説明

歯茎マッサージ装置

【課題】マウスピースの内部に埋め込まれた薄板の振動体に対し、単一の振動素子によって可聴域振動と超音波振動を発生させることが可能な構造とし、振動素子から発生させる周波数の調整によって、1個のマッサージ装置で可聴域振動と超音波振動の両方による作用効果を得ることができるようにした歯茎マッサージ装置を提供する。
【解決手段】上下の歯で両面を歯合する振動体1に超磁歪素子2を接合し、該超磁歪素子2に磁界を印加するためのコイル7を巻回してなる振動発生手段3を備えたマウスピース4を構成し、前記超磁歪素子2に発生させた可聴域振動と超音波振動を前記振動体1に伝達するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下の歯を介して歯茎に振動を与え、歯茎をマッサージすることによって血行を促進すると共に、歯周病等の予防又は改善を図るようにした歯茎マッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は、歯垢中の細菌により発症するものであるが、歯周組織が鬱血等によって発生する虚血障害もその要因に挙げられている。このため、従来から、歯周病の予防又は改善を図るには、歯茎をマッサージすることによって血行を促進することが有効であると言われている。
【0003】
そのための簡易な手段としては、指先の腹を歯茎に当ててマッサージする方法が周知である。この方法は、歯茎の状況に応じて指圧を調整することができる点で、理想的なマッサージ法であると思われる。しかしながら、手指を洗浄せずに行った場合、指先等に付着していた細菌が歯肉に入り込んで、炎症を起こすおそれがあるため、衛生面からは推奨すべきものでない。
【0004】
このため、従来から、機械的に振動を与えることによって歯茎をマッサージするようにした装置が案出されている。その例として、電動モータ等によって歯ブラシに振動を与えることにより、歯磨きを行うと同時に歯茎のマッサージを行うようにした装置が開発されている。
【0005】
しかしながら、この種の振動を発生する歯ブラシは、歯ブラシの先を歯茎に直接当てるため、歯茎に非常な痛みを生じるものであった。そこで、特許文献1に記載されているように、従来の電動マッサー器の歯ブラシの部位に柔軟性を有する天然ゴムやシリコンゴム等の低弾発性の材料を用いた構成の電動歯茎マッサージ器が開発されている。
【0006】
ところが、このようなマッサージ器においても、先端のマッサージ部を歯茎に当てる必要があるため、従来の歯ブラシを使用するタイプのものと同様に、使用時においては歯茎に痛みを生じるものであった。
【0007】
また、上記のような従来の電動マッサージ器や特許文献1に示す電動歯茎マッサージ器を使用するときは、片手で本体を握る必要があった。従って、両手で何かの作業を行いながら上記の装置によって歯茎のマッサージを行うことは不可能である。
【0008】
そこで、このような事情に鑑みて、特許文献2に示す歯肉マッサージ装置が案出されている。この歯肉マッサージ装置は、上下の歯で歯合するマウスピース部に振動体が内蔵され、DCモータ等の電動モータによって振動体を振動させることにより、上下の歯を介して歯茎に振動を伝達するようにしたものである。
【0009】
ところで、この特許文献2の装置においては、振動部として、DCモータ等の振動モータを使用している。この振動モータは、一般的に、回転子の重心が偏心構造により構成されているため、発生する周波数による振動は数十HZ乃至数百HZ程度であって、周波数が20Hz乃至20000Hz程度の可聴域振動に属するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−326246号公報
【特許文献2】特開2008−237276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
また、振動モータとしては、従来から超音波振動モータが開発されているが、この超音波振動モータは振動体の変形による微細な位置変化を回転運動や直線運動に変化させるものである。即ち、このような超音波振動を発生する振動子は、電歪振動子を利用するため、可聴域を振動させるには、別途、他の振動体が必要となる。
【0012】
