説明

歯列矯正器具のポジショニング方法

【課題】歯列矯正器具の取り付けをより便利かつ効率よくし、取り付けコストを抑えることができる歯列矯正器具のポジショニング方法を提供すること。
【解決手段】プラスチック射出成型でベース単体1を設け、製作時に患者の歯型模型4に十字の基準線を描き、矯正器具2を加熱した後ベース単体1に嵌置し、可撓部材3で矯正器具2を縛ってポジショニングし、各ベース単体1を矯正器具2と共に歯型模型4に貼付し、矯正器具2の位置を適切に調整した後、光硬化樹脂5で各ベース単体1を相互に連接させ、各矯正器具2の背面に接着剤を塗布した後、連接した各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けた矯正器具2と共に直接患者の矯正が必要な各歯部に貼付し、接着剤が固まった後、各ベース単体1に縛り付けられた可撓部材3を外し、かつ各ベース単体1を矯正器具2から取り外す。歯部の表面に固定された各矯正器具2を緊密に連接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列矯正器具のポジショニング方法に関し、特に、矯正器具の取り付けをより便利かつ効率的にすることで、取り付けコストを抑えることができる、歯列矯正器具のポジショニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に歪んだ歯並びを矯正するときは、通常歯の表面に矯正器具を貼付し、さらに各矯正器具を緊密に連接するが、従来の矯正器具は大体が次のような方法で取り付けられる(特許文献1)。
1、まず患者の歯の状態に基づいて歯型模型を製作する。
2、歯型模型に十字線を描き、内縁に蝋材を塗布する。
3、矯正器具を十字線に基づいて歯型模型の内縁に合わせ、粉末成型で単体のベースを成型する。
4、可撓部材でベースと矯正器具を縛る。
5、取り付け時は矯正器具に接着剤を塗布し、逐一患者の歯に貼付する。
6、可撓部材を取り外してベースを外し、矯正器具を歯の表面に固定した後、各矯正器具を連接して取り付けが完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5586881号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来の矯正器具の取り付け方法は、特定の患者の歯のみに使用できるだけであることに加え、専門の歯型模型技師によってベースを作製する必要があり、且つ製作と取り付けの過程全体に時間がかかり、効率が悪いだけでなく、取り付けのコストも高く、患者の経済的負担が増す。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、歯列矯正器具の取り付けをより便利かつ効率よくし、取り付けコストを抑えることができる歯列矯正器具のポジショニング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る歯列矯正器具のポジショニング方法は、
a.患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、
b.異なる歯部及び異なる型式の矯正器具に基づいて異なるベース単体を製作し、各ベース単体に十字状の基準線を設け、かつ各ベース単体に異なる歯部に基づき番号を付す工程と、
c.矯正器具を加熱した後、ベース単体に嵌置し、かつ可撓部材で矯正器具を縛ってポジショニングし、ベース単体に矯正器具の形状に基づいて矯正器具の安定座部を構成する工程と、
d.前記各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型に貼付し、かつその十字状基準線を歯型模型の十字基準線に合わせ、矯正器具の位置を適切に調整する工程と、
e.光硬化樹脂を前記各ベース単体に貼付し、光硬化樹脂の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、
f.光硬化樹脂が硬化した後、連接されたベース単体が構成される工程と、
g.前記連接された各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型から取り外す工程と、
h.各矯正器具の背面に接着剤を塗布した後、前記連接された各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に患者の矯正が必要な各歯部に直接貼付する工程と、
i.前記接着剤が固まった後、各ベース単体に縛り付けられた可撓部材を特定の工具で外し、かつ各ベース単体を矯正器具から取り外す工程と、
j.矯正の必要な歯部の表面に固定された各矯正器具を緊密に連接する工程と、
を含むことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る歯列矯正器具のポジショニング方法は、請求項1に係る歯列矯正器具のポジショニング方法において、前記ベース単体がプラスチック射出成型で製作されたことを特徴とするものである。
