気流発生装置
【課題】誘電体バリア放電による気流誘起現象により、自由空間に気流を噴出することができる気流発生装置を提供する。
【解決手段】実施形態の気流発生装置10は、表面が誘電体62で被覆された棒状の導電体61からなる第1の電極60と、第1の電極60と平行に配設され、第1の電極60の導電体61と断面形状が異なる棒状の導電体31からなる第2の電極30と、第1の電極60と第2の電極30との間に電圧を印加可能な放電用電源40とを備える。第1の電極60と第2の電極30との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、第1の電極60および第2の電極30のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【解決手段】実施形態の気流発生装置10は、表面が誘電体62で被覆された棒状の導電体61からなる第1の電極60と、第1の電極60と平行に配設され、第1の電極60の導電体61と断面形状が異なる棒状の導電体31からなる第2の電極30と、第1の電極60と第2の電極30との間に電圧を印加可能な放電用電源40とを備える。第1の電極60と第2の電極30との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、第1の電極60および第2の電極30のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電の作用により気流を発生させる気流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電により気流が誘起される現象は、イオン風と呼ばれ、その原理と応用については様々な分野で従来から研究されている(例えば、非特許文献1参照。)。このイオン風は、例えば、コロナ放電によって生成されたイオンが、対向電極に引かれて移動する途中で空気分子と衝突して空気分子に一方方向の運動量を与え、空気の流れを誘起することで発生する(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電気学会論文誌第97巻 第5号(1977年),p259−p266
【非特許文献2】放電ハンドブック、社団法人電気学会、p803
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の放電による気流発生法は、対向した電極間に気流を誘起するものであり、自由空間に気流を噴出する構成を備える気流発生装置はなかった。また、コロナ放電による気流発生法では、コロナ放電で発生するイオン数が少ないので、体積流量や速度の大きな気流を誘起することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誘電体バリア放電による気流誘起現象により、自由空間に気流を噴出することができる気流発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の気流発生装置は、表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構とを備える。この気流発生装置は、前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気流発生装置によれば、誘電体バリア放電による気流誘起現象により、自由空間に気流を噴出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の気流発生装置の他の例の断面を模式的に示した図である。
【図4】第1の実施の形態の気流発生装置の他の例の断面を模式的に示した図である。
【図5】第2の実施の形態の気流発生装置の断面を模式的に示した図である。
【図6】第2の実施の形態の気流発生装置の他の一例の断面を模式的に示した図である。
【図7】第3の実施の形態の気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図8】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図9】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図10】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図11】気流発生装置によって噴出される気流を可視化した画像である。
【図12】噴出された気流の推力の測定方法を説明するための図である。
【図13】噴出された気流の推力の測定方法を説明するための図である。
【図14】測定された気流の推力の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の気流発生装置10を模式的に示した斜視図である。また、図2は、図1のA−A断面を示す図である。
【0011】
図1に示すように、気流発生装置10は、第1の電極20と、第2の電極30と、第1の電極20と第2の電極30との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。
【0012】
第1の電極20は、表面が誘電体21で被覆された円柱状の導電体22で構成される。また、第1の電極20は、公知な導電性の材料で構成され、気流発生装置10が使用される環境に応じて、公知な導電性の材料から適宜に第1の電極20を構成する材料が選択される。誘電体21は、公知な固体の誘電材料で構成される。誘電体21を構成する材料として具体的には、電気的絶縁材料である、アルミナやガラスなどの無機絶縁物、ポリイミド、ガラスエポキシ、ゴムなどの有機絶縁物などが挙げられるが、これらに限られるものではなく、気流発生装置10が使用される環境下において適宜に選択される。
【0013】
第2の電極30は、第1の電極20の導電体22と断面形状が異なる円柱状の導電体31で構成され、空隙を設けて第1の電極20と平行に配設されている。なお、図1に示した一例では、導電体31がコ字状に構成されているが、少なくとも第1の電極20と平行に位置する部分を有している。また、図2に示すように、第2の電極30の導電体31は、第1の電極20の導電体22よりも直径の小さい柱体で構成されている。また、第2の電極30は、第1の電極20と同様の材料で構成される。なお、第2の電極30を第1の電極20に当接させて配設してもよい。また、導電体31の表面を誘電体で被覆して第2の電極30を構成してもよい。
【0014】
ここで、第1の電極20の導電体22や第2の電極30の導電体31は、柱体に限らず、筒体であってもよい。また、導電体31の直径は、導電体22の直径よりも大きくてもよい。さらに、導電体22および導電体31の断面形状は、円形に限らず、例えば楕円、矩形、多角形などの形状で構成されてもよく、また、導電体22および/または導電体31を薄板などで構成してもよい。また、第1の電極20および第2の電極30が、それぞれ面対称な形状で形成され、対称面を共有するように構成されてもよい。すなわち、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31とを構成する棒状の導電体の断面形状がそれぞれ異なればよい。
【0015】
