歯科用インプラント
埋込型歯科用デバイスであって、顎の歯槽骨内または歯の根管空間内にあるキャビティへ埋め込むポリマー形状記憶材料よりなる埋込型歯科用デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎の歯槽骨内にあるキャビティ内または歯の根管空間(root canal space)内に埋め込むためのポリマー形状記憶材料よりなる埋込型歯科用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
修復歯科学において、埋込型歯科用デバイスは、損傷したまたは疾患した歯の補強と、外傷、腐食または疾病により失われまたは交換された欠損歯の恒久的な交換と、を達成するために用いられる。歯科用インプラントは、歯の根管空間へ埋め込まれて残存歯を補強し、かつ、歯の根管空間へまたは歯槽骨内のキャビティへ埋め込まれて歯冠またはブリッジのような歯科用プロテーゼを固定する手段を形成する。
【0003】
埋込型歯科用固定デバイスは、主として、人工歯根構造を備えており、人工歯根構造は、顎の歯槽骨または歯の根管空間と橋脚歯とへ埋め込まれて歯冠またはブリッジのような歯科用プロテーゼの取り付けを可能とする。
【0004】
既知の大部分の骨内歯科用固定デバイスは、チタンまたはチタンベースの合金から形成されたシリンダ状またはネジ状のデバイスであり、このデバイスは、顎の歯槽骨に予めドリル加工された穴部に挿入される。このようなデバイスは、一般に、歯槽骨内での長期間安定した固定、好ましくは骨結合(osseointegration)によって強化した固定を実現することを目的として構成されている。骨結合は、生きている骨と人工インプラントの表面との間に構造的かつ機能的な接続が直接形成されるプロセスである。骨結合は、デバイス表面において骨芽細胞を用いて周辺の骨とインプラントとが結合することを可能とする。しかしながら、骨結合は、時間がかかり、インプラントを固定するための有一の手段としては信頼されていない。また、埋め込んですぐに固定をもたらす手段が求められている。
【0005】
歯の根管空間へ埋め込むための埋込型歯科用デバイスは、歯科用ポストとして知られている。歯科用ポストは、ロッド状のデバイスであり、損傷した歯の根管空間内に位置付けられて固定され、歯における欠陥した構造的結合性を補強する。また、歯科用ポストは、歯科用プロテーゼを取り付ける手段を提供する橋脚歯部を備える。使用される歯科用ポストは、損傷した歯のタイプを含む組織の数に基づいて選択される。これについて、異なる歯のタイプは、異なるポストの構造が必要となる異なる歯根の数及び構造を有する。さらに、例えば根管手術または損傷後の歯の復元など外科手術のタイプは、歯科用ポストの選択に影響する。歯槽骨へ埋め込むための埋込型固定デバイスと同様に、大部分の既知の歯科用ポストは、チタンまたはチタンベースの合金から形成されたシリンダ状のデバイスであり、このデバイスは、歯の根管に予めドリル加工された穴部に挿入される。
【0006】
既知の歯科用インプラントに関連する問題には、即時かつ長期間の固定が不十分であること、埋込片拒絶、審美性が乏しいこと、及び、複雑かつ反復的な外科手術が必要なこと、が含まれる。
【0007】
既知のインプラントは、所定範囲のサイズ及び寸法で生産されている。インプラントは、所望する位置、組織構造の結合の回避、及び、インプラントが埋め込まれる骨または歯科組織の質、に基づいて選択される。幾何形状及びネジタイプのインプラントにおけるネジサイズを含むインプラントの寸法選択を誤ると、機械的負荷が不十分であること、または、機械的負荷が過剰でありインプラントを緩めて失敗させること、が際立つ。埋め込みを失敗すると、インプラントの取り外しと繰り返しの外科手術とが必要となる。
【0008】
インプラントと埋込キャビティとの間に良好な封止を形成することは、不可欠である。封止は、セメントもしくはフィラーを用いて、または例えばテーパ状の頭部にネジタイプのインプラントを形成することなどインプラントの幾何形状を調整することによって、形成される。しかしながら、これら技術を用いても、完全な封止を実現することは困難である。一般的な封止は、バクテリアの侵入を可能とし、内在する骨または歯科組織の感染を引き起こす。感染が発生した場合、インプラントを取り外すことが必要となることがある。また、一般的な封止は、軟質組織の埋込キャビティへの侵入を可能とし、繊維組織の形成を引き起こす。これは、例えば骨結合を妨害するなど埋め込みの失敗に寄与する。
【0009】
所望埋込部位は、しばしば、低質の骨または歯科組織を含んでおり、低質の組織内にインプラントを固定することが芳しくなくなる可能性が高いことが、知られている。また、骨または歯科組織が良好な質で存在するが数が制限されている状況がある。固定は、多数の骨または歯科組織の存在が制限されている場合に、芳しくなくなる可能性が高い。一般に、インプラントの初期的な固定が不十分であると、負荷印加試験または音響試験のような標準的な歯科用技術を用いて試験されるので、一時的なキャップは、さらなる作業が実行される前に、例えば骨結合などインプラントの適切な結合及び固定を実行するのに必要な間だけインプラント上に配置されている。これは、6ヶ月もの間行う。
【0010】
さらに、純粋なチタンのインプラントが良好な腐食耐性及び強度特性を有していても、インプラントは、歯肉及び歯冠材料の望ましくない灰色化を引き起こす。チタン合金から形成されたインプラントは、同様に、金属の電位差(galvanic difference)による問題であって金属の電位差が腐食、インプラントの緩み及び失敗を招く問題を引き起こす。
【0011】
既知の歯科用インプラントは、侵襲的な外科技術の使用を必要とする。従来、歯科施術者は、顎骨または歯の根管に穴部をドリル加工しており、穴部のサイズは、挿入されるまたは螺合される選択されたインプラントに応じて判断される。侵襲的な手術は、インプラントの固定に影響を及ぼす周辺組織を損傷させる。
【0012】
歯科用埋込技術及び埋込デバイスは、上述した問題に取り組もうとして開発されている。このような技術の1つは、液化セメントを使用して強化した歯の固定を実現することである。しかしながら、液化セメントを使用することは、複数の工程、複数の構成部材の埋込手術を必要としており、所望サイズの穴部をドリル加工して歯科用インプラントのための空間を形成する工程と、全体を洗浄することと、穴部に歯科用インプラントを位置付ける工程と、続いて歯科用セメントを用いてインプラントを所定位置に固定する工程と、を伴う。
【0013】
Ni−Ti合金のような形状記憶合金は、歯科用インプラントを形成する強化された固定材料として提案されている。これら材料は、熱を掛けると、強化したインプラントの固定を可能とする事前設定された形状へ膨張する。特許文献1は、熱的形状記憶材料、具体的にはCu−Zn−AlまたはTi−Ni合金よりなる歯科用骨内インプラントを開示している。歯科用インプラントは、いったん骨内へ挿入されて熱を掛けると、形状変化して歯槽骨内で強化した固定をなそうとする。特許文献2は、3つの別個の構成部材である歯根部分、首部分及び橋脚歯を含むインプラントを開示している。歯根部分は、形状記憶合金(Ni−Ti、Ti−PdまたはTi−Pd−Co合金)よりなる3つの脚部からなり、脚部は、熱を掛けると、分離してインプラントの固定を提供する。
【0014】
形状記憶合金の使用は、周辺骨に圧縮力を掛けることによって固定の強化と結合の強化とを形成しようとしている。圧縮力は、骨結合を含む生体プロセスを促進させるとして示されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0015】
しかしながら、形状記憶合金は、高価である。さらに、形状記憶合金を歯科用インプラント内で使用することは、非分解性と生体適合性の欠如とに関連する問題をもたらす。例えば、ニッケルを含む合金は、一部の人に対してアレルギー反応を起こさせる。
【0016】
形状記憶ポリマーは、既知であり、組織縫合デバイス、血管拡張器(blood vessel expander)、緊張材及び骨固定デバイスのような医療用デバイスとしての使用について特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0017】
形状記憶ポリマーは、歯科分野において使用が非常に制限されている。特許文献5は、歯肉または歯槽骨に埋め込む複数の構成部材のデバイスを開示しており、デバイスは、後に来るインプラントに対する支持部を形成するために使用される。このデバイスの埋め込みは、複数の工程及び複数の構成部材を必要とする。デバイスは、形状記憶材料からなるコイル、螺旋、メッシュまたは管から形成されたステント状アンカーを備える。ステント状アンカーは、内部キャビティを形成し、多孔質のスリーブによって覆われる。ステント状アンカー及びスリーブは、共にステント組立体を形成し、ステント組立体は、埋め込まれて歯槽キャビティの内側を覆う。いったんステント組立体が埋め込まれると、形状記憶合金を作動させるため、かつ埋め込まれたデバイスに内部構造を形成するため、重合可能な材料は、ステント組立体によって形成された中央キャビティへ注入される必要がある。重合可能な材料による発熱性の重合は、形状記憶材料を作動させるのに十分な熱を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5108289号明細書
【特許文献2】米国特許第5951288号明細書
【特許文献3】米国特許第4950258号明細書
【特許文献4】米国特許第6281262号明細書
【特許文献5】米国特許第6299448号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「Increased calcification of the growth plate cartilage as a result of compressive force in-vitro」,Nulend等,Arthritis & Rheumatism,Vol.29 (8),p.1002-1009,1986
【非特許文献2】「Inhibition of osteoclastic bone resorption by mechanical stimulation In Vitro」,Nulend等,Arthritis & Rheumatism,Vol.33 (1),p.66-72,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
技術的に、強化した即時かつ長期間の固定と、強化した長期間の結合と、インプラントと埋込キャビティとの間の強化した封止と、を形成することによって、上述した問題に取り組む改良した歯科用インプラントが必要である。さらに、単純かつ信頼性のある埋込手術を用いて埋め込まれる歯科用インプラントが必要である。上述のように、歯科用インプラントの分野で形状記憶ポリマーを使用することは、非常に制限されており、これら必要性に取り組むインプラントにおいて使用されていなかった。ここで、埋込型歯科用デバイスであって埋込キャビティの壁部と直接接触するように構成された形状記憶ポリマーよりなる歯科用デバイスが、単純な埋込手術を用いた即時の固定と強化した長期間の固定とを達成することが可能であると断定されている。したがって、本発明は、上述した必要性に取り組む埋込型歯科用デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の第1の態様は、埋込型歯科用デバイスを提供し、当該デバイスは、歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティへ埋め込む歯根部材を備え、歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されている。
【0022】
歯科用デバイスの好ましい形態において、歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、第1端部と第2端部との間に延在する外面部と、を備え、歯根部材の外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されている。好ましくは、歯根部材は、歯根部材は、当該埋込型歯科用デバイスがキャビティに挿入されると、当該歯根部材の外面部の少なくとも一部とキャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されている。好ましくは、ポリマー形状記憶材料によって形成された外面部の範囲は、ポリマー形状記憶材料が応力解放状態にあると、キャビティの壁部と直接接触する。
【0023】
第2の態様において、本発明は、埋込型歯科用デバイスを提供し、当該デバイスは、歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティに埋め込む歯根部材を備え、歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、第1端部と第2端部との間に延在する外面部と、を備え、歯根部材の外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されている。
【0024】
好ましくは、当該埋込型歯科用デバイスがキャビティに挿入されると、当該歯根部材の外面部の少なくとも一部とキャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されている。好ましくは、歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されている。
【0025】
本明細書で記載された好ましい特徴及び有利点は、本発明の第1の態様におけるデバイスと本発明の第2の態様におけるデバイスとに適用可能である。
【0026】
変形状態において、歯根部材は、キャビティに挿入され、応力解放状態において、歯根部材は、キャビティに固定されるように構成されている。歯根部材は、埋込キャビティと接触するように、好ましくは直接接触して埋込キャビティへの固定をもたらすように構成された外部構造と、埋め込まれたデバイスが骨または歯を補強することを可能とする歯根部材への支持をもたらすように構成された内部構造と、の双方を備え、骨もしくは歯にデバイスが埋め込まれかつ/または骨もしくは歯が歯科用プロテーゼを取り付けるための支持部を形成する。歯根部材は、好ましくはほぼ固体である。
【0027】
好ましくは、歯根部材は、単一ユニットとして埋込可能である。有利には、ポリマー形状記憶材料の作動を達成するために、埋込後に歯根部材の追加の構成部材を導入する必要がない。
【0028】
有利には、本発明における埋込型歯科用デバイスは、ポリマー形状記憶材料を応力解放状態へ作動させると、デバイスを即時に固定させる。
【0029】
ポリマー形状記憶材料の本体部は、巨視的に、本体部が変形状態にあると一の形状で存在し、本体部が応力解放状態にあると別の形状で存在する。変形状態から応力解放状態への作動は、エネルギーの入力によって引き起こされる。連続的な形状変化は、ポリマー形状記憶材料よりなる歯根部材の任意の部分における膨張をもたらし、これは、埋込キャビティにデバイスを固定する機能を果たす。好ましくは、歯根部材は、全体的に細長い形状をなし、第1端部から第2端部へ延在する長手方向軸を有する。好ましくは、変形状態から応力解放状態への形状変形は、形状記憶ポリマーよりなる歯根部材の任意の部分における側方への膨張をもたらす。歯根部材がほぼシリンダ状、円錐状などであると、側方への膨張は、径方向の膨張である。
【0030】
有利には、形状記憶ポリマーの応力解放によって引き起こされる膨張は、歯根部材の一部分を側方へ膨張させてキャビティの壁部に接触させるのに効果的である。歯根部材は、キャビティの壁部と接触することによってさらなる膨張が防止されるまで膨張が発生するような寸法となっている。これは、キャビティ内に埋め込まれたデバイスにぴったりとした嵌合と、その結果としての良好な即時の固定と、をもたらし、埋め込みを失敗する可能性を低減する。安定した即時の固定は、周辺組織がデバイスと結合する時間を考慮し、例えば骨結合が発生することを可能とする。形状記憶材料の応力解放によって即時の固定がもたらされることは、事前にデバイスに即時の固定を形成するためにセメントが使用される必要性を回避し、長期間の固定前に埋込が失敗する危険性を低減する。
【0031】
さらに、ポリマー形状記憶材料を使用することは、インプラントが固定されるキャビティのサイズについて自由度を与える。
【0032】
ポリマー形状記憶材料が応力解放すると、歯根部材が挿入されるキャビティの壁部に圧縮力を掛ける。ぴったりとした嵌合を形成することと同様に、組織に圧縮力を掛けることによって例えば骨結合など生体プロセスを促進させることを示す。このため、形状記憶材料の側方への膨張は、埋込キャビティの壁部に圧縮力を掛け、歯槽骨との骨結合を促進させ、長期間のインプラント結合が達成される速度を増大させる。
【0033】
本発明におけるデバイスの歯根部材の外面部は、滑らかであってもよいが、より好ましくは、尾根部及び/または凹所を形成する。好ましくは、外面部は、ネジ山を形成している。
【0034】
有利には、本発明におけるデバイスは、スリーブまたは外側被覆を使用する必要がないが、外面部と埋込キャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されており、これにより、キャビティに直接挿入される。
【0035】
好ましい形態において、デバイスは、歯科用プロテーゼを受ける橋脚歯部をさらに備え、橋脚歯部は、歯根部材の隣接する第1端部から延在する。
【0036】
本発明におけるデバイスは、好ましは、単一のユニット、すなわち単位デバイスとして埋込可能であり、橋脚歯部は、好ましくは歯根部材に直接接続されている。デバイスは、多数の構成要素から製造されてもよく、多数の構成要素は、埋め込む前に共にしっかり組み立てられて単一のユニットを形成する。あるいは、歯根部材と橋脚歯部とは、歯根部材を埋込キャビティへ埋め込むまたは埋め込んだ後に組み立てられる別個の構成部材として形成されてもよい。
【0037】
好ましい形態において、歯根部材は、2以上の部分を備え、少なくとも1つの部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる。
【0038】
ポリマー形状記憶材料は、生体適合性のあるポリマー形状記憶材料であってもよく、吸収性及び/または非吸収性であってもよい。デバイスが歯槽骨へ埋め込むことを対象としている場合、ポリマー形状記憶材料は、好ましくは吸収性であり、デバイスが歯の根管空間へ埋め込むことを対象としている場合、ポリマー形状記憶材料は、好ましくは非吸収性である。
