歯科用インプラント
【課題】アバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くして歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能な歯科用インプラントを提供する。
【解決手段】歯科用インプラントを、係合穴1bの口腔内側にその内径が大きい雌ネジ部1aを設けた中央穴1cを有する歯科用インプラントフィクスチャー1と、下端の係合穴1bに挿入係合される係合部2aに続いてその口腔内側端部が中央穴1c内に位置する円筒状部2bと円筒状部2bの外径よりその径が小さくフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部2cを設けたアバットメント2と、柱部2cに貫通穴3bを外嵌されて移動してきて雌ネジ部1aに雄ネジ部3aが螺合されて貫通穴3bでアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dがフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材3とから成る構造にする。
【解決手段】歯科用インプラントを、係合穴1bの口腔内側にその内径が大きい雌ネジ部1aを設けた中央穴1cを有する歯科用インプラントフィクスチャー1と、下端の係合穴1bに挿入係合される係合部2aに続いてその口腔内側端部が中央穴1c内に位置する円筒状部2bと円筒状部2bの外径よりその径が小さくフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部2cを設けたアバットメント2と、柱部2cに貫通穴3bを外嵌されて移動してきて雌ネジ部1aに雄ネジ部3aが螺合されて貫通穴3bでアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dがフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材3とから成る構造にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用インプラントフィクスチャーとその歯科用インプラントフィクスチャーに係合されるアバットメントとそのアバットメントを歯科用インプラントフィクスチャーに固定するアバットメント固定部材とから成る歯科用インプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療に於いて、欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に歯科用補綴物の維持安定装置となる歯科用インプラントフィクスチャーを埋入して天然歯における歯根の機能を代行させ、この歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に直接固定される第一の上部構造部材であるアバットメントに第二の上部構造部材である歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固定する歯科インプラントの技術が開発されている。
【0003】
この歯科インプラントによる治療方法としては、欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入された歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側をカバースクリューにて覆った後に切開した歯肉弁を元に戻して一定の治癒期間を設け、この間に歯科用インプラントフィクスチャーとその周囲の骨が結合するいわゆる「骨結合」が果たされて歯科用インプラントフィクスチャーが欠如歯部の顎骨に充分に結合し且つ埋入孔を形成したことによる手術部分が治癒したら、その歯科用インプラントフィクスチャーが埋入された口腔内側の歯肉部分を再度切開してカバースクリューを撤去すると共に歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側部分にヒーリングアバットメントを装着して歯肉部分に歯科用補綴物の固定装置の取付部分を有する第一の上部構造部材であるアバットメントを固定するための穴を確保し、歯肉の治癒を待ってアバットメントを固定する2回法と称する方法が主として採用されていた。
【0004】
そして近年、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に歯科用インプラントフィクスチャーを埋入した後、直ちに歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側部分にヒーリングアバットメント又はアバットメントを装着し、2回目のカバースクリューの露出手術を経ない1回法と称する方法も採用されるようになってきている。この1回法は、患者及び術者の負担が軽減される点から多く採用される傾向にあるが、骨の高さや厚さが不足している場合などの骨増生が必要な場合は感染のリスクが高い問題がある。
【0005】
何れの方法でも(特に2回法では)、歯科用インプラントフィクスチャーにアバットメントを取り付ける方法は、アバットメントを貫通させて歯科用インプラントフィクスチャーに設けられている雌ネジに雄ネジを螺合させることで固定する方法が広く行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ネジでアバットメントを歯科用インプラントフィクスチャーに固定する方法ではアバットメントに固定用のネジのための貫通穴が必要であり、特にCAD/CAMシステムで作製されるようなオーダーメイドのアバットメントの場合には、ネジの貫通穴のためにオーダーメイドのアバットメントの設計に制限を受けるという問題があった。特にアバットメントに固定される第二の上部構造部材である歯科用補綴物の固定装置の外形が小さい場合にはアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くする必要があるが、固定用のネジのための貫通穴を確保しようとするとアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分を殆ど設けることができないこともある。また、アバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分をなんとか確保できた場合であっても歯科用補綴物の厚みを十分に取れないことが多く、その結果、歯科用補綴物に充分な強度や色調を付与できないという問題があった。
【0006】