放電用電源40は、電圧印加機構として機能し、第1の電極20と第2の電極30との間に、ケーブル41を介して電圧を印加するものである。放電用電源40からの出力電圧は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する出力電圧などである。具体的には、例えば、放電用電源40は高周波電源装置などで構成される。なお、誘電体バリア放電において、第1の電極20と第2の電極30との間に直流電圧を印加すると、放電の進展とともに誘電体表面に電荷が蓄積して第1の電極20と第2の電極30との間の電界が緩和され、最終的には電界が空間の電離を維持できなくなり、放電が停止する。したがって、誘電体表面に蓄電された電荷を除去することができる、パルス状の正負の両極性電圧である交番電圧や交流電圧を第1の電極20と第2の電極30との間に印加することが好ましい。
【0016】
次に、気流発生装置10の作用について説明する。
【0017】
放電用電源40から第1の電極20と第2の電極30との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極20と第2の電極30との間に誘電体バリア放電50が起こり、この誘電体バリア放電50に伴って放電プラズマが生成される。ここで、第1の電極20の導電体22は誘電体21に被覆され、すなわち、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31との間に誘電体21を介在させているので、高温下や含塵環境下においてもアーク放電にはいたらず、安定に維持することが可能な誘電体バリア放電50が生じる。また、誘電体バリア放電50は、第1の電極20と第2の電極30との間に、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に生じる。図1および図2に示すように、この誘電体バリア放電50によって、第1の電極20および第2の電極30に垂直な一方の方向に気流55が噴出される。なお、ここでは、第1の電極20および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極20に向かう方向に気流55が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極20と第2の電極30との間で生じた気流55は、第1の電極20の表面に沿って第1の電極20にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0018】
ここで、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31における長手方向の長さに依存する。すなわち、図1に示すように、第2の電極30の導電体31の長手方向の長さが、第1の電極20の導電体22の長手方向の長さよりも短い場合には、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第2の電極30の導電体31の長さとほぼ同程度となる。一方、第2の電極30の導電体31の長手方向の長さが、第1の電極20の導電体22の長手方向の長さよりも長い場合には、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22の長さとほぼ同程度となる。上記したように、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31における長手方向の長さに依存するので、例えば、図1に示した気流発生装置10において、長手方向にわたって幅広く気流55を発生させたい場合には、第2の電極30における第1の電極20と平行な部分の長手方向の長さを長くすることで対応可能となる。なお、噴出する気流55は、下流に流れるとともに広がるので、ここでいう気流55の電極長手方向の幅とは、気流55噴出時における電極長手方向の幅を意味する。
【0019】
上記したように、第1の実施の形態の気流発生装置10によれば、表面が誘電体21で被覆された棒状の導電体22からなる第1の電極20と、第1の電極20と平行に配設され、第1の電極20の導電体22と断面形状が異なる棒状の導電体31からなる第2の電極30との間に電圧を印加し、誘電体バリア放電を生じさせることで、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に気流を噴出することができる。
【0020】
なお、噴出する気流55の流動形態は、第1の電極20の形態に依存する。ここで、第1の電極20とは異なる形態を有する第1の電極を備えた第1の実施の形態の気流発生装置10の他の例を示す。図3および図4は、第1の実施の形態の気流発生装置10の他の例の断面を模式的に示した図である。
【0021】
図3に示す気流発生装置10の他の一例では、第1の電極60は、断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成された棒状の導電体61と、この導電体61の表面を被覆する誘電体62とから構成されている。誘電体62は、導電体61の形状に沿って表面を被覆しているので、第1の電極60の断面も気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状となる。また、第2の電極30の断面の直径方向の延長上に、楕円の長軸が位置するように第1の電極60が配置されている。なお、第1の電極60の導電体61の断面は、第1の電極60の断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状を有していれば、楕円形状に限らず、円形、矩形などの形状でもよい。
【0022】
図3に示すように、この誘電体バリア放電65によって、第1の電極60および第2の電極30にほぼ垂直な一方の方向に気流70が噴出される。ここでは、第1の電極60および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極60に向かう方向に気流70が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極60と第2の電極30との間で生じた気流70は、第1の電極60の楕円形状の表面に沿って第1の電極60にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0023】
このように、第1の電極60の断面を楕円形状にすることで、第1の電極60において気流70の流れの妨げることなく、効率よく気流70を噴出することができることができる。
【0024】
また、図4に示す気流発生装置10の他の一例では、第1の電極80は、断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成された棒状の導電体81と、断面が気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状に導電体81の表面を被覆する誘電体82とから構成されている。すなわち、第1の電極80の断面は、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状となる。また、第2の電極30の断面の直径方向の延長上に、導電体81における楕円の長軸が位置するように第1の電極80が配置されている。なお、第1の電極80の導電体81の断面は、第1の電極80の断面が、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状を有していれば、楕円形状に限らず、円形、矩形などの形状でもよい。
