成されたフィラメントを束ねて毛束とし、植毛台の植毛穴に植毛した歯ブラシに関するものであり、歯間部や歯と歯茎の境目、或いは、その周辺に蓄積した除去しにくい歯垢の清掃能力を高めると共に、歯茎への当たり具合もソフトで使用感に優れ、又、フィラメントの乾燥性が速いので菌やカビの発生が抑制されるので、衛生的に良いことやフィラメントの単位当たりの重量が軽いため、コスト的に安価な歯ブラシを効率的に供給する歯ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯ブラシは、ブラッシング時の清掃効果を高めるために、植毛したフィラメントの先端を機械的に研磨するテーパー加工や化学的処理でテーパー加工した歯ブラシが種々提案されている。例えば、毛先が歯間部や歯周ポケットに入るように、毛先を機械的にテーパー状に研磨加工した歯ブラシが知られている。しかし、このテーパー部の長さはせいぜい1mm程度と短いため、清掃効果やソフト感が向上するに至らず、通常の毛先ラウンド状(研磨加工)の毛束とほとんど差がなかった。又、このような歯ブラシは、フィラメントの断面形状が丸型で無垢のものが使用されるが、無垢ゆえにフィラメントの乾燥が遅く菌やカビなどが発生し易く、衛生的に良くないこともあった。
【0003】
また、フィラメントの基部の断面形状を異形形状にした毛束を用いて植毛した歯ブラシも提案されてきた(例えば特開2001−169829号公報)。しかし、このような歯ブラシの毛束は、歯間部や歯周ポケットなどの窪んだ部分に入り込み易いが、一方、基部の断面形状が異形であるがゆえに、その毛先の先端部や側面部の異形形状のエッジ部が歯茎に当たり、傷つけたりすると共に、フィラメントの基部の断面形状が異形であるため、フィラメントの使用する量は少なくて済むが、断面が無垢ゆえにフィラメントの乾燥が遅く衛生的にも問題があった。
【0004】
さらに、フィラメントの基部の断面形状を丸型の中実フィラメントと中空フィラメントで構成し、植毛穴にそれぞれの毛束を植毛する歯ブラシも提案されている。(例えば特開平6−125812号公報)。このフィラメントの基部の断面形状を丸型の中実フィラメントと中空フィラメントで構成し、それぞれの毛束を植毛穴に植毛する歯ブラシは、一部の植毛部にフィラメントの断面形状が中空形状のものを使用するので多少のコストメリットはあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−169829号公報
【特許文献2】特開平6−125812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このようなフィラメントの基部の断面形状を丸型の中実フィラメントと中空フィラメントで構成し、植毛穴にそれぞれの毛束を植毛した歯ブラシの場合、毛束に使用するフィラメントの種類が2種類になり、2度の植毛が必要になり、コスト高になってしまっていた。又、植毛穴にそれぞれの中実フィラメント又は中空フィラメントが植毛されているので、植毛場所によっては乾燥時間が異なり、中空部分では、フィラメントの乾燥が早く衛生的に良いが、中実部分では、乾燥が遅く衛生的でない部分もあり不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、毛先が合成樹脂製のフィラメントを束ねて毛束とし、そのフィラメントの基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメントを植毛台の植毛穴に植毛した歯ブラシにおいて、前記フィラメントの先端部をテーパー状にすると共に、そのフィラメントの基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で形成されていることを主要な特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
毛先が合成樹脂製のフィラメントを束ねて毛束とし、そのフィラメントの基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメントを植毛台の植毛穴に植毛した歯ブラシにおいて、前記フィラメントの先端部をテーパー状にすると共に、そのフィラメントの基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で形成されているので、歯間部や歯と歯茎の境目、或いは、その周辺に蓄積した除去しにくい歯垢の清掃能力を高めると共に、歯茎への当たり具合もソフトで使用感に優れ、又、フィラメントの乾燥性が速いので菌やカビの発生が抑制されるので、衛生的に良いことやフィラメントの単位当たりの重量が軽いため、コスト的に安価な歯ブラシを効率的に供給することができる優れた歯ブラシが得られるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る歯ブラシの概略の側面図である。
【図2】(a)毛先にテーパー処理をしたフィラメントの側面図。 (b)毛先がテーパー処理されたフィラメントの植毛方法の側面図。 (c)毛先がテーパー処理されたフィラメントの植毛した断面図。 (d)ハンドルに毛束を植毛した断面図。
【図3】(a)本発明に係るフィラメントの拡大図(片側テーパー状)。 (b)本発明に係るフィラメントの拡大図(両側テーパー状)。
【図4】本発明に係るフィラメントの基部断面形状及び中空部断面形状の拡大模式図である。
【図5】変形例を示す図である。