【0039】
吸収性のポリマー形状記憶材料が使用される場合、骨結合が発生する期間にわたって、材料は、吸収されて新たに形成された骨によって置換される。吸収性の形状記憶材料を使用することは、デバイスに骨結合する特性を付与し、期間にわたって、埋込キャビティが再生した骨細胞によって示されることを可能とする。これは、デバイスの長期化の結合に望ましい。
【0040】
埋込型歯科用デバイスにポリマー材料が使用される場合、デバイスの強度に関してさらなる有利点が達成される。デバイスを部分的にまたは全体的にポリマー材料から形成することにより、歯槽骨または歯科組織の強度と同様の強度が達成される。これは、応力遮蔽の危険性を低減し、応力遮蔽は、インプラント材料が骨または歯科組織であってインプラント材料が埋め込まれる骨または歯科組織よりも強度が高い場合に観測される望ましくない結果である。
【0041】
本発明における埋込型歯科用デバイスのさらなる有利点は、埋込キャビティの形状に適合することを可能とすることによって、低質な骨または歯科組織における芳しくない固定の問題に取り組む能力を有することである。本発明における歯科用デバイスは、さまざまな径を有するキャビティへ埋め込まれ、ポリマー形状記憶材料が側方へ膨張してこのようなキャビティに入ることで、固定を改善する。一般に、低質の骨または歯科組織の領域において、質は、組織内で大きく改善している。このため、キャビティは、ドリル加工されてキャビティの口部の近傍において小径を有し、口部から遠位に向けて大径を有する。本発明におけるデバイスは、組織の質がほぼ最良であるこのようなキャビティ内で膨張して固定し、キャビティの口部よりも遠位側において固定を増大させる。
【0042】
好ましい形態において、歯根部材は、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備える。非形状記憶材料は、好ましくは、非吸収性であり、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミック材料またはポリマー材料よりなる。
【0043】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる少なくとも1つの部分を備える。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料よりなる。
【0044】
このため、好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備える。形状記憶材料と非形状記憶材料との組み合わせは、有利には、形状記憶材料の応力解放形状を制御することを可能とする。歯根部材のうち非形状記憶部分の幾何形状は、デバイスの形状記憶部分の応力解放形状を制御する機能を果たす。例えば非形状記憶材料からなる本体部に形状記憶材料が収容される陥凹部を形成するなど、非形状記憶部分を設計することで、ポリマー形状記憶材料の応力解放形状を制御することが可能となる。非形状記憶材料は、ポリマー形状記憶材料と接触するように構成され、応力解放時においてポリマー形状記憶材料が側方に膨張することを可能とするが長手方向で膨張することを可能としない。
【0045】
このため、好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備え、非形状記憶材料よりなる部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる部分と接触するように構成され、ポリマー形状記憶材料の非形状記憶材料との接触は、応力解放時にポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止し、ポリマー形状記憶材料の側方への膨張を可能とする。
【0046】
好ましくは、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる襟部分を備える。襟部分は、好ましくは、歯根部材の長さの少なくとも一部において、歯根部材の全周を囲むように構成されている。襟部が応力解放して側方に膨張すると、襟部は、デバイスが埋め込まれている埋込キャビティの全周と接触し、これにより、デバイスと埋込キャビティとの間の封止を形成する。好ましくは、襟部分は、例えば襟部分が橋脚歯部の非形状記憶材料または歯根部材の1以上の非形状記憶材料部分と接触するように構成されているなど、ポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止するように構成され、応力解放すると、ポリマー形状記憶材料が側方へ膨張することを可能とするが、長手方向の膨張が抑制される。
【0047】
使用時において、歯根部材の第2端部は、まず埋込キャビティへ挿入され、第1端部は、キャビティの口部に最も接近して位置する。デバイスの使用対象に応じて、第1端部は、キャビティの口部の上方、下方または同一高さにある。好ましくは、襟部は、歯根部材の第1端部に位置付けられている。
【0048】
歯根部材の第1端部に位置付けられた襟部分は、ポリマー形状記憶材料が応力解放すると、キャビティの口部においてまたは口部の近傍においてデバイスと埋込キャビティとの間の封止を形成する。襟部分を配置してそれによりポリマー形状記憶材料の側方への膨張が抑制されると、応力解放したときにキャビティの口部の上方に襟部分が延在することを防止する。有利には、この封止は、バリアとして機能してバクテリアがキャビティに入ることを防止し、これによりインプラントの失敗を招く感染症の危険性を低減する。また、封止は、バリアとして機能して埋込キャビティへ軟組織が内部成長することを防止する。軟組織の内部成長とこれにより引き起こされる繊維組織の形成とは、インプラントの失敗を招く一因である。
【0049】
好ましくは、襟部分は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる。吸収性ポリマーを使用することは、デバイスが歯槽骨へ埋め込まれる場合に、特に好ましい。襟部分に吸収性材料を使用することは、表面の軟組織の成長を促進させる一方、埋込キャビティへ軟組織が入ることを防止する機能を果たす。これは、既知の埋込デバイスで観測された問題であって橋脚歯部に取り付けられたプロテーゼまで歯肉が再生しない問題を解決する。これは、歯肉とプロテーゼとの間のギャップを残し、このギャップは、審美的に満足な結果をもたらさない。吸収性襟部を形成することは、組織の伝導効果(conductive effect)を有し、襟部が吸収されるにしたがって橋脚歯部まで表面の軟組織が成長することを促進させる。
【0050】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる本体部を備え、本体部は、ポリマー形状記憶材料からなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成する。好ましくは、1以上の陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の細長部分を収容する細長凹所の形態をなす。好ましくは、歯根部材は、複数の細長部分を備え、複数の細長部分は、第1端部から第2端部までの歯根部材の長さの一部またはすべてに沿って長手方向に延在するように構成されている。あるいは、歯根部材は、本体部を囲むような、螺旋状、コイル状、メッシュ状に構成された細長部分を備える。好ましくは、本体部は、第1端部に隣接して歯根部材の外面部を囲むように延在する凹所を備え、陥凹部内にあるポリマー形状記憶材料は、歯根部材の襟部分を形成する。好ましくは、本体部は、非形状記憶材料よりなる。
【0051】
別の形態において、歯根部材は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる本体部を備え、本体部は、非吸収性材料で非形状記憶材料よりなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成する。
【0052】
好ましい形態において、歯根部材は、2以上の隣接したセグメントを備え、少なくとも1つのセグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、少なくとも1つのセグメントは、非吸収性材料よりなる。ポリマー形状記憶材料よりなる任意のセグメントは、独立して、非吸収性材料よりなりポリマー形状記憶材料によって封入された内部部分を備える。好ましくは、内部部分は、歯根部材の中心長手方向軸にほぼ沿って延在し、歯根部材の外面部と接触しない、または、歯根部材の外面部と第2端部のみにおいて接触する。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料であってもよいが、好ましくは非形状記憶材料である。ポリマー形状記憶材料は、吸収性または非吸収性であってもよい。
【0053】
好ましくは、歯根部材の第1端部におけるセグメントであって橋脚歯部に隣接するセグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、これにより、歯根部材の襟部を形成する。襟部は、デバイスを埋込キャビティへ埋め込むと、埋込キャビティの口部に近接して位置する。
【0054】
好ましい形態において、歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、第1セグメント群は、吸収性形状記憶材料よりなり、第2セグメント群は、非吸収性材料よりなる。好ましくは、複数のセグメントは、歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に、第1群及び第2群の部材間で交互に配置されている。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料である。別の配置において、第1セグメント群は、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、第2セグメント群は、非形状記憶材料よりなる。
【0055】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる内部部分を備える。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料である。好ましくは、内部部分は、歯根部材の外面部と接触しない、または、歯根部材の外面部と第2端部のみにおいて接触する。好ましくは、非吸収性の内部部分は、ポリマー形状記憶材料からなる外側部分によって封入されている。好ましくは、内部部分は、歯根部材の長手方向軸にほぼ沿って延在する。内部部分は、第1端部から第2端部までの歯根部材の長さの一部またはすべてに沿って延在する。
【0056】
別の形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる外側部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分と、を備え、外側部分は、部分的に、内側部分を封入する。外側部分は、少なくとも1つの開口部を形成し、内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放時に開口部を通って拡張する。非吸収性材料は、形状記憶材料及び/または非形状記憶材料である。
【0057】
好ましい形態において、1以上の活性薬剤は、歯科用デバイスに組み込まれる。適切な活性薬剤は、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の細胞を含む。当然ながら、当業者に既知の他の生体活性薬剤は、同様に使用される。好ましくは、活性薬剤は、ポリマー形状記憶材料に組み込まれており、ポリマー材料が応力解放しているまたは分解している間に開放される。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋込部位における感染に対抗する機能、及び/または、新たな組織成長を促す機能、を果たす。
【0058】
好ましくは、歯科用デバイスは、ほぼ細長い形状をなしており、橋脚歯部は、第1端部に位置し、歯根部材は、橋脚歯部の近傍から第2端部まで延在する。好ましくは、歯科用デバイスは、ほぼシリンダ状またはネジ形状に形成されている。しかしながら、他の形状は、意図されてもよい。シリンダ状のデバイスは、根管空間へ挿入される歯科用ポストとして特に使用され、ネジ形状のデバイスは、歯槽骨のキャビティへの挿入に特に使用される。
【0059】
好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる単一の連続した部分から形成される。好ましくは、単一部分は、ポリマー形状記憶材料または1以上の活性薬剤を組み込んだポリマー材料からもっぱら形成されている。
【0060】
好ましい形態において、歯科用デバイスの歯根部材は、強化ポリマー材料よりなる。好ましくは、強化ポリマー材料は、繊維、ロッド、血小板及びフィラーのような強化材料または相を含む混合物または基質よりなる。より好ましくは、ポリマー材料は、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリマー繊維、セラミック繊維またはセラミック微粒子を含んでもよい。当業者に既知である他の強化材料または相は、同様に使用されてもよい。
【0061】
好ましい形態において、歯科用デバイスは、金属または金属合金、好ましくはチタンまたはチタン合金とポリマー形状記憶材料との組合せよりなる。
【0062】
好ましい形態において、デバイスが形成される1以上の材料は、多孔質である。多孔質であることにより、周辺組織からの細胞が侵入することが可能となり、骨結合のようなプロセスによってデバイスが結合することが促進する。
【0063】
好ましい形態において、デバイスには、骨移植片、骨移植片代替物またはセメントが設けられており、低質の骨または歯科組織への固定を補助する。
【0064】
好ましい形態において、デバイスには、例えば歯冠など歯のプロテーゼが設けられており、プロテーゼは、デバイスを埋め込む前に橋脚歯部に取り付けられる。
【0065】
好ましい形態において、本発明の埋込型歯科用デバイスは、歯の根管空間へ埋め込む埋込型歯科用ポストである。
【0066】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様における埋込型歯科用デバイスを顎の歯槽骨内にあるキャビティへ埋め込む方法を提供しており、当該方法は、
a) 顎の歯槽骨にキャビティをドリル加工する工程と、
b) 歯根部材の第2端部をキャビティへ挿入する工程と、
c) 歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより歯根部材をキャビティ内に固定する工程と、
を備える。
【0067】
好ましい形態において、工程a)より前に、埋め込まれた歯科用デバイスの橋脚歯部に取り付けられる歯科用プロテーゼによって置換される歯は、取り除かれる。
【0068】
好ましい形態において、ドリル加工されたキャビティは、例えば楕円など形状が非円形である。例えば楕円形状に形成することにより、ポリマー形状記憶材料を膨張させかつ固定させ、インプラントを移動させるのに必要なトルク力は、円形のキャビティが使用される場合よりも大きくなる。
【0069】
好ましい形態において、キャビティの径は、キャビティの別の深さにおいて変化する。キャビティのうち大径を有する部分へポリマー形状記憶材料を膨張させることにより、デバイスの固定が強化される。
【0070】
好ましい形態において、キャビティは、歯根部材を挿入する前に洗浄される。
【0071】
好ましい形態において、歯根部材を挿入する工程は、単純に挿入する工程または螺着する工程よりなる。
【0072】
好ましい形態において、ポリマー形状記憶材料を作動させる工程は、ポリマー形状記憶材料に材料のガラス転移点(Tg)を越えるエネルギーを供給することによって達成される。好ましくは、デバイスを体温にさらすことは、作動を引き起こすのに十分である。あるいは、エネルギーは、熱源または光源を用いて供給される。
【0073】
好ましい形態において、埋込型歯科用デバイスは、橋脚歯部を備え、方法は、例えば歯冠など歯科用プロテーゼを橋脚歯部に取り付ける工程d)をさらに備える。
【0074】
第4の態様において、本発明は、本発明の第1の態様における埋込型歯科用デバイスを歯の根管空間内にあるキャビティへ埋め込む方法を提供し、当該方法は、
a) 根管空間内にキャビティをドリル加工することによって歯を下処理する工程と、
b) 歯根部材の第2端部をドリル加工したキャビティへ挿入する工程と、
c) 歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより歯根部材をキャビティ内に固定する工程と、
を備える。本発明の第3の態様について設定された好ましい態様は、同様に、本発明の第4の態様に適用可能である。
【0075】
好ましい形態において、方法は、埋め込む前に、例えばメチルメタクリレートなど塗装面を形成するのに適した材料よりなる層で歯冠部材の第1端部を被覆する工程d)をさらに備える。
【0076】
第5の態様において、本発明は、キットを提供し、当該キットは、本発明の第1または第2の態様における歯科用デバイスと、デバイスを埋め込んだ後に歯科用デバイスに取り付ける歯科用プロテーゼと、を備える。
【0077】
当然ながら、上述した好ましい特徴の組合せは、本発明の範囲内で意図される。
【0078】
本発明のさらなる特徴及び有利点は、後述する本発明の具体的な実施形態から明らかになる。具体的な実施形態は、添付の図面において例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明における第1の態様の具体的な実施形態における埋込型歯科用デバイスであって歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられた歯科用デバイスを示す断面図である。
【図2A】歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられたデバイスであって変形状態にあるデバイスを示す断面図である。
【図2B】歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられたデバイスであって応力解放状態にあるデバイスを示す断面図である。
