説明

歯列矯正トレーナー

【課題】 柔らかくて快適に装着でき、且つ強い整復力を生じ、従来のシリコーンゴムトレーナーの利点を達成しつつ、使用者の歯の再整列に、より強い影響を及ぼす歯列矯正トレーナーを提供する。
【解決手段】 使用者の歯列アーチに対応した形状を有し、正面領域と前記正面領域に連続した左右アームを備え、弾性を有するポリマー材料で形成されたベース部材と、前記ベース部材のポリマー材料よりも柔らかい材料から成り、前記ベース部材の少なくとも一部を囲んで包み込み、使用者の該当するアーチ及び歯を受容し得る上下の歯チャネルの少なくとも一方を規定する歯係合部材と、を有する。歯列矯正トレーナーを口腔内に挿入し、使用者の該当するアーチ上に装着したときに、前記使用者の該当するアーチに前記歯係合部材が矯正力与えるように、オープンフレーム構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯に対して矯正力を加えることによって歯並びのずれを矯正するのに用いられる歯列矯正器具である口腔内装具、特に、歯列矯正トレーナーに関する。
【0002】
便宜上、以下にこの応用例に関して本発明を詳細に説明する。しかし、本発明はより広い用途に適用可能であることは明確に理解されるところである。例えば、本発明は、歯に対して整復力を加えることなく、舌前突などの口腔習癖の改善を促進する装具にも適用することができる。
【0003】
最後に、本装具は、マウスガードやスポーツガードとしても使用することができる。
【背景技術】
【0004】
様々な種類の歯列矯正器具が知られている。これら歯列矯正器具のうちのひとつは、患者の口腔の印象を採得した後に特注で作成される。印象は型(モールド)を作成するために用いられ、この型は、その患者の口腔に適合するように特別にサイズを合わせて形成された装具を作るために用いられる。このような装具が、使用者の口腔内にぴったりとフィットし作用において効果的であることは当然である。しかし、特注で製造される装具の限界は、このような装具を製造するコストが高いことであり、このことは、市場に占める割合を低下させている。
【0005】
したがって、製造プロセスにおいて大量に製造が可能で、しかも、様々な患者の口腔に快適に且つぴったりとフィットして嵌め込むことのできる装具が必要とされていることは明らかである。
【0006】
大量生産の歯列矯正トレーナーのひとつは、オーストラリア、クイーンズランド州、ヘレンズヴェイル、サー・ジョン・オーヴァーオール・ドライブ、ヘレンズヴェイルプラザのマイオファンクショナルリサーチ・プロプライエタリー・リミテッドにより製造されている。
【0007】
このトレーナーはアーチに似た形状を持ち、使用者の上下のアーチの歯をそれぞれ受容するための上下のチャネルを規定する。
【0008】
トレーナーはシリコーンゴムから成り、1回の成形作業で成形される。シリコーンゴムは、装具の全体にわたって単一の均質な形態と稠度を持ち、概して柔らかくフレキシブルである。例えば。容易に曲げたり捩じったりできる部材によって形成されている。上下の歯のためのチャネルを規定する、トレーナーの壁は柔らかく、したがって、使用者の歯と歯茎には快適である。しかし、トレーナーが柔らかいため、チャネル内に受け入れた歯に対して強い保持・矯正力を与えない。例えば、この部材を曲げたりねじったりすることは容易である。
【0009】
上述のトレーナーは、使用者、特に子供の口腔習癖を改善しようとするために用いられている。舌タブは、舌を正しく位置づけ、舌前突を低減させるのを支援する。また、上顎に対して下顎を正しく位置づける。
【0010】
また、このトレーナーは歯並びを改善しようとするためにも用いられ、歯並びのずれを矯正するのにある程度の好影響を及ぼすことが分かった。しかし、この点においてまだ大幅に改善の余地がある。歯に接するシリコーンゴム材料が柔らかいため、実際のところ、使用者の歯を整復させるトレーナーの能力は限定されてしまう。
【0011】
ひとつの可能性として、トレーナーをシリコーンゴムより堅い、ポリウレタンなどの材料で作ることがあげられる。しかし、ポリウレタンは使用者の柔らかい歯茎に対して硬く、痛みと不快感を招く。さらに、単一の硬質材料のみで装具を製作した場合には、並びの悪い歯を受容するために屈曲変形する能力を制限してしまうことになる。このため、それぞれ個々のアーチサイズと歯並びをもつ多数の使用者に合わせるのはより困難である。このように、そもそもトレーナーをフィットさせることは困難である。
【0012】
この問題に対して簡単な解決法がないのは明らかであるが、柔らかくて快適に装着でき、且つ強い整復力を生じるような歯列矯正器具が考案できるならば、非常に有用であることは明白である。これにより、従来のシリコーンゴムトレーナーの利点を達成しつつ、使用者の歯の再整列に、より強い影響を及ぼすことができる。このようなトレーナーは、歯列矯正用トレーナーの分野における大きな一歩または飛躍をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際出願公開第00/35369号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、柔らかくて快適に装着でき、且つ強い整復力を生じ、従来のシリコーンゴムトレーナーの利点を達成しつつ、使用者の歯の再整列に、より強い影響を及ぼす口内装具である歯列矯正トレーナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、使用者の歯列アーチに対応した形状を有し、正面領域と前記正面領域に連続した左右アームを備え、弾性を有するポリマー材料で形成されたベース部材と、前記ベース部材のポリマー材料よりも柔らかい材料から成り、前記ベース部材の少なくとも一部を囲んで包み込み、使用者の該当するアーチ及び歯を受容し得る上下の歯チャネルの少なくとも一方を規定する歯係合部材と、を有し、歯列矯正トレーナーを口腔内に挿入し、使用者の該当するアーチ上に装着したときに、前記使用者の該当するアーチに前記歯係合部材が矯正力を与えるオープンフレーム構造を有することを特徴とする歯列矯正トレーナーが得られる。
【0016】
ここで、本発明の一態様に係る歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材の前記ポリマー材料はシリコーンゴム又はポリ塩化ビニル(PVC)であることが好ましい。
【0017】
また、前記ベース部材は、アミド単量体の縮合重合またはカプロラクタムの開環重合のいずれかによって形成されるポリアミド材料;ポリエチレン;ポリウレタン;ポリカーボネート;および熱可塑性エラストマー;のいずれかであることが好ましい。さらに、前記ベース部材は、オープンフレーム構造を有することが好ましい。
【0018】
また、前記ベース部材のオープンフレーム構造は曲線状の内側および外側長手フレーム部材と、互いに間隔をおいて、前記内側および外側長手フレーム部材の間まで延在する複数の横断フレーム部材とを有することが好ましく、前記オープンフレーム構造は、略平面形状であり、前記内側および外側長手フレーム部材と前記横断フレーム部材は、略同一平面内にあることが好ましい。
【0019】
また、前記複数の横断フレーム部材は、前記ベース部材の正面部分にあり、前記正面部分を補強する正面横断フレーム部材を含むことが好ましい。
【0020】
さらに、前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記内側および外側長手フレーム部材の長手方向沿って配置された2個の中間横断フレーム部材を有し、それによって前記2個の中間横断フレーム部材は、前記使用者の上側のアーチを外側の門歯を略整列させることが好ましい。
【0021】
また、前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記左右アームの裏側に2個の後部横断フレーム部材を有することが好ましい。
【0022】
また、前記歯列矯正トレーナーにおいて、前記ベース部材は、前記外側長手フレーム部材上に外側歯整復構造を有することが好ましい。
【0023】
また、前記外側歯整復構造は、曲線状の前記外側長手フレーム部材と一体に形成され、前記外側長手フレームから上方に突出した外側フランジを有することが好ましい。
【0024】
また、前記歯係合部材は、略完全に前記ベース部材を収容することが好ましい。
【0025】
また、前記歯係合部材は、上下面を有する中央ウェブと、前記上下面から夫々上下に突出し、前記上下面を有する上下の歯チャネルを規定する内側および外側フランジとを有することが好ましい。
【0026】
また、前記内側および外側フランジは、上下の歯チャンネルにおける使用者の歯および歯茎に対して耐えられるように構成されていることが好ましい。
【0027】
また、前記歯係合部材は、使用者の特定の歯の位置決めをするために、互いに隣接して配置された少なくとも一対の歯位置決め構造を有し、前記少なくとも一対の隣り合う歯位置決め構造は、前記歯係合部材の夫々対応する歯チャンネル内に面する前記内側および外側フランジ上に配置され、横一列に並んでいることが好ましい。
【0028】