また、予め歯科用インプラントフィクスチャーとアバットメントとを一体に製造した一体型歯科用装具も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このような構造の一体型歯科用装具においても、そのアバットメントに相当する部分に欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入するための工具と係合する比較的大きな係合穴を設けなければならないので、歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くすることができず、歯科用補綴物の固定装置の取付部分の形態がなんとか確保できた場合であっても歯科用補綴物の厚みを十分に取れないことが多く、歯科用補綴物に充分な強度や色調を付与できないという問題があると共に、この一体型歯科用装具に歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固定したインプラント治療を行った場合に歯科用補綴物が破損したり歯科用補綴物の固定装置の取付部分に折損などの損傷事故が生じると一体型歯科用装具そのものが使用不可能になってインプラント治療を最初からやり直さなければならなくなるという重大な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−113718号公報
【特許文献2】特開2005−329244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くして歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能なばかりか、アバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分等に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメントのみを交換することが可能な歯科用インプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、歯科用インプラントを、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成る構成にすれば、歯科用インプラントフィクスチャーは中央穴の口腔内側と反対側に顎骨の埋入孔に埋入するための埋入工具と係合する係合穴が設けられているので埋入作業に支障がなく、アバットメントはその口腔内側と反対側の下端に設けられている係合部が歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側と反対側の係合穴に回転しないように挿入係合されると共にアバットメント固定部材の貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に押圧されてしっかりと保持され、歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側から突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部を細くすることができるので歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能であるばかりか、歯科用補綴物が損傷したりアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分等に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメントのみを取り外して交換することも可能となることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
即ち本発明は、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成ることを特徴とする歯科用インプラントである。
【0011】
そしてこのような歯科用インプラントにおいては、アバットメントの柱部が円筒状部の口腔内側に段部を形成する状態で設けられており、アバットメント固定部材の貫通穴の下方の開口した凹部の天井面で押圧される態様や、アバットメントの柱部が円筒状部の口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられており、アバットメント固定部材の貫通穴の口腔内側が先細り円錐状側面で押圧される態様があり、アバットメントの柱部に歯科用補綴物の固定装置を回転しないように係合させる回転防止用系合部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歯科用インプラントは、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成る構成であるから、歯科用インプラントフィクスチャーはその中央穴に顎骨の埋入孔に埋入するための埋入工具と係合する係合穴が設けられているので埋入作業に支障がなく、アバットメントはその口腔内側と反対側の下端に設けられている係合部が歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側の雌ネジ部に続く係合穴に挿入係合されると共にアバットメント固定部材の貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面でで歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側にしっかりと保持されるばかりか、歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側から突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部を細くすることができるので歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能であり、歯科用補綴物が損傷したり歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメントの柱部に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメント固定部材を歯科用インプラントフィクスチャーから取り外した後にアバットメントを取り外して交換することも可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーの1実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図2】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントの1実施例の側面図である。
【図3】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材の1実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図4】図3に示したアバットメント固定部材の平面図である。
【図5】図1〜図4に示した各部品を使用した本発明に係る歯科用インプラントの組立状態を示す説明用断面図である。
