説明

歯科矯正接着剤

【課題】接着剤が歯科矯正医によって所望されるバランスのとれた特性および特徴を備えるプリコート歯科矯正装置を提供する。
【解決手段】歯科矯正接着剤、および装置を歯へ結合させるための基部を有する歯科矯正装置を含む包装物品が開示されている。包装物品において、接着剤は装置の基部上にあり、そして容器は、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
歯科矯正治療は、歯科矯正学的に正常な位置への位置異常な歯の移動を含む。ブラケットとして既知の小型歯科矯正装置は、患者の歯の外面に連結され、そして各ブラケットのスロットにはアーチワイヤーが配置される。このアーチワイヤーが、正常な噛み合わせのための所望の位置への歯の移動を誘導するトラックを形成する。アーチワイヤーの末端部分はしばしば、患者の臼歯へと固定されたバッカルチューブとして既知の装置に受け取られる。近年、歯科矯正装置を歯の表面に直接結合することは、一般に実行されるようになっている。
【0002】
装置を歯に配置する直前に、直接結合された装置の基部に歯科矯正接着剤を適用することは、長年、一般に実行されていた。幾つかの例において、ある量の接着剤を、混合パッドまたは分配ウェル上に分配し、次いで、小型スパチュラまたは他の手動器具を使用して、各装置に少量の接着剤を適用した。他の例において、ある量の接着剤をシリンジから、装置の基部上に直接分配した。
【0003】
接着剤がプリコートされたブラケットは既知であり、そして歯科矯正医に著しい利点を提供する。接着剤がプリコートされたブラケットは結合基部を有し、製造業者は、その上に光硬化性接着剤のような接着剤の正確な量を適用することができる。ブラケットを歯の上に取り付けることを所望する場合、ブラケットを包装から単に取り出して歯の表面上に直接配置する。
【0004】
光硬化性接着剤は、歯科矯正医に利点を提供する。多くの種類の歯科矯正治療において、アーチワイヤー中に湾曲部またはねじれ部を配置することなく、所望の位置への歯の移動を容易にするために、一致する歯におけるブラケットの正確な位置は非常に重要である。結果として、歯科矯正医が、ブラケットを正確で適切な位置に配置するための時間を取ることができるという点で、光硬化性歯科矯正接着剤の使用は非常に有益である。一度、歯科矯正医がブラケットの位置に満足したら、硬化光を活性化し、接着剤を迅速に硬化し、そしてブラケットを決まった位置に固定することができる。
【0005】
良好な取扱い特性および十分な接着力に加えて、歯科矯正医はしばしば、光硬化性接着剤が、例えば、持続性のフッ化物放出を含む他の所望の機能特性を提供することを所望する。多くの用途において、接着剤が、例えば、水分または唾液を吸収する接着剤の能力によって示されるような、十分な親水性または湿分耐性を有することも所望される。
【0006】
接着剤でブラケットをプリコートする幾つかの試みにおいて、他の利用可能な歯列矯正接着剤より粘性である(すなわち、より流動性ではない)接着剤が使用された。使用のためにブラケットを包装から解いた時に、接着剤がその形状を保持し、そして分離しないかまたは変形しないことを確実にするために、より高い粘度が使用された。しかしながら、接着剤を硬化させる前のブラケットの取り扱いを容易にするために、より粘性ではない(すなわち、より流動性な)接着剤の使用を好む歯列矯正医もいる。例えば、接着剤が硬化される前に、歯の上で適切で正確な配向にブラケットを一列に整列するための労力がなされた時に、より粘性が低い接着剤を有するブラケットは、比較的容易に歯の表面に沿って滑りやすい。しかしながら、ブラケットが包装内で滑るか、または歯の上で滑るために、非常に低い粘度を有する接着剤の使用は有害となり得る。
【0007】
接着剤でプリコートされた歯列矯正ブラケットは、接着剤と接触している屈曲性の剥離基材とともに一般に販売されている。しかしながら、多くの剥離基材は、全ての接着剤の用途に適切ではない。例えば、柔軟性、粘着性、より粘性が少ない、親水性接着剤が使用される場合、装置を容器から解いて、接着剤を剥離基材から引き離す労力がなされた時に、接着剤の一部が剥離基材上に残ることが時々あることが見出されている。それらの例において、歯列矯正治療過程の間、歯の上にブラケットを保持するために十分な結合強度を提供するために、ブラケット上に十分な接着剤が残らないかもしれない。さらに、比較的低い粘度を有する接着剤は、剥離基材を横切って、ブラケットの下の空間から長時間かけて、ゆっくり流動する傾向があり、それによって、ブラケット除去および/またはライナー剥離問題が生じる。
【0008】
加えて、柔軟性、粘着性、より粘性が少ない接着剤は、従来の接着剤プリコート装置の包装に使用されて、装置が容器から解かれると接着剤の形状は変形し得る。幾つかの例において、接着剤を剥離基材から引き離すことによって、接着剤の形状が変更され、それによって、その最初の枕のような形状へ手で接着剤を移すために追加的工程が着手されない限り、不満足な直接結合が生じる。例えば、装置を容器から解く時に、幾らかの接着剤が装置基部の一方へと移り、そして基部の反対側が結合のために十分な量の接着剤を有さない。基部の一部と対立する歯の表面との間に空所が存在するような様式で装置を歯に固定する場合、空所が、歯から装置の早期の自発的な脱結合を生じ、有害なものは最良に避けられる。更に、幾つかの例において、空所は、食物および屑を受け取るポケットを確立し得、それによって、カリエスの形成が促進される。
【0009】
加えて、硬化時に、目立つ色から無色へと変化する接着剤の使用についての関心が増加している。未硬化時、かかる接着剤は容易に観察され、従って、装置を歯の表面上に配置した後の、過剰量の接着剤の除去を促進する。一度、接着剤が硬化したら、色は実質的に失われ、そして接着剤を見出すことはより困難にされ、従って、治療過程の間、より審美的に良好なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
現在、当該分野において、接着剤が歯科矯正医によって所望されるバランスのとれた特性および特徴を備えるプリコート歯科矯正装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一態様において、本発明は、歯科矯正装置を含む包装物品を提供する。歯科矯正装置は、装置を歯に結合させるための基部と、装置の基部上の接着剤とを有する。一実施形態において、接着剤は、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む。容器は、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する。好ましくは、接着剤は、少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する。好ましくは、接着剤は、40℃で1週間後に約0.4ミリメートル(mm)以下のフローアウト値を有する。ここでフローアウト値とは、接着剤が、以下に記載されるようなライナー上で流れる傾向の尺度である。好ましくは、ヒュームドシリカは、約70m2/g〜約1000m2/g、より好ましくは約90m2/g〜約500m2/g、そして最も好ましくは約100m2/g〜約150m2/gの表面積を有する。場合により、例えば、その歯科矯正装置の使用に関する指示を含むキットにおいて、包装物品は提供されてもよい。
【0012】
もう1つの態様において、本発明は、歯科矯正装置を含む包装物品を提供する。歯科矯正装置は、装置を歯に結合させるための基部と、装置の基部上の接着剤とを有する。一実施形態において、接着剤は、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含む。好ましくは、硬化剤は、光退色性染料とは異なる増感化合物を含む。接着剤は、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有する。ここでは初期色は最終色とは異なる。容器は、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する。好ましくは、フィラーは、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含む。場合により、例えば、その歯科矯正装置の使用に関する指示を含むキットにおいて、包装物品は提供されてもよい。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、歯科矯正装置を歯に結合させる方法を提供する。一実施形態において、この方法は、装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、装置の基部上の接着剤と、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器とを含む包装物品であって、接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む包装物品を提供する工程と;容器から、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を取り出す工程と;装置の基部を歯の表面へと適用する工程と;接着剤を化学線放射へと暴露する工程とを含む。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、歯科矯正装置を歯に結合させる方法を提供する。一実施形態において、この方法は、装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、装置の基部上の接着剤と、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器とを含む包装物品であって、接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含み、接着剤が、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは初期色が最終色とは異なる包装物品を提供する工程と;容器から、その基部上に接着剤を有する歯科矯正装置を取り出す工程と;装置の基部を歯の表面へと適用する工程と;接着剤を化学線放射へと暴露する工程とを含む。好ましくは、硬化剤は、光退色性染料とは異なる増感化合物を含む。
【0015】
もう1つの態様において、本発明は、接着剤と、接着剤と接触している表面を含む剥離基材と、を含む包装接着剤を提供する。接着剤は、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む。接着剤は、少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有し、かつ40℃で1週間後に約0.4ミリメートル以下のフローアウト値を有する。
【0016】
もう1つの態様において、本発明は、接着剤と、接着剤と接触している表面を含む剥離基材と、を含む包装接着剤を提供する。接着剤は、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含む。接着剤は、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは初期色が最終色とは異なり、かつ少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する。好ましくは、硬化剤は、光退色性染料とは異なる増感化合物を含む。
【0017】
本発明の更なる態様については、請求の範囲の事項において定義される。
【0018】
定義
本明細書で使用される場合、「歯科矯正装置」は、限定されないが、歯科矯正ブラケット、バッカルチューブ、リンガルボタンおよびクリートを含む、歯に結合されることを意図されたデバイスをいずれも指す。従って、用語「歯科矯正装置」は、歯科矯正バンドを包括する。装置は、接着剤を受け取る基部を有し、そして金属、プラスチック、セラミックおよびそれらの組み合わせから製造され得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「硬化性」は、例えば、加熱による溶媒除去、加熱によって引き起こされる重合、化学的架橋、放射線重合または架橋によって、硬化または凝固させることができる材料を記述する。
【0020】