【0025】
図4に示すように、この誘電体バリア放電85によって、第1の電極80および第2の電極30にほぼ垂直な一方の方向に気流90が噴出される。ここでは、第1の電極80および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極80に向かう方向に気流90が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極80と第2の電極30との間で生じた気流90は、第1の電極80の表面に沿って流れ、噴出方向に徐々に広がり、第1の電極80にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0026】
このように、第1の電極80の断面を、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状にすることで、第1の電極80において気流90の流れの妨げることなく、効率よく気流90を噴出することができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の気流発生装置100の断面を模式的に示した図である。また、図6は、第2の実施の形態の気流発生装置100の他の一例の断面を模式的に示した図である。なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の構成と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0028】
図5に示すように、気流発生装置100は、第1の電極20と、2つの第2の電極30と、第1の電極20と第2の電極30との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。この気流発生装置100は、第1の実施の形態の気流発生装置10において、第1の電極20と平行に第2の電極30を複数配置した構成となっている。また、各第2の電極30は、第1の電極20から等しい距離に配設され、すなわち、第1の電極20の同一の同心円上に配設されている。なお、配置される第2の電極30は、2つに限られるものではなく、適宜に2つ以上の第2の電極30を配置してもよい。また、各第2の電極30は、それぞれケーブル41を介して放電用電源40に接続されている。
【0029】
次に、気流発生装置100の作用について説明する。
【0030】
放電用電源40から第1の電極20と各第2の電極30との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極20と各第2の電極30との間に誘電体バリア放電50が起こり、この誘電体バリア放電50に伴って放電プラズマが生成される。また、誘電体バリア放電50は、第1の電極20と各第2の電極30との間に、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に生じる。なお、ここでは、誘電体バリア放電50によって、第1の電極20および第2の電極30にほぼ垂直で、第1の電極20に向かう方向に気流110が噴出される一例を示している。この場合、気流110は、一方の第2の電極30と第1の電極20との間に発生した気流と、他方の第2の電極30と第1の電極20との間に発生した気流とが合流した気流である。
【0031】
このように、複数の第2の電極30を設けることで、気流110の厚さ方向への広がり、すなわち、図5の断面において、第1の電極20の下流における上下方向の気流110の広がりを促進させることができる。また、各第2の電極30の配設位置を変更することで、気流110の噴出方向を調整することが可能となる。
【0032】
また、図6に示す第2の実施の形態の気流発生装置100の他の一例では、第1の実施の形態の気流発生装置10おける、第1の電極20と平行に配置された第2の電極30を、第1の電極20との距離を一定に維持しながら、その配設位置を変更可能(図6のX方向に位置を変更可能)に構成している。
【0033】
このように、第2の電極30の配設位置を変更可能に設けることで、任意に気流125の噴出方向を変更することができる。また、第2の電極30は、第1の電極20との距離を一定に維持しながら配設位置を変更することができるので、一定の印加電圧を負荷した場合には、噴出方向の異なる一定の噴出速度を有する気流125を発生させることができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態の気流発生装置200を模式的に示した斜視図である。なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の構成と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0035】
図7に示すように、気流発生装置200は、第1の電極210と、第2の電極220と、ケーブル41を介して第1の電極210と第2の電極220との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。
【0036】
第1の電極210は、球状の導電体211の表面を、少なくとも一端面213が曲面で、かつ円柱状になるように誘電体212で被覆して構成されている。
【0037】
第2の電極220は、少なくとも一端面222が曲面で形成された、第1の電極210の導電体211と断面形状が異なる導電体221で構成され、所定の空隙を設けて一端面222を第1の電極210の一端面213に対向させて配設されている。なお、第2の電極220を第1の電極210に当接させて配設してもよい。さらに、導電体221の表面を誘電体で被覆して第2の電極220を構成してもよい。この場合、第1の電極210と対向する側における第2の電極220の導電体221の端面は曲面で形成されることが好ましい。
【0038】
ここで、第1の電極210の導電体211として、球状の形状を有するものを一例に挙げているが、特に形状は限定されるものではなく、例えば、棒状などであってもよい。また、第2の電極220の導電体221において、表面が誘電体で被覆される場合には、導電体211と同様に、導電体221の形状は特に限定されるものではない。
【0039】
なお、第1の電極210および第2の電極220を構成する材料は、第1の実施の形態の気流発生装置10における第1の電極20および第2の電極30材料と同様である。
【0040】
次に、気流発生装置200の作用について説明する。
【0041】
放電用電源40から第1の電極210と第2の電極220との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極210の一端面213と第2の電極220の一端面222との間に誘電体バリア放電230が起こり、この誘電体バリア放電230に伴って放電プラズマが生成される。なお、ここでは、誘電体バリア放電230によって、第2の電極220から第1の電極210に向かう方向に気流240が噴出される一例を示している。この場合、気流240は、第1の電極210の一端面213および側面に沿って流れ、第1の電極210の下流においては、中空の筒体状の流れが形成される。なお、第1の電極210の一端面213の曲率半径によっては、一端面213に沿って流れた後、側面に沿わずに放射状に広がる流れを形成する場合もある。
