説明

歯列矯正アライナー器具の直接製造

【課題】歯列矯正器具、特に歯列矯正アライナーを提供する。
【解決手段】本願は、ポリマー材料のレイヤーバイレイヤープリンティングを用いた、アライナーなどの、歯にフィッティングするキャビティを有する歯列矯正器具の直接的な作製方法である。器具のキャビティは、複数の層の境界によって画定され、患者の最大14個の歯を包含し、少なくとも1つの歯に、歯を移動させ、かつ近傍の骨を再構築するのに十分な加重を与えるように形作られる。そのような一連の器具は、歯の不正咬合を治療するために使用されてよく、1つまたは複数の歯を初期の位置から望ましい最終位置に向かって徐々に移動させるために、順次使用される、各々直接製造される器具である。器具は開示された様々な材料で作製されてよく、他の歯列矯正要素と協働する補助装置を含んでよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その開示が全体を参照することによってここに組み込まれる、2011年10月12日に出願された米国出願第61/546,554号の優先権を主張する。
【0002】
本出願は、歯列矯正器具、特に歯列矯正アライナーに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の歯列矯正治療では、歯科矯正医または助手は、歯列矯正ブラケットなどの歯列矯正器具を患者の歯に取り付け、各ブラケットのスロットにアーチワイヤーをはめ込む。アーチワイヤーは、歯列矯正的に正しい位置に歯を強制的に移動させる強制力を加える。アーチワイヤーを各々のブラケットスロット内部に保持するために小さな弾性O−リングまたは微小金属ワイヤなどの従来の結索手段が用いられる。個々の結索手段を各々のブラケットに適用する際に生じる困難さに起因して、アーチワイヤーをブラケットスロット内部に捕らえるための可動ラッチまたはスライドを用いて結索手段の必要性を排除する、自己結索歯列矯正ブラケットが開発されてきた。
【0004】
従来の歯列矯正ブランケットは、強くて、非吸収性であり、溶接可能であり、比較的成形加工し易い、ステンレス鋼から通常形成される。しかしながら、金属の歯列矯正ブラケットを用いた歯列矯正治療を受ける患者は、美容上好ましくない金属の外観を恥ずかしく思うかもしれない。金属ブラケットの外観の悪さを解決するために、従来のある歯列矯正ブラケットは、その下の歯の色または影を装う、透明または半透明ポリマーまたは透明または半透明セラミックなどの、透明または半透明の非金属材料のブラケット本体を組み込む。
【0005】
歯列矯正ブラケットに代わるものとして、他の透明または見えにくい歯列矯正器具が挙げられる。これらの中で最も一般的なのはいわゆる「アライナー」であり、これは治療の間患者による交換が可能である。歯科医は一連のアライナーの使用を処方する場合があり、これは一般的には患者の歯の上に配置され、ただし、それ自体は接着固定されておらず、または他の方法では患者の歯に取り付けられ、1つまたは複数の歯をその元々の位置から審美的に好ましい位置に移動する。アライナーによって生成される動きの程度は限られているため、典型的には、患者を完全に治療するために一連のアライナーが必要とされる。そのように、一連のものとして使用されるとき、その中の各々のアライナーは、治療プロセスの一部を満たし、または1つまたは複数の歯を所定の位置に向かう全距離の一部にわたって移動するように設計されてよい。
【0006】
そのようなアライナーの1つは、Align Technology,Inc.によるInvisalign(登録商標)システムである。Invisalign(登録商標)システムは、患者によって装着される着脱可能なアライナーを含む。一般的に、このアライナーは、着脱可能なように上顎の歯および/または下顎の歯の上に配置される、透明または半透明ポリマー歯列矯正器具である。このシステムによれば、治療の進行につれて、患者は特定の処方による1つのアライナーを外し、第2の、異なる処方による他のアライナーと置き換える。各々のアライナーは、最終的な所定の、または審美的に正しい位置に歯を移動するのに関与する。
【0007】
Invisalign(登録商標)アライナーは、物理的におよびコンピュータ支援成形法によって作製される。この方法は、ポリビニルシロキサン(PVS)などの適切な印象材を用いて、患者の歯列の印象を形成することで始まる。歯列の型はCTによってスキャンされ、そこからコンピュータが、患者の歯および歯肉の3次元デジタルポジティブモデルを作成する。一連の治療段階において、その次の望ましい歯の配置を反映する歯列矯正器具を作るために、望ましい配置にある患者の歯列を反映する新たな3次元モデルが作られなくてはならない。これは、3次元の石膏モデルの歯の形状をコンピュータ支援設計システムに取り込むことを含む。次いで、コンピュータ支援設計システムにおいて、歯はコンピュータ化された方法によって分離され、望ましい配置に置き直される。結果として得られる、望ましい配置を有する患者の歯列のコンピュータ化されたモデルが、歯の配置の物理モデルをプリントするために使用される。最後に、ポリウレタンなどの、アライナーを形成する透明なプラスチックが、歯の配置の物理モデルの上に成形される。その後の物理的段階において、成形されたアライナーは切り取られ、歯肉に接触し、刺激する可能性がある鋭い端部または部分を取り除く。さらに、アライナーの表面および端部は、典型的にはタンブリングなどの処理を通じて平滑化される。
【0008】
ある場合には、アタッチメントによって歯に対するアライナーの結合が容易になる。Invisalign(登録商標)法において、アタッチメントは、患者の歯の初期の位置に整合する型により熱成形されるテンプレートアライナーを用いて配置される。テンプレートアライナーとして薄い材料を使用することができるので、テンプレートアライナーが、通常のアライナー程硬く、または保持力を有することがない。各アタッチメントに対して、「ウェル」または「ポケット」がテンプレートアライナーに形成される。これらの「ウェル」にはアタッチメントの複合材料が充填され、テンプレートは患者の歯列弓の上に完全に配置される。次いで各々のアタッチメントは、製造者の指示に従って硬化される。テンプレート内の全てのアタッチメントが硬化されたとき、テンプレートは取り外され、フラッシングがカーバイドバーまたはストーンフィニッシングバーで取り除かれる。
【0009】
以上のように、アライナーの作製は、患者にとって費用および治療時間の双方が負担となる単調作業である。そのような歯列矯正治療は、例えば治療進行の25段階を示す25個の中間リセット型を必要とし、型作製、アライナー形成、およびトリミングに必要な段階に要求される費用および時間は、法外なものである。費用は追加式であり、治療における新たな段階の各々に、または治療における変更の各々に、新たな型の製造が必要とされる。同様に、治療全体にわたって、各々の患者に関する一連の型を保存する費用は莫大である。
【0010】
