説明

歯形転造工具及び歯車製品の製造方法

【課題】所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保しつつ、歯形転造工具にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる歯形転造工具及び歯車製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】歯底部12と歯先部13を備える加工歯11を、ワークに押し当てて歯形を成形する歯形転造工具10において、歯底部12には、ワークが当接しない逃げ部12aが形成されているとともに、少なくとも1歯にはワークの仕上がり寸法でワークに当接する矯正部12bが形成されており、歯先部13には、ワークに当接する加工部13aが形成されているとともに、矯正部12bに隣接する少なくとも1歯には、矯正部12bがワークに当接しているときにワークが当接しない非加工部13bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに押し当てて歯形を転造する歯形転造工具及び歯車製品の製造方法に関する。より詳細には、歯形転造工具にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる歯形転造工具及び歯車製品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から転造工具をワークに押し当てて、ワークの回転と転造工具との動きを同期させることにより歯形を成形する転造技術が知られている。この技術では、転造を行なう加工歯を外周部に備えた歯形転造工具をワークの回転に同期させて移動させつつ、ワークの内周部(内歯転造の場合)又は外周部(外歯転造の場合)に押し込むことにより、歯形転造工具の加工歯でワークに対して転造を行って歯形を成形している。
【0003】
例えば、内歯を有する歯車製品を製造する場合には、筒状のワークの内周部に歯形転造工具を配置し、歯形転造工具の加工歯を筒状のワークの内周部に押し当てた状態で強制的に相対移動させて回転させる。そのとき、歯形転造工具の回転中心と筒状のワークの中心との間の距離を逐次変化させながら、歯形転造工具の加工歯を筒状のワークの内周面に押し込んでいき、順次歯形を成形している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3947204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した転造技術では、転造終盤にワークに形成された歯先を歯形転造工具に備わる加工歯の歯底に当てることにより、所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保しているため、歯形転造工具の加工歯にかかる面圧(応力)が高くなる。そのため、工具寿命が短くなってしまうという問題があった。
ここで、歯形転造工具の加工歯にかかる面圧を下げるには、ワークに形成された歯先を歯形転造工具の加工歯の歯底に当てないようにすればよい。ところが、そのようにした場合、ワークに形成された歯先部に凸形状が残ってしまい、所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保することができない。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保しつつ、歯形転造工具にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる歯形転造工具及び歯車製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一形態は、歯底部と歯先部を備える加工歯を、ワークに押し当てて歯形を成形する歯形転造工具において、前記歯底部には、ワークが当接しない逃げ部が形成されているとともに、少なくとも1歯にはワークの仕上がり寸法でワークに当接する矯正部が形成されており、前記歯先部には、ワークに当接する加工部が形成されているとともに、前記矯正部に隣接する少なくとも1歯には、前記矯正部がワークに当接しているときにワークが当接しない非加工部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
この歯形転造工具では、歯底部に、歯形転造時にワークが当接しない逃げ部が形成されているため、加工歯に作用する面圧を下げることができる。また、歯底部の少なくとも1歯にはワークの仕上がり寸法でワークに当接する矯正部が形成されているため、ワークの歯先に凸部が形成されたとしても、矯正部により凸部が矯正されて所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保することができる。