【0042】
第3の実施の形態の気流発生装置200によれば、曲面に形成された一端面どうしを対向させて、第1の電極210と第2の電極220と配設することで、第1の電極210において気流240の流れの妨げることなく、効率よく気流240を噴出することができる。また、第1の電極210の一端面213における曲率半径を変更することで、第1の電極210に沿う流れや、一端面213に沿って流れた後、放射状に広がる流れなどを形成することができる。
【0043】
(気流発生装置の配列形態例)
上記した本発明の気流発生装置は、単体でも使用することはできるが、複数の気流発生装置を所定の形態に配列して使用してもよい。そこで、ここでは、気流発生装置の配列形態について例を挙げて、図8〜図10を参照して説明する。なお、気流発生装置の配列形態は、これらの形態に限られるものではなく、適宜に用途に応じて形態を変更することができる。
【0044】
図8〜図10は、複数の気流発生装置10を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。なお、ここでは、図1に示した第1の実施の形態に係る気流発生装置10を用いて、配列例を示しているが、他の実施の形態に係る気流発生装置においても同様に配列して使用することができる。
【0045】
図8に示すように、所定の間隔をおいて、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたって均一な気流を発生させることができる。
【0046】
また、図9に示すように、所定の間隔をおいて、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設し、さらに、これらの気流発生装置10における気流の噴出方向に所定の間隔をおいて、これらの気流発生装置10と千鳥配列となるように、複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたってより均一な気流を発生させることができる。
【0047】
また、図10に示すように、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設し、さらに、これらの気流発生装置10における気流の噴出方向に所定の間隔をおいて、これらの気流発生装置10の配置方向から90度回転させた向きに、すなわち、これらの気流発生装置10の長手方向に対して、長手方向が垂直となる配置方向(格子状)になるように、複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたってより均一な気流を発生させることができる。
【0048】
(実施例)
次に、以下に本発明の実施例について説明する。
【0049】
ここでは、本発明に係る気流発生装置によって噴出される気流の可視化を行った。さらに、本発明に係る気流発生装置から噴出された気流の推力(Thrust)を測定した。
【0050】
図11は、気流発生装置によって噴出される気流55を可視化した画像である。図12および図13は、噴出された気流55の推力の測定方法を説明するための図である。図14は、測定された気流55の推力の結果を示す図である。なお、ここでは、図1に示した第1の実施の形態に係る気流発生装置10を用いて、気流の可視化や気流の推力の測定を行った。
【0051】
図11に示すように、第1の電極20の近傍に配設された線香300の煙301を流引させて気流55を可視化することで、第1の電極20と第2の電極30との間に起こった誘電体バリア放電50によって発生した気流が、第1の電極20の長手方向にほぼ垂直な方向に噴出していることがわかった。なお、この可視化画像は、後述する気流の推力の測定に用いる気流発生装置10を用いて、放電用電源40から印加する電圧の周波数を3kHzとし、電力を3Wとしたときの画像である。
【0052】
次に、噴出された気流の推力の測定方法について説明する。
【0053】
図12および図13に示すように、気流55が噴出される方向に、第1の電極20から5mmの間隔をあけて推力測定用振り子400が配設されている。この推力測定用振り子400は、気流55を衝突させる衝突板410と、一端に衝突板410が固定され、他端が図示しない支点で回動可能に固定された支持部材411とで構成されている。また、推力測定用振り子400は、支持部材411が支点で回動可能に固定されているので、衝突板410に気流55を衝突させた際、推力測定用振り子400は、上記した支点を中心に気流55の噴出方向に移動することができる。
【0054】
ここで、第1の電極20の導電体22には、タングステンからなる直径が1.0mmの棒状電極を用い、第2の電極30の導電体31には、ステンレス鋼からなる直径が1.0mmの棒状電極を用いた。また、第2の電極30において、第1の電極20と平行となる部分の長さを30mmとした。第1の電極20において、導電体22を被覆する誘電体21には、ガラスを用い、その被覆厚さを1.1mmとした。また、推力測定用振り子400を構成する衝突板410は、プラスチックからなる縦(L)が20mm、横(M)が40mm、厚さ(t)が0.5mmの板を使用した。なお、推力測定用振り子400の重さは9.8mNである。また、支持部材411は、ステンレス鋼からなる直径が1.0mmの棒で構成され、その長さを125mmとした。
【0055】
また、図13に示すように、気流55が衝突板410に衝突し、推力測定用振り子400が振れ角θで振れた場合、次の式(1)の関係が成立する。
d = L・tanθ …式(1)
ここで、dは、気流55の噴出方向への衝突板410の移動距離である。
【0056】
一方、推力測定用振り子400の重さをW、気流の推力をFとすれば、力の釣り合いから次の式(2)が成立する。
F = W・tanθ …式(2)
【0057】
上記した式(1)、式(2)および測定されたdを用いて、気流の推力Fを求めることができる。
【0058】
本実施例では、気流の推力は、放電用電源40から印加する電圧の周波数を、11、14、16kHzとし、それぞれ負荷電力(W)を変化させて測定した。
【0059】
図14に示すように、噴出される気流55によって推力が発生し、負荷電力の増加に伴って、気流の推力が増加していることがわかった。
【0060】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…気流発生装置、20…第1の電極、21…誘電体、22…導電体、30…第2の電極、31…導電体、40…放電用電源、41…ケーブル、50…誘電体バリア放電、55…気流。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電の作用により気流を発生させる気流発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放電により気流が誘起される現象は、イオン風と呼ばれ、その原理と応用については様々な分野で従来から研究されている(例えば、非特許文献1参照。)。このイオン風は、例えば、コロナ放電によって生成されたイオンが、対向電極に引かれて移動する途中で空気分子と衝突して空気分子に一方方向の運動量を与え、空気の流れを誘起することで発生する(例えば、非特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】電気学会論文誌第97巻 第5号(1977年),p259−p266
