説明

残土処理装置

【課題】改良材などが不要であり、また、一次処理設備(振動ふるい)や二次処理設備(圧縮プレス)が不要で、環境を考慮した処理が可能なもので、かつ、処理土の含水率を効果的に下げることが可能な残土処理装置を提供する。
【解決手段】残土ピット12は壁体構造と、上部を鋼製蓋15あるいはシート類で覆うことで気密性を保てるものであり、この残土ピット12に真空強制排水設備23を設置し、該真空強制排水設備23により掘削残土に含まれる水分を脱水乾燥させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘドロ浚渫工事などにおいて発生する高含水状態の軟弱な土砂や汚泥、泥水式、土圧式のシールド工事による掘削土などの高含水土の水分を脱水し、含水比を低下させるための残土処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールド掘削機によって掘削された掘削土を還流泥水によって排出し、排土処理したあとの泥水を再び、掘削土の排出用還流泥水として使用する循環方式は別として、バッチ処理の方式では、一般に、掘削によるシルトなどを含んだ粘性土、浚渫による汚泥、泥水シールド工法による掘削泥土などの土木工事に伴う排出残土には含水比が極めて高いものが少なくなく、このような高含水土は産業廃棄物として扱われ、これを投棄するためには少なくとも含水比を低下させて普通残土として処理する必要がある。
【0003】
従来の高含水土の処理法としては、専らセメント、石灰などの固化材を混合撹拌して固化する方法が実施されているが、多量の高含水土を処理するためには固化材の材料費としての多額の費用を要し、しかも固化材として安価なセメントなどの強アルカリ材料を使用する場合にはPH値の高い処理土となり、 アルカリ汚染公害の問題があった。
【0004】
また、下記特許文献にあるように、土砂を脱水する装置であって、脱水すべき土砂を収めるため上部に開口部を有した槽体と、前記開口部を着脱自在に塞ぐシート体と、前記槽体内に備えられて複数の孔が形成された脱水管と、前記脱水管に接続されて前記脱水管内に負圧を発生させる負圧源とを備えて構成されていることを特徴とする土砂脱水装置も提案されており、似たような装置としては、地中に設けた排水ピット内に高含水土を入れ、その水分を砕石や網状管などで構成した底部瀘過層に排水して吸水パイプにより汲み上げることにより、含水比を低下させて普通残土として処理する方法も知られている。
【特許文献1】特開2000−230246号公報
【0005】
この特許文献1の土砂脱水装置は、図4に示すように、土砂脱水装置1は、槽体2と、シート体3と、脱水管4と、ポンプ(負圧源)5と、バイブレータ(起振機構)6とから概略構成されている。
【0006】
槽体2は、鋼製で、その上部は脱水すべき土砂Dを収めるための開口部7とされている。
【0007】
シート体3は、可撓性を有し、かつある程度の気密性を有した材料であることが好ましく、例えばビニール製、ゴム製等のものが好適である。このシート体3は、開口部7を塞ぐように槽体2に被せられ、その外周部の全周が例えば粘着テープ等によって槽体2に着脱自在に固定される。
【0008】
脱水管4は、例えばウェルポイント等、内外を連通する孔4aが多数形成されたもので、槽体2の内部に図示しないブラケット等によって固定されており、少なくともその一端が槽体2を貫通して外部の接続ホース8に接続されている。また、この脱水管4には、その外周面に、孔4aに土砂Dを構成する粒状体が流入するのを防ぐために例えばスポンジ状のフィルター9が装着されている。このような脱水管4は、槽体2内に例えば複数本が備えられて固定されている。
【0009】
ポンプ5は、接続ホース8を介して各脱水管4に接続されている。このポンプ5を作動させると接続ホース8を介して脱水管4の内部が負圧になり、各孔4aにおいては吸引力を発揮するようになる。
【0010】
バイブレータ6は、例えば槽体2の外周面に装着されており、これを作動させて振動を発生させると、その振動が槽体2を介して槽体2内の土砂Dに伝達されるようになっている。
【0011】
このような土砂脱水装置1では、脱水すべき土砂Dを、開口部7から槽体2内に入れた後、開口部7をシート体3で塞ぎ、シート体3の全周を槽体2に固定して密封し、ポンプ5を作動させる。すると、ポンプ5で発生する負圧力によって各脱水管4の内部が負圧になり、各孔4aにおいて吸引力を発揮する。この吸引力はフィルター9を介して槽体2中の土砂Dに作用し、フィルター9を通過可能な土砂D中の水のみが孔4aから脱水管4内に吸い込まれ、接続ホース8およびポンプ5を通って外部に排出される。
【0012】
また、上記ポンプ5の作動時には、バイブレータ6を同時に作動させる。すると、バイブレータ6の振動が槽体2を介して内部の土砂Dに伝達され、土砂D中に含まれる水が土砂D内で流れやすくなり、より効率良く脱水が行われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、前記特許文献1のものでは、ポンプ5を作動させて、脱水管4の内部を負圧にして、各孔4aにおいては吸引力を発揮するようにしたものであり、脱水管4の吸引力のみで土砂中の水を脱水するので、ポンプ5の能力にも限界があり、十分な脱水効果が得られない。
【0014】
特に、吸引力はフィルター9を介して槽体2中の土砂に作用させるものであるので、該フィルター9の目詰まり等で、吸引力が働かないおそれがある。
【0015】
