説明

歯牙プロテクター

【課題】 患者に苦痛を与えることなく喉頭鏡を口腔内に挿入することができ、しかも患者の歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護できる歯牙プロテクターを提供する。
【解決手段】 造形後に弾性を有する材料を用いて歯牙プロテクター(10)を口腔内における歯槽骨の弱い部分について想定される歯槽骨の強さに応じた厚みに製作し、歯槽骨の弱い部分の歯肉(23)及びその歯槽骨によって維持されている歯牙(20,21,22)にかぶせ、歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護する。弾性を有する材料には例えば歯科用ゴム質弾性印象材料を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯牙プロテクターに関し、特に患者に苦痛を与えることなく喉頭鏡等を口腔内に挿入することができ、しかも患者の歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護することのできるようにしたプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、全身麻酔を行って患者を手術する場合、送還チューブを気管に挿入して麻酔ガスを投与するが、送還チューブを気管に挿入する際に患者の口腔内に喉頭鏡を挿入する必要が生ずることがある。その場合、手術という緊急時であるが故に喉頭鏡が誤って患者の歯牙に当たり、歯牙が破損するという医療事故が懸念される。
【0003】
他方、ラグビー等、激しい運動中に口腔内に装着し、衝撃等によって歯牙が折れあるいは損傷するのを回避するマウスガードが提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。このようなマウスガードでは口腔内の顎及び歯牙全体の印象を採取し、印象から型を造形し、この型と熱可塑性材料とを用いてマウスガードを製作することが行われている。
【特許文献1】特開2004−8971号公報
【特許文献2】特開2002−51729号公報
【特許文献3】実開平07−42647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のマウスガードは顎及び歯牙の全体を保護するようになっているので、これを手術時の歯牙を保護する目的で使用すると、口腔内が狭くなって患者の口腔内に喉頭鏡を円滑に挿入することが難しく、患者に苦痛を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑み、患者に苦痛を与えることなく喉頭鏡を口腔内に挿入することができ、しかも患者の歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護することのできるようにした歯牙プロテクターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明に係る歯牙プロテクターは、歯牙を保護する歯牙プロテクターにおいて、弾性を有する材料を用いて口腔内における歯槽骨の弱い部分について想定される歯槽骨の強さに応じた厚みに製作され、上記歯槽骨の弱い部分の歯肉及びその歯槽骨によって維持されている歯牙にかぶせられ、該歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護するようになしたことを特徴とする。
【0007】
本発明の特徴は歯牙プロテクターを弾性を有する材料を用いて歯槽骨の弱い部分について想定される歯槽骨の強さに応じた厚みに製作し、この歯牙プロテクターを歯槽骨の弱い部分の歯肉と歯槽骨によって維持されている歯牙とにかぶせるようにした点にある。
【0008】
これにより、喉頭鏡を口腔内に挿入する際に、喉頭鏡が歯牙プロテクターに当たると歯牙プロテクターが弾性変形してその衝撃を緩和するので、歯槽骨の弱った歯牙に誤って喉頭鏡の衝撃が加わるということはなく、歯牙の破損という医療事故を回避できる。
【0009】
また、歯牙プロテクターが必要な部位に必要な厚さで覆うようになっているので、口腔内が狭くなることはほとんどなく、喉頭鏡の挿入時に患者に苦痛を与えることもない。
【0010】
弾性を有する材料は歯牙プロテクターを製作し歯牙及び歯槽骨にかぶせた時に弾性を有し、しかも人体に無害であればどのような材料であってもよいが、歯牙の保護という点を考慮すると、歯科用ゴム質弾性印象材料、例えば付加重合型ビニルシリコン印象材を用いるのがよい。
【0011】
この歯牙プロテクターは歯槽骨の弱い部分と歯牙の印象を手術前に予め採取し、弾性を有する材料を用いて造形してもよいが、手術時に歯槽骨の弱い部分と歯牙に弾性を有する材料を直接塗布し、必要な厚さに製作するようにしてもよい。