また、それぞれの前記隣り合う歯位置決め構造は、夫々の前記フランジから離れて対応する歯チャンネル内に向かうくさび形状の突起を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の口腔内装具の利点は、アーチを広げて歯を整復させるのに十分な強度を与えることができることである。歯に加えられる力は、他の歯列矯正器具によって得られるものに匹敵する。整復力は、ベース部材の内在強度によるものである。ベース部材は、突出したり、引っ込んでいる歯並びの悪い歯に力を加える効果をもち、この力によって、歯をアーチ形状またはアーチラインに復帰させる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明による歯列矯正用トレーナーである装具の上面正面三次元図である。
【図2】図1の装具の上面背面三次元図である。
【図3】図1の装具の正面図である。
【図4】図1の装具の背面図である。
【図5】図1の装具の平面図である。
【図6】図1の装具の底面図である。
【図7】図1の装具を一側から見た側面図である。
【図8】図1の装具を他側から見た側面図である。
【図9】図1の装具の一部の上面三次元図であり、歯係合部材の一部を取り除いて下にあるベース部材が露出した状態を示している。
【図10】図1の装具のベース部材の上面三次元図である。
【図11】図10のベース部材の下面三次元図である。
【図12】後方から見た、本発明の一実施例によるスポーツガードの上面三次元図であり、隠された詳細は示さず。
【図13】前方から見た、図12のガードの上面三次元図である。
【図14】図12のガードの背面図であり、ベース部材を隠れ線で示している。
【図15】図12のガードの底面図であり、ベース部材を隠れ線で示している。
【図16】図12のガードの側面図であり、ベース部材を隠れ線で示している。
【図17】図12のガードのベース部材の背面上面三次元図であり、歯係合部材を点線で示している。
【図18】図12のガードのベース部材の正面上面三次元図であり、歯係合部材を点線で示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明について更に詳細に説明する。
【0032】
本発明の実施の形態による歯列矯正トレーナーにおいては、使用者の歯列アーチに対応した形状を有し、正面領域と前記正面領域に連続した左右アームを備え、弾性を有するポリマー材料で形成されたベース部材と、前記ベース部材のポリマー材料よりも柔らかい材料から成り、前記ベース部材の少なくとも一部を囲んで包み込み、使用者の該当するアーチ及び歯を受容し得る上下の歯チャネルの少なくとも一方を規定する歯係合部材と、を有し、歯列矯正トレーナーを口腔内に挿入し、使用者の該当するアーチ上に装着したときに、前記使用者の該当するアーチに前記歯係合部材が矯正力を与えるオープンフレーム構造を有する。
【0033】
また、歯列矯正トレーナー以外の口腔内装具として、接触性スポーツ等のスポーツを行なう際に、使用者の歯を保護するためのスポーツガード又はマウスガードであってもよい。
【0034】
ここで、本発明の実施の形態に係る歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材の前記ポリマー材料はシリコーンゴム又はポリ塩化ビニル(PVC)であることが好ましい。
【0035】
また、前記ベース部材は、アミド単量体の縮合重合またはカプロラクタムの開環重合のいずれかによって形成されるポリアミド材料;ポリエチレン;ポリウレタン;ポリカーボネート;および熱可塑性エラストマー;のいずれかであることが好ましい。
【0036】
より具体的には、ポリマー材料は、ポリマー内部に反復単位としてのシリコーンを含むポリマー材料であってもよい。これは、シリカで強化した架橋ポリマーである合成エラストマーであってもよい。
【0037】
ポリマー材料は、シロキサン重合体またはシラン重合体であってもよい。本発明の一形態において、シリコーンを含むポリマーは、シリコーンゴム、たとえば、歯列矯正トレーナーの分野において既に受け入れられている医療グレードシリコーンである。シリコーン材料は特に柔らかく、使用者の歯茎や他の口腔組織に対して快適である。また、歯と歯茎の周りで変形屈曲する能力をある程度有している。
【0038】
歯係合部材のポリマー材料は、付加重合体であってもよい。付加重合体はポリ塩化ビニル(PVC)であってもよい。ポリ塩化ビニルはシリコーンよりも低い融点を有する。歯係合部材がベース部材上に成形される際に、ベース部材がさらされる温度は、歯係合部材にシリコーンゴムを用いた場合よりも、ポリ塩化ビニルを用いた場合のほうが低い。
【0039】
ベース部材はポリマー材料から作られてもよい。ベース部材のポリマー材料は弾性をもつものであってもよい。
【0040】
ベース部材を形成するポリマー材料は硬質材料に分類されるものでもよい。ベース部材を作成する材料は、ベース部材に局部的または一点的な圧力が加えられても容易に変形しない。しかし、この材料は同時に、当該部材の両側を互いに近づきまたは離れるようにねじったり引っ張ったりした場合に、多少弾性を示し、屈曲することができる。
【0041】
また、ベース部材は堅く、力が加えられた時に変形に抗するものとみなされてもよい。力が取り除かれた時に、弾性によって元の形状に戻る。
【0042】
また、ベース部材を作るポリマー材料は、熱可塑性を有してもよい。しかし、この材料は160℃以下の流動材料にさらされたときにその形態を保ち軟化しないものであってもよい。いくつかの実施例において、この材料は、300℃までの温度の流動材料にさらされたときにその形態を保ち軟化しないものであってもよい。
【0043】
ベース部材を作るポリマー材料はポリアミド材料であってもよい。ポリアミド材料は、アミド単量体の縮合重合またはカプロラクタムの開環重合のいずれかによって形成されてもよい。
【0044】
ポリアミド材料は、一般にナイロンとして知られ、米国デラウェア州、ウィルミントンのデュポンケミカルカンパニーの商標であるNYLON(登録商標)の名のもとに販売されているポリアミドポリマーであってもよい。
【0045】
ポリアミド材料、例えばナイロンは、弾性と剛性のバランスが適切であるため、特に適している。これによってベース部材のアーム部の屈曲がある程度許容される。しかし、これは、屈曲力またはねじり力を受けたときに良好な記憶を持ち、その力が取り除かれると元の形状に復帰する傾向がある。このことは、口腔内装具が、装着者にとって十分な快適さを維持しつつ、所望のアーチを維持するのを助ける。
【0046】
あるいは、ベース部材を形成するポリマー材料は、付加重合体又は縮合重合体であってもよい。付加重合体は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを含んでもよい。縮合重合体はポリウレタンまたはポリカーボネートを含んでもよい。ポリマー材料はさらにサントプレーンなどの熱可塑性エラストマーを含んでもよい。
【0047】
本願によって実施される発明の一態様において、ベース部材はポリアミド材料から作られ、歯係合部材はシリコーンゴムから成る。
【0048】
この組合せでは、トレーナーを製造する過程で、例えばナイロンであるポリアミドのベース部材が最初に成形される。その後、シリコーンの歯係合部材がベース部材上に成形される。型にシリコーンゴムを注入してベース部材を包み込む際に、ナイロンのベース部材は、溶融シリコーンゴムにさらされても軟化溶融しないという特性を持つ。
【0049】
このように、口腔内装具は、装具に内在骨格強度を与える材料から形成されたベース部材と、ベース部材よりかなり柔らかく成形しやすいシリコーンゴムやPVCから成り、包囲状歯係合部材を有する。この装具は、剛性の内在ベース部材を有することにより、装具が軟質シリコーンゴムのみから成る場合よりも、患者の歯並びにかなり強い影響を与えることができる。さらに、アーチの全体形状と幅を維持することができる。
【0050】
さらに、前記ベース部材は、オープンフレーム構造を有することが好ましい。
【0051】
また、前記ベース部材のオープンフレーム構造は曲線状の内側および外側長手フレーム部材と、互いに間隔をおいて、前記内側および外側長手フレーム部材の間まで延在する複数の横断フレーム部材とを有することが好ましく、前記オープンフレーム構造は、略平面形状であり、前記内側および外側長手フレーム部材と前記横断フレーム部材は、略同一平面内にあることが好ましい。
【0052】
また、前記複数の横断フレーム部材は、前記ベース部材の正面部分にあり、前記正面部分を補強する正面横断フレーム部材を含むことが好ましい。
【0053】
さらに、前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記内側および外側長手フレーム部材の長手方向沿って配置された2個の中間横断フレーム部材を有し、それによって前記2個の中間横断フレーム部材は、前記使用者の上側のアーチを外側の門歯を略整列させることが好ましい。
【0054】
また、前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記左右アームの裏側に2個の後部横断フレーム部材を有することが好ましい。