バイブレータ6の作動は、このような吸引力の低下を補うものとされるが、振動を与えるものは、部分的な作用になり易く、また、大規模な処理には不向きである。
【0016】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、改良材などが不要であり、また、一次処理設備(振動ふるい)や二次処理設備(圧縮プレス)が不要で、環境を考慮した処理が可能なもので、かつ、処理土の含水率を効果的に下げることが可能な
残土処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記目的を達成するため請求項1記載の本発明は、残土ピットは壁体構造と、上部を鋼製蓋あるいはシート類で覆うことで気密性を保つもので脱水乾燥効果を促進させるものであり、この残土ピットに真空強制排水設備を設置し、該真空強制排水設備により掘削残土に含まれる水分を脱水乾燥させることを要旨とするものである。
【0018】
請求項1記載の本発明によれば、残土ピット内を気密にすることにより、真空強制排水設備を作用させ易い環境にして、該真空強制排水設備により掘削残土に含まれる水分を脱水乾燥させることができる。
【0019】
請求項2記載の本発明は、残土ピットの壁体構造は、鋼矢板または鋼管矢板を打設し、継ぎ手に止水材を使用したものであり、鋼矢板または鋼管矢板の頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置して、その上に鋼製蓋を載置することを要旨とするものである。
【0020】
請求項2記載の本発明によれば、残土ピットの壁体構造を鋼矢板または鋼管矢板を打設し、継ぎ手に止水材を使用したものとすることで、大型の残土ピットを気密構造に形成でき、しかも、鋼矢板または鋼管矢板の頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置することで、大型ながらも鋼製蓋を密着させて、気密性を維持できる。なお、この鋼製蓋はクレーン付バックホウで開閉できるものとすれば、簡易に開閉できるが、ゴムパッキンを介在させて笠コンクリートの上に載置するだけでよいので、取り扱い容易である。
【0021】
請求項3記載の本発明は、残土ピットの壁体構造は、地下連続壁であり、頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置して、その上に鋼製蓋を載置することを要旨とするものである。
【0022】
請求項3記載の本発明によれば、前記請求項2と同様で、残土ピットの壁体構造に地下連続壁を利用することで、大型の残土ピットを気密構造に形成でき、しかも、鋼矢板または鋼管矢板の頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置することで、大型ながらも鋼製蓋を密着させて、気密性を維持できる。なお、この鋼製蓋はクレーン付バックホウで開閉できるものとすれば、簡易に開閉できるが、ゴムパッキンを介在させて笠コンクリートの上に載置するだけでよいので、取り扱い容易である。
【0023】
請求項4記載の本発明は、残土ピットの壁体構造は、市販の鋼製タンクの壁体であり、上部をシート類で覆うことを要旨とするものである。
【0024】
請求項4記載の本発明によれば、市販の鋼製タンクを利用することで、簡易タイプのものとすることができ、陸上設置での処理も可能である。
【0025】
請求項5記載の本発明は、真空強制排水設備は、残土ピット底部に横向きに配置する集水用排水管とこの集水用排水管が接続し、内部に排水ポンプを備えた縦向きの真空強制排水管からなることを要旨とするものである。
【0026】
請求項5記載の本発明によれば、真空強制排水設備として好適な例であり集水用排水管では空気をすわず、水のみを吸引し、集水用排水管では排水ポンプを真空ポンプで真空に引き、集水用排水管内に流入した水を効率的に地上に排出させることが出来きる。
【発明の効果】
【0027】
以上述べたように本発明の残土処理装置は、改良材などが不要であり、また、一次処理設備(振動ふるい)や二次処理設備(圧縮プレス)が不要で、環境を考慮した処理が可能なもので、かつ、処理土の含水率を効果的に下げることが可能なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明の残土処理装置の第1実施形態を示す説明図で、図中11は地中に形成する土ピットである。
【0029】
本実施形態では、残土ピット12は、壁体構造として鋼矢板10または鋼管矢板を打設し、継ぎ手10aに止水材を使用して気密壁とした。鋼管矢板を例にとると、継ぎ手10aには「C」字形のものや、「T」字形のものが使用されるが、その相互結合の隙間に、モルタルや水膨潤性の止水材を充填すればよい。
【0030】
この残土ピット12の底は重量コンクリートによる耐圧版11で閉塞し、この耐圧版11上方に、真空強制排水設備23の集水用排水管19を横向きに配置し、該集水用排水管19に接続する真空強制排水管20を残土ピット12の内側に縦向きに配設する。
【0031】
真空強制排水管20は内部に排水ポンプ22を備え、排水ポンプ22によって汲み上げられた水を地上に排水させる排水管(図示せず)などが備えられており、真空ポンプ16で排水ポンプ22を真空に引き、集水用排水管19内に流入した水を地上に排出させることが出来るようになっている。
【0032】
図中17は貯留水槽であるが、ここに貯留した水は、濁水処理に回す。
【0033】