【図6】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーの他の実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図7】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントの他の実施例の側面図である。
【図8】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材の他の実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図9】図8に示したアバットメント固定部材の平面図である。
【図10】図6〜図9に示した各部品を使用した本発明に係る歯科用インプラントの組立状態を示す説明用断面図である。
【図11】顎骨内に歯科用インプラントフィクスチャーが埋入された本発明に係る歯科用インプラントのアバットメントに歯科用補綴物の固定装置の取付部分が取り付けられている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面中、1は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーであり、係合穴1bの口腔内側にその係合穴1bよりその内径が大きい雌ネジ部1aが設けられている中央穴1cを有している。この係合穴1bは歯科用インプラントフィクスチャー1を顎骨に穿設された埋入孔に埋入させるための埋入用工具(図示なし)の先端部と係合すると共に、後述するアバットメント2の下端に設けられた係合部2aを回転しないように挿入係合させるためのものである。そしてこの歯科用インプラントフィクスチャー1は、図示した実施例のように打ち込み式でも,図示しないがセルフタップ式でもよい。
【0015】
2は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントであり、その下端に前記歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに回転しないように挿入係合するように設けられた係合部2aに続いて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aの内径より充分小さく且つ係合部2aより大きな外径で歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに係合部2aが挿入係合された状態でその口腔内側端部が歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1cの口腔内側端部より係合穴1b側に位置する円筒状部2bが設けられ、この円筒状部2bに続いて円筒状部2bの外径よりその外径が小さく歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物4の固定装置の取付部分となる柱部2cが設けられている。このアバットメント2としてはその柱部2cが、図2及び図5に示すように円筒状部2bの口腔内側に段部を形成する態様や、図7及び図10に示すように円筒状部2bの口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられている態様がある。このアバットメント2の柱部2cは歯科用補綴物の固定装置4を回転しないように係合させるために図示した実施例のような平面部の如き回転防止用係合部2caが設けられていることが好ましいが、単なる円柱状で実際に使用する際に回転防止用係合部2caを設けるものであってもよい。
【0016】
3は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材であり、歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに前記アバットメント2の下端の係合部2aが挿入係合された状態でアバットメント2の柱部2cに貫通穴3bを外嵌されて柱部2c側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝3cに係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aに外周の雄ネジ部3aが螺合されると前記貫通穴3bの内側面又はその下方の開口した凹部の天井面3baでアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dが歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成す寸法・形状に形成されている。このアバットメント固定部材3としては、アバットメント2の柱部2cが図2及び図5に示すように円筒状部2bの口腔内側に段部を形成する状態で設けられている態様の場合には、貫通穴3bの下方の開口した凹部の天井面3baで押圧される態様が、アバットメント2の柱部2cが図7及び図10に示すように円筒状部2bの口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられている態様の場合には、貫通穴3bの口腔内側の先細り円錐状側面で押圧される態様がある。
【0017】
4は本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cに接着固定される歯科用補綴物の固定装置であり、アバットメント2の柱部2cに対応した穴が予め設けられているセラミックスや合金から成る切削用ブロックからCAD/CAMシステムの自動切削加工により削り出すことにより作製される。そして、この歯科用補綴物の固定装置4の外面には通常コーピング(図示なし)がセメント等の歯科用接着材で接着固定されるのであるが、この歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となる本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cの太さを従来のアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分より充分細くできるため、歯科用補綴物の固定装置4を小型化してコーピングの厚さを厚くすることが可能となり、歯科用補綴物の色合わせなども容易となるのである。
【0018】
以上に説明したような歯科用インプラントフィクスチャー1とアバットメント2とアバットメント固定部材3とから成る本発明に係る歯科用インプラントを使用して歯科用インプラント治療を行うには、先ず顎骨に穿設した埋入孔に歯科用インプラントフィクスチャー1を埋入する。この埋入作業は、歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に設けられた雌ネジ部1aに続いて設けられている係合穴1bに埋入用工具(図示なし)の先端部を係合させて、歯科用インプラントフィクスチャー1が図示した実施例のように打ち込み式の場合はで埋入用工具の歯科用インプラントフィクスチャー1と反対側を打撃することにより、歯科用インプラントフィクスチャー1が図示しないがセルフタップ式の場合は埋入用工具を回転させることによって行えばよい。
