説明

歯茎マッサージ部、電動歯茎マッサージャー、歯茎マッサージ方法

【課題】 歯周病でも歯茎が傷つきにくい電動歯茎マッサージャーを提供する。
【解決手段】 所定の振動数で振動する軸の先端部に、生体親和性のあり柔らかい接触部と磁石とを備え、更に、接触部に、概ね半球状の突起を形成する。この半球状の突起は、直径2.5〜5.5mmであり、3cm2内に1〜3列形成され、合計5〜10個である。また、磁石は、80ミリテスラ〜180ミリテスラの磁石を、先端部に2つ以上埋め込んでいる。さらに、振動数は、500回/分〜2500回/分である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯茎マッサージ部、電動歯茎マッサージャー、歯茎マッサージ方法、特に歯茎を痛めにくい歯茎マッサージ部、電動歯茎マッサージャー、歯茎マッサージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化の進展とともに、歯周病が国民病としてクローズアップされてきている。 歯周病は、いくつかの疾患の総称であり、主に歯と歯肉の間に歯周ポケットという隙間ができ、この隙間に嫌気性細菌等が繁殖して、最終的には歯周組織が破壊されて歯が抜けるという疾病である。
歯周病は、我が国の40代では80%以上の人が罹患しており、国民病といえる状態になっている。我が国では、実に、成人が歯を失う40%以上が、この歯周病が原因である。
【0003】
この歯周病の予防のためには、歯面の堆積物である歯垢(プラーク)・歯石などを除去・抑制することが重要である。
歯垢は、食事の後に歯に付着した食事カスを栄養源として増える細菌の温床であり、ムタンなどの水に不溶な糖類やタンパク質等からなる強固な「バイオフィルム」である。
また、歯石は、歯垢が唾液内に含まれるカルシウムにより石灰化したもので、強固に歯に付着する。
【0004】
これら、歯垢・歯石の除去のためには、口腔清掃(プラークコントロール)が重要である。
口腔清掃とは、口腔内の汚れを清掃することにより、口腔を清潔にし、かつ口腔の唾液がもつ細菌繁殖抑制の機能を高めることをいう。この口腔清掃により、口腔の2大疾患である歯周病(歯周疾患)や、う蝕(虫歯)を予防することができる。
すなわち、歯周病とう食の主原因とされる歯垢をコントロールすることで、口腔の健康の保持・増進を図る。
口腔清掃手段としては、以下のような分類のものがある。
【0005】
(口腔清掃手段)
(1)自然清掃法(自浄作用) …… 1.唾液、2.口腔の運動(舌、唇、頬)、3.繊維性・強固食品。
(2)人工的清掃法 …… 1.ブラッシング(刷掃法)、2.補助的清掃法(A.洗口法、B.フロッシング(線清掃法)、C.その他:小楊枝、歯間刺激子、口腔洗浄器)。
(3)手術的清掃法 …… 1.スケーリング(歯石除去)、2.ルートプレーニング、3.その他。
(4)化学的清掃法 …… 1.殺菌剤:クロルヘキシジン、PCP(塩化セチルピリジニウム)等、2.抗菌剤 フッ化物、3.酵素剤(デキストラーゼ・ムタナーゼ等)、4.その他:抗生物質等。
【0006】
上述の分類のうち、(2)の人工的な清掃法である「ブラッシング」は、歯ブラシにより歯面に付着した歯垢(プラーク)等の付着物を人工的(機械的)に除去する方法である。
ブラッシングは、セルフケアとして行う口腔清掃のうち、最も大きなウェイトを占める。
【0007】
また、歯ブラシは、歯垢を除去するのには最も合理的で簡便に使用できる口腔清掃用具の1つであり、重要且つ普遍的・一般的に用いられている。
【0008】
歯ブラシには、一般に、大きく分類すると手用歯ブラシと電動歯ブラシがある。
また、歯ブラシは、使用対象者により分類することもでき、乳幼児用、学童用、ヤング(ジュニア)用、成人用、矯正用、インプラント用、歯周病用、介護用等、様々な種類がある。さらに、刷毛部の形態、植毛状態、毛先の形態、把柄部の形態についても、様々な工夫が施されている。
【0009】
これら歯ブラシは、手用歯ブラシと電動歯ブラシとも、ブラッシング時に歯面の付着物を効果的に除去できるだけの強度と適正な柔軟性を備えていなければならない。
さらに、ブラッシング効果ばかりではなく、歯周組織や歯質への影響も考慮する必要がある。
