殺菌・不活化装置及びこれを用いた空気清浄装置
【課題】空気中に存在する細菌類を効率良く殺菌し、且つウィルスを効率良く不活化することのできる殺菌・不活化装置を提供する。
【解決手段】複数の開口部15が設けられた対向電極14と、該対向電極14と絶縁され、開口部15の略中心部に先端が位置する針状電極18とを有し、対向電極14をグランド電圧とし、針状電極18に負極性の高電圧を印加する。その結果、開口部15の周囲にサークルプラズマが発生し、開口部15内の空間が高励起密度状態となり、該開口部15内の空間に活性種が発生する。そして、給気口11bより導入した空気を、この開口部15内に通すことにより、空気中に含まれる細菌類及びウィルスと活性種とを接触させ、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【解決手段】複数の開口部15が設けられた対向電極14と、該対向電極14と絶縁され、開口部15の略中心部に先端が位置する針状電極18とを有し、対向電極14をグランド電圧とし、針状電極18に負極性の高電圧を印加する。その結果、開口部15の周囲にサークルプラズマが発生し、開口部15内の空間が高励起密度状態となり、該開口部15内の空間に活性種が発生する。そして、給気口11bより導入した空気を、この開口部15内に通すことにより、空気中に含まれる細菌類及びウィルスと活性種とを接触させ、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれるカビや細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置、及びこれを用いた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中に存在する塵埃を除去し、且つ、カビ、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する装置として、例えば特開2007−305417号公報(特許文献1)に記載された空気清浄機、或いは特開2005−300111号公報(特許文献2)に記載された空気調和装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、空気清浄機の吹出口近傍にイオン発生装置を設け、該イオン発生装置より正イオン、負イオンを発生させて、清浄化した空気と共に正イオン、負イオンを室内に放出し、室内に浮遊する細菌類やウィルスと反応させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することが記載されている。また、特許文献2には、ストリーマ放電により活性種を発生させ、この活性種を、空気の流れによりチタンアパタイト担持フィルタに供給し、導入された空気中に含まれる細菌類、ウィルスをこのチタンアパタイト担持フィルタに接触させることにより、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305417号公報
【特許文献2】特開2005−300111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、イオン発生装置で発生させたイオンを室内に放出することにより、室内の空気中に存在する細菌を殺菌し、ウィルスを不活化する方式であるので、使用する部屋の空間が大きい場合には、空間全体の空気量に対して発生するイオンの量が相対的に少なくなり、効果的に細菌、ウィルスを除去することができないという問題が発生する。
【0006】
また、特許文献2では、ストリーマ放電により発生した活性種をチタンアパタイト担持フィルタに供給し、該チタンアパタイト担持フィルタと接触した細菌類、ウィルスを除去する構成であるので、装置内に導入した空気に対して活性種が均一に接触しないことがあり、効率良く空気中の細菌、ウィルスを除去できないという欠点があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、導入した空気中に存在する細菌類の殺菌効率、及び、ウィルスを不活化する不活化効率を向上させることが可能な殺菌・不活化装置、及びこれを用いた空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の殺菌・不活化装置は、給気口より導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化して放出口より放出する殺菌・不活化装置において、少なくとも1つの開口部が形成された平板形状をなし、前記給気口より導入した空気が前記開口部を通過するように配置された板状電極と、前記板状電極の下流側に設けられ、前記給気口より外部空気を導入する送風ファンと、針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記板状電極は、表面が前記導入した空気の流れに対して略直交する方向を向くように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記開口部は、円形、楕円形、または正多角形のいずれかの形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記第2電圧を、前記第1電圧に比べ相対的に負極性としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記針状電極の先端部は、前記開口部の中心の、前記板状電極と同一面となる位置に設置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記電源は、前記開口部の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となるように、前記第1電圧、第2電圧を設定することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記高励起密度状態は、前記開口部の内部にプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する状態であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記板状電極の下流側に、所定の空間を有する反応チャンバーを設けることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の空気清浄装置は、空気中に含まれる塵埃を除去し、且つ細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する空気清浄装置において、外部空気を導入する吸込口、及び清浄化した空気を外部に放出する吹出口と、前記吸込口から前記吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段と、前記吸込口と吹出口との間に配置され、前記吸込口より吸引した空気中に含まれる塵埃を除去する空気清浄手段と、前記吸込口と吹出口の間に配置され、空気中の細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置と、を備え、前記殺菌・不活化装置は、平板形状をなし、少なくとも1つの開口部が形成され、且つ表面が前記空気流の方向に対して略直交するように配置された板状電極と、針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記殺菌・不活化装置は、更に、前記板状電極の下流側に、前記空気流の一部を前記開口部内を通過させる送風ファンを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る殺菌・不活化装置では、給気口より導入した外部空気を開口部内に通過させ、針状電極と板状電極(対向電極14)との間で放電を発生させる。そして、開口部の周囲にサークルプラズマが発生し、該開口部内に高エネルギー電子、イオン等の活性種が発生するので、給気口より導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスをこの活性種と効率良く反応させることができ、細菌類を効率良く殺菌し、且つウィルスを効率良く不活化することができる。更に、放電により発生した活性種の一部は装置の外部に放出されるので、この活性種が外気中に存在する細菌類及びウィルスと反応し、外気中の細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0019】
請求項2の発明では、板状電極が空気流に対して略直交して配置されるので、活性種が発生する開口部の空間に対してほぼ直交して空気流を通過させることができ、活性種との反応を促進させることができるので、細菌類を効率良く殺菌し、ウィルスを効率良く不活化することができる。
【0020】
請求項3の発明では、開口部の形状を円形、楕円形、或いは正多角形のうちのいずれかとしたので、開口部の周囲にサークルプラズマを発生させ易くなり、活性種を効率良く発生させることができる。
【0021】
請求項4の発明では、針状電極に印加する第2電圧を、板状電極に印加する第1電圧に比べ、相対的に負極性とすることにより、開口部の内部空間を容易に安定した高励起密度状態とすることができ、高エネルギーやイオン等の活性種を効率良く発生させることができる。
【0022】
請求項5の発明では、針状電極の先端部が、開口部中心の、板状電極と同一面となる位置に設けられるので、針状電極と板状電極との間の放電を容易に発生せることができ、開口部の内部空間を容易に膜状の高励起密度状態とすることができる。
【0023】
請求項6の発明では、針状電極と板状電極との間に放電が発生し、且つ、開口部内に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となる放電電流が流れるように、第1電圧及び第2電圧が印加されるので、開口部の内部空間に効率良く活性種を発生させることができる。
【0024】
請求項7の発明では、開口部の内部が、プラスイオン、及びマイナスイオンが混在する高励起密度状態とされるので、開口部及びその下流領域に効率良く活性種を発生させて、ウィルスを不活化することができる。
【0025】
請求項8の発明では、板状電極の下流側に所定の空間を有する反応チャンバーが設けられるので、導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスが活性種と接触した後、この反応チャンバー19内で反応を促進させることができ、細菌類を効率よく殺菌し、且つ、ウィルスを効率よく不活化することができる。