【0009】
ここで、ワークの歯先凸部を矯正する際には、矯正部に隣接する加工歯に大きな面圧が作用するため、矯正部から工具が破損するおそれがある。そのため、この歯形転造工具では、歯先部に、ワークに当接する加工部を設けるとともに、矯正部に隣接する少なくとも1歯は、矯正部がワークに当接しているときにはワークに当接しない非加工部を設けている。このような非加工部を歯先部に設けることにより、矯正部によりワークの歯先凸部を矯正する際に、加工歯に作用する面圧を下げることができる。従って、矯正部から工具が破損することを防止することができる。
【0010】
このように、この歯形転造工具によれば、所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保しつつ、加工歯にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる。
【0011】
上記した歯形転造工具においては、ワークの内周部に押し当てて内歯を成形してもよいし、ワークの外周部に押し当てて外歯を成形してもよい。
【0012】
このように、この歯形転造工具では、内歯あるいは外歯のどちらも転造することができ、歯形転造の際に加工歯にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図るとともに、所望の製品歯たけ及び歯先形状を確保することができる。
【0013】
上記した歯形転造工具において、前記非加工部が前記矯正部に隣接する1歯にのみ形成されている場合には、その非加工部は前記矯正部に対して工具移動方向前方側の歯に形成されていることが好ましい。
【0014】
工具における歯先部の加工部で歯形を成形する際、加工歯の歯元に作用する応力は、その加工歯において工具移動方向後方側で大きくなる。そのため、非加工部を矯正部に対して工具移動方向前方側の歯に形成する方が、加工歯の歯元が受ける応力の振幅を小さくする効果が大きいと考えられるからである。これにより、矯正部から工具が破損することを確実に防止することができる。
【0015】
上記した歯形転造工具において、前記非加工部は、前記矯正部に隣接する2歯に形成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成にすることにより、矯正部から工具が破損することをより確実に防止することができるため、工具寿命をより一層向上させることができる。
【0017】
上記した歯形転造工具は、ワークにヘリカルギヤを成形するのに好適である。
【0018】
歯先部に非加工部を設けているため、転造初期において、非加工部でワークに噛み合わないおそれがあるが、ヘリカルギヤの転造であれば、ワークと歯形転造工具とが噛み合った状態を常に維持することができる。そのため、ワーク又は歯形転造工具のいずれか一方を回転させて他方を従動させることができ、ワークと工具とを確実に同期回転させることができる。
【0019】
また、上記課題を解決するためになされた本発明の別形態である歯車製品の製造方法は、上記したいずれか1つの歯形転造工具の加工歯をワークに押し当てて、ワークの回転と同期させて前記歯形転造工具を移動させてワークに歯形を成形することを特徴とする。
【0020】
この歯車製品の製造方法によれば、上記した歯形転造工具を用いて歯形を成形するので、ワークに対して内歯又は外歯を所望の製品歯たけ及び歯先形状に成形しつつ、工具寿命の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る歯形転造工具及び歯車製品の製造方法によれば、上記した通り、ワークに所望の製品歯たけ及び歯先形状を成形しつつ、転造工具にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態に係る歯形転造工具の外観斜視図である。
【図2】歯形転造工具における加工歯の形状を模式的に示す図である。
【図3】歯形転造工具をワークの内周に押し当てた状態を模式的に示す図である。
【図4】転造初期の状態を模式的に示す図である。
【図5】転造途中の状態を模式的に示す図である。
【図6】加工歯がワークの内周に噛み込んでワーク内周全域に歯形が形成された状態を模式的に示す図である。
【図7】転造終盤における逃げ部付近の状態を模式的に示す図である。
【図8】転造終盤における矯正部付近の状態を模式的に示す図である。
【図9】内歯を有する歯車製品の外観斜視図である。
【図10】ワークに外歯を転造する場合の様子を示す図である。
【図11】ワークに外歯を転造する場合の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る歯形転造工具及び歯車製品の製造方法を具体化した実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