【0010】
ブラッシングによる歯肉への適度な刺激は、歯肉のマッサージにもなり、歯肉の強化、歯周疾患の予防の役割をも果たす。
また、慢性炎症のある場合は、局所の組織、血液循環を改善する効果が得られる。
【0011】
(ブラッシングの利点と欠点)
ここで、ブラッシングの利点と欠点について、簡単に説明する。
(1)利点 …… 1.歯の表面における歯垢形成の阻止と歯垢の除去、2.歯周組織の物理的刺激(歯肉マッサージ)と歯周疾患の治療、3.口腔内の爽快感。
(2)欠点 …… 1.歯肉の損傷や歯肉の退縮、2.歯質の磨耗と知覚過敏。
【0012】
これら利点・欠点は、手用歯ブラシと電動歯ブラシで共通である。
しかし、電動歯ブラシにおいては、機械的な刺激を与えるために、使用方法を誤ると、障害が短期間、広範囲で出現する可能性があるという問題がある。
【0013】
(電動歯ブラシ)
ここで、電動歯ブラシについて、図1を参照して、さらに詳細に説明する。
電動歯ブラシは、把柄部に電動部を内蔵し、スイッチ操作で刷毛部を作動させ、歯の清掃や歯肉のマッサージをすることができる歯ブラシである。
最近の調査によれば、電動歯ブラシは、普及率が約30%にのぼっている。すなわち、約3.5人に1人は使用している。
この電動歯ブラシの頭部の大きさは手用歯ブラシの学童用ぐらいの大きさで、全体的に小さめである。
毛(刷毛)の堅さは柔らかで、歯肉をできるだけ傷つけないよう配慮されている。
しかしながら、後述するように、歯周病のような慢性歯周炎で脆くなった歯茎には、十分な柔らかさではないという問題がある。
【0014】
電動歯ブラシは、図1のように、電動モーターと錘、リニアオシレーター、リニアアクチュエーター、ピエゾ素子等の振動機構を内蔵している把柄部と、把柄部に着脱できる歯ブラシ部より構成される。把持部に内蔵された振動機構は、歯ブラシの軸に沿って、歯ブラシ部に振動を伝える。
電動歯ブラシの振動速度は、電動歯ブラシの種類により以下の3種類に分類される。

1.(従来型の)振動歯ブラシ (振動数 1000〜3000回/分)
2.音波歯ブラシ(リニアモーターを内蔵) (振動数 200〜300Hz)
3.超音波歯ブラシ(超音波発生装置を内蔵) (振動数 1.6MHz程度)
【0015】
さらに、電動歯ブラシの刷毛は、
a.往復違動、b.回転運動、c.楕円運動、d.振動運動、e.アーチ型運動、f.複合運動
といった様々な運動様式をとることができる。
【0016】
また、電動歯ブラシの頭部は手用歯ブラシと同様に、刷毛部の形態、毛束の植毛状態、毛先の形態について、様々に工夫されたものが製造、販売されている。
ここで、従来、電動歯ブラシのマッサージ性に着目して、マッサージ用として通常のナイロン毛の形態をした、シリコン製のブラシ毛を植毛したブラシが販売されている。
【0017】
たとえば、特許文献1を参照すると、複数の先の尖った軟質な錐状体を植毛した歯茎マッサージ用の電動歯ブラシが記載されている(この特許文献1の技術を、以下、従来技術1とする。)。
また、特許文献2を参照すると、シリコン性のブラシ毛を植毛した歯茎マッサージ用の電動歯ブラシが記載されている(この特許文献2の技術を、以下、従来技術2とする。)。
これらの従来技術1及び従来技術2の歯茎マッサージ用の電動歯ブラシは、軸もろとも高速駆動される歯茎マッサージ用ブラシのブラシ毛を使用者の歯茎に当てておくだけで、歯茎に継続的な刺激を与えて手軽で効率的な歯茎マッサージを行うことができる。
さらに、ブラシ毛を軟質の合成樹脂やシリコン等で形成しているので、歯茎マッサージの際の刺激は適度なものになるという効果がある。
【0018】
【特許文献1】特開平6−304218
【特許文献2】特開2003−153741
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、従来技術1の電動歯ブラシは、先の尖った錐状体を用いているため、力の加減、当てる時間等の不用意な使用で歯肉の擦過傷を引き起こす可能性があった。
また、従来技術2の電動歯ブラシも、接触様式は面接触に近いもので、歯肉に不用意な引っ張り力がかかって損傷する可能性があった。