本明細書で使用される場合、「硬化剤」は、樹脂の硬化を開始する系を意味する。硬化剤としては、例えば、重合開始剤が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「光退色性」は、化学線放射への暴露時の光の損失を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「フィラー」は、樹脂中に分散可能な乾燥粉末形状の粒子材料(例えば、無機酸化物)を意味する。例えば、歯科用複合材は、好ましくは樹脂中に分散された粉末を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「シリカ」は、化合物二酸化ケイ素を指す。カーク−オスマー化学大辞典(Kirk−Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)、第4版、第21巻、第977〜1032頁(1977)を参照のこと。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「非晶質シリカ」は、X線回折測定によって定義されるような結晶構造を有さないシリカを指す。非晶質シリカの例としては、シリカゾル、シリカゲル、沈殿シリカおよび焼成シリカが挙げられる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「焼成シリカ」および「ヒュームドシリカ」は交換可能に使用され、そして気相において形成された非晶質シリカを指す。焼成シリカは、例えば、分枝鎖三次元凝集体中に融合された数百の一次粒子を含有してよい。焼成シリカの例としては、デグッサ AG(DeGussa AG)(ドイツ、ハナオ(Hanau,Germany))から入手可能なエアロシル(AEROSIL)OX−50、エアロシル(AEROSIL)−130、エアロシル(AEROSIL)−150、エアロシル(AEROSIL)−200およびエアロシル(AEROSIL)R−972、ならびにカボット コーポレイション(Cabot Corp.)(マサチューセッツ州ボストン(Boston,MA))から入手可能なCAB−O−SIL M5およびCAB−O−SIL TS720の商品名で入手可能な製品が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「ベースフィラー」は、ヒュームドシリカフィラー以外のフィラーを指す。ベースフィラーとしては、例えば、非反応性フィラー(例えば、石英フィラー)、反応性フィラー(例えば、フルオロアルミノシリケートガラス)およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「シラン処理」は、粒子表面が、シラン(例えば、ジクロロジメチルシラン)の適用によって変性されていることを意味する。場合により、シランは、反応性官能基(例えば、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、A174)を含むカップリング剤であってよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「凝集体長さ」は、凝集体の最長寸法を意味する。本明細書で使用される場合、「凝集体」は、例えば、残存化学処理、共有化学結合、イオン化学結合または水素結合によってしばしば一緒に結合した、強く会合した一次粒子を記述する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「スランプ(slump)」は、重力下での流動現象を指す。歯列矯正接着剤が口内に配置された後、医師は、付与された形状が、材料が硬化されるまで変化せず残って欲しいと思うため、歯列矯正接着剤がスランプしないことが望ましい。スランピングなしに、接着剤が装置の重量を支持することができることも好ましい。スランピングは、歯の上でのブラケット漂流および接着剤被覆ブラケットのスケーティングを引き起こし得る。十分に高い降伏応力を有する材料はスランプしない。すなわち、それらは重力の応力下で流動しない。材料の降伏応力は、材料を流動させるために要求される最小応力であって、レオロジー プリンシプルズ、メジャーメンツ、アンド アプリケーションズ(Rheology Principles,Measurements,and Applications)、C.W.マコスコ(C.W.Macosko)、VCH パブリシャーズ インコーポレイテッド(VCH Publishers,Inc.)、ニューヨーク(New York)、1994、第92頁に記載されている。重力のための応力が材料の降伏応力より低い場合、材料は流動しない。重力のための応力は、配置される接着剤の質量および形状次第である。材料が使用の全種類および規模でスランプしないように、歯列矯正接着剤の降伏応力が十分高いことが望ましい。好ましくは、接着剤上部でブラケットが支持される時に材料が実質的にスランプしないように、歯列矯正接着剤の降伏応力は十分高い。ブラケットを取り外す時に、接着剤がブラケット下から流れる場合、好ましくは剥離基材上に残る。
【0030】
歯列矯正接着剤のある用途において、予め硬化された接着剤が歯科矯正装置に(例えば、注射器によって)予め適用されることが望ましい。これによって、医師による後での使用のために包装された接着剤プリコート装置が得られる。あるいは、接着剤を剥離基材に予め適用して、次いで、歯列矯正装置を歯に接着するための医師による後での使用のために包装することができる。両方の場合において、(装置上に適用されていても、剥離基材上に適用されていても)包装接着剤が、時間が経過してもスランプしないことが重要である。ある実施形態の場合、典型的な包装貯蔵および輸送条件下、例えば、6ヶ月間まで、好ましくは約1年間まで、そしてより好ましくは約3年間までの貯蔵に、予め適用された(またはプリコートされた)接着剤がスランプしないことが要求される。一般的に、貯蔵は、周囲温度(すなわち、室温)以下であることが期待されるが、しかしながら幾つかの場合、貯蔵および輸送条件は周囲温度より高くてもよい。
【0031】
時間が経過するとスランプする包装接着剤の傾向を決定するか、またはその予想を助けるために、本明細書に記載される試験方法に従って、接着剤/ブラケットフローアウト(もしくは「フローアウト」)および/または接着剤/ブラケット垂直スリップ(もしくは「スリップ」)に関して接着剤を評価することができる。要するに、フローアウトは、歯列矯正ブラケットの下に水平に取り付けられた剥離基材上で時間が経過すると外側に流れる接着剤の傾向を評価し、そしてスリップは、時間が経過すると下側に滑る剥離基材上に垂直に取り付けられた接着剤被覆ブラケットの傾向を評価する。両尺度に関して、フローアウト(40℃で1週間後)およびスリップ値が約0.4mm未満であることが好ましく、より好ましくは約0.25mm未満であり、そして最も好ましくは0(ゼロ)である。約0.4mmより高いフローアウトまたはスリップ値は、肉眼で明らかであり、そして包装接着剤の貯蔵および/または輸送の間の重要な問題へと導き得る。かかる問題としては、例えば、剥離ライナー上での接着剤形状の歪み、またはより深刻には、装置を包装から取り出す時の接着剤からの歯列矯正装置の分離が挙げられる。
【0032】
本発明のかかる接着剤被覆包装物品に関して、接着剤が、約7000ダイン/cm2〜約100,000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有し、かつ約3×102パスカル−秒(Pa−s)〜約7×104Pa−sの28℃での定常状態粘度を有することが好ましい。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレートまたはそれらの組み合わせを指す省略表現であり、そして「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリルまたはそれらの組み合わせを指す省略表現である。
【0034】
本明細書で使用される場合、化学用語「基」は、置換を考慮に入れる。
【0035】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1以上を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に従う包装物品の断片的な側面の断面図。
【図2】本発明のもう1つの実施形態に従う歯科矯正装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0037】
一実施形態において、図1を参照して、本発明は、ブラケット12のような歯列矯正装置を含む包装物品10を提供する。ブラケット12は、患者の歯の構造にブラケット12を直接的に結合するための基部14を有する。接着剤16は、ブラケット12の基部14を横切って延在する。ブラケット12および接着剤16は、容器18で少なくとも部分的に包囲される。図1に示される代表的な容器18は、凹部またはウェル20を画定する内壁部を有する完全成型体を含む。ウェル20は、側壁および底部22を含む。追加的な選択として、ウェル20の側壁は、担体24の端部構造と噛み合うための水平に延在する凹部を含む。適切な担体24に関する追加的な情報は、米国特許第5,328,363号(チェスター(Chester)ら)に記載されている。好ましくは、ウェル20の底部22は剥離基材25を含む。また好ましくは、物品10はタブ28を有するカバー26も含み、カバー28は、例えば、接着剤30によって容器18に連結している。
【0038】
もう1つの実施形態において、図2を参照して、本発明は、装置12を歯に結合させるための基部14を有する歯列矯正装置12と、基部上の接着剤16と、好ましくは、接着剤16と接触している表面27を含む剥離基材25とを含む包装物品10を提供する。接着剤16は、重合性成分、フッ化物放出材料、親水性成分、硬化剤、酸性成分およびフィラーを含む。剥離基材25は、例えば、ポリオレフィン、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタンおよびポリ(テトラフルオロエチレン)を含む多くの材料から選択されてよい。好ましくは、剥離基材25の表面27は多数の細孔を含み、そして好ましくは、接着剤16の約50重量%以下が細孔内にある。物品10は、好ましくは、光および/または水蒸気の透過に対するバリアを提供する容器に包装される。本発明の幾つかの実施形態において、物品10は好ましくはキットとして提供される。幾つかの実施形態において、本発明は、好ましくは、歯列矯正装置12を歯に結合させる方法を提供する。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態は、1以上の追加的特徴を提供してよい。例えば、本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する。本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは約3×102Pa・s〜約7×104Pa・sの28℃での定常状態粘度を有する。
【0040】
本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは初期色は最終色とは異なる。かかる実施形態において、接着剤は、好ましくは光退色性染料を含み、硬化剤は、好ましくは、光退色性染料とは異なる増感化合物を含む。
【0041】
本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーを含む。好ましくは、フィラーはベースフィラーを更に含む。
【0042】
本発明で使用される接着剤は、溶媒が実質的に存在せず、そして添加された水が実質的に存在しない。本明細書で使用される場合、用語「添加された水が実質的に存在しない」は、非複合型または配位された実体として、意図的に添加された水を組成物が含有しないことを意味する。金属またはガラスのような多くの材料が、通常状態で大気から取り込まれたか、または配位複合体として存在する水を含有することは理解される。吸湿性材料によって取り込まれたか、または水和物として存在する水は、本明細書に記載の組成物中に許容範囲内で存在する。源に関係なく、組成物中に存在する水はいずれも、組成物の長期特性に対して水が有害な影響を有するような量で存在するべきではない。例えば、商業的に望まれる貯蔵の間に材料の塊状性または粒状性が発達しないように、酸反応性フィラーと酸性成分との反応を促進する量で水が存在するべきではない。
【0043】
本発明で使用される歯科矯正接着剤は、好ましくは、水を取り込む能力を有し、従って湿分耐性である。驚くべきことに、これらの接着剤は、湿分混入条件下で使用された場合さえも強度を保持することが見出されている。歯科矯正ブラケット結合手順において、例えば、歯科矯正装置の結合前に湿分耐性プライマーのコーティングが歯に適用される限り、基材を乾燥させることは必要ではない。結合が遅延性であるか、または患者が過剰な歯肉溝流動体を分泌する状態のように、湿分耐性プライマーで下塗りされた歯は再混入状態になる。好ましくは、接着剤は、この再混入状態から湿分を吸収する能力を有する。場合により、プライマーはエッチング組成物を含んでもよい。これらの接着剤を有する歯科矯正装置を使用することによって、ブラケット結合の障害の減少が期待される。
【0044】
接着剤
本発明において使用される接着剤は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示されるような、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分とを含む。
【0045】
