説明

歯科用弧線

【課題】本発明は、歯科矯正用の弧線に関する。
【解決手段】本発明によれば、白色または歯の色の収縮チューブ(2)が当該弧線の上に収縮される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科用の弧線に関する。位置異常の歯を矯正するために歯に密着される、ブラケット(取り付け金具)と組合せて使用される弧線に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラケットとそれらを接続する弧線が歯の唇側に取付けられるとき、弧線の外観は、歯の色と完全に対照をなすそのメタリックな灰色のために、しばしば不快と見做される。歯の色に色的に適合されるセラミック・ブラケット及びプラスチック・ブラケットが入手可能であるが、弧線の場合は同じやり方は適さない。歯科用弧線を特に、合成樹脂の使用によって白色に被覆することは知られており、その中に酸化チタン等の白色顔料が埋め込まれる(米国特許4,050,156A, 4,722,689A, 5,454,716A, 4,946,387A, 5,063,082A)。独国特許DE11 2006 003 369T5には、結晶性酸化ジルコニウムで歯科用弧線を被覆することが知られている。残念乍ら、そのコーティングは口腔内に広がる使用の状態下で、耐摩耗性が欠如する。このため、白色または歯の色の弧線のための満足する解決法は未だ得られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、白色または歯色で、白色または歯色を失う弧線を導き得る口腔内に発生する応力に耐性のあるように提供される、歯科用弧線の提供を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1によれば、白色または歯色の収縮チューブが歯科用弧線に収縮される。独立請求項2によれば、弧線は白色または歯色のコーティングが施され、透明または半透明の収縮チューブが、その後で弧線に収縮される。本発明の有利な改良は、従属項の主題である。
【0005】
本発明は、重要な以下のような利点を有する:
− 白色または歯色を含み、保護する収縮チューブは、弧線に施される白色または歯色の顔料を含む合成樹脂の白色または歯色のコーティングまたは層よりも、口腔内で曝される摩耗その他の応力に対して著しく耐性がある。弧線に付与される白色または歯色は、治療の通常の期間中維持される。
− 弧線に白色または歯色を与える手順は、使用するのに単純である。
− 収縮チューブは弧線に簡単にスライド挿入する必要があり、そうして収縮温度に加熱される。
− 弧線は白色または歯色のコーティングを先ず施され、その後収縮チューブで保護されることを条件にして、白色または歯色のコーティングの接着強度に関して厳しい要求はない。何故ならば、コーティングは、その後、弧線へ収縮された収縮チューブによって定位置に保護され、固定されるからである。コーティングは、例えば廉価な浸漬法又はスプレイ法によって、施される。
− 幾つかの場合に、弧線はメーカーによって予備成形され、予備成形品の形で歯科矯正医へ提供され、患者の治療に弧線を使用する。弧線の予備成形は、多くの場合、加熱処理を伴ない、特に、弧線が超弾性を有する形状記憶合金からなるときがそうである。合成材料は通常、前記の加熱処理に耐えない。収縮チューブがスライドし、予備成形した加熱処理の弧線に効率的な方法で収縮されることや、顔料が収縮チューブの材料中に存在せず、しかし、弧線は既に予備成形された弧線でさえも廉価に被覆されるように、収縮チューブが弧線にスライドし収縮される前に、白色または歯色に被覆される場合に、コーティング法によって適合されるべき厳しい技術的要求はないことが本発明の利点である。
− 収縮チューブは、環状断面を有する歯科用弧線に収縮されるだけでなく、長方形状又は正方形状の歯科用弧線にも収縮される。これは、長方形状又は正方形状の歯科用弧線の白色または歯色のコーティングは、コーティングの摩耗や剥離の際立ったリスクから、このように掛け離れているから、特に利点である。
【0006】
ポリ四フッ化エチレン(テフロン(登録商標))は、特に前記の収縮チューブに適した材料である。その他の適する材料は、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、およびデュポン社(DuPont)からバイトン(Viton)の商標で商業的に入手可能のフッ化エラストマーの如きフッ化エラストマーである。