【0012】
手術時に製作する場合には歯科用ゴム質弾性印象材料は主剤と補助剤とからなり、混合して使用されるものを用いるのがよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1及び図2は本発明に係る歯牙プロテクターの好ましい実施形態を示す。図において、歯牙プロテクター10は例えば歯槽骨の弱った下歯の中切歯20、側切歯21及び犬歯22とそれらの各歯20〜22の歯肉23にかぶせられている。
【0014】
この歯牙プロテクター10は歯科用ゴム質弾性印象材料、例えば付加重合型ビニルシリコン印象材料を用いて製作され、付加重合型ビニルシリコン印象材料は例えばビニルポリシロキサン及び二酸化ケイ素を主成分とするベース剤(主剤)と、ビニルポリシロキサン、二酸化ケイ素及び白金触媒を主成分とするキャタリスト剤(補助剤)とを混合して使用されるようになっている。
【0015】
また、歯牙プロテクター10は口腔内における下歯の中切歯20、側切歯21及び犬歯22の歯槽骨について想定される歯槽骨の強さに応じた厚みに製作されている。
【0016】
例えば、下歯の中切歯20及び側切歯21の歯槽骨が弱っており、これらの歯牙を保護する歯牙プロテクター10を製作する場合、所定量の歯科用ゴム質弾性印象材料、例えば付加重合型ビニルシリコン印象材料の等量のベース剤とキャタリスト剤をとり、混合して練り合わせる(ステップS10)。
【0017】
練り合わせ後硬化を開始するまでの時間、例えば1分20秒以内に練り合わせた印象材料を下歯の中切歯20及び側切歯21、さらには犬歯22とそれらの各歯20〜22の歯肉23に、想定される中切歯20及び側切歯21の歯槽骨の強さに応じた厚みに塗布する(ステップS11)。
【0018】
塗布後所定の硬化完了時間、例えば3分が経過すると(ステップS12)、図2に示される歯牙プロテクター10が得られる。
【0019】
このようにその場で歯牙プロテクター10を製作できるので、例えば患者の手術時に、喉頭鏡を口腔内に挿入する必要が生じた場合にも歯槽骨の弱った下歯の中切歯20と側切歯21、及び犬歯22とその歯肉23に歯牙プロテクター10をかぶせることができ、喉頭鏡が誤って下歯の中切歯20と側切歯21に向かっていっても歯牙プロテクター10がその衝撃を受けて弾性変形することにより衝撃を緩和し、下歯の中切歯20と側切歯21を喉頭鏡の衝撃から保護し、歯槽骨の弱った下歯の中切歯20と側切歯21が破損するという医療事故が起こることはない。
【0020】
また、口腔内が狭くなるということはほとんどなく、喉頭鏡を口腔内に挿入する際に患者に苦痛を与えることもない。
【0021】
なお、上記の例では手術中に手術現場で歯牙プロテクター10を製作するようにしたが、手術を受ける患者の口腔内の印象を採取し、歯槽骨の弱った下歯の中切歯20と側切歯21及び犬歯22とその歯肉23の型をとり、上述の印象材料を用いて歯牙プロテクター10を製作するようにしてもよい。
【0022】
また、下歯の中切歯20と側切歯21及び犬歯22とその歯肉23を覆う歯牙プロテクター10を例に説明したが、下歯の他の歯あるいは上歯を保護する歯牙プロテクターについても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る歯牙プロテクターの好ましい実施形態の製作方法を示す図である。
【図2】上記実施形態の歯牙プロテクターを装着した下歯を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
10 歯牙プロテクター
20 中切歯
21 側切歯
22 犬歯
23 歯肉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙を保護する歯牙プロテクターにおいて、
造形後に弾性を有する材料を用いて口腔内における歯槽骨の弱い部分について想定される歯槽骨の強さに応じた厚みに製作され、上記歯槽骨の弱い部分の歯肉及びその歯槽骨によって維持されている歯牙にかぶせられ、該歯牙を喉頭鏡の衝撃から保護するようになしたことを特徴とする歯牙プロテクター。
【請求項2】
上記弾性を有する材料が歯科用ゴム質弾性印象材料である請求項1記載の歯牙プロテクター。
【請求項3】
上記歯科用ゴム質弾性印象材料が主剤と補助剤とからなり、混合して使用されるものである請求項2記載の歯牙プロテクター。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−141833(P2006−141833A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338378(P2004−338378)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(502457940)