特に、従来技術1及び従来技術2の電動歯ブラシは、歯周病で歯肉がダメージを受けて脆くなっている場合には、さらなるダメージを与えて、症状を悪化させることがあるという問題があった。
【0020】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の歯茎マッサージ部は、少なくとも1方向に振動可能な軸部の先端部に、生体親和性のある接触部と、磁石とを備え、前記接触部に、突起が形成されていることを特徴とする。
本発明の歯茎マッサージ部は、前記半球状の突起は、直径2.5〜5.5mmの半球状であり、前記接触部に1列又は複数列形成されていることを特徴とする。
本発明の歯茎マッサージ部は、前記先端部に、80ミリテスラ〜180ミリテスラの磁石が、前記先端部に2つ以上埋め込まれていることを特徴とする。
本発明の歯茎マッサージ部は、前記先端部は、500回/分〜2500回/分で振動することを特徴とする。
本発明の歯茎マッサージ部は、前記接触部は、前記先端部が先細りになるように形成し、前記先細りに形成された箇所に、前記突起が少なくとも1つ形成されていることを特徴とする。
本発明の電動歯茎マッサージャーは、前記歯茎マッサージ部を、振動させる駆動機構を備えた本体部と脱着可能に取り付けられることを特徴とする。
本発明の歯茎マッサージ方法は、前記歯茎マッサージ部の前記先端部を500回/分〜2500回/分で振動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、歯周病でも歯茎にダメージを与えにくい電動歯茎マッサージャーを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
<第1の実施の形態>
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る電動磁石歯茎(ガム)マッサージャーについて説明する。
本発明の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、上述の電動歯ブラシのうち振動歯ブラシと同様の機構に、歯ブラシ部の替わりに、歯茎専用の歯茎マッサージ部を付与したものである。
すなわち、この電動歯茎マッサージャーは、脱着可能な歯茎マッサージ部10、11と、リニアオシレータ等である振動機構や充電池(リチウムイオン2次電池やニッケル水素2次電池)等が内蔵された本体部20と、電磁誘導により充電池に充電する充電器30とを含んで構成される。
【0024】
歯茎マッサージ部10(軸部)又は歯茎マッサージ部11は、従来技術1のように尖っていない半球を形成した柔らかい接触部110を備え、基部に磁石が埋め込まれている。これにより、後述するように、歯周病の歯茎を傷つけることなくマッサージを行い、磁石との相乗効果で歯茎の血流改善を行うことができる。
本体部20には、電源スイッチ210が付加されている。この電動歯茎マッサージャーを使用する際に電源スイッチ210をオンにすると、本体部の振動機構に電源が供給されて、後述するように歯茎マッサージ部10に振動力を加える。なお、この電源スイッチ210は、振動速度を段階的又はリニアに変化させるように電圧や抵抗等を調整するよう構成していてもよい。
充電器30には、多色LED等である充電ランプ310があり、本体部20の充電池の充電時と充電終了時に色を変更して通知する。また、本体部20から取り外した歯茎マッサージ部10又は歯茎マッサージ部11や、通常の歯ブラシ部の予備を立てておくことができるスポット(穴)を備えている。
【0025】
以下、図3〜図5を参照して、歯茎マッサージ部10の機能について、さらに詳しく説明する。
歯茎マッサージ部10は、上述のブラッシングにおける、歯茎のマッサージに特化した歯茎専用のマッサージを行う部位である。
図2のCのラインの断面図である図3のように、歯茎マッサージ部10は、頸部150の先端に頭部100(先端部)が接続されている。
頭部100は、通常の歯ブラシ用のポリプロピレン等である樹脂で構成される基部140に、柔らかい「頭部合成樹脂部」である接触部110を付し、さらに磁石130aと磁石130bを埋め込んでいる。
