説明

気体浄化装置

本発明は、気体から炭化水素を分離するための浄化装置(20)に関する。この浄化装置は、気体を流通させるのに適したコンバータハウジング(32)とそのなかに配置される触媒材料とを有し、触媒材料がコンバータハウジング(32)の外側から熱源(34)によって加熱される。触媒材料がホップカライトを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体から炭化水素を分離するための浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気体の圧縮時、例えば圧縮空気の発生時、圧縮された気体はほぼ不可避的に油エアゾールやオイルミストで汚染される。例えば潤滑剤、油、人為改質空気内容物、二酸化硫黄、一酸化炭素、窒素ガスが気体または圧縮空気に持込まれることがある。これらの内容物は気体、蒸気、油エアゾールの態様で存在することがある。
【0003】
多くの応用にとってこのような不純物は望ましくなく、または受入れ難くさえある。
【0004】
付加的に精製することなく油のない圧縮ガス、特に油のない圧縮空気を発生することのできる圧縮機は現在知られていない。気体または圧縮空気を油なしで圧縮する圧縮機は確かに入手可能ではある。しかしこれらの圧縮機も、例えば有機不純物成分を少なくとも微量でも有していない圧縮空気を発生するのではない。これは、圧縮機が周囲空気から不純物を吸収し、その軸受や軸が潤滑されていなければならず、それとともに同様に揮発成分を周囲大気に放出することから生じる。
【0005】
この理由から普通、圧縮空気の品質を保証すべき濾過装置が後置して利用される。活性炭から成る吸収フィルタが主として知られているが、しかしこれらは寿命が短い。
【0006】
特許文献1に述べられた圧縮空気から圧縮機油を除去するための方法では、酸化触媒から成る1層を収容した容器に圧縮空気が通される。白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、マンガン、銅の群から成る金属成分が触媒材料として挙げられている。
【0007】
さらに特許文献2に述べられた類似の方法では酸化触媒としてホップカライト材料が利用される。ホップカライト(hopcalite)は、主として二酸化マンガンと酸化銅(II)とから成る混合触媒の名称であり、それらと並んで他の金属酸化物、例えば酸化コバルトや酸化銀(I)を含むことがある。
【0008】
ホップカライトは室温において(空気中)酸素(O)による毒性一酸化炭素(CO)の酸化を触媒して比較的害のない二酸化炭素(CO)とする。それゆえにホップカライトはガスマスクや別の呼吸保護器具のフィルタ内で使用される。それと並んでホップカライトは高い温度(200〜500℃)において各種有機化合物の酸化を触媒する。組成は例えば60%MnO/40%CuOまたは50%MnO/30%CuO/15%CoO/5%Ag2Oである。
【0009】
ホップカライト触媒は既に数十年来実務において使用されているのではあるが、その作用様式に関する多くの疑問はいまだ未解決である。その原因は、触媒の活性中心とメカニズムおよび失活に関する情報を得ることを困難にするシステムの複雑さにある。いずれにしてもこの材料は圧縮ガスから油成分と揮発性有機化合物を除去もしくは分離することができ、リン、イオン、亜鉛およびその他の通常の油添加剤による被毒に対して不感である。特許文献2にも述べられているように、触媒材料は普通、所望する動作温度または運転温度を達成するためにヒータによって加熱される。最適な動作温度は概ね130〜150℃である。
【0010】
容器の内部に配置されて触媒材料と接触したヒータロッドを備えた浄化装置が公知である。実施に応じてヒータロッドは容器の長さに概ね一致した長さを有することができ、従って多かれ少なかれ全触媒材料内を延びている。しかし、ヒータロッドが僅かな部分だけ触媒材料内に突出させた配置も知られている。
【0011】
質の高い気体浄化には、全触媒材料が実質同じ温度を有することが不可欠である。触媒材料は一般にごく僅かな熱伝導率を有するだけであるので、大抵の場合ヒータロッドは本来の運転温度より上の温度を有する。そのことは特にホップカライトにおいても該当する。ヒータロッドの領域で温度が高くなると、全体として触媒材料の内部で温度分布が不均一となる。そのことからやはり不均一な反応が帰結することがある。これは特に浄化装置の始動時、つまり熱が均一に分布し得る前に該当する。ヒータロッドを使用する代わりに、またはそれを補足して、供給された気体流を浄化装置流入前に加熱するヒータが知られている。しかしその際欠点として、気体流は容器内を貫流するとき冷やされ、従って出口近傍では容器流入時よりも低い温度を有する。そのことからも不均一な反応を生じることがある。冷やされるので気体流は一般に過熱されるが、これは比較的高いエネルギー支出を付加的に帰結する。これは特に、冷たい容器を始動させるとき該当する。
