説明

毛抜

【課題】 本発明は、毛抜本体が自動的に後方に移動する毛抜であり、構造を簡単にしてコストを抑えることを課題とする。また、毛抜本体を取り付けるケーシングを毛抜本体を後方に移動させる構成も含めて一体的に形成することを課題とする。
【解決手段】 把持部が、それ自身が揺動するための可撓部と、挟持板滑動用のガイド溝とを有し、ガイド溝は可撓部よりも把持部前端寄りに設けられており、ガイド溝内又はガイド溝よりも前側に形成された押圧部と接する両挟持板の両表面部は、押圧部と接する部分よりも前端に行くに従って接近するように傾斜しており、押圧部が挟持板の表面部を押圧することにより、挟持板の前端が閉じ、毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に一般大衆が使用する毛抜であって、特に、把持部を押圧したときに毛抜本体の挟持板が閉じて毛を挟持し、さらに毛抜本体が後方に自動的に移動して毛を引き抜く毛抜に関する。
【背景技術】
【0002】
毛抜本体とケーシングとから成り、ケーシングの把持部を押圧することにより毛抜本体の前端が閉じて毛を挟持し、さらに毛抜本体が自動的に後方に移動して毛を引き抜く自動式毛抜は古くから存在している(例えば、特許文献1参照。)。
また、ケーシングの中に毛抜本体が移動可能に取り付けられ、ケーシングに取り付けられた一対のレバーで毛抜本体の表面部を押圧したときに、その表面部が押圧部上を滑動しながら毛抜本体の前端が閉じ、さらに毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜く自動式毛抜も存在している(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】実公昭13−18679号公報
【特許文献2】米国特許第2533801号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、毛抜本体が自動的に後方に移動する毛抜であり、構造を簡単にしてコストを抑えることを課題とする。また、毛抜本体を取り付けるケーシングを毛抜本体を後方に移動させる構成も含めて一体的に形成することを課題とする。
【0004】
特許文献1の毛抜は、ケーシングの把持部と毛抜本体の挟持板を連結子で連結した構成である。また、連結子と把持部の結合及び連結子と挟持板の結合はピンによる結合である。したがって、毛抜本体を移動させる構成として連結子とピンを用いているのでその分だけ部品が多い。また、その連結子をピンによって結合するので構成が複雑となり、製造工程も多くなるからコストが高くなる。
【0005】
特許文献2は、ケーシングの中に毛抜本体が装着され、レバーを回動することによって毛抜本体の前端を閉じて後方に移動させる構成である。この発明もレバーを支軸でケーシングに装着するのでその分だけ部品が多い。また、ケーシングとレバーを一体的に形成することができず、それらを支軸によって結合するので構成が複雑となり、製造工程が多くなるからコストが高くなる。そこで、本発明は従来よりも部品数を少なくして簡単な構造とし、コストの低い毛抜を提供することを目的とする。さらに、従来はケーシングのほかに毛抜本体を移動させるための部品を必要としていたのでそれらを別々に形成して支軸で結合しなければならなかった。本発明は、ケーシング自体が毛抜本体を移動させる機能を有することとして、ケーシングと毛抜本体の移動構造を一体的に形成することができる毛抜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケーシングと毛抜本体を含んで成り、ケーシングは、その基部と、該基部から対向して延びる一対の把持部とで形成されており、毛抜本体は、一対の対向する挟持板を有し、その一対の挟持板は後端が結合され前端は開閉自在であり、且つ把持部の内側で前後方向に移動可能にケーシングに取り付けられており、毛抜は、毛抜本体を常時前方に弾性的に押圧する付勢構造と、毛抜本体の前方移動を所定の位置で停止する停止構造を有し、前記把持部を押圧したときに、挟持板の前端が閉じ、毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜く毛抜において、把持部は、それ自身が揺動するための可撓部と、挟持板滑動用のガイド溝とを有し、ガイド溝は可撓部よりも把持部前端寄りに設けられており、ガイド溝内又はガイド溝よりも前側に形成された押圧部と接する両挟持板の両表面部は、押圧部と接する部分よりも前端に行くに従って接近するように傾斜しており、押圧部が挟持板の表面部を押圧することにより、挟持板の前端が閉じ、毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜く構成である。