まず、本実施の形態に係る歯形転造工具について、図1及び図2を参照しながら説明する。図1は、実施の形態に係る歯形転造工具を示す外観斜視図である。図2は、歯形転造工具における加工歯の形状を模式的に示す図である。
【0024】
図1に示すように、本実施の形態に係る歯形転造工具10は、外周に加工歯11が設けられた歯車状の金属製の工具である。この歯形転造工具10は、加工歯11をワークに押し当てて、歯形転造工具10とワークとを同期回転させながら、歯形転造工具10をワークに押し込んでいくことにより、ワークに歯形を成形(転写)するようになっている。
【0025】
加工歯11には、図2に示すように、歯底部12と歯先部13が形成されている。そして、歯底部12には、歯形転造時にワークが当接しない逃げ部12aが形成されている。ただし、歯底部12の1歯だけは、ワークの仕上がり寸法でワークに当接する矯正部12bが形成されている。すなわち、矯正部12bの形状は、主にワークの歯面及び歯先を所望の形状に転造することができるように形成されており、矯正部12bの歯底が逃げ部12aの歯底よりも工具外側に位置している。つまり、図2に示すように、逃げ部12aの歯底円半径raと矯正部12bの歯底円半径rbとの関係が、ra<rbとなっている。なお、逃げ部12aの歯底円半径raは、歯形転造工具10の回転中心Oから逃げ部12aの歯底までの距離であり、矯正部12bの歯底円半径rbは、歯形転造工具10の回転中心Oから矯正部12bの歯底までの距離である。
【0026】
ここで、本実施の形態では、矯正部12bを歯底部12の1歯のみ設けているが、2歯以上設けることもできる。なお、矯正部12bは、少なくとも1歯設けられていれば良く、矯正部12bの設定数は、成形するギヤ(歯形)の諸元などにより適宜決定すればよい。
【0027】
一方、歯先部13には、歯形転造時にワークが当接する加工部13aが形成されている。ただし、矯正部12bに隣接する2歯には、矯正部12bがワークに当接するときにワークが当接しない非加工部13bが形成されている。すなわち、加工部13aの形状は、主にワークの歯元を所望の形状に転造することができるように形成されており、加工部13aの歯先が非加工部13bの歯先よりも工具外側に位置している。つまり、図2に示すように、加工部13aの歯先円半径Raと非加工部13bの歯先円半径Rbとが、Ra>Rbとなっている。なお、加工部13aの歯先円半径Raは、歯形転造工具10の回転中心Oから加工部13aの歯先までの距離であり、非加工部13bの歯先円半径Rbは、歯形転造工具10の回転中心Oから非加工部13bの歯先までの距離である。
【0028】
ここで、本実施の形態では、非加工部13bを矯正部12bに隣接する両方(2歯)に設けているが、非加工部13bは矯正部12bに隣接する少なくとも一方の歯(1歯のみ)に設ければ良い。ただし、この場合には、非加工部13bは、矯正部12bに対して工具移動(回転)方向前方側の歯に設けることが好ましい。例えば図2において、歯形転造工具10を時計回りに回転させる場合であれば、図中下側に位置する非加工部13bのみ設ければ良い。なぜなら、歯形転造時に加工歯11の歯元に作用する応力は、その加工歯11において工具回転方向後方側で大きくなる。そのため、非加工部13bを矯正部12bに対して工具回転方向前方側の歯に形成する方が、加工歯11の歯元が受ける応力の振幅を小さくする効果が大きいと考えられるからである。その結果として、矯正部12bから歯形転造工具10が破損することを確実に防止することができる。
【0029】
続いて、上記した歯形転造工具10を用いて、歯車製品を製造する方法(転造方法)について、図3〜図8を参照しながら説明する。ここでは、図9に示すような、内歯のヘリカルギヤを有する歯車製品20を製造する場合を例示する。図3は、歯形転造工具をワークの内周に押し当てた状態を模式的に示す図である。図4は、転造初期の状態を模式的に示す図である。図5は、転造途中の状態を模式的に示す図である。図6は、加工歯がワークの内周に噛み込んでワーク内周全域に歯形が形成された状態を模式的に示す図である。図7は、転造終盤における逃げ部付近の状態を模式的に示す図である。図8は、転造終盤における矯正部付近の状態を模式的に示す図である。なお、図4、図5、図7及び図8では、ワークWに形成される歯形形状をわかりやすくするために、歯形転造工具10にハッチングを入れている。
【0030】
