説明

段積み物品の整列装置

【構成】 段積みした複数のトレイ2間に爪26を進入させ、チェーン28で爪26を上昇させると、爪26間のチェーンのリンクにより爪26間に間隙が生じ、トレイ2を段ばらしできる。段ばらししたトレイ2のフレーム4をプッシャ32で押し、トレイ2を整列させる。
【効果】 段積みした複数のトレイを一括して整列させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は段積みした物品の整列に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は液晶基板等をトレイに搭載して搬送するシステムを開発しており、特許文献1(特願2006−8646号)で段積みしたトレイから1枚ずつトレイを切り出すシステムを提案した。トレイを段積みするには、平面視での上下のトレイ間の位置ずれを許容範囲内に収める必要がある。このためトレイの整列が必要になるが、段積みした状態ではトレイ間の摩擦力などにより、トレイを整列させることは難しい。
【特許文献1】特願2006−8646号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の課題は、段積みした物品を簡単に整列させることにより、物品の積み増しを容易にすることにある。
請求項2の発明での追加の課題は、簡単な機構により物品間に間隙を設けて、段積み物品を一括して整列できるようにすることにある。
請求項3の発明での追加の課題は、爪の昇降動作を安定させると共に、複数の爪を一括して進退できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明の段積み物品の整列装置は、複数の物品を上下に重ねた段積み物品に対して、少なくとも最上段の物品とその下段の物品との間に間隙を設けるための間隙形成手段と、少なくとも最上段の物品の平面視での姿勢を矯正するための矯正手段とを設けたことを特徴とする。
【0005】
好ましくは、間隙形成手段は、物品を支持するための進退自在でかつ上下に配置された複数の爪と、前記複数の爪を互いに結合するリンクと、前記複数の爪を昇降させるための昇降手段、とを備えている。
特に好ましくは、前記複数の爪の昇降をガイドするガイドと、該ガイドを進退させるための進退動手段とをさらに設ける。
【発明の効果】
【0006】
この発明では、最上段の物品とその下段との間に間隙を設けて、最上段の物品を整列させるので、段積み物品を整列させることができる。そして段積み物品を整列させると、別の物品を1段ないし複数積み増すことが容易になる。例えば係合用の凹部や凸部を設けた物品の場合でも、凹部と凸部とが正確に重なるように整列させることができるので、積み増しを容易にできる。
【0007】
物品を支持するための進退自在でかつ上下に配置された複数の爪と、前記複数の爪を互いに結合するリンクと、前記複数の爪を昇降させるための昇降手段とを設けると、爪を上昇させることにより、爪の間の間隔をリンクで許される最大間隔にできる。また爪を下降させると、爪の間の間隔を最小にして通常の段積み状態に戻すことができる。さらにどの爪までを上昇させるかを制御すると、どの爪から上側の間隔を大きくするかを制御できる。そして間隙を設けた物品に対して矯正手段を作用させると、複数の物品を一括して整列させることができる。
【0008】
複数の爪の昇降をガイドするガイドと、該ガイドを進退させるための進退動手段とをさらに設けると、爪の昇降動作をガイドして安定させることができ、また複数の爪を物品に作用する位置としない位置との間で一括して進退動できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0010】
図1〜図7に実施例を示す。図1〜3は整列対象の物品であるトレイ2を示し、液晶基板などの板状部材を載置するためのものであり、トレイ2に載置する部材の種類は任意である。トレイ2は、前後左右にフレーム4を備え、トレイ2の底面には複数の桟6を設けて、その間を開口9とする。トレイ2への板状部材の出し入れ時には、図示しない移載装置から開口9を上下に通過するようにローラを上昇させて、板状部材をフレーム4を越えて出し入れする。またフレーム4には複数の突起7を設けると共に、突起7の下部の位置でフレーム4の裏面にスペーサ8を配置して、スペーサ8の中央部底面に設けた凹部12と、下段のトレイの突起7を係合させ、複数のトレイ2を上下に重ねて段積みする。またスペーサ8の底部に支持面10,10を設けて、後述の爪26によりトレイ2を支持できるようにする。
【0011】
凹部12と突起7の間には僅かな隙間が有るので、トレイ2を段積みすると、突起7に対する凹部12の係合位置のばらつきが蓄積して、段積み方向が鉛直から僅かにずれることがある。段積みしたトレイの上部に別の段積みトレイを積み増す場合、段積みされる側の最上部のトレイの位置が正しくないと、凹部12と突起7とが正確に係合しないため、段積みトレイの積み増しが難しくなる。そこで段積みトレイの積み増しのためにトレイの整列が必要で、特に最上部のトレイを整列させる必要がある。
【0012】
図4に段積みトレイの整列装置20を示す。21〜25はガイドレールで、ガイドレール21は上下に配置した複数の爪26の昇降をガイドする。ガイドレール22は進退自在な支持手段40の進退駆動部41を昇降させる。そしてガイドレール21は、上下の水平方向のガイドレール24,25に沿って、進退機構30により進退自在である。以下実施例では、トレイ2の側へ向けて、爪26や支持手段40が進出することを前進と呼び、トレイ2から遠ざかる方向に移動することを後退と呼ぶ。複数の爪26はチェーン28により結合され、図示しない駆動モータとスプロケット29により昇降自在である。また図4の上部に支持手段40で支持された段積みトレイ42を示し、段積みトレイをトレイ群と言うことがある。また整列装置で整列させるトレイ群の、最下段のトレイを支持する図示しない支持手段が設けられている。
【0013】
図5に爪26の昇降動作を示す。爪26はフレーム4に設けたスペーサ8の支持面10を支持し、また爪26はガイドレール21に沿って昇降自在である。さらにガイドレール21自体が進退機構30により水平なガイドレール24,25に沿って前後進自在である。上下に重ねられた爪26はチェーン28のリンクで結合され、その軸を36,37として示す。軸36は爪26に取り付けられ、軸36,36間に軸37があり、一対の爪26,26間には2つのリンク片があり、爪26は屈伸自在なリンクで互いの間隔を可変に連結されている。
【0014】
ここでチェーン28を巻き上げると、最上段の爪から上昇を開始し、上下の爪26,26間のリンクが伸張することにより、トレイ2,2間に所定の間隙が生じ、凹部12と突起7の係合が解除される。さらにチェーン28を巻き上げると、最上段から1つ下の爪が上昇を開始し、その1つ下の爪との間のリンクが伸張することにより、所定の隙間が形成される。このようにして爪と爪との間に所定の間隙を形成する。一方チェーン28を下ろすと、伸張状態にあったリンクが屈曲することにより、トレイ2は互いに接触し凹部12と突起7が係合する。チェーン28はエンドレスでもエンドレスでなくてもよい。このように、スプロケット29を駆動する1つのモータにより、トレイ2,2間に所定の間隙が形成されるように、複数の爪26を上昇させることができる。
【0015】
図5の32はプッシャ、34は進退駆動部で、ガイドレール21に取り付けられている。進退駆動部34はプッシャ32をフレーム4に向けて進退させる。前進時にプッシャ32は、スペーサ8の中央部、即ち支持面10,10間の領域に当接して、トレイ2を整列させる。進退駆動部34は、高さが固定でも、爪26と共に昇降自在でもよい。実施例ではプッシャ32により複数のトレイ2を一括して整列させるが、段積みトレイの最上段のトレイのみを整列させてもよい。
【0016】
チェーン28を巻き上げることにより、段積みトレイのトレイ間に間隙を設ける。間隙は、最上段のトレイとその下段のトレイとの間に最初に設けられ、順次下側の段のトレイ間にも間隙が設けられる。間隙を設けた後に、進退駆動部34によりプッシャ32を前進させると、複数のトレイを一括して整列させることができる。爪26の昇降により段積みしたトレイ間に間隙を設けることができる。
【0017】
図6に、段積みトレイに対してプッシャ32を動作させた状態を示す。トレイ2は図1の支持面10で爪26により支持され、上下のトレイ間に間隙が設けられている。この状態でプッシャ32が、スペーサ8の位置で、左右のフレーム4,4に同時に動作し、トレイ2を整列させる。
【0018】
図7に、爪26と支持手段40間の段積みトレイの受け渡しを示す。支持手段40を進退駆動部41でトレイ2側へ前進させると、段積みトレイを支持可能な状態となる。この状態の支持手段40上に、図示しない搬送手段によって段積みトレイを供給する。段積みトレイが載置された支持手段40は、支持している最下段のトレイが、整列装置20によって整列された最上段のトレイに支持される位置まで、下降する。この状態で支持手段40を後退させると、トレイの積み増しが完了する。
【0019】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) 段積みトレイに対して、上下のトレイ間に間隙を設け、一括して全てのトレイを整列させることができる。
(2) 爪26とチェーンのリンクとを用いることにより、段積みトレイに簡単にトレイ間の間隙を設け、逆に上下のトレイを接触させることができる。
(3) ガイドレール21を進退自在にすることにより、複数の爪26を容易に一括して進退させることができる。