接触部110は、生体親和性があり、広く人体に使用されているシリコンゴムを使用しており、半球120a〜120g(概ね半球状の突起)が形成されている。このシリコンゴムの堅さとしては、ちょうど皮膚と同程度の硬さであることが望ましい。この「硬さ」の測定としては、「デュロメーター硬さ」(例えば、「http://www.silicone.jp/j/sil_news/106/qa/main.shtml」を参照)を用いて測定して皮膚の硬さと同程度のものを用いることができる。
この半球120a〜120gは、直径2.5〜5.5mm程度であり、より好適には3.0mmが好ましい。また、表面からの高さは1mm程度に形成するのが好適である。
なお、基部140は、柔軟性のあるエラストマー、ラバー、シリコンゴム等で構成してもよい。
【0026】
次に、図4の正面図によると、この歯茎マッサージ部の頭部100の大きさは、長さAが2.5cm、幅Bが1.2cm程度であり、通常の電動歯ブラシの頭部と同様の大きさである。
この接触部110には、歯肉と接触する面に、半球120a〜120g、すなわち半球を7つ付与している。
【0027】
この半球120a〜120gは、従来技術1の錐状体や従来技術2のシリコンの毛のように密集してもいないため、歯肉に対して小数のポイントで接することができる。これにより、歯周病で痛んだ歯茎へのダメージを極力抑えて、振動を伝えることが可能となった。
【0028】
また、接触部110は、先端を先細りに形態にした。この上で、先端の先細りの箇所には、半球120gを1つのみ付与している。これにより、歯肉の幅が狭くなった奥歯にも、確実に振動を伝えることができるという効果が得られる。
【0029】
なお、接触部110は、生体親和性のある柔らかい材料であれば他のレジン等も用いることができる。たとえば、ポリウレタン、ラバー、エラストマーといった素材を使用することも可能である。また、これらの材料には、銀粉等の抗菌素材や、アルミニウム等の熱反射素材、ケイ酸塩鉱物等の微粉末といったものを中に埋め込むことも可能である。これにより、抗菌性、遠赤外線の放射による更なる血行促進、逆に冷却性による歯茎引き締めといった機能をもたせることもできる。
また、半球120又は121は、半球ではなくても、丸められた尖っていない形状で歯肉に接する突起状にすることも可能である。
【0030】
次に、図5の背面図によると、接触部110が基部140に覆い被さり、また、
基部140に磁石130a、130bが埋め込まれている。
この磁石130a、130bは、直径5mm、厚み3mmの表面磁束密度130ミリテスラ(1300ガウス)のフェライト磁石であり、基部140を貫通しない程度の深さで填め込まれている。また、この磁石は歯茎マッサージ部の表面に暴露されていないことで、唾液に接触することによる腐食を抑えることができる。すなわち、磁石は完全に基部140内に埋入することが好適である。なお、基部140を貫通して接触部110を突き抜けない程度に備えることも可能である。
この磁石は、表面磁束密度80ミリテスラ(800ガウス)〜180ミリテスラ(1800ガウス)程度が、医療用磁石の規制に適合するために好適である。しかし、80ミリテスラ未満の表面磁束密度の磁石や、180ミリテスラを超える表面磁束密度の磁石も、理論的には使用可能である。また、磁石はサマリウム磁石やネオジム磁石等の希土類磁石でもよい。
この2つの磁石の磁気による血流改善効果と、振動による電磁作用との相乗効果により、歯茎の血行促進効果が得られる。特に、歯周病で痛んだ歯茎に有効である。
なお、この磁石としては、電磁石として作用する磁気ヘッド等を装着することもできる。加えて、ヒーターや赤外線LED等を付加して、更なる血流改善効果を得ることも可能である。温熱とマッサージを同時に行うと、血流改善の相乗効果があるためである。
また、ペルチェ素子等を装備して、振動後に作動させて歯茎を冷却することで、歯茎の引き締め効果を得ることもできる。
【0031】
ここで、歯茎マッサージ部10を本体部20に接続して歯茎マッサージを行う際の動作について説明する。
上述したように、本体部20は、電動歯ブラシのうち振動歯ブラシと同等な機構を備えており、歯茎マッサージ部10を振動させることができる。