【0012】
容器内への気体流入領域にヒータを前置した場合でもヒータロッドの近傍で、著しく高い温度を有するいわゆるホットスポットが生じ得ることも判明した。これらのホットスポットは、油または触媒材料の自己着火または引火さえ引き起こし得るような温度に達することがある。油の引火は概ね250〜300℃で始まる。しかし引火の危険は必ず防止されねばならず、それゆえに通常温度センサが設けられており、一定の温度閾値を超えて温度が上昇すると温度センサは装置を遮断し、または少なくとも警報を発する。
【0013】
最後に公知浄化装置の他の欠点として、気体流中に炭化水素が平均以上に多く溜まると公知浄化装置は炭化水素を分離できず、従って後段の装置に転送してします。これは後置された装置にかなりの否定的結果を及ぼすことがあり、浄化された気体の用途に応じて人間や動物にとって不利なことが生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5284629号明細書
【特許文献2】独国特許発明第10008609号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の課題は、特に厳しい安全要求にも即した高効率の浄化装置を提供することである。この浄化装置は安価に製造可能でなければならず、均一な運転もしくは炭化水素の確実な分離を保証しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、本発明によれば、気体を流通させるのに適したコンバータハウジングとそのなかに配置される触媒材料と少なくとも1つの温度センサとを有するものにおいて、
‐触媒材料がコンバータハウジングの外側から熱源によって加熱され、
‐触媒材料が、気体の高い炭化水素含有量のとき急激に加熱される純ホップカライトを含み、
‐ホップカライトの温度が温度センサによって検出されるようになった浄化装置によって解決される。
【0017】
コンバータハウジングを通して外部から触媒材料を加熱すると、一層均一な熱分布を達成できるという本質的利点が得られる。利用可能なかなり大きな面によって、温度を特定レベルに高めるのに不可欠な単位面積当りの熱エネルギーは著しく減らすことができる。特別有利な実施形態において、コンバータハウジングにバンドヒータを巻装することが考慮に値する。その場合、円筒形容器において好ましくは容器のほぼ外被面全体を介して給熱が起きる。熱伝達に利用可能な大きな面は、点状温度上昇(ホットスポット)の確率、従って油の自己着火または引火の危険が著しく低減するという利点を有する。
【0018】
バンドヒータの代わりに、別のあらゆる好適な熱源またはヒータも利用可能である。重要なことは、給熱が極力大きな外面を介して起きることである。なかんずく、ジャケットヒータ、加熱スリーブまたは環状加熱体の利用も考えられる。有利には、外部からの加熱を容器内部での加熱と組合せることもできる。その場合、例えば中心で容器内を延びるヒータロッドの出力は著しく減らすことができ、そのことからやはり温度が制御不能に上昇する虞が低下する。
【0019】
触媒材料として特にホップカライトを使用するのが適している。費用上の理由から、ホップカライトで被覆された酸化アルミニウムから成るビーズの利用が実証された。
【0020】
支配的見解に反して、本発明によれば、少なくとも一部が純ホップカライトから成る触媒材料が利用される。つまり純ホップカライトを利用すると、炭化水素持込量の高まったとき純ホップカライト材料の領域で容器内部の反応温度が急激に上昇することになる。この温度上昇は、他の装置への炭化水素の転送もしくは気体の再利用を浄化装置の遮断によって妨げるために、相応する温度センサで記録することができる。温度上昇に基づいて警報信号を発することができ、または浄化装置を直ちに遮断することができる。急激な温度上昇のこの効果は、被覆しただけのビーズを使用する場合、ホップカライト量が少ないので現れない。
【0021】
しかし選択的に別の物質を触媒材料に混加することができる。重要なのは、炭化水素持込量の増加時にそれらが容器内部で反応温度上昇をもたらすことだけである。