【0026】
また、請求項9に記載の空気清浄装置では、空気清浄手段により空気中に存在する塵埃を除去することができ、且つ、空気清浄装置内に導入した空気の一部或いは全体を空気清浄装置内に設けられた殺菌・不活化装置を通過させることにより、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0027】
請求項10の発明では、空気清浄装置内に設けられる殺菌・不活化装置に送風ファンが設けられるので、殺菌・不活化装置内に効率良く空気を導入させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置に用いられる放電電極及び対向電極の詳細を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置を用いてウィルスの不活化処理を行う試験空間を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置を用いてウィルスの不活化処理を実行した際の、浮遊ウィルス濃度の変化を示す特性図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置に用いられる針状電極と対向電極との位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、開口部にサークルプラズマが発生したときの、該開口部内の状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の全体構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の分解図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、開口部にサークルプラズマが発生してプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する様子を示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、針状電極と対向電極との間で放電させたときの、印加電圧とイオン個数の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る殺菌・不活化装置の構成を示す斜視図、図2は、分解斜視図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100は全体が直方体形状をなしており、図中矢印Y1の方向から外部空気を導入し、空気中の細菌、ウィルスを除去した後の空気を図中矢印Y2の方向に放出する。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100は、プラスチック等の絶縁体で構成された電極固定フレーム11と、該電極固定フレーム11に固定される放電電極12と、該放電電極12と対向配置される平板形状の対向電極(板状電極)14と、該対向電極14の下流側に設けられる反応チャンバー19と、該反応チャンバー19の下流側に設けられる送風ファン16を備えている。
【0032】
電極固定フレーム11は、中央に長方形状の開口11b(以下「給気口11b」という)が形成された「ロ」字形状をなし、給気口11bの2辺にそれぞれ放電電極12を固定するためのスリット13が形成されている。また、該電極固定フレーム11の4つの隅部にはネジ止め用の孔11aが設けられている。
【0033】
対向電極14は、平板形状をなす導電性の金属で構成され、中央部に円形の開口部15が複数個(本実施形態では3個)形成されている。また、該対向電極14は、その表面が給気口11bより導入される空気流に対して略直交するように配置されている。更に、該対向電極14の4つの隅部にはネジ止め用の孔14aが設けられている。なお、開口部15の個数は3個に限定されるものではなく、1以上の任意の個数とすることができる。
【0034】
放電電極12は、長尺平板形状をなす導電性の金属で構成され、一つの辺の複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられた針形状をなす突起が、針状電極18とされている。該放電電極12の両端は、電極固定フレーム11に形成されたスリット13に嵌合して固定される。また、図6に示すように、該放電電極12をスリット13に嵌合した際に、各針状電極18の先端部が対向電極14に形成された各開口部15の中心となり、且つ対向電極14と同一面となる位置にくるように設定されている。
【0035】
電源17は、放電電極12を負極性電圧(第2電圧)とし、対向電極14をグランド電圧(第1電圧)として(即ち、第2電圧は第1電圧に比べて相対的に負極性である)、対向電極14と放電電極12との間に一定の電流を流す回路である。そして、針状電極18と対向電極14との間に高電圧を印加することにより、各電極間に放電が発生し、図10に示すように、対向電極14内に設けられた開口部15内の、放電電極12の周辺にマイナスイオンが発生し、開口部15の周辺にプラスイオンが発生する。
【0036】
つまり、後述する図11で説明するように、針状電極18と対向電極14の間に印加する直流電圧を上昇させると、始めに針状電極18の周囲にマイナスイオンが発生してマイナスイオンの個数が増大し、更に直流電圧を上昇させると、開口部15の周辺にプラスイオンが発生してプラスイオンの個数が増大する。即ち、2つの電極間に直流電圧を印加することにより、開口部15内は高励起密度状態となって、プラスイオン、及びマイナスイオンの双方が発生する放電領域となる。
【0037】
また、開口部15が高励起密度状態とされることにより、開口部15及びその下流側の領域に活性種が発生する。活性種とは、高エネルギー電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカル、窒素ラジカル、酸素ラジカル等のラジカル種、励起分子等である。
【0038】
反応チャンバー19は、プラスチック等の絶縁体で構成され、内部に一定の広さの空間を有している。そして、給気口11bより導入された空気中に含まれる細菌類やウィルスは、3個の開口部15のうちのいずれかを通過して電子、イオン等の活性種と接触した後、この反応チャンバー19内を通過する。このため、空気中に含まれる細菌類、ウィルスを効率良く活性種と反応させることができる。更に、針状電極18と対向電極14との放電により発生する活性種の一部は、送風ファン16より当該殺菌・不活化装置100の外部に放出され、外部空気に含まれる細菌類、或いはウィルスと反応して、外部空気に含まれる細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する。また、反応チャンバー19の4つの隅部には、それぞれネジ止め用の孔19aが設けられている。
【0039】
送風ファン16は、例えば直流モータ(図示省略)等に接続されて回転し、電極固定フレーム11中央の給気口11bより外部空気を導入し、反応チャンバー19を通過した空気を外部へ放出するための空気流を形成する。また、送風ファン16の4つの隅部には、それぞれネジ止め用の孔16aが設けられている。そして、各孔11a、14a、19a、16a内にネジ(図示省略)を貫通させて、電極固定フレーム11、対向電極14、反応チャンバー19、及び送風ファン16を固定している。なお、本実施形態ではねじ止めにより装置全体を固定しているが、固定方法はこれに限定されるものではなく、接着、はめ込み等の方法により固定することも可能である。
【0040】
なお、図では記載を省略しているが、電極固定フレーム11の給気側に、空気中の塵埃を捕捉するためのフィルタを設ける構成とすることもできる。
【0041】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る殺菌・不活化装置100の作用について説明する。本実施形態では、針状電極18と対向電極14との間に所望の電流を流すことにより、針状電極18と対向電極14との間となる開口部15内の空間で放電を発生させ、開口部15の周囲にサークルプラズマ(円形状の発光放電)を発生させる。以下、サークルプラズマについて説明する。
【0042】
対向電極14をグランド電圧とし、開口部15中心部の針状電極18にマイナスの高電圧を印加すると、針状電極18の近傍にプラズマが発生し、且つ、開口部15の周囲にもプラズマが発生する。この場合、図6に示したように、針状電極18の先端部が対向電極14に形成された各開口部15の中心となり、且つ対向電極14と同一面となる位置とされた場合に、より顕著にプラズマが発生する。そして、開口部15の周囲に発生するプラズマをサークルプラズマと称している。サークルプラズマが発生すると、図7に示すように、開口部15内部の放電領域は高励起密度状態となり、このうち、針状電極18(放電電極12)の近傍、及び開口部15の周辺が主として電離領域、これらの中間の領域が主として励起・解離領域となる。また、中心に近い励起・解離領域は可視光が発生し、周囲に近い励起・解離領域は赤外線が発生する。
【0043】
電離領域とは、気体分子に衝突する電子が、該気体分子の電離エネルギー(電子の電荷q×電離電圧v)よりも大きい場合に、気体の原子から軌道電子を奪い取り、正イオンと2次電子が生成される活性領域である。
【0044】
励起領域とは、気体分子に衝突する電子が、該気体分子の電離エネルギーよりも小さく、且つ、最低励起電圧よりも大きいエネルギーを有している場合に、原子から軌道電子が奪い取られることはないが、エネルギー的に高い軌道に移り、活性が生じる領域である。励起分子は、準安定状態を経由して、最終的に基底状態に落ちるものと、直接発光を伴い基底状態に落ちるものとがある。
【0045】
解離領域とは、電界で加速された電子が分子に衝突することにより、2個の原子に分裂する現象が発生する活性領域である。これらの活性領域において、各種の活性種が生成される。
【0046】
また、サークルプラズマが発生し開口部15内部の放電領域が高励起密度状態となると、前述したように、開口部15内部、及びその下流の領域にプラスイオン、及びマイナスイオンが発生し、プラスイオンとマイナスイオンとが混在した状態となる。即ち、針状電極18と対向電極14との間に直流電圧を印加することにより、開口部15内部、及びその下流領域にプラスイオンとマイナスイオンの双方を発生させることができる。
【0047】