本発明の発明者が鋭意実験と検討を行ったところ、本発明の電動歯茎マッサージャーにおいては、ブラッシングによる歯垢除去が目的ではなく、歯茎のマッサージ効果が目的であるため、上述の音波歯ブラシや超音波歯ブラシ等のような高速振動は必要ないことが分かった。
実際に検討を行ったところ、500回/分〜2500回/分程度が好適であることが分かった。特に、歯周病が進行して歯肉の炎症が進んでいる患者に対しては、2000回/分程度の振動数が最適であり、もっとも歯周病の血流改善に効果がある。
また、500回/分以下では、磁気による血行促進効果があまり高まらないために、あまり好ましくない。
さらに、3000回/分本体部20の把柄部のモーターの振動数が増加すると、尖っていない半球により小数のポイントで接触していても、歯肉に対して過度な振動が加わることがあるため、好ましくない。実際に、5000回/分で振動させると、かなり強すぎることが分かった。
さらに、3000回/分以上であると、把柄部自体の振動で手が痺れて感覚が麻痺し、頭部のシリコン部の歯肉への接触感覚が低下するため、さらに歯周病で痛んだ歯茎にダメージを与える可能性があるため、好ましくない。
実際のところ、本発明の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーにおいては、磁石と電磁誘導による相乗効果があるためそれほど強い振動は必要ない。
【0032】
また、本発明の発明者が鋭意検討と実験を行ったところ、小数のポイントで歯茎に接触して、十分な振動を伝えるためには、接触部についた半球は、3cm2内に、最大3列まで、合計5〜10個程度とすることが望ましい。
【0033】
図6を参照すると、例えば、歯茎マッサージ部11のように、接触部111には、半球を6個形成することができる。
この歯茎マッサージ部11は、先端を歯茎マッサージ部10よりも丸みを帯びた形状としており、例えば、前歯の歯茎をマッサージするのに適している。
【0034】
本発明の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、以上のように構成することにより、以下のような顕著な効果を得ることができる。
まず、歯周病が進行すると、歯肉の結合組織が免疫系により破壊された炎症状態になっているため、歯肉の弾性や引っ張り強度等が著しくおちている。
このような状態で従来技術1の電動歯ブラシを使用すると、従来技術1では先の尖った錐状体を用いているため、手の力加減により強い圧力をかけたり、当てる時間を長くする等の使用で、歯の隙間や、歯周病の歯周ポケットに不用意な振動を与え、歯茎の歯肉を傷つけ、細かな傷をつける可能性があった。
この細かい傷から細菌が侵入して炎症を悪化させるため、歯周病を著しく悪化させる可能性があった。
よって、従来技術1の電動歯ブラシは、マニュアル(取り扱い説明書)をよく読んで使用する必要があった。
【0035】
また、従来技術2の電動歯ブラシは、シリコン製の毛が密集して植毛されており、これが歯茎に接触すると面接触に近い形状で接触する。
これにより、手の力加減により強い圧力をかけたり、当てる時間を長くしたりすると、歯周病で脆くなっている表面組織に、不用意な引っ張り力がかかって裂けるような損傷を与えることがあった。
同様に、従来技術1の電動歯ブラシも、密な状態で錐状体が植えられているため、同様に面接触に近い形状で強い力をかけると、裂けるような損傷を与えることがあった。
この裂けるような損傷は、治癒し辛いため、歯周病を著しく悪化させ、歯茎全体を炎症させる可能性があった。
【0036】
これに対して、本発明の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、生体親和性があり、生体に近い堅さのシリコンゴム等を使用している。
さらに、尖っておらず、概ね半球状の突起である半球を、密集しないように付加したことにより、小数のポイントで歯茎に振動を伝えることができる。すなわち、面接触とは異なる「点」状のポイントで歯茎に接触して振動を伝える。
このため、従来技術1や従来技術2のように、歯周病で弱っている歯茎の組織に損傷を与える危険性をきわめて低く抑えることが可能になる。
これにより、悪化した歯周病のさらなる症状の進行を抑えることが可能になる。
【0037】