従って、歯茎用のマッサージ器において、従来から、単一の振動素子によって可聴域振動と超音波振動とを発生させる構造体を実現することは困難とされ、可聴域振動によるマッサージ器と超音波振動によるマッサージ器とが夫々別々に開発されてきたのである。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、マウスピースの内部に埋め込まれた薄板の振動体に対し、単一の振動素子によって可聴域振動と超音波振動を発生させることが可能な構造とし、振動素子の周波数による振動を調整することにより、1個のマッサージ装置で可聴域振動と超音波振動による作用効果を実現するようにした歯茎マッサージ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明における請求項1の歯茎マッサージ装置は、上下の歯で両面を歯合する振動体に超磁歪素子を接合し、該超磁歪素子に磁界を印加するためのコイルを巻回してなる振動発生手段を備えたマウスピースを構成し、前記超磁歪素子に発生させた可聴域振動と超音波振動を前記振動体に伝達するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明における請求項2の歯茎マッサージ装置は、請求項1において、前記超磁歪素子に接続した音源からの信号を付与することにより、前記超磁歪素子から発生する可聴域振動によって前記振動体から可聴域の音楽を発するようにしたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明における請求項3の歯茎マッサージ装置は、請求項1又は2において、前記マウスピースはシリコン樹脂の内部に薄板のチタン合金による振動体を内蔵した構成であることを特徴とする。
【0017】
さらに、本発明における請求項4の歯茎マッサージ装置は、請求項1、2又は3において、前記振動体は上下の歯の歯合形状であるU字形をなすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の歯茎マッサージ装置によれば、上下の歯で両面を歯合する振動体と、該振動体に接合した超磁歪素子に磁界を印加するためのコイルを巻回してなる振動発生手段とを備えたマウスピースを構成し、超磁歪素子に発生させた可聴域振動と超音波振動を振動体に伝達するようにしたものである。従って、このような構成により、従来のように歯茎に歯ブラシや振動体を当てることなく、また両手を使用することなく、上下の歯を介して可聴域振動と超音波振動を歯茎に与えることが可能となる。
【0019】
また、本発明によれば、超磁歪素子に発生させる周波数を調整することによって、1個のマッサージ装置で可聴域振動と超音波振動による作用効果を与えることができ、可聴域振動による歯茎のマッサージに加えて、超音波振動によるマッサージ効果を及ぼすことが可能となる。この超音波振動によって、歯茎の深部まで殺菌効果及び温熱効果を及ぼすことができ、歯茎の血流が促進されると共に、新陳代謝が活発となり、歯周病の予防及び改善に有益となるほか、唾液の分泌を促すという副次効果を期待することも可能となる。
【0020】
さらに、本発明の歯茎マッサージ装置によれば、超磁歪素子に可聴域振動を発生させると共に、音源からの電気信号を音楽信号に変換することにより、振動体から音楽等の可聴域振動を発生させることが可能となる。従って、マウスピースを噛み込んだ使用者は、振動体から発生する音楽の振動波を自分の上下の歯を介して骨伝導で聞くことができると共に、音楽を聴きながら歯茎のマッサージを行うことが可能となる。
【0021】
本発明の構成において、マウスピースはシリコン樹脂の内部に薄板のチタン合金を内蔵した構成とすることができる。このような構成により、振動伝達性能に優れたチタン合金の特性を利用して、超磁歪素子に発生した可聴域から超音波域までの周波数による振動を効率よく発生させることが可能となる。
【0022】
また、振動体は上下の歯の歯合形状であるU字形をなす構成とすることによって、マウスピースを上下の歯で噛み込んだ状態にして上下の歯の全体に振動を伝達することが可能となる。従って、上下の歯を介して歯茎の全体に振動体からの振動を効率的に及ぼすことが可能となり、歯茎の血行を促進することによって、歯周病等の予防又は改善を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による実施例1の歯茎マッサージ装置におけるマウスピースを示す斜視図であり、マウスピースの外観を実線で示す。