Invisalign(登録商標)製品の事業主に与えられ、その全体が参照によってここに組み込まれる、米国特許第5,975,893号は、前述された方法を記述し、さらに、発明の概要の最後において(カラム7、15−29行目)、「本発明による歯科器具を作製するための方法は、患者の矯正された歯列を表す第1のデジタルデータセットを提供する段階を含む。次いで、第2のデジタルデータセットが第1のデジタルデータセットから作成され、ここで第2のデータセットは矯正された歯列のネガティブモデルを表す。次いで、作製装置が第2のデジタルデータセットに基づき制御され、歯科器具を製造する。作製装置は通常未硬化樹脂の選択的硬化を用いて器具を製造する。器具は、典型的には、初期の歯列から矯正後の歯列へと、歯を受容しかつ弾性的に再配置するためのキャビティ形状を有するポリマーシェルを含む。」と記載される。この特許文献は、そのような器具の形状をどのように形成するか、またはどのような材料が使用されるかを示す、この記載に伴う開示を与えない。また、商業的な実施において、この特許の特許権者は、前述したように、常に間接的に、ステレオリソグラフィーによって作られる歯のモデルからアライナーを形成してきた。
【0011】
アライナーによる不正咬合の治療は、製造の困難さ以外の難しさに直面している。具体的には、アライナーに存在するアタッチメントの開口がInvisalign(登録商標)製造法と整合して取り得る限られた数の形状の結果として、アタッチメントで固定されたアライナーは、取り付けが非常に難しいことが分かる。具体的には、アタッチメントの開口は、ステレオリソグラフィーによって作られた歯のポジティブモデルの上に熱成形によって形成されなくてはならず、これが作られ得る開口のタイプを限定する。さらに、アライナーはアタッチメントに連結され、取りはずすのが非常に難しいのが分かる。
【0012】
さらに、アライナーを使用する多くの患者について、患者の口内のアライナーの存在が上顎と下顎との間の咬合の点を変える原因となり、特に咬合ガイダンスを後臼歯に移動させる。これは、患者の咬合を開かせ、後臼歯上の不釣合いな咬合力の結果として、典型的には後臼歯に入り込む。これの1つの結果として、アライナーが存在しない場合には下顎の力がもはや後臼歯の抵抗を受けないので、アライナーを外した後に、顎関節損傷が起こり得る。
【0013】
多くの患者に関して、ポジティブモデル上に手作業でまたは熱成形によって作製されるアライナーは、不快であり、かつ柔らかい組織が炎症し、および将来的には出血し得るようになるまで歯肉および/または舌を刺激する可能性がある。この不快感は、一般的には、アライナーが患者の歯肉縁に対して不正確にトリミングされているために生じる。トリミングにおける不正確さは、一般的には、特に前方の舌側(ここで、アライナーが舌と干渉する)での、トリミング器具の最小寸法によって生じる。切歯乳頭などの他の生体組織も、一般的には考慮されないが、アライナーをトリミングするとき、腫れまたは炎症を引き起こす可能性がある。さらに、アライナーがトリミングされる位置が、歯肉縁の近く、特に舌側において、アライナーの底部に鋭いフランジが形成される原因となり得る。
【0014】
一連の歯の配置に対応するよう構成されたアライナーを具現するための、代替となる装置および方法を提供することが望ましい。そのような器具および方法は、経済的であり、再利用可能であり、時間の浪費を抑え、材料の消費を低減し、かつ、特に、歯列矯正治療の各段階に関して歯の配置に関する複数の成形物を作製する必要性を低減する。これらの目的のうち少なくとも幾つかは、並びにその他のものは、この後に記載される本発明の器具および方法によって達成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国出願第61/546,554号
【特許文献2】米国特許第5,975,893号
【特許文献3】米国特許第6,616,444号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本願は、ポリマー材料のレイヤーバイレイヤープリンティングを用いた、アライナーなどの、歯にフィッティングするキャビティを有する歯列矯正器具の直接的な作製方法の詳細な記載を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
開示される特定の実施形態において、歯にフィッティングするキャビティは、複数の層の境界によって画定され、患者の最大14個の歯を包含し、少なくとも1つの歯に、歯を移動させ、かつ近傍の骨を再構築するのに十分な加重を与えるように形作られる。そのような一連の器具は、歯の不正咬合を治療するために使用されてよく、1つまたは複数の歯を初期の位置から望ましい最終位置に向かって徐々に移動させるために、順次使用される、各々直接製造される器具である。
【0018】
その代わりに、器具は、器具のキャビティによって規定されるように歯の位置を保持するリテイナーであってよい。
【0019】
器具は単一の材料で形成されてよく、または、各材料が器具の一部を形成する、第1および第2のポリマー材料の層を含んでよい。他の方法では、スティフナーなどの第2の器具、またはワイヤまたはゴムの弾性部材が、接着的に、または他の方法で、直接製造された器具に結合されてよい。
【0020】
直接製造法は、熱形成された器具で可能であったものと比較して、器具が幅広い特徴および機能を有することを可能にする。例えば、直接製造された器具は、患者の歯の上のアタッチメントに連結する開口を含んで製造されてよく、または器具全体にフックまたはボタンなどの補助装置を有してよい。歯列矯正の機能を得るために、ゴムバンドなどの弾性要素とともに用いられてもよい。補助装置は、歯列矯正ブラケットのような、歯に取り付けられた第2の器具に整合するキャビティ、または歯冠に整合する器具からのカットアウト部であってもよい。
【0021】
直接製造される器具は、一定の厚み、または前述されたような、および機械的に/歯科矯正的に有効な様々な厚みを含む、歯のキャビティまたは他の特徴部が位置関係的に制御された厚みを有するように製造されてよい。さらに、咬合面は、例えば歯のガイディングランプ(guiding ramp)を作るため、例えば器具の末端部では厚く器具の中心に近い部分では薄いなど、変化する厚みを有して形成されてよい。これにより、例えば、睡眠時無呼吸症に関して舌および軟口蓋を塞がないようにすることができる。さらに、咬合面は、非咬合面と比較して、補強された厚みを有して作られてよい。
【0022】
ある実施形態において、日中および夜間の器具は、本発明の原則に従って作られてよく、交互に装着される。夜間の器具は、日中の器具と比較して厚みを有してよく、例えば日中の器具は0.15mmのような小さな厚みを有してよく、夜間の器具は最大1mmの厚みを有してよい。その代わりに、またはそれに加えて、日中および夜間の器具は異なる材料であってもよい。
【0023】