そして、電源17より針状電極18及び対向電極14に電圧を印加してサークルプラズマを発生させ、この状態で送風ファン16を駆動させて、電極固定フレーム11に設けられた給気口11bより外部の空気が導入されると、この空気は対向電極14に設けられた3個の開口部15のうちのいずれかを通過することになる。上述したように、対向電極14の開口部15周辺には、高エネルギー電子、イオン等の活性種が発生するので、開口部15内を通過する空気中に含まれる細菌類、及びウィルスを、これらの活性種と効率良く接触させることができ、反応チャンバー19内で反応を促進させることができる。従って、空気中に含まれる細菌類、ウィルスを高効率で殺菌、不活化することができる。
【0048】
更に、開口部15の周辺に発生した活性種の一部は、反応チャンバー19及び送風ファン16を経て殺菌・不活化装置100の外部に放出され、当該殺菌・不活化装置100を設置した室内の空気に含まれる細菌類、及びウィルスと反応して、室内の空気中に含まれる細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する。
【0049】
発明者らは、サークルプラズマ状態を確認するために、放電電極12として、図3(a)に示すように針状電極18間の距離が12.5[mm]、針状電極18の突起の長さが3[mm]となるものを使用し、対向電極14として、図3(b)に示すように開口部15の直径が10[mm]、各開口部15の中心軸間の距離が12.5[mm]となるものを使用して、針状電極18と対向電極14との間の電圧を変化させ、開口部15から45cm下流側となる位置でイオン濃度を測定したところ、図11の特性図に示す如くの結果を得た。
【0050】
図11の特性図において、横軸は針状電極18と対向電極14との間に印加する電圧(KV)を示し、縦軸は開口部15内の1ミリリットルの体積中に存在するイオンの個数を示し、曲線S11(黒丸)はマイナスイオンの個数、曲線S12(白丸)はプラスイオンの個数を示している。なお、図中の上向きの矢印はオーバーフロー、即ち、測定限界である106個を超えていることを示している。
【0051】
曲線S11に示されるように、印加電圧が約2.5KVに達すると、マイナスイオンが発生し、その後電圧の上昇に伴ってイオン数が急激に上昇し、3KV程度で106個を超えている。また、曲線S12に示されるように、印加電圧が約2.9KVに達すると、プラスイオンが発生し始め、その後電圧の上昇に伴ってイオン数が上昇し、3KVを超えると103〜104の間で収束している。
【0052】
従って、本実施形態では、針状電極18と対向電極14の間に印加する直流電圧を上昇させることにより、マイナスイオン、及びプラスイオンの双方を発生させることができ、従来のように、交流電圧を印加する方式や、2系統の電極対を設ける方式(プラス極の放電とマイナス極の放電をそれぞれ別個に行う方式)、或いは、ポラリティ方式(交互に放電針の電圧極性を入れ替える方式)を採用することなく、両極性のイオンを含む活性種を発生させ、これらの活性種によりウィルスを効果的に不活化できることが理解される。これは、針状電極18の先端部が対向電極14の面上にくるように配置されていること、及び、針状電極18に印加するマイナスの電圧を高い電圧(例えば、2.9KV以上)に設定したことに起因している。
【0053】
また、上記のことから、開口部15の下流側の空間においても、マイナスイオン、及びプラスイオンを含む活性種が発生しており、入流する空気中に含まれるウィルスは開口部15、及びその下流側の空間を通過することにより効率良く不活化されることになる。
【0054】
更に、発明者らは、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を用いて、実際にウィルスが存在する室内でウィルスの不活化率を測定するために、下記に示す実験を行った。
【0055】
上記したように、殺菌・不活化装置100に用いる放電電極12として、図3(a)に示すように針状電極18間の距離が12.5[mm]、針状電極18の突起の長さが3[mm]となるものを使用し、対向電極14として、図3(b)に示すように開口部15の直径が10[mm]、各開口部15の中心軸間の距離が12.5[mm]となるものを使用した。
【0056】
更に、対向電極14の下流側に設けられる反応チャンバー19の空間の体積を40[cm3]とした。
【0057】
そして、図4に示すように、上記構成の殺菌・不活化装置100を、一辺が1[m]の立方体形状の試験空間51(即ち、1[m3]の空気を有する空間)内に設置し、更に、この試験空間51内にウィルス(例えば、インフルエンザウィルス)の発生器52を設置し、該発生器52によりウィルスを発生させ、初期ウィルス濃度を17000〜20000[個/リットル]とし、この状態で殺菌・不活化装置100を駆動させた。
【0058】
この際、針状電極18に印加する負極性の電圧を5.4[KV]とし、針状電極18から対向電極14に向けて流れる放電電流を−116[μA]とした。また、送風ファン16にて給気口11bより導入する空気の風量を96[リットル/分]とし、初期状態のウィルス濃度を100[%]としたときの、時間経過に対するウィルス濃度の変化を測定した。
【0059】
その結果、図5に示す如くの減衰曲線が得られた。図5において、横軸は経過時間[分]であり、縦軸は初期状態のウィルス濃度を100[%]とした場合の浮遊ウィルス濃度の相対値[%]であり対数目盛で示している。図5に示す曲線S1は、上記の実験の結果を示し、曲線S2は自然減衰試験、即ち本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を用いない場合のウィルス濃度の相対値を示し、曲線S3は殺菌・不活化装置100を通過した後のウィルス濃度の変化の理論値を示している。以下、曲線S3に示す理論値を得るための演算式について説明する。
【0060】
図4に示す試験空間51の体積をV[リットル]、試験空間51内に存在するウィルス濃度をC[個/リットル]、発生器52によるウィルスの発生量をM[個/分]、ウィルスが試験空間51内の壁面に付着すること等によるウィルスの自然減衰量をCq[個/分]、殺菌・不活化装置100の単位時間当たりの処理風量をQ[リットル/分]、殺菌・不活化装置100のワンパス不活化率をηとした場合に、試験空間51内の浮遊ウィルス濃度は、次の(1)式で求めることができる。
【0061】
V(dC/dt)=M−CQη−Cq …(1)
ここで、発生器52によるウィルスの発生を終了させた場合には、(1)式中でM=0となるので、(1)式は、次の(2)式で示すことができる。
【0062】
V(dC/dt)=−C(Qη+q) …(2)
そして、上記(2)式からウィルス濃度Cを求めると、次の(3)式となる。
【0063】
【数1】
但し、(3)式において、C0は試験空間51内の初期的なウィルス濃度を示す。
【0064】
更に、(3)式において、自然減衰の減衰時定数τ1を「V/q」とし、殺菌・不活化装置100の減衰時定数τ2を「V/Qη」をとすると、次の(4)式が得られる。
【0065】
【数2】
そして、上述した自然減衰試験で得られた結果(曲線S2)より時定数τ1を求めて、(4)式に代入し、不活化率η=1とし、流量Q=96[リットル/分]とし、体積Vを1000[リットル](即ち、1[m3])として試験空間51内のウィルス濃度を算出すると、図5の曲線S3が得られる。
【0066】
そして、曲線S2と曲線S3を対比して理解されるように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を30分間駆動させることにより、ワンパス効率(試験空間51内の空気が殺菌・不活化装置100を通過したことのみによるウィルスの減衰率)による1[m3]の空間内に存在するウィルス濃度は1.8[%]程度となり、試験空間51内のほとんどのウィルスを不活化させることができるという結果が得られた。
【0067】
更に、曲線S1とS3を対比して理解されるように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を30分間駆動させて、1[m3]の空間内に存在するウィルス濃度を実際に測定した結果、ウィルス濃度は0.015[%]程度まで減衰し、ほぼ完全にウィルスを不活化させることができるという結果が得られた。これは、試験空間51内に浮遊するウィルスが殺菌・不活化装置100を通過することでのみ減衰するのではなく、殺菌・不活化装置100から外部に放出される活性種が試験空間51内に浮遊するウィルスと反応してウィルスを不活化し、試験空間51内の浮遊ウィルス濃度を低下させていることを意味する。
【0068】
即ち、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100では、開口部15内を高励起密度状態とすることにより活性種が発生し、反応チャンバー19内で該活性種によりウィルスの表面のタンパク質を酸化分解し、該ウィルスを不活化するので、試験空間51内のウィルス濃度を低下させることができ、更に、殺菌・不活化装置100から外部に放出された活性種と試験空間51内に浮遊するウィルスが反応して試験空間51内ウィルス濃度を低減するので、これらの相乗効果で試験空間51内に浮遊するウィルスをほぼ完全に不活化することができるようになる。
【0069】
このようにして、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100では、給気口11bより導入した外部空気の全体を、空気流に対して略直交して配置された開口部15内を通過させると共に、針状電極18と対向電極14との間で放電を発生させて、開口部15の周囲にサークルプラズマを発生させ、該開口部15内に高エネルギー電子、イオン等の活性種を発生させている。従って、給気口11bより導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスをこの活性種と効率良く接触させ、反応させることができるので細菌類を効率良く殺菌し、且つウィルスを効率良く不活化することができる。
【0070】
更に、開口部15の周辺で発生する活性種の一部は、殺菌・不活化装置100より外部に放出されるので、殺菌・不活化装置100の外部空間に存在する細菌類、或いはウィルスと活性種とを反応させることができ、より一層細菌類の殺菌効率を向上させ、且つ、ウィルスの不活化効率を向上させることができる。
【0071】
また、対向電極14に形成された開口部15が、空気流に対して略直交して配置されるので、活性種が発生する空間に対してほぼ直交して空気流を通過させることができ、より一層活性種との反応を促進させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0072】