親水性成分
本発明において使用される接着剤は、親水性成分を含む。好ましくは、親水性成分は、親水性モノマー、オリゴマーまたはポリマーである。本発明の好ましい態様において、それが未硬化材料全体において粘度低下作用として機能するように、少なくとも幾つかの親水性成分は組成物中の他の成分より定常状態粘度が相対的に低い。代表的な親水性成分は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示される。
【0046】
好ましい親水性成分としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよびそれらの組み合わせが挙げられる。他の好ましい親水性モノマーとしては、グリセロール(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(エチレンオキシド繰返し単位の数が2〜30で変化し、例えば、トリ(エチレングリコール)ジメタクリレート(TEGDMA)を含む)が挙げられる。
【0047】
親水性成分の他の例としては、ピロリドン、ヒドロキシ基およびポリエーテル基含有部分、スルホネート基含有部分、スルフィネート基含有部分、N−オキシスクシンイミド、N−ビニルアセトアミドおよびアクリルアミドのようなモノマーおよびポリマーが挙げられる。
【0048】
好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約0.05重量%、より好ましくは少なくとも約1重量%、そして最も好ましくは少なくとも約3重量%の親水性成分を含む。好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約90重量%、より好ましくは最大約60重量%、そして最も好ましくは最大約20重量%の親水性成分を含む。
【0049】
酸性成分
本発明において使用される接着剤は、酸性成分を含む。好ましくは、酸性成分は、酸性モノマー、オリゴマーまたはポリマーである。酸性成分は、少なくとも1つの酸性基を含む。酸性基は、好ましくは、CおよびPの酸素酸またはチオ酸素酸から選択される。より好ましくは、酸性成分は、CまたはPの酸である化合物である。所望であれば、酸自体の代わりに、酸無水物、例えば4−メタクリルオキシエチルトリメリテート無水物(4−META)のような酸前駆体またはエステルを使用することができる。例えば、所望の酸を原位置で発生させることもできる。好ましい酸としては、例えば、カルボン酸、スルホン酸およびフェノールが挙げられ、カルボン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸およびホスホン酸がより好ましい。代表的な親水性成分は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示される。
【0050】
好ましい酸性基は、カルボン酸、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸およびホウ酸、歯科矯正手順の間に遭遇する条件で容易にこれらの酸へと転化する前記酸の塩または前記酸の前駆体である。酸性成分の例としては、例えば、(メタ)アクリロイル置換カルボン酸;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、およびグリセロールジ(メタ)アクリレートのリン酸エステル;ペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート(例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート);およびジペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート(例えば、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
好ましい酸性成分としては、例えば、アミノ酸の誘導体、およびエチレン系不飽和官能性によって官能化された酒石酸、クエン酸、リンゴ酸のような酸が挙げられる。例えば、アクリロイルまたはメタクリロイル官能性を組み入れることによってクエン酸を官能化してもよい。好ましい例は、クエン酸とイソシアナトエチルメタクリレートとの反応生成物であるCDMAである。
【0052】
好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約0.01重量%、より好ましくは少なくとも約0.05重量%、そして最も好ましくは少なくとも約1重量%の酸性成分を含む。好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約90重量%、より好ましくは最大約60重量%、そして最も好ましくは最大約20重量%の酸性成分を含む。
【0053】
重合性成分
本発明において使用される接着剤は、重合性成分を含む。好ましくは、重合性成分は、重合性基を含むモノマー、オリゴマーまたはポリマーである。代表的な重合性成分は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示される。また重合性成分は、本明細書に開示された重合性である親水性および酸性成分から選択されてもよい。
【0054】
重合性基は、フリーラジカル重合性基、カチオン性重合性基またはそれらの組み合わせから選択されてもよい。本発明の好ましい態様において、それが未硬化材料全体において粘度低下作用として機能するように、少なくとも幾つかの重合性成分は組成物中の他の成分より粘度が相対的に低い。
【0055】
好ましい重合性基は、フリーラジカル重合性基である。好ましいフリーラジカル重合性成分は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(「HEMA」)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルメタクリレート(「Bis−GMA」)、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート(エチレンオキシド繰返し単位の数が2〜30で変化し、例えば、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TEGDMA」)を含む)、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトールのモノ−、ジ−、トリ−およびテトラ−(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルトリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−2−メタクリロイルオキシエチルジメチルベンゼンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−メチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−トリメチルヘキサメチレンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルベンゼンジカルバメート、ジ−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−ジメチルシクロヘキサンジカルバメート、メチレン−ビス−1−クロロメチル−2−メタクリルオキシエチル−4−シクロヘキシルカルバメート、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシフェニル)]プロパン、2,2’−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリルオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−メタクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス[3−(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−メタクリレート]プロパン、2,2’−ビス[3−(4−フェノキシ)−2−ヒドロキシプロパン−1−アクリレート]プロパン、ならびにそれらの組み合わせを含む(メタ)アクリル酸のエステルである。
【0056】
好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約0.05重量%、より好ましくは少なくとも約0.1重量%、そして最も好ましくは少なくとも約0.5重量%の重合性成分を含む。好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約90重量%、より好ましくは最大約60重量%、そして最も好ましくは最大約20重量%の重合性成分を含む。
【0057】
フッ化物放出材料
本発明において使用される接着剤は、フッ化物放出材料を含む。フッ化物放出材料はフィラーであってよい。本発明において使用されるフッ化物放出材料は、天然または合成フッ化無機質、フルオロアルミノシリケートガラスのようなフッ化ガラス、無機フッ化物単塩および錯塩、有機フッ化物単塩および錯塩、またはそれらの組み合わせであってよい。場合により、表面処理剤によってこれらのフッ素物供給源を処理することができる。フッ化物放出材料は場合により金属錯体であってもよい。
【0058】
フッ化物放出材料の例は、例えば、米国特許第5,332,429号明細書(ミトラ(Mitra)ら)に記載されるように場合により処理されていてもよい、例えば、米国特許第3,814,717号明細書(ウィルソン(Wilson)ら)に記載されるようなフルオロアルミノシリケートガラスである。代表的なフッ化物放出材料は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示される。
【0059】
フッ化物放出材料がガラスである場合、好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約45重量%、そして最も好ましくは少なくとも約75重量%のフッ化物放出材料を含む。フッ化物放出材料がガラスである場合、好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約87重量%、より好ましくは最大約85重量%、そして最も好ましくは最大約83重量%のフッ化物放出材料を含む。
【0060】
硬化剤
本発明において使用される接着剤は、硬化剤を含む。好ましくは、硬化剤は、化学線放射への暴露時に硬化を誘発する(例えば、硬化剤は光開始剤を含む)。重合性成分がフリーラジカル重合性基を含む場合、硬化剤は、好ましくはフリーラジカル開始剤であるように選択される。代表的な硬化剤は、例えば、米国特許第6,126,922号明細書(ロッジ(Rozzi)ら)および国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示される。好ましいフリーラジカル光開始剤としては、例えば、米国特許第5,545,676号明細書(パラゾット(Palazzotto)ら)に開示されるような三成分光開始剤系が挙げられる。
【0061】
有用な可視光誘発三成分光開始剤系は、好ましくは、増感化合物(例えば、カンファキノン)、電子供与体(例えば、ナトリウムベンゼンスルフィネート、アミンおよびアミノアルコール)、ならびにヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ブロミド、ヨージドまたはヘキサフルオロホスフェート)を含む。
【0062】
有用な紫外線光誘発重合開始剤としては、好ましくは、ケトン(例えば、ベンジルおよびベンゾイン)、アクロインおよびアクロインエーテルが挙げられる。好ましい紫外線光誘発重合開始剤としては、両方ともスイス、バーセルのチバ スペシャルティー ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland)から入手可能な、商品名イルガキュア(IRGACURE)65で入手可能な2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、およびベンゾインメチルエーテル(2−メトキシ−2−フェニルアセトフェノン)が挙げられる。
【0063】
光開始剤は、好ましくは、適切な波長および強度の光への暴露時に重合性成分の硬化を促進することができる。また光開始剤は、好ましくは、典型的な歯科矯正条件下での貯蔵および使用を可能にするために十分に貯蔵安定性であり、かつ望ましくない着色がない。可視光光開始剤が好ましい。
【0064】
光開始剤は、所望の硬化速度を提供するために十分な量で存在するべきである。この量は、部分的に、光源、放射エネルギーに暴露される層の厚さ、および光開始剤の吸光係数に依存する。典型的に、光開始剤成分は、組成物の総重量を基準として、約0.001%〜約5%、より好ましくは約0.01%〜約1%の総重量で存在する。