【非特許文献2】放電ハンドブック、社団法人電気学会、p803
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の放電による気流発生法は、対向した電極間に気流を誘起するものであり、自由空間に気流を噴出する構成を備える気流発生装置はなかった。また、コロナ放電による気流発生法では、コロナ放電で発生するイオン数が少ないので、体積流量や速度の大きな気流を誘起することはできなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、誘電体バリア放電による気流誘起現象により、自由空間に気流を噴出することができる気流発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の気流発生装置は、表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構とを備える。この気流発生装置は、前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の気流発生装置によれば、誘電体バリア放電による気流誘起現象により、自由空間に気流を噴出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施の形態の気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図2】図1のA−A断面を示す図である。
【図3】第1の実施の形態の気流発生装置の他の例の断面を模式的に示した図である。
【図4】第1の実施の形態の気流発生装置の他の例の断面を模式的に示した図である。
【図5】第2の実施の形態の気流発生装置の断面を模式的に示した図である。
【図6】第2の実施の形態の気流発生装置の他の一例の断面を模式的に示した図である。
【図7】第3の実施の形態の気流発生装置を模式的に示した斜視図である。
【図8】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図9】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図10】複数の気流発生装置を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。
【図11】気流発生装置によって噴出される気流を可視化した画像である。
【図12】噴出された気流の推力の測定方法を説明するための図である。
【図13】噴出された気流の推力の測定方法を説明するための図である。
【図14】測定された気流の推力の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態の気流発生装置10を模式的に示した斜視図である。また、図2は、図1のA−A断面を示す図である。
【0011】
図1に示すように、気流発生装置10は、第1の電極20と、第2の電極30と、第1の電極20と第2の電極30との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。
【0012】
第1の電極20は、表面が誘電体21で被覆された円柱状の導電体22で構成される。また、第1の電極20は、公知な導電性の材料で構成され、気流発生装置10が使用される環境に応じて、公知な導電性の材料から適宜に第1の電極20を構成する材料が選択される。誘電体21は、公知な固体の誘電材料で構成される。誘電体21を構成する材料として具体的には、電気的絶縁材料である、アルミナやガラスなどの無機絶縁物、ポリイミド、ガラスエポキシ、ゴムなどの有機絶縁物などが挙げられるが、これらに限られるものではなく、気流発生装置10が使用される環境下において適宜に選択される。
【0013】
第2の電極30は、第1の電極20の導電体22と断面形状が異なる円柱状の導電体31で構成され、空隙を設けて第1の電極20と平行に配設されている。なお、図1に示した一例では、導電体31がコ字状に構成されているが、少なくとも第1の電極20と平行に位置する部分を有している。また、図2に示すように、第2の電極30の導電体31は、第1の電極20の導電体22よりも直径の小さい柱体で構成されている。また、第2の電極30は、第1の電極20と同様の材料で構成される。なお、第2の電極30を第1の電極20に当接させて配設してもよい。また、導電体31の表面を誘電体で被覆して第2の電極30を構成してもよい。
【0014】
ここで、第1の電極20の導電体22や第2の電極30の導電体31は、柱体に限らず、筒体であってもよい。また、導電体31の直径は、導電体22の直径よりも大きくてもよい。さらに、導電体22および導電体31の断面形状は、円形に限らず、例えば楕円、矩形、多角形などの形状で構成されてもよく、また、導電体22および/または導電体31を薄板などで構成してもよい。また、第1の電極20および第2の電極30が、それぞれ面対称な形状で形成され、対称面を共有するように構成されてもよい。すなわち、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31とを構成する棒状の導電体の断面形状がそれぞれ異なればよい。
【0015】
放電用電源40は、電圧印加機構として機能し、第1の電極20と第2の電極30との間に、ケーブル41を介して電圧を印加するものである。放電用電源40からの出力電圧は、例えば、パルス状(正極性、負極性、正負の両極性(交番電圧))や交流状(正弦波、断続正弦波)の波形を有する出力電圧などである。具体的には、例えば、放電用電源40は高周波電源装置などで構成される。なお、誘電体バリア放電において、第1の電極20と第2の電極30との間に直流電圧を印加すると、放電の進展とともに誘電体表面に電荷が蓄積して第1の電極20と第2の電極30との間の電界が緩和され、最終的には電界が空間の電離を維持できなくなり、放電が停止する。したがって、誘電体表面に蓄電された電荷を除去することができる、パルス状の正負の両極性電圧である交番電圧や交流電圧を第1の電極20と第2の電極30との間に印加することが好ましい。
【0016】
次に、気流発生装置10の作用について説明する。
【0017】
