説明

気中多回路開閉器

【課題】小型化ができるとともに、共通母線と対地間の絶縁距離の確保のための設計を容易に行うことができる気中多回路開閉器を提供する。
【解決手段】気中多回路開閉器は、可動接触子24に対して開閉時の駆動力を付与する主軸28と可動接触子24の間に、回路開閉部10の各相の共通母線35を配置して、可動接触子24と電気的に接続する。可動接触子24を間にして、共通母線35とは反対側に固定接触子を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気中多回路開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多回路開閉器では、開閉器ケース内に各回路毎にユニット化された回路開閉器を複数個並列に配置している。これらの各回路開閉器の電源側は各相毎に共通の母線にて接続されている。多回路開閉器は、道路等に地上設置されることから、従来からできるだけコンパクト化が求められている。
【0003】
そこで、ガス多回路開閉器では、開閉部を密閉した密閉ケース内に配置するとともに、該ケース内には消弧性ガスを封入して、開閉部等の課電部位と密閉ケース間(すなわち、対地間)との絶縁距離を短くすることにより、多回路開閉器全体のコンパクト化が図られている。
【0004】
なお、特許文献1では、ガス多回路開閉器において、回路開閉部毎にユニット化された開閉器のケース内上部に母線を配置した構成が示されている。
又、特許文献2では、ガス多回路開閉器の各回路開閉部を収容する密閉ケース内において、共通母線を配置し、該共通母線に固定接触子を接続するとともに、該固定接触子に対して接離する可動接触子を配置した構成が開示されている。
【0005】
又、特許文献3では、気中多回路開閉器において、回路開閉部の背面側に、各相共通母線を配置した構成が開示されている。
【特許文献1】特開2002−279863号公報、(図1)
【特許文献2】実公平5−48348号公報、(第2図)
【特許文献3】特開2003−68173号公報、(図2(a))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、地球温暖化防止のため、消弧性ガスの使用を避けて、気中多回路開閉器の要望が多くなってきている。しかし、気中多回路開閉器では、消弧性ガスを使用しないため、開閉部等の課電部位と対地間の絶縁距離を短くできないことから、コンパクト化が難しい問題がある。
【0007】
例えば、特許文献3では、共通母線は、回路開閉部の背面側に設けた構成となっているが、該共通母線と、開閉器ケースの背面側側壁との対地間の絶縁距離を確保した上で、開閉器ケースの背面側側壁と回路開閉部との間に、共通母線専用の収納スペースが必要となる。又、当然のことながら、共通母線と対地間の絶縁距離の確保とは別に、回路開閉部の課電部位と、対地間の絶縁距離も確保する必要があり、このため、開閉器ケース全体としては大型となる問題がある。
【0008】
特許文献1のガス多回路開閉器で開示された構成のように、共通母線を開閉器ケース内の上部に配置した構成を気中多回路開閉器に採用した場合においても、同様に、開閉器ケースの天板と回路開閉部との間に、共通母線のため収納スペースが必要となる。そして、この場合においても、当然のことながら、共通母線と対地間(すなわち、対地間)の絶縁距離の確保とは別に、回路開閉部の課電部位と、対地間の絶縁距離も確保する必要があり、このため、開閉器ケース全体としては大型となる問題がある。
【0009】
又、特許文献2のガス多回路開閉器では、各回路開閉部を収容する密閉ケース内において、上部空間に共通母線を配置して、回路開閉器の密閉ケースの天板に対して絶縁距離aを隔てて離間させている。そして、共通母線に接続されて、下方に延出された固定接触子に対して接離する可動接触子を、下部空間に配置し、さらに、該可動接触子を駆動するレバーの主軸(開閉駆動杆)を、前記共通母線に対して絶縁距離bを隔てて中間部空間に配置する構成としている。
【0010】
この特許文献2のような共通母線の配置構成を気中多回路開閉器に採用する場合、共通母線と回路開閉器の密閉ケースの天板との絶縁距離aが必要なことから、その分、スペースを確保する必要があり、開閉器全体として大型化する問題がある。又、共通母線と回路開閉器の密閉ケースの天板との絶縁距離aと、可動接触子を駆動するレバーの主軸(開閉駆動杆)と前記共通母線間の絶縁距離bを確保するという2段階の設計を行う必要があり、設計作業が面倒となる問題があった。