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の構成であって、把持部のガイド溝内又はガイド溝よりも前側に、毛抜本体の挟持板の表面部を押圧する押圧部が形成されている。さらに、両挟持板の両表面部は押圧部と接する部分よりも前端に行くに従って接近するように傾斜している。したがって、両把持部が接近するように両把持部を押圧すると、押圧部が両挟持板の表面部を押圧して両挟持板の前端を閉じ毛が挟持される。さらにそれよりも強い力で両把持部を押圧すると、押圧力の中の毛抜本体を後方に移動させる分力が、毛抜本体を常時前方に弾性的に押圧する付勢力よりも大きくなって毛抜本体を後方に移動させ毛を自動的に引き抜くことができる。そして、押圧部は把持部のガイド溝内又はガイド溝よりも前側に形成されている。押圧部は挟持板の表面部を押圧するものであるから、押圧部はケーシングと一体的に形成することができる。したがって、挟持板を押圧するために別部品を形成し、ピンなどの結合手段を使用してケーシングと結合する必要がないので構成が簡単である。これにより製造コストを従来よりも低くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明する。ケーシング1は、当初、接合線2を中心に上下別々に分割されて形成され、形成後に接合線2の部分で接合することにより形成される。ケーシング1は、基部3と、その基部3から一体に延びる一対の把持部4,4から成る。それぞれの把持部4の前端部14に押圧部5が形成されている。押圧部5は前端部14の最前部に形成されているが、それよりも後方に形成してもよい。把持部4の前端部14以外の部分はABS樹脂で基部3と一体に形成され、前端部14はポリアセタール樹脂で一体的に形成されている。ポリアセタール樹脂は、ABS樹脂に比べて摩擦係数が小さく耐摩耗性に優れているという性質を有する。したがって、他の部材と接触したときに滑りやすく摩耗が少ない。当初の分割されたケーシング1の製造方法は、射出成型した前端部14以外の部分と、射出成型した前端部14を嵌め殺しにより結合する方法が好ましい。嵌め殺しに代えて接着してもよい。その際、前端部14の断面もコ字形に形成する。あるいは、最初に前端部14以外の部分を射出成型し、その成型したものに前端部14を2度目の射出成型によって形成してもよい。また本発明は、前端部14を別体に形成する構成に限定されるものではなく、前端部14と把持部4を同じ材料で一体に形成してもよい。
【0009】
さらに図3に示すように、前端部14は最前端に行くに従って幅が狭くなる構成である。このように構成した理由は次のとおりである。すなわち、例えば鏡を見ながら眉毛を抜くときに挟持板17は顔に垂直に当てずに斜めに当てて抜くのである。そのために、図3に示すように挟持板17の前端26は斜めに形成されているのである。垂直に当てると把持部4が邪魔になって挟持板17の前端26が鏡で確認できず、目標の毛を円滑に挟んで引き抜くことができないからである。しかし挟持板17を顔に斜めに当てても、把持部4の前部の幅が広いと、その把持部4の前部が邪魔になって挟持板17の前端26が確認できない。そこで、前端部14の幅が最前端に行くに従って狭くなるように形成することよって、把持部4の広く張り出していた前端部14の幅が狭くなり、その狭くなった部分から挟持板17の前端26を鏡で見ることができるようにしたものである。なお、挟持板17の前端26は斜めでなく毛抜の長さ方向に対して垂直であってもよい。
【0010】
把持部4は、全長に亘って断面がコ字形に形成されている。したがって、前端部14の断面もコ字形である。把持部4の基部3寄りの部分の断面は前述したようにコ字形であるが、図1に示すように可撓部15が基部3寄りに形成されている。可撓部15はその側壁16の高さを他の部分よりも低くすることにより構成される。したがって、把持部4はこの可撓部15の部分で撓むことができる。