放電用電源40から第1の電極20と第2の電極30との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極20と第2の電極30との間に誘電体バリア放電50が起こり、この誘電体バリア放電50に伴って放電プラズマが生成される。ここで、第1の電極20の導電体22は誘電体21に被覆され、すなわち、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31との間に誘電体21を介在させているので、高温下や含塵環境下においてもアーク放電にはいたらず、安定に維持することが可能な誘電体バリア放電50が生じる。また、誘電体バリア放電50は、第1の電極20と第2の電極30との間に、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に生じる。図1および図2に示すように、この誘電体バリア放電50によって、第1の電極20および第2の電極30に垂直な一方の方向に気流55が噴出される。なお、ここでは、第1の電極20および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極20に向かう方向に気流55が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極20と第2の電極30との間で生じた気流55は、第1の電極20の表面に沿って第1の電極20にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0018】
ここで、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31における長手方向の長さに依存する。すなわち、図1に示すように、第2の電極30の導電体31の長手方向の長さが、第1の電極20の導電体22の長手方向の長さよりも短い場合には、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第2の電極30の導電体31の長さとほぼ同程度となる。一方、第2の電極30の導電体31の長手方向の長さが、第1の電極20の導電体22の長手方向の長さよりも長い場合には、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22の長さとほぼ同程度となる。上記したように、噴出する気流55の電極長手方向の幅は、第1の電極20の導電体22と第2の電極30の導電体31における長手方向の長さに依存するので、例えば、図1に示した気流発生装置10において、長手方向にわたって幅広く気流55を発生させたい場合には、第2の電極30における第1の電極20と平行な部分の長手方向の長さを長くすることで対応可能となる。なお、噴出する気流55は、下流に流れるとともに広がるので、ここでいう気流55の電極長手方向の幅とは、気流55噴出時における電極長手方向の幅を意味する。
【0019】
上記したように、第1の実施の形態の気流発生装置10によれば、表面が誘電体21で被覆された棒状の導電体22からなる第1の電極20と、第1の電極20と平行に配設され、第1の電極20の導電体22と断面形状が異なる棒状の導電体31からなる第2の電極30との間に電圧を印加し、誘電体バリア放電を生じさせることで、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に気流を噴出することができる。
【0020】
なお、噴出する気流55の流動形態は、第1の電極20の形態に依存する。ここで、第1の電極20とは異なる形態を有する第1の電極を備えた第1の実施の形態の気流発生装置10の他の例を示す。図3および図4は、第1の実施の形態の気流発生装置10の他の例の断面を模式的に示した図である。
【0021】
図3に示す気流発生装置10の他の一例では、第1の電極60は、断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成された棒状の導電体61と、この導電体61の表面を被覆する誘電体62とから構成されている。誘電体62は、導電体61の形状に沿って表面を被覆しているので、第1の電極60の断面も気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状となる。また、第2の電極30の断面の直径方向の延長上に、楕円の長軸が位置するように第1の電極60が配置されている。なお、第1の電極60の導電体61の断面は、第1の電極60の断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状を有していれば、楕円形状に限らず、円形、矩形などの形状でもよい。
【0022】
図3に示すように、この誘電体バリア放電65によって、第1の電極60および第2の電極30にほぼ垂直な一方の方向に気流70が噴出される。ここでは、第1の電極60および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極60に向かう方向に気流70が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極60と第2の電極30との間で生じた気流70は、第1の電極60の楕円形状の表面に沿って第1の電極60にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0023】
このように、第1の電極60の断面を楕円形状にすることで、第1の電極60において気流70の流れの妨げることなく、効率よく気流70を噴出することができることができる。
【0024】
また、図4に示す気流発生装置10の他の一例では、第1の電極80は、断面が気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成された棒状の導電体81と、断面が気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状に導電体81の表面を被覆する誘電体82とから構成されている。すなわち、第1の電極80の断面は、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状となる。また、第2の電極30の断面の直径方向の延長上に、導電体81における楕円の長軸が位置するように第1の電極80が配置されている。なお、第1の電極80の導電体81の断面は、第1の電極80の断面が、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状を有していれば、楕円形状に限らず、円形、矩形などの形状でもよい。
【0025】
図4に示すように、この誘電体バリア放電85によって、第1の電極80および第2の電極30にほぼ垂直な一方の方向に気流90が噴出される。ここでは、第1の電極80および第2の電極30にほぼ垂直で、第2の電極30から第1の電極80に向かう方向に気流90が噴出される一例を示している。この場合、第1の電極80と第2の電極30との間で生じた気流90は、第1の電極80の表面に沿って流れ、噴出方向に徐々に広がり、第1の電極80にほぼ垂直な方向に噴出する。
【0026】
このように、第1の電極80の断面を、気流の噴出方向に徐々に広がり、端部が曲面を有し、かつ第2の電極30に対向する側が鋭角となる形状にすることで、第1の電極80において気流90の流れの妨げることなく、効率よく気流90を噴出することができる。
【0027】
(第2の実施の形態)
図5は、第2の実施の形態の気流発生装置100の断面を模式的に示した図である。また、図6は、第2の実施の形態の気流発生装置100の他の一例の断面を模式的に示した図である。なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の構成と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0028】