【0055】
また、前記歯列矯正トレーナーにおいて、前記ベース部材は、前記外側長手フレーム部材上に外側歯整復構造を有することが好ましい。
【0056】
また、前記外側歯整復構造は、曲線状の前記外側長手フレーム部材と一体に形成され、前記外側長手フレームから上方に突出した外側フランジを有することが好ましい。
【0057】
また、前記歯係合部材は、略完全に前記ベース部材を収容することが好ましい。
【0058】
また、前記歯係合部材は、上下面を有する中央ウェブと、前記上下面から夫々上下に突出し、前記上下面を有する上下の歯チャネルを規定する内側および外側フランジとを有することが好ましい。
【0059】
また、前記内側および外側フランジは、上下の歯チャンネルにおける使用者の歯および歯茎に対して耐えられるように構成されていることが好ましい。
【0060】
また、前記歯係合部材は、使用者の特定の歯の位置決めをするために、互いに隣接して配置された少なくとも一対の歯位置決め構造を有し、前記少なくとも一対の隣り合う歯位置決め構造は、前記歯係合部材の夫々対応する歯チャンネル内に面する前記内側および外側フランジ上に配置され、横一列に並んでいることが好ましい。
【0061】
また、それぞれの前記隣り合う歯位置決め構造は、夫々の前記フランジから離れて対応する歯チャンネル内に向かうくさび形状の突起を有することが好ましい。
【0062】
より具体的には、ベース部材は幅広いアーチをもつよう設計されてもよく、この場合、トレーナーは、アーチ及び歯を幅広いアーチ位置に押し出す。このようにトレーナーは、幅の狭いアーチをより審美的に美しく、望ましい幅広いアーチに拡張するために用いることができる。アーチを広げるためには、変形されたベース部材の弾性力が利用される。
【0063】
ベース部材は、曲線状の内側及び外側長手フレーム部材をもち、これら長手フレーム部材を横断フレーム部材によって互いに間隔をおいて相互接続したオープンフレーム構造、例えばフラットオープンフレーム構造の形態をとってもよい。オープンフレーム部材は、一般に一平面内にあってもよい。すなわち、長手フレーム部材及び横断フレーム部材が全て、略同一平面内にあってもよい。この平面は実質的水平方向に延在してもよい。
【0064】
ベース部材はさらに、外側長手フレーム部材上に、外側歯整復構造を含んでもよい。
【0065】
外側歯整復構造は、外側フランジを有し、この外側フランジは、外側フレーム部材から上方に、横断フレーム部材の高さより上に突出した、及び/又は、外側フレーム部材から下方に、横断フレーム部材のレベルより下に垂下したものである。
【0066】
ベース部材はさらに、内側長手フレーム部材上に、内側歯整復構造を含んでもよい。
【0067】
内側歯整復構造は、内側フランジを有し、この内側フランジは、内側フレーム部材から上方に、横断フレーム部材の高さより上に突出した、及び/又は、内側フレーム部材から下方に、横断フレーム部材のレベルより下に垂下したものである。
【0068】
ベース部材は、中央正面領域と、中央正面部から左右の後端に向かって後方に延びる左右のアーム領域を有してもよい。
【0069】
外側フランジは、少なくとも中央領域に沿って、横断フレーム部材から上方に突出してもよい。すなわち、使用時に、外側フランジは使用者の上側前歯を覆いこれを横切って延在する。
【0070】
外側フランジは、当該ベース部材の中央正面領域に沿って、横断フレーム部材例えば横断フレーム部材の上面よりも上に、2〜10mm、例えば4〜8mm、例えば約6mm程度、上向きに延在していてもよい。また、外側フランジの中央正面領域は、オープンフレームの面よりも上に、2〜10mm、例えば4〜8mm、または6mm程度、延在していてもよい。このように、外側フランジは、特に中央正面領域において、ある程度の高さを有してもよい。
【0071】
外側フランジは、ベース部材の左右のアームに沿って、横断フレーム部材より上に、上向きに突出していてもよい。
【0072】
外側フランジは、オープンフレーム構造のオウダンフレーム部材の上方向に延在しても良く、例えば横断フレーム部材の上面より上に、2〜6mm、例えば3〜5mm、例えば4mmほど上向きに延在してもよい。外側フランジの左右のアームは、オープンフレームの面より上に、2〜6mm、例えば3〜5mm、例えば約4mmほど上向きに延在していてもよい。中央正面領域における外側フランジは、左右のアーム領域のフランジ、たとえば、使用者の臼歯の少なくとも一部の上に延在するフランジよりも高い。
【0073】
さらに、外側フランジは、左右の側のベース部材の左右のアーム領域とベース部材の正面中央領域の中間の位置で、中断されるか、または高さを減じてもよい。これら左右の側の位置は犬歯に対応している。これらの位置で外側フランジの高さが低くなっている理由は、犬歯が他の歯とくらべて突出することがあり、もし外側フランジの高さが中央前方領域におけると同じ高さであった場合に、フランジの背後にフィットしないおそれがあるからである。
【0074】
外側フランジは、例えば射出成形作業において、曲線状の外側長手フレーム部材と一体に形成されていてもよい。
【0075】
曲線状の内側長手フレーム部材の内側フランジは、横断フレーム部材、例えば横断フレーム部材の上面から上に、約1〜3mm、例えば約2mmの距離延在していてもよい。曲線状の内側長手フレーム部材の内側フランジは、オープンフレームの面内から上に、約1〜3mm、例えば約2mmの距離延在していてもよい。
【0076】
内側フランジは、ベース部材の少なくとも正面中央領域に沿って、横断フレーム部材から上に突出していてもよい。内側フランジは、内側長手フレーム部材の全長にわたって横断フレーム部材から上に突出していてもよい。さらに、内側フランジは、その全長に沿って、実質的に同じ高さまで上に突出していてもよい。
【0077】
内側フランジはまた、たとえば射出形成プロセスにおいて、曲線状の内側長手方向フレーム部材と一体に形成されてもよい。
【0078】
本発明の実施の形態において、曲線状の外側長手フレーム部材の外側フランジは、オープンフレームの面より下には、目に見えるほどには延在もしくは垂下していない。同様に、曲線状の内側長手フレーム部材のフランジは、オープンフレームの面より下に、目に見えるほどには延在あるいは垂下していない。
【0079】
しかし、一つ以上の垂下したフランジを備えた装具は、本発明の範囲内であると考えられることを理解されたい。本出願人は、オープンフレームから上に突出するのみでオープンフレームから下には突出しない外側及び内側フランジにより、満足のいく剛性と強度が得られることを見出した。しかしながら、外側長手フレーム部材の近傍で、たとえば歯の外側で、より大きな強度が必要な場合には、フランジは、上方に突出するとともに下方に垂下させてもよい。また、垂下する内側フランジを設けることもできる。
【0080】
さらなる代替例として、上述の内側及び外側フランジは、横断フレーム部材から上方に突出するかわりに、オープンフレームの面あるいは横断フレーム部材から下に突出してもよい。
【0081】
ベース部材は、ベース部材の中央正面領域に一つの正面横断フレーム部材と、ベース部材の左右のアーム領域の後部に、二つの後部横断フレーム部材を有してもよい。
【0082】
ベース部材はまた、アーム領域の後部の後部横断フレーム部材と正面横断フレーム部材の間に、複数個の中間横断フレーム部材を有していてもよい。
【0083】
ベース部材の中央正面領域における横断フレーム部材の幅は、5〜15mm、好ましくは8〜12mm、最も好ましくは約9〜11mmであってもよい。それぞれのアーム領域の後部における後部横断フレーム部材の幅は、2〜10mm、好ましくは3〜8mm、より好ましくは4〜6mmであってもよい。中間横断フレーム部材の幅は、1〜4mm、例えば2〜3mmであってもよい。
【0084】
すなわち、ベース部材の正面領域、例えば実質的に中央に配置された横断フレーム部材は、後部及び中間フレーム部材より大きな幅を有してもよい。これらの横断フレーム部材すなわち横断部材は、重要な構造的な機能を果たし、アーム領域の前部や後部などの重要な領域において装具を強化する。
【0085】
歯係合部材は、オープンフレーム構造の横断フレーム部材によって形成される面に平行に延在する、上面及び下面を持つ中央ウェブと、ウェブの上面及び下面の少なくとも一方からに離れるように横断方向に突出する内側及び外側フランジを有する。内側及び外側フランジとウェブは、使用者の歯を受容できるチャネルを規定する、少なくとも一つの歯チャンネルを形成する。
【0086】
内側及び外側フランジは、ウェブの上面及び下面の両方から離れる方向に突出しても良く、歯係合部材の上下のチャネルが規定される。
【0087】
歯係合部材は、ベース部材の周囲にこれを覆って延在し、トレーナーの本体を形成する。歯係合部材は、使用者の歯と歯茎に接触して係合する、トレーナーの表面を規定する。
【0088】
歯係合部材は、たとえば、外側フランジの外側に面する表面を含め、ベース部材の全表面を包み込んでもよい。歯係合部材は、外側フランジの外表面を、比較的薄い材料層、たとえば、外側フランジの内側表面を覆う層よりもかなり薄い層で覆ってもよい。これによって、ベース部材と歯係合部材をともに保持するのを支援する。