【0008】
また、請求項3に係る歯列矯正器具のポジショニング方法は、請求項1に係る歯列矯正器具のポジショニング方法において、前記ベース単体が、水平鉤部と前記水平鉤部から下方に向かって延伸された垂直部を含み、前記dに記載の工程及び前記hに記載の工程において、前記水平鉤部を歯型模型及び患者の歯部に掛止させることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る歯列矯正器具のポジショニング方法は、請求項3に係る歯列矯正器具のポジショニング方法において、前記ベース単体の垂直部に、横方向の位置決め溝と縦方向の基準線溝を設け、十字状の基準線を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の取り付け方法と比較して、少なくとも以下の利点がある。
技師によるベース単体製作の手間を省き、歯科医が直接使用でき、取り付けの時間を節約して、作業効率を高めることができる。技師によるベース単体製作の工程が省略されるため、取り付けのコストを抑え、患者の経済的負担を軽くすることができる。取り付け時に、直接連接したベース単体と矯正器具を患者の歯に配置することができ、作業を迅速かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る歯形模型を示す斜視図である。
【図2】本発明の歯列矯正器具のポジショニング方法の手順を示す図である。
【図3】歯列矯正器具を分解して示す斜視図である。
【図4】歯列矯正器具を裏面側から示す斜視図である。
【図5】実施形態において各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型に貼付する工程を示す斜視図である。
【図6】ベース単体を歯列矯正器具と共に歯型模型に貼付し、十字状基準線を歯型模型の十字基準線に合わせ、矯正器具の位置を適切に調整した状態を示す斜視図である。
【図7】歯型模型上において、光硬化樹脂を各ベース単体に貼付し、光硬化樹脂の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程を示す斜視図である。
【図8】光硬化樹脂が硬化した後の連接されたベース単体を示す斜視図である。
【図9】接着剤が固まった後、各ベース単体に縛り付けられた可撓部材を特定の工具で外し、かつ各ベース単体を矯正器具から取り外す工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の歯列矯正器具を歯部に固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施形態に係る歯形模型を示す斜視図である。図2は本発明の歯列矯正器具のポジショニング方法の手順を示す図である。図3は歯列矯正器具を分解して示す斜視図であり、図4は歯列矯正器具を裏面側から示す斜視図である。図5は各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型に貼付する工程を示す斜視図であり、図6はベース単体を歯列矯正器具と共に歯型模型に貼付し、十字状基準線を歯型模型の十字基準線に合わせ、矯正器具の位置を適切に調整した状態を示す斜視図である。図7は歯型模型上において、光硬化樹脂を各ベース単体に貼付し、光硬化樹脂の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程を示す斜視図であり、図8は光硬化樹脂が硬化した後の連接されたベース単体を示す斜視図である。図9は接着剤が固まった後、各ベース単体に縛り付けられた可撓部材を特定の工具で外し、かつ各ベース単体を矯正器具から取り外す工程を示す斜視図であり、図10は本発明の歯列矯正器具を歯部に固定した状態を示す斜視図である。
【0013】
本発明の歯列矯正器具の製作及び取り付けのプロセスは、以下の工程を含むものである。
(工程1)患者の歯形に基づき歯型模型4を製作し、患者の歯型模型4に特定の装置で十字の基準線41を描く(図1参照)。
【0014】
(工程2)プラスチック射出成型方式で、異なる歯部及び異なる型式の矯正器具に基づき異なるベース単体1を製作し、各ベース単体1がそれぞれ水平鉤部11と水平鉤部11から下方に向かって延伸された垂直部12とを含み、垂直部12の前面の適切な位置に横方向の位置決め溝121を設け、かつ中央位置に縦方向の基準線溝122を設けることにより、十字状の基準線を形成する(図3参照)。
【0015】
(工程3)各ベース単体1の垂直部12に異なる歯部に基づいて番号111を付与する(図3参照)。
【0016】
(工程4)矯正器具2を加熱した後、ベース単体1の垂直部12の裏面に嵌置する。ベース単体1に矯正器具2の形状に基づいて矯正器具2の安定座部123を形成し(図4参照)、可撓部材3で位置決め溝121に沿って矯正器具2を縛り、ポジショニングする(図3、図5参照)。
【0017】