【0011】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、小型化ができるとともに、共通母線と対地間の絶縁距離の確保のための設計を容易に行うことができる気中多回路開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、固定接触子と、該固定接触子に対して接離する可動接触子とを備えた回路開閉部を複数並列させて配置した気中多回路開閉器において、前記可動接触子に対して開閉時の駆動力を付与する主軸と前記可動接触子の間に、前記回路開閉部の各相の共通母線を配置して、前記可動接触子と電気的に接続し、前記可動接触子を間にして、前記共通母線とは反対側に前記固定接触子を配置したことを特徴とする気中多回路開閉器を要旨とするものである。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1において、前記可動接触子が前記主軸に対して絶縁性を備えるリンク機構を介して作動連結されており、該リンク機構と、前記共通母線とを無接触で交差するように配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2において、前記リンク機構が、前記主軸に連結された駆動レバーと、該駆動レバーと前記可動接触子間に連結された作動リンクとを含み、前記作動リンクには、前記共通母線が無接触で貫通する貫通空間部を有する貫通部が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、共通母線と、相間方向とは直交する対地との間の絶縁距離として、主軸との絶縁距離だけを確保するだけでよくなり、気中多回路開閉器の設計作業を楽に行うことができる。又、共通母線の収納スペースは、主軸と可動接触子の間となり、共通母線専用の収納スペースが必要でなくなるため、回路開閉部の外部に共通母線専用の収納スペースを設ける場合に比して、気中多回路開閉器全体を小型化できる効果を奏する。
【0016】
請求項2の発明によれば、リンク機構と、前記共通母線とを無接触で交差するように配置することにより、共通母線によりリンク機構の作動が妨害されることがない効果を奏する。
【0017】
請求項3の発明によれば、作動リンクには、前記共通母線が無接触で貫通する貫通空間部を有する貫通部が設けられていることにより、共通母線を無接触で貫通させることができ、請求項3の効果を容易に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜10を参照して説明する。
図1において、歩道等に設置される気中多回路開閉器1の外箱2は、四角箱型に形成され、その前面の開口部3には、図示しない開閉扉が設けられている。外箱2の上下方向において、略中央部よりも上部空間は機械室4とされ、下部空間は、地中配電用のケーブル端末(図示しない)を収納するケーブル接続室5とされている。なお、本明細書では、図1において、左方を左、右方を右、上方を上、及び下方を下とする。
【0019】
機械室4には、複数の(本実施形態では5回路)の回路開閉部10が左右一列に並列配置されるように、外箱2に対して、図1、図2及び図6に示す略四角箱体をなす本体ケース7を介して支持されている。
【0020】
本体ケース7内には、5回路分の開閉器ユニットUが並列した状態で収容固定されている。開閉器ユニットUは、さらに、開閉部ユニットUsと、開閉部ユニットUsの上部に設けられた自動駆動機構ユニットUaと、開閉部ユニットUsの前部に設けられた手動機構ユニットUhとを備えている。
【0021】
(開閉部ユニットUs)
開閉部ユニットUsについて説明する。
図2、図7に示すように開閉部ユニットUsの内部には、回路開閉部10を構成する3つの開閉部11,12,13が、各相(U相,V相,W相)に対応するように前後方向に並んで設けられている。各相の開閉部11,12,13は、開閉部支持枠15に対して支持されている。開閉部支持枠15は、図7に示すように互いに相対するように所定間隔を隔てて離間されるとともに前後に配置された一対の側板16、17と、両側板16,17の上端を連結する天板14とから構成されている。
【0022】
図2、図4に示すように両側板16,17における左側端の上部間、及び下部間には、一対の支持板18,19がそれぞれ架設されている。