【0089】
歯係合部材がベース部材を包み込むことの利点は、これが、歯係合部材をベース部材上に保持するのを支援することである。ベース部材と歯係合部材は異なる材料から成り、これら異なる材料は、剥離しないように互いに適合してともに移動する必要がある。ベース部材を歯係合部材内に包み込むことは、これら二つの部材を一緒に保持するのを支援し、その結果、装具は使用中に剥離しにくくなる。
【0090】
歯係合部材は、本出願人の先行する特許出願PCT/AU99/00840に記載され、WIPOによりWO00/35369(特許文献1)として公開されたものと、概ね同一の形状形態を有してもよい。この明細書の内容は、直接的相互参照(クロスリファレンス)により本明細書に組み込まれる。
【0091】
歯係合部材はさらに、使用者の個々の歯を位置決めするのを支援のための上下チャネルの少なくとも一つに、一つ以上の歯位置決め構造、たとえば、複数個の歯位置決め構造を含んでもよい。位置決め構造は、装具を最初に嵌め込むのを支援してもよい。
【0092】
歯位置決め構造は、対をなして設けてもよく、これらは、内側及び外側フランジの長さに沿って互いに対して整列され、内側及び外側フランジから内側にそれぞれ突出する。
【0093】
歯位置決め構造はそれぞれ、上記内側及び外側フランジから上記チャネル内に向かって内側に延在するくさび形突起部を有していてもよい。位置決め構造はそれぞれ、使用者の歯の形状と略相補的に形づくられてもよく、該当するチャネル内に、わずかな距離だけ延在してもよい。
【0094】
歯位置決め構造は、使用者の口腔内で、いわゆる理想的な位置に向かって歯が移動することを促進するように配置されてもよい。
【0095】
歯位置決め構造は、使用者の歯のうち少なくとも中央正面の二つの切歯、たとえば、使用者の少なくとも4つの前歯を包括的に位置決めしてもよい。一形態において、歯位置決め構造は、使用者の4つの前歯を集合的に位置決めする。また一形態において、歯位置決め構造は、使用者の4つの前歯と、使用者の4つの前歯の後方各側の3つの歯を集合的に位置決めする。
【0096】
配置決め構造は、例えば射出成形によって、ベース部材上に歯係合部材が成形される際に、歯係合部材と一体に成形されてもよい。
【0097】
上述のように、好適な形態において、歯係合部材は使用者の上下の歯を受容する上下のチャネルを規定する。このようなトレーナーにおいて、歯係合部材は、上下のチャネルの両方に、上下の歯を位置決めするための歯位置決め構造を有してもよい。
【0098】
歯列矯正トレーナーは、歯係合部材及びベース部材を貫通し、歯係合部材の外表面及び内表面の両方に開口した穴を含んでもよい。
【0099】
歯列矯正トレーナーは、また、使用者がその舌を正しく位置づけることを促すための舌タブを含んでもよい。
【0100】
歯列矯正トレーナーは、歯係合部材、例えば曲線状の内側フランジの正面領域に規定された切欠きまたは凹部を有してもよく、これにより、トレーナーによって、例えば、特に歯係合部材及びベース部材の左右のアーム領域によって規定されるアーチの幅を調節することが可能となる。これを舌タブの両側のスペースによって提供することが好便である。
【0101】
歯列矯正トレーナーは、曲線状の外側フランジの正中線上に、たとえばウェブの上下の両方に、切欠きを含んでもよい。これは、トレーナーを装着した際に、軟質歯茎領域が歯係合部材と接触することがなく、快適さが増進するように設けられる。
【0102】
本装具はまた、歯係合部材のウェブに、左右のアーム領域においてある程度の厚みをもたせてもよい。歯係合部材の厚みは、正面中央領域から、左右のアーム領域の後部に向かって、後向き方向に増加させてもよい。この肥厚化は、歯係合部材の左右のアーム領域の後部から前方に向かって離間した位置で終わる。歯係合部材は、次に、この位置から左右のアーム領域の後部に向かって、再び薄くなる。
【0103】
歯係合部材の肥厚化は、断面で見たとき、例えば、曲面状の下面と略平面状の上面をもつ、反転翼に似ていてもよい。歯係合部材のウェブ領域のこの形状は、上下の顎の歯を互いに関して正しく位置づけ、筋肉とTMJ(temporomandibular joint顎関節)のリラクセーションを促進する。
【0104】
本出願人は、本装具がいくつかのサイズで作られ、任意の使用者に対して、その歯のサイズに基づいて、適切なサイズのトレーナーを選択することを想定している。本出願人は、異なるサイズが二つの異なるアーチサイズを含み、それぞれのアーチサイズは、歯位置決め構造の約6つの異なるサイズと位置を有することを想定している。異なる歯位置決め構造は、異なる使用者の異なる歯のサイズと歯の位置に対応できる。
【0105】
本発明の別の態様によれば、使用者の顎の輪郭に対応した略U字形状を持ち、ポリアミド材料からなるベース部材であって、ベース部材は、曲線状の内側及び外側長手フレーム部材を横断フレーム部材によって互いに間隔をおいて相互接続したオープンフレーム構造を有し、ベース部材は、中央正面領域及び左右のアーム領域を有し、ベース部材は、外側長手フレーム部材上に設けられ少なくとも前記正面中央領域を横切って延在する外側歯整復構造を含むものであるベース部材と、ベース部材を囲んで包み込み、シリコーンゴムまたは塩化ポリビニル(PVC)であるポリマー材料から成る歯係合部材であって、ウェブと、ウェブの上下面の両方から上下に突出して使用者の上下の歯を受容する上下の歯チャネルを規定する内側及び外側フランジを有する連続的歯係合部材とを有する歯列矯正トレーナーが得られる。
【0106】
外側長手フレーム部材上の歯整復構造は、中央正面領域に加えて左右のアーム領域の少なくとも一部を横切って延在してもよい。
【0107】
ベース部材は、内側長手フレーム部材上に設けたさらなる歯整復構造を有してもよい。
【0108】
歯列矯正トレーナーはさらに、使用者の歯の正しい位置決めを促進するための歯位置決め構造を含んでもよい。
【0109】
ベース部材は、ナイロンであるポリアミド材料から作られてもよい。歯係合部材は、シリコーンゴムから作られてもよい。
【0110】
本発明のさらに別の態様によれば、使用者の顎の輪郭に対応した略U字形状を持ち、ポリアミド材料からなるベース部材であって、ベース部材は、曲線状の内側及び外側長手フレーム部材を横断フレーム部材によって互いに間隔をおいて相互接続したオープンフレーム構造を有し、ベース部材は、中央正面領域及び左右のアーム領域を有するものであるベース部材と、ベース部材を囲んで包み込み、シリコーンゴムまたは塩化ポリビニル(PVC)であるポリマー材料から成る歯係合部材であって、ウェブと、ウェブの上面から上方に突出して使用者の上側のアーチ及び歯を受容する上チャネルを規定する内側及び外側フランジからなる連続的歯係合部材とを有するスポーツガードが得られる。
【0111】
スポーツガードは、本発明の上記態様によって規定される歯列矯正トレーナーの、任意選択的特徴を一つ以上有してもよい。
【0112】
特に、ベース部材は、ナイロンであるポリアミド材料から作られてもよい。歯係合部材は、シリコーンゴムから作られてもよい。
【0113】
本発明はさらに、口腔習癖の改善を促進するよう患者を治療し且つ患者の歯の位置の改善を促進する方法であって、上述の本発明の第一または第二の態様による装具を使用者に嵌め込むステップと、前記装具を使用者に定期的に装着させるステップとを有する方法にも及ぶ。
【0114】
装着者は、毎日24時間のうち少なくとも数時間、装具を装着すればよい。好ましくは、使用者は、毎日、少なくとも日中数時間と、夜間の数時間に装具を装着する。
【0115】
本発明はさらに、スポーツ、特に接触性スポーツを行っているときに使用者の歯を保護するための方法であって、上述の本発明の第一または第三の態様による装具を使用者に嵌め込むステップと、頭部や顎に衝撃をうけやすい活動を行う際に使用者に装具を装着させるステップとを有する方法にも及ぶ。
【0116】
[定義]:
本明細書において、係合という用語は広い意味を持つものとし、保定係合またはラッチ係合の意味に限定されるものではない。
【実施例】
【0117】
以下、実施例に従って、これを説明する。
【0118】
(実施例1)
本発明に係る歯列矯正用トレーナー又はスポーツガードである口腔内装具は、様々な形態をとることができる。便宜上、本発明のいくつかの実施例について、添付の図面を用いて以下に詳細に説明する。この詳細な説明を提供する目的は、本発明の主題に興味をもつ人々に、本発明をどのように実施するかを教示することにある。しかし、この詳細な説明の具体性は、前述の記載の一般性に優先するものではない。
【0119】
図1乃至9において、参照符号1は、本発明に係る歯列矯正用トレーナーである装具を全体的に示す。
【0120】
歯列矯正用トレーナー1は、概して、使用者の顎の輪郭に対応する略U字形状を持つベース部材2を有する。図10及び図11に示されるベース部材2は、図1乃至図9においては隠れ線で示されている。歯列矯正用トレーナー1は更に、ベース部材2を囲んで覆うシリコーンゴム製の歯係合部材5を有する。歯係合部材5は、ベース部材2よりもかなり大きい容積を占め、トレーナー1の本体と形状を形成する。また、使用者の口の歯及び歯茎組織と相互作用して係合する全ての作用面を規定する。