【0007】
ステンレス・スチールが歯科用弧線材料として用いられるばかりでなく、大幅に超弾性の形状記憶合金、特に、ニッケルとチタンを概ね等しい原子百分率で含有する二元系合金が用いられ、形状記憶合金に特徴的な「トゥウィニング」(双晶形成)が導かれる。
【0008】
長方形状の歯科用弧線は通常、0.40mmを超えない断面積を有する。環状の断面の歯科用弧線は、多くの場合、0.50mmを超えない直径を有する。弧線と組み合わせて用いられるブラケットは、弧線を巻き取る弧線用のスロット(溝)を有する。スロットの巾は、一般的な断面または一般的な直径を有する弧線をスロットが巻き取り得るように適当に選択される。このために、本発明に従う、弧線に収縮される収縮チューブを含む弧線は、また、長方形または正方形の弧線の場合は0.40mmを超えない断面積を有し、環状断面を有する弧線の場合は、0.50mmを超えない直径を有するのが好ましい。これは、公知技術による弧線よりも薄い弧線を使用する必要があることを意味する。このように、厚みの薄い弧線は巻き取る能力および巻き取る力を移動する能力を有し、歯の位置の矯正の最中に移動して、前記弧線が、同じ処理のために従来用いられた弧線よりも高い引張強度と曲げ強度を有する必要があることになる。
【0009】
本発明の改良によれば、超弾性形状記憶合金から作られた弧線のための二元系のニッケル−チタン合金を用いるのではなく、むしろニッケルの一部がバナジウム、鉄、コバルト、または銅で置換されたニッケル−チタン合金を用いることが好ましい。このことは、所望の高い引張強度および曲げ強度を特徴とする超弾性の弧線の産出を許容する。当該合金は、ニッケルの相当量に代えて好ましくは10原子%未満、特に好ましくは6原子%のバナジウム、鉄、コバルト、または銅を含有する。
【0010】
好ましくは、超弾性合金の組成物は、ニッケルの一部がバナジウム、鉄、コバルト、または銅で置換され、弧線に収縮される収縮チューブを含む弧線の横断面に、または弧線に収縮される収縮チューブを含む弧線の直径に、収縮チューブによって囲まれた裸の弧線の引張強度および/または曲げ強度と、その裸の弧線の横断面の積が、二元系ニッケル−チタン合金から作られた超弾性の弧線の引張強度および/または曲げ強度と、その超弾性の弧線の横断面との積と概ね同じになるように選択され、適合される。ここで、二元系ニッケル−チタン合金から作られた超弾性の弧線の横断面は、もし適用できればその弧線とその収縮チューブの間に設けられた白色または歯色のコーティングの横断面をも含み、その上に位置する収縮チューブを含む厚みの薄い弧線の断面に等しい。これは、応対する歯科矯正医が、実際に、収縮チューブを備えた白色または歯色の弧線が、それが移動できる力に関し、同じ外側寸法を有する二元系ニッケル−チタン合金から作られた従来の裸の弧線と丁度同じように挙動するものと見なすことができる利点がある。
【0011】
高温耐性合成材料、特にポリエーテルケトンで作られた弧線は、本発明の目的のためによく検討されている。と云うのは、それが十分に高い弾性率、引張強度を有し、殺菌消毒ができ、生体親和性があり、高い化学的不活性を示すからである。不運にも、それは色が茶灰色である。しかし乍、本発明の目的のために、それは染色され、染料は透明または半透明の収縮チューブによってその上に収縮されて保護されるか、染色された収縮チューブによって包囲され得る。ポリエーテルケトンは、収縮工程において発生する温度に耐えられ:特に好ましいことは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の融点は、約350℃、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)の融点は、約391℃、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)の融点は約324℃を有することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明の典型的な態様は2つの図に示されている。
【図1】収縮チューブがその上に収縮された超弾性弧線の断面図である。
【図2】異なる超弾性弧線の断面図であり、厚みの薄い白色または歯色のコーティングが、前記超弾性の弧線とその上に収縮される収縮チューブの間に施されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施例]