更に、対向電極14の電圧(第1電圧)をグランド電圧とし、針状電極18の電圧(第2電圧)を負極性電圧とすることにより、開口部15の内部の空間を容易に安定した高励起密度状態とすることができ、高エネルギーやイオン等の活性種を効率良く発生させることができる。
【0073】
また、図6に示したように、針状電極18の先端部が、開口部15中心の、対向電極14(板状電極)と同一面となる位置に設けられるので、針状電極18と対向電極14との間の放電を容易に発生させることができ、開口部15の内部空間を容易に膜状の高励起密度状態とすることができる。
【0074】
更に、本実施形態では、針状電極18と対向電極14との間に放電が発生し、且つ、開口部15の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となる放電電流が流れるように、針状電極18に負極性電圧を印加することにより、開口部15の内部空間に、確実に活性種を発生させることができる。
【0075】
また、対向電極14の下流側に、所定サイズの空間を有する反応チャンバー19が設けられるので、導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスが活性種と接触した後、この反応チャンバー19内で反応を促進させることができるので、細菌類を効率よく殺菌し、且つ、ウィルスを効率よく不活化することができる。
【0076】
なお、上記した実施形態では、対向電極14に形成される開口部15の形状が円形状である場合を例に挙げて説明したが、開口部15の形状は円形に限られるものではなく、開口部15内部の放電領域を高励起密度状態とすることができる形状であれば、楕円形や、正六角形、正八角形等の正多角形とすることも可能である。
【0077】
また、上記した実施形態では、針状電極18を負極性電圧、対向電極14をグランド電圧とする例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも針状電極18と対向電極14との間に電位差があれば良く、グランド電圧の位置は適宜選択することが可能である。更に、印加電圧は直流に限らず、変動する直流、即ち、パルス、矩形波、正弦波、もしくは正弦波の一部にすることも可能である。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置について説明する。図8は第2実施形態に係る空気清浄装置の斜視図、図9は分解図である。
【0079】
図8に示すように、第2実施形態に係る空気清浄装置200は、筐体構造をなしており、正面パネルに設けられた吸込口31より外部空気(例えば、室内の空気)を吸引し、吹出口32より外部へ放出する。
【0080】
また、図9に示すように、この空気清浄装置200は、吸込口31より導入した空気中に含まれる大粒の塵埃を除去するプレフィルタ(空気清浄手段)33と、プレフィルタ33を通過した空気中に含まれる浮遊物の粒子を荷電する粒子荷電部(空気清浄手段)34と、空間内に電界を発生させ粒子荷電部34で荷電された粒子をクーロン力により捕捉する粒子捕集部(空気清浄手段)35と、空気中の臭い成分を除去する脱臭フィルタ(空気清浄手段)36、及び送風機37を備えている。更に、この空気清浄装置200は、空気の通風路となる所望部位に前述の第1実施形態で説明した殺菌・不活化装置100が設置されている。該殺菌・不活化装置100の設置場所としては、プレフィルタ33の上流側(図中P1の位置)、プレフィルタ33と粒子荷電部34の間(図中P2の位置)、粒子荷電部34と粒子捕集部35の間(図中P3の位置)、粒子捕集部35と脱臭フィルタ36の間(図中P4の位置)、脱臭フィルタ36と送風機37の間(図中P5の位置)、或いは送風機37の下流側(図中P6の位置)のいずれかに設置することができる。
【0081】
該殺菌・不活化装置100(図2参照)は、吸込口31(図8参照)より吸引される空気の全体、或いは一部を給気口11bより導入して、導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する。そして、処理後の空気を下流側に放出する。ここで、前述した第1実施形態では、殺菌・不活化装置100が送風ファン16(図2参照)を備えて、給気口11bより空気を導入する構成としたが、図9に示す送風機37により、殺菌・不活化装置100内に空気が導入される場合には、送風ファン16を省略することも可能である。
【0082】
こうして、空気清浄装置200の内部に殺菌・不活化装置を搭載することにより、室内空気を浄化するのみならず、空気中を浮遊する細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化することができるのである。
【0083】
このようにして、第2実施形態に係る空気清浄装置200では、装置内の適所に第1実施形態に示した殺菌・不活化装置100を搭載し、該空気清浄装置200内に導入された空気の一部、或いは全体を殺菌・不活化装置100内に通すことにより、空気中の塵埃、浮遊物を除去するのみならず、空気中に含まれる細菌類、及びウィルスを効率良く除去することができる。
【0084】
以上、本発明の殺菌・不活化装置、及び空気清浄装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0085】
例えば、第1実施形態で示した殺菌・不活化装置100では、直径10[mm]の開口部15が3箇所に形成された対向電極14を使用する例について説明したが、処理風量が多い場合には、開口部15の個数を増加させることや、開口部15の直径を大きくすること、あるいは、針状電極18に印加する負極性の電圧値を高くする等の設計変更を行うことができる。即ち、処理風量に応じて、第1実施形態で示した各種の数値は適切な数値に変更することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、第1実施形態で示した殺菌・不活化装置100を空気清浄装置200内に搭載する例について説明したが、本発明の殺菌・不活化装置は、空気清浄装置200のみならず、エアコン、除湿器、加湿器等に搭載して使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、室内空気に浮遊するカビ類などの細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0088】
11 電極固定フレーム
11a 孔
11b 開口(給気口)
12 放電電極
13 スリット
14 対向電極(板状電極)
14a 孔
15 開口部
16 送風ファン
16a 孔
17 電源
18 針状電極
19 反応チャンバー
19a 孔
31 吸込口
32 吹出口
33 プレフィルタ(空気清浄手段)
34 粒子荷電部(空気清浄手段)
35 粒子捕集部(空気清浄手段)
36 脱臭フィルタ(空気清浄手段)
37 送風機(送風手段)
51 試験空間
52 発生器
100 殺菌・不活化装置
200 空気清浄装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に含まれるカビや細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置、及びこれを用いた空気清浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中に存在する塵埃を除去し、且つ、カビ、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する装置として、例えば特開2007−305417号公報(特許文献1)に記載された空気清浄機、或いは特開2005−300111号公報(特許文献2)に記載された空気調和装置が提案されている。
【0003】
特許文献1には、空気清浄機の吹出口近傍にイオン発生装置を設け、該イオン発生装置より正イオン、負イオンを発生させて、清浄化した空気と共に正イオン、負イオンを室内に放出し、室内に浮遊する細菌類やウィルスと反応させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することが記載されている。また、特許文献2には、ストリーマ放電により活性種を発生させ、この活性種を、空気の流れによりチタンアパタイト担持フィルタに供給し、導入された空気中に含まれる細菌類、ウィルスをこのチタンアパタイト担持フィルタに接触させることにより、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−305417号公報
【特許文献2】特開2005−300111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1では、イオン発生装置で発生させたイオンを室内に放出することにより、室内の空気中に存在する細菌を殺菌し、ウィルスを不活化する方式であるので、使用する部屋の空間が大きい場合には、空間全体の空気量に対して発生するイオンの量が相対的に少なくなり、効果的に細菌、ウィルスを除去することができないという問題が発生する。
【0006】