【0019】
次いで歯科用インプラントフィクスチャー1とその周囲の骨が結合するいわゆる「骨結合」が果たされて歯科用インプラントフィクスチャー1が欠如歯部の顎骨に充分に結合し且つ埋入孔を形成したことによる手術部分が治癒したら、歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1cの口腔内側と反対側に設けられている係合穴1bにアバットメント2の下端に設けられた係合部2aを回転しないように挿入係合させる。この状態で、歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となるアバットメント2の柱部2cは歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1c内から口腔内側に突出した状態となる。
【0020】
そこで、アバットメント固定部材3をアバットメント2の柱部2cに貫通穴3bを外嵌させて柱部2c側から移動させてその上面に凹設された回転工具係合溝3cに係合用凸部が係合された回転工具により回転させて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aに外周の雄ネジ部3aを螺合させると、貫通穴3bの内側面(図6〜図10の態様)又はその下方の開口した凹部の天井面3ba(図1〜図5の態様)でアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dが歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成して本発明に係る歯科用インプラントの組立が完了するのである。
【0021】
しかる後、セラミックスや合金から成る切削用ブロックからCAD/CAMシステムの自動切削加工により削り出されて作製されている歯科用補綴物の固定装置4のアバットメント2の柱部2cに対応した穴をセメント等の歯科用接着材でアバットメント2の柱部2cにその回転防止用係合部2caの位置を合わせて接着固定するのである。この際、歯科用補綴物の固定装置4の口腔内側と反対側はアバットメント固定部材3の上面3dに当接した状態となる。
かくして本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cに歯科用補綴物の固定装置4が接着固定されたら、歯科用補綴物の固定装置4の外面にコーピング(図示なし)をセメント等の歯科用接着材で接着固定すればよいのである。
【0022】
このような過程で、本発明に係る歯科用インプラントにおいてはアバットメント2の歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となるアバットメント2の柱部2cの太さを従来のアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分より充分細くできるため、歯科用補綴物の固定装置4を小型化することが可能となるため、歯科用補綴物の固定装置4の設計の自由度が増し、その結果コーピングの厚さを厚くすることが可能となり、歯科用補綴物の色合わせなども容易となるのである。
【0023】
また、仮りに歯科用補綴物が損傷したり、歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメント2の柱部2cに折損などの損傷事故が生じても、顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャー1はそのままにしてアバットメント固定部材3を歯科用インプラントフィクスチャー1から取り外した後にアバットメント2を取り外して交換することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 歯科用インプラントフィクスチャー
1a 雌ネジ部
1b 係合穴
1c 中央穴
2 アバットメント
2a 係合部
2b 円筒状部
2c 柱部
2ca 回転防止用係合部
3 アバットメント固定部材
3a 雄ネジ部
3b 貫通穴
3ba 天井面
3c 回転工具係合溝
3d 上面
4 歯科用補綴物の固定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用インプラントフィクスチャーとその歯科用インプラントフィクスチャーに係合されるアバットメントとそのアバットメントを歯科用インプラントフィクスチャーに固定するアバットメント固定部材とから成る歯科用インプラントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
歯科治療に於いて、欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に歯科用補綴物の維持安定装置となる歯科用インプラントフィクスチャーを埋入して天然歯における歯根の機能を代行させ、この歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に直接固定される第一の上部構造部材であるアバットメントに第二の上部構造部材である歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固定する歯科インプラントの技術が開発されている。
【0003】
この歯科インプラントによる治療方法としては、欠如歯部の顎骨内に形成した埋入孔内に埋入された歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側をカバースクリューにて覆った後に切開した歯肉弁を元に戻して一定の治癒期間を設け、この間に歯科用インプラントフィクスチャーとその周囲の骨が結合するいわゆる「骨結合」が果たされて歯科用インプラントフィクスチャーが欠如歯部の顎骨に充分に結合し且つ埋入孔を形成したことによる手術部分が治癒したら、その歯科用インプラントフィクスチャーが埋入された口腔内側の歯肉部分を再度切開してカバースクリューを撤去すると共に歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側部分にヒーリングアバットメントを装着して歯肉部分に歯科用補綴物の固定装置の取付部分を有する第一の上部構造部材であるアバットメントを固定するための穴を確保し、歯肉の治癒を待ってアバットメントを固定する2回法と称する方法が主として採用されていた。
【0004】
そして近年、欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に歯科用インプラントフィクスチャーを埋入した後、直ちに歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側部分にヒーリングアバットメント又はアバットメントを装着し、2回目のカバースクリューの露出手術を経ない1回法と称する方法も採用されるようになってきている。この1回法は、患者及び術者の負担が軽減される点から多く採用される傾向にあるが、骨の高さや厚さが不足している場合などの骨増生が必要な場合は感染のリスクが高い問題がある。