【図3】本発明における2つの埋込型歯科用デバイスであって歯内の根管空間内に埋め込まれて歯冠を取り付ける手段を形成する2つの埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図4】本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図5】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図6】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図7】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図8】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図9】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図10】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図11】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図12】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図13】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図14】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図15】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図16】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図17A】歯根部材を備える埋込型歯科用デバイスであって歯の根管空間内で固定され、当該埋込型歯科用デバイスが根管空間内へ挿入される変形状態にある埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図17B】歯根部材を備える埋込型歯科用デバイスであって歯の根管空間内で固定され、ポリマー形状記憶材料を作動させた後に当該埋込型歯科用デバイスの応力解放状態にある埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図18】本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図19】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図20】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図21】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図22】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図23】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図24】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明の埋込型歯科用デバイスは、形状記憶材料よりなる。形状記憶材料は、吸収性または非吸収性であってもよく、技術的に既知であり、任意の生体適合性のポリマー形状記憶材料は、本発明に照らして使用されている。使用されうる具体的なポリマーには、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれる。
【0081】
好ましい実施形態において、ポリマー形状記憶材料は、ガラス転移温度(Tg)として既知の一定温度以下で変形状態のままであり、この温度を超えると変形状態から応力解放状態へ作動される。一般に、形状記憶特性を示すポリマー材料は、ガラス転移点(Tg)において弾性係数に大きな変化を示す。形状記憶特性は、この特性の有利点を用いて使用されている。すなわち、ポリマー形状記憶材料の巨視的な集団は、一定の形状(原形)が成形によって与えられており、ポリマー材料のTgよりも高いが融点(Tm)未満の温度(Tf)までエネルギー及び熱を材料に掛けることによって柔軟になる。この温度(Tf)において、材料は、別の巨視的形状(変形状態)へ変形する。変形状態において、配向性ポリマーネットワークは、形成される。そして、ポリマー材料は、Tg未満の温度まで冷却されるが、材料の変形状態が維持されている。ポリマー材料が再び第2成形温度Tfよりも高いがTm未満の温度まで加熱されると、変形状態は、消滅し、ポリマー材料は、応力解放して材料の原形に復帰する。エネルギーの入力は、作動として既知のように、ポリマー材料をその変形状態からその応力解放状態まで応力解放させるために必要である。
【0082】
ポリマー材料のガラス転移点は、分子量、組成、ポリマーの構造及び当業者に既知の他の要因のようなさまざまな要因に非常に基づいており、35℃から60℃の間の範囲にある。
【0083】
本発明に照らして、ポリマー形状記憶材料の変形は、一般に、歯科用デバイスを埋め込む前に、一般に製造中にもたらされる。Tfに達するのに十分な熱の入力は、電気的かつ/または熱的なエネルギー源を用いて達成され、この後にポリマー材料が変形する。変形は、配向性ポリマーネットワークを引き起こし、ゾーン延伸、静水圧押出、ダイ延伸、圧縮流動成形、熱成形、圧延及びロール延伸を含むプロセスによって達成される。
【0084】
本発明は、電気的かつ熱的なエネルギー源を用いてポリマー材料を加熱することを意図している。しかしながら、ポリマー材料は、力または機械的エネルギー及び/または溶媒の使用を含むがこれに限定されない当業者に既知の他の方法を介して応力解放されてもよい。手術前または手術中のいずれかで掛けられる任意の適切な力は、使用される。一例には、熱の発生を最小化しながらポリマー材料を応力解放させる超音波デバイスの使用が含まれる。溶媒があることは、ポリマー形状記憶材料のTgへの影響を小さくする。したがって、溶媒は、応力解放を低減させる及び/または応力解放の速度を増大させるために使用される。使用されうる溶媒には、有機性溶媒及び水性溶媒が含まれ、体液が含まれる。特に溶媒が手術中に使用された場合に、選択された溶媒が患者の治療に適していないものではないことに注意を要する。また、溶媒の選択範囲は、応力解放される材料に基づいて選択される。ポリマー材料を応力解放させるために使用されうる溶媒の例には、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、オイル、脂肪酸、アセテート、アセチレン、ケトン、芳香族炭化水素溶媒、及び、塩素化溶媒が含まれる。
【0085】
本発明の埋込型歯科用デバイスであって顎の歯槽骨内の埋込キャビティへまたは歯の根管空間内のキャビティへ埋め込むための歯科用デバイスは、歯根部材と、状況に応じて例えば歯冠などの歯科用プロテーゼを取り付ける手段を形成する橋脚歯部と、を備える。
歯根部材は、2つの構造、歯根部材が埋込キャビティへ挿入される第1構造(変形状態)と、歯根部材がキャビティ内で固定されるように構成された第2構造(応力解放状態)と、で存在するように構成されている。歯根部材の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料よりなる。必要なレベルのエネルギーが供給されると、ポリマー形状記憶材料は、変形状態から応力解放状態へ作動される。形状記憶材料を作動させるのに必要なエネルギーは、熱、光またはこれらの組み合わせの形態で供給される。歯根部材で使用されるポリマー形状記憶材料は、歯槽キャビティへ挿入するときに歯根部材を体温にさらすことが作動を引き起こすのに十分であるように形成されている。
【0086】
使用時において、デバイスの歯根部材にあるポリマー形状記憶材料は、埋込キャビティへ埋め込む前に材料の変形状態で存在する。形状記憶材料の原形から材料の変形状態への変形は、一般に、例えば歯根部材の長手方向軸に沿ってポリマーを延伸することに伴って生ずる。ポリマー形状記憶材料の作動は、歯根部材がキャビティへ埋め込まれた後に発生する。作動しているときにおけるポリマーの応力解放と原形への復帰とは、ポリマー形状記憶材料よりなる歯根部材の任意部分の膨張に伴って生ずる。ポリマー材料が変形される方向に起因して、かつ/または、歯根部材内においてポリマー材料が非形状記憶部分と接触することに起因して、この接触が側方への膨張以外の他の膨張を防止している状態で、膨張は側方に発生する。ポリマー形状記憶材料の膨張は、歯根部材をキャビティ内でぴったりと嵌合させ、歯根部材は、キャビティの壁部に直接接触し、壁部に力を掛ける。
【0087】
ダイ延伸されたPLCロッドであって模擬骨(sawbone)にドリル加工された穴部内で拘束されたPLCロッドに実行された押出試験は、ポリマー形状記憶材料よりなるインプラントの応力解放によって引き起こされた固定に対する改善を立証している。これら試験において、PLCロッドは、模擬骨にドリル加工された穴部内へ挿入されており、37℃の水に9日浸漬することによって応力解放が作動されている。ロッドを押し出すために必要な力は、1700Nから1900Nまで増大した。
【0088】
図1は、歯槽骨にある埋込キャビティ2内に位置付けられた埋込型歯科用デバイス1を示している。デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、ポリマー形状記憶材料が変形状態にあるときに歯槽骨にあるキャビティへ挿入されている。ポリマー形状記憶材料は、体温または例えば熱を掛けるまたは光を当てるなどエネルギーの外部入力にさらすことによって作動される。作動させると、ポリマー形状記憶材料は、応力解放し、歯根部材12を径方向で膨張させ、かつ歯根部材をキャビティ2に固定させる。いったんキャビティに固定されると、歯冠3は、橋脚歯部11に取り付けられる。
【0089】
埋込キャビティ2内に位置付けられた歯科用デバイス1は、図2A及び図2に示される。キャビティ2は、キャビティ2の口部より遠位側にある大径部と、キャビティの口部の基端側に向けて小径となるテーパ状部と、を有する。デバイス1は、図2Aにおいてデバイスの変形状態、図2Bにおいてデバイスの応力解放状態で示されている。図示のように、応力解放された状態で、歯根部材12の側方への膨張は、発生し、歯根部材をキャビティ2の壁部に接触させてそれをもって固定をもたらす。キャビティ2のテーパ状部は、組織の質が最良となる領域で固定を増大させるように構成されている。
【0090】
本発明における埋込型歯科用デバイスの別の用途は、図3に示されており、図3では、2つの歯科用デバイス1が歯の根管空間内にある2つのキャビティへ埋め込まれている。
【0091】
本発明の1つの具体的な実施形態において、図4に示すように、歯科用デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、吸収性または非吸収性であってもよいポリマー形状記憶材料よりなる。歯根部材12は、第1端部13と、第2端部14と、を備えており、第1端部13は、橋脚歯部11に隣接し、第2端部14は、橋脚歯部よりも遠位側にある。歯根部材12の外面部15は、第1端部13と第2端部14との間に延在する。
【0092】
図5は、橋脚歯部11及び歯根部材12を備える歯科用固定デバイス1を示している。歯根部材は、複数の隣接するディスク状セグメントを備えており、ディスク状セグメントは、非吸収性材料よりなる第1セグメント群50と、ポリマー形状記憶材料よりなる第2セグメント群51と、を有する。第1及び第2セグメント群は、互いに接着されており、積層体を形成し、交互のパターンで配置されている。図5に示す構造を有するデバイスは、非吸収性形状記憶材料よりなる第1セグメント群と、非形状記憶材料よりなる第2セグメント群と、を備えている。あるいは、図5において設定された構造を有するデバイスは、非吸収性であり非形状記憶材料または形状記憶材料よりなる第1セグメント群と、吸収性形状記憶材料よりなる第2セグメント群と、を備える。
【0093】
図6は、図5に示すようなデバイスを示しており、デバイスは、非吸収性材料よりなるロッド状の内部部分60をさらに備える。内部部分60は、第1及び第2セグメント群によって封入されており、第2端部14において歯根部材の外面部と接触する。
【0094】
歯科用デバイス1の別の実施形態は、図7に示されており、図7において、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる外側部分70と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分71と、を備える。外側部分70は、部分的に内側部分71を封入するように構成されている。外側部分70は、内側部分71が配置される空洞部を形成するほぼ固体の構造を有する。外側部分は、空洞部までと接触する少なくとも1つの開口を形成し、内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放全体にわたって膨張する。いったんキャビティへ挿入され、かつ応力解放すると、内側部分71のポリマー形状記憶材料は、応力解放して膨張し、開口部を通って埋込キャビティの壁部に接触して固着する。内側部分は、吸収性または非吸収性であるポリマー形状記憶材料よりなってもよい。本実施形態におけるデバイスは、空洞部をポリマー形状記憶材料で充填した状態で、または、デバイスを埋め込む前に施術者自身が充填するように空洞部が充填されていないデバイスよりなるキットとして、歯科施術者に供給される。
【0095】
図8及び図9は、歯科用デバイス1を示しており、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる本体部80を備えている。本体部80には、長手方向の陥凹部81が形成されており、陥凹部81には、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分82が位置付けられている。細長部分82は、歯根部材12の外面部の位置を形成するように位置付けられており、歯根部材の第1端部13と第2端部14との間で長手方向に延在する。図示の実施形態において、4つの細長部分は、歯根部材12の外面部の周囲で等間隔に位置して示されている。任意の数の細長部分82が存在してもよい。細長部分82は、吸収性なポリマー材料よりなってもよい。陥凹部81内における細長部分82の位置は、細長部分82のポリマー形状記憶材料が応力解放すると、ポリマー材料の径方向/側方のみへの膨張が可能であることを意味している。他の方向への膨張は、細長部分82が陥凹部81の壁部と接触することによって抑制される。細長部分82は、接着剤を用いてまたは機械的な取り付けによって、陥凹部81内で固定される。
【0096】
図9に示す実施形態における別の構成において、本体部80は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、非吸収性材料よりなる1以上の細長部分82を収容する1以上の陥凹部81を形成する。
【0097】
図10は、歯科用デバイス1の実施形態を示しており、歯根部材12は、陥凹部81を形成する非吸収性材料よりなる本体部80を備え、陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分82を収容する。陥凹部81と細長部分82とは、本体部80の周囲にコイル状に配置されている。
【0098】
図11に示す歯科用デバイス1は、歯根部材を備えており、歯根部材は、歯根部材12の第1端部13から歯根部材12の長手方向軸111に沿って第2端部14まで延在するロッド状の内部部分110を備えている。内部部分110は、非吸収性材料よりなっており、ポリマー形状記憶材料よりなる外側部分112で封止されている。外側部分112は、吸収性または非吸収性であるポリマー形状記憶材料よりなってもよい。内部部分は、歯根部材を構造的に補強する機能を果たし、接着または例えば螺着など機械的な取り付けによって外側部分112内に取り付け可能である。
【0099】
図12から図17は、歯科用デバイス1のさまざまな構造を示しており、歯根部材12は、隣接するセグメントを備えている。
【0100】
図12に示すデバイスにおいて、歯根部材12は、第1セグメント120と、第2セグメント121と、第3セグメント122と、を備えている。第1及び第3セグメント120、122は、ロッド状の内部部分123であってポリマー形状記憶材料よりなる外側部分124によって封止された非吸収性材料よりなる内部部分123を備えている。第2セグメント121は、非吸収性材料よりなる。第1セグメント120は、橋脚歯部11に隣接する歯根部材12の第1端部13に位置付けられており、第3セグメント122は、歯根部材12の第2端部14に位置付けられており、第2セグメント121は、第3及び第1セグメント間に位置付けられている。このデバイスの一構成において、外側部分124は、吸収性なポリマー形状記憶材料よりなり、内部部分123及び第2セグメント121は、独立しており、非吸収性である非形状記憶材料または形状記憶材料よりなる。別の構成において、外側部分124は、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、内側部分及び第2セグメント121は、独立しており、非吸収性非形状記憶材料よりなる。
【0101】
隣接するセグメントは、接着することによって互いに結合されており、または、例えば互いに螺着することによって機械的に取り付けられている。
【0102】
セグメント化された歯根部材の別の構成は、図13に示されており、図13において、歯根部材12は、上述のように、第1セグメント120と、第2セグメント121と、を備えている。第2セグメント121は、歯根部材12の第1端部13に位置付けられており、第1セグメント120は、歯根部材12の第2端部14において第2セグメント121に隣接して位置付けられている。
【0103】