開閉部11,12,13は、互いに所定間隔を隔てて支持板18,19に取付け固定されているところだけが異なるだけで、各部品構成は同じであるため、以下で、開閉部13の構成を説明し、他の開閉部11,12の各構成については、開閉部13の各構成と同一符号を付して、その説明を省略する。
【0023】
図4に示すように、支持板18には、可動接触子用の支持部材20がボルトにより前後方向に沿って取付け固定されている。又、支持板19には、固定接触子用の支持部材21が、ボルトにより取付固定されている。両支持部材20,21は、絶縁性を有する合成樹脂材料にて形成されている。
【0024】
支持部材20の先端下面から中央部下面にかけて、前後方向の中央には、収納凹部22が形成されている。接続端子23は、該収納凹部22内に下端部が突出するように、支持部材20の先端部に対して貫通固定されている。接続端子23の下端部には、所定間隔を隔てて離間した一対の可動接触子24が軸25にて回動自在に支持されている(図5参照)。両可動接触子24はブレードタイプの可動接触刃に形成され、両可動接触子24の先端下部には、耐弧メタル24aが設けられている。
【0025】
側板16,17の上部間には金属製の主軸28が回動自在に架設されている。主軸28には、可動接触子24と対応する部位は角柱状に形成され、該部位には、絶縁性合成樹脂からなる駆動レバー29が一体となるように取付け固定されている。駆動レバー29は、主軸28に対して外嵌されて取着される取付部29aと、該取付部29aの両端から突出した一対のレバー部29bとからなる。
【0026】
前記駆動レバー29と、可動接触子24の上部において長手方向の中央には絶縁性合成樹脂からなる作動リンク30が連結されている。作動リンク30は、Y字状に形成されており、図5及び図7に示すように、下部が一対の可動接触子24間に挿入されて、可動接触子24に対してピン30aにて回動自在に連結されている。又、作動リンク30の中央部から上部は二股状に分岐されて、一対の分岐部31を有する。なお、この分岐部31間は、貫通空間部としての空間Kとされている。一対の分岐部31は、図5に示すように各レバー部29bの外側面に対してピン32にて回動自在に連結されている。
【0027】
前記駆動レバー29と、作動リンク30とによりリンク機構Lが構成されている。
接続端子23の上端部は、支持部材20の上面に露出されている。そして、各開閉器ユニットUにおいて、支持部材20の上端面には、共通母線35が、ボルト36により締付固定されている。共通母線35は、直線状に延びて配置されており、可動接触子24の移動軌跡を含む平面に平行となるように配置されている。又、共通母線35と主軸28とは絶縁距離Rを隔てて離間されている。
【0028】
すなわち、共通母線35は、金属製の導体からバー状に形成されるとともに、最も右に位置する開閉器ユニットU(図6においては、最も左方に位置する開閉器ユニットU)を除いた開閉器ユニットUにおける作動リンク30の分岐部31に対して無接触状態で空間Kを貫通するように配置されている。空間Kを有する分岐部31は、貫通部に相当する。
【0029】
なお、最も右に位置する開閉器ユニットUとは、図1を基準とした方向であり、図6では、最も右に位置する開閉器ユニットUのことである。
一方、図4に示すように、固定接触子用の支持部材21の先端には、接続端子27が上下に貫通して固定されている。接続端子27の上端部には、固定接触子37が一体に設けられている。固定接触子37は、前記一対の可動接触子24間の離間距離よりも、若干厚みがあるように板状に形成されており、一対の可動接触子24により、挟着されて接離可能な位置に配置されている。固定接触子37において、可動接触子24に対して開閉作動時に相対する面側には耐弧メタル37aが設けられている。又、支持部材21には消弧装置38が取付固定されている。該消弧装置38は、可動接触子24を通過可能としたU字状の切欠部を有する複数の磁性板を可動接触子24の移動方向に沿うように所定間隔毎に積層し、各磁性板を絶縁性を有する支持部材(図示しない)により支持することにより構成されている。該消弧装置38は、可動接触子24が図4の二点差線で示す投入状態から図4の実線で示す開路状態となる際に、可動接触子24と固定接触子37との間に発生するアークを消弧することができる。
【0030】