【0121】
ベース部材2は、図9乃至図11に部分的に明確に示され、曲線状の外側及び内側長手フレーム部材10及び12が、横断フレーム部材15によって間隔をおいて結合されたオープンフレーム構造の形態のベースサポートを有している。ベース部材は、参照符号17で示す正面部と、参照符号18及び19で示す左右のアーム領域を有する。
【0122】
図示された実施例において、ベース部材2は、いくつかの横断フレーム部材15を有する。これらのうちの一つは、環状部材10及び12の正面中央領域17に近接して配置されている。横断フレーム部材15は約8〜12mmの幅を有し、他の横断フレーム部材と比較してかなり太い。増加した幅は、横断フレーム部材15にさらなる強度を与える役割を果たす。さらに二つの横断フレーム部材15は、ベース部材2の左右後続アーム領域18及び19の後部に近接して配置されている。これらの横断フレーム部材15は、3〜6mmの幅を有する。これらは正面の横断フレーム部材よりも細く、残りの横断フレーム部材よりも太い。
【0123】
残りの横断フレーム部材は中間横断フレーム部材15として知られる。図示された実施例において、アーム領域18及び19のそれぞれに、2つのこれら横断フレーム部材が設けられている。横断フレーム部材は1〜4mm、例えば約2mmの幅を有する。
【0124】
更に、ベース部材2は外側フランジ25を有し、この外側フランジは、曲線状の外側フレーム部材10から上に突出して、曲線状外側フレーム部材10の全長にわたって延びている。外側フランジ25は、オープンフレーム構造の横断フレーム部材15及びオープンフレームの略平面より上に突出している(以降、外側フランジと呼ぶ)。
【0125】
外側曲線状フレーム部材10の正面中央領域17における、フランジ25の部分は、左右アーム領域18及び19から上方に延びる部分よりもさらに突出している。正面中央領域17におけるフランジ部分は、最高で6〜8mmの高さを持つ。外側フレーム部材10の左右アーム領域上のフランジ部分は、最高で5〜7mmの高さを持つ。
【0126】
外側フランジ25は、中央正面部17と左右のアーム領域18及び19の中間両側に低点28を規定する。この低点は、使用者の糸切り歯すなわち犬歯がある場所に位置する。この理由は、犬歯は他の歯より側方外側に位置することがあり、この部分のフランジが高いと、使用者の歯にトレーナーがフィットしないおそれがあるからである。本出願人は、外側フランジ25の高さを両側のこの位置で低下させることにより、上記の問題を生じることなく、たいていの口腔にトレーナーをフィットさせることができることを見出した。
【0127】
ベース部材2の曲線状内側フレーム部材12も、オープンフレームから上方に延びるフランジ30(以降、内側フランジと呼ぶ)を有する。内側フランジ30はオープンフレームから上に1〜3mm、例えば約2mmの距離だけ突出している。このように、この内側フランジは、外側フランジ25よりかなり低く直立し突出している。
【0128】
曲線状の外側及び内側フレーム部材10及び12、並びに、外側及び内側フランジ25及び30は共に、使用者の上下アーチ内の並びの悪い歯に対して矯正力を与え、これにより、上側の歯の正しい位置づけを積極的に促進する。さらに、ベース部材2にさらなる剛性及び構造強度を与える。
【0129】
図示のベース部材2は、ベース部材2のオープンフレームより下に、垂下すなわち下方に延在するフランジを目に見えるほどには有さない。
【0130】
本出願人は、上側フランジがベース部材2に必要なレベルのねじれ剛性を提供し、下側フランジは必要ないことを見出した。
【0131】
しかし、下垂フランジは、本発明の範囲内にあるものと考えられることは明らかである。例えば、下垂フランジは、ベース部材の強度をさらに増加させる。
【0132】
ベース部材2は、中央正面領域17において一対の開口38及び39を形成する。開口38及び39は、ベース部材2の内側及び外側の曲線状フレーム部材12及び10の両方に設けられている。これらは、ベース部材2の正面領域17の左右に位置している。これらの開口は、ベース部材2より下に、下方に垂下する一体ブラケット又はループ構造によって形成される。
【0133】
以下に、より詳細に説明するように、開口38及び39は、歯係合部材5における対応する開口と協働する。
【0134】
ベース部材2は、約300℃より低い温度にさらされたときに溶融軟化しない剛性プラスチック材料から作られる。図示の実施例において、ベース部材は、ポリアミド材料であるナイロンから成る。ナイロンは、シリコーンがナイロン上に射出成形される際に溶融シリコーンと接触したとき、軟化も溶融もしない。さらに、これは硬質であり適切なレベルの剛性を有することがわかっている。同時にこれは、左右のアーム領域の互いに近づきまた離れる方向への多少の運動ならびに左右のアーム領域の互いに対する多少のねじれを許容する。
【0135】
ナイロンは、主ポリマー鎖の一体部分として反復アミド基を有する長鎖状合成ポリマーアミドの一般名である。このポリマーは線状であり、フィラメントに形成するのに適しているが、必ずしもその必要はない。ナイロンを本願に適したものとするその特性の一つは、特に高い温度に耐えうることである。その結果、高温の溶融シリコーンと接触したときに、軟化も変形もしない。
【0136】
本出願人は、台湾、台北に本拠をおくShinko Chemical Companyからナイロンを入手している。下記表1は、同社から供給されているナイロン66の異なるグレードを示す。
【0137】
【表1】

【0138】
本出願人は、自身が作成した装具に、ナイロン66 6212GAとして知られるグレードのナイロン66を使用した。この材料は下記の特性を有する。
引張り強度 900
曲げ強度 1350
ロックウェル硬度 119
【0139】
ナイロンは、米国デラウェア州に本拠をおく、イー・アイ・デュポン・ヌムール・ケミカル・カンパニー(E I. Du Pont Nemours Chemical Company)(デュポン(Du Pont))を含む、その他多数の化学製品供給業者からも入手することができる。本出願人は、デュポン社から入手したナイロンもまた、充分に機能すると確信している。この材料は、主要商品であり、世界中の多数のナイロン供給業者から入手することができる。本出願人は、どの供給者からナイロンが供給されたかに関わらず、本発明を同等に良好に実施できるものと想定している。
【0140】
歯係合部材5は、ベース部材2のオープンフレーム部を概ね囲んで包み込む中央ウェブ40を有する。これによって横断部材15の間のスペースを埋め、また、オープンフレーム上にある程度の厚さの層を形成する。更に、歯係合部材5は、ウェブ40の両側において上方及び下方に延びる内側及び外側フランジ44、45を有する。これらのフランジ44及び45はウェブ40と共に、使用者の上下の歯を受容するための上下のチャネル46及び47を形成する。ベース部材2と同様、歯係合部材5は、中央正面領域及び左右のアーム領域48及び49を有してもよい。
【0141】
歯係合部材は、医療グレードのシリコーンゴムである、シリコーン含有高分子化合物から作られる。このゴムは主要商品であり、多数のよく知られた化学製品会社から購入することができる。例えば、本出願人はこれを、米国デラウェア州に本拠をおくデュポンケミカルカンパニー(Du Pont Chemical Company)から購入できることを知っている。
【0142】
本出願人は、好適なシリコーンゴムを、日本国東京都千代田区大手町二丁目6番1号に本拠をおく、信越化学工業株式会社という名前の日本の化学製品会社から調達している。この材料について、信越により提供されている材料仕様データシートを下記表2に示す。
【0143】
【表2】

【0144】
本出願人が本装具に最も頻繁に使用しているシリコーンのグレードは、KE−1950−70であり、これは最も硬質のグレードである。
【0145】
シリコーンゴムの別の供給業者は、ドイツ、レバークーセンを本拠とするバイエルケミカルカンパニー(Bayer Chemical Company)である。バイエル社は、無毒性であり医療グレード材料として好適な液体シリコーンゴムLSR2050を供給している。これは二成分ゴムであり、各成分は別々の容器に収納されている。これらの二つの成分が静的ミキサーに注入され、完全に混合された後、射出成形型に注入される。
【0146】
トレーナーは更に、歯係合部材5の内側及び外側フランジ44及び45のそれぞれに、歯位置決め構造50を含む。位置決め構造50は、個々の歯を、使用者のアーチ上の正しい位置に導き偏位させる。
【0147】
各歯位置決め構造50は、内側及び外側フランジ44、45のそれぞれから、上下チャネルによって規定されるスペース内に突出する突起を有する。歯位置決め構造50の各突起は、断面で見たとき、両側から、隣接する歯と歯のあいだの所望の位置にある点まで、内向きにテーパ状となったくさび型形状を有していてもよい。
【0148】
さらに、歯係合部材5の上下チャネルにそれぞれ、歯位置決め構造50を設けてもよい。
【0149】