【0005】
何れの方法でも(特に2回法では)、歯科用インプラントフィクスチャーにアバットメントを取り付ける方法は、アバットメントを貫通させて歯科用インプラントフィクスチャーに設けられている雌ネジに雄ネジを螺合させることで固定する方法が広く行われている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、ネジでアバットメントを歯科用インプラントフィクスチャーに固定する方法ではアバットメントに固定用のネジのための貫通穴が必要であり、特にCAD/CAMシステムで作製されるようなオーダーメイドのアバットメントの場合には、ネジの貫通穴のためにオーダーメイドのアバットメントの設計に制限を受けるという問題があった。特にアバットメントに固定される第二の上部構造部材である歯科用補綴物の固定装置の外形が小さい場合にはアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くする必要があるが、固定用のネジのための貫通穴を確保しようとするとアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分を殆ど設けることができないこともある。また、アバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分をなんとか確保できた場合であっても歯科用補綴物の厚みを十分に取れないことが多く、その結果、歯科用補綴物に充分な強度や色調を付与できないという問題があった。
【0006】
また、予め歯科用インプラントフィクスチャーとアバットメントとを一体に製造した一体型歯科用装具も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このような構造の一体型歯科用装具においても、そのアバットメントに相当する部分に欠如歯部の顎骨内に形成された埋入孔内に埋入するための工具と係合する比較的大きな係合穴を設けなければならないので、歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くすることができず、歯科用補綴物の固定装置の取付部分の形態がなんとか確保できた場合であっても歯科用補綴物の厚みを十分に取れないことが多く、歯科用補綴物に充分な強度や色調を付与できないという問題があると共に、この一体型歯科用装具に歯科用補綴物の固定装置を固定して歯科用補綴物維持装置とし、この歯科用補綴物の固定装置に歯科用補綴物を固定したインプラント治療を行った場合に歯科用補綴物が破損したり歯科用補綴物の固定装置の取付部分に折損などの損傷事故が生じると一体型歯科用装具そのものが使用不可能になってインプラント治療を最初からやり直さなければならなくなるという重大な問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−113718号公報
【特許文献2】特開2005−329244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分の外形を細くして歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能なばかりか、アバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分等に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメントのみを交換することが可能な歯科用インプラントを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意研究の結果、歯科用インプラントを、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成る構成にすれば、歯科用インプラントフィクスチャーは中央穴の口腔内側と反対側に顎骨の埋入孔に埋入するための埋入工具と係合する係合穴が設けられているので埋入作業に支障がなく、アバットメントはその口腔内側と反対側の下端に設けられている係合部が歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側と反対側の係合穴に回転しないように挿入係合されると共にアバットメント固定部材の貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に押圧されてしっかりと保持され、歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側から突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部を細くすることができるので歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能であるばかりか、歯科用補綴物が損傷したりアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分等に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメントのみを取り外して交換することも可能となることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
即ち本発明は、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成ることを特徴とする歯科用インプラントである。
【0011】
そしてこのような歯科用インプラントにおいては、アバットメントの柱部が円筒状部の口腔内側に段部を形成する状態で設けられており、アバットメント固定部材の貫通穴の下方の開口した凹部の天井面で押圧される態様や、アバットメントの柱部が円筒状部の口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられており、アバットメント固定部材の貫通穴の口腔内側が先細り円錐状側面で押圧される態様があり、アバットメントの柱部に歯科用補綴物の固定装置を回転しないように係合させる回転防止用系合部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歯科用インプラントは、係合穴の口腔内側に該係合穴よりその内径が大きい雌ネジ部が設けられている中央穴を有する歯科用インプラントフィクスチャーと、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部に続いて該歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部の内径より充分小さく且つ該係合部より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に係合部が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャーの中央穴の口腔内側端部より係合穴側に位置する円筒状部が設けられ、該円筒状部に続いて円筒状部の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部が設けられている構造のアバットメントと、該歯科用インプラントフィクスチャーの係合穴に該アバットメントの下端の係合部が挿入係合された状態で該アバットメントの柱部に貫通穴を外嵌されて柱部側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャーの雌ネジ部に外周の雄ネジ部が螺合されると前記貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面で該アバットメントを口腔内側から押圧し且つその上面が該歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材とから成る構成であるから、歯科用インプラントフィクスチャーはその中央穴に顎骨の埋入孔に埋入するための埋入工具と係合する係合穴が設けられているので埋入作業に支障がなく、アバットメントはその口腔内側と反対側の下端に設けられている係合部が歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側の雌ネジ部に続く係合穴に挿入係合されると共にアバットメント固定部材の貫通穴の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面でで歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側にしっかりと保持されるばかりか、歯科用インプラントフィクスチャーの口腔内側から突出して歯科用補綴物の固定装置の取付部分となる柱部を細くすることができるので歯科用補綴物の固定装置の設計に自由度を与えることが可能であり、歯科用補綴物が損傷したり歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメントの柱部に折損などの損傷事故が生じても顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャーはそのままにしてアバットメント固定部材を歯科用インプラントフィクスチャーから取り外した後にアバットメントを取り外して交換することも可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーの1実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図2】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントの1実施例の側面図である。
【図3】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材の1実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図4】図3に示したアバットメント固定部材の平面図である。
【図5】図1〜図4に示した各部品を使用した本発明に係る歯科用インプラントの組立状態を示す説明用断面図である。
【図6】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーの他の実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図7】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントの他の実施例の側面図である。
【図8】本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材の他の実施例の左半分を断面で示した側面図である。
【図9】図8に示したアバットメント固定部材の平面図である。
【図10】図6〜図9に示した各部品を使用した本発明に係る歯科用インプラントの組立状態を示す説明用断面図である。
【図11】顎骨内に歯科用インプラントフィクスチャーが埋入された本発明に係る歯科用インプラントのアバットメントに歯科用補綴物の固定装置の取付部分が取り付けられている状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面中、1は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品である歯科用インプラントフィクスチャーであり、係合穴1bの口腔内側にその係合穴1bよりその内径が大きい雌ネジ部1aが設けられている中央穴1cを有している。この係合穴1bは歯科用インプラントフィクスチャー1を顎骨に穿設された埋入孔に埋入させるための埋入用工具(図示なし)の先端部と係合すると共に、後述するアバットメント2の下端に設けられた係合部2aを回転しないように挿入係合させるためのものである。そしてこの歯科用インプラントフィクスチャー1は、図示した実施例のように打ち込み式でも,図示しないがセルフタップ式でもよい。
【0015】
2は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメントであり、その下端に前記歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに回転しないように挿入係合するように設けられた係合部2aに続いて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aの内径より充分小さく且つ係合部2aより大きな外径で歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに係合部2aが挿入係合された状態でその口腔内側端部が歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1cの口腔内側端部より係合穴1b側に位置する円筒状部2bが設けられ、この円筒状部2bに続いて円筒状部2bの外径よりその外径が小さく歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物4の固定装置の取付部分となる柱部2cが設けられている。このアバットメント2としてはその柱部2cが、図2及び図5に示すように円筒状部2bの口腔内側に段部を形成する態様や、図7及び図10に示すように円筒状部2bの口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられている態様がある。このアバットメント2の柱部2cは歯科用補綴物の固定装置4を回転しないように係合させるために図示した実施例のような平面部の如き回転防止用係合部2caが設けられていることが好ましいが、単なる円柱状で実際に使用する際に回転防止用係合部2caを設けるものであってもよい。
【0016】