本発明の原則に従って作られた器具は、透明であってよく、または望ましい歯の外観に着色されてよい。器具は、患者または歯列矯正の施術者による参照のために器具に一体化して形成される、数字、文字、または記号などの、連続する識別子を有して形成されてもよい。
【0024】
上述の方法によって作られた器具は、ポリウレタンまたはここに特定される様々な他の材料で形成することができる。特定の実施形態、または特定の材料において、器具製造は放射エネルギー硬化段階を含んでよい。電子ビーム架橋が同様に使用されてよく、器具の様々な部分に様々な程度で選択的に使用されてよい。
【0025】
器具を形成するのに使用されるコンピュータ化された方法は、下顎トラフの数学モデルを形成する段階、そのトラフに歯の形状を並べて歯の配置を形成する段階、およびその歯の配置から器具を作り出す段階を含んでよい。器具は、歯冠から離れた表面を生成し、自身と交差する表面を解決することによって形成されてよい。
【0026】
器具の製造者は、歯列矯正の施術者のオフィスまたは患者の自宅または職場など、デジタルモデルが作成される場所から地理的に離れた場所にいてよく、患者および歯列矯正の施術者に対して器具をより迅速に配送することを可能にする。
【0027】
本発明は、患者の歯に取り付けられている間、器具からの光の屈折を評価することによって、器具の応力を評価することをさらなる特徴とする。
【0028】
この明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を説明し、以下の詳細な説明とともに、本発明の様々な局面を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を実施するのに適する3Dプリンターを示す図である。
【図2】本発明の原則による製造方法のフローチャートである。
【図3】図2の方法による、図1の3Dプリンターを用いて形成されたアライナーの図である。
【図4】図2の方法による、図1の3Dプリンターを用いて形成されたアライナー上のボタンとともに用いられる弾性体の図である。
【図4A】図2の方法により形成され、患者の歯に位置決めされたアライナーの側面図であり、補助弾性体実装および弾性体の使用を示す。
【図4B】図2の方法により形成されたアライナーの断面図であり、補助弾性体とともに使用する補助ボタンを示す。
【図5】その全体が参照によってここに組み込まれる米国特許第6,616,444号にさらに詳細に説明されるような、望ましい歯の位置のコンピュータ化の一部として、患者の下顎骨の延髄中央および特定の傾きでの下顎歯の長軸の頂部の配置および下顎トラフ内中央の舌根を記述する方程式の計算を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一般的に、本発明の1つの実施形態は、図3および4に記載されるように、所定の治療計画に従って歯の移動を可能にする直接製造される歯列矯正器具を含む。特に、歯列矯正器具は、最終的な、歯列矯正的に正しい、審美的に望ましい位置に向かって歯の全体的な幾何学的配置を改善するように、ある方向から他の方向に1つまたは複数の歯を移動する。本発明の1つの実施形態において、一連の個々の歯列矯正器具が完全な歯列矯正治療のために使用されてよい。したがって、一連の器具の各々は1つまたは複数の歯を所定の量移動させてよい。累積的に、これらの個々の量は、患者の不正咬合の完全な治療をもたらし得る。
【0031】
例示のみを目的として、ある実施形態において、歯列矯正器具はアライナーを含んでよい。そのようなアライナーは、従来技術で使用されるものと同様であってよいが、アライナーが作られる方法が異なり、詳細な特徴は以下に記載されるようなものである。アライナーは、下顎または上顎の1つにある複数の歯にフィットするか、または包むように構成されてよい。
【0032】
1つの実施形態において、アライナーは、正しく配置されていない位置から、歯列矯正的に正しい位置に向かって1つまたは複数の歯を移動させることによって患者の不正咬合を治療するために処方された一連のアライナーの1つ、またはその一部であってよい。例えば、本発明の1つの実施形態によるアライナーは、ある位置から他の位置に単一の歯、または幾つかの歯を移動させてよい。この移動は、開始時の位置および最終的な位置を含む治療計画により予め決定されてよい。開始時の位置は、治療が開始する前の初期位置か、またはその後の任意の、その前のアライナーまたは他の歯列矯正器具によって決定される中間的な歯の位置であってよい。一連のアライナーのうちの任意のアライナーに対する最終的な位置は、開始時の位置と最終的な位置との間の中間の位置を含んでよく、または治療の結果として得られる歯の機能的にかつ審美的に好ましい位置であってよい。
【0033】
本発明の1つの実施形態において、不正咬合を治療するシステムは、所定の治療計画を満足するのに十分であるようにその配置が異なる一連のアライナーを含んでよい。各々のアライナーは、1つまたは複数の歯を正しくない位置から審美的に正しくかつ最終的な配置に向かって徐々に移動させる。
【0034】
本発明の実施形態が、患者の歯に接着剤などで固定されないアライナーを含む一方で、本発明の実施形態による器具が、患者の歯に接着されて固定されてもよいことは理解されるだろう。具体的には、実施形態の器具は、歯列矯正治療の間、他の歯列矯正器具に、および/または患者の歯に、接着されて結合されてよい。さらに、図示されていないが、器具が、上顎および下顎のどちらか、または両方で交互に使用されてよいこともまた理解される。
【0035】
例示によれば、アライナーは、アライナーが配置される顎上の1つまたは複数の歯に実質的に共形であってよい。アライナーは各歯の反転形状を包むか、またはほぼ複製する。しかしながら、歯の全ての面上でアライナーと整合しないか、または共形ではない、アライナーと接触する歯が存在し、アライナーがそれらの歯を、アライナーが歯の表面と一致しない方向に大幅に移動する。
【0036】
図1は、本発明の原則による器具の直接製造に適する3Dプリンター10を説明する。図1に示されるプリンターは、Dimension Inc.(Stratasys,Inc.の子会社。住所は、7665 Commerce Way,Eden Prairie,MN 55344−2020,US)のDimension Elite 3D Printerである。このプリンターは、SR−30可溶支持材料を用いて、P430 ABSポリマーでプリントする。プリンターの形成サイズは、3次元において200mm超であり、これはアライナーまたは他の口腔フィッティング器具のプリンティングを容易に満足し、実はこれは幾つかのアライナーまたは他の器具を同時にプリントするのに使用することができる(一連のアライナー全体またはその一部のアライナーなど)。プリンターによってプリントされる層の厚みは、歯列矯正器具には十分な寸法の正確さを有して、0.178mmまたは0.254mmである。このプリンターは試作品を目的とするには有効であるが、高速処理および大きな外面のため、製造については、StratasysがFortus 3D製造システムを提供する。さらに、これらの製造システムは、3次元プリンターと比較して最大300%の強度の部材を作る。