図示の実施例において、歯位置決め構造50は、使用者の上顎のアーチの正面に最も近い、10個の歯を位置づけるものである。同様に、歯係合構造は、使用者の下顎の10個の前歯を位置づけるものであってもよい。
【0150】
歯列矯正用トレーナーは、歯係合部材5の外側フランジ45の中央上表面に、ノッチすなわち切り欠き55を含んでもよい。さらに、外側フランジ45の下面に、より小さい中央ノッチすなわち切り欠き57を含んでもよい。これらノッチは、歯係合部材の中央から材料を取り除いたもので、この部材が、この部分の軟質組織と接触しないようにする。この部分を横切って腱が延びており、歯係合部材5がこの腱と接触しないほうが、使用者にとって、より快適である。
【0151】
歯列矯正トレーナー1は更に、使用者の舌を正確な中央位置に位置づけるための舌タブ60を有する。舌タブは、歯係合部材5の内側フランジ44に、ウェブ40から上向きに形成されている。これにより、使用者の口腔習癖を改善し、特に、舌前突を防ぐことを支援する。タブ60の両側にあるスペースは、異なる使用者の異なるアーチサイズに対応するため、トレーナー1のアームを内側及び外側に調節することを可能とするという重要な機能を果たす。これにより、2つの異なるアーチサイズを持つ2サイズの装具を、ほとんどの患者に適合させることができる。また、内側フランジの下縁の、例えば中央位置に、小さなノッチが設けられている。
【0152】
更に、歯係合部材5のウェブ40、例えばその上下面は、部材4の正面部から後向きに、左右後続アーム領域48及び49に至るまで外向きにテーパ状とされている。このことの効果は、ウェブ40を、歯係合部材5の正面から後方に向かう方向に徐々に太くすることである。これは、左右後続アーム領域48及び49の、アーム領域の後端から前方に離間した位置まで続く。以後、歯係合部材5の上下面は、互いに向かって内側にテーパ状となり、上記位置から歯係合部材5の後部にかけて徐々に細くなる。要するに、ウェブ40は、正面領域から後方に延びるそれぞれのアーム48、49上において、非対称の翼形状を有するものと一般的に説明できる。翼形状はその下側で、カーブした表面を持ち、このため、反転していると考えてもよい。
【0153】
ウェブ40の翼形状は、使用者の上下の歯の間のスペースを埋め、顎を支持する。これにより、下顎が、上顎に対して解剖学上の正しい位置をとることを可能とし、このことは、使用者にとって、リラクセーションと筋肉についての恩恵を与える。
【0154】
歯係合部材5は更に、ベース部材2の開口38及び39と同じ場所に形成された通路を有する。これらの通路は連続的なものであり、その両端において開放されている。ベース部材の開口38及び39はベース部材2と接触する、歯係合部材5の表面積を増加させる。これは、ベース部材上に歯係合部材を保持し、層間剥離を防ぐことを支援することから、有用である。
【0155】
歯列矯正トレーナーは下記のように製造される。まず、第1の射出成形ステップにおいて、ナイロンからベース部材2を射出成形する。次に第2の成形ステップにおいて、歯係合部材5を、ベース部材2の周囲にこれを覆って成形し、ベース部材2を包み込む。次いで、形成した歯列矯正トレーナー1を型から取り外す。
【0156】
各成形ステップのサイクル時間は約15秒である。シリコーンゴム成形のサイクル時間は、ナイロンベース部材のサイクル時間より長い。一般に、成形品は受動的に冷却される。しかし、シリコーンゴムは、成形した後、積極的に冷却することができる。一般に、成形された材料が充分に冷却されたら、部材を型から取り外す。
【0157】
溶融シリコーンは、非常に高温で、例えば少なくとも300℃で型に導入する。このため、成形されたベース部材は、軟化することなく、この温度に耐え得るものでなければならない。ナイロンはシリコーンの注入温度に耐えることができ、したがって、この目的に非常に適したものと認められている。さらに、ナイロンは、高レベルの剛性と、局部的な硬度を有するとともに、トレーナーのアーム領域の、互いに近づく方向及び互いから離れる方向の若干の屈曲を許容する。
【0158】
二つの別々の型を用いてトレーナーを成形してもよい。すなわち、第1の型においてベース部材を成形し、取り出して第2の型に入れ、ここで歯係合部材を成形する。
【0159】
あるいは、ベース部材と歯係合部材を同じ型において、連続一体成形(コインジェクション)プロセスで成形することもできる。すなわち、第1のステップにおいて射出成形プロセスによってベース部材を成形し、その後第2のステップにおいてベース部材上に歯係合部材を成形する。歯係合部材を成形する前にベース部材を取り出す必要はない。型は二つの成形部を有し、それぞれベース部材と歯係合部材に用いられるもので、これらは、順番に成形領域の作業位置に運ばれる。
【0160】
使用時に、上述の歯列矯正トレーナーは、通常は、矯正歯科医または歯科医によって嵌め込まれる。本出願人が想定するトレーナーは、少なくとも二つの異なるサイズのベース部材を有する。それぞれ異なるサイズのベース部材は、異なるサイズの歯位置決め構造をもつ少なくとも4つの異なるサイズの歯係合部材を有する。
【0161】
したがって、医師の第1のステップは、異なるサイズのトレーナーのなかから適切なトレーナーを選び、患者の口腔にそれを挿入することである。通常、医師は、使用者のアーチと歯を検査測定した後で、トレーナーのサイズを選択する。しかし、トライアルアンドエラー(試行錯誤)方式を用いてもよく、この場合には、医師は異なるサイズの各装具を試した後で、最適に適合したものを選択する。
【0162】
患者の口腔に嵌め込まれると、歯係合部材の軟質シリコーンゴムが、使用者の歯茎と歯にあてがわれる。骨格となるベース部材は、トレーナーにより規定されるアーチの形状形態を維持する内在力を与え、且つ、歯を望ましい位置に偏位させる。
【0163】
歯係合部材の内側及び外側フランジは歯にあてがわれる。シリコーンは軟質で、使用者の口腔に合致する若干の能力を有する一方、弾性を有し、したがって、歯によって変形されると、使用者の歯に対して復帰力を加える。この力によって、個々の歯を、歯が飛び出したり引っ込んだりしないように整列させる。ベース部材の内在する剛性は、平面図で見たとき、滑らかにカーブした、放物線状の形状を形成するように、アーチの形状を維持する。このようにして、使用者の狭いアーチは、変形したベース部材の弾性偏位力により広がるように付勢される。この力は、能動的スプリングエネルギーと等価である。偏位力が歯に加えられてアーチを外に広げさせる。また、歯位置決め構造も、個々の歯が、アーチのラインの長さに沿って、好ましい位置をとることを促す。歯を移動させるために力を印加することは、歯列矯正における標準的技法である。
【0164】
歯列矯正トレーナーは、使用者の上下のアーチと歯の両方を受容するため、毎日の生活の間中使用するには適していない。例えば、トレーナーを装着している間、使用者は話したり食べたりすることができない。通常、使用者は、トレーナーを毎晩、数時間、装着する。可能であれば、日中も数時間、トレーナーを装着すると、より好適である。やがて、歯の該当する面に対する力の印加により、歯が所望の位置に移動していく。歯の移動が達成される生理学的なメカニズムは、歯科及び矯正歯科の分野においてよく知られており、本明細書では説明を省略する。
【0165】
本発明の、図示しない別の実施例において、ベース部材はナイロンから作られ、歯係合部材はポリ塩化ビニル(PVC)から作られる。
【0166】
PVC樹脂は化学産業における主要商品であり、世界中の多くの化学製品製造業者から入手することができる。本出願人は、PVC樹脂を、オーストラリア、ヴィクトリア州、フレミントン、レースコースロード135を本拠地とするパシフィックダンロップ社(Pacific Dunlop Limited)の分身会社であるインプロデクス(IMPRODEX)から入手している。
【0167】
本出願人が使用している製品の規格は、HYCO4016−89PVC化合物である。これは、良好な透明性と低い毒性が要求される用途のための透明押出成形グレードPVC化合物であり、食品と接触する用途に適している。
【0168】
このPVCグレードの特性は下記表3の通りである。
【0169】
【表3】

【0170】
これらの材料からつくられ、上述のシリコーンゴム製トレーナーと同じ構造的特徴や形態を有するトレーナーは、同様な2ステップ成形プロセスによって製造される。第1のステップにおいて、ベース部材がナイロンから成形される。その後、第2の射出成形ステップにおいて、歯係合部材がPVCから成形される。
【0171】
シリコーンゴムに代えてPVCを用いることの利点は、それほど高温の射出温度を必要としないことである。これにより、使用される成形装置が簡易なものとなる。また、歯係合部材がベース部材上に成形される際にベース部材が耐えなければならない温度を下げることができる。このことは、ベース部材にナイロン以外の材料を使用する可能性を開く。本出願人は、ポリエチレンやポリプロピレンなどの付加重合体や、ポリウレタンやポリカーボネートなどの縮合重合体や、サントプレーンなどの熱可塑性エラストマーなどの他の材料を想定している。さらに、その他の熱可塑性材料も適している。
【0172】