【図2】本発明による実施例1の歯茎マッサージ装置におけるマウスピースの斜視図であり、マウスピースの外観を2点鎖線で示す。
【図3】本発明による実施例1の歯茎マッサージ装置における回路構成を示すブロックダイヤグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0025】
本実施例の歯茎マッサージ装置は、図1に示すように、上下の歯で両面を歯合する振動体1に超磁歪素子2を接合し、この超磁歪素子2にコイル7による磁界を印加してなる振動発生手段3を構成し、超磁歪素子2に可聴域振動と超音波振動を発生させることにより、振動体1に可聴域振動と超音波振動を伝達するようにしたものである。
【0026】
このような構成の歯茎マッサージ装置についてより詳細に述べると、図1に示すように、マウスピース4はシリコン樹脂5の内部に薄板のチタン合金による振動体1を内蔵した構成を有する。即ち、このマウスピース4は、図2に示すように、1mm程度の薄板のチタン合金からなる振動体1の外被としてシリコン樹脂5で被覆したものを上下の歯の歯合形状であるU字形に形成したものである。
【0027】
上記の振動体1を構成するチタン合金は、軽量且つ優れた振動伝達性能を有するものであり、この振動伝達性能を利用して、超磁歪素子2に発生した可聴域振動と超音波振動を振動体1に効率よく伝達することが可能となる。
【0028】
また、その振動体1の外被をなす保護層として、シリコン樹脂5による被覆を施すことにより、使用者がマウスピース4を噛み込んだ際に柔軟な弾性を発揮し、歯周病等の症状を有する者に対して優しい使用感覚を与えることが可能となる。
【0029】
さらに、本実施例の振動体1は上下の歯の歯合形状であるU字形に形成されているため、マウスピース4を上下の歯で噛み込んだ状態にすると、上下の歯の全体に振動体1の振動を効率的に伝達することが可能となる。
【0030】
また、このチタン合金からなるU字形の振動体1の湾曲端部には延長部6が形成され、該延長部6の端部には、振動発生手段3として超磁歪素子2が接着剤等により接合されている。この超磁歪素子2は、通常の磁歪材料、例えばFe−Cu系、Fe−B系、Fe−B−Si系、Fe−Co−Si系等と比較して、変化倍率が100倍程度である磁歪材料として公知である。
【0031】
この超磁歪素子2としては、ランタノイド元素Rの一種または二種以上と鉄属元素T(Fe、Co、Ni)の一種または二種以上とで構成されるラーベス型の立方晶(RT2)素材から成るものを用いることができる。また、この超磁歪素子2に、B、N、C、F、P、S、Cl、Se、As、Si、Sb、Te、I、Bi、Po、At、Ga、In、Tlのうちの一種または二種以上を添加元素として加えても良い。
【0032】
さらに、本実施例の超磁歪素子2として、Terfenol−D(製造メーカー名ETREMA Products,Inc.の登録商標)を使用することが可能である。このTerfenol−DはTb−Dy−Fe系合金を意味し、その組成は、「Tb0.27Dy0.73Fe1.9」である。この超磁歪素子2は、磁歪が約2,000ppであって、従来の磁歪材料に較べて約2桁大きいことが特徴である。
【0033】
また、本実施例において、超磁歪素子2は、図1又は図2に示すように、その外周に巻回されたコイル7により印加される外部磁界の強弱によって伸縮するものである。このコイル7は超磁歪素子2の周囲を均一に囲繞する配置とされているため、磁界を均一に生成することができる。
【0034】
上記の超磁歪素子2に磁界を印加すると、その磁界の周波数に等しい周波数の振動を発生させることが可能となる。従って、図3のブロックダイヤグラムに示された回路構成によって、超磁歪素子2に印加する外部磁界の強さを調整することにより、超磁歪素子2に可聴域振動と超音波振動を発生することが可能となる。
【0035】
ここで、図3に示す回路構成10は、超音波発生回路11をミキシング回路12に接続することにより、超音波発生回路11により発生した超音波振動の周波数を調整すると共に、増幅回路13を経て増幅し、増幅回路13からリード線9を介して超磁歪素子2に設けられたコイル7に接続した構成としている。そして、このような超磁歪素子2に超音波振動を発生させることによって振動体1に超音波振動を伝達し、マウスピース4を噛み込んだ使用者の上下の歯を介して歯茎に超音波振動を与えることができる。