【0065】
任意の光退色性染料
発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは、歯の構造とは著しく異なる初期色を有する。好ましくは、光退色性染料の使用によって、接着剤に色が付与される。接着剤は、好ましくは、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約0.001重量%の光退色性染料、そしてより好ましくは少なくとも約0.002重量%の光退色性染料を含む。接着剤は、好ましくは、接着剤の総重量を基準として、最大約1重量%の光退色性染料、そしてより好ましくは最大約0.1重量%の光退色性染料を含む。その吸光係数、初期色を識別する人間の目の能力、および所望の色変化次第で、光退色性染料の量を変更することができる。
【0066】
例えば、酸強度、誘電率、極性、酸素量および大気中の含水量を含む様々な要因次第で、光退色性染料の色形成および退色特性は変化する。しかしながら、接着剤を照射して、色変化を評価することによって、染料の退色特性を容易に決定することができる。好ましくは、少なくとも1つの光退色性染料は、硬化性樹脂中に少なくとも部分的に溶解性である。
【0067】
光退色性染料の代表的な種類は、例えば、米国特許第6,331,080号明細書(コール(Cole)ら)、ならびに2000年1月21日出願の米国特許出願第09/489,612号明細書および2000年10月12日出願の米国特許出願第09/689,019号明細書に開示される。好ましい染料としては、例えば、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセインおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
本発明の接着剤における色変化は、光によって開始される。好ましくは、接着剤の色変化は、例えば、十分な時間量で可視光または近赤外線(IR)光を放射する歯科用硬化光を使用して、化学線放射を使用して開始される。本発明の組成物における色変化を開始する機構は、樹脂を硬化する硬化機構とは別々であっても、または実質的に同時であってもよい。例えば、化学的(例えば、レドックス開始)または熱的に重合開始する時に接着剤が硬化し、そして硬化プロセスに続いて化学線放射への暴露時に初期色から最終色への色変化が生じてもよい。
【0069】
初期色から最終色への接着剤の色変化は、好ましくは、以下に記載される色試験によって定量される。色試験を使用して、三次元色空間で全色変化を示すΔE*値を決定する。人間の目では、標準の光条件下で約3ΔE*単位の色変化を検出することができる。本発明の歯科用組成物は、好ましくは少なくとも約20の色変化ΔE*を有することができ、より好ましくはΔE*は少なくとも約30であり、最も好ましくはΔE*は少なくとも約40である。
【0070】
光退色性染料の退色後の色回復度を低下させるために、接着剤に使用される成分および成分のレベルは、添付の明細書および実施例からの指導によって望まれる通りに選択されてよい。例えば、高レベルのヨードニウム塩を含む硬化剤の選択、高レベルのCDMAを含む酸性成分の選択、および低レベルの光退色性染料の選択は全て、色回復度を低下させる傾向がある。
【0071】
フィラー
本発明において使用される接着剤は、反応性または非反応性フィラーを場合により含んでもよい。フィラーは、単峰性または多峰性(例えば、二峰性)粒径分布を有し得る。フィラーは無機材料であってもよい。また、重合性樹脂に不溶性であって、かつ無機フィラーによって場合により充填されている架橋有機材料であってもよい。フィラーは、好ましくは非毒性であり、そして口内での使用に適切である。フィラーは、ラジオパク、ラジオルーセントまたは非ラジオパクであり得る。
【0072】
反応性フィラーとしては、イオノマーセメントを形成するイオノマーとともに一般に使用されるものが挙げられる。適切な反応性フィラーの例としては、酸化亜鉛および酸化マグネシウムのような金属酸化物、ならびに、例えば、米国特許第3,655,605号明細書(スミス(Smith))、第3,814,717号明細書(ウィルソン(Wilson)ら)、第4,143,018号明細書(クリスプ(Crisp)ら)、第4,209,434号明細書(ウィルソン(Wilson)ら)、第4,360,605号明細書(シュミット(Schmitt)ら)および第4,376,835号明細書(シュミット(Schmitt)ら)に記載のものを含むイオン浸出性ガラスが挙げられる。取扱い特性を変更するため、または最終組成物の硬化特性に影響を及ぼすため、かかる反応性フィラーを組み入れてよい。
【0073】
反応性フィラーは、好ましくは、細分された反応性フィラーである。都合よく他の成分と混合することができるように、そして口内で使用することができるように、フィラーは十分に細分されるべきである。フィラーの平均粒径は、好ましくは少なくとも約0.2ミクロンであり、そしてより好ましくは少なくとも約1ミクロンである。フィラーの平均粒径は、好ましくは最大約15ミクロンであり、そしてより好ましくは最大約10ミクロンである。例えば、沈降分析器を使用することによって、平均粒径を測定することができる。
【0074】
本発明で使用される接着剤における使用のために好ましいフィラーとしては、酸反応性フィラーが挙げられる。適切な酸反応性フィラーとしては、金属酸化物、金属塩およびガラスが挙げられる。好ましい金属酸化物としては、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛が挙げられる。好ましい金属塩としては、例えば、酢酸アルミニウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硝酸アルミニウム、硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸ストロンチウムおよびフルオロホウ酸カルシウムを含む多価カチオン塩が挙げられる。好ましいガラスとしては、ホウ酸塩ガラス、リン酸塩ガラスおよびフルオロアルミノシリケートガラスが挙げられる。
【0075】
最も好ましい酸反応性フィラーは、フッ化物を放出するものである。フッ化物放出ガラスは、本明細書で検討されるような良好な取扱いおよび最終組成物特性を提供することに加えて、例えば、口腔内での使用を含む使用時に、フッ化物の長期間放出の利点を提供する。フルオロアルミノシリケートガラスが特に好ましい。また適切な酸反応性フィラーは、当業者によく知られている様々な商業的供給源から入手可能である。所望であれば、フィラーの混合物を使用することができる。
【0076】
所望であれば、酸反応性フィラーに表面処理を受けさせることができる。適切な表面処理としては、酸洗浄、ホスフェートによる処理、酒石酸のようなキレート剤による処理、およびシランまたはシラノールカップリング剤による処理が挙げられる。特に好ましい酸反応性フィラーは、米国特許第5,332,429号(ミトラ(Mitra)ら)に記載されるようなシラノール処理されたフルオロアルミノシリケートガラスフィラーである。
【0077】
非酸反応性フィラーは、歯科用修復組成物等において現在使用されているフィラーのような医用組成物のために使用される組成物における組み入れに適切ないずれかの材料の1以上から選択されてよい。適切な非酸反応性無機フィラーの例は、石英、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、例えば、Ce、Sb、Sn、Zr、Sr、BaおよびAlから誘導されたガラス、コロイド状シリカ、長石、ホウケイ酸塩ガラス、カオリン、タルク、チタニア、および亜鉛ガラス;米国特許第4,695,251号明細書(ランドクレブ(Randklev))に記載のもののような低モース硬度フィラー;ならびにサブミクロンシリカ粒子(例えば、デグッサ(Degussa)によって販売される「エアロシル(Aerosil)」シリーズ「OX50」、「130」、「150」および「200」シリカ、ならびにマサチューセッツ州ボストンのカボット コーポレイション(Cabot Corp.,Boston,MA)によって販売される「Cab−O−Sil M5」および「Cab−O−Sil TS720」シリカのような焼成シリカ)のような天然または合成材料である。適切な非反応性有機フィラー粒子の例としては、充填または未充填微粉ポリカーボネート、ポリエポキシド等が挙げられる。好ましい非酸反応性フィラー粒子としては、石英、サブミクロンシリカ、および米国特許第4,503,169号明細書(ランドクレブ(Randklev))に記載の種類の非ガラス質微小粒子である。有機および無機材料から製造された組み合わせのフィラーと同様に、これらの非酸反応性フィラーの混合物も考慮される。
【0078】
好ましくは、フィラーと重合性樹脂との間の結合を増強させるために、フィラー粒子の表面をカップリング剤で処理する。適切なカップリング剤の使用としては、例えば、ガンマ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは少なくとも約70m2/g、より好ましくは少なくとも約90m2/g、そして最も好ましくは少なくとも約100m2/gの表面積を有するヒュームドシリカフィラーを1以上含む。本発明の幾つかの実施形態において、接着剤は、好ましくは最大約1000m2/g、より好ましくは最大約500m2/g、そして最も好ましくは最大約150m2/gの表面積を有するヒュームドシリカフィラーを1以上含む。
【0080】
好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約10重量%、より好ましくは少なくとも約45重量%、そして最も好ましくは少なくとも約75重量%のベースフィラーを含む。好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約87重量%、より好ましくは最大約85重量%、そして最も好ましくは最大約83重量%のベースフィラーを含む。
【0081】
好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、少なくとも約0.1重量%、より好ましくは少なくとも約0.2重量%、そして最も好ましくは少なくとも約0.5重量%の、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカフィラーを含む。好ましくは、接着剤は、接着剤の総重量を基準として、最大約50重量%、より好ましくは最大約15重量%、そして最も好ましくは最大約3重量%の、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカフィラーを含む。高レベルのベースフィラーが、好ましくは、低レベルのヒュームドシリカフィラーが所望の流動力学的特性に達するようにさせ、そして同様に低レベルのベースフィラーが、好ましくは、高レベルのヒュームドシリカフィラーが所望の流動力学的特性に達するようにさせることを認識するべきである。
【0082】
好ましくは、接着剤は、少なくとも約0.01ミクロン、より好ましくは少なくとも約0.05ミクロン、そして最も好ましくは少なくとも約0.1ミクロンの平均凝集体長さを有するヒュームドシリカフィラーを含む。好ましくは、接着剤は、最大約1ミクロン、より好ましくは最大約0.5ミクロン、そして最も好ましくは最大約0.4ミクロンの平均凝集体長さを有するヒュームドシリカフィラーを含む。
【0083】
所望であれば、本発明において使用される接着剤は、アジュバントを場合により含んでもよい。アジュバントとしては、例えば、補助溶媒、顔料、抑制剤、促進剤、粘度変性剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、着色剤、薬剤、接着促進剤、および当業者に明白な他の成分が挙げられる。場合により、組成物は安定剤を含有してもよい。適切なアジュバントとしては、例えば、国際特許出願公開国際公開第00/69393号パンフレット(ブレナン(Brennan)ら)に開示されるものが挙げられる。
【0084】
物理特性
本発明において使用される接着剤は、好ましくは、プリコートおよび/または包装歯科矯正装置および/または接着剤に関して所望される物理特性を有する。所望の特性としては、例えば、十分な取扱い特性、医師によって観察可能なスランプがないこと、適切な作用光安定性、ライナーまたは歯の上に配置した時に観察可能なスリップがないこと、適切な審美的色、オフィスの光条件下での色安定性(例えば、白色光安定性)、および硬化前にそこに配置された場合にプリコートブラケットが歯から落ちないような十分な粘着性が挙げられる。
【0085】
本発明において使用される接着剤は、好ましくは、実質的なフローアウトを有さない。フローアウト値は、ライナー上を流れる接着剤の傾向の尺度であり、かつ実施例に記載されるような試験方法によって測定される。要するに、接着剤を歯科矯正ブランケット上に被覆し、被覆ブランケット上の接着剤を剥離基材と接触するように配置し、そして明示された温度で明示された時間(例えば、40℃で1週間)保持することによって、フローアウトを測定する。ブラケットの端部からの接着剤のフローアウトとして、ミリメートルでフローアウトを測定する。