【0011】
ケーシング1の基部3内にバネの収納室6が形成されている。この収納室6内にコイルバネ7が収納されている。さらに、収納室6の前面に端壁9が形成されている。そして、その端壁9のやや前方に把持部4の後壁8が形成されている。これらの後壁8と端壁9にはそれぞれ毛抜本体12の後端部13を前後方向に案内する細長い挿通孔10,11が設けられている。挿通孔10,11は、当初の分割されたケーシング1のそれぞれの分割された後壁8及び端壁9の縁部に凹部として形成され、分割されたケーシング1を接合することにより挿通孔10,11が形成される。
【0012】
毛抜本体12は、一対の挟持板17,17の後端部を接合し、前端部を開いた状態に形成されている。なお、挟持板17は2枚の金属板を接合したものでもよく、1枚の細長い金属板を中央で折り曲げたものでもよいことは勿論である。図5に示すように、挟持板17の後部には後退規制部18,18と前進規制部19,19が形成されている。後退規制部18は後壁8よりも前方にあって、その後退規制部18が後壁8に係止することにより毛抜本体12の後退をこの位置で規制する。また、前進規制部19は端壁9よりも後方にあって、前進規制部19が端壁9に係止することにより、把持部4に力の加わっていない毛抜本体12の前進をこの位置で規制する。毛抜本体12はコイルバネ7によって常時前方に弾性的に押圧されているから、毛抜本体12はその前進規制部19が端壁9に係止してこの位置で止まっている。なお、前述したコイルバネ7及び毛抜本体12は、2つに分割されているケーシング1を接合するよりも前にケーシング1内に取り付け、その後で分割されているケーシング1を接合する。ケーシング1を接合した後ではコイルバネ7及び毛抜本体12を取り付けることができないからである。コイルバネ7に代えて他の弾性部材を使用してもよい。なお、組立て前の分割されているケーシング1の2つの分割部材は同一形状でなくてもよい。例えば、基部3を曲がった形状にするために一方の分割部材の基部に該当する部分は上方に反り、他方の分割部材の基部に該当する部分は下方に反るように形成し、両分割部材を組み立てたときに基部3が全体として弧状をなすように曲げて形成してもよい。また、一対の可撓部15同士、又は一対の挟持板17同士の撓む部分の厚さや幅などを違えて形成し、曲げ剛性の異なるようにしてもよい。このように形成すれば、毛を抜くときに、まず曲げ剛性の大きな方に存在する挟持板の前端26に抜こうとする毛を宛がい、次いで把持部4,4を押圧すると、曲げ剛性の小さな他方の挟持板17が先に曲がって毛を挟むことができる。すなわち、毛抜の位置決めが容易で確実に毛を捉えることができる。
【0013】
把持部4は、その可撓部15よりも前端寄りにガイド溝20が設けられている。ガイド溝20は断面がコ字形であって、ガイド溝20は、その両側壁21,21が毛抜本体12の挟持板17の両側に沿うことにより、その中を通過する毛抜本体12の挟持板17をガイドする作用をなす。ガイド溝20のある部分の外側面22はそれよりも後方の把持部外側面よりも段差をつけて低く形成されている。これは、キャップ23を着脱自在に取り付けるためのものである。キャップ23の2つの後端部にはそれぞれ係止切欠24が設けられ、この係止切欠24が外側面22に設けられている円形突部25に係止してキャップ23は取り付けられる。さらに、キャップ23の後端部の両側面にもそれぞれ一対の切欠が設けられ、それぞれの切欠に外側部22の側面に設けられた突起28が嵌合する。これにより、毛抜にキャップ23を取り付けたときに、突起28が切欠に係止して把持部4,4が開いたり閉じたりしない。
【0014】