また、本発明の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、傷がつきにくい構造のため、使い方がよく分からなかった高齢者等の方や、手の不随意運動が大きいような高齢者等の方でも、安全に歯茎マッサージを行うことができるという効果が得られる。
加えて、特に、直接歯茎と接する接触部に形成された半球であるために、半球が小数のポイントで歯茎と接する。このため、より歯茎の感覚点に均等に分かりやすい刺激を与えることができるため、かけられた圧力を把握しやすい。このため、圧力のかけ過ぎによる歯茎組織の損傷を抑えることができるという効果が得られる。
【0038】
また、従来技術1の電動歯ブラシは、500回/分以上の振動を加えると記載されているが、先の尖った錐状体を用いているため、これ以上の振動を与えると歯茎に損傷を与えるために振動数を落としており、歯茎をマッサージするための振動が実際にはうまく伝わらないという問題があった。このため、錐状体を強く歯茎に当てがちであり、歯周病で弱くなった歯茎を損傷する問題があった。
また、従来技術2の電動歯ブラシは、段落〔0019〕を参照すると、従来の音波ブラシと同様に、250〜260Hzで高速駆動されており、過度の振動が歯茎に伝えられるという問題があった。加えて、高速駆動に係る振動により、手先が痺れて感覚が鈍り、手の力加減を誤ってより強い圧力をかけがちであり、これにより歯周病で脆くなった歯茎に損傷を与えるという問題があった。
【0039】
また、従来、磁石により血流を改善する方法は知られていた(例えば、ピップフジモト株式会社製、ピップエレキバン(登録商標)等を参照)。
しかし、歯茎マッサージ時に、短時間、振動とともに磁力を加えるということは想定されていなかった。
【0040】
これに対して、本発明の実施の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、振動による歯茎のマッサージ効果に加えて、磁石を装着したことによって、特に歯周病の症状改善に効果がある血流改善効果を得ることができる。
すなわち、本体部20の振動機構により、500回/分〜2500回/分程度の従来の振動歯ブラシと同程度の振動数にて磁石のついた歯茎マッサージ部を振動させるだけで、従来技術1又は2よりも効率の高い歯茎マッサージ効果と血流改善効果を得ることができる。
これは、振動により、ほぼ至近距離で磁場が動くと、接触した歯肉内の鉄を含むヘモグロビン等を含む赤血球や他の組織に、電磁誘導作用が起こるためであると考えられる。
また、電場の発生により免疫系を調整し、放電効果による細菌の細胞壁を破壊する効果もあることが考えられる。
実際に、本発明の実施の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーを用いて、一日に数分程度、歯茎マッサージを行うことで、歯周病で慢性的な炎症を起こしている歯茎の血流が改善され、劇的に歯周病の治療効果が高まる。
【0041】
また、本発明の実施の実施の形態に係る電動歯茎マッサージャーは、磁気により血行改善に効果があるため、例えば口の中の傷や口内炎等の創傷治癒にも有効である。
さらに、上述したような温熱効果や赤外線LEDの光の作用との相乗効果により、さらに血流を改善することで、創傷治療により有効性が得られる。
【0042】
また、近年、歯周病の原因又は併発する症状として、真菌であるカンジダが、歯周ポケットから慢性的に炎症している歯肉へ感染していることが示されている。
このカンジダにより、免疫反応が引き起こされ、毛細血管の周囲の結合組織が破壊される。よって、コラーゲンの線維が弛緩し、毛細血管の環径が増すことで、血管内の内圧が低下する。そのため、周囲の組織にしみ出す酸素が減り、末端の組織において低酸素症が発生して、細胞が壊死するという症状がおこる。細胞が壊死すると、毒素を周囲に放出し、これによりさらに細胞が壊死する。このサイクルが繰り返されることにより、歯周組織が次第に破壊されて、遂に歯が抜けるという症状が起こる。
ここで、本発明の電動歯茎マッサージャーでは、このようなカンジダの感染により進行した歯周病において、脆くなった歯周組織に極力ダメージを与えずに、さらに血流を大きく改善することで、壊死した細胞の除去と歯周組織の再生に効果が得られる。