(工程5)前述の各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を歯型模型4の歯部に掛止させて貼付し(図5及び図6参照)、垂直部12の位置決め溝121と基準線溝122で形成した十字状基準線を歯型模型4の十字基準線41に合わせ、矯正器具2の位置を適切に調整する。
【0018】
(工程6)光硬化樹脂5を前述の各ベース単体1に貼付し、光硬化樹脂5の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂5で各ベース単体1を相互に連接する(図7参照)。
【0019】
(工程7)光硬化樹脂5を硬化させて、連接されたベース単体1を構成する。
【0020】
(工程8)連接された各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に歯型模型4から取り外す(図8参照)。
【0021】
(工程9)各矯正器具2の背面に接着剤を塗布した後、連接した各ベース単体1をこれらベース単体1に縛り付けられた矯正器具2と共に水平鉤部11を患者の矯正が必要な各歯部に掛止させて直接貼付する。
【0022】
(工程10)背面の接着剤が固まった後、各ベース単体1に縛り付けられた可撓部材3を特定の工具(一点鎖線で示す)で外し、かつ各ベース単体1を矯正器具2から取り外す(図9参照)。ベース単体1を取り外すことにより、矯正器具2がそれぞれ矯正の必要がある歯部の表面に接着剤で固定される(図10参照)。
【0023】
(工程11)歯科医は、金属等の線材によって歯の表面に固定された各矯正器具2を相互に連接させて矯正器具の取り付け作業を完了することができる。
【0024】
上述をまとめると、本発明は事前に成型したベース単体に、ベース単体に縛り付けた矯正器具を組み合わせ、歯列矯正器具の取り付けをより便利かつ効率的にし、取り付けのコストを抑えることができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ベース単体
11 水平鉤部
111 番号
12 垂直部
121 位置決め溝
122 基準線溝
123 安定座部
2 矯正器具
3 可撓部材
4 歯形模型
41 基準線
5 光硬化樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.患者の歯形に基づいて歯型模型を製作し、歯型模型に特定の装置で十字の基準線を描く工程と、
b.異なる歯部及び異なる型式の矯正器具に基づいて異なるベース単体を製作し、各ベース単体に十字状の基準線を設け、かつ各ベース単体に異なる歯部に基づき番号を付す工程と、
c.矯正器具を加熱した後、ベース単体に嵌置し、かつ可撓部材で矯正器具を縛ってポジショニングし、ベース単体に矯正器具の形状に基づいて矯正器具の安定座部を構成する工程と、
d.前記各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型に貼付し、かつその十字状基準線を歯型模型の十字基準線に合わせ、矯正器具の位置を適切に調整する工程と、
e.光硬化樹脂を前記各ベース単体に貼付し、光硬化樹脂の内縁に噛み合わせ面の紋様を形成し、さらに同じ光硬化樹脂で各ベース単体を相互に連接する工程と、
f.光硬化樹脂が硬化した後、連接されたベース単体が構成される工程と、
g.前記連接された各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に歯型模型から取り外す工程と、
h.各矯正器具の背面に接着剤を塗布した後、前記連接された各ベース単体をそれらベース単体に縛り付けられた矯正器具と共に患者の矯正が必要な各歯部に直接貼付する工程と、
i.前記接着剤が固まった後、各ベース単体に縛り付けられた可撓部材を特定の工具で外し、かつ各ベース単体を矯正器具から取り外す工程と、
j.矯正の必要な歯部の表面に固定された各矯正器具を緊密に連接する工程と、
を含むことを特徴とする歯列矯正器具のポジショニング方法。
【請求項2】
前記ベース単体がプラスチック射出成型で製作されたことを特徴とする、請求項1に記載の歯列矯正器具のポジショニング方法。
【請求項3】
前記ベース単体が、水平鉤部と前記水平鉤部から下方に向かって延伸された垂直部を含み、
前記dに記載の工程及び前記hに記載の工程において、
前記水平鉤部を歯型模型及び患者の歯部に掛止させることを特徴とする、請求項1に記載の歯列矯正器具のポジショニング方法。
【請求項4】
前記ベース単体の垂直部に、横方向の位置決め溝と縦方向の基準線溝を設け、十字状の基準線を形成したことを特徴とする、請求項3に記載の歯列矯正器具のポジショニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−136144(P2011−136144A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186093(P2010−186093)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(510228178)
【Fターム(参考)】