使用時に、このトレーナーは、上述のトレーナーと同様に用いられる。PVCはシリコーンと同様の特性を有し、上記その他のポリマー材料が使用された場合には、これらはナイロンと同様の特性を有する。
【0173】
図12乃至18に、本発明に係るスポーツガードである装具を示す。
【0174】
スポーツガードは、図1乃至図11を用いて説明した上述のトレーナーと同様の構造及び機能を有する。
【0175】
本実施例とトレーナーとの第一の大きな相違は、本ガードが、使用者の上側のアーチと歯を受容するための上チャネルのみを有する点である。本実施例では、使用者の下側の歯を受容するための下チャネルは有さない。
【0176】
ベース部材2は、図1乃至図11に図示されたトレーナーと同様に、オープンフレームアセンブリを有する。
【0177】
しかし、図1乃至図11のオープンフレームアセンブリが主に平面状であるのに対して、図12乃至図18のオープンフレームアセンブリはより複雑で、上向き及び水平方向に延在している。
【0178】
オープンフレームは、図1に示すような曲線状の下方外側長手フレーム部材10と、外側フレーム部材10から内側に離間した、曲線状の内側長手フレーム部材12とを有する。内側及び外側部材12及び10は両方とも同一水平面上にあり、水平フレーム部を形成すると言える。
【0179】
内側及び下方外側フレーム部材12及び10は、やはり内側及び外側フレーム部材12及び10と同一水平面内にある横断フレーム部材15により相互接続されている。これらの横断フレーム部材15は、内側及び下方外側フレーム部材12及び10の長さに沿って、互いに間隔をおいて設けられている。正面中央領域17及び後続アーム領域18及び19の後部には、特に突出した横断フレーム部材15が設けられている。
【0180】
また、図14乃至図18のベース部材は、さらに、曲線状の上方外側長手フレーム部材70を含む。この上方外側長手フレーム部材70は、下方長手フレーム部材10の上に、間隔をおいて設けられている。その厚みとサイズは下方外側長手フレーム部材10と同程度である。これらフレーム部材10及び70は合わせて垂直フレーム部を規定している。上側部材70は、下側部材10の上に、約7〜14mm、たとえば、8〜12mm離れている。
【0181】
また、ベース部材2はさらに、上方及び下方の外側長手部材70及び10の間に、これらの部材70及び10の長さならびにベース部材2の長さに概ね沿って、互いに間隔をおいて延在する、垂直延在横断フレーム部材72を含む。
【0182】
突出した垂直横断部材72は、ベース部材2の中央正面領域17に位置している。この横断フレーム部材72は、その上端に向けて分岐74を持つ。この分岐74は、歯係合部材5の外側フランジ45における切り欠き55を迂回するためのものである。切り欠き55については、図1を参照して上に説明した。
【0183】
さらなる突出した垂直横断フレーム部材72が、上下の外側フレーム部材70及び10の後部に向かって設けられている。また、正面領域及び後部において、これら突出横断フレーム部材同士の間に、いくつかの中間垂直横断部材72が設けられている。
【0184】
ベース部材2の正面寄りの中間横断フレーム部材72は、底部から頂部に向かって、後方に傾斜すなわち斜めに延在していてもよい。一方、後部よりの横断フレーム部材のいくつかは、底部から頂部に向かって、前方に傾斜していてもよい。支柱すなわち横断梁76が、下方部材10から、後部横断部材72と上方長手部材70の後部との交点まで、斜め上方及び後方に延在していてもよい。これにより、ガードの正面に加えられた衝撃からベース部材を介して後向き方向に伝達される力を吸収するのを助ける。
【0185】
一方、内側長手フレーム部材から上方に延在する垂直オープンフレーム構造の等価物は設けられていない。
【0186】
図に示すように、内側長手フレーム部材12は、その全長にわたって若干太くされ、水平横断フレーム部材15の上に、上向きに突出している。これは、特に、図17及び図18に明瞭に示されている。図示された内側フレーム部材12は、約2〜10mm、例えば3〜7mmの高さを有する。しかし、外側フレーム部材10のようにその上方に延在するオープンフレーム構造は有していない。
【0187】
オープンフレーム構造によって、エネルギーを吸収する多少の弾力性が許容される。オープンフレームの水平延在部分に加えて、上方外側フレーム部材70と、横断部材72と、梁76を備えた垂直フレーム部分を設けることの目的は、ベース部材をさらに強化することである。特に、この、オープンフレームの垂直延在部分は、歯の外側を覆っているので、正面への衝撃に対してガードを強化する。このようにして、正面への衝撃による損傷から、上側の歯、特に、上側アーチの切歯を保護する。
【0188】
図示されているガードのベース部材は、ナイロン等のポリアミド材料から作られる。
【0189】
歯係合部材5の特徴は、内側及び外側フランジが、上側アーチと上側の歯を受容する上チャネルのみを規定する点である。ガードの下側は、図14及び図16に示すように略フラットである。これは、使用時に使用者の下側歯列の頂部に接触することができるが、歯列を受容しない。使用者が口を閉じたとき、部材の下側は下側の歯列の上に載る。これによって、使用者はガードの装着中にも話すことができ、激しい呼吸も可能である。多くのスポーツガードはこのような一般的特性を持つ。
【0190】
歯係合部材5は、ベース部材2を包み込んで受容する。図示するように、ベース部材を覆う歯係合部材はかなり厚い。これにより、使用者に対して、歯係合部材の外表面が適度に軟質となる。また、ガードが提供する保護を増進させる。
【0191】
歯係合部材は、図1の実施例におけるような歯位置決め構造を持たない。なぜなら、その単一の機能が歯と顎を保護することであり、歯を整復させることではないからである。
【0192】
図示されているガードの歯係合部材はシリコーンゴムから作られる。シリコーンゴムはポリアミドのベース部材上に成形される。シリコーンゴムは軟質であり、口腔内装具としてすでに受け入れられていることから、歯係合部材として好ましい。
【0193】
スポーツガードとして使用する際、ガードは、まず、歯科医などの者により、上述の歯列矯正トレーナーとだいたい同じようにして嵌め込まれる。入手可能な異なるサイズのなかから適切なサイズのガードを選択し、使用者の口腔内にガードを挿入する。
【0194】
その後、接触性スポーツを行っている間、使用者は必要に応じてガードを装着する。重要なことは、ガードを沸騰水に入れてから使用者の口腔に適合するように成形する必要がないことである。
【0195】
ガードは、シリコーンゴムが柔らかいという事実にも関わらず、かなりの強度を有する。これは、シリコーンの歯係合層の下にあるナイロンのベース部材の強度に由来する。正面領域を横断する垂直フレーム部分を有するベース部材は、正面への衝撃が、前歯だけではなく顎のアーチ全体に加えられるようにする。
【0196】
上述のガードは、子供、特に成長過程の子供に対して特に適用される。子供は、成形する必要があるガードの使用には多少の抵抗を示し、成形する必要がないガードのほうを好むものである。
【0197】
ナイロンによって、十分な弾性とばね力がもたらされ、成形を行うことなくある程度の快適さをもって、装具をたいていの使用者にフィットさせることが可能となる。さらに、シリコーンゴムの軟質性は、ガードを成形しないにもかかわらず適度な快適さをもって使用者にフィットすることを支援する。
【0198】
このように、本装具は、スポーツガードとして使用するのに非常に効果的である。特に、このガードは、使用者の歯と顎に十分に高レベルの保護をもたらすことが分かった。特に、成人がスポーツをする時とくらべて衝撃の力が小さい、成長過程の子供に適している。また、ラグビーやアメリカンフットボールとくらべて、与えられる衝撃が小さい、低レベルの接触性スポーツにも特に適している。スポーツガードは、サッカー、スカッシュ、ホッケーなどのスポーツに用いるのに特に適している。
【0199】
図面を参照して説明した上記の装具の利点は、アーチを広げて歯を整復させるのに十分な強度を与えることができることである。歯に加えられる力は、他の歯列矯正器具によって得られるものに匹敵する。整復力は、ナイロンのベース部材の内在強度によるものである。ベース部材は、突出したり、引っ込んでいる歯並びの悪い歯に力を加える効果をもち、この力によって、歯をアーチ形状またはアーチラインに復帰させる。
【0200】
ベース部材の曲線状の外側フレーム部材上のフランジは、使用者の歯の再整列と、アーチの拡張を支援する。フランジを含むベース部材の内側及び外側長手フレーム部材は、歯が引っ込んでいたり、歯並びが悪いときに歯を前方に押す効果をもつ。同様に、歯が回転して、末端部が突出して近心端が引っ込んでいる場合には、内側及び外側フランジは、正しい位置への回転再整列促進する力を加える。さらに、アーチ形態が狭い場合は、内側及び外側フレーム部材は幅広いアーチ形態を持つように設計され、弾性をもち、これにより、歯を外側に付勢してアーチ形態を広げる。
【0201】
このように、本トレーナーは、単に、隣接する歯が突出しないように互いに整列させるだけではない。むしろ、理想的なアーチ幅よりも狭い場合にアーチを広げようとするものである。また、アーチラインに沿って、個々の歯を正しい位置に正確に位置決めする。このようにして、二つの前歯の間のラインが、アーチの中線に位置づけられる。これは、満足できる審美的歯列矯正のための重要な要件である。