また、特許文献2では、ストリーマ放電により発生した活性種をチタンアパタイト担持フィルタに供給し、該チタンアパタイト担持フィルタと接触した細菌類、ウィルスを除去する構成であるので、装置内に導入した空気に対して活性種が均一に接触しないことがあり、効率良く空気中の細菌、ウィルスを除去できないという欠点があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、導入した空気中に存在する細菌類の殺菌効率、及び、ウィルスを不活化する不活化効率を向上させることが可能な殺菌・不活化装置、及びこれを用いた空気清浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に記載の殺菌・不活化装置は、給気口より導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化して放出口より放出する殺菌・不活化装置において、少なくとも1つの開口部が形成された平板形状をなし、前記給気口より導入した空気が前記開口部を通過するように配置された板状電極と、前記板状電極の下流側に設けられ、前記給気口より外部空気を導入する送風ファンと、針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記板状電極は、表面が前記導入した空気の流れに対して略直交する方向を向くように配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記開口部は、円形、楕円形、または正多角形のいずれかの形状であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記第2電圧を、前記第1電圧に比べ相対的に負極性としたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、前記針状電極の先端部は、前記開口部の中心の、前記板状電極と同一面となる位置に設置されることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、前記電源は、前記開口部の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となるように、前記第1電圧、第2電圧を設定することを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、前記高励起密度状態は、前記開口部の内部にプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する状態であることを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、前記板状電極の下流側に、所定の空間を有する反応チャンバーを設けることを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の空気清浄装置は、空気中に含まれる塵埃を除去し、且つ細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する空気清浄装置において、外部空気を導入する吸込口、及び清浄化した空気を外部に放出する吹出口と、前記吸込口から前記吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段と、前記吸込口と吹出口との間に配置され、前記吸込口より吸引した空気中に含まれる塵埃を除去する空気清浄手段と、前記吸込口と吹出口の間に配置され、空気中の細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置と、を備え、前記殺菌・不活化装置は、平板形状をなし、少なくとも1つの開口部が形成され、且つ表面が前記空気流の方向に対して略直交するように配置された板状電極と、針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、前記殺菌・不活化装置は、更に、前記板状電極の下流側に、前記空気流の一部を前記開口部内を通過させる送風ファンを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る殺菌・不活化装置では、給気口より導入した外部空気を開口部内に通過させ、針状電極と板状電極(対向電極14)との間で放電を発生させる。そして、開口部の周囲にサークルプラズマが発生し、該開口部内に高エネルギー電子、イオン等の活性種が発生するので、給気口より導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスをこの活性種と効率良く反応させることができ、細菌類を効率良く殺菌し、且つウィルスを効率良く不活化することができる。更に、放電により発生した活性種の一部は装置の外部に放出されるので、この活性種が外気中に存在する細菌類及びウィルスと反応し、外気中の細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0019】
請求項2の発明では、板状電極が空気流に対して略直交して配置されるので、活性種が発生する開口部の空間に対してほぼ直交して空気流を通過させることができ、活性種との反応を促進させることができるので、細菌類を効率良く殺菌し、ウィルスを効率良く不活化することができる。
【0020】
請求項3の発明では、開口部の形状を円形、楕円形、或いは正多角形のうちのいずれかとしたので、開口部の周囲にサークルプラズマを発生させ易くなり、活性種を効率良く発生させることができる。
【0021】
請求項4の発明では、針状電極に印加する第2電圧を、板状電極に印加する第1電圧に比べ、相対的に負極性とすることにより、開口部の内部空間を容易に安定した高励起密度状態とすることができ、高エネルギーやイオン等の活性種を効率良く発生させることができる。
【0022】
請求項5の発明では、針状電極の先端部が、開口部中心の、板状電極と同一面となる位置に設けられるので、針状電極と板状電極との間の放電を容易に発生せることができ、開口部の内部空間を容易に膜状の高励起密度状態とすることができる。
【0023】
請求項6の発明では、針状電極と板状電極との間に放電が発生し、且つ、開口部内に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となる放電電流が流れるように、第1電圧及び第2電圧が印加されるので、開口部の内部空間に効率良く活性種を発生させることができる。
【0024】
請求項7の発明では、開口部の内部が、プラスイオン、及びマイナスイオンが混在する高励起密度状態とされるので、開口部及びその下流領域に効率良く活性種を発生させて、ウィルスを不活化することができる。
【0025】
請求項8の発明では、板状電極の下流側に所定の空間を有する反応チャンバーが設けられるので、導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスが活性種と接触した後、この反応チャンバー19内で反応を促進させることができ、細菌類を効率よく殺菌し、且つ、ウィルスを効率よく不活化することができる。
【0026】
また、請求項9に記載の空気清浄装置では、空気清浄手段により空気中に存在する塵埃を除去することができ、且つ、空気清浄装置内に導入した空気の一部或いは全体を空気清浄装置内に設けられた殺菌・不活化装置を通過させることにより、細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0027】
請求項10の発明では、空気清浄装置内に設けられる殺菌・不活化装置に送風ファンが設けられるので、殺菌・不活化装置内に効率良く空気を導入させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置に用いられる放電電極及び対向電極の詳細を示す説明図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置を用いてウィルスの不活化処理を行う試験空間を示す説明図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置を用いてウィルスの不活化処理を実行した際の、浮遊ウィルス濃度の変化を示す特性図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置に用いられる針状電極と対向電極との位置関係を示す説明図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、開口部にサークルプラズマが発生したときの、該開口部内の状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の全体構成を示す斜視図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置の分解図である。
【図10】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、開口部にサークルプラズマが発生してプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する様子を示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態に係る殺菌・不活化装置で、針状電極と対向電極との間で放電させたときの、印加電圧とイオン個数の関係を示す特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る殺菌・不活化装置の構成を示す斜視図、図2は、分解斜視図である。
【0030】
図1に示すように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100は全体が直方体形状をなしており、図中矢印Y1の方向から外部空気を導入し、空気中の細菌、ウィルスを除去した後の空気を図中矢印Y2の方向に放出する。
【0031】
また、図2に示すように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100は、プラスチック等の絶縁体で構成された電極固定フレーム11と、該電極固定フレーム11に固定される放電電極12と、該放電電極12と対向配置される平板形状の対向電極(板状電極)14と、該対向電極14の下流側に設けられる反応チャンバー19と、該反応チャンバー19の下流側に設けられる送風ファン16を備えている。
【0032】
電極固定フレーム11は、中央に長方形状の開口11b(以下「給気口11b」という)が形成された「ロ」字形状をなし、給気口11bの2辺にそれぞれ放電電極12を固定するためのスリット13が形成されている。また、該電極固定フレーム11の4つの隅部にはネジ止め用の孔11aが設けられている。
【0033】
対向電極14は、平板形状をなす導電性の金属で構成され、中央部に円形の開口部15が複数個(本実施形態では3個)形成されている。また、該対向電極14は、その表面が給気口11bより導入される空気流に対して略直交するように配置されている。更に、該対向電極14の4つの隅部にはネジ止め用の孔14aが設けられている。なお、開口部15の個数は3個に限定されるものではなく、1以上の任意の個数とすることができる。
【0034】
放電電極12は、長尺平板形状をなす導電性の金属で構成され、一つの辺の複数箇所(本実施形態では3箇所)に設けられた針形状をなす突起が、針状電極18とされている。該放電電極12の両端は、電極固定フレーム11に形成されたスリット13に嵌合して固定される。また、図6に示すように、該放電電極12をスリット13に嵌合した際に、各針状電極18の先端部が対向電極14に形成された各開口部15の中心となり、且つ対向電極14と同一面となる位置にくるように設定されている。
【0035】
電源17は、放電電極12を負極性電圧(第2電圧)とし、対向電極14をグランド電圧(第1電圧)として(即ち、第2電圧は第1電圧に比べて相対的に負極性である)、対向電極14と放電電極12との間に一定の電流を流す回路である。そして、針状電極18と対向電極14との間に高電圧を印加することにより、各電極間に放電が発生し、図10に示すように、対向電極14内に設けられた開口部15内の、放電電極12の周辺にマイナスイオンが発生し、開口部15の周辺にプラスイオンが発生する。