【0086】
本発明において使用される接着剤は、好ましくは少なくとも約3×102Pa・s、より好ましくは少なくとも約5×103Pa・s、そして最も好ましくは少なくとも約1×104Pa・sの28℃での定常状態粘度を有する。本発明において使用される接着剤は、好ましくは最大約7×104Pa・s、より好ましくは最大約2.5×104Pa・s、そして最も好ましくは最大約2×104Pa・sの28℃での定常状態粘度を有する。
【0087】
本発明において使用される接着剤は、好ましくは少なくとも約7000ダイン/cm2、より好ましくは少なくとも約8000ダイン/cm2、そして最も好ましくは少なくとも約9000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する。本発明において使用される接着剤は、好ましくは最大約100,000ダイン/cm2、より好ましくは最大約60,000ダイン/cm2、そして最も好ましくは最大約25,000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する。
【0088】
本発明において使用される接着剤は、当該分野において既知の方法によって歯科矯正装置の基部に適用されてよい。適切な方法としては、例えば、シリンジ、または例えば、米国特許第5,552,177号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)に開示されるような他の適切な分配デバイスによる適用が挙げられる。
【0089】
剥離基材
本発明の物品は、好ましくは、接着剤と接触している剥離基材を含む。好ましくは、剥離基材の表面は多数の細孔を含み、接着剤の約50重量%以下が細孔内にある。好ましくは、剥離基材は発泡体を含む。適切な剥離基材は、例えば、米国特許第6,183,249号明細書(ブレナン(Brennan)ら)に開示されている。好ましくは、剥離基材は、ボルテック(Voltek)(マサチューセッツ州ローレンス(Lawrence,MA))から商品名ミニセル(MINICEL)(例えば、ミニセル(MINICEL)M200)で入手可能な架橋ポリエチレン発泡体である。好ましくは、剥離基材は、装置の容易な剥離、ならびにスリップおよびフローアウトの減少を提供する。
【0090】
本発明において使用される剥離基材は、当該分野において既知の方法によって、歯科矯正装置の基部上の接着剤へと適用されてよい。適切な方法としては、例えば、接着剤が剥離基材と接触するように、容器ウェルの低部上に剥離基材を配置して、次いでウェルにブラケットをわずかに挿入することが挙げられる。例えば、米国特許第5,552,177号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)に記載されるように、ロボットアームを使用してもよい。
【0091】
本発明の物品は、好ましくは、貯蔵および流通のための容器に包装される。適切な容器としては、例えば、米国特許第4,978,007号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)、第5,172,809号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)、第5,328,363号明細書(チェスター(Chester)ら)、第5,354,199号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)、第5,538,129号明細書(チェスター(Chester)ら)、第5,575,645号明細書(ジャコブス(Jacobs)ら)、および「光硬化性材料のための容器(CONTAINERS FOR PHOTOCURABLE MATERIALS)」と題された同時譲渡された米国特許出願第10/126804号明細書に開示されるものが挙げられる。場合により、容器は剥離基材を含んでもよい。剥離基材は、場合により容器の一部であってもよいが、好ましくは、剥離基材は剥離ライナーである。
【0092】
本発明に開示される物品は、キット中に含まれてもよい。本発明の物品を1以上有することに加えて、キットは、好ましくは、例えば、歯科矯正装置の使用に関する指示、エッチング組成物、エッチング組成物のための麺棒またはブラシチップ、装置配置ガイドまたはジグ、余分量の接着剤、プライマー、シーラントおよび混合パッドを含む追加的な構成要素を含む。
【0093】
ここに開示された物品の使用方法は、剥離基材から歯科矯正装置を分離する工程を含み、ここで接着剤は、好ましくは歯科矯正装置の基部上に残存する。次いで、接着剤が歯の表面と密接に接触するように、歯科矯正装置を歯の表面に適用し、そして医師によって適切に配置される。適切に配置された時に、化学線放射への暴露によって接着剤は硬化される。場合により、接着剤被覆ブラケットを歯に接着させる前に、歯の表面をエッチングし、そして乾燥させる。所望により、接着剤被覆ブラケットを歯に接着させる前に、歯にプライマーのコーティングを提供してよい。プライマーを使用する場合、適用されるプライマーの種類次第で乾燥工程は要求されてもされなくてもよい。場合により、エッチ液はプライマーを含む。
【0094】
好ましくは、湿った歯の表面に接着剤を適用して硬化した後、少なくとも約7MPa、より好ましくは少なくとも約9MPa、そして最も好ましくは少なくとも約11MPaの結合強度によって、装置が歯に結合する。好ましくは、接着剤の硬化後、最大約25MPaの結合強度によって、装置が歯に結合する。
【0095】
以下の実施例によって、本発明を説明する。本明細書に明らかにされた本発明の範囲および精神に従って、特定の実施例、材料、量および手順が広範囲に解釈されることは理解されるべきである。
【実施例】
【0096】
本発明の範囲を制限せずに説明するために、以下の実施例を示す。特記されない限り、全ての部およびパーセントは重量によるものであり、そして全ての分子量は重量平均分子量である。
【0097】
【表1】

【0098】
試験方法静的降伏応力および定常状態粘度
レオメトリックス(Rheometric)ARES制御歪みレオメーター(アドバンスド レオメトリック エクスパンジョン システム(Advanced Rheometric Expansion System),ニュージャージー州ピスカタウェーのレオメトリック サイエンティフィック,インコーポレイテッド(Rheometric
Scientific,Inc.,Piscataway,NJ))によって、接着剤試験試料の降伏応力および粘度の測定を実行した。レオメーターに直径25mmの平行板を装備した。人工気候室によって、固定部と試料のすぐ近くの温度を28℃に保持した。厚さ約2.5mmおよび少なくとも25mmの直径まで2枚のスコッチパック(SCOTCHPAK)1022剥離ライナー(3Mカンパニー(3M Company))のシートの間で試料をプレスすることによって、測定の少なくとも24時間前に接着剤試料を調製した。
【0099】
剥離ライナーからの除去を容易にするためにスパチュラを使用して、これらの試料をレオメーターの下部板に配置した。接着剤試料との接触が生じるまで、上部板を下げた。次いで、人口気候室を閉鎖し、そして2.2mmの隙間で自動的に板が閉じるようにレオメーターを設定した。次いで、気候室を開放し、そしてカミソリ刃を使用して、板の端部から過剰量の接着剤をトリミングした。次いで、気候室を再び閉鎖して、そして2.0mmの隙間で自動的に板が閉じるようにレオメーターを設定した。
【0100】
気候室を閉鎖した後に、次いで、測定開始前に温度を28℃に安定させるために10分間待機するようにレオメーターをプログラムした。次いで、30秒間、0.01秒-1の剪断速度で接着剤試料を剪断し、続いて、4.5分間、0.1秒-1で剪断するようにレオメーターをプログラムした。これらの各期間で、レオメーターは応力測定値を収集した。
【0101】
応力対時間の曲線が初期直線軌道から外れる点として、接着剤試料の降伏応力を定義した。実際には、応力対時間の曲線に対する接線を作成することによって、これを決定した。次いで、0.06秒右側へと接線をシフトさせ、応力対時間の曲線との切片を決定した。この切片は、直線からの偏差点に非常に接近しており、静的降伏応力として(または弾性変形から粘弾性流動への転移として)定義され、接着剤試料に対してダイン/cm2として報告された。一回の試料測定から値を報告した。
【0102】
接着剤試料はチキソトロピーであった。これは、一定の剪断速度下の粘度が時間とともに変化することを意味する。従って、剪断下で与えられた時間後に測定された粘度として、接着剤試料の粘度を定義した。いずれの降伏応力にも打ち勝つように、この時間を選択した。その時間までに、測定された全接着剤試料が良好に降伏を過ぎたため、0.1秒-1の剪断速度下、28℃で3.5分間が選択された。Pa・s(パスカル・秒)の単位で、定常状態粘度値(1回の測定から)として結果を報告した。
【0103】
水分取り込み
両端部で開放しているテフロン(登録商標)(Teflon)型を使用して、直径4mmおよび厚さ4mmのシリンダー中に各接着剤試料を形成することによって、水分取り込みを測定した。未硬化の接着剤を適切な位置に保持するために、充填される側から反対側の端部(すなわち、底部端部)を、白紙上に配置されたポリエチレンテレフタレート(「PET」)フィルムと対立させた。次いで、上部端部をPETフィルムで被覆し、そして30秒間、オルトルクス XT 可視光硬化ユニット(ORTHOLUX XT Visible Light Curing Unit)(3M ユニテック(3M Unitek))を使用して光硬化した。PET被覆試料と光ガイドとの間の密接な接触を確実にした。次いで、PETフィルムを取り外し、硬化材料のシリンダーを型から取り外した。1時間以内に、各硬化シリンダーの重量を計量し、8mlの脱イオン水が添加されたガラス容器中に入れた。2日間および10日間、各試料を40℃で保持した。
【0104】
明示された時間で、シリンダー試料を容器から取り出し、フェイシャルティッシュまたはコットンを使用して表面の水を除去し、直ちに試料の重量を計量した。重量を記録し、各組成物の2試料の水分取り込みを測定し、そしてその平均を、増加した水分の重量%として報告した(水分取り込み値として定義される)。
【0105】
接着剤/ブラケットフローアウト
接着剤/ブラケットフローアウト試験方法を使用して、接着剤が歯科矯正ブラケットの下でライナー上で流れる傾向、「フローアウト」と称される現象を決定した。この試験において、特定のライナー上で接着剤がフローアウトを示す場合、接着剤は、ブラケット上にプリコートされて同ライナーによって被覆されている接着剤を含有するブリスターパッケージ内でフローアウトすることが予期される。接着剤プリコートブラケットがライナーから取り外される時に、フローアウトは、ブラケット基部から離れて接着剤のストリングを生じ得る。この結果は、次いで、歯の上での接着剤プリコートブラケットの配置前に接着剤パッド(または枕状)の形状に調整しなければならない医師にとって困難となり得る。最悪の場合、フローアウトは、接着剤のライナーからの十分な剥離を妨害し、これはプリコートブラケットからの接着剤の分離さえも引き起こし得る。
【0106】
シリンジからの適用によって、スコッチパック(SCOTCHPAK)1022剥離ライナー(3Mカンパニー(3M Company))上に配置された約8mgの接着剤によって、ミニ ツイン V(Mini Twin V)−スロットブラケット(3M ユニテック(3M Unitek)、整理番号#017−333または017−334)を被覆した。ここで、接着剤はライナーと接触しており、1週間、40℃のオーブンで保持された。(試験の時間および温度は、試験試料によって変更された。)オーブンにおいてブラケットを水平位置に保持するために、接着剤プリコートブラケットを、両面粘着テープによってボール紙に保持されたライナー上に配置した。試験開始時に接着剤がブラケット基部を越えて目に見えないことを確実とするために、特別な予防措置を取った。RAM
オプティカル インストルメンテーション(RAM Optical Instrumentation)(オートマップ(AutoMap)XYZ測定ソフトウェアを有するオミス ミニ(Omis Mini)、カリフォルニア州ハンチントンビーチのRAM オプティカル インストルメンテーション(RAM Optical Instrumentation))を使用して、1週間(または他の予め決められた時間)後、ブラケット基部を越えた接着剤フローアウトを測定した。各ブラケット基部の最悪の端部(すなわち、最大フローアウト)のみに関してフローアウト値を測定し(ブラケット基部の4つの端部のそれぞれにおけるフローアウトの平均を取るよりむしろ)、そして、それぞれの報告された値は、少なくとも3つの接着剤プリコートブラケット試料の平均であった。約0.01インチ(約0.25mm)のフローアウトは肉眼でかろうじて検出可能であるが、0.02インチ(約0.51mm)は、肉眼に容易に検出可能であり、そして剥離ライナーからの接着剤分離の問題を導き得ることが認められる。