【0037】
図2は、段階的に歯の位置を調整する器具の直接製造のフローチャートを説明し、各々が歯列矯正治療計画の各段階を表す。この方法は、以下を含む。
【0038】
段階100
患者の初期の歯の配置および歯肉組織を表すデータセットを得る段階。この段階は、その全体が参照によってここに組み込まれ、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第6,616,444号に開示される方法によって一般的に実行される。
【0039】
段階102
ここに組み込まれる米国特許第6,616,444号によって開示される方法で、その初期の配置に位置する各々の歯の個々のデータセットを得るために、歯を分ける段階。歯が、使用される固定された部分的器具を有する、参照する特許に開示される方法に加えて、バーチャルな歯のモデルの本体が、口内に装着されたときアライナーが固定されたバンドを覆うように、固定されたセクショナル器具のバンドを組み込むように拡張されてよい。所定の場所で、固定された器具を有する歯について、境界は固定された器具のタイプによって決定される。アライナーは、固定された器具を覆うように設計することができ、アライナーの一部分は取り外されてよく、または舌側および頬側の双方の組み合わせとすることができる。セクショナルバンドの場合、舌側の境界は歯肉に沿ってよいが、アライナーセクションは、固定されたワイヤがセクショナルバンドと連結することを可能にするように、ボタンと同様に頬側で取り外されてよい
【0040】
段階104
咬合方向に約0.5mm離れた、患者の舌および唇側歯肉を表す視覚的境界を生成する段階。この境界は、器具の基部を表し、特定の間隔で配置される制御点を用いて編集することができる。制御点は必要に応じて加えることができ、削除することもできる。
【0041】
段階106
下顎トラフモデル計算を用いて、理想的な最終位置を表す個々の歯の配列、およびここに組み込まれる米国特許第6,616,444号に開示されるようにその中での歯の配置を生成する段階。その代わりに、最終的な位置は、選択されたものを並べる視覚モデルにおいて歯を移動する手作業によって、選択されたアーチワイヤーに最もよく適合するように自動的に歯を並べることによって、または任意の他の手作業の、部分的に自動的な、または完全に自動的な方法で、生成することができる。
【0042】
段階108
アライナーによって生成することができる歯の移動を組み込む、初期の、および最終的な配列の間の歯の中間的な配列を生成する段階。
【0043】
段階110
器具が歯にフィッティングされるとき、特定の歯の形状に様々な3次元のアタッチメントを付加する段階。
【0044】
段階112
「外(out)」をオフセットすることによって、または各歯冠面から約0.05mm以上シェリング(shelling)し、任意の自己交差面を解決することによって、バーチャルな器具の内面を生成する段階。隣接する歯冠がそれらの間に十分な空間を有するとき、器具の内面は歯冠の近心/遠心面および歯冠間の歯肉面をオフセットする。距離が約0.10mm以下のとき、内部面は咬合面に近い交差面で終わる。器具外面の計算値は、内面から一時的に0.762mmオフセットしているが、個々の歯のプログラムされた移動に依存して、全体的に、または目的の位置において、増やすことができ、または減らすことができる。
【0045】
段階114
器具の基部を形成するために、バーチャルな器具に、予め計算された境界を適用する段階。
【0046】
段階116
もしも器具がボタンおよび弾性体などの補助装置(図4、ボタン202および206および弾性体210、図4Aおよび4B、ボタン304および320および弾性体306)および/またはセクショナルを有して使用される場合、バーチャルな器具形状を変更する段階。一般的に、もしもボタンまたはブラケットが歯に接着され、器具がその場を覆う場合、器具はボタン/ブラケットの配置を容易にするカットアウトを有する。カットアウトは境界を変更することによって具現することができ、一般的に咬合に向かって半楕円形状を有し、したがって器具はボタンを回避するよう形成される。ボタンに取り付けられる弾性体を使用するとき、器具はアンカーを必要とし、弾性体を器具に固定できるようにする。器具アンカーはフックの形状を有してよく、これは器具300のフック302から、歯に固定されたボタン304に伸びる弾性体306を説明する図4Aに一般的に説明される、長さ約2mm、幅約0.25mmの、ホッケースティックと類似の形状を有する器具のカットアウトである。器具アンカーは、図4Bに説明されるように、代わりに器具300の表面に一体的に形成されたボタン320の形態を有してよい。
【0047】
個々の歯の移動以外の目的でアライナーと一体的に製造される補助装置および補助的な取り付け具は、以下を含む。
A.上述の、図4、4A、4Bに示される弾性体を引っ掛けるボタンまたは器具。
B.睡眠時無呼吸症候群を是正するための、舌誘導器具。
C.機能性装置を取り付けるための、図4Aに示される、フック302などの他のアタッチメントポイント。
D.Class II コレクションランプ、例えば、ジョンソンツインブロック。
【0048】
段階118
切歯乳頭および後臼歯から離れた歯肉組織などの自然の組織を避けるために必要とされるとき、器具の基部をさらに操作する段階。
【0049】
段階120
編集が終了したとき、製作機械を制御して器具を製造するためにバーチャルな器具目的物を用いる段階。108−120を繰り返すことによって、初期位置から最終位置へとつながる、一連の歯科器具が製造される。
【0050】
段階122
必要に応じて、器具の製造に使用される製作機械に依存して、器具の透明さを改善するために、各器具を後処理する段階。3Dプリンティングマシンは、一般的に表面平滑化を必要とし、これはシリコン結晶を用いたタンブリングまたは適切な研磨剤での研磨、およびその後のUVポリマー化透明コーティングの塗布など、多くの機構によって実施することができる。材料に依存して、SLA機械で作製された器具は過剰な材料を取り除くために回転され、その後材料を硬化するために放射エネルギーオーブンで焼成されてよい。材料を硬化する処理によって、SLAにより形成された線も除かれ、invisalignアライナーと同様にビルドラインによる傷がない、結果的に透明なアライナーが生成される。
【0051】
SLAおよびポリジェット印刷機に使用可能な透明材料は、一般的に熱成形ポリウレタンと同じ性質を持たない。透明なポリウレタンの器具は、一般的には厚み0.020−0.035インチに熱成形され、歯の移動に必要な元々の形状を保持し、必要な時間にわたって位置を保持するのに十分な引張強度および弾性を有する。材料の相違を調整するために、本発明の原則により直接製造された器具は、移動が予定される歯の周囲に十分な強度を提供するために制御された厚みを有する。
【0052】