セグメント化されたデバイスのさらに別の構成は、図14に示されている。この構成において、歯根部材12は、第1、第2及び第3セグメントを備えており、第1及び第2セグメント120、121は、図12及び図13に関して上述のようになっており、第3セグメント140は、非吸収性材料よりなる。第2セグメント121は、橋脚歯部11に隣接して位置付けられており、第3セグメント140は、歯根部材12の第2端部14に隣接して位置付けられており、第1セグメント120は、第2セグメント121と第3セグメント140との間に位置付けられている。この構成において、第2及び第3セグメントは、非吸収性非形状記憶材料よりなってもよく、この材料は、ポリマー形状記憶材料よりなる外側部分124と接して外側部分の側方のみの膨張を可能とする。
【0104】
セグメント化された固定デバイスのさらに別の構成は、図15に示されており、歯根部材12は、上述のように歯根部材12の第1端部13に位置する第1セグメント120と、上述のように第1セグメントに隣接して位置する第2セグメント121と、を備えている。
【0105】
歯槽骨キャビティへ埋め込むように構成された埋込型歯科用デバイス1は、図16に示されている。デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、チタン、チタン合金またはステンレス鋼のネジ状の本体部160から形成されている。歯根部材12は、本体部160の両側に位置する上側襟部161と下側襟部162とを備えており、上側襟部及び下側襟部の双方は、ポリマー形状記憶材料よりなる。使用時において、上側襟部161は、歯根部材12の第1端部に位置しており、膨張し、デバイスと埋込キャビティとの間に封止を形成する。下側襟部162は、応力解放時において、キャビティの基部においてデバイスを即時に固定する機能を果たす。
【0106】
本発明は、さらに、歯根部材のみからなる埋込型歯科用デバイスを提供し、当該歯科用デバイスは、歯の根管空間内にあるキャビティへ歯科用ポストを挿入して歯の現存する構造に補強をもたらすとしての使用に特に適している。本発明の実施形態におけるデバイス170は、使用時において、図17A及び図17Bに示されている。図17Aは、根管キャビティ171へ挿入される変形構造にあるデバイス170を示しており、図17Bは、ポリマー形状記憶材料を作動させた後のデバイスの応力解放構造にあるデバイスを示している。応力解放構造において、デバイス170は、膨張され、キャビティ171内における固定をもたらす。
【0107】
歯根部材のみからなる歯科用デバイスのさまざまな具体的な実施形態は、図18から図24に示されている。すべての実施形態において、歯根部材の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料よりなる。
【0108】
図18は、歯科用ポスト170を示しており、歯科用ポストは、ポリマー形状記憶材料のみから形成された単一の連続的な部分から形成された歯根部材12を備えている。歯根部材は、第1端部13と、歯根部材の先端側にある第2端部14と、第1端部13と第2端部14との間に延在する外面部15と、を備えている。ポストは、外面部15の少なくとも一部、好ましくはすべてと埋込キャビティの壁部との直接接触をもたらし、ポリマー形状記憶材料が材料の応力解放状態(図17Bに示される)にあるときに埋込キャビティに挿入される。ポリマー形状記憶材料は、好ましくは非吸収性である。
【0109】
図19は、デバイス170を示しており、歯根部材12は、内部部分110をさらに備え、内部部分は、非吸収性非形状記憶材料で形成され、ポリマー形状記憶材料で形成された外側部分120によってほぼ封入されている。内部部分110は、歯根部材に対する構造的な補強部として機能し、接着または例えば螺着など機械的な取り付けによって外側部分112内に取り付け可能である。
【0110】
デバイスは、図20及び図21に示すように、隣接するセグメントを備えている。図20に示すデバイスは、歯根部材12の第1端部13に隣接する第1セグメント200と、第2セグメント201と、を備える。第1セグメント200は、非吸収性非形状記憶材料で形成されて非吸収性ポリマー形状記憶材料で形成された外側部分204によって封入された内部部分203を備えており、第2セグメント201は、非吸収性非形状記憶材料よりなる。図21に示す歯科用ポスト170は、非吸収性非形状記憶材料よりなる第3セグメント210をさらに備える。第3セグメント210は、第2セグメントと歯根部材12の第2端部14とに隣接して位置付けられている。
【0111】
図22に示すように、デバイス170は、非吸収性材料よりなる本体部220と、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分221と、を備えている。細長部分221は、本体部220の周囲を囲むコイル状に構成されており、本体部220によって形成された陥凹部内に収容されている。
【0112】
図23は、歯科用ポスト170を示しており、歯科用ポストは、非吸収性材料よりなる外側部分230と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分231と、を備えている。外側部分230は、内側部分231を部分的に封入している。外側部分230は、ほぼ個体構造を有しており、内側部分231が位置する空洞部を形成する。外側部分230は、空洞部に連通する少なくとも1つの開口部を形成しており、内側部分231のポリマー形状記憶材料は、開口部を通って膨張する。いったんキャビティへ挿入されかつ作動されると、内側部分231のポリマー形状記憶材料は、応力解放し、開口部を通って膨張し、キャビティの壁部と接触して固定する。
【0113】
図24は、歯科用ポスト170を示しており、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる本体部240と、ポリマー形状記憶材料よりなる複数の細長部分241と、を備えている。細長部分241は、歯根部材12の第1端部13と第2端部14との間で長手方向に延在する本体部240にある凹所242内に収容されている。
【0114】
さまざまな変更及び改良が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくかつ本発明の結果として伴う有利点を消滅させること無く、本明細書に記載された実施形態になされることは、理解すべきである。
【符号の説明】
【0115】
1 埋込型歯科用デバイス,歯科用固定デバイス,歯科用デバイス,デバイス、2 埋込キャビティ,キャビティ、3 歯冠(歯科用プロテーゼ)、11 橋脚歯部、12 歯根部材、13 第1端部、14 第2端部、15 外面部、50 第1セグメント群、51 第2セグメント群、60,110,123,203 内部部分、70,112,120,124,204,230 外側部分、71,231 内側部分、80,160,220,240 本体部、81 陥凹部、82,221,241 細長部分、120,200 第1セグメント(セグメント)、121,201 第2セグメント(セグメント)、122,140,210 第3セグメント(セグメント)、161 上側襟部(襟部)、162 下側襟部(襟部)、170 歯科用ポスト,デバイス、171 根管キャビティ,キャビティ、242 凹所
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎の歯槽骨内にあるキャビティ内または歯の根管空間(root canal space)内に埋め込むためのポリマー形状記憶材料よりなる埋込型歯科用デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
修復歯科学において、埋込型歯科用デバイスは、損傷したまたは疾患した歯の補強と、外傷、腐食または疾病により失われまたは交換された欠損歯の恒久的な交換と、を達成するために用いられる。歯科用インプラントは、歯の根管空間へ埋め込まれて残存歯を補強し、かつ、歯の根管空間へまたは歯槽骨内のキャビティへ埋め込まれて歯冠またはブリッジのような歯科用プロテーゼを固定する手段を形成する。
【0003】
埋込型歯科用固定デバイスは、主として、人工歯根構造を備えており、人工歯根構造は、顎の歯槽骨または歯の根管空間と橋脚歯とへ埋め込まれて歯冠またはブリッジのような歯科用プロテーゼの取り付けを可能とする。
【0004】
既知の大部分の骨内歯科用固定デバイスは、チタンまたはチタンベースの合金から形成されたシリンダ状またはネジ状のデバイスであり、このデバイスは、顎の歯槽骨に予めドリル加工された穴部に挿入される。このようなデバイスは、一般に、歯槽骨内での長期間安定した固定、好ましくは骨結合(osseointegration)によって強化した固定を実現することを目的として構成されている。骨結合は、生きている骨と人工インプラントの表面との間に構造的かつ機能的な接続が直接形成されるプロセスである。骨結合は、デバイス表面において骨芽細胞を用いて周辺の骨とインプラントとが結合することを可能とする。しかしながら、骨結合は、時間がかかり、インプラントを固定するための有一の手段としては信頼されていない。また、埋め込んですぐに固定をもたらす手段が求められている。
【0005】
歯の根管空間へ埋め込むための埋込型歯科用デバイスは、歯科用ポストとして知られている。歯科用ポストは、ロッド状のデバイスであり、損傷した歯の根管空間内に位置付けられて固定され、歯における欠陥した構造的結合性を補強する。また、歯科用ポストは、歯科用プロテーゼを取り付ける手段を提供する橋脚歯部を備える。使用される歯科用ポストは、損傷した歯のタイプを含む組織の数に基づいて選択される。これについて、異なる歯のタイプは、異なるポストの構造が必要となる異なる歯根の数及び構造を有する。さらに、例えば根管手術または損傷後の歯の復元など外科手術のタイプは、歯科用ポストの選択に影響する。歯槽骨へ埋め込むための埋込型固定デバイスと同様に、大部分の既知の歯科用ポストは、チタンまたはチタンベースの合金から形成されたシリンダ状のデバイスであり、このデバイスは、歯の根管に予めドリル加工された穴部に挿入される。
【0006】
既知の歯科用インプラントに関連する問題には、即時かつ長期間の固定が不十分であること、埋込片拒絶、審美性が乏しいこと、及び、複雑かつ反復的な外科手術が必要なこと、が含まれる。
【0007】
既知のインプラントは、所定範囲のサイズ及び寸法で生産されている。インプラントは、所望する位置、組織構造の結合の回避、及び、インプラントが埋め込まれる骨または歯科組織の質、に基づいて選択される。幾何形状及びネジタイプのインプラントにおけるネジサイズを含むインプラントの寸法選択を誤ると、機械的負荷が不十分であること、または、機械的負荷が過剰でありインプラントを緩めて失敗させること、が際立つ。埋め込みを失敗すると、インプラントの取り外しと繰り返しの外科手術とが必要となる。
【0008】
インプラントと埋込キャビティとの間に良好な封止を形成することは、不可欠である。封止は、セメントもしくはフィラーを用いて、または例えばテーパ状の頭部にネジタイプのインプラントを形成することなどインプラントの幾何形状を調整することによって、形成される。しかしながら、これら技術を用いても、完全な封止を実現することは困難である。一般的な封止は、バクテリアの侵入を可能とし、内在する骨または歯科組織の感染を引き起こす。感染が発生した場合、インプラントを取り外すことが必要となることがある。また、一般的な封止は、軟質組織の埋込キャビティへの侵入を可能とし、繊維組織の形成を引き起こす。これは、例えば骨結合を妨害するなど埋め込みの失敗に寄与する。
【0009】
所望埋込部位は、しばしば、低質の骨または歯科組織を含んでおり、低質の組織内にインプラントを固定することが芳しくなくなる可能性が高いことが、知られている。また、骨または歯科組織が良好な質で存在するが数が制限されている状況がある。固定は、多数の骨または歯科組織の存在が制限されている場合に、芳しくなくなる可能性が高い。一般に、インプラントの初期的な固定が不十分であると、負荷印加試験または音響試験のような標準的な歯科用技術を用いて試験されるので、一時的なキャップは、さらなる作業が実行される前に、例えば骨結合などインプラントの適切な結合及び固定を実行するのに必要な間だけインプラント上に配置されている。これは、6ヶ月もの間行う。
【0010】
さらに、純粋なチタンのインプラントが良好な腐食耐性及び強度特性を有していても、インプラントは、歯肉及び歯冠材料の望ましくない灰色化を引き起こす。チタン合金から形成されたインプラントは、同様に、金属の電位差(galvanic difference)による問題であって金属の電位差が腐食、インプラントの緩み及び失敗を招く問題を引き起こす。
【0011】
既知の歯科用インプラントは、侵襲的な外科技術の使用を必要とする。従来、歯科施術者は、顎骨または歯の根管に穴部をドリル加工しており、穴部のサイズは、挿入されるまたは螺合される選択されたインプラントに応じて判断される。侵襲的な手術は、インプラントの固定に影響を及ぼす周辺組織を損傷させる。
【0012】
歯科用埋込技術及び埋込デバイスは、上述した問題に取り組もうとして開発されている。このような技術の1つは、液化セメントを使用して強化した歯の固定を実現することである。しかしながら、液化セメントを使用することは、複数の工程、複数の構成部材の埋込手術を必要としており、所望サイズの穴部をドリル加工して歯科用インプラントのための空間を形成する工程と、全体を洗浄することと、穴部に歯科用インプラントを位置付ける工程と、続いて歯科用セメントを用いてインプラントを所定位置に固定する工程と、を伴う。
【0013】
Ni−Ti合金のような形状記憶合金は、歯科用インプラントを形成する強化された固定材料として提案されている。これら材料は、熱を掛けると、強化したインプラントの固定を可能とする事前設定された形状へ膨張する。特許文献1は、熱的形状記憶材料、具体的にはCu−Zn−AlまたはTi−Ni合金よりなる歯科用骨内インプラントを開示している。歯科用インプラントは、いったん骨内へ挿入されて熱を掛けると、形状変化して歯槽骨内で強化した固定をなそうとする。特許文献2は、3つの別個の構成部材である歯根部分、首部分及び橋脚歯を含むインプラントを開示している。歯根部分は、形状記憶合金(Ni−Ti、Ti−PdまたはTi−Pd−Co合金)よりなる3つの脚部からなり、脚部は、熱を掛けると、分離してインプラントの固定を提供する。
【0014】
形状記憶合金の使用は、周辺骨に圧縮力を掛けることによって固定の強化と結合の強化とを形成しようとしている。圧縮力は、骨結合を含む生体プロセスを促進させるとして示されている(非特許文献1及び非特許文献2)。
【0015】
しかしながら、形状記憶合金は、高価である。さらに、形状記憶合金を歯科用インプラント内で使用することは、非分解性と生体適合性の欠如とに関連する問題をもたらす。例えば、ニッケルを含む合金は、一部の人に対してアレルギー反応を起こさせる。
【0016】
形状記憶ポリマーは、既知であり、組織縫合デバイス、血管拡張器(blood vessel expander)、緊張材及び骨固定デバイスのような医療用デバイスとしての使用について特許文献3及び特許文献4に開示されている。
【0017】
形状記憶ポリマーは、歯科分野において使用が非常に制限されている。特許文献5は、歯肉または歯槽骨に埋め込む複数の構成部材のデバイスを開示しており、デバイスは、後に来るインプラントに対する支持部を形成するために使用される。このデバイスの埋め込みは、複数の工程及び複数の構成部材を必要とする。デバイスは、形状記憶材料からなるコイル、螺旋、メッシュまたは管から形成されたステント状アンカーを備える。ステント状アンカーは、内部キャビティを形成し、多孔質のスリーブによって覆われる。ステント状アンカー及びスリーブは、共にステント組立体を形成し、ステント組立体は、埋め込まれて歯槽キャビティの内側を覆う。いったんステント組立体が埋め込まれると、形状記憶合金を作動させるため、かつ埋め込まれたデバイスに内部構造を形成するため、重合可能な材料は、ステント組立体によって形成された中央キャビティへ注入される必要がある。重合可能な材料による発熱性の重合は、形状記憶材料を作動させるのに十分な熱を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第5108289号明細書
【特許文献2】米国特許第5951288号明細書
【特許文献3】米国特許第4950258号明細書
【特許文献4】米国特許第6281262号明細書
【特許文献5】米国特許第6299448号明細書
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】「Increased calcification of the growth plate cartilage as a result of compressive force in-vitro」,Nulend等,Arthritis & Rheumatism,Vol.29 (8),p.1002-1009,1986
【非特許文献2】「Inhibition of osteoclastic bone resorption by mechanical stimulation In Vitro」,Nulend等,Arthritis & Rheumatism,Vol.33 (1),p.66-72,1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
技術的に、強化した即時かつ長期間の固定と、強化した長期間の結合と、インプラントと埋込キャビティとの間の強化した封止と、を形成することによって、上述した問題に取り組む改良した歯科用インプラントが必要である。さらに、単純かつ信頼性のある埋込手術を用いて埋め込まれる歯科用インプラントが必要である。上述のように、歯科用インプラントの分野で形状記憶ポリマーを使用することは、非常に制限されており、これら必要性に取り組むインプラントにおいて使用されていなかった。ここで、埋込型歯科用デバイスであって埋込キャビティの壁部と直接接触するように構成された形状記憶ポリマーよりなる歯科用デバイスが、単純な埋込手術を用いた即時の固定と強化した長期間の固定とを達成することが可能であると断定されている。したがって、本発明は、上述した必要性に取り組む埋込型歯科用デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0021】
したがって、本発明の第1の態様は、埋込型歯科用デバイスを提供し、当該デバイスは、歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティへ埋め込む歯根部材を備え、歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されている。
【0022】