【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例で用いるトレイの平面図
【図2】実施例で用いるトレイの側面図
【図3】実施例でトレイを段積みした際の要部側面図
【図4】実施例の段積みトレイの整列装置の正面図
【図5】実施例の段積みトレイの整列装置で要部正面図で、段ばらし機構を示す
【図6】実施例の段積みトレイの整列装置の要部平面図
【図7】図6から、プッシャを後退させて支持手段を前進させた状態を示す図
【符号の説明】
【0021】
2 トレイ
4 フレーム
6 桟
7 突起
8 スペーサ
9 開口
10 支持面
12 凹部
20 段積みトレイの整列装置
21〜25 ガイドレール
26 爪
28 チェーン
29 スプロケット
30 進退機構
32 プッシャ
34,41 進退駆動部
36,37 軸
40 支持手段
42 段積みトレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の物品を上下に重ねた段積み物品に対して、少なくとも最上段の物品とその下段の物品との間に間隙を設けるための間隙形成手段と、少なくとも最上段の物品の平面視での姿勢を矯正するための矯正手段とを設けたことを特徴とする、段積み物品の整列装置。
【請求項2】
間隙形成手段は、物品を支持するための進退自在でかつ上下に配置された複数の爪と、前記複数の爪を互いに結合するリンクと、前記複数の爪を昇降させるための昇降手段、とを備えていることを特徴とする、請求項1の段積み物品の整列装置。
【請求項3】
前記複数の爪の昇降をガイドするガイドと、該ガイドを進退させるための進退動手段とをさらに設けたことを特徴とする、請求項2の段積み物品の整列装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−179462(P2008−179462A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−15730(P2007−15730)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)