各相の接続端子27の下端部は、それぞれ接続導体39がボルト39aにて固定されており、接続導体39を介して、本体ケース7の下部前面に突設されたブッシング41に対して接続されている。
【0031】
各ブッシング41は、それぞれ幹線ケーブル、負荷接続ケーブル及び分岐ケーブル(いずれも図示しない))を介して、電力供給源、需要家、及び他の多回路開閉器等(いずれも図示しない)に接続されている。
【0032】
各開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入状態である場合、幹線ケーブルからの電力は1つの各開閉器ユニットU及び共通母線35を介して残りの4つの各開閉器ユニットUにそれぞれ分岐し、分岐ケーブル及び負荷接続ケーブルを介して需要家及び他の多回路開閉器等に供給される。すなわち、5つの各開閉器ユニットUのうち、2つの各開閉器ユニットUは、主回路開閉器として機能し、残りの3つの各開閉器ユニットUは、分岐開閉器として機能する。
【0033】
開閉部ユニットUsの内部には、各相毎に、ボックス状をなす絶縁バリヤ43が取付固定されている。絶縁バリヤ43は、絶縁性の合成樹脂から形成されており、図3(a)及び図7に示すように、前後に位置するとともに上下方向に延びる一対の側壁43a,43bと、側壁43a,43bの上部及び下部を連結する天板43c及び底板43dと、側壁43a,43bの右側部間を閉塞する側壁43eとを有する。そして、絶縁バリヤ43は、左側部が開口されていて、図3(a)に示すように、可動接触子24、消弧装置38、及び、支持部材20、21を覆うように配置されている。
【0034】
又、図6に示すように、側板16、17の左側端面には、板状をなす絶縁バリヤ44が固定されている。絶縁バリヤ44は、絶縁性の合成樹脂から形成されており、隣接する他の各開閉器ユニットUや、本体ケース7との絶縁を図っている。なお、図3(b)では、説明の便宜上、絶縁バリヤ43,44は省略されている。又、図2では、絶縁バリヤ44は省略されている。
【0035】
又、図8(a)に示すように、主軸28は、一端が側板16を貫通して、側板16から前方へ突出した突出端33を備えており、該突出端33には、被動レバー34が固定されている。そして、この被動レバー34を介して、主軸28は、手動機構ユニットUhを構成している手動機構部40により、投入開放が可能であるとともに、自動駆動機構ユニットUaを構成している自動駆動機構部90により、投入開放作動可能である。
【0036】
(手動機構ユニットUh)
次に、主軸28を駆動する手動機構ユニットUhを図8(a)、及び図8(b)を参照して説明する。
【0037】
手動機構ユニットUhを構成している手動機構部40は、支持板45、補助板48に対して組み付けられた、ハンドルリンク50、作動レバー52、バネ案内部材54、圧縮コイルスプリング56、連結リンク57等により構成されている。
【0038】
手動機構部40は、手動投入時において、図示しない開閉操作ハンドルが支持板45及び補助板48に回動自在に支持されたハンドル軸49に取り付けされた状態で、開放位置から投入位置に、すなわち、図8(b)のハンドル軸49が時計回りに回動操作する。すると、ハンドルリンク50が圧縮コイルスプリング56を圧縮しながら、時計回りに回動される。そして、作動レバー52の両端のピン51を結ぶデッドポイントをハンドルリンク50が越えると、圧縮コイルスプリング56の付勢力により作動レバー52が反時計回りに回動される。この結果、連結リンク57を介して、被動レバー34が回転され、主軸28が投入方向に回動されて、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入される。
【0039】
一方、手動開放時において、図示しない開閉操作ハンドルがハンドル軸49に取り付けされた状態で、投入位置から、開放位置に、すなわち、図8(b)のハンドル軸49が開閉操作ハンドルを反時計回り方向へ回動操作する。すると、ハンドルリンク50が、反時計回り方向に回動され、作動レバー52が時計回り方向に回動され、連結リンク57及び被動レバー34を介して、主軸28が開放方向に回動されて、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が開放される。
【0040】
(自動駆動機構ユニットUa)
次に天板14上に設置された自動駆動機構ユニットUaを図8(a)、図9、図10(a)、及び図10(b)を参照して説明する。