代替的な製造方法が、熱成形ポリウレタンと比較して、同じか、または潜在的により有利なアライナー材料性能を提供するために使用されてよい。SLAまたは3D印刷機を用いる前述のアライナーの直接製造法よりもむしろ、アライナーのデジタルモデルは、ラピッドインジェクションモールディングにおいて使用される慣例と同様に、射出成形用の型として生成されることもできる。
【0053】
さらに他の作製方法は、歯の配列のポジティブ型よりもむしろネガティブ型を製造することであり、ネガティブ型をアライナーの熱成形において使用することができる。
【0054】
結局のところ、材料の厚みが増えると、器具は口内で目立つようになり、したがって装着時に透明かつ気付かれないという当初の目標の1つを達成しない。そのような場合、一連の厚い器具は、予定の移動を実現するために夜に装着されるように製造することができ、一連の透明な0.02−0.035インチの器具が製造され、夜の間に生じた移動を保持するために昼の間装着される。この昼夜の器具の組み合わせによって、予定された移動は、現在市販される器具によって一般的に実現され得るものと比較して、より有効に実現される。
【0055】
上述の方法によって、特定の位置において器具の厚みを直接制御することが可能になるので、以前は予測できなかった移動は、アライナーの目標とする位置において、厚い材料を用いることの利益を得ることができる。
【0056】
さらに、器具を形成する方法がデジタルであるため、前述の方法は、中心地で形成された器具のモデルに基づいて、世界中の戦略的に選択された位置において、分散された製造を可能にする。
【0057】
上述の方法によって形成される器具には、患者識別番号、ロゴ、および作製されたアライナー材料により白い、修正された歯を提供するカラーリングなどの、装飾的な、または識別用の特徴を組み込んでよい。さらに、アライナーの前面は、審美的に好ましい直線状の歯の外観を有して形成されてよく、一方でその中のキャビティは矯正のために患者の本当の歯を包む。
【0058】
上述の方法で作られた器具は様々に架橋されてよい。具体的には、材料の架橋は最適な歯の移動に関して粘弾性挙動を示すように調整することができる。架橋は、理想的な粘弾性挙動を得るために、アライナーを形成する材料内で制御することができる。特に、ウレタンは、電子ビームで選択的に架橋することができる。これは、様々なレベルでアライナーの様々な部分を架橋するために使用することができる。例えば、特定の歯のキャビティ、または取り付けフック近傍は、他の歯のキャビティまたは領域と比較して異なるように架橋されてよい。
【0059】
歯が粘弾性的に結合されることは理解される。アライナーは、歯周靱帯の可能な限界近くに歯を移動する。この移動は、最終的には、下顎または上顎の骨を歯の移動を可能にする組織に変換する細胞の応答を生じさせる。アライナー材料は、歯の粘弾性と、粘弾性的に相互作用し、この相互作用は歯が移動した場所にいるとき最適なバランスを有する。この効果が効いてくる前に、待ち時間が存在し、その後移動が極めて定期的に続き得る。なぜなら、細胞の一連の変化が始まっているためである。大人の場合、開始するための変化に2週間以上かかり、子供の場合はその時間が短い。アライナーの硬さおよび形状、取り換えのタイミングは、歯の移動の生理学を考慮しつつ調整することができる。
【0060】
本発明によるアライナーにおいて、歯のキャビティは、歯の表面と必然的に一体化するわけではない。むしろ表面は、移動が起こる方向に歯冠から離れて解放されてよく、かつ対向する面に近くてよい。これは、歯冠と共形の形状を有するキャビティと比較して有利な効果を有する。なぜなら、これは、歯と対向するアライナーのキャビティ壁からの力と釣り合うことなく、長時間にわたって、望ましい歯の移動方向に、大きな力を与えることを可能にするためである。
【0061】
本発明によるアライナーにおいて、他の有利な点は、アライナーがトリミングを必要としないこと、結果的にその段階を実施しないことである。アライナーの形成前に端部が電子的に取り除かれるので、具体的には、歯肉を傷つけ得る端部を回避するための段階を実施する必要がない。さらに、アライナーのタンブリング加工は、トリミングから形成される鋭い端部を取り除くことがタンブリングの主な目的なので、必要ないか、またはある程度だけ必要である。本発明のアライナーにおいて、端部は最初の段階で形成されない。
【0062】
本発明によるアライナーにおいて、歯に対するアライナーの間隔をプログラムにより制御することが可能である。これは、欠陥品の数を低減し、かつ/または製造をより効率的にする。
【0063】
本発明によるアライナーにおいて、アタッチメントに直接整合する形状でアライナーが直接製造されるので、アタッチメントの使用が改善され得る。例えば、直接製造されたアライナーは、従来のアライナーと比較して、アタッチメントにより密接に整合することができる。さらに、アタッチメントは結果的に小さく、それらが良好に連結するようになり、特徴および形状はアタッチメントに関してより最適化される。
【0064】
本発明によるアライナーは、力を加えたり、変更したりするための、アタッチメントに完全にフィットするソケットを含んでよい。或いは、アライナーは、208において他の歯のブラケットまたは歯に取り付けられた器具に取り付けられた、図4に示されるシャフト212などの機械的中間物への、図4に示されるブロック204によるもののように、機械的に結合される分離された部品で作ることができる。アライナーは、ハンドル、タブ、ラグ、およびカムなどの多くの加工された機構を含んでよい。
【0065】
本発明によるアライナーは、アタッチメントの取り付けを助ける、かつアタッチメントを外すのを助ける、複数の機構を含んでよい。アタッチメントを取り付けるためのヒンジばねは、かかる力を改善し、アタッチメントから外すのを容易にする。
【0066】
アライナーのアタッチメント相互作用機構の直接製造は、アライナーの取り外しに非常に大きな力を必要とすることが多い従来の方法と比較して、アライナーの取り外しに必要とされる力の量の制御を可能にする。
【0067】
アライナーの存在が患者の噛み合わせを開くため、アライナーを使用する多くの患者にとって、問題はアライナーが後臼歯に侵入することである。アライナーの取り外し後、下顎の力が後臼歯による抵抗を受けない結果として、TMJ損傷が起こることがある。これは、遠心の咬合面と比較して近心の咬合面に厚みを持たせることができる、直接製造器具において矯正することができる。図4Aを参照すると、器具300は、近心咬合面310と比較して、遠心咬合面308において厚い断面を有していることがわかり、その結果、器具の使用によりもたらされる近心領域310における臼歯の衝撃を軽減するように、アライナーの存在を相殺する。
【0068】
特定の状況において、アライナーの咬合面は、全体的な治療のために、または治療の間の特定の中間段階のために、幾つかの対象となる歯に関して全体的に移動され得る。そのような場合、アライナーの構造的完全性を確実にするために、そのような歯の本体上のアライナーの厚みを増やすことが必要である場合がある。
【0069】