歯科用デバイスの好ましい形態において、歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、第1端部と第2端部との間に延在する外面部と、を備え、歯根部材の外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されている。好ましくは、歯根部材は、歯根部材は、当該埋込型歯科用デバイスがキャビティに挿入されると、当該歯根部材の外面部の少なくとも一部とキャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されている。好ましくは、ポリマー形状記憶材料によって形成された外面部の範囲は、ポリマー形状記憶材料が応力解放状態にあると、キャビティの壁部と直接接触する。
【0023】
第2の態様において、本発明は、埋込型歯科用デバイスを提供し、当該デバイスは、歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティに埋め込む歯根部材を備え、歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、第1端部と第2端部との間に延在する外面部と、を備え、歯根部材の外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されている。
【0024】
好ましくは、当該埋込型歯科用デバイスがキャビティに挿入されると、当該歯根部材の外面部の少なくとも一部とキャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されている。好ましくは、歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されている。
【0025】
本明細書で記載された好ましい特徴及び有利点は、本発明の第1の態様におけるデバイスと本発明の第2の態様におけるデバイスとに適用可能である。
【0026】
変形状態において、歯根部材は、キャビティに挿入され、応力解放状態において、歯根部材は、キャビティに固定されるように構成されている。歯根部材は、埋込キャビティと接触するように、好ましくは直接接触して埋込キャビティへの固定をもたらすように構成された外部構造と、埋め込まれたデバイスが骨または歯を補強することを可能とする歯根部材への支持をもたらすように構成された内部構造と、の双方を備え、骨もしくは歯にデバイスが埋め込まれかつ/または骨もしくは歯が歯科用プロテーゼを取り付けるための支持部を形成する。歯根部材は、好ましくはほぼ固体である。
【0027】
好ましくは、歯根部材は、単一ユニットとして埋込可能である。有利には、ポリマー形状記憶材料の作動を達成するために、埋込後に歯根部材の追加の構成部材を導入する必要がない。
【0028】
有利には、本発明における埋込型歯科用デバイスは、ポリマー形状記憶材料を応力解放状態へ作動させると、デバイスを即時に固定させる。
【0029】
ポリマー形状記憶材料の本体部は、巨視的に、本体部が変形状態にあると一の形状で存在し、本体部が応力解放状態にあると別の形状で存在する。変形状態から応力解放状態への作動は、エネルギーの入力によって引き起こされる。連続的な形状変化は、ポリマー形状記憶材料よりなる歯根部材の任意の部分における膨張をもたらし、これは、埋込キャビティにデバイスを固定する機能を果たす。好ましくは、歯根部材は、全体的に細長い形状をなし、第1端部から第2端部へ延在する長手方向軸を有する。好ましくは、変形状態から応力解放状態への形状変形は、形状記憶ポリマーよりなる歯根部材の任意の部分における側方への膨張をもたらす。歯根部材がほぼシリンダ状、円錐状などであると、側方への膨張は、径方向の膨張である。
【0030】
有利には、形状記憶ポリマーの応力解放によって引き起こされる膨張は、歯根部材の一部分を側方へ膨張させてキャビティの壁部に接触させるのに効果的である。歯根部材は、キャビティの壁部と接触することによってさらなる膨張が防止されるまで膨張が発生するような寸法となっている。これは、キャビティ内に埋め込まれたデバイスにぴったりとした嵌合と、その結果としての良好な即時の固定と、をもたらし、埋め込みを失敗する可能性を低減する。安定した即時の固定は、周辺組織がデバイスと結合する時間を考慮し、例えば骨結合が発生することを可能とする。形状記憶材料の応力解放によって即時の固定がもたらされることは、事前にデバイスに即時の固定を形成するためにセメントが使用される必要性を回避し、長期間の固定前に埋込が失敗する危険性を低減する。
【0031】
さらに、ポリマー形状記憶材料を使用することは、インプラントが固定されるキャビティのサイズについて自由度を与える。
【0032】
ポリマー形状記憶材料が応力解放すると、歯根部材が挿入されるキャビティの壁部に圧縮力を掛ける。ぴったりとした嵌合を形成することと同様に、組織に圧縮力を掛けることによって例えば骨結合など生体プロセスを促進させることを示す。このため、形状記憶材料の側方への膨張は、埋込キャビティの壁部に圧縮力を掛け、歯槽骨との骨結合を促進させ、長期間のインプラント結合が達成される速度を増大させる。
【0033】
本発明におけるデバイスの歯根部材の外面部は、滑らかであってもよいが、より好ましくは、尾根部及び/または凹所を形成する。好ましくは、外面部は、ネジ山を形成している。
【0034】
有利には、本発明におけるデバイスは、スリーブまたは外側被覆を使用する必要がないが、外面部と埋込キャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されており、これにより、キャビティに直接挿入される。
【0035】
好ましい形態において、デバイスは、歯科用プロテーゼを受ける橋脚歯部をさらに備え、橋脚歯部は、歯根部材の隣接する第1端部から延在する。
【0036】
本発明におけるデバイスは、好ましは、単一のユニット、すなわち単位デバイスとして埋込可能であり、橋脚歯部は、好ましくは歯根部材に直接接続されている。デバイスは、多数の構成要素から製造されてもよく、多数の構成要素は、埋め込む前に共にしっかり組み立てられて単一のユニットを形成する。あるいは、歯根部材と橋脚歯部とは、歯根部材を埋込キャビティへ埋め込むまたは埋め込んだ後に組み立てられる別個の構成部材として形成されてもよい。
【0037】
好ましい形態において、歯根部材は、2以上の部分を備え、少なくとも1つの部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる。
【0038】
ポリマー形状記憶材料は、生体適合性のあるポリマー形状記憶材料であってもよく、吸収性及び/または非吸収性であってもよい。デバイスが歯槽骨へ埋め込むことを対象としている場合、ポリマー形状記憶材料は、好ましくは吸収性であり、デバイスが歯の根管空間へ埋め込むことを対象としている場合、ポリマー形状記憶材料は、好ましくは非吸収性である。
【0039】
吸収性のポリマー形状記憶材料が使用される場合、骨結合が発生する期間にわたって、材料は、吸収されて新たに形成された骨によって置換される。吸収性の形状記憶材料を使用することは、デバイスに骨結合する特性を付与し、期間にわたって、埋込キャビティが再生した骨細胞によって示されることを可能とする。これは、デバイスの長期化の結合に望ましい。
【0040】
埋込型歯科用デバイスにポリマー材料が使用される場合、デバイスの強度に関してさらなる有利点が達成される。デバイスを部分的にまたは全体的にポリマー材料から形成することにより、歯槽骨または歯科組織の強度と同様の強度が達成される。これは、応力遮蔽の危険性を低減し、応力遮蔽は、インプラント材料が骨または歯科組織であってインプラント材料が埋め込まれる骨または歯科組織よりも強度が高い場合に観測される望ましくない結果である。
【0041】
本発明における埋込型歯科用デバイスのさらなる有利点は、埋込キャビティの形状に適合することを可能とすることによって、低質な骨または歯科組織における芳しくない固定の問題に取り組む能力を有することである。本発明における歯科用デバイスは、さまざまな径を有するキャビティへ埋め込まれ、ポリマー形状記憶材料が側方へ膨張してこのようなキャビティに入ることで、固定を改善する。一般に、低質の骨または歯科組織の領域において、質は、組織内で大きく改善している。このため、キャビティは、ドリル加工されてキャビティの口部の近傍において小径を有し、口部から遠位に向けて大径を有する。本発明におけるデバイスは、組織の質がほぼ最良であるこのようなキャビティ内で膨張して固定し、キャビティの口部よりも遠位側において固定を増大させる。
【0042】
好ましい形態において、歯根部材は、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備える。非形状記憶材料は、好ましくは、非吸収性であり、チタン、チタン合金、ステンレス鋼、セラミック材料またはポリマー材料よりなる。
【0043】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる少なくとも1つの部分を備える。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料よりなる。
【0044】
このため、好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備える。形状記憶材料と非形状記憶材料との組み合わせは、有利には、形状記憶材料の応力解放形状を制御することを可能とする。歯根部材のうち非形状記憶部分の幾何形状は、デバイスの形状記憶部分の応力解放形状を制御する機能を果たす。例えば非形状記憶材料からなる本体部に形状記憶材料が収容される陥凹部を形成するなど、非形状記憶部分を設計することで、ポリマー形状記憶材料の応力解放形状を制御することが可能となる。非形状記憶材料は、ポリマー形状記憶材料と接触するように構成され、応力解放時においてポリマー形状記憶材料が側方に膨張することを可能とするが長手方向で膨張することを可能としない。
【0045】
このため、好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備え、非形状記憶材料よりなる部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる部分と接触するように構成され、ポリマー形状記憶材料の非形状記憶材料との接触は、応力解放時にポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止し、ポリマー形状記憶材料の側方への膨張を可能とする。
【0046】
好ましくは、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる襟部分を備える。襟部分は、好ましくは、歯根部材の長さの少なくとも一部において、歯根部材の全周を囲むように構成されている。襟部が応力解放して側方に膨張すると、襟部は、デバイスが埋め込まれている埋込キャビティの全周と接触し、これにより、デバイスと埋込キャビティとの間の封止を形成する。好ましくは、襟部分は、例えば襟部分が橋脚歯部の非形状記憶材料または歯根部材の1以上の非形状記憶材料部分と接触するように構成されているなど、ポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止するように構成され、応力解放すると、ポリマー形状記憶材料が側方へ膨張することを可能とするが、長手方向の膨張が抑制される。
【0047】
使用時において、歯根部材の第2端部は、まず埋込キャビティへ挿入され、第1端部は、キャビティの口部に最も接近して位置する。デバイスの使用対象に応じて、第1端部は、キャビティの口部の上方、下方または同一高さにある。好ましくは、襟部は、歯根部材の第1端部に位置付けられている。
【0048】
歯根部材の第1端部に位置付けられた襟部分は、ポリマー形状記憶材料が応力解放すると、キャビティの口部においてまたは口部の近傍においてデバイスと埋込キャビティとの間の封止を形成する。襟部分を配置してそれによりポリマー形状記憶材料の側方への膨張が抑制されると、応力解放したときにキャビティの口部の上方に襟部分が延在することを防止する。有利には、この封止は、バリアとして機能してバクテリアがキャビティに入ることを防止し、これによりインプラントの失敗を招く感染症の危険性を低減する。また、封止は、バリアとして機能して埋込キャビティへ軟組織が内部成長することを防止する。軟組織の内部成長とこれにより引き起こされる繊維組織の形成とは、インプラントの失敗を招く一因である。
【0049】
好ましくは、襟部分は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる。吸収性ポリマーを使用することは、デバイスが歯槽骨へ埋め込まれる場合に、特に好ましい。襟部分に吸収性材料を使用することは、表面の軟組織の成長を促進させる一方、埋込キャビティへ軟組織が入ることを防止する機能を果たす。これは、既知の埋込デバイスで観測された問題であって橋脚歯部に取り付けられたプロテーゼまで歯肉が再生しない問題を解決する。これは、歯肉とプロテーゼとの間のギャップを残し、このギャップは、審美的に満足な結果をもたらさない。吸収性襟部を形成することは、組織の伝導効果(conductive effect)を有し、襟部が吸収されるにしたがって橋脚歯部まで表面の軟組織が成長することを促進させる。
【0050】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる本体部を備え、本体部は、ポリマー形状記憶材料からなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成する。好ましくは、1以上の陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の細長部分を収容する細長凹所の形態をなす。好ましくは、歯根部材は、複数の細長部分を備え、複数の細長部分は、第1端部から第2端部までの歯根部材の長さの一部またはすべてに沿って長手方向に延在するように構成されている。あるいは、歯根部材は、本体部を囲むような、螺旋状、コイル状、メッシュ状に構成された細長部分を備える。好ましくは、本体部は、第1端部に隣接して歯根部材の外面部を囲むように延在する凹所を備え、陥凹部内にあるポリマー形状記憶材料は、歯根部材の襟部分を形成する。好ましくは、本体部は、非形状記憶材料よりなる。
【0051】
別の形態において、歯根部材は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる本体部を備え、本体部は、非吸収性材料で非形状記憶材料よりなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成する。
【0052】
好ましい形態において、歯根部材は、2以上の隣接したセグメントを備え、少なくとも1つのセグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、少なくとも1つのセグメントは、非吸収性材料よりなる。ポリマー形状記憶材料よりなる任意のセグメントは、独立して、非吸収性材料よりなりポリマー形状記憶材料によって封入された内部部分を備える。好ましくは、内部部分は、歯根部材の中心長手方向軸にほぼ沿って延在し、歯根部材の外面部と接触しない、または、歯根部材の外面部と第2端部のみにおいて接触する。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料であってもよいが、好ましくは非形状記憶材料である。ポリマー形状記憶材料は、吸収性または非吸収性であってもよい。
【0053】
好ましくは、歯根部材の第1端部におけるセグメントであって橋脚歯部に隣接するセグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、これにより、歯根部材の襟部を形成する。襟部は、デバイスを埋込キャビティへ埋め込むと、埋込キャビティの口部に近接して位置する。
【0054】
好ましい形態において、歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、第1セグメント群は、吸収性形状記憶材料よりなり、第2セグメント群は、非吸収性材料よりなる。好ましくは、複数のセグメントは、歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に、第1群及び第2群の部材間で交互に配置されている。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料である。別の配置において、第1セグメント群は、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、第2セグメント群は、非形状記憶材料よりなる。
【0055】
好ましい形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる内部部分を備える。非吸収性材料は、形状記憶材料または非形状記憶材料である。好ましくは、内部部分は、歯根部材の外面部と接触しない、または、歯根部材の外面部と第2端部のみにおいて接触する。好ましくは、非吸収性の内部部分は、ポリマー形状記憶材料からなる外側部分によって封入されている。好ましくは、内部部分は、歯根部材の長手方向軸にほぼ沿って延在する。内部部分は、第1端部から第2端部までの歯根部材の長さの一部またはすべてに沿って延在する。
【0056】
別の形態において、歯根部材は、非吸収性材料よりなる外側部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分と、を備え、外側部分は、部分的に、内側部分を封入する。外側部分は、少なくとも1つの開口部を形成し、内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放時に開口部を通って拡張する。非吸収性材料は、形状記憶材料及び/または非形状記憶材料である。
【0057】
好ましい形態において、1以上の活性薬剤は、歯科用デバイスに組み込まれる。適切な活性薬剤は、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の細胞を含む。当然ながら、当業者に既知の他の生体活性薬剤は、同様に使用される。好ましくは、活性薬剤は、ポリマー形状記憶材料に組み込まれており、ポリマー材料が応力解放しているまたは分解している間に開放される。有利には、活性薬剤を組み込むことは、埋込部位における感染に対抗する機能、及び/または、新たな組織成長を促す機能、を果たす。