図5に示すように、気流発生装置100は、第1の電極20と、2つの第2の電極30と、第1の電極20と第2の電極30との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。この気流発生装置100は、第1の実施の形態の気流発生装置10において、第1の電極20と平行に第2の電極30を複数配置した構成となっている。また、各第2の電極30は、第1の電極20から等しい距離に配設され、すなわち、第1の電極20の同一の同心円上に配設されている。なお、配置される第2の電極30は、2つに限られるものではなく、適宜に2つ以上の第2の電極30を配置してもよい。また、各第2の電極30は、それぞれケーブル41を介して放電用電源40に接続されている。
【0029】
次に、気流発生装置100の作用について説明する。
【0030】
放電用電源40から第1の電極20と各第2の電極30との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極20と各第2の電極30との間に誘電体バリア放電50が起こり、この誘電体バリア放電50に伴って放電プラズマが生成される。また、誘電体バリア放電50は、第1の電極20と各第2の電極30との間に、それぞれの電極に対してほぼ垂直方向に生じる。なお、ここでは、誘電体バリア放電50によって、第1の電極20および第2の電極30にほぼ垂直で、第1の電極20に向かう方向に気流110が噴出される一例を示している。この場合、気流110は、一方の第2の電極30と第1の電極20との間に発生した気流と、他方の第2の電極30と第1の電極20との間に発生した気流とが合流した気流である。
【0031】
このように、複数の第2の電極30を設けることで、気流110の厚さ方向への広がり、すなわち、図5の断面において、第1の電極20の下流における上下方向の気流110の広がりを促進させることができる。また、各第2の電極30の配設位置を変更することで、気流110の噴出方向を調整することが可能となる。
【0032】
また、図6に示す第2の実施の形態の気流発生装置100の他の一例では、第1の実施の形態の気流発生装置10おける、第1の電極20と平行に配置された第2の電極30を、第1の電極20との距離を一定に維持しながら、その配設位置を変更可能(図6のX方向に位置を変更可能)に構成している。
【0033】
このように、第2の電極30の配設位置を変更可能に設けることで、任意に気流125の噴出方向を変更することができる。また、第2の電極30は、第1の電極20との距離を一定に維持しながら配設位置を変更することができるので、一定の印加電圧を負荷した場合には、噴出方向の異なる一定の噴出速度を有する気流125を発生させることができる。
【0034】
(第3の実施の形態)
図7は、第3の実施の形態の気流発生装置200を模式的に示した斜視図である。なお、第1の実施の形態の気流発生装置10の構成と同一部分には、同一の符号を付して重複する説明を省略または簡略する。
【0035】
図7に示すように、気流発生装置200は、第1の電極210と、第2の電極220と、ケーブル41を介して第1の電極210と第2の電極220との間に電圧を印加する放電用電源40とから主に構成されている。
【0036】
第1の電極210は、球状の導電体211の表面を、少なくとも一端面213が曲面で、かつ円柱状になるように誘電体212で被覆して構成されている。
【0037】
第2の電極220は、少なくとも一端面222が曲面で形成された、第1の電極210の導電体211と断面形状が異なる導電体221で構成され、所定の空隙を設けて一端面222を第1の電極210の一端面213に対向させて配設されている。なお、第2の電極220を第1の電極210に当接させて配設してもよい。さらに、導電体221の表面を誘電体で被覆して第2の電極220を構成してもよい。この場合、第1の電極210と対向する側における第2の電極220の導電体221の端面は曲面で形成されることが好ましい。
【0038】
ここで、第1の電極210の導電体211として、球状の形状を有するものを一例に挙げているが、特に形状は限定されるものではなく、例えば、棒状などであってもよい。また、第2の電極220の導電体221において、表面が誘電体で被覆される場合には、導電体211と同様に、導電体221の形状は特に限定されるものではない。
【0039】
なお、第1の電極210および第2の電極220を構成する材料は、第1の実施の形態の気流発生装置10における第1の電極20および第2の電極30材料と同様である。
【0040】
次に、気流発生装置200の作用について説明する。
【0041】
放電用電源40から第1の電極210と第2の電極220との間に電圧が印加され、一定の閾値以上の電位差となると、第1の電極210の一端面213と第2の電極220の一端面222との間に誘電体バリア放電230が起こり、この誘電体バリア放電230に伴って放電プラズマが生成される。なお、ここでは、誘電体バリア放電230によって、第2の電極220から第1の電極210に向かう方向に気流240が噴出される一例を示している。この場合、気流240は、第1の電極210の一端面213および側面に沿って流れ、第1の電極210の下流においては、中空の筒体状の流れが形成される。なお、第1の電極210の一端面213の曲率半径によっては、一端面213に沿って流れた後、側面に沿わずに放射状に広がる流れを形成する場合もある。
【0042】
第3の実施の形態の気流発生装置200によれば、曲面に形成された一端面どうしを対向させて、第1の電極210と第2の電極220と配設することで、第1の電極210において気流240の流れの妨げることなく、効率よく気流240を噴出することができる。また、第1の電極210の一端面213における曲率半径を変更することで、第1の電極210に沿う流れや、一端面213に沿って流れた後、放射状に広がる流れなどを形成することができる。
【0043】
(気流発生装置の配列形態例)
上記した本発明の気流発生装置は、単体でも使用することはできるが、複数の気流発生装置を所定の形態に配列して使用してもよい。そこで、ここでは、気流発生装置の配列形態について例を挙げて、図8〜図10を参照して説明する。なお、気流発生装置の配列形態は、これらの形態に限られるものではなく、適宜に用途に応じて形態を変更することができる。
【0044】
図8〜図10は、複数の気流発生装置10を所定の形態に配列した断面を模式的に示した図である。なお、ここでは、図1に示した第1の実施の形態に係る気流発生装置10を用いて、配列例を示しているが、他の実施の形態に係る気流発生装置においても同様に配列して使用することができる。
【0045】
図8に示すように、所定の間隔をおいて、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたって均一な気流を発生させることができる。
【0046】
また、図9に示すように、所定の間隔をおいて、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設し、さらに、これらの気流発生装置10における気流の噴出方向に所定の間隔をおいて、これらの気流発生装置10と千鳥配列となるように、複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたってより均一な気流を発生させることができる。