【0036】
また、超音波振動は、20000Hz以上の高い周波数を有する振動波であり、熱エネルギー源である分子運動の伝播を超音波の振動エネルギーによって伝達することにより温熱効果を及ぼして歯茎の深部まで与えることができる。さらに、超音波振動の温熱効果によって血流が促進され、新陳代謝が活発となり、歯周病予防に有益であると共に、唾液の分泌を促すという副次効果を期待することも可能となる。
【0037】
また、図3に示す回路構成10において、ミキシング回路12には、MP3等による内部音源回路14を接続してあり、この内部音源回路14からの音楽信号をミキシング回路12と増幅回路13を経ることによってコイル7に伝達する。そしてこのコイル7によって印加された磁界によって超磁歪素子2に音楽等の可聴域振動を発生させると共に、超磁歪素子2に接合された振動体1に伝達する。このため、マウスピース4を噛み込んだ使用者は、振動体1から発生する音楽の振動波を自分の上下の歯を介して骨伝導で聞くことができ、このようにして音楽を聴きながら歯茎のマッサージを行うことが可能となる。
【0038】
なお、図3に示すように、内部音源回路14には、外付けの音楽プレーヤ等の外部音源15の端子16を接続することによって、外部から供給された音楽信号を取り入れ、上記の構成により振動体1より可聴域振動の音楽を骨伝動で聴くことが可能となる。
【0039】
また、本実施例において、マウスピース4の延長部6にコイル7を巻回した超磁歪素子2を内蔵すると共に、延長部6の途中の外周に楕円又は円形等の鍔部9を形成することによって、本実施例によるマウスピース4を口腔内に入れた際に、使用者がマウスピース4を飲み込まないように防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の振動発生マウスピースは、上記のように構成されているため、マウスピースの内部に埋め込まれた薄板の振動体に対して、単一の振動素子によって可聴域振動と超音波振動を発生させることが可能な構造とし、超磁歪素子から発生させる周波数を調整することにより、1個のマッサージ装置で可聴域振動と超音波振動による作用効果を及ぼすことができるようにした歯茎マッサージ装置として利用することが可能となる。
【符号の説明】
【0041】
1 振動体
2 超磁歪素子
3 振動発生手段
4 マウスピース
5 シリコン樹脂
6 延長部
7 コイル
8 鍔部
9 リード線
10 回路構成
11 超音波発生回路
12 ミキシング回路
13 増幅回路
14 内部音源回路
15 外部音源
16 端子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の歯で両面を歯合する振動体に超磁歪素子を接合し、該超磁歪素子に磁界を印加するためのコイルを巻回してなる振動発生手段を備えたマウスピースを構成し、前記超磁歪素子に発生させた可聴域振動と超音波振動を前記振動体に伝達するようにしたことを特徴とする歯茎マッサージ装置。
【請求項2】
前記超磁歪素子に接続した音源からの信号を付与することにより、前記超磁歪素子から発生する可聴域振動によって前記振動体から可聴域の音楽を発するようにしたことを特徴とする請求項1記載の歯茎マッサージ装置。
【請求項3】
前記マウスピースはシリコン樹脂の内部に薄板のチタン合金による振動体を内蔵した構成であることを特徴とする請求項1又は2記載の歯茎マッサージ装置。
【請求項4】
前記振動体は上下の歯の歯合形状であるU字形をなすことを特徴とする請求項1、2又は3記載の歯茎マッサージ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−125405(P2012−125405A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279624(P2010−279624)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(397008638)サニーヘルス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】