【0036】
つまり、後述する図11で説明するように、針状電極18と対向電極14の間に印加する直流電圧を上昇させると、始めに針状電極18の周囲にマイナスイオンが発生してマイナスイオンの個数が増大し、更に直流電圧を上昇させると、開口部15の周辺にプラスイオンが発生してプラスイオンの個数が増大する。即ち、2つの電極間に直流電圧を印加することにより、開口部15内は高励起密度状態となって、プラスイオン、及びマイナスイオンの双方が発生する放電領域となる。
【0037】
また、開口部15が高励起密度状態とされることにより、開口部15及びその下流側の領域に活性種が発生する。活性種とは、高エネルギー電子、イオン、オゾン、ヒドロキシラジカル、窒素ラジカル、酸素ラジカル等のラジカル種、励起分子等である。
【0038】
反応チャンバー19は、プラスチック等の絶縁体で構成され、内部に一定の広さの空間を有している。そして、給気口11bより導入された空気中に含まれる細菌類やウィルスは、3個の開口部15のうちのいずれかを通過して電子、イオン等の活性種と接触した後、この反応チャンバー19内を通過する。このため、空気中に含まれる細菌類、ウィルスを効率良く活性種と反応させることができる。更に、針状電極18と対向電極14との放電により発生する活性種の一部は、送風ファン16より当該殺菌・不活化装置100の外部に放出され、外部空気に含まれる細菌類、或いはウィルスと反応して、外部空気に含まれる細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する。また、反応チャンバー19の4つの隅部には、それぞれネジ止め用の孔19aが設けられている。
【0039】
送風ファン16は、例えば直流モータ(図示省略)等に接続されて回転し、電極固定フレーム11中央の給気口11bより外部空気を導入し、反応チャンバー19を通過した空気を外部へ放出するための空気流を形成する。また、送風ファン16の4つの隅部には、それぞれネジ止め用の孔16aが設けられている。そして、各孔11a、14a、19a、16a内にネジ(図示省略)を貫通させて、電極固定フレーム11、対向電極14、反応チャンバー19、及び送風ファン16を固定している。なお、本実施形態ではねじ止めにより装置全体を固定しているが、固定方法はこれに限定されるものではなく、接着、はめ込み等の方法により固定することも可能である。
【0040】
なお、図では記載を省略しているが、電極固定フレーム11の給気側に、空気中の塵埃を捕捉するためのフィルタを設ける構成とすることもできる。
【0041】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る殺菌・不活化装置100の作用について説明する。本実施形態では、針状電極18と対向電極14との間に所望の電流を流すことにより、針状電極18と対向電極14との間となる開口部15内の空間で放電を発生させ、開口部15の周囲にサークルプラズマ(円形状の発光放電)を発生させる。以下、サークルプラズマについて説明する。
【0042】
対向電極14をグランド電圧とし、開口部15中心部の針状電極18にマイナスの高電圧を印加すると、針状電極18の近傍にプラズマが発生し、且つ、開口部15の周囲にもプラズマが発生する。この場合、図6に示したように、針状電極18の先端部が対向電極14に形成された各開口部15の中心となり、且つ対向電極14と同一面となる位置とされた場合に、より顕著にプラズマが発生する。そして、開口部15の周囲に発生するプラズマをサークルプラズマと称している。サークルプラズマが発生すると、図7に示すように、開口部15内部の放電領域は高励起密度状態となり、このうち、針状電極18(放電電極12)の近傍、及び開口部15の周辺が主として電離領域、これらの中間の領域が主として励起・解離領域となる。また、中心に近い励起・解離領域は可視光が発生し、周囲に近い励起・解離領域は赤外線が発生する。
【0043】
電離領域とは、気体分子に衝突する電子が、該気体分子の電離エネルギー(電子の電荷q×電離電圧v)よりも大きい場合に、気体の原子から軌道電子を奪い取り、正イオンと2次電子が生成される活性領域である。
【0044】
励起領域とは、気体分子に衝突する電子が、該気体分子の電離エネルギーよりも小さく、且つ、最低励起電圧よりも大きいエネルギーを有している場合に、原子から軌道電子が奪い取られることはないが、エネルギー的に高い軌道に移り、活性が生じる領域である。励起分子は、準安定状態を経由して、最終的に基底状態に落ちるものと、直接発光を伴い基底状態に落ちるものとがある。
【0045】
解離領域とは、電界で加速された電子が分子に衝突することにより、2個の原子に分裂する現象が発生する活性領域である。これらの活性領域において、各種の活性種が生成される。
【0046】
また、サークルプラズマが発生し開口部15内部の放電領域が高励起密度状態となると、前述したように、開口部15内部、及びその下流の領域にプラスイオン、及びマイナスイオンが発生し、プラスイオンとマイナスイオンとが混在した状態となる。即ち、針状電極18と対向電極14との間に直流電圧を印加することにより、開口部15内部、及びその下流領域にプラスイオンとマイナスイオンの双方を発生させることができる。
【0047】
そして、電源17より針状電極18及び対向電極14に電圧を印加してサークルプラズマを発生させ、この状態で送風ファン16を駆動させて、電極固定フレーム11に設けられた給気口11bより外部の空気が導入されると、この空気は対向電極14に設けられた3個の開口部15のうちのいずれかを通過することになる。上述したように、対向電極14の開口部15周辺には、高エネルギー電子、イオン等の活性種が発生するので、開口部15内を通過する空気中に含まれる細菌類、及びウィルスを、これらの活性種と効率良く接触させることができ、反応チャンバー19内で反応を促進させることができる。従って、空気中に含まれる細菌類、ウィルスを高効率で殺菌、不活化することができる。
【0048】
更に、開口部15の周辺に発生した活性種の一部は、反応チャンバー19及び送風ファン16を経て殺菌・不活化装置100の外部に放出され、当該殺菌・不活化装置100を設置した室内の空気に含まれる細菌類、及びウィルスと反応して、室内の空気中に含まれる細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する。
【0049】
発明者らは、サークルプラズマ状態を確認するために、放電電極12として、図3(a)に示すように針状電極18間の距離が12.5[mm]、針状電極18の突起の長さが3[mm]となるものを使用し、対向電極14として、図3(b)に示すように開口部15の直径が10[mm]、各開口部15の中心軸間の距離が12.5[mm]となるものを使用して、針状電極18と対向電極14との間の電圧を変化させ、開口部15から45cm下流側となる位置でイオン濃度を測定したところ、図11の特性図に示す如くの結果を得た。
【0050】
図11の特性図において、横軸は針状電極18と対向電極14との間に印加する電圧(KV)を示し、縦軸は開口部15内の1ミリリットルの体積中に存在するイオンの個数を示し、曲線S11(黒丸)はマイナスイオンの個数、曲線S12(白丸)はプラスイオンの個数を示している。なお、図中の上向きの矢印はオーバーフロー、即ち、測定限界である106個を超えていることを示している。
【0051】
曲線S11に示されるように、印加電圧が約2.5KVに達すると、マイナスイオンが発生し、その後電圧の上昇に伴ってイオン数が急激に上昇し、3KV程度で106個を超えている。また、曲線S12に示されるように、印加電圧が約2.9KVに達すると、プラスイオンが発生し始め、その後電圧の上昇に伴ってイオン数が上昇し、3KVを超えると103〜104の間で収束している。
【0052】
従って、本実施形態では、針状電極18と対向電極14の間に印加する直流電圧を上昇させることにより、マイナスイオン、及びプラスイオンの双方を発生させることができ、従来のように、交流電圧を印加する方式や、2系統の電極対を設ける方式(プラス極の放電とマイナス極の放電をそれぞれ別個に行う方式)、或いは、ポラリティ方式(交互に放電針の電圧極性を入れ替える方式)を採用することなく、両極性のイオンを含む活性種を発生させ、これらの活性種によりウィルスを効果的に不活化できることが理解される。これは、針状電極18の先端部が対向電極14の面上にくるように配置されていること、及び、針状電極18に印加するマイナスの電圧を高い電圧(例えば、2.9KV以上)に設定したことに起因している。
【0053】
また、上記のことから、開口部15の下流側の空間においても、マイナスイオン、及びプラスイオンを含む活性種が発生しており、入流する空気中に含まれるウィルスは開口部15、及びその下流側の空間を通過することにより効率良く不活化されることになる。
【0054】
更に、発明者らは、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を用いて、実際にウィルスが存在する室内でウィルスの不活化率を測定するために、下記に示す実験を行った。
【0055】
上記したように、殺菌・不活化装置100に用いる放電電極12として、図3(a)に示すように針状電極18間の距離が12.5[mm]、針状電極18の突起の長さが3[mm]となるものを使用し、対向電極14として、図3(b)に示すように開口部15の直径が10[mm]、各開口部15の中心軸間の距離が12.5[mm]となるものを使用した。
【0056】
更に、対向電極14の下流側に設けられる反応チャンバー19の空間の体積を40[cm3]とした。
【0057】
そして、図4に示すように、上記構成の殺菌・不活化装置100を、一辺が1[m]の立方体形状の試験空間51(即ち、1[m3]の空気を有する空間)内に設置し、更に、この試験空間51内にウィルス(例えば、インフルエンザウィルス)の発生器52を設置し、該発生器52によりウィルスを発生させ、初期ウィルス濃度を17000〜20000[個/リットル]とし、この状態で殺菌・不活化装置100を駆動させた。
【0058】
この際、針状電極18に印加する負極性の電圧を5.4[KV]とし、針状電極18から対向電極14に向けて流れる放電電流を−116[μA]とした。また、送風ファン16にて給気口11bより導入する空気の風量を96[リットル/分]とし、初期状態のウィルス濃度を100[%]としたときの、時間経過に対するウィルス濃度の変化を測定した。
【0059】