さらにこの原則によれば、アライナーは機能性器具を形成することもでき、咬合器具表面は互いに対して傾いているので、咬合にクラス2の修正を与え、下顎を前方または後方に移動する。
【0070】
アライナーは、睡眠時無呼吸用の器具としての機能を有することもできる。この種の器具は、上顎または下顎器具上に傾きを有し、これは装着されたとき、下顎を前に駆動するよう相互作用する。(研究では2−3mmの下顎の動きは、睡眠時無呼吸の開始を生じ得る舌と軟口蓋との間の閉塞を防ぐのに十分であると示されている。)
【0071】
本発明によるアライナーは、舌が前歯を押さない状態を保持するために上部トレイの内部に舌架を含んでよい。(前歯の隙間を有する患者は、舌を保持する必要を有する場合が多い)。
【0072】
アライナーは咬合面を開くことが多い。本発明によるアライナーは、そのような開きを防ぐために、接点において、カスタムローディング面を有することができる。特に、歯ぎしりする患者は、このアライナーの強化に関する処方を受けてもよい。
【0073】
同様に、本発明によるアライナーにおいて、下顎トラフモデリングは、アライナー作製の一部として実施されてよい。組み込まれる米国特許第6,616,444号に詳細に説明される、および図5に説明される計算を用いて、下顎トラフの方程式は数学的に計算され、下顎骨の延髄中心を表す。これまで使用されてきたような前傾とは逆に、頂部長軸が特定の傾きであるように下顎歯は曲線状に配置される。これらの歯の中心留め具(頬側咬頭)は下顎トラフから誘導された他の平滑化方程式により配列され、歯の根が骨の中心にくるようにする。次いで、上顎歯は、すでに配置された下顎歯と咬合して配置される。上顎の後方の歯は、組み込まれる米国特許第6,616,444号に説明されるように、セントリックストップおよび臼歯回転に関する計算に関して配置される。上顎の前方の歯は、グループファンクションまたは犬歯誘導パラメータのどちらかを提供するように計算から配置される。咬合の深さなど、歯のサイズの相違に関する他の計算もこの時に行われる。
【0074】
セクショナル、または部分的なアライナーが、本発明により形成される。従来の方法において、アライナーは一部品で熱成形され、固定されたセクショナル器具またはBiobloc器具を作るため分割される。しかしながら、残念なことに、この方法はアライナーの構造的一体化を妨げ、アライナーが、挿入されるとき、または口から取り除かれるとき、割れたり、破壊されたりする原因となる。さらに、アライナーは、1/4切断で妥協するものであり、異なる1/4部分において所定の移動の効率を実質的に低減し得る。直接製造を用いると、分割された器具は、別途に形成されてよく、構造的一体性における妥協を回避する。
【0075】
この局面によれば、製造方法は、分割された器具と組み合わされて使用されるアライナーの製造において、その場で既に分割された器具のデータを使用することができる。アライナーの境界の形成は、現在の分割された器具を考慮する。具体的には、その場に固定された器具を有する歯の上で、境界は固定された器具のタイプの影響を受ける。アライナーは、固定された器具を覆うように設計されてよく、アライナーの部分は取り外すことができ、または舌側と頬側の双方の組み合わせである。弾性体または固定されたワイヤのためのボタンである場合、アライナーの部分は一般的に取り外され、したがって境界はその歯の歯肉に沿わないが、固定されたボタンの周囲をアーチ形状に咬合に向かって移動する。セクショナルバンドの場合、舌側の境界は歯肉に沿うが、アライナー部分はボタンと同様頬側に移動し、固定されたワイヤがセクショナルバンドに結合されることを可能にする。
【0076】
歯列矯正におけるテンポラリーアンカレッジデバイス(TAD)コンセプトの最近の発展も、アライナーに適用可能である。図4Aに説明される段階116に示されるボタンおよび弾性体のカットアウトの使用は、前後方向のディスクレパンシーを助けるために、またアライナー単独の性能を超えて好ましい固定を実現するために、TADとともに使用することもでき、犬歯埋伏、門歯トルク、ディスタリゼーションまたは臼歯アップライティングなど、さらなる歯の移動を容易にする。セクショナルまたはバイオブロック器具は、殆どの不正咬合がアライナーで治療することを可能にする。ディープバイト、深刻なローテーション、歯体移動、および後部のディスタリゼーション/メジアリゼーションは、アライナー単独での、または弾性補助装置を用いたアライナーであっても、矯正が難しい。セクショナル器具と同時にアライナーを使用することにより、有意に治療速度を向上することができ、多くの不正咬合が透明なアライナーで治療されることを可能にする。現在の透明アライナーは、多くの歯科医師によって、症状が軽い場合から中程度の場合に使用されている。
【0077】
最終的には、本発明による製造法は、応力解析も可能にする。加熱し、偏光白色光で照らし、かつ偏光フィルターで見たとき、ポリウレタンプラスチックにはレインボー効果が現れる。プラスチック中の歪みの結果としての屈折率の変化により、レインボー効果が生じる。レインボーはプラスチック中の歪みの位置と相互作用し、これらの歪みは偏光レンズで見ることができる。複屈折は、患者の口内に配置されるとき、アライナー内のレインボー効果を介して歪みパターンを見る方法である。この効果の有利な点により、患者は、偏光メガネを用いて、応力を評価するためにアライナーからの光を見て、歯列矯正歯科医/歯科医に対して、アライナー内に特定のパターンが存在するときはいつでもフィードバックすることができる(例えば、移動が完了したことを示す主要な歯における応力の損失)。
【0078】
様々なポリマーおよび印刷技術は、本発明の原則に従って使用されてよい。
【0079】
3D Systems(Rock Hill,Carolina)は、幾つかの樹脂の処方を提供する。例えば、Accura 60,Accura ClearVue,およびRenShape 7870は透明であり、非常に強靭である。Clearvueは、生物的適合性として設計されている。7870の公開された衝撃強度は、0.85−1.15ft−lbf/inである。Accura 60は、熱形成ポリカーボネートと同様の引張強度58−68MPa、および87−101MPaの曲げ強度を有する。Accura ClearVueは、引張強度41−44MPa、および74−79MPaの曲げ強度を有する。SL7811は、白く透明ではないが、最大30%の破断伸びを示し、ただし透明かつ生物的適合性の材料として再処方することが可能である。さらに、アライナー材料の望ましい性質を向上するために、特定の材料を再処方する可能性がある。
【0080】
Objet(5 Fortune Drive,Billerica MA 01821)は、透明かつ生物的適合性として指定された幾つかの材料を提供している。FullCure 630およびFullCure 810は、Objet社の3D印刷機を用いてアライナーを形成するために使用される。
【0081】