3は本発明に係る歯科用インプラントの1構成部品であるアバットメント固定部材であり、歯科用インプラントフィクスチャー1の係合穴1bに前記アバットメント2の下端の係合部2aが挿入係合された状態でアバットメント2の柱部2cに貫通穴3bを外嵌されて柱部2c側から移動してきてその上面に凹設された回転工具係合溝3cに係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aに外周の雄ネジ部3aが螺合されると前記貫通穴3bの内側面又はその下方の開口した凹部の天井面3baでアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dが歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成す寸法・形状に形成されている。このアバットメント固定部材3としては、アバットメント2の柱部2cが図2及び図5に示すように円筒状部2bの口腔内側に段部を形成する状態で設けられている態様の場合には、貫通穴3bの下方の開口した凹部の天井面3baで押圧される態様が、アバットメント2の柱部2cが図7及び図10に示すように円筒状部2bの口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられている態様の場合には、貫通穴3bの口腔内側の先細り円錐状側面で押圧される態様がある。
【0017】
4は本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cに接着固定される歯科用補綴物の固定装置であり、アバットメント2の柱部2cに対応した穴が予め設けられているセラミックスや合金から成る切削用ブロックからCAD/CAMシステムの自動切削加工により削り出すことにより作製される。そして、この歯科用補綴物の固定装置4の外面には通常コーピング(図示なし)がセメント等の歯科用接着材で接着固定されるのであるが、この歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となる本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cの太さを従来のアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分より充分細くできるため、歯科用補綴物の固定装置4を小型化してコーピングの厚さを厚くすることが可能となり、歯科用補綴物の色合わせなども容易となるのである。
【0018】
以上に説明したような歯科用インプラントフィクスチャー1とアバットメント2とアバットメント固定部材3とから成る本発明に係る歯科用インプラントを使用して歯科用インプラント治療を行うには、先ず顎骨に穿設した埋入孔に歯科用インプラントフィクスチャー1を埋入する。この埋入作業は、歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に設けられた雌ネジ部1aに続いて設けられている係合穴1bに埋入用工具(図示なし)の先端部を係合させて、歯科用インプラントフィクスチャー1が図示した実施例のように打ち込み式の場合はで埋入用工具の歯科用インプラントフィクスチャー1と反対側を打撃することにより、歯科用インプラントフィクスチャー1が図示しないがセルフタップ式の場合は埋入用工具を回転させることによって行えばよい。
【0019】
次いで歯科用インプラントフィクスチャー1とその周囲の骨が結合するいわゆる「骨結合」が果たされて歯科用インプラントフィクスチャー1が欠如歯部の顎骨に充分に結合し且つ埋入孔を形成したことによる手術部分が治癒したら、歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1cの口腔内側と反対側に設けられている係合穴1bにアバットメント2の下端に設けられた係合部2aを回転しないように挿入係合させる。この状態で、歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となるアバットメント2の柱部2cは歯科用インプラントフィクスチャー1の中央穴1c内から口腔内側に突出した状態となる。
【0020】
そこで、アバットメント固定部材3をアバットメント2の柱部2cに貫通穴3bを外嵌させて柱部2c側から移動させてその上面に凹設された回転工具係合溝3cに係合用凸部が係合された回転工具により回転させて歯科用インプラントフィクスチャー1の雌ネジ部1aに外周の雄ネジ部3aを螺合させると、貫通穴3bの内側面(図6〜図10の態様)又はその下方の開口した凹部の天井面3ba(図1〜図5の態様)でアバットメント2を口腔内側から押圧し且つその上面3dが歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側上面と同一面を成して本発明に係る歯科用インプラントの組立が完了するのである。
【0021】
しかる後、セラミックスや合金から成る切削用ブロックからCAD/CAMシステムの自動切削加工により削り出されて作製されている歯科用補綴物の固定装置4のアバットメント2の柱部2cに対応した穴をセメント等の歯科用接着材でアバットメント2の柱部2cにその回転防止用係合部2caの位置を合わせて接着固定するのである。この際、歯科用補綴物の固定装置4の口腔内側と反対側はアバットメント固定部材3の上面3dに当接した状態となる。
かくして本発明に係る歯科用インプラントのアバットメント2の柱部2cに歯科用補綴物の固定装置4が接着固定されたら、歯科用補綴物の固定装置4の外面にコーピング(図示なし)をセメント等の歯科用接着材で接着固定すればよいのである。
【0022】
このような過程で、本発明に係る歯科用インプラントにおいてはアバットメント2の歯科用インプラントフィクスチャー1の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置4の取付部分となるアバットメント2の柱部2cの太さを従来のアバットメントの歯科用補綴物の固定装置の取付部分より充分細くできるため、歯科用補綴物の固定装置4を小型化することが可能となるため、歯科用補綴物の固定装置4の設計の自由度が増し、その結果コーピングの厚さを厚くすることが可能となり、歯科用補綴物の色合わせなども容易となるのである。
【0023】
また、仮りに歯科用補綴物が損傷したり、歯科用補綴物の固定装置の取付部分となるアバットメント2の柱部2cに折損などの損傷事故が生じても、顎骨の埋入穴へ埋入固定された歯科用インプラントフィクスチャー1はそのままにしてアバットメント固定部材3を歯科用インプラントフィクスチャー1から取り外した後にアバットメント2を取り外して交換することも可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 歯科用インプラントフィクスチャー
1a 雌ネジ部
1b 係合穴
1c 中央穴
2 アバットメント
2a 係合部
2b 円筒状部
2c 柱部
2ca 回転防止用係合部
3 アバットメント固定部材
3a 雄ネジ部
3b 貫通穴
3ba 天井面
3c 回転工具係合溝
3d 上面