まず、図3に示すように、内歯(本実施の形態ではヘリカルギヤ)を転造する筒状のワークWを、回転自在に保持する装置内にセットし、歯形転造工具10をワークWの内側に配置してワークWの内周面に当接させる。そして、歯形転造工具10を回転駆動し、回転する加工歯11をワークWの内面に押し当てた状態で、歯形転造工具10を徐々にワークWに押し込んでいく。つまり、ワークWの回転中心Owと歯形転造工具10の回転中心Oとの距離Dを拡げるように歯形転造工具10をワークW側にスライドさせていく。そうすると、図4に示すように、ワークWの内周面に歯形転造工具10の加工歯11が噛み込んでいき、ワークWの内周では加工歯11と係合する部分が窪み、その余肉が残余の部分に逃げて加工歯11と係合していない部分が盛り上がる。このとき、ワークWは歯形転造工具10の回転駆動に従動して同期回転している。
【0031】
ここで、歯形転造工具10の歯先部13に非加工部13bを設けているため、転造初期において、加工歯11が非加工部13bでワークWに噛み合わないおそれがあるが、本実施の形態では、ヘリカルギヤの転造を行うため、ワークWと歯形転造工具10とが噛み合った状態を常に維持することができる。それにより、歯形転造工具10の回転駆動に従ってワークWを確実に同期させて従動させることができる。
【0032】
そして、図5に示すように、ワークWの内周面への歯形転造工具10の押し込み量が増えるにしたがって、ワークWの内周で加工歯11と係合していない部分の徐々に盛り上がっていく。このとき、図6に示すように、ワークWの内周全域に歯形が形成されていく。
【0033】
その後、転造終盤において、歯形転造工具10を回転させながら規定量までワークWに押し込むと、歯形転造工具10のスライドを停止して回転駆動のみを行う。これにより、歯形転造工具10の位置を固定した状態で、歯形転造工具10とワークWとを同期回転させる。このとき、歯形転造工具10の歯底側の歯底部12(矯正部12b以外)に、逃げ部12aが設けられているため、図7に示すように、ワークWに形成された歯先が当たらない。このため、歯形転造工具10の加工歯11に作用する面圧(応力)を下げることができる。
【0034】
ここで、歯形転造工具10の歯底部12に逃げ部12aを設けているため、ワークWに形成された歯先部に凸部25が残ってしまう。しかしながら、図8に示すように、この凸部25は、歯形転造工具10とワークWとが同期回転しているため、矯正部12bにより矯正される。その結果、ワークWには所望の製品歯たけ及び歯先形状の歯形が成形(転写)される。
【0035】
また、ワークWの歯先部に形成された凸部25を矯正する際には、矯正部12bに隣接する加工歯11に大きな面圧が作用する。しかしながら、歯形転造工具10では、矯正部12bに隣接する2歯に非加工部13bを設けているため、矯正部12bにより凸部25を矯正する際、図8に示すように、矯正部12bに隣接する加工歯11の歯先がワークWに当たらない。これにより、凸部25を矯正する際にも、加工歯11に作用する面圧を下げることができ、矯正部12bからの破損を防止することができる。
【0036】
そして、歯形転造工具10のスライドを停止した後に、歯形転造工具10を所定回転数(又は所定時間)だけ回転させたら、歯形転造工具10の回転駆動を停止する。これにより、歯形転造工具10によるワークWへの歯形転造が完了する。その後、ワークWから歯形転造工具10を離反させワークWを装置から取り出すと、図9に示すような、内歯(ヘリカルギヤ)21を有する歯車製品20が得られる。
【0037】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る歯形転造工具10によれば、歯底部12に、ワークWが当接しない逃げ部12aが形成されているため、加工歯11に作用する面圧を下げることができる。また、歯底部12の1歯にはワークWの仕上がり寸法でワークWに当接する矯正部12bが形成されているため、ワークWの歯先に凸部25が形成されたとしても、矯正部12bにより凸部25が矯正されて所望の歯たけ及び歯先形状の歯形をワークWに転造することができる。さらに、歯先部13において、矯正部12bに隣接する2歯に、矯正部12bがワークWに当接して歯先を矯正しているときにワークWが当接しない非加工部13bを設けているため、矯正部12bによりワークWの歯先の凸部25を矯正する際に、加工歯11に作用する面圧を下げることができる。従って、ワークWに所望の歯たけ及び歯先形状の内歯21を成形しつつ、加工歯11にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる。