【0041】
自動駆動機構ユニットUaを構成している自動駆動機構部90は、投入コイル60、トリップコイル63、自動トリップリンク65、操作板66、第1の投入レバー69、第1の投入リンク70、第2の投入リンク72、第2の投入レバー77、連結レバー83、掛止部材80等により構成されている。
【0042】
図10(b)の自動開放状態で、自動投入される場合、投入コイル60のプランジャ74が瞬時励磁されて突出されると、プランジャ74により、第1の投入リンク70と第2の投入リンク72を軸着するプランジャピン73が図9に示す位置に移動する。
【0043】
このプランジャピン73の移動に伴って、第2の投入リンク72が、第2の投入レバー77、及び第2の投入レバー77に固着されたソレノイド軸76を時計回り方向へ回動させる。この回動により、図8(a)に示す連結レバー83を同方向に回動させて、連結レバー83に連結された連結部材85を作動させることにより、作動レバー52を手動投入時と同様に反時計回り方向へ回動させ、連結リンク57を介して、被動レバー34が回転されて、主軸28を投入方向に回転させる。この結果、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が投入される。図9では、自動駆動機構部90が投入状態時の各部材の位置が示されており、自動トリップリンク65が第1の投入レバー69に固着されたトリップピン71に対して当接状態に保持されている。
【0044】
又、図9の自動投入状態において、自動開放する場合、トリップコイル63の図示しないプランジャが操作板66の前端部を瞬時に押圧作動する。この結果、操作板66が、図9において、反時計回り方向に回動されることにより、自動トリップリンク65のトリップピン71に対する掛止めが解除される。この結果、圧縮コイルスプリング56の付勢力により、作動レバー52が時計回り方向に回動され、連結リンク57を介して被動レバー34が開放方向に回転される。そして被動レバー34の開放方向への回動に伴って、主軸28を開放方向に回転させる。この結果、開閉器ユニットUの開閉部11,12,13が開放される。又、図8(a)、(b)に示す作動レバー52が時計回り方向に回動され、連結部材85を介して第2の投入レバー77が図10(a)において、反時計回り方向に回動される。この結果、第2の投入リンク72が後方へ押圧され、図10(b)の状態になる。
【0045】
さて、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1) 本実施形態の気中多回路開閉器では、可動接触子24に対して開閉時の駆動力を付与する主軸28と可動接触子24の間に、回路開閉部10の各相の共通母線35を配置して、可動接触子24と電気的に接続するようにした。そして、可動接触子24を間にして、共通母線35とは反対側に固定接触子37を配置した。
【0046】
この結果、共通母線35と、相間方向とは直交する対地との間の絶縁距離として、主軸28との絶縁距離R(図3(a)参照)だけを確保するだけでよくなり、気中多回路開閉器の設計作業を楽に行うことができる。又、共通母線35の収納スペースは、主軸28と可動接触子24の間の空間となり、共通母線専用の収納スペースが必要でなくなるため、回路開閉部10の外部に共通母線専用の収納スペースを設ける場合に比して、気中多回路開閉器全体を小型化できる。
【0047】
(2) 本実施形態の気中多回路開閉器では、可動接触子24の移動軌跡を含む平面に平行に共通母線35を配置した。
この結果、可動接触子24の移動軌跡を含む平面に平行に共通母線35を配置することにより、主軸28の駆動力を可動接触子24に伝達する機構(すなわち、駆動レバー29や、作動リンク30からなるリンク機構L)の移動軌跡と共通母線35との干渉を排除できる。又、該機構の組立ても、共通母線35とは平行に配置するだけでよいため、組立を容易に行うことができる。
【0048】
(3) 本実施形態では、可動接触子24が主軸28に対して絶縁性を備えるリンク機構Lを介して作動連結するようにした。そして、リンク機構Lと、共通母線35とを無接触で交差するように配置するようにした。
【0049】
この結果、リンク機構Lと、共通母線35とを無接触で交差するように配置することにより、共通母線35によりリンク機構Lの作動が妨害されることがない。