【0202】
上述の歯列矯正トレーナーのさらなる利点は、シリコーンゴムが非常に軟質の材料であることである。このため、使用者の歯と歯茎に過大な局部的な圧力を加えることなく、歯と歯茎の輪郭に合致する能力を有する。そこで、トレーナーは、使用者の口腔に対して過酷なものではない。患者の口腔内の軟質組織を傷つけることなく、十分な快適さをもって装着することができる。
【0203】
さらに、トレーナーは成形作業において大量に製造することができる。装具は二ステップ成形作業において射出成形される。これにより、装具を妥当なコストで製造することができる。個々の使用者のために特注で成形する必要もない。これにより、妥当なコストで市場に供給することが可能となる。
【0204】
上述の歯列矯正トレーナーのさらなる利点は、使用者の個々の歯を最適な位置に位置決めするための位置決め構造を有することである。大量生産されるトレーナーによって、アーチの放物線カーブに個々の歯を位置決めすることは、大きな進歩である。
【0205】
歯列矯正トレーナーは、さらに、舌を正しく位置づけるためのタブと、タブの両側に設けられ、トレーナーのアームをある程度開閉できるようにするためのスペースを有する。
【0206】
上述のスポーツガードの利点は、たいていの使用者にフィットできる、効果的なスポーツガードを提供できる点である。さらに、使用者の歯と歯茎に接触するシリコーンゴムが軟質で適合性をもつため、このスポーツガードは快適である。さらに、スポーツガードは、スポーツを行っている最中に与えられる頭や口への衝撃に対して、効果的な保護をもたらす。さらに、このスポーツガードは、非常に妥当なコストで市場に提供することができ、使用者に嵌め込む前に沸騰水中で成形する必要がない。
【0207】
上述の説明は本発明の例示としてのものであり、当業者に明らかなすべての変更や変形は、ここに説明した本発明の広義の範囲内に含まれることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0208】
以上説明したように、本願発明の歯列矯正トレーナーは、歯列矯正器具である口腔内装具に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の歯列アーチに対応した形状を有し、正面領域と前記正面領域に連続した左右アームを備え、弾性を有するポリマー材料で形成されたベース部材と、
前記ベース部材のポリマー材料よりも柔らかい材料から成り、前記ベース部材の少なくとも一部を囲んで包み込み、使用者の該当するアーチ及び歯を受容し得る上下の歯チャネルの少なくとも一方を規定する歯係合部材と、を有し、
歯列矯正トレーナーを口腔内に挿入し、使用者の該当するアーチ上に装着したときに、前記使用者の該当するアーチに前記歯係合部材が矯正力を与えるオープンフレーム構造を有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項2】
請求項1に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材の前記ポリマー材料はシリコーンゴム又はポリ塩化ビニル(PVC)であることを特徴とする、歯列矯正トレーナー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記ベース部材は、アミド単量体の縮合重合またはカプロラクタムの開環重合のいずれかによって形成されるポリアミド材料;ポリエチレン;ポリウレタン;ポリカーボネート;および熱可塑性エラストマー;のいずれかであることを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項4】
請求項1乃至3の内のいずれか一項に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記ベース部材は、オープンフレーム構造を有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項5】
請求項4に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、
前記ベース部材のオープンフレーム構造は曲線状の内側および外側長手フレーム部材と、互いに間隔をおいて、前記内側および外側長手フレーム部材の間まで延在する複数の横断フレーム部材とを有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項6】
請求項5に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、
前記オープンフレーム構造は、略平面形状であり、前記内側および外側長手フレーム部材と前記横断フレーム部材は、略同一平面内にあることを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、
前記複数の横断フレーム部材は、前記ベース部材の正面部分にあり、前記正面部分を補強する正面横断フレーム部材を含むことを特徴する歯列矯正トレーナー。
【請求項8】
請求項7に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記内側および外側長手フレーム部材の長手方向沿って配置された2個の中間横断フレーム部材を有し、それによって前記2個の中間横断フレーム部材は、前記使用者の上側のアーチを外側の門歯を略整列させることを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、
前記複数の横断フレーム部材は、さらに、前記左右アームの裏側に2個の後部横断フレーム部材を有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項10】
請求項5から9の内のいずれか一項に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、
前記ベース部材は、前記外側長手フレーム部材上に外側歯整復構造を有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項11】
請求項10に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記外側歯整復構造は、曲線状の前記外側長手フレーム部材と一体に形成され、前記外側長手フレームから上方に突出した外側フランジを有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項12】
請求項1乃至11の内のいずれか一項に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材は、略完全に前記ベース部材を収容することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項13】
請求項1乃至12の内のいずれか一項に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材は、上下面を有する中央ウェブと、前記上下面から夫々上下に突出し、前記上下面を有する上下の歯チャネルを規定する内側および外側フランジとを有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項14】
請求項13に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記内側および外側フランジは、上下の歯チャンネルにおける使用者の歯および歯茎に対して耐えられるように構成されていることを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、前記歯係合部材は、
使用者の特定の歯の位置決めをするために、互いに隣接して配置された少なくとも一対の歯位置決め構造を有し、前記少なくとも一対の隣り合う歯位置決め構造は、前記歯係合部材の夫々対応する歯チャンネル内に面する前記内側および外側フランジ上に配置され、横一列に並んでいることを特徴とする歯列矯正トレーナー。
【請求項16】
請求項15に記載の歯列矯正トレーナーにおいて、それぞれの前記隣り合う歯位置決め構造は、夫々の前記フランジから離れて対応する歯チャンネル内に向かうくさび形状の突起を有することを特徴とする歯列矯正トレーナー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−223587(P2012−223587A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145383(P2012−145383)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2007−535953(P2007−535953)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(507123822)
【Fターム(参考)】