DSM Somos(2 Penns Way,Suite 401,New Castle,DE 19720)は長い間、ステレオリソグラフィー市場用の樹脂を処方している。同社は、細胞毒性、感受性化、および刺激に関して、生物的適合性と認定された3つの透明樹脂、WaterShed 11122,ProtoGen 18420,およびBioClearを提供している。この3つは全て、公開された衝撃強度が0.4−0.6ft−lbf/inである。WaterShed 11122は耐水性である。
【0082】
DWS(Zane,Vicenza,Italy)は、光重合系を製造している。その方法は、光硬化性フォトポリマーを紫外光源に曝すことによって各部を作る。各部は、固体レーザを用いて、特別な透明タンクを介して光感受性樹脂を固化することによってビルドプラットフォームの下に組み立てられる。DWS社は、細胞毒性、感受性化、および刺激に関する生物的適合性試験の認定を受けた、サージカルガイドのための透明材料を開発した。
【0083】
Asiga社(North Riverview Drive,Suite 100, Anaheim Hills, CA 92808)は、Pico Freeformと呼ばれるシステムを作っている。そのPlasClear材料は、透明である。この会社は、外用のISO10993試験(補聴器)を予定するプロセスにあり、かつ内部医療装置の試験が予定されている。
【0084】
EnvisionTec GmbH(Bursseler Str. 51,D−45968 Gladbeck, Germany)は、補聴器用途の透明な生物的適合性材料である、e−Shell 300を提供している。
【0085】
Dreve Dentamid GmbH(Max−Planck−Str.31,59423 Unna,Germany)は、独自の材料を処方し、Innovation MediTech社という子会社からさらなる製造システムを提供している。このシステムは、FotoMed LEDと呼ばれ、フォトポリマーを硬化するためにLEDおよびデジタルライトプロセッシング(DLP)を提供している。そのFotoMed LED材料は、透明で、強く、かつ硬い。これは、細胞毒性、感受性化、および刺激に関するISO10993基準を満たす。
【0086】
Stratasys(住所は上述のとおり)は、生物的適合性の材料であるABS−M30iおよびPC−ISO(ただしどちらも透明ではない)を提供している。熱可塑性ABS−M30iは、2.6から5.3ft−lbf/inの衝撃強度を有し、これは他の候補材料の中で最も高い。Stratasysは現在透明材料を提供していないが、全ての追加の製造システムのうち、Fusion Deposition Modeling(FDM)は、熱形成アライナーに使用される熱可塑性プラスチックと同様の性質を有する材料の使用に関して最も高い可能性を有するだろう。例えば、Zendura,Duraclear,Tri−Plast、およびBiocrylなどの熱成形アライナーに使用される材料は、熱成形アライナーと非常に類似する機械的性質を有するアライナーを作製するためにFDM装置での使用に関して改質することができる。さらに、超音波バスおよびセラミックコーンを用いたタンブリングなどの後処理技術により、熱形成アライナーと同様の透明性を生じ得る。さらに、材料が元々生物的適合性を有するので、これらの熱可塑性材料をFDM装置用に再処方した結果、同様の性質がもたらされるだろう。
【0087】
様々な実施形態の記載により本発明が説明され、これらの実施形態は詳細に説明されてきたが、発明者は添付される請求項の範囲をそのような細部に減縮すること、またはどのようにも限定することを意図しない。したがって、さらなる利点および修正が当業者によって容易に理解される。本発明の様々な特徴は、ユーザの要求および選択に依存して、単独でまたは任意の組み合わせで利用されてよい。
【符号の説明】
【0088】
202,206 ボタン
210 弾性体
300 器具
302 フック
304,320 ボタン
306 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体として器具を形成する単一のポリマー材料の一連の層を含み、
歯を包む複数のキャビティを有する、
歯を移動するための歯列矯正器具。
【請求項2】
第2ポリマー材料の、器具の一部を形成する層をさらに含む、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項3】
前記器具のキャビティが、前記一連の層の幾つかの境界から各々形成される、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項4】
器具が、少なくとも1つの歯に、前記歯の移動を生じるのに十分な荷重を与えるアライナーである、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項5】
器具が、器具のキャビティによって規定されるように歯の位置を保持するリテイナーである、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項6】
器具が少なくとも12個の歯を包む、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項7】
器具が14個の歯を包む、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項8】
ポリマー材料が、近傍の骨を再構築するのに十分な加重を歯に与えることができる、請求項1に記載の歯列矯正器具。
【請求項9】
異なるキャビティを有する器具が、使用されるとき、1つまたは複数の歯を初期の位置から望ましい最終位置に向かって徐々に移動させるために順次使用されるようにする、
請求項1に記載される複数の器具を含む、歯の不正咬合を治療するためのシステムとして使用される一連の器具。
【請求項10】
請求項1の器具に接着されて結合される第2の歯列矯正器具をさらに含む、請求項1に記載の器具。
【請求項11】
器具が開口を規定し、前記開口にはめ込むための大きさを有し、患者の歯に取り付けられるアタッチメントをさらに含む、請求項1に記載の器具。
【請求項12】
前記器具が、作製される器具と一体化した補助装置を規定する、請求項1に記載の器具。
【請求項13】
補助装置がフックであり、前記フックに取り付けられる弾性要素をさらに含む、請求項12に記載の器具。
【請求項14】
補助装置がボタンであり、前記ボタンに取り付けられる弾性要素をさらに含む、請求項12に記載の器具。
【請求項15】
ボタンが、器具と一体的に、前記層のうちの複数で、形成される、請求項14に記載の器具。
【請求項16】
補助装置が、歯に取り付けられた第2の器具上に整合するキャビティである、請求項12に記載の器具。
【請求項17】
キャビティが、歯冠を覆って整合する器具の側壁からのカットアウトである、請求項16に記載の器具。
【請求項18】
器具がポリウレタンから形成される、請求項1に記載の器具。
【請求項19】