【0038】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、内歯を成形(転造)する場合について説明したが、歯形転造工具10は内歯の転造だけでなく、外歯の転造にも用いることができる。外歯の転造を行う場合には、図10に示すように、ワークWの外周に歯形転造工具10a,10bを、ワークWを挟み込むようにして配置する。このとき、歯形転造工具10a,10bの回転中心Oa,Obを結ぶ線分上にワークWの回転中心Owが位置している。そして、歯形転造工具10a,10bを同期させて回転駆動するとともに、歯形転造工具10a,10bをワークWに近接させる方向にスライドさせていく。そうすると、内歯を転造する場合と同様にして、ワークWに外歯が成形(転写)される。この場合にも、ワークWに所望の歯たけ及び歯先形状の外歯を成形しつつ、加工歯11にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる。
【0039】
ここで、外歯の転造を行う場合には、上記したような歯車状の転造工具ではなく、直線状に加工歯を設けたラックを用いることもできる。すなわち、図11に示すように、それぞれ直線状に設けられた加工歯11が形成され2本のラック30a,30bを平行に配置し、その間にワークWを挟み込むようにして、両ラック30a,30bを矢印方向へスライドさせて、ワークWを回転中心Owで回転させていく。そうすると、歯車状の転造工具で転造する場合と同様にして、ワークWに外歯が成形(転写)される。このような形状の転造工具であっても、ワークWに所望の歯たけ及び歯先形状の外歯を成形しつつ、加工歯11にかかる面圧を下げて工具寿命の向上を図ることができる。
【0040】
また、上記した実施の形態では、内歯を転造する場合に、歯形転造工具10をスライドさせて、ワークWの回転中心Owと歯形転造工具10の回転中心Oとの距離Dを拡げてワークWに対して歯形転造工具10を押し込んでいるが、ワークWをスライドさせて中心間距離Dを拡げてワークWを歯形転造工具10に押し込むようにしてもよい。
【0041】
さらに、上記した実施の形態では、ヘリカルギヤを転造する場合を例示したが、本発明はヘリカルギヤ以外の平歯車などを転造する場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 歯形転造工具
11 加工歯
12 歯底部
12a 逃げ部
12b 矯正部
13 歯先部
13a 加工部
13b 非加工部
20 歯車製品
21 内歯
25 凸部
30a,30b ラック(歯形転造工具)
D (中心間)距離
O,Oa,Ob (歯形転造工具の)回転中心
Ow (ワークの)回転中心
Ra,Rb 歯先円半径
ra,rb 歯底円半径
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯底部と歯先部を備える加工歯を、ワークに押し当てて歯形を成形する歯形転造工具において、
前記歯底部には、ワークが当接しない逃げ部が形成されているとともに、少なくとも1歯にはワークの仕上がり寸法でワークに当接する矯正部が形成されており、
前記歯先部には、ワークに当接する加工部が形成されているとともに、前記矯正部に隣接する少なくとも1歯には、矯正部がワークに当接しているときにワークが当接しない非加工部が形成されている
ことを特徴とする歯形転造工具。
【請求項2】
請求項1に記載する歯形転造工具において、
ワークの内周部に内歯を成形することを特徴とする歯形転造工具。
【請求項3】
請求項1に記載する歯形転造工具において、
ワークの外周部に外歯を成形することを特徴とする歯形転造工具。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの歯形転造工具において、
前記非加工部が前記矯正部に隣接する1歯にのみ形成されている場合には、その非加工部は前記矯正部に対して工具移動方向前方側の歯に形成されている
ことを特徴とする歯形転造工具。
【請求項5】
請求項1から請求項3に記載するいずれか1つの歯形転造工具において、
前記非加工部は、前記矯正部に隣接する2歯に形成されている
ことを特徴とする歯形転造工具。
【請求項6】
請求項1から請求項5に記載するいずれか1つの歯形転造工具において、
ワークにヘリカルギヤを成形することを特徴とする歯形転造工具。
【請求項7】
転造により歯車製品を製造する歯車製品の製造方法において、
請求項1から請求項6に記載するいずれか1つの歯形転造工具の加工歯を、ワークに押し当てて、ワークの回転と同期させて前記歯形転造工具を移動させてワークに歯形を成形することを特徴とする歯車製品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−166216(P2012−166216A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27972(P2011−27972)
【出願日】平成23年2月11日(2011.2.11)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)