【0058】
好ましくは、歯科用デバイスは、ほぼ細長い形状をなしており、橋脚歯部は、第1端部に位置し、歯根部材は、橋脚歯部の近傍から第2端部まで延在する。好ましくは、歯科用デバイスは、ほぼシリンダ状またはネジ形状に形成されている。しかしながら、他の形状は、意図されてもよい。シリンダ状のデバイスは、根管空間へ挿入される歯科用ポストとして特に使用され、ネジ形状のデバイスは、歯槽骨のキャビティへの挿入に特に使用される。
【0059】
好ましい形態において、歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる単一の連続した部分から形成される。好ましくは、単一部分は、ポリマー形状記憶材料または1以上の活性薬剤を組み込んだポリマー材料からもっぱら形成されている。
【0060】
好ましい形態において、歯科用デバイスの歯根部材は、強化ポリマー材料よりなる。好ましくは、強化ポリマー材料は、繊維、ロッド、血小板及びフィラーのような強化材料または相を含む混合物または基質よりなる。より好ましくは、ポリマー材料は、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリマー繊維、セラミック繊維またはセラミック微粒子を含んでもよい。当業者に既知である他の強化材料または相は、同様に使用されてもよい。
【0061】
好ましい形態において、歯科用デバイスは、金属または金属合金、好ましくはチタンまたはチタン合金とポリマー形状記憶材料との組合せよりなる。
【0062】
好ましい形態において、デバイスが形成される1以上の材料は、多孔質である。多孔質であることにより、周辺組織からの細胞が侵入することが可能となり、骨結合のようなプロセスによってデバイスが結合することが促進する。
【0063】
好ましい形態において、デバイスには、骨移植片、骨移植片代替物またはセメントが設けられており、低質の骨または歯科組織への固定を補助する。
【0064】
好ましい形態において、デバイスには、例えば歯冠など歯のプロテーゼが設けられており、プロテーゼは、デバイスを埋め込む前に橋脚歯部に取り付けられる。
【0065】
好ましい形態において、本発明の埋込型歯科用デバイスは、歯の根管空間へ埋め込む埋込型歯科用ポストである。
【0066】
第3の態様において、本発明は、本発明の第1の態様における埋込型歯科用デバイスを顎の歯槽骨内にあるキャビティへ埋め込む方法を提供しており、当該方法は、
a) 顎の歯槽骨にキャビティをドリル加工する工程と、
b) 歯根部材の第2端部をキャビティへ挿入する工程と、
c) 歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより歯根部材をキャビティ内に固定する工程と、
を備える。
【0067】
好ましい形態において、工程a)より前に、埋め込まれた歯科用デバイスの橋脚歯部に取り付けられる歯科用プロテーゼによって置換される歯は、取り除かれる。
【0068】
好ましい形態において、ドリル加工されたキャビティは、例えば楕円など形状が非円形である。例えば楕円形状に形成することにより、ポリマー形状記憶材料を膨張させかつ固定させ、インプラントを移動させるのに必要なトルク力は、円形のキャビティが使用される場合よりも大きくなる。
【0069】
好ましい形態において、キャビティの径は、キャビティの別の深さにおいて変化する。キャビティのうち大径を有する部分へポリマー形状記憶材料を膨張させることにより、デバイスの固定が強化される。
【0070】
好ましい形態において、キャビティは、歯根部材を挿入する前に洗浄される。
【0071】
好ましい形態において、歯根部材を挿入する工程は、単純に挿入する工程または螺着する工程よりなる。
【0072】
好ましい形態において、ポリマー形状記憶材料を作動させる工程は、ポリマー形状記憶材料に材料のガラス転移点(Tg)を越えるエネルギーを供給することによって達成される。好ましくは、デバイスを体温にさらすことは、作動を引き起こすのに十分である。あるいは、エネルギーは、熱源または光源を用いて供給される。
【0073】
好ましい形態において、埋込型歯科用デバイスは、橋脚歯部を備え、方法は、例えば歯冠など歯科用プロテーゼを橋脚歯部に取り付ける工程d)をさらに備える。
【0074】
第4の態様において、本発明は、本発明の第1の態様における埋込型歯科用デバイスを歯の根管空間内にあるキャビティへ埋め込む方法を提供し、当該方法は、
a) 根管空間内にキャビティをドリル加工することによって歯を下処理する工程と、
b) 歯根部材の第2端部をドリル加工したキャビティへ挿入する工程と、
c) 歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより歯根部材をキャビティ内に固定する工程と、
を備える。本発明の第3の態様について設定された好ましい態様は、同様に、本発明の第4の態様に適用可能である。
【0075】
好ましい形態において、方法は、埋め込む前に、例えばメチルメタクリレートなど塗装面を形成するのに適した材料よりなる層で歯冠部材の第1端部を被覆する工程d)をさらに備える。
【0076】
第5の態様において、本発明は、キットを提供し、当該キットは、本発明の第1または第2の態様における歯科用デバイスと、デバイスを埋め込んだ後に歯科用デバイスに取り付ける歯科用プロテーゼと、を備える。
【0077】
当然ながら、上述した好ましい特徴の組合せは、本発明の範囲内で意図される。
【0078】
本発明のさらなる特徴及び有利点は、後述する本発明の具体的な実施形態から明らかになる。具体的な実施形態は、添付の図面において例として示されている。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明における第1の態様の具体的な実施形態における埋込型歯科用デバイスであって歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられた歯科用デバイスを示す断面図である。
【図2A】歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられたデバイスであって変形状態にあるデバイスを示す断面図である。
【図2B】歯槽骨にあるキャビティ内に位置付けられたデバイスであって応力解放状態にあるデバイスを示す断面図である。
【図3】本発明における2つの埋込型歯科用デバイスであって歯内の根管空間内に埋め込まれて歯冠を取り付ける手段を形成する2つの埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図4】本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図5】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図6】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図7】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図8】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図9】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図10】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図11】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図12】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図13】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図14】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図15】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図16】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯根部材及び橋脚歯部を備える埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図17A】歯根部材を備える埋込型歯科用デバイスであって歯の根管空間内で固定され、当該埋込型歯科用デバイスが根管空間内へ挿入される変形状態にある埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図17B】歯根部材を備える埋込型歯科用デバイスであって歯の根管空間内で固定され、ポリマー形状記憶材料を作動させた後に当該埋込型歯科用デバイスの応力解放状態にある埋込型歯科用デバイスを示す断面図である。
【図18】本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図19】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図20】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図21】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図22】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図23】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【図24】同じく、本発明における埋込型歯科用デバイスであって歯科用ポストとしての使用に適した埋込型歯科用デバイスの具体的な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
本発明の埋込型歯科用デバイスは、形状記憶材料よりなる。形状記憶材料は、吸収性または非吸収性であってもよく、技術的に既知であり、任意の生体適合性のポリマー形状記憶材料は、本発明に照らして使用されている。使用されうる具体的なポリマーには、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート(PEMA)、ポリアクリレート、ポリαヒドロキシ酸、ポリカプロラクトン(polycapropactone)、ポリジオキサノン、ポリエステル、ポリグリコール酸、ポリグリコール、ポリラクチド、ポリオルトエステル、ポリリン酸塩、ポリオキサエステル(polyoxaester)、ポリリン酸エステル、ポリホスホン酸塩、多糖、ポリチロシン炭酸塩、ポリウレタン、及び、コポリマー、または、これらの複合ポリマーが含まれる。
【0081】
好ましい実施形態において、ポリマー形状記憶材料は、ガラス転移温度(Tg)として既知の一定温度以下で変形状態のままであり、この温度を超えると変形状態から応力解放状態へ作動される。一般に、形状記憶特性を示すポリマー材料は、ガラス転移点(Tg)において弾性係数に大きな変化を示す。形状記憶特性は、この特性の有利点を用いて使用されている。すなわち、ポリマー形状記憶材料の巨視的な集団は、一定の形状(原形)が成形によって与えられており、ポリマー材料のTgよりも高いが融点(Tm)未満の温度(Tf)までエネルギー及び熱を材料に掛けることによって柔軟になる。この温度(Tf)において、材料は、別の巨視的形状(変形状態)へ変形する。変形状態において、配向性ポリマーネットワークは、形成される。そして、ポリマー材料は、Tg未満の温度まで冷却されるが、材料の変形状態が維持されている。ポリマー材料が再び第2成形温度Tfよりも高いがTm未満の温度まで加熱されると、変形状態は、消滅し、ポリマー材料は、応力解放して材料の原形に復帰する。エネルギーの入力は、作動として既知のように、ポリマー材料をその変形状態からその応力解放状態まで応力解放させるために必要である。
【0082】
ポリマー材料のガラス転移点は、分子量、組成、ポリマーの構造及び当業者に既知の他の要因のようなさまざまな要因に非常に基づいており、35℃から60℃の間の範囲にある。
【0083】
本発明に照らして、ポリマー形状記憶材料の変形は、一般に、歯科用デバイスを埋め込む前に、一般に製造中にもたらされる。Tfに達するのに十分な熱の入力は、電気的かつ/または熱的なエネルギー源を用いて達成され、この後にポリマー材料が変形する。変形は、配向性ポリマーネットワークを引き起こし、ゾーン延伸、静水圧押出、ダイ延伸、圧縮流動成形、熱成形、圧延及びロール延伸を含むプロセスによって達成される。
【0084】
本発明は、電気的かつ熱的なエネルギー源を用いてポリマー材料を加熱することを意図している。しかしながら、ポリマー材料は、力または機械的エネルギー及び/または溶媒の使用を含むがこれに限定されない当業者に既知の他の方法を介して応力解放されてもよい。手術前または手術中のいずれかで掛けられる任意の適切な力は、使用される。一例には、熱の発生を最小化しながらポリマー材料を応力解放させる超音波デバイスの使用が含まれる。溶媒があることは、ポリマー形状記憶材料のTgへの影響を小さくする。したがって、溶媒は、応力解放を低減させる及び/または応力解放の速度を増大させるために使用される。使用されうる溶媒には、有機性溶媒及び水性溶媒が含まれ、体液が含まれる。特に溶媒が手術中に使用された場合に、選択された溶媒が患者の治療に適していないものではないことに注意を要する。また、溶媒の選択範囲は、応力解放される材料に基づいて選択される。ポリマー材料を応力解放させるために使用されうる溶媒の例には、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、オイル、脂肪酸、アセテート、アセチレン、ケトン、芳香族炭化水素溶媒、及び、塩素化溶媒が含まれる。
【0085】
本発明の埋込型歯科用デバイスであって顎の歯槽骨内の埋込キャビティへまたは歯の根管空間内のキャビティへ埋め込むための歯科用デバイスは、歯根部材と、状況に応じて例えば歯冠などの歯科用プロテーゼを取り付ける手段を形成する橋脚歯部と、を備える。
歯根部材は、2つの構造、歯根部材が埋込キャビティへ挿入される第1構造(変形状態)と、歯根部材がキャビティ内で固定されるように構成された第2構造(応力解放状態)と、で存在するように構成されている。歯根部材の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料よりなる。必要なレベルのエネルギーが供給されると、ポリマー形状記憶材料は、変形状態から応力解放状態へ作動される。形状記憶材料を作動させるのに必要なエネルギーは、熱、光またはこれらの組み合わせの形態で供給される。歯根部材で使用されるポリマー形状記憶材料は、歯槽キャビティへ挿入するときに歯根部材を体温にさらすことが作動を引き起こすのに十分であるように形成されている。
【0086】
使用時において、デバイスの歯根部材にあるポリマー形状記憶材料は、埋込キャビティへ埋め込む前に材料の変形状態で存在する。形状記憶材料の原形から材料の変形状態への変形は、一般に、例えば歯根部材の長手方向軸に沿ってポリマーを延伸することに伴って生ずる。ポリマー形状記憶材料の作動は、歯根部材がキャビティへ埋め込まれた後に発生する。作動しているときにおけるポリマーの応力解放と原形への復帰とは、ポリマー形状記憶材料よりなる歯根部材の任意部分の膨張に伴って生ずる。ポリマー材料が変形される方向に起因して、かつ/または、歯根部材内においてポリマー材料が非形状記憶部分と接触することに起因して、この接触が側方への膨張以外の他の膨張を防止している状態で、膨張は側方に発生する。ポリマー形状記憶材料の膨張は、歯根部材をキャビティ内でぴったりと嵌合させ、歯根部材は、キャビティの壁部に直接接触し、壁部に力を掛ける。
【0087】
ダイ延伸されたPLCロッドであって模擬骨(sawbone)にドリル加工された穴部内で拘束されたPLCロッドに実行された押出試験は、ポリマー形状記憶材料よりなるインプラントの応力解放によって引き起こされた固定に対する改善を立証している。これら試験において、PLCロッドは、模擬骨にドリル加工された穴部内へ挿入されており、37℃の水に9日浸漬することによって応力解放が作動されている。ロッドを押し出すために必要な力は、1700Nから1900Nまで増大した。
【0088】
図1は、歯槽骨にある埋込キャビティ2内に位置付けられた埋込型歯科用デバイス1を示している。デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、ポリマー形状記憶材料が変形状態にあるときに歯槽骨にあるキャビティへ挿入されている。ポリマー形状記憶材料は、体温または例えば熱を掛けるまたは光を当てるなどエネルギーの外部入力にさらすことによって作動される。作動させると、ポリマー形状記憶材料は、応力解放し、歯根部材12を径方向で膨張させ、かつ歯根部材をキャビティ2に固定させる。いったんキャビティに固定されると、歯冠3は、橋脚歯部11に取り付けられる。
【0089】
埋込キャビティ2内に位置付けられた歯科用デバイス1は、図2A及び図2に示される。キャビティ2は、キャビティ2の口部より遠位側にある大径部と、キャビティの口部の基端側に向けて小径となるテーパ状部と、を有する。デバイス1は、図2Aにおいてデバイスの変形状態、図2Bにおいてデバイスの応力解放状態で示されている。図示のように、応力解放された状態で、歯根部材12の側方への膨張は、発生し、歯根部材をキャビティ2の壁部に接触させてそれをもって固定をもたらす。キャビティ2のテーパ状部は、組織の質が最良となる領域で固定を増大させるように構成されている。
【0090】
本発明における埋込型歯科用デバイスの別の用途は、図3に示されており、図3では、2つの歯科用デバイス1が歯の根管空間内にある2つのキャビティへ埋め込まれている。
【0091】
本発明の1つの具体的な実施形態において、図4に示すように、歯科用デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、吸収性または非吸収性であってもよいポリマー形状記憶材料よりなる。歯根部材12は、第1端部13と、第2端部14と、を備えており、第1端部13は、橋脚歯部11に隣接し、第2端部14は、橋脚歯部よりも遠位側にある。歯根部材12の外面部15は、第1端部13と第2端部14との間に延在する。
【0092】