また、前記集水用排水管19は、通水孔を有する集水管とその外周囲を覆うように取り付けたストレーナ部材との組合せによるものであり、空気は吸わず、水のみを吸引できるようにした。
【0034】
前記鋼矢板10または鋼管矢板の頭部に笠コンクリート13を設置し、笠コンクリート13の天端にゴムパッキン14を設置して、その上に鋼製蓋15を載置するようにする。該笠コンクリート13は、内部に鋼矢板10または鋼管矢板の頭部を埋設して形成するコンクリート製の枠体であり、鋼製蓋15の載置台として形成される。
【0035】
一方、鋼製蓋15は重量物であり、クレーン付バックホウ18で開閉できるように提手14aを設けている。
【0036】
このようにして、泥水式、土圧式のシールド工事による掘削残土などの高含水土を残土ピット12に貯め、鋼製蓋15により閉塞して残土ピット12を気密なものとした上で、真空強制排水設備23で脱水を行えば、真空の力を利用して「土」と「水」とが分離され、乾燥した土が得られる。
【0037】
図2は本発明の第2実施形態を示すもので、残土ピット12の壁体構造を、地下連続壁21としたものである。地下連続壁21はSMW(Soil Mixing Wall工法:山留め工法のひとつ。地下躯体の外周に沿って、鉄骨を芯材とした連続壁を構築し山留め壁とする。ソイル山留め杭打ち機によって、セメントスラリー(セメント・ベントナイト・水の混合液体)を排出しながら削孔を行い、地中の土と混合させ地盤改良を行い、掘削時の山崩れを防ぐ。)、TRD(TRD工法:地中にチェーンソウ状のカッタポストとカッタチェーンを差し込み、それを一気に横引きすることで地盤を掘削し、掘削した原地盤土砂とカッタポスト下端部からセメントスラリーを攪拌しながらソイルセメント連続壁を施工する工法)、その他の地中連続壁工法での施工が採用できる。
【0038】
なお、他の構成、地下連続壁21の頭部に笠コンクリート13を設置し、笠コンクリート13の天端にゴムパッキン14を設置して、その上に鋼製蓋15を載置することや、真空強制排水設備23を設置することなどは前記第1実施形態と同一である。
【0039】
図3は本発明の第3実施形態を示すもので、残土ピット12は、これを市販またはリースされている鋼製のタンク25を使用して形成するものとした。小型ノッチタンクから大型円形タンクまで適用が可能である。さらに、地中のみならず、陸上設置での処理も可能となる。
【0040】
この第3実施形態は簡易タイプであり、フタもブルーシートなどのシート24類による簡易なもので、ある程度の脱水乾燥の促進効果を確保するようにした。なお、残土の処理において、ある程度、水分を含んでも良い場合で、経済性を重視するものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の残土処理装置の第1実施形態を示す説明図である。
【図2】本発明の残土処理装置の第2実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明の残土処理装置の第3実施形態を示す説明図である。
【図4】従来例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…土砂脱水装置 2…槽体
3…シート体 4…脱水管
4a… 孔 5 …ポンプ(負圧源)
6…バイブレータ(起振機構) 7… 開口部
8…接続ホース 9…フィルター
D…土砂
10…鋼矢板 10a…継ぎ手
11…耐圧版 12…残土ピット
13…笠コンクリート 14…ゴムパッキン
15…鋼製蓋 14a…提手
16…真空ポンプ 17…貯留水槽
18…クレーン付バックホウ 19…集水用排水管
20…真空強制排水管 21…地下連続壁
22…排水ポンプ 23…真空強制排水設備
24…シート 25…タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残土ピットは壁体構造と、上部を鋼製蓋あるいはシート類で覆うことで気密性を保つもので脱水乾燥効果を促進させるものであり、この残土ピットに真空強制排水設備を設置し、該真空強制排水設備により掘削残土に含まれる水分を脱水乾燥させることを特徴とした残土処理装置。
【請求項2】
残土ピットの壁体構造は、鋼矢板または鋼管矢板を打設し、継ぎ手に止水材を使用したものであり、鋼矢板または鋼管矢板の頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置して、その上に鋼製蓋を載置する請求項1記載の残土処理装置。
【請求項3】
残土ピットの壁体構造は、地下連続壁であり、頭部に笠コンクリートを設置し、笠コンクリートの天端にゴムパッキンを設置して、その上に鋼製蓋を載置する請求項1記載の残土処理装置。
【請求項4】
残土ピットの壁体構造は、市販の鋼製タンクの壁体であり、上部をシート類で覆う請求項1記載の残土処理装置。
【請求項5】
真空強制排水設備は、残土ピット底部に横向きに配置する集水用排水管とこの集水用排水管が接続し、内部に排水ポンプを備えた縦向きの真空強制排水管からなる請求項1ないし請求項4記載の残土処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−249863(P2009−249863A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−96974(P2008−96974)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】