【0107】
接着剤/ブラケット垂直スリップ
特定の接着剤組成物を使用している接着剤プリコートブラケットが、ブリスターパッケージ中で特定の剥離ライナー上でスリップするかどうかを決定するために、接着剤/ブラケット垂直スリップ試験方法を発展した。接着剤がこの試験で特定のライナー上でスリップを示す場合、ブラケット上にプリコートされて同ライナーで被覆された接着剤を含有するブリスターパッケージ内で接着剤がスリップする(例えば、需要者への輸送の間)ことが予期される。最悪の場合、接着剤プリコートブラケットはライナーから完全にスリップし、そして、生成物の機能性を破壊する。または、接着剤プリコートブラケットは、パッケージ中で回転可能であり、それは医師による歯の上へのブラケットの配置に関して不適当な配向をもたらす。
【0108】
シリンジからの適用によって、約8mgの接着剤によって、3M ユニテック ミニ ツイン V(3M Unitek Mini Twin V)−スロット(整理番号017−333または017−334)またはバッカルチューブ(整理番号067−8033)またはビクトリーシリーズ(Victory Series)(整理番号017−401)ブラケットを被覆した(約16mgの接着剤で被覆されたバッカルチューブを除く)。接着剤プリコートブラケットは、ミニセル(MINICEL)M200発泡体ライナー(マサチューセッツ州ローレンスのボルテック コーポレイション、デビジョン オブ セキスイ アメリカ(Voltek Corp,Division of Sekisui America,Lawrence,MA))上に配置された。接着剤プリコートブラケットを含有する各ライナーは、両面粘着テープによってボール紙の一片に保持された。試験開始時に接着剤がブラケット基部を越えて目に見えないことを確実とするために、特別な予防措置を取った。スリップの正確な距離測定を確実にするためにブラケットの上端部付近で、「出発線」を引いた。ブラケットを含有するボール紙を、予め決められた期間(典型的に3日〜14日)、オーブン(予め決められた温度(典型的に40℃または50℃)に設定された)において垂直に保持した。前記試験方法において記載されるように、ブラケット基部の上端部を越えたフローアウトとして、ライナー上の接着剤被覆ブラケットのスリップを測定し、そしてRAM オプティカル インストルメンテーション(RAM Optical Instrumentation)を使用して測定した。報告されるスリップ値(mm)は、1試験につき少なくとも3回の接着剤プリコートブラケット試料の平均であった。
【0109】
フッ化物放出
フッ化物放出は、直径20mmおよび厚さ1mmのディスクに試料組成物を最初に形成することによって測定された。各ディスクの両側は、ポリエチレンテレフタレートフィルムで被覆し、そして2つの反対位置に配置されたビシルクス2可視光硬化ユニット(VISILUX 2 Visible Light Curing Units)(3M カンパニー(3M Company))を使用して、光ガイドのアウトプット端部と試料ディスクとの間を約1cmの距離として、各側で60秒間光硬化した。次いで、ディスクの両側からフィルムを取り外し、そして試料を37℃/95%相対湿度(「RH」)で1時間硬化させた。各ディスクを計量し、そして25mlの脱イオン水が添加されたガラスジャー中に入れた。増加するフッ化物放出が以下の通り測定される明示された時間で、37℃で試料溶液を維持した。
【0110】
フッ化物−選択電極、オリオン(Orion)モデル96−09−00(マサチューセッツ州ケンブリッジのオリオン リサーチ インコーポレイテッド(Orion Research Inc.,Cambridge,MA))を使用して、水中で試料ディスクから放出されるフッ化物イオンの量を定量した。フルオリド アクティビティー スタンダード(Fluoride Activity Standards)#940907および#040908を使用して、それぞれ100百万分率(「ppm」)および10ppmのフッ化物標準流体(両方ともオリオン リサーチ インコーポレイテッド(Orion Research Inc.)から)で、電極をキャリブレーションした。
【0111】
水中に放出されるフッ化物イオンの測定のために、10mlの試料溶液を、10mlのTISAB溶液(全イオン強度調整緩衝液;マサチューセッツ州ケンブリッジのオリオン
リサーチ インコーポレイテッド(Orion Research Inc.,Cambridge,MA))を含有する60mlビーカーに移した。10秒間、内容物を混合した。キャリブレーションされたフッ化物−選択電極を溶液に入れ、そしてppmでフッ化物濃度を記録し、そして硬化されたディスク1グラムあたりのフッ化物のミリグラムに換算した。次いで、残りの液体を試料ジャーから除去し、そして新しい25ml量の脱イオン水で置き換えた。試料ジャーがオーブンから取り出された後の明示された時間で、試料ジャーを37℃のオーブンへと移し、そして本明細書で記載されるように、その時間に放出されるフッ化物を測定した。水中での保管時間の関数としてフッ化物放出値を報告し、そして各報告された値は3つの試料ディスクの平均を表した。
【0112】
湿分耐性のための結合強度
接着剤試料を使用して、メッシュ基部を有する金属歯列矯正ブラケットをウシの歯に接着させることによって、結合強度を試験した。ビクトリーシリーズ(VICTORY SERIES)(整理番号017−401)(または同等なもの)アッパーセントラルブラケット(3M ユニテック(3M Unitek))にシリンジで接着剤試料を適用した。最初に、軽石水性スラリーでウシの歯を洗浄し、そしてリンスした。次いで、37%リン酸エッチング溶液で歯をエッチングし、水で洗浄し、そして湿分がなく、かつ油分がない空気で乾燥させた。次いで、製造者の指示に従って、トランスボンド(TRANSBOND)MIP湿分不感性プライマー(3M ユニテック(3M Unitek))で、歯を処理した。適用された接着剤を有する金属ブラケットを、歯の上へ乗せ、そしていずれの過剰な接着剤も押し出すためにしっかりと圧迫した。過剰量を拭き取った。次いで、オルトルクス XT 硬化ユニット(ORTHOLUX XT Curing Unit)を使用して、ブラケットの近心および末端側の両方で、10秒暴露によって接着剤を硬化した。歯および結合されたブラケットの試料を、一晩37℃の水に保管した。咬合タイウィング下で0.50mmの丸ステンレス鋼ワイヤーループを連結することによって、結合強度試験を実行した。インストロン(Instron)万能負荷フレームを使用して、歯からブラケットの剥離が生じるまで、剪断/剥離モードで負荷を適用した。インストロン(Instron)に取り付けられたワイヤーを、5mm/分の速度で引いた。ブラケットあたりの結合強度として、最大力(ポンドの単位で)を記録し、そして報告された値は、10の異なる粘着剤被覆ブラケットを使用する10回の測定の平均であった。次いで、結合している基部領域(10.9mm2)によって割り、そして4.4を掛けることによって、この平均をMPaの単位に変換した。
【0113】
この試験方法の変形において、トランスボンド(TRANSBOND)MIPプライマーによる処理後、および歯への接着剤被覆ブラケットの結合前に、湿分(スプレーボトルによる蒸留水または麺棒による唾液の形態で)をウシの歯に適用した。異なる5つの接着剤被覆ブラケットを使用する5回の測定の平均として結果を報告した。
【0114】
色試験
400ミクロン繊維反射率プローブおよびスペクトラウィズ(SpectraWiz)CIELAB比色計ソフトウェアを備えた、ステラネット ポータブル スペクトロメーター(StellarNet Portable Spectrometer)モデルEPP2000C(フロリダ州オールドスマーのステラーネット インコーポレイテッド(StellarNet,Inc.,Oldsmar,FL))によって、接着剤試料の初期および漂白された色の定量化を実行した。
【0115】
色測定のための試料を調製するために、接着剤試料をポリエステル剥離ライナー上へ押出し、金属リングを接着剤のまわりに配置し、そして第2の剥離ライナーを接着剤の上部に配置した。次いで、金属リングによって接着剤の厚さを0.51mmに制御させながら、2枚のプレキシガラス板の間で、得られる構造をプレスした。分光計の光源の電源を切り、2枚の剥離ライナーの間の接着剤試料を、白色反射率標準(製品番号RS50、直径50mm、ハロン型>97%反射率、300−1500nm、ステラーネット インコーポレイテッド(StellarNet,Inc.))の上部に配置した。分光計の光ファイバープローブを、45°の角度で試料より6.3mm上に配置した。1000ミリ秒の暴露時間で上部の剥離ライナーを通して、そして光線の下で接着剤の中心で、色測定を行った。ソフトウェアによって、反射率スペクトルが捕捉され、そして入力をL*、a*およびb*値に換算した。a*値は試料の赤みを示し、より高い数ほどより赤みが強いことを示す。
【0116】
2枚のポリエステル剥離ライナーの間でプレスされた接着剤を3分間、トレイド(TRIAD)2000光硬化オーブン(ペンシルバニア州ヨークのデントスプリ インターナショナル インコーポレイテッド(Dentsply International,Inc.,York,PA))中で硬化したことを除き、本明細書に記載されるものと同一の様式で、硬化された接着剤試料を調製した。そのままのポリエステルライナーを有する硬化された接着剤試料は、白色反射率標準上に直接に配置された。分光計の光源の電源を入れ、そして本明細書で記載されるようにL*、a*およびb*値を測定した。それぞれの報告された値は、3回の測定の平均を表す。
【0117】
白色光安定性
色試験方法に関して本明細書で記載されるように、接着剤試料を調製した。0.51mmの厚さを有するディスク形状に、ポリエステル剥離ライナーの間で接着剤をプレスすることによって、5つの試料を製造した。1つの接着剤ディスクを直ちに測定し、そしてゼロ点として使用した。残りの4つのディスクを白紙シート上に配置し、そして標準の天井の高さの蛍光取り付け具の下に直接的に机の高さで配置した。蛍光および接着剤試料の間の距離は、約2.0メートルであった。2、5、10および20分の暴露後に、接着剤試料を蛍光暴露から除去し、そして暗屋へ移した。次いで、色試験方法のために本明細書に記載されるように、試料の色を測定した。次いで、蛍光への暴露の関数としてa*に関する結果を報告することができ、それぞれ報告された値は1回の測定を表す。
【0118】
出発材料調製CDMA
以下の手順に従って調製されるクエン酸およびIEMの反応生成物として、CDMAを定義した。メカニカルスターラー、冷却管、添加ロートおよび給気口チューブを備えた反応容器において、テトラヒドロフラン(5.9リットル)中にクエン酸(1870g;9.733モルのシトレート、29.2モルのカルボキシレート)を溶解した。得られた均質溶液に、BHT(4.69g)、TPS(4.68g)およびDBTDL(4.68g)を添加した。乾燥空気を給気口チューブを通して反応混合物に導入し、そして、反応温度を約40℃に維持する速度で、添加ロートを通してIEM(3019g;19.46モル)を滴下した。反応に続いて、赤外線分光法およびガスクロマトグラフィーを行った。全IEMを添加して、IRスペクトルがイソシアネート基の存在をもはや示さなくなった後、溶媒を反応混合物から真空下で除去し、粘性液体を得た。核磁気共鳴分光法によって、添加されたメタクリレート官能性の存在およびカルボキシル基の保持を確認した。その後の配合研究で使用するために、粘性液体(CDMA)を、1部PEGDMAと2部CDMAの重量比のPEGDMA中に溶解した。得られた溶液をCDMA−PEGDMAと称した。
【0119】
フィラーA(シラン処理石英フィラー)
フィラーAは、以下の手順に従って調製されるシラン処理石英フィラーであった。脱イオン水58.3g部分を1000mlビーカー中で計量した。約29℃〜33℃に水を予熱した。マグネチックスターラーで撹拌しながら、105gの石英フィラー(アラスカ州ジェシービルのコールマン クオーツ(Coleman Quartz,Jessieville,AK))を水に添加し、続いて、1.7gのエアロシル(AEROSIL)R−972ヒュームドシリカをゆっくり添加した。1%トリフルオロ酢酸(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))によって、得られたスラリーのpHを約2.5と3.0との間に調整した。5分間、混合を続け、続いて、3gの3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(ペンシルバニア州ブリストルのユナイテッド ケミカル テクノロジーズ インコーポレイテッド(United Chemical Technologies,Inc.,Bristol,PA))を添加した。得られたスラリーを2時間撹拌し、次いで、ポリエステルシートで裏張りされたトレイに均一に注入した。充填されたトレイを、約60℃で12時間、対流乾燥オーブン中に置き、乾燥ケーキを得た。乳鉢および乳棒を使用して乾燥ケーキを破砕し、約60℃で8時間乾燥させ、74ミクロメートルナイロンスクリーンを通して破砕されたフィラーをスクリーニングし、フィラーAと示される粉末フィラーを得た。