次に本発明の使用方法を説明する。まず、図2に示すように挟持板17,17の前端26,26が開いた状態で抜こうとする所定の毛に近づける。そして、指で把持部4,4を押圧する。押圧する位置は円形突部25あるいはその付近が好ましい。押圧するについて指が負担する力が少なくて済むからである。また、押圧位置が毛抜の前端に近い位置であれば、抜こうとする毛と指との距離が近くなって、的確に毛を挟むことができるからである。毛と指との距離が遠いときは、挟持板17,17の前端26,26をその遠い離れた位置でコントロールしなければならず、細い毛を的確に挟持するのに手間がかかる。指で把持部4,4を押圧すると、押圧部5,5が挟持板17,17の表面部27,27を押圧し、前端26,26が閉じて所定の毛を挟む。このときに、毛抜本体12はほとんどあるいは全く後方に移動しない。挟持板17,17で毛を挟むだけの力では、コイルバネ7の弾性力に抗して毛抜本体12を移動させるに不十分だからである。したがって、さらに大きな力で把持部4,4を押圧すると、挟持板17,17の表面部27,27が押圧部5,5上を滑りながら毛抜本体12がコイルバネ7を圧縮する。これによって毛抜本体12は後方に自動的に移動し毛を引き抜くことができる。引き抜いた後で把持部4,4を押圧から開放すると、毛抜本体12は前進し、挟持板17,17の前端26,26は図1又は図2に示すように再び開く。なお、バネ定数の小さなコイルバネ、すなわち小さな力で大きく変形するコイルバネ7を用いるときは、挟持板17,17で毛を挟むときにコイルバネ7が圧縮されて毛抜本体12が同時に移動する。また、押圧部5と接する両挟持板17,17の両表面部27,27が、前端に行くに従って接近するように傾斜するその傾斜角を大きくしたときは、把持部4,4を押圧する力の毛抜本体12を後方に移動させる分力の割合が大きくなって、この場合も挟持板17,17で毛を挟むときにコイルバネ7が圧縮されて同時に毛抜本体12が移動する。本発明は、これらのような構成であっても差し支えない。また、図2において毛抜の全長は約90mmであり、毛抜の上下方向の最大幅は約25mmである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の断面図
【図2】本発明の正面図
【図3】本発明の平面図
【図4】図2におけるB−B断面図
【図5】毛抜本体の平面図
【図6】挟持板の前端を閉じた状態の正面図
【図7】キャップを装着した本発明の正面図
【図8】キャップを装着した本発明の平面図
【符号の説明】
【0016】
1 ケーシング
2 接合線
3 基部
4 把持部
5 押圧部
6 バネの収納室
7 コイルバネ
8 後壁
9 端壁
10 挿通孔
11 挿通孔
12 毛抜本体
13 後端部
14 前端部
15 可撓部
16 側壁
17 挟着板
18 後退規制部
19 前進規制部
20 ガイド溝
21 側壁
22 外側面
23 キャップ
24 係止切欠
25 円形突部
26 挟持板の前端
27 挟持板の表面部
28 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと毛抜本体を含んで成り、ケーシングは、その基部と、該基部から対向して延びる一対の把持部とで形成されており、毛抜本体は、一対の対向する挟持板を有し、その一対の挟持板は後端が結合され前端は開閉自在であり、且つ把持部の内側で前後方向に移動可能にケーシングに取り付けられており、毛抜は、毛抜本体を常時前方に弾性的に押圧する付勢構造と、毛抜本体の前方移動を所定の位置で停止する停止構造を有し、前記把持部を押圧したときに、挟持板の前端が閉じ、毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜く毛抜において、
把持部は、それ自身が揺動するための可撓部と、挟持板滑動用のガイド溝とを有し、ガイド溝は可撓部よりも把持部前端寄りに設けられており、ガイド溝内又はガイド溝よりも前側に形成された押圧部と接する両挟持板の両表面部は、押圧部と接する部分よりも前端に行くに従って接近するように傾斜しており、押圧部が挟持板の表面部を押圧することにより、挟持板の前端が閉じ、毛抜本体が後方に移動して毛を引き抜くことを特徴とする毛抜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−229386(P2007−229386A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58146(P2006−58146)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)