器具が、キャビティの位置に対応する位置関係的に制御された厚みを有する第1および第2の歯のキャビティをさらに含む、請求項1に記載の器具。
【請求項20】
位置関係的に制御された厚みが一定の厚みである、請求項19に記載の器具。
【請求項21】
位置関係的に制御された厚みが変化する厚みである、請求項19に記載の器具。
【請求項22】
器具が、器具の近心領域の咬合面と比較して大きな厚みを有する、器具の遠心領域の咬合面をさらに含む、請求項1に記載の器具。
【請求項23】
器具が、睡眠時無呼吸症に関して舌および軟口蓋を塞がないように器具の咬合面にガイディングランプをさらに含む、請求項1に記載の器具。
【請求項24】
器具の咬合面は、その非咬合面と比較して補強された厚みを有する、請求項1に記載の器具。
【請求項25】
現在の位置の患者の歯のデジタルモデルを作成する段階、
全体として器具を形成するポリマー材料の一連の層を形成する段階であって、器具が患者の歯を包む複数のキャビティを含む段階、
患者の歯の上に器具を配置する段階、
を含む、患者の歯を歯列矯正的に治療する方法。
【請求項26】
器具のキャビティが、前記一連の層の幾つかの境界から各々形成される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
少なくとも1つのキャビティが患者の第1の歯の形状と同様に形作られ、第2のキャビティが患者の第2の歯に整合するよう器具内に配置されるが、ただし第2の歯と同じ形状を有さない、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
第2のキャビティはその1つの側で第2の歯の歯冠から離れる形状を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
器具の形成が、ポリマー材料の放射エネルギー硬化をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項25に記載の方法によって作製される器具が第1の厚みを有する日中の器具であり、夜間の器具を全体的に形成するためにポリマー材料の一連の層を形成することによって夜間の器具を作製する段階をさらに含み、夜間の器具は日中の器具と交互に装着され、患者の歯を包む複数のキャビティを含み、夜間の器具は日中の器具と比較して大きな厚みを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
日中の器具の第1の厚みは約0.15mm以上であり、夜間の器具の厚みは約2.0mm以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
請求項25に記載の器具は第1の材料を用いた日中の器具であり、請求項25に記載の日中の器具と交互に装着するための夜間の器具をさらに含み、夜間の器具は第2の材料を用いる、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
器具を形成する段階が、キャビティの対応する位置に位置関係的に制御された厚みを有する第1および第2の歯のキャビティを有する器具を形成する段階をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
位置関係的に制御された厚みが一定の厚みである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
位置関係的に制御された厚みが変化する厚みである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
器具を形成する段階が、特定の位置において大きな厚みを有する器具を形成する段階、および特定の位置に補助装置を形成する段階をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項37】
器具が望ましい歯の外観に着色される、請求項25に記載の方法。
【請求項38】
器具を形成する段階が、器具を形成する材料の電子ビーム架橋をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項39】
電子ビーム架橋が器具の様々な位置に様々な程度で選択的に実施される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
器具を形成する段階が、下顎トラフの数学モデルを形成する段階、下顎トラフに歯の形状を並べて歯の配置を形成する段階、およびその歯の配置を用いて器具を形成する段階をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項41】
器具を形成する段階が、器具の近心領域の咬合面と比較して大きな厚みを有する、器具の遠心領域の咬合面を形成する段階をさらに含み、器具に包まれたとき歯に対する均一な荷重を提供する、請求項25に記載の方法。
【請求項42】
器具を形成する段階が、睡眠時無呼吸症に関して舌および軟口蓋を塞がないように器具の咬合面にガイディングランプを形成する段階をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項43】
器具を形成する段階が、非咬合面と比較して補強された厚みを有する器具の咬合面を形成する段階を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項44】
器具を形成する段階が、歯冠表面から器具の表面を形成し、形成された器具が歯肉境界において終了する段階を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項45】
器具を形成する段階が、歯冠表面から離れた表面を生成し、自身と交差する表面を解決する段階を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項46】
器具を形成する段階が、器具と一体化された一続きの識別子を形成する段階をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項47】
器具を形成する段階が、デジタルモデル開発が実行される場所から地理的に離れた場所で実行される、請求項25に記載の方法。
【請求項48】
患者の歯に器具を取り付ける段階、
器具の力に対するアクティビティを評価するために、応力下にある、患者の歯に取り付けられた器具からの光屈折を評価する段階、
を含む、アライナー器具のアクティビティを評価する方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−81785(P2013−81785A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−226770(P2012−226770)
【出願日】平成24年10月12日(2012.10.12)
【出願人】(599025972)オルムコ コーポレイション (35)
【Fターム(参考)】