【0043】
また、近年、タバコのニコチンや、ストレスによる歯肉への影響が分かってきている。すなわち、喫煙や過度のストレスにより、歯肉への血行障害を引き起こすことが知られてきている。
また、歯性病巣感染が起こり、歯周病菌が心臓に侵入すると、細菌性心内膜炎、心筋梗塞を増悪させることもわかってきている。
このため、磁気による血行改善で歯周病を改善することが重要である。
【0044】
このように、本発明の電動歯茎マッサージャーにより、進行した歯周病の改善効果により、高齢化社会における、クオリティ・オヴ・ライフを高めることができるという効果が得られる。
【0045】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る従来の電動歯ブラシの概念図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る電動磁石歯茎マッサージャーの外観図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る歯茎マッサージ部10の断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る歯茎マッサージ部10の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る歯茎マッサージ部10の背面図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る歯茎マッサージ部11の正面図である。
【符号の説明】
【0047】
10、11 歯茎マッサージ部
20 本体部
30 充電器
100 頭部
110、111 接触部
120a〜120g、121a〜121f 半球
130a、130b 磁石
140 基部
150 頸部
210 電源スイッチ
310 充電ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1方向に振動可能な軸部の先端部に、生体親和性のある接触部と、磁石とを備え、
前記接触部に、突起が形成されている
ことを特徴とする歯茎マッサージ部。
【請求項2】
前記半球状の突起は、直径2.5〜5.5mmの半球状であり、
前記接触部に1列又は複数列形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の歯茎マッサージ部。
【請求項3】
前記先端部に、80ミリテスラ〜180ミリテスラの磁石が、
前記先端部に2つ以上埋め込まれている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の歯茎マッサージ部。
【請求項4】
前記先端部は、500回/分〜2500回/分で振動する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の歯茎マッサージ部。
【請求項5】
前記接触部は、前記先端部が先細りになるように形成し、
前記先細りに形成された箇所に、前記突起が少なくとも1つ形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の歯茎マッサージ部。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の歯茎マッサージ部は、
振動させる駆動機構を備えた本体部と脱着可能に取り付けられる
電動歯茎マッサージャー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の歯茎マッサージ部の前記先端部を500回/分〜2500回/分で振動させる
ことを特徴とする歯茎マッサージ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−189431(P2009−189431A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30796(P2008−30796)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(508044416)
【Fターム(参考)】