【図6】変形例を示す図である。
【図7】本発明に係る歯ブラシの概略の側面図の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面に基づき本発明の実施例を説明する。図1は、本発明による歯ブラシに適用した1例を示している。参照符号1は歯ブラシの毛束1であり、この毛束1の中央部を折り曲げてU字型にし、針金などの係止片3と共にハンドル2のヘッド部の植毛穴4に挿入固定され歯ブラシを構成している。前記毛束1は、先端をテーパー状に加工すると共にフィラメントの基部の断面形状及び中空部の断面形状を異形形状としたフィラメント5を用いて長手方向に集束し、フィラメント5の中央部を折り曲げて係止片3と共にハンドル2のヘッド部植毛穴4に挿入などの方法により形成したものである。
【0011】
フィラメント5に使用している合成樹脂製の材質としては、ポリアミド(6、6―ナイロン、6―ナイロン、12−ナイロン、6、10−ナイロン、6、12−ナイロンなど)とポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなど)、アクリル(モダクリルなど)などを用いることができるが、使用するフィラメント5の材質は同一であっても異なっても良い。例えば、フィラメント5に、曲げ強度(吸湿時)の柔らかいポリアミド系の材質と曲げ強度(吸湿時)の硬いポリエステル系の材質のものを混毛して用いれば、ポリアミドの材質が歯茎に対してソフトなタッチになり、又、ポリエステルの材質が耐久性を良くすると言った、相反する結果が得られることもある。
【0012】
この毛束1に用いるフィラメント5の直径Dは、製造用途又は大きさ(直径及び長さ)によっても異なるが、本発明に係わる歯ブラシの毛束1におけるフィラメント5の直径Dは、0.15mm〜0.30mmのものを用いることが好ましい(図3参照、図3a)片側テーパー状、図3b)両側テーパー状)。尚、ここで言うフィラメントの直径Dとは、テーパー加工されていない部分の直径を言うものである。又、フィラメント5の直径Dがこの範囲の中であれば何種類使用して良い。
【0013】
前記合成樹脂製のフィラメント5を先端から後方に向けてテーパー化したフィラメント5となすには、化学処理液による方法が好ましく、その具体的一例としては、ポリアミドに対してメタクレゾールと塩化カルシウム−メタノール溶液との混和液、ポリエステルに対して水酸化ナトリウムなどの組合せが挙げられる。
【0014】
又、上記の方法でフィラメント5をテーパー化するが、そのテーパー状にするフィラメン5は、片テーパーであっても両テーパーであっても構わない。
【0015】
毛先が合成樹脂製のフィラメント5を束ねて毛束1とし、そのフィラメント5の基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメント5を植毛台の植毛穴4に植毛した歯ブラシにおいて、フィラメント5をテーパー状に加工する目的は、テーパー状に加工することで、先鋭化された部分が歯間部や歯と歯茎の境目の清掃能力を良くし、歯茎への当たり具合もソフトにすると共に、さらには、テーパー状に加工することで、先鋭化された中空部が表面に突出して、テーパー部に凹凸が生じることで歯間部や歯と歯茎周辺に蓄積した除去し難い歯垢の清掃能力も高めるものである。
【0016】
毛先が合成樹脂製のフィラメント5を束ねて毛束1とし、そのフィラメント5の基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメント5を植毛台の植毛穴4に植毛した歯ブラシにおいて、前記フィラメント5の基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%であるフィラメント5を使用する目的は、前記にも記載したようにテーパー化された部分が歯間部や歯と歯茎の境目、或いは、その周辺に蓄積した除去しにくい歯垢の清掃能力を高めると共に、歯茎への当たり具合もソフトで使用感に優れ、又、フィラメント5の断面形状の中空部形状がフィラメント5の外部及び中空部の貫通孔に空気が流通し易くするので、フィラメン5の乾燥性を速くし、菌やカビの発生が抑制されるので、衛生的に良いことや、フィラメントの単位当たりの重量が軽いため、コスト的に安価な歯ブラシを効率的に供給することができる優れた歯ブラシが得られるものである。尚、前記フィラメント5の基部の断面面積とは、中空部の断面面積を含む面積である。
【0017】
又、フィラメント5の基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20%に満たないと空間率が低いがゆえに、フィラメント5の中空部の空気の流通が悪くなり、乾燥性が低下して菌やカビが発生し易くなり、衛生的に良くないことやフィラメン5の単位当たりの重量が重くなり、コスト的に安価な歯ブラシを提供することができないといった問題もある。
さらに、フィラメント5の基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が80%を超えると空間率が高いので、フィラメント5の乾燥性を速くし、菌やカビの発生を抑制し易くなり、又、フィラメン5の単位当たりの重量が軽くなるので、コスト的に安価な歯ブラシを提供できる半面、空間率が高いがゆえに、フィラメント5を形成している樹脂部が少なすぎて、つまり、厚さが薄くなりすぎてしまい、テーパー化するのが困難であることや、使用時に空間が大きくなりすぎて耐久性が弱く、また、腰が弱くなるといった問題もある。
【0018】
ここでフィラメント5をテーパー化して毛束1となすには、フィラメント5の先端からのテーパー部の長さが重要であり、その範囲としては、2.0mm〜8.0mm程度が好ましい。
ちなみに、フィラメントの先端をぶつ切りにしたものや、フィラメントの先端部を機械的に研摩によって形成されたテーパー部は、せいぜい1.0mm程度しかないため、歯間部に入り難く、充分な清掃効果が得られなかったり、歯や歯茎を傷めるといった問題もある。
【0019】
又、前記フィラメント5の基部の断面形状及び中空部の形状が異形形状であることが好ましい。フィラメント5の基部の断面形状が丸型形状であると歯間部にフィラメント5が入り難くなり、歯間部の清掃能力が低下してしまうからである。一方、前記フィラメント5の基部の断面形状が異形形状にすることでフィラメント5のエッジ部が歯間部に入り易くなり、歯間部の清掃能力が向上するものである。
【0020】
又、前記フィラメント5の断面における中空部の数が2つ以上であることが好ましい。フィラメント5の中空部の数が2つに満たないとフィラメント5の中心部に樹脂部が形成されないので、使用頻度によっては、フィラメント5の先端部が割れやすくなり、耐久性が低下するからである。フィラメント5の中空部の数は、フィラメント5の基部の断面面積に対して、中空部の断面面積の割合が80%を超えなければ、数に制限はなく、いくつ存在しても良い。
【0021】
尚、今回は、フィラメント5の断面形状及び中空部の形状が異形の1種類のものを使用したが、これに限られることではなく、例えば、基部の断面形状及び中空部の形状が異なるものを混毛して使用して、歯ブラシを構成しても良い。
【0022】
又、前記フィラメント5において、基部の断面形状が丸型で中空部の断面形状が異形形状のものも使用できる。さらには、基部の断面形状が異形形状で中空部の断面形状が丸型形状のものを使用しても良い。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図2(a)において、フィラメント5の両端にテーパー加工したものを用い、そのフィラメント5の基部の断面形状及び中空部の断面形状が異形形状にすると共に、そのフィラメント5の基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で、それぞれ特定される形状のフィラメント5を長手方向に集束し配置して、毛束1を形成したものである。
【0024】
図2(d)に示すように、前記毛束1の中央部を折り曲げてU字型にし、針金などの係止片3と共にハンドル2のヘッド部の植毛穴4に挿入固定して歯ブラシを構成した。
前記毛束1は、前記フィラメント5の両端にテーパー加工を施し、そのフィラメント5の基部の断面形状及び中空部の断面形状が異形形状にすると共に、そのフィラメント5の基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で形成された形状のフィラメント5を用いたものを表1に示すと共に、表2に実施例1〜12、並びに、比較例1〜8に示す。
尚、フィラメント5の中空部の断面形状は、丸型のものを含め、図4〜図6に示すとおりであるが、図4に示す例は中空部の断面形状が四角形(4つ穴)であり、図5に示す例は丸型エッジ付き(6つ穴)であり、図6に示す例は三角形(3つ穴)である。
【0025】
【表1】



【0026】
【表2】

【0027】
上記実施例1〜12、並びに、比較例1〜8の毛束1を用いて、図1に示す歯ブラシを形成し、ブラッシング試験を行った。
【0028】
ブラッシング試験(モニター試験)
方法:任意に抽出したモニターに実際に歯ブラシを使用してもらい、使用性についてのモニター調査を実施した。その結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【符号の説明】
【0030】
1 毛束
1a 毛束溶着部
2 ハンドル
3 ピン
4 植毛穴
5 フィラメント
6 片テーパー部
7 両テーパー部
8 フィラメントの基部の断面形状及び中空部の断面形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛先が合成樹脂製のフィラメントを束ねて毛束とし、そのフィラメントの基部の断面形状が中空形状を有しているフィラメントを植毛台の植毛穴に植毛した歯ブラシにおいて、前記フィラメントをテーパー状にすると共に、そのフィラメントの基部の断面面積に対して中空部の断面面積の割合が20〜80%で構成してなる歯ブラシ。
【請求項2】
前記フィラメントの基部の断面形状及び中空部の形状を異形形状であることを特徴とした請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記フィラメントの断面における中空部が2つ以上であることを特徴とした請求項1〜請求項2に記載の何れかに記載の歯ブラシ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−125533(P2011−125533A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287714(P2009−287714)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】