図5は、橋脚歯部11及び歯根部材12を備える歯科用固定デバイス1を示している。歯根部材は、複数の隣接するディスク状セグメントを備えており、ディスク状セグメントは、非吸収性材料よりなる第1セグメント群50と、ポリマー形状記憶材料よりなる第2セグメント群51と、を有する。第1及び第2セグメント群は、互いに接着されており、積層体を形成し、交互のパターンで配置されている。図5に示す構造を有するデバイスは、非吸収性形状記憶材料よりなる第1セグメント群と、非形状記憶材料よりなる第2セグメント群と、を備えている。あるいは、図5において設定された構造を有するデバイスは、非吸収性であり非形状記憶材料または形状記憶材料よりなる第1セグメント群と、吸収性形状記憶材料よりなる第2セグメント群と、を備える。
【0093】
図6は、図5に示すようなデバイスを示しており、デバイスは、非吸収性材料よりなるロッド状の内部部分60をさらに備える。内部部分60は、第1及び第2セグメント群によって封入されており、第2端部14において歯根部材の外面部と接触する。
【0094】
歯科用デバイス1の別の実施形態は、図7に示されており、図7において、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる外側部分70と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分71と、を備える。外側部分70は、部分的に内側部分71を封入するように構成されている。外側部分70は、内側部分71が配置される空洞部を形成するほぼ固体の構造を有する。外側部分は、空洞部までと接触する少なくとも1つの開口を形成し、内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放全体にわたって膨張する。いったんキャビティへ挿入され、かつ応力解放すると、内側部分71のポリマー形状記憶材料は、応力解放して膨張し、開口部を通って埋込キャビティの壁部に接触して固着する。内側部分は、吸収性または非吸収性であるポリマー形状記憶材料よりなってもよい。本実施形態におけるデバイスは、空洞部をポリマー形状記憶材料で充填した状態で、または、デバイスを埋め込む前に施術者自身が充填するように空洞部が充填されていないデバイスよりなるキットとして、歯科施術者に供給される。
【0095】
図8及び図9は、歯科用デバイス1を示しており、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる本体部80を備えている。本体部80には、長手方向の陥凹部81が形成されており、陥凹部81には、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分82が位置付けられている。細長部分82は、歯根部材12の外面部の位置を形成するように位置付けられており、歯根部材の第1端部13と第2端部14との間で長手方向に延在する。図示の実施形態において、4つの細長部分は、歯根部材12の外面部の周囲で等間隔に位置して示されている。任意の数の細長部分82が存在してもよい。細長部分82は、吸収性なポリマー材料よりなってもよい。陥凹部81内における細長部分82の位置は、細長部分82のポリマー形状記憶材料が応力解放すると、ポリマー材料の径方向/側方のみへの膨張が可能であることを意味している。他の方向への膨張は、細長部分82が陥凹部81の壁部と接触することによって抑制される。細長部分82は、接着剤を用いてまたは機械的な取り付けによって、陥凹部81内で固定される。
【0096】
図9に示す実施形態における別の構成において、本体部80は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、非吸収性材料よりなる1以上の細長部分82を収容する1以上の陥凹部81を形成する。
【0097】
図10は、歯科用デバイス1の実施形態を示しており、歯根部材12は、陥凹部81を形成する非吸収性材料よりなる本体部80を備え、陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分82を収容する。陥凹部81と細長部分82とは、本体部80の周囲にコイル状に配置されている。
【0098】
図11に示す歯科用デバイス1は、歯根部材を備えており、歯根部材は、歯根部材12の第1端部13から歯根部材12の長手方向軸111に沿って第2端部14まで延在するロッド状の内部部分110を備えている。内部部分110は、非吸収性材料よりなっており、ポリマー形状記憶材料よりなる外側部分112で封止されている。外側部分112は、吸収性または非吸収性であるポリマー形状記憶材料よりなってもよい。内部部分は、歯根部材を構造的に補強する機能を果たし、接着または例えば螺着など機械的な取り付けによって外側部分112内に取り付け可能である。
【0099】
図12から図17は、歯科用デバイス1のさまざまな構造を示しており、歯根部材12は、隣接するセグメントを備えている。
【0100】
図12に示すデバイスにおいて、歯根部材12は、第1セグメント120と、第2セグメント121と、第3セグメント122と、を備えている。第1及び第3セグメント120、122は、ロッド状の内部部分123であってポリマー形状記憶材料よりなる外側部分124によって封止された非吸収性材料よりなる内部部分123を備えている。第2セグメント121は、非吸収性材料よりなる。第1セグメント120は、橋脚歯部11に隣接する歯根部材12の第1端部13に位置付けられており、第3セグメント122は、歯根部材12の第2端部14に位置付けられており、第2セグメント121は、第3及び第1セグメント間に位置付けられている。このデバイスの一構成において、外側部分124は、吸収性なポリマー形状記憶材料よりなり、内部部分123及び第2セグメント121は、独立しており、非吸収性である非形状記憶材料または形状記憶材料よりなる。別の構成において、外側部分124は、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなり、内側部分及び第2セグメント121は、独立しており、非吸収性非形状記憶材料よりなる。
【0101】
隣接するセグメントは、接着することによって互いに結合されており、または、例えば互いに螺着することによって機械的に取り付けられている。
【0102】
セグメント化された歯根部材の別の構成は、図13に示されており、図13において、歯根部材12は、上述のように、第1セグメント120と、第2セグメント121と、を備えている。第2セグメント121は、歯根部材12の第1端部13に位置付けられており、第1セグメント120は、歯根部材12の第2端部14において第2セグメント121に隣接して位置付けられている。
【0103】
セグメント化されたデバイスのさらに別の構成は、図14に示されている。この構成において、歯根部材12は、第1、第2及び第3セグメントを備えており、第1及び第2セグメント120、121は、図12及び図13に関して上述のようになっており、第3セグメント140は、非吸収性材料よりなる。第2セグメント121は、橋脚歯部11に隣接して位置付けられており、第3セグメント140は、歯根部材12の第2端部14に隣接して位置付けられており、第1セグメント120は、第2セグメント121と第3セグメント140との間に位置付けられている。この構成において、第2及び第3セグメントは、非吸収性非形状記憶材料よりなってもよく、この材料は、ポリマー形状記憶材料よりなる外側部分124と接して外側部分の側方のみの膨張を可能とする。
【0104】
セグメント化された固定デバイスのさらに別の構成は、図15に示されており、歯根部材12は、上述のように歯根部材12の第1端部13に位置する第1セグメント120と、上述のように第1セグメントに隣接して位置する第2セグメント121と、を備えている。
【0105】
歯槽骨キャビティへ埋め込むように構成された埋込型歯科用デバイス1は、図16に示されている。デバイス1は、橋脚歯部11と、歯根部材12と、を備えている。歯根部材12は、チタン、チタン合金またはステンレス鋼のネジ状の本体部160から形成されている。歯根部材12は、本体部160の両側に位置する上側襟部161と下側襟部162とを備えており、上側襟部及び下側襟部の双方は、ポリマー形状記憶材料よりなる。使用時において、上側襟部161は、歯根部材12の第1端部に位置しており、膨張し、デバイスと埋込キャビティとの間に封止を形成する。下側襟部162は、応力解放時において、キャビティの基部においてデバイスを即時に固定する機能を果たす。
【0106】
本発明は、さらに、歯根部材のみからなる埋込型歯科用デバイスを提供し、当該歯科用デバイスは、歯の根管空間内にあるキャビティへ歯科用ポストを挿入して歯の現存する構造に補強をもたらすとしての使用に特に適している。本発明の実施形態におけるデバイス170は、使用時において、図17A及び図17Bに示されている。図17Aは、根管キャビティ171へ挿入される変形構造にあるデバイス170を示しており、図17Bは、ポリマー形状記憶材料を作動させた後のデバイスの応力解放構造にあるデバイスを示している。応力解放構造において、デバイス170は、膨張され、キャビティ171内における固定をもたらす。
【0107】
歯根部材のみからなる歯科用デバイスのさまざまな具体的な実施形態は、図18から図24に示されている。すべての実施形態において、歯根部材の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料よりなる。
【0108】
図18は、歯科用ポスト170を示しており、歯科用ポストは、ポリマー形状記憶材料のみから形成された単一の連続的な部分から形成された歯根部材12を備えている。歯根部材は、第1端部13と、歯根部材の先端側にある第2端部14と、第1端部13と第2端部14との間に延在する外面部15と、を備えている。ポストは、外面部15の少なくとも一部、好ましくはすべてと埋込キャビティの壁部との直接接触をもたらし、ポリマー形状記憶材料が材料の応力解放状態(図17Bに示される)にあるときに埋込キャビティに挿入される。ポリマー形状記憶材料は、好ましくは非吸収性である。
【0109】
図19は、デバイス170を示しており、歯根部材12は、内部部分110をさらに備え、内部部分は、非吸収性非形状記憶材料で形成され、ポリマー形状記憶材料で形成された外側部分120によってほぼ封入されている。内部部分110は、歯根部材に対する構造的な補強部として機能し、接着または例えば螺着など機械的な取り付けによって外側部分112内に取り付け可能である。
【0110】
デバイスは、図20及び図21に示すように、隣接するセグメントを備えている。図20に示すデバイスは、歯根部材12の第1端部13に隣接する第1セグメント200と、第2セグメント201と、を備える。第1セグメント200は、非吸収性非形状記憶材料で形成されて非吸収性ポリマー形状記憶材料で形成された外側部分204によって封入された内部部分203を備えており、第2セグメント201は、非吸収性非形状記憶材料よりなる。図21に示す歯科用ポスト170は、非吸収性非形状記憶材料よりなる第3セグメント210をさらに備える。第3セグメント210は、第2セグメントと歯根部材12の第2端部14とに隣接して位置付けられている。
【0111】
図22に示すように、デバイス170は、非吸収性材料よりなる本体部220と、ポリマー形状記憶材料よりなる細長部分221と、を備えている。細長部分221は、本体部220の周囲を囲むコイル状に構成されており、本体部220によって形成された陥凹部内に収容されている。
【0112】
図23は、歯科用ポスト170を示しており、歯科用ポストは、非吸収性材料よりなる外側部分230と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分231と、を備えている。外側部分230は、内側部分231を部分的に封入している。外側部分230は、ほぼ個体構造を有しており、内側部分231が位置する空洞部を形成する。外側部分230は、空洞部に連通する少なくとも1つの開口部を形成しており、内側部分231のポリマー形状記憶材料は、開口部を通って膨張する。いったんキャビティへ挿入されかつ作動されると、内側部分231のポリマー形状記憶材料は、応力解放し、開口部を通って膨張し、キャビティの壁部と接触して固定する。
【0113】
図24は、歯科用ポスト170を示しており、歯根部材12は、非吸収性材料よりなる本体部240と、ポリマー形状記憶材料よりなる複数の細長部分241と、を備えている。細長部分241は、歯根部材12の第1端部13と第2端部14との間で長手方向に延在する本体部240にある凹所242内に収容されている。
【0114】
さまざまな変更及び改良が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくかつ本発明の結果として伴う有利点を消滅させること無く、本明細書に記載された実施形態になされることは、理解すべきである。
【符号の説明】
【0115】
1 埋込型歯科用デバイス,歯科用固定デバイス,歯科用デバイス,デバイス、2 埋込キャビティ,キャビティ、3 歯冠(歯科用プロテーゼ)、11 橋脚歯部、12 歯根部材、13 第1端部、14 第2端部、15 外面部、50 第1セグメント群、51 第2セグメント群、60,110,123,203 内部部分、70,112,120,124,204,230 外側部分、71,231 内側部分、80,160,220,240 本体部、81 陥凹部、82,221,241 細長部分、120,200 第1セグメント(セグメント)、121,201 第2セグメント(セグメント)、122,140,210 第3セグメント(セグメント)、161 上側襟部(襟部)、162 下側襟部(襟部)、170 歯科用ポスト,デバイス、171 根管キャビティ,キャビティ、242 凹所
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型歯科用デバイスであって、
歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティへ埋め込む歯根部材を備え、
前記歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、
前記歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【請求項2】
前記歯根部材は、単一ユニットとして埋込可能であることを特徴とする請求項1に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項3】
前記歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する外面部と、を備え、
前記歯根部材の前記外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項4】
前記歯根部材は、当該埋込型歯科用デバイスが前記キャビティに挿入されると、当該歯根部材の前記外面部の少なくとも一部と前記キャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項5】
当該埋込型歯科用デバイスは、歯科用プロテーゼを受ける橋脚歯部をさらに備え、
前記橋脚歯部は、前記歯根部材の隣接する前記第1端部から延在することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項6】
前記歯根部材は、2以上の部分を備え、
少なくとも1つの前記部分は、ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項7】
前記歯根部材は、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項8】
非形状記憶材料よりなる前記部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる前記部分に接するように構成され、
ポリマー形状記憶材料の非形状記憶材料との接触は、ポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止し、ポリマー形状記憶材料の横方向の膨張を可能とすることを特徴とする請求項7に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項9】
前記歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる襟部分を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項10】
前記襟部分は、前記歯根部材の前記第1端部に隣接して位置付けられていることを特徴とする請求項9に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項11】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる本体部を備え、
前記本体部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項12】
1以上の前記陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の細長部分を収容する細長い凹所の形態をなしていることを特徴とする請求項11に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項13】
前記歯根部材は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる本体部を備え、
前記本体部は、非吸収性材料の1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項14】
前記歯根部材は、2以上の隣接したセグメントを備え、
少なくとも1つの前記セグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、
少なくとも1つの前記セグメントは、非吸収性材料よりなることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項15】
ポリマー形状記憶材料よりなる前記セグメントは、非吸収性材料よりなっており、ポリマー形状記憶材料によって封入される内部部分を備えることを特徴とする請求項14に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項16】