【0120】
フィラーB(シラン処理FASフィラー)
フィラーBは、以下の手順に従って調製されたシラン処理されたフルオロアルミノシリケートガラス(FAS)フィラーであった。脱イオン水6,420g部分を、23リットルのポリエチレンバケツ中に計量した。プリミア(Premier)電気ミキサー(ペンシルバニア州リーディングのプリミア ミル(Premier Mill,Reading,PA))で水を撹拌し、ミキサーの軸に対して深さ約2.5mmのボルテックスを生じ、約90gの氷酢酸の添加によってpHを約3.0まで調整した。得られた酸性溶液に、521gの3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(ユナイテッド ケミカル テクノロジーズ インコーポレイテッド(United Chemical Technologies,Inc.))を添加した。溶液を1時間撹拌し、次いで、5990gの微細粉末FASガラス(ドイツ、ランツフートのショット グラス(Schott Glas,Landshut,Germany))を充填した。得られたスラリーを30分間撹拌し、次いでポリエステルシートで裏張りされたトレイに均一に注入した。充填されたトレイを、約80℃で16時間、続いて、100℃で追加の2時間、対流乾燥オーブン中に置き、乾燥ケーキを得た。乳鉢および乳棒を使用して乾燥ケーキを破砕し、74ミクロメートルナイロンスクリーンを通して破砕されたフィラーをスクリーニングし、フィラーBと示される粉末フィラーを得た。
【0121】
実施例1〜10および比較例1〜3
本発明の組成物(例えば、接着剤)(実施例1〜10)および比較例1〜3を、以下の手順に従って調製した。
【0122】
容器中に表1Aおよび1Bに示される樹脂成分を充填することによって、樹脂前駆体を最初に調製した。得られた混合物を45℃まで加熱し、そして、ガラス撹拌ロッドおよび2.54cmテフロン(登録商標)撹拌ブレードを備えた電気撹拌モーター(フィッシャー サイエンティフィック(Fisher Scientific)、モデル#47)を使用して撹拌した。約6mmのボルテックスが生じるように、撹拌速度を調節した。混合容器を光から保護し、全固体成分を溶解するように混合を4時間続けた。次いで、各樹脂前駆体を、表1Aおよび1Bに示されるフィラー成分と組み合わせ、均一ペースト状組成物が得られるまで混合した。
【0123】
実施例2、3および5〜9に関して、充填された材料の量を収容するために十分なサイズ(0.95〜3.785リットル)のプラネタリーミキサー(ニューヨーク州ハウパウジのチャールズ ロス アンド カンパニー(Charles Ross and Co,Hauppauge,NY))を使用して、樹脂前駆体とフィラー成分との混合を達成した。15リットルのプラネタリーミキサー(ペンシルバニア州リーディングのプリミア
ミル(Premier Mill,Reading,PA))を使用して、実施例10と比較例3を混合した。一般的に、最初に樹脂前駆体を、続いて、フィラー成分を混合容器に充填した。直ちにフィラー全量を充填し、そして所望のペースト状の一貫性が達成されるまで混合するか;あるいは全フィラーの一部は初期混合物から保留されて、その後の混合サイクルに取り入れられた。典型的に、合計1〜4の追加的なフィラー混合サイクルを利用した。ペーストの均質性は、いくつかの要因(例えば、混合時間、プラネタリー混合速度、樹脂粘度および添加されるフィラーの総量)次第であった。プラネタリーミキサーで混合される実施例に関しては全て、10〜12rpmの混合速度で45℃で実行された。
【0124】
実施例1および4ならびに比較例1および2に関して、樹脂前駆体とフィラー成分との混合は、ハウスチルド スピード ミキサー{T}システム(Hauschild Speed Mixer{T}System)(サウスカロライナ州ランドラムのフラック テック インコーポレイテッド(Flack Tec Inc,Landrum,SC))を使用して達成された。この種類のミキサーは、樹脂前駆体およびフィラー成分が容器に充填されるという点で従来のミキサー(例えば、プラネタリーミキサー)と異なり、容器とその内容を迅速に回転することによって生じる遠心力を通して混合を達成した。この方法によって混合される実施例に関して、樹脂およびフィラー成分の全量を40mlのプラスチック混合容器に充填し、そして3,000rpmで1分間室温で混合して、均一な組成物を得た。
【0125】
実施例1〜10、ならびに比較例1(CE−1)および2(CE−2)の全組成物は、2以上のフィラー成分を含んだ。実施例1、6〜8、CE−1およびCE−2に関して、表1Aおよび1Bに示される量で、フィラー成分を独立して添加した。あるいは、混合容器において樹脂前駆体に充填する前に、フィラー成分を組み合わせてフィラー前駆体を形成することができた。かかるフィラー前駆体を調製して、実施例2〜5および9〜10の組成物を製造するために使用した。都合の良い大きさのビーカーで手で少量を混合することによってかかる混合を達成したか、あるいは、多量の材料に関しては、実施例10に関して実行された通り、パターソン ケリー ツイン シェル ブレンダー(Patterson Kelley Twin Shell Blender)(ペンシルバニア州カンプヒルのハースコ コーポレイション(Harsco Corp.,Camp Hill,PA))を使用してブレンドを達成した。
【0126】
表1Aおよび1Bに記載された各実施例および比較例に関して、組成物の総重量を基準として、樹脂およびフィラー成分を重量%で記載した。
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
実施例11〜20
比較例1と示される組成物中に、様々な高表面積のヒュームドシリカ材料を少量混合することによって、実施例11〜15を調製した。比較例2と示される組成物中に、様々な高表面積のヒュームドシリカ材料を少量混合することによって、実施例16〜20を調製した。使用される具体的なヒュームドシリカ材料およびヒュームドシリカの添加量を表2に示す。各場合において、高表面積のヒュームドシリカの添加によって、組成物の物理的特性における重大な変化が引き起こされ、そしてこの変化度は、添加されるヒュームドシリカの量および種類次第であった。少量の高表面積のヒュームドシリカの添加によって、ペーストは、出発組成物(比較例1〜2)の場合の高流動ペーストから、得られる組成物(実施例11〜20)の場合の非流動、非スランプペーストへと変形した。CAB−O SIL M5変性は、粘度の最も劇的な増加をもたらし(実施例11〜13、および16〜18)、特に0.5重量%以上のレベルで添加される場合、出発組成物の流動特性を変性することができることが観察された。出発組成物(比較例1〜2)への0.5重量%のCAB−O−SIL TS720またはエアロシル(AEROSIL)R972の添加は、粘度におけるわずかな変化のみをもたらすが、出発組成物のペーストを、非流動、非スランプペースト(実施例14〜15および19=20)へと著しく変形させた。
【0130】
【表4】

【0131】
評価および結果
静的降伏応力および定常状態粘度:実施例11〜20、比較例1〜3、および市販の製品トランスボンド(TRANSBOND)XT 歯科矯正接着剤(3M ユニテック(3M Unitek))に関して、本明細書に記載の試験方法に従って静的降伏応力および定常状態粘度を測定した。結果を表3に報告する。これは、それぞれ3.95%および7.90%のレベルでヒュームドシリカOX−50を含有する接着剤組成物CE−1およびCE−2への低レベルの様々な高表面積ヒュームドシリカ材料の添加が、降伏応力(0.25%ヒュームドシリカを含有する実施例13を除く)および粘度の増加を伴う組成物(実施例11〜20)を与えることを示す。ある実施例(例えば、実施例11〜12、14〜17、19〜20)の場合、OX−50の添加によって、包装された接着剤被覆歯科矯正装置における接着剤として使用するために非常に望ましいレオロジー特性を与えた。市販の製品トランスボンド(TRANSBOND)XTもこれらの適用に関して望ましいレオロジー特性を有するが、この製品は親水性が低く、そしてフッ化物放出能力が不足している(例えば、フッ化物放出成分を含有しない)。
【0132】
【表5】

【0133】
水分取り込み:実施例2〜3および5〜6、比較例3、ならびに市販の製品トランスボンド(TRANSBOND)XT 歯科矯正接着剤(3M ユニテック(3M Unitek))に関して、本明細書に記載の試験方法に従って水分取り込みを測定した。2日および10日での水分取り込みにおけるパーセント増加に関する結果を表4に報告する。これは、(2日で)比較例3またはトランスボンド(TRANSBOND)XTと比較して、実施例2〜3および5〜6による著しく大きい水分の取り込みを示す。増加した水分取り込みは、本発明の実施例2〜3および5〜6における実質的により親水性のポリマーの存在に寄与し得る。本発明で使用される接着剤の親水性はフッ化物輸送を促進し、そして水分または唾液の取り込みを促進し、結合の破損の可能性を低下させる(例えば、湿分または唾液によって汚染された歯に結合された接着剤被覆ブラケットの場合)。
【0134】
【表6】

【0135】
接着剤/ブラケットフローアウト:本明細書に記載の試験方法に従って、実施例12〜15、17〜20および比較例1〜3の接着剤/ブラケットフローアウトを測定した。結果を表5に報告する。これは、それぞれ3.95%および7.90%のレベルでヒュームドシリカOX−50を含有する接着剤組成物CE−1およびCE−2への低レベルの様々な高表面積ヒュームドシリカ材料の添加が、被覆ブラケット下から少しのフローアウトしか測定されないか、全く測定されないようなレオロジー特性を有する組成物(実施例12〜15および17〜20)を与えるを示す。対照的に、比較例1〜3に関して著しいフローアウトが測定された。かかるレオロジー特性を有する接着剤組成物(すなわち、時間が経過しても最小のフローアウトか、またはフローアウトがない)は、接着剤被覆、包装歯科矯正装置において接着剤として使用するために非常に望ましい。
【0136】
【表7】

【0137】
接着剤/ブラケット垂直スリップ:本明細書に記載の試験方法に従って、実施例2および5、ならびに比較例1〜3の接着剤/ブラケット垂直スリップを測定した。結果を表6に報告する。これは、本発明の接着剤組成物によって被覆されたブラケット(高表面積ヒュームドシリカ材料、すなわち、約105〜約130m2/gの表面積を有するCAB−O−SIL TS−720を含有する実施例2および5)が本質的にブラケットスリップを示さないことを示す。対照的に、それぞれ3.95%、7.90%および1.94%のレベルで、約35m2/g〜約65m2/gの表面積を有する低表面積のヒュームドシリカ材料、すなわちOX−50のみを含有する比較例1〜3によって被覆されたブラケットに関して、著しいブラケットスリップが測定された。これらの結果から、比較的高い表面積を有するヒュームドシリカ材料の存在が、接着剤組成物のレオロジー特性の増加に寄与していたことを結論付けることができる。かかるレオロジー特性を有する接着剤組成物(すなわち、時間が経過しても最小のスリップか、またはスリップがない)は、接着剤被覆、包装歯科矯正装置において接着剤として使用するために非常に望ましい。
【0138】
【表8】

【0139】
フッ化物放出:本明細書に記載の試験方法に従って、実施例2〜5および9、ならびに市販の製品F2000修復材(3Mカンパニー(3M Company))のフッ化物放出を測定した。1日、2日および21日の試験試料の1グラムに対するフッ化物のミリグラムに関する結果を表7に報告する。これは、実施例2〜5および9、ならびにF2000修復材製品に関する累積フッ化物放出を示す。これらの結果は、本発明の実施例およびF2000修復材の両方におけるフッ化物放出成分(すなわち、FASガラス成分)存在に起因し得る。
【0140】
【表9】

【0141】
湿分耐性のための結合強度:本明細書に記載の試験方法に従って、実施例1および市販の製品トランスボンド(TRANSBOND)XT 歯科矯正接着剤(3M ユニテック(3M Unitek))に関して、異なる湿分条件下での結合強度を測定した。乾燥および湿潤条件下での結合強度に関する結果を表8に報告する。これは、乾燥条件下で、実施例1およびトランスボンド(TRANSBOND)XT試料の両方に関して比較可能な値を示す。しかしながら、湿潤条件下で、実施例1は、市販の製品より著しく高い結合強度を示した。この結合強度の増加(トランスボンド(TRANSBOND)XTとの比較において)は、本発明の実施例1における親水性ポリマーの存在に起因し得る。実施例1のこの親水性は、水分または唾液の取り込みを促進し、結合の破損の可能性を低下させる(例えば、湿分または唾液によって汚染された歯に結合された接着剤被覆ブラケットの場合)。