4 歯科用補綴物の固定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合穴(1b)の口腔内側に該係合穴(1b)よりその内径が大きい雌ネジ部(1a)が設けられている中央穴(1c)を有する歯科用インプラントフィクスチャー(1)と、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部(2a)に続いて該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の雌ネジ部(1a)の内径より充分小さく且つ該係合部(2a)より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に係合部(2a)が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の中央穴(1c)の口腔内側端部より係合穴(1b)側に位置する円筒状部(2b)が設けられ、該円筒状部(2b)に続いて円筒状部(2b)の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置(4)の取付部分となる柱部(2c)が設けられている構造のアバットメント(2)と、該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に該アバットメント(2)の下端の係合部(2a)が挿入係合された状態で該アバットメント(2)の柱部(2c)に貫通穴(3b)を外嵌されて柱部(2c)側から移動してきてその上面(3d)に凹設された回転工具係合溝(3c)に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャー(1)の雌ネジ部(1a)に外周の雄ネジ部(3a)が螺合されると前記貫通穴(3b)の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面(3ba)で該アバットメント(2)を口腔内側から押圧し且つその上面(3d)が該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材(3)とから成ることを特徴とする歯科用インプラント。
【請求項2】
アバットメント(2)の柱部(2c)が円筒状部(2b)の口腔内側に段部を形成する状態で設けられており、アバットメント固定部材(3)の貫通穴(3b)の下方の開口した凹部の天井面(3ba)で押圧される請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項3】
アバットメント(2)の柱部(2c)が円筒状部(2b)の口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられており、アバットメント固定部材(3)の貫通穴(3b)の口腔内側が先細り円錐状側面で押圧される請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項4】
アバットメント(2)の柱部(2c)に歯科用補綴物の固定装置(4)を回転しないように係合させる回転防止用系合部(2ca)が設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科用インプラント。
【請求項1】
係合穴(1b)の口腔内側に該係合穴(1b)よりその内径が大きい雌ネジ部(1a)が設けられている中央穴(1c)を有する歯科用インプラントフィクスチャー(1)と、その下端に該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に回転しないように挿入係合するように設けられた係合部(2a)に続いて該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の雌ネジ部(1a)の内径より充分小さく且つ該係合部(2a)より大きな外径で該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に係合部(2a)が挿入係合された状態でその口腔内側端部が該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の中央穴(1c)の口腔内側端部より係合穴(1b)側に位置する円筒状部(2b)が設けられ、該円筒状部(2b)に続いて円筒状部(2b)の外径よりその外径が小さく該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の口腔内側に突出して歯科用補綴物の固定装置(4)の取付部分となる柱部(2c)が設けられている構造のアバットメント(2)と、該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の係合穴(1b)に該アバットメント(2)の下端の係合部(2a)が挿入係合された状態で該アバットメント(2)の柱部(2c)に貫通穴(3b)を外嵌されて柱部(2c)側から移動してきてその上面(3d)に凹設された回転工具係合溝(3c)に係合用凸部が係合された回転工具により回転せしめられて歯科用インプラントフィクスチャー(1)の雌ネジ部(1a)に外周の雄ネジ部(3a)が螺合されると前記貫通穴(3b)の内側面又はその下方の開口した凹部の天井面(3ba)で該アバットメント(2)を口腔内側から押圧し且つその上面(3d)が該歯科用インプラントフィクスチャー(1)の口腔内側上面と同一面を成すアバットメント固定部材(3)とから成ることを特徴とする歯科用インプラント。
【請求項2】
アバットメント(2)の柱部(2c)が円筒状部(2b)の口腔内側に段部を形成する状態で設けられており、アバットメント固定部材(3)の貫通穴(3b)の下方の開口した凹部の天井面(3ba)で押圧される請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項3】
アバットメント(2)の柱部(2c)が円筒状部(2b)の口腔内側から口腔内側に先細り状の裁頭円錐形状に設けられており、アバットメント固定部材(3)の貫通穴(3b)の口腔内側が先細り円錐状側面で押圧される請求項1に記載の歯科用インプラント。
【請求項4】
アバットメント(2)の柱部(2c)に歯科用補綴物の固定装置(4)を回転しないように係合させる回転防止用系合部(2ca)が設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の歯科用インプラント。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−72592(P2011−72592A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227786(P2009−227786)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000181217)株式会社ジーシー (279)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]