その結果、図5に示す如くの減衰曲線が得られた。図5において、横軸は経過時間[分]であり、縦軸は初期状態のウィルス濃度を100[%]とした場合の浮遊ウィルス濃度の相対値[%]であり対数目盛で示している。図5に示す曲線S1は、上記の実験の結果を示し、曲線S2は自然減衰試験、即ち本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を用いない場合のウィルス濃度の相対値を示し、曲線S3は殺菌・不活化装置100を通過した後のウィルス濃度の変化の理論値を示している。以下、曲線S3に示す理論値を得るための演算式について説明する。
【0060】
図4に示す試験空間51の体積をV[リットル]、試験空間51内に存在するウィルス濃度をC[個/リットル]、発生器52によるウィルスの発生量をM[個/分]、ウィルスが試験空間51内の壁面に付着すること等によるウィルスの自然減衰量をCq[個/分]、殺菌・不活化装置100の単位時間当たりの処理風量をQ[リットル/分]、殺菌・不活化装置100のワンパス不活化率をηとした場合に、試験空間51内の浮遊ウィルス濃度は、次の(1)式で求めることができる。
【0061】
V(dC/dt)=M−CQη−Cq …(1)
ここで、発生器52によるウィルスの発生を終了させた場合には、(1)式中でM=0となるので、(1)式は、次の(2)式で示すことができる。
【0062】
V(dC/dt)=−C(Qη+q) …(2)
そして、上記(2)式からウィルス濃度Cを求めると、次の(3)式となる。
【0063】
【数1】
但し、(3)式において、C0は試験空間51内の初期的なウィルス濃度を示す。
【0064】
更に、(3)式において、自然減衰の減衰時定数τ1を「V/q」とし、殺菌・不活化装置100の減衰時定数τ2を「V/Qη」をとすると、次の(4)式が得られる。
【0065】
【数2】
そして、上述した自然減衰試験で得られた結果(曲線S2)より時定数τ1を求めて、(4)式に代入し、不活化率η=1とし、流量Q=96[リットル/分]とし、体積Vを1000[リットル](即ち、1[m3])として試験空間51内のウィルス濃度を算出すると、図5の曲線S3が得られる。
【0066】
そして、曲線S2と曲線S3を対比して理解されるように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を30分間駆動させることにより、ワンパス効率(試験空間51内の空気が殺菌・不活化装置100を通過したことのみによるウィルスの減衰率)による1[m3]の空間内に存在するウィルス濃度は1.8[%]程度となり、試験空間51内のほとんどのウィルスを不活化させることができるという結果が得られた。
【0067】
更に、曲線S1とS3を対比して理解されるように、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100を30分間駆動させて、1[m3]の空間内に存在するウィルス濃度を実際に測定した結果、ウィルス濃度は0.015[%]程度まで減衰し、ほぼ完全にウィルスを不活化させることができるという結果が得られた。これは、試験空間51内に浮遊するウィルスが殺菌・不活化装置100を通過することでのみ減衰するのではなく、殺菌・不活化装置100から外部に放出される活性種が試験空間51内に浮遊するウィルスと反応してウィルスを不活化し、試験空間51内の浮遊ウィルス濃度を低下させていることを意味する。
【0068】
即ち、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100では、開口部15内を高励起密度状態とすることにより活性種が発生し、反応チャンバー19内で該活性種によりウィルスの表面のタンパク質を酸化分解し、該ウィルスを不活化するので、試験空間51内のウィルス濃度を低下させることができ、更に、殺菌・不活化装置100から外部に放出された活性種と試験空間51内に浮遊するウィルスが反応して試験空間51内ウィルス濃度を低減するので、これらの相乗効果で試験空間51内に浮遊するウィルスをほぼ完全に不活化することができるようになる。
【0069】
このようにして、本実施形態に係る殺菌・不活化装置100では、給気口11bより導入した外部空気の全体を、空気流に対して略直交して配置された開口部15内を通過させると共に、針状電極18と対向電極14との間で放電を発生させて、開口部15の周囲にサークルプラズマを発生させ、該開口部15内に高エネルギー電子、イオン等の活性種を発生させている。従って、給気口11bより導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスをこの活性種と効率良く接触させ、反応させることができるので細菌類を効率良く殺菌し、且つウィルスを効率良く不活化することができる。
【0070】
更に、開口部15の周辺で発生する活性種の一部は、殺菌・不活化装置100より外部に放出されるので、殺菌・不活化装置100の外部空間に存在する細菌類、或いはウィルスと活性種とを反応させることができ、より一層細菌類の殺菌効率を向上させ、且つ、ウィルスの不活化効率を向上させることができる。
【0071】
また、対向電極14に形成された開口部15が、空気流に対して略直交して配置されるので、活性種が発生する空間に対してほぼ直交して空気流を通過させることができ、より一層活性種との反応を促進させて細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化することができる。
【0072】
更に、対向電極14の電圧(第1電圧)をグランド電圧とし、針状電極18の電圧(第2電圧)を負極性電圧とすることにより、開口部15の内部の空間を容易に安定した高励起密度状態とすることができ、高エネルギーやイオン等の活性種を効率良く発生させることができる。
【0073】
また、図6に示したように、針状電極18の先端部が、開口部15中心の、対向電極14(板状電極)と同一面となる位置に設けられるので、針状電極18と対向電極14との間の放電を容易に発生させることができ、開口部15の内部空間を容易に膜状の高励起密度状態とすることができる。
【0074】
更に、本実施形態では、針状電極18と対向電極14との間に放電が発生し、且つ、開口部15の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となる放電電流が流れるように、針状電極18に負極性電圧を印加することにより、開口部15の内部空間に、確実に活性種を発生させることができる。
【0075】
また、対向電極14の下流側に、所定サイズの空間を有する反応チャンバー19が設けられるので、導入した空気中に含まれる細菌類及びウィルスが活性種と接触した後、この反応チャンバー19内で反応を促進させることができるので、細菌類を効率よく殺菌し、且つ、ウィルスを効率よく不活化することができる。
【0076】
なお、上記した実施形態では、対向電極14に形成される開口部15の形状が円形状である場合を例に挙げて説明したが、開口部15の形状は円形に限られるものではなく、開口部15内部の放電領域を高励起密度状態とすることができる形状であれば、楕円形や、正六角形、正八角形等の正多角形とすることも可能である。
【0077】
また、上記した実施形態では、針状電極18を負極性電圧、対向電極14をグランド電圧とする例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも針状電極18と対向電極14との間に電位差があれば良く、グランド電圧の位置は適宜選択することが可能である。更に、印加電圧は直流に限らず、変動する直流、即ち、パルス、矩形波、正弦波、もしくは正弦波の一部にすることも可能である。
【0078】
次に、本発明の第2実施形態に係る空気清浄装置について説明する。図8は第2実施形態に係る空気清浄装置の斜視図、図9は分解図である。
【0079】
図8に示すように、第2実施形態に係る空気清浄装置200は、筐体構造をなしており、正面パネルに設けられた吸込口31より外部空気(例えば、室内の空気)を吸引し、吹出口32より外部へ放出する。
【0080】
また、図9に示すように、この空気清浄装置200は、吸込口31より導入した空気中に含まれる大粒の塵埃を除去するプレフィルタ(空気清浄手段)33と、プレフィルタ33を通過した空気中に含まれる浮遊物の粒子を荷電する粒子荷電部(空気清浄手段)34と、空間内に電界を発生させ粒子荷電部34で荷電された粒子をクーロン力により捕捉する粒子捕集部(空気清浄手段)35と、空気中の臭い成分を除去する脱臭フィルタ(空気清浄手段)36、及び送風機37を備えている。更に、この空気清浄装置200は、空気の通風路となる所望部位に前述の第1実施形態で説明した殺菌・不活化装置100が設置されている。該殺菌・不活化装置100の設置場所としては、プレフィルタ33の上流側(図中P1の位置)、プレフィルタ33と粒子荷電部34の間(図中P2の位置)、粒子荷電部34と粒子捕集部35の間(図中P3の位置)、粒子捕集部35と脱臭フィルタ36の間(図中P4の位置)、脱臭フィルタ36と送風機37の間(図中P5の位置)、或いは送風機37の下流側(図中P6の位置)のいずれかに設置することができる。
【0081】
該殺菌・不活化装置100(図2参照)は、吸込口31(図8参照)より吸引される空気の全体、或いは一部を給気口11bより導入して、導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する。そして、処理後の空気を下流側に放出する。ここで、前述した第1実施形態では、殺菌・不活化装置100が送風ファン16(図2参照)を備えて、給気口11bより空気を導入する構成としたが、図9に示す送風機37により、殺菌・不活化装置100内に空気が導入される場合には、送風ファン16を省略することも可能である。
【0082】
こうして、空気清浄装置200の内部に殺菌・不活化装置を搭載することにより、室内空気を浄化するのみならず、空気中を浮遊する細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化することができるのである。
【0083】
このようにして、第2実施形態に係る空気清浄装置200では、装置内の適所に第1実施形態に示した殺菌・不活化装置100を搭載し、該空気清浄装置200内に導入された空気の一部、或いは全体を殺菌・不活化装置100内に通すことにより、空気中の塵埃、浮遊物を除去するのみならず、空気中に含まれる細菌類、及びウィルスを効率良く除去することができる。
【0084】