【0142】
【表10】

【0143】
色試験:本明細書に記載の試験方法に従って、実施例2〜5および8〜9の初期色および退色された色の定量を測定した。a*値に関する結果を表9に報告する。これは、光退色性染料を含有するそれぞれの実施例の接着剤の光硬化に続く、容認できる色損失(退色)を示す。
【0144】
【表11】

【0145】
白色光安定性:本明細書に記載される白色光安定性試験方法に従って、実施例2〜3、5および9に関して、白色光条件下における色安定性の定量を測定した。a*値に関する結果を表10に報告する。予測される通り、実施例の接着剤のそれぞれに関して、蛍光への暴露に続いて徐々に色損失が生じた。しかしながら、5分の光暴露後、色a*値は15より高く、歯の上に配置されたブラケットの周囲の接着剤の容易な除去のために、十分な接着剤の色が利用可能であることが示される。接着剤被覆ブラケットは典型的に、5分以内で、それらの包装から取り出され、すぐに除去されて、最終硬化される。
【0146】
【表12】

【0147】
前記詳細な説明および実施例は、理解を明瞭にさせるためのみに与えられる。それらから、不必要に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、示されて記載された正確な詳細に限定されず、当業者に明白な変更は、請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む、前記装置の前記基部上の接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品。
【請求項2】
前記接着剤が、少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記接着剤が、40℃で1週間後に約0.4ミリメートル以下のフローアウト値を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記接着剤と接触している表面を含む剥離基材を更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記剥離基材の前記表面が多数の細孔を含み、かつ前記接着剤の約50重量%以下が前記細孔内部にある、請求項4に記載の物品。
【請求項6】
前記剥離基材が発泡体を含む、請求項4に記載の物品。
【請求項7】
前記容器が、光および/または水蒸気の透過に対するバリアを提供する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記フッ化物放出材料がフィラーである、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記フィラーがベースフィラーを更に含む、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記ベースフィラーが、石英フィラー、フルオロアルミノシリケートガラスおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項9に記載の物品。
【請求項11】
前記ベースフィラーが石英フィラーであり、かつ前記石英フィラーがシラン処理表面を含む、請求項10に記載の物品。
【請求項12】
前記ヒュームドシリカがシラン処理表面を含む、請求項1に記載の物品。
【請求項13】
前記ヒュームドシリカが、シリコーン流動体処理ヒュームドシリカを含む、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記シリコーン処理ヒュームドシリカが、ポリ(ジメチルシロキサン)流動体処理ヒュームドシリカを含む、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記ベースフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約10重量%〜約87重量%で存在し、そして前記ヒュームドシリカフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約0.1重量%〜約50重量%で存在する、請求項9に記載の物品。
【請求項16】
前記ベースフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約45重量%〜約85重量%で存在し、そして前記ヒュームドシリカフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約0.2重量%〜約15重量%で存在する、請求項15に記載の物品。
【請求項17】
前記ベースフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約75重量%〜約83重量%で存在し、そして前記ヒュームドシリカフィラーが、前記接着剤の総重量を基準として約0.5重量%〜約3重量%で存在する、請求項16に記載の物品。
【請求項18】
前記ヒュームドシリカが、約70m2/g〜約1000m2/gの表面積を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記ヒュームドシリカが、約90m2/g〜約500m2/gの表面積を有する、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記ヒュームドシリカが、約100m2/g〜約150m2/gの表面積を有する、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記ヒュームドシリカが、約0.01ミクロン〜約1ミクロンの平均凝集体長さを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項22】
前記酸性成分が(メタ)アクリロイル置換カルボン酸である、請求項1に記載の物品。
【請求項23】
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含む、前記装置の前記基部上の接着剤であって、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは前記初期色が前記最終色とは異なる接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品。
【請求項24】
前記フィラーが、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含む、請求項23に記載の物品。
【請求項25】
前記酸性成分が(メタ)アクリロイル置換カルボン酸である、請求項23に記載の物品。
【請求項26】
前記初期色から前記最終色への色変化が、約20より高いΔE*値を有する、請求項23に記載の物品。
【請求項27】
前記硬化剤が、増感化合物と、電子供与体と、ヨードニウム塩とを含む、請求項23に記載の物品。
【請求項28】
前記光退色性染料が、ローズベンガル、メチレンバイオレット、メチレンブルー、フルオレセイン、エオシンイエロー、エオシンY、エチルエオシン、エオシンブルーイッシュ、エオシンB、エリトロシンB、エリトロシンイエローイッシュブレンド、トルイジンブルー、4’,5’−ジブロモフルオレセインおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項23に記載の物品。
【請求項29】
前記最終色が、歯と類似の色であるか、または基底表面の色を透過可能である、請求項23に記載の物品。
【請求項30】
前記最終色が、暗条件下、約37℃で約2日間〜約4日間の老化後に約16ΔE*以下の色変化を有する、請求項23に記載の物品。
【請求項31】
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
前記装置の前記基部上の接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品であって、前記接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む包装物品と、
前記歯科矯正装置の使用に関する指示と、
を含むキット。
【請求項32】
エッチング組成物を更に含む、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
前記装置の前記基部上の接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品であって、前記接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含み、前記接着剤が、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは前記初期色が前記最終色とは異なる包装物品と、
前記歯科矯正装置の使用に関する指示と、
を含むキット。
【請求項34】
歯科矯正装置を歯に結合させる方法であって、
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
前記装置の前記基部上の接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品であって、前記接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む包装物品を提供する工程と、
前記容器から、その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を取り出す工程と、
前記装置の前記基部を前記歯の表面へと適用する工程と、
前記接着剤を化学線放射へと暴露する工程と、
を含む方法。
【請求項35】
前記装置の前記基部を前記歯の表面へと適用する工程の前に、前記歯の表面にエッチング組成物を適用する工程を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記装置が、少なくとも約7MPaの接着力によって、湿った歯の表面に結合する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
歯科矯正装置を歯に結合させる方法であって、
歯科矯正装置であって、当該装置を歯に結合させるための基部を有する歯科矯正装置と、
前記装置の前記基部上の接着剤と、
その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を少なくとも部分的に包囲する容器と、
を含む包装物品であって、前記接着剤が、重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含み、前記接着剤が、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは前記初期色が前記最終色とは異なる包装物品を提供する工程と、
前記容器から、その基部上に接着剤を有する前記歯科矯正装置を取り出す工程と、
前記装置の前記基部を前記歯の表面へと適用する工程と、
前記接着剤を化学線放射へと暴露する工程と、
を含む方法。
【請求項38】
重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、少なくとも約70m2/gの表面積を有するヒュームドシリカを含むフィラーとを含む接着剤であって、少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有し、かつ40℃で1週間後に約0.4ミリメートル以下のフローアウト値を有する接着剤と、
前記接着剤と接触している表面を含む剥離基材と、
を含む包装接着剤。
【請求項39】
重合性成分と、フッ化物放出材料と、親水性成分と、硬化剤と、酸性成分と、フィラーと、光退色性染料とを含む接着剤であって、化学線放射への暴露前に初期色を有し、かつ化学線放射への暴露後に最終色を有し、ここでは前記初期色が前記最終色とは異なり、かつ少なくとも約7000ダイン/cm2の28℃での静的降伏応力を有する接着剤と、
前記接着剤と接触している表面を含む剥離基材と、
を含む包装接着剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−17573(P2010−17573A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−230945(P2009−230945)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【分割の表示】特願2003−585681(P2003−585681)の分割
【原出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】