図1に示された実施例は、環状断面の、超弾性の合金で作られた0.30mm直径のワイヤ1、その上に白色の収縮チューブが収縮され、例えば、テフロン(登録商標)からなり、好ましくは厚み0.05mm、総直径は0.40mmである。
【0014】
図2に示されたれ実施例は、図1の実施例と、超弾性ワイヤ1が長方形の断面を有し、白色のコーティング3を施し、例えば、大部分は酸化チタンからなる。収縮チューブ2は、例えばテフロン(登録商標)からなり、被せられて弧線の上に収縮される。収縮チューブ2の断面の元々の形状は、収縮工程のためにコートされた長方形のワイヤ1の断面形状に適合するので、必ずしも長方形である必要はない。断面の外径は、例えば、0.46 × 0.64mmである。収縮される収縮チューブ2の厚さは0.05mm、コーティング3の厚さは、例えば、0.03mmである。コーティングは浸漬法またはスプレイ法によって施され、引き続いて乾燥される。
【符号の説明】
【0015】
1 ワイヤ
2 収縮チューブ
3 コーティング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白色または歯の色に着色された収縮チューブ(2)が弧線の上に収縮されることを特徴とする歯科矯正用の弧線。
【請求項2】
透明または半透明の収縮チューブ(2)がコ−ティングされた弧線に収縮されることを特徴とする白色または歯の色にコ−ティングされた歯科矯正用弧線。
【請求項3】
前記弧線が、長方形の断面を有し、断面積が0.40mm2を超えないことを特徴とする請求項1または2に記載の弧線。
【請求項4】
前記弧線の上に収縮される収縮チューブ(2)を含めて、断面積が0.40mm2を超えないことを特徴とする請求項3に記載の弧線。
【請求項5】
直径が0.50mm以下の環状断面を有することを特徴とする請求項1または2に記載の弧線。
【請求項6】
前記弧線の上に収縮される収縮チューブ(2)を含めて、その直径が0.50mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の弧線。
【請求項7】
耐高温性の合成材料、特にポリエーテルケトンからなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の弧線。
【請求項8】
超弾性の合金、特に50原子%のニッケルおよび50原子%のチタンを含む、超弾性のニッケル−チタン合金からなることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の弧線。
【請求項9】
前記ニッケル−チタン合金の一部がバナジウム、鉄、コバルトまたは銅で置換されたことを特徴とする請求項8の弧線。
【請求項10】
超弾性合金の組成物が、ニッケルの一部がバナジウム、鉄、コバルトまたは銅で置換され、弧線に収縮される収縮チューブを含む弧線の横断面に、または弧線に収縮される収縮チューブを含む弧線の直径に、収縮チューブによって囲まれた裸の弧線の引張強度および/または曲げ強度、およびその裸の弧線の横断面との積が、二元系ニッケル−チタン合金から作られた超弾性の弧線の引張強度および/または曲げ強度とその外形横断面寸法との積と同じか概ね同じになるように選択され、適合される。ここで、二元系ニッケル−チタン合金から作られた超弾性の弧線の外形横断面寸法は、ニッケルの一部がバナジウム、鉄、コバルトまたは銅によって置換された厚みの薄い弧線の上の収縮チューブの外形横断面寸法と同じであることを特徴とする請求項8または9の弧線。
【請求項11】
異常位置の歯の矯正のための用いられる請求項1〜10の何れかに記載の弧線の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−529314(P2012−529314A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514377(P2012−514377)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003391
【国際公開番号】WO2010/142404
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507182047)ベルンハルト フォースター ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】