(4) 本実施形態では、リンク機構Lが、主軸28に連結された前記駆動レバー29と、前記駆動レバー29と可動接触子24間に連結された作動リンク30とを含むようにした。そして、作動リンク30には、共通母線35が無接触で貫通する空間K(貫通空間部)を有する分岐部31(貫通部)を設けるようにした。
【0050】
この結果、作動リンク30には、共通母線35が無接触で貫通する空間Kを有する分岐部31が設けられていることにより、共通母線35を無接触で貫通させることができる。
(5) 本実施形態では、共通母線35を直線状に形成した。
【0051】
この結果、共通母線35を直線状に形成しているため、リンク機構Lを組立てした後、共通母線35を組立したリンク機構Lに無接触で配置する際、いずれの回路開閉器のリンク機構Lに対しても、該リンク機構Lに対して干渉することなく、簡単に共通母線35を配置することができる。
【0052】
なお、前記実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
○ 前記実施形態では、貫通部として分岐部31としたが、この形状に限定するものではない。例えば、作動リンク30として分岐部を設ける代わりに、作動リンク30に対して共通母線35が無接触状態で貫通する貫通孔を設けても良い。
【0053】
○ さらに、貫通部として一対の作動リンクを離間配置し、その離間して形成された空間部を貫通空間部としてもよい。この場合、貫通部は、一対の作動リンク全体部位となる。
【0054】
○ 前記実施形態では、各開閉器ユニットUを5回路分を設けたが、2〜4回路又は6回路分以上の開閉器ユニットを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】第5実施形態の気中多回路開閉器の正面図。
【図2】同じく回路開閉器の左側面図。
【図3】(a)は同じく回路開閉器の背面から見た一部省略断面図、(b)は、同じく、回路開閉器の一部省略背面図。
【図4】同じく回路開閉器の要部断面図。
【図5】回路開閉器の可動接触子と、共通母線の斜視図。
【図6】同じく回路開閉器を並列した状態を示す要部背面図。
【図7】同じく回路開閉器の右側面図。
【図8】(a)は開閉器ユニットUの正面図、(b)は手動機構ユニットUhの正面図。
【図9】自動駆動機構ユニットUaの概略を示す断面図。
【図10】(a)は自動駆動機構ユニットUaの投入から開放への移行を示す説明図、(b)は自動駆動機構ユニットUaの自動開放状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0056】
10…回路開閉部、24…可動接触子、28…主軸、29…駆動レバー、
30…作動リンク、31…分岐部(貫通部)、35…共通母線、
37…固定接触子、L…リンク機構、K…空間(貫通空間部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接触子と、該固定接触子に対して接離する可動接触子とを備えた回路開閉部を複数並列させて配置した気中多回路開閉器において、
前記可動接触子に対して開閉時の駆動力を付与する主軸と前記可動接触子の間に、前記回路開閉部の各相の共通母線を配置して、前記可動接触子と電気的に接続し、
前記可動接触子を間にして、前記共通母線とは反対側に前記固定接触子を配置したことを特徴とする気中多回路開閉器。
【請求項2】
前記可動接触子が前記主軸に対して絶縁性を備えるリンク機構を介して作動連結されており、
該リンク機構と、前記共通母線とを無接触で交差するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の気中多回路開閉器。
【請求項3】
前記リンク機構が、前記主軸に連結された駆動レバーと、該駆動レバーと前記可動接触子間に連結された作動リンクとを含み、
前記作動リンクには、前記共通母線が無接触で貫通する貫通空間部を有する貫通部が設けられたことを特徴とする請求項2に記載の気中多回路開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−234377(P2007−234377A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54016(P2006−54016)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)