以上、本発明の殺菌・不活化装置、及び空気清浄装置を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置き換えることができる。
【0085】
例えば、第1実施形態で示した殺菌・不活化装置100では、直径10[mm]の開口部15が3箇所に形成された対向電極14を使用する例について説明したが、処理風量が多い場合には、開口部15の個数を増加させることや、開口部15の直径を大きくすること、あるいは、針状電極18に印加する負極性の電圧値を高くする等の設計変更を行うことができる。即ち、処理風量に応じて、第1実施形態で示した各種の数値は適切な数値に変更することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、第1実施形態で示した殺菌・不活化装置100を空気清浄装置200内に搭載する例について説明したが、本発明の殺菌・不活化装置は、空気清浄装置200のみならず、エアコン、除湿器、加湿器等に搭載して使用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、室内空気に浮遊するカビ類などの細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する上で極めて有用である。
【符号の説明】
【0088】
11 電極固定フレーム
11a 孔
11b 開口(給気口)
12 放電電極
13 スリット
14 対向電極(板状電極)
14a 孔
15 開口部
16 送風ファン
16a 孔
17 電源
18 針状電極
19 反応チャンバー
19a 孔
31 吸込口
32 吹出口
33 プレフィルタ(空気清浄手段)
34 粒子荷電部(空気清浄手段)
35 粒子捕集部(空気清浄手段)
36 脱臭フィルタ(空気清浄手段)
37 送風機(送風手段)
51 試験空間
52 発生器
100 殺菌・不活化装置
200 空気清浄装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給気口より導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化して放出口より放出する殺菌・不活化装置において、
少なくとも1つの開口部が形成された平板形状をなし、前記給気口より導入した空気が前記開口部を通過するように配置された板状電極と、
前記板状電極の下流側に設けられ、前記給気口より外部空気を導入する送風ファンと、
針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、
前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、
を備えたことを特徴とする殺菌・不活化装置。
【請求項2】
前記板状電極は、表面が前記導入した空気の流れに対して略直交する方向を向くように配置されることを特徴とする請求項1に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項3】
前記開口部は、円形、楕円形、または正多角形のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の殺菌・不活化装置。
【請求項4】
前記第2電圧を、前記第1電圧に比べ、相対的に負極性としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項5】
前記針状電極の先端部は、前記開口部の中心の、前記板状電極と同一面となる位置に設置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項6】
前記電源は、前記開口部の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となるように、前記第1電圧、第2電圧を設定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項7】
前記高励起密度状態は、前記開口部の内部にプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する状態であることを特徴とする請求項6に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項8】
前記板状電極の下流側に、所定の空間を有する反応チャンバーを設けることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項9】
空気中に含まれる塵埃を除去し、且つ細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する空気清浄装置において、
外部空気を導入する吸込口、及び清浄化した空気を外部に放出する吹出口と、
前記吸込口から前記吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段と、
前記吸込口と吹出口との間に配置され、前記吸込口より吸引した空気中に含まれる塵埃を除去する空気清浄手段と、
前記吸込口と吹出口の間に配置され、空気中の細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置と、を備え、
前記殺菌・不活化装置は、
平板形状をなし、少なくとも1つの開口部が形成され、且つ表面が前記空気流の方向に対して略直交するように配置された板状電極と、
針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、
前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする殺菌・不活化装置を用いた空気清浄装置。
【請求項10】
前記殺菌・不活化装置は、更に、前記板状電極の下流側に、前記空気流の一部を前記開口部内を通過させる送風ファンを備えたことを特徴とする請求項9に記載の殺菌・不活化装置を用いた空気清浄装置。
【請求項1】
給気口より導入した空気中に含まれる細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化して放出口より放出する殺菌・不活化装置において、
少なくとも1つの開口部が形成された平板形状をなし、前記給気口より導入した空気が前記開口部を通過するように配置された板状電極と、
前記板状電極の下流側に設けられ、前記給気口より外部空気を導入する送風ファンと、
針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、
前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、
を備えたことを特徴とする殺菌・不活化装置。
【請求項2】
前記板状電極は、表面が前記導入した空気の流れに対して略直交する方向を向くように配置されることを特徴とする請求項1に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項3】
前記開口部は、円形、楕円形、または正多角形のいずれかの形状であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の殺菌・不活化装置。
【請求項4】
前記第2電圧を、前記第1電圧に比べ、相対的に負極性としたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項5】
前記針状電極の先端部は、前記開口部の中心の、前記板状電極と同一面となる位置に設置されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項6】
前記電源は、前記開口部の内部に電離、励起、解離が生じる高励起密度状態となるように、前記第1電圧、第2電圧を設定することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項7】
前記高励起密度状態は、前記開口部の内部にプラスイオン、及びマイナスイオンが混在する状態であることを特徴とする請求項6に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項8】
前記板状電極の下流側に、所定の空間を有する反応チャンバーを設けることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の殺菌・不活化装置。
【請求項9】
空気中に含まれる塵埃を除去し、且つ細菌類を殺菌し、ウィルスを不活化する空気清浄装置において、
外部空気を導入する吸込口、及び清浄化した空気を外部に放出する吹出口と、
前記吸込口から前記吹出口に向かう空気流を発生させる送風手段と、
前記吸込口と吹出口との間に配置され、前記吸込口より吸引した空気中に含まれる塵埃を除去する空気清浄手段と、
前記吸込口と吹出口の間に配置され、空気中の細菌類を殺菌し、且つウィルスを不活化する殺菌・不活化装置と、を備え、
前記殺菌・不活化装置は、
平板形状をなし、少なくとも1つの開口部が形成され、且つ表面が前記空気流の方向に対して略直交するように配置された板状電極と、
針形状をなし、先端部が前記開口部の略中心部位に設けられ、前記板状電極と絶縁された針状電極と、
前記板状電極に第1電圧を印加し、前記針状電極に第2電圧を印加する電源と、を備えたことを特徴とする殺菌・不活化装置を用いた空気清浄装置。
【請求項10】
前記殺菌・不活化装置は、更に、前記板状電極の下流側に、前記空気流の一部を前記開口部内を通過させる送風ファンを備えたことを特徴とする請求項9に記載の殺菌・不活化装置を用いた空気清浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−115569(P2011−115569A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241971(P2010−241971)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年6月9日、社団法人日本空気清浄協会発行の「プレISCC2010空気清浄とコンタミネーションコントロール研究発表会予稿集」に発表
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年6月9日、社団法人日本空気清浄協会発行の「プレISCC2010空気清浄とコンタミネーションコントロール研究発表会予稿集」に発表
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】
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