【0022】
相応する材料、好ましくは純ホップカライトの混加は、コンバータハウジング内部の積層配置によって行うことができる。これは、流れ方向で容器の横断面全体にわたって延びる触媒材料の1層が純ホップカライトで形成されていることを意味する。しかし選択的にこの層を複数設けておくこともできる。
【0023】
その他の純粋でない触媒材料に純ホップカライトを混加することも同様に有意義なことがある。ホップカライト成分を持たない触媒材料を十分な割合のホップカライトと混合することもやはり考えられる。
【0024】
基本的に、急激な温度上昇はビーズ状触媒材料のときだけでなく、別の形状または実施の触媒材料のときにも生じる。例えば、浄化すべき気体を流通させる多孔質体が考えられる。つまり温度上昇の指標としてホップカライトを利用するとの本発明の考えは基本的にあらゆる形状の触媒材料で実現することができる。
【0025】
以下の図の説明を基に本発明が詳しく説明される。図に示された実施例は本発明を実現するための可能な1態様にすぎず、理解を深めるのに役立つものである。それゆえに本発明はこの実施例に限定されるものでない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る浄化装置を斜視図で示す。
【図2】本発明に係る浄化装置の略機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1、図2によれば、本発明に係る浄化装置20は普通ハウジング22内に収容されている。浄化されるべき気体、主に圧縮空気は、供給管路24を介して供給され、排出管路26を介して排出される。普通、本発明に係る浄化装置20は(図示しない)圧縮機の下流側に設置されるが、しかし浄化された圧縮空気が利用される直接的領域で末端機器として利用することもやはり可能である。浄化装置20は、その都度の運転条件に留意される限り、任意構造様式の圧縮機(ピストン圧縮機、スクリュー圧縮機等)の下流側に設置し作動させることができる。エネルギー効率を高める意味で、発生した熱エネルギーをシステムに還流することを可能とする熱交換システムが使用される。それに応じて、付加的に供給すべきエネルギーの割合は当初の加熱段階後に減少する。
【0028】
つまり供給管路24は浄化されるべき気体をまず、好ましくはプレート形熱交換器として実施される熱交換器28に通す。その後、気体は図示しない触媒材料を満たしたコンバータ30内に達する。図示実施例においてコンバータ30は円筒形コンバータハウジング32を有し、このコンバータハウジングは浄化されるべき気体を長手方向で流通させる。
【0029】
例えば、炭化水素を分離するための触媒材料として使用することのできるホップカライトは好ましくは直径約1〜5mmのビーズの態様で利用される。しかし基本的にあらゆる別の形状も考えられる。
【0030】
本発明によればコンバータハウジング32、従って触媒材料は熱源もしくはヒータ34によって外部から、所要の運転温度に達するまで加熱される。ヒータ34の種類は基本的に自由に選択可能であるが、しかしコンバータハウジング32の周りに巻き付けられるバンドヒータの使用がきわめて適していると実証された。このようなバンドヒータは通電時に加熱される金属条片を有し、これらの金属条片は繊維材料またはプラスチック材料で取り囲まれている。生成された熱はこうしてコンバータハウジング32の外面全体に直接放出され、次に触媒材料に放出される。
【0031】
コンバータハウジング内部の温度を監視するために温度センサ36が設けられており、これらの温度センサは好ましくはコンバータハウジング32の流入領域と流出領域にあり、場合によってはコンバータハウジング32の中心にある(特に図2参照)。測定結果を視覚化するために、浄化装置20のハウジング22の外面に相応する表示部38を設けておくことができる。過度に高い温度に達すると、浄化装置20を直ちに遮断するかまたは警報信号を発するかのいずれかを行うことができる。
【0032】
浄化装置20がさらに温度制御ユニット40を含み、このユニットはやはり外部から接近可能であり、またこのユニットを介して浄化装置20は調整し制御することができる。
【0033】
本発明によれば触媒材料に純ホップカライトを富化することを予定しておくことができる。コンバータハウジング32が純ホップカライトの層を含むか、または純ホップカライトが触媒材料に混加され、コンバータハウジング32内で実質均一に分布しているかのいずれかである。純ホップカライトは炭化水素の割合が高まると急激な温度上昇をもたらし、この温度上昇は温度センサ36によって記録される。