前記歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、
第1セグメント群は、ポリマー形状記憶材料よりなり、
第2セグメント群は、非吸収性材料よりなり、
複数の前記セグメントは、前記歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項17】
前記歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、
第1セグメント群は、ポリマー形状記憶材料よりなり、
第2セグメント群は、非形状記憶材料よりなり、
複数の前記セグメントは、前記歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項18】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる内部部分を備え、
前記内部部分は、前記歯根部材の前記外面部と接触しない、または、前記歯根部材の前記第2端部のみにおいて前記外面部と接触することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項19】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる外側部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分と、を備え、
前記外側部分は、部分的に前記内側部分を封入し、
前記外側部分は、少なくとも1つの開口部を形成し、
前記内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放時に前記開口部を通って拡張することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項20】
前記歯根部材は、単一の連続した部分であってポリマー形状記憶材料よりなる部分から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項21】
当該埋込型歯科用デバイスは、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項22】
当該埋込型歯科用デバイスは、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項23】
活性薬剤は、当該埋込型歯科用デバイスに組み込まれていることを特徴とする請求項1から22のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項24】
前記活性薬剤は、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の細胞を含むグループから選択されていることを特徴とする請求項23に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項25】
当該埋込型歯科用デバイスは、細長い形状、シリンダ形状またはネジ形状を有することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項26】
前記歯根部材は、強化ポリマー材料よりなることを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項27】
金属または金属合金とポリマー形状記憶材料との組合せよりなることを特徴とする請求項1から19及び21から26のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項28】
当該埋込型歯科用デバイスは、多孔質材料よりなることを特徴とする請求項1から27のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項29】
当該埋込型歯科用デバイスには、橋脚歯部に取り付けられる歯科用プロテーゼが設けられていることを特徴とする請求項1から28のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項30】
埋込型歯科用デバイスであって、
歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティに埋め込む歯根部材を備え、
前記歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、
前記歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する外面部と、を備え、
前記歯根部材の前記外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスと、歯科用プロテーゼと、を備えることを特徴とするキット。
【請求項32】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスを顎の歯槽骨内にあるキャビティへ埋め込む方法であって、
当該方法は、
a) 前記顎の前記歯槽骨にキャビティをドリル加工する工程と、
b) 前記歯根部材の前記第2端部を前記キャビティへ挿入する工程と、
c) 前記歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより前記歯根部材を前記キャビティ内に固定する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスを歯の根管空間内にあるキャビティへ埋め込む方法であって、
当該方法は、
a) 根管空間内にキャビティをドリル加工することによって歯を下処理する工程と、
b) 前記歯根部材の前記第2端部をドリル加工した前記キャビティへ挿入する工程と、
c) 前記歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより前記歯根部材を前記キャビティ内に固定する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項34】
添付の図面のうちのいずれか1つを参照してまたは示して本願明細書に記載されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【請求項1】
埋込型歯科用デバイスであって、
歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティへ埋め込む歯根部材を備え、
前記歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、
前記歯根部材は、内部及び外部構造の双方を備える埋込型ユニットとして形成されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【請求項2】
前記歯根部材は、単一ユニットとして埋込可能であることを特徴とする請求項1に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項3】
前記歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する外面部と、を備え、
前記歯根部材の前記外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項4】
前記歯根部材は、当該埋込型歯科用デバイスが前記キャビティに挿入されると、当該歯根部材の前記外面部の少なくとも一部と前記キャビティの壁部との直接接触を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項5】
当該埋込型歯科用デバイスは、歯科用プロテーゼを受ける橋脚歯部をさらに備え、
前記橋脚歯部は、前記歯根部材の隣接する前記第1端部から延在することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項6】
前記歯根部材は、2以上の部分を備え、
少なくとも1つの前記部分は、ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項7】
前記歯根部材は、非形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる少なくとも1つの部分と、を備えることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項8】
非形状記憶材料よりなる前記部分は、ポリマー形状記憶材料よりなる前記部分に接するように構成され、
ポリマー形状記憶材料の非形状記憶材料との接触は、ポリマー形状記憶材料の長手方向の膨張を防止し、ポリマー形状記憶材料の横方向の膨張を可能とすることを特徴とする請求項7に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項9】
前記歯根部材は、ポリマー形状記憶材料よりなる襟部分を備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項10】
前記襟部分は、前記歯根部材の前記第1端部に隣接して位置付けられていることを特徴とする請求項9に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項11】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる本体部を備え、
前記本体部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項12】
1以上の前記陥凹部は、ポリマー形状記憶材料よりなる1以上の細長部分を収容する細長い凹所の形態をなしていることを特徴とする請求項11に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項13】
前記歯根部材は、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなる本体部を備え、
前記本体部は、非吸収性材料の1以上の部分を収容する1以上の陥凹部を形成することを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項14】
前記歯根部材は、2以上の隣接したセグメントを備え、
少なくとも1つの前記セグメントは、ポリマー形状記憶材料よりなり、
少なくとも1つの前記セグメントは、非吸収性材料よりなることを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項15】
ポリマー形状記憶材料よりなる前記セグメントは、非吸収性材料よりなっており、ポリマー形状記憶材料によって封入される内部部分を備えることを特徴とする請求項14に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項16】
前記歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、
第1セグメント群は、ポリマー形状記憶材料よりなり、
第2セグメント群は、非吸収性材料よりなり、
複数の前記セグメントは、前記歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項17】
前記歯根部材は、複数の隣接するセグメントを備え、
第1セグメント群は、ポリマー形状記憶材料よりなり、
第2セグメント群は、非形状記憶材料よりなり、
複数の前記セグメントは、前記歯根部材の長さの一部または全部に沿って連続して交互に配置されていることを特徴とする請求項1から15のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項18】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる内部部分を備え、
前記内部部分は、前記歯根部材の前記外面部と接触しない、または、前記歯根部材の前記第2端部のみにおいて前記外面部と接触することを特徴とする請求項1から17のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項19】
前記歯根部材は、非吸収性材料よりなる外側部分と、ポリマー形状記憶材料よりなる内側部分と、を備え、
前記外側部分は、部分的に前記内側部分を封入し、
前記外側部分は、少なくとも1つの開口部を形成し、
前記内側部分のポリマー形状記憶材料は、応力解放時に前記開口部を通って拡張することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項20】
前記歯根部材は、単一の連続した部分であってポリマー形状記憶材料よりなる部分から形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項21】
当該埋込型歯科用デバイスは、吸収性ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から20のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項22】
当該埋込型歯科用デバイスは、非吸収性ポリマー形状記憶材料よりなることを特徴とする請求項1から21のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項23】
活性薬剤は、当該埋込型歯科用デバイスに組み込まれていることを特徴とする請求項1から22のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項24】
前記活性薬剤は、骨形態形成タンパク質、抗生物質、抗炎症薬、血管新生因子、骨形成因子、モノブチリン、トロンビン、変性タンパク、多血小板血漿/溶液、乏血小板血漿/溶液、骨髄穿刺液、及び、生体細胞、保存細胞、休眠細胞、及び死細胞のような動植物由来の細胞を含むグループから選択されていることを特徴とする請求項23に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項25】
当該埋込型歯科用デバイスは、細長い形状、シリンダ形状またはネジ形状を有することを特徴とする請求項1から24のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項26】
前記歯根部材は、強化ポリマー材料よりなることを特徴とする請求項1から25のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項27】
金属または金属合金とポリマー形状記憶材料との組合せよりなることを特徴とする請求項1から19及び21から26のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項28】
当該埋込型歯科用デバイスは、多孔質材料よりなることを特徴とする請求項1から27のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項29】
当該埋込型歯科用デバイスには、橋脚歯部に取り付けられる歯科用プロテーゼが設けられていることを特徴とする請求項1から28のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイス。
【請求項30】
埋込型歯科用デバイスであって、
歯槽骨または歯の根管空間にあるキャビティに埋め込む歯根部材を備え、
前記歯根部材の少なくとも一部は、変形状態から応力解放状態まで作動可能であるポリマー形状記憶材料よりなり、
前記歯根部材は、第1端部と、当該歯根部材の先端側にある第2端部と、前記第1端部と前記第2端部との間に延在する外面部と、を備え、
前記歯根部材の前記外面部の少なくとも一部は、ポリマー形状記憶材料によって形成されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【請求項31】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスと、歯科用プロテーゼと、を備えることを特徴とするキット。
【請求項32】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスを顎の歯槽骨内にあるキャビティへ埋め込む方法であって、
当該方法は、
a) 前記顎の前記歯槽骨にキャビティをドリル加工する工程と、
b) 前記歯根部材の前記第2端部を前記キャビティへ挿入する工程と、
c) 前記歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより前記歯根部材を前記キャビティ内に固定する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項1から30のいずれか1項に記載の埋込型歯科用デバイスを歯の根管空間内にあるキャビティへ埋め込む方法であって、
当該方法は、
a) 根管空間内にキャビティをドリル加工することによって歯を下処理する工程と、
b) 前記歯根部材の前記第2端部をドリル加工した前記キャビティへ挿入する工程と、
c) 前記歯根部材のポリマー形状記憶部分を作動させてポリマー形状記憶部分を応力解放させ、これにより前記歯根部材を前記キャビティ内に固定する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項34】
添付の図面のうちのいずれか1つを参照してまたは示して本願明細書に記載されていることを特徴とする埋込型歯科用デバイス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2010−524540(P2010−524540A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503575(P2010−503575)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001317
【国際公開番号】WO2008/125852
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001317
【国際公開番号】WO2008/125852
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(391018787)スミス アンド ネフュー ピーエルシー (79)
【氏名又は名称原語表記】SMITH & NEPHEW PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]