【0034】
本発明に係る浄化装置は、圧縮ガス、特に圧縮空気中の炭化水素(潤滑剤、油、人為改質空気内容物、なかんずく二酸化硫黄、一酸化炭素、窒素ガス)の全酸化用に特別に開発され最適化された触媒システムで作動する。空気内容物は気体、蒸気、エアゾールの態様で存在することができ、浄化装置内部で二酸化炭素と水とに変換される。圧縮機から入り込む油汚染空気は普通、周囲温度より約10度高い温度を有する。この空気は熱交換器28内でコンバータハウジング32からの高温空気によって100〜130℃の温度に予熱され、引き続きコンバータハウジング32に流入し、そこで、調整された約150℃の運転温度で触媒材料を貫流する。空気中に含まれた炭化水素は次にコンバータハウジング内部で空気中酸素によって触媒酸化する。その際に発生する反応熱は、圧縮空気中で一般的な炭化水素濃度の場合無視し得るほど僅かである。浄化された圧縮空気は引き続き熱交換器28内で入口よりも約10〜15℃高い温度に冷やされる。
【0035】
本発明は上記実施例に限定されているのでなく、同じ作用の他の実施形態または本発明から直接得られる実施形態も含む。
【符号の説明】
【0036】
20 浄化装置
24 供給管路
26 排出管路
28 熱交換機
30 コンバータ
32 コンバータハウジング
34 ヒータ
36 温度センサ
38 表示部
40 温度制御ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体から炭化水素を分離するための浄化装置(20)であって、気体を流通させるのに適したコンバータハウジング(32)とそのなかに配置される触媒材料と少なくとも1つの温度センサ(36)とを有するものにおいて、
前記触媒材料が前記コンバータハウジング(32)の外側から熱源(34)によって加熱され、
前記触媒材料が、気体の高い炭化水素含有量のとき急激に加熱される純ホップカライトを含み、
前記ホップカライトの温度が前記温度センサ(36)によって検出されることを特徴とする浄化装置。
【請求項2】
前記熱源(34)が、前記コンバータハウジング(32)を取り囲むヒータによって形成されていることを特徴とする、請求項1記載の浄化装置。
【請求項3】
付加的に1つの熱源が前記コンバータハウジング(32)の内部に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の浄化装置(20)。
【請求項4】
内部の熱源がヒータロッドによって形成されていることを特徴とする、請求項3記載の浄化装置(20)。
【請求項5】
全触媒材料が前記ホップカライトによって形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項記載の浄化装置(20)。
【請求項6】
前記ホップカライトで被覆された酸化アルミニウムから成るビーズが前記触媒材料として使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項記載の浄化装置(20)。
【請求項7】
前記コンバータハウジング(32)が純ホップカライトから成る前記触媒材料の少なくとも1層を含み、この層が前記コンバータハウジング(32)の内部の横断面全体にわたって延びていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項記載の浄化装置(20)。
【請求項8】
前記コンバータハウジング(32)が前記ホップカライトを混加した前記触媒材料を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の浄化装置(20)。








【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511507(P2010−511507A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539761(P2009−539761)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063475
【国際公開番号】WO2008/068318
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(502216886)ベコー テヒノロギース ゲーエムベーハー (5)
【出願人】(509161163)
【Fターム(参考)】