【0047】
また、図10に示すように、縦方向(気流の発生方向に対して垂直な方向)に複数の気流発生装置10を配設し、さらに、これらの気流発生装置10における気流の噴出方向に所定の間隔をおいて、これらの気流発生装置10の配置方向から90度回転させた向きに、すなわち、これらの気流発生装置10の長手方向に対して、長手方向が垂直となる配置方向(格子状)になるように、複数の気流発生装置10を配設してもよい。例えば、ダクトの断面にわたって気流発生装置10をこのように配設することで、ダクト断面にわたってより均一な気流を発生させることができる。
【0048】
(実施例)
次に、以下に本発明の実施例について説明する。
【0049】
ここでは、本発明に係る気流発生装置によって噴出される気流の可視化を行った。さらに、本発明に係る気流発生装置から噴出された気流の推力(Thrust)を測定した。
【0050】
図11は、気流発生装置によって噴出される気流55を可視化した画像である。図12および図13は、噴出された気流55の推力の測定方法を説明するための図である。図14は、測定された気流55の推力の結果を示す図である。なお、ここでは、図1に示した第1の実施の形態に係る気流発生装置10を用いて、気流の可視化や気流の推力の測定を行った。
【0051】
図11に示すように、第1の電極20の近傍に配設された線香300の煙301を流引させて気流55を可視化することで、第1の電極20と第2の電極30との間に起こった誘電体バリア放電50によって発生した気流が、第1の電極20の長手方向にほぼ垂直な方向に噴出していることがわかった。なお、この可視化画像は、後述する気流の推力の測定に用いる気流発生装置10を用いて、放電用電源40から印加する電圧の周波数を3kHzとし、電力を3Wとしたときの画像である。
【0052】
次に、噴出された気流の推力の測定方法について説明する。
【0053】
図12および図13に示すように、気流55が噴出される方向に、第1の電極20から5mmの間隔をあけて推力測定用振り子400が配設されている。この推力測定用振り子400は、気流55を衝突させる衝突板410と、一端に衝突板410が固定され、他端が図示しない支点で回動可能に固定された支持部材411とで構成されている。また、推力測定用振り子400は、支持部材411が支点で回動可能に固定されているので、衝突板410に気流55を衝突させた際、推力測定用振り子400は、上記した支点を中心に気流55の噴出方向に移動することができる。
【0054】
ここで、第1の電極20の導電体22には、タングステンからなる直径が1.0mmの棒状電極を用い、第2の電極30の導電体31には、ステンレス鋼からなる直径が1.0mmの棒状電極を用いた。また、第2の電極30において、第1の電極20と平行となる部分の長さを30mmとした。第1の電極20において、導電体22を被覆する誘電体21には、ガラスを用い、その被覆厚さを1.1mmとした。また、推力測定用振り子400を構成する衝突板410は、プラスチックからなる縦(L)が20mm、横(M)が40mm、厚さ(t)が0.5mmの板を使用した。なお、推力測定用振り子400の重さは9.8mNである。また、支持部材411は、ステンレス鋼からなる直径が1.0mmの棒で構成され、その長さを125mmとした。
【0055】
また、図13に示すように、気流55が衝突板410に衝突し、推力測定用振り子400が振れ角θで振れた場合、次の式(1)の関係が成立する。
d = L・tanθ …式(1)
ここで、dは、気流55の噴出方向への衝突板410の移動距離である。
【0056】
一方、推力測定用振り子400の重さをW、気流の推力をFとすれば、力の釣り合いから次の式(2)が成立する。
F = W・tanθ …式(2)
【0057】
上記した式(1)、式(2)および測定されたdを用いて、気流の推力Fを求めることができる。
【0058】
本実施例では、気流の推力は、放電用電源40から印加する電圧の周波数を、11、14、16kHzとし、それぞれ負荷電力(W)を変化させて測定した。
【0059】
図14に示すように、噴出される気流55によって推力が発生し、負荷電力の増加に伴って、気流の推力が増加していることがわかった。
【0060】
以上、本発明を実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
10…気流発生装置、20…第1の電極、21…誘電体、22…導電体、30…第2の電極、31…導電体、40…放電用電源、41…ケーブル、50…誘電体バリア放電、55…気流。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、
前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、
前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されていることを特徴とする気流発生装置。
【請求項2】
表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、
前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、
前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に徐々に広がり、かつ他方の電極に対向する側が鋭角となる形状に形成されていることを特徴とする気流発生装置。
【請求項3】
前記第2の電極の導電体の表面が誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に空隙が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極とが当接して配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項6】
前記電圧印加機構が、高周波電源で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の気流発生装置を複数所定の形態に配置して構成されたことを特徴とする気流発生装置。
【請求項1】
表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、
前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、
前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に長軸を有する楕円形状に形成されていることを特徴とする気流発生装置。
【請求項2】
表面が誘電体で被覆された棒状の導電体からなる第1の電極と、
前記第1の電極と平行に配設され、前記第1の電極の導電体と断面形状が異なる棒状の導電体からなる第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電圧を印加可能な電圧印加機構と
を備え、
前記第1の電極と前記第2の電極との間における誘電体バリア放電により、所定の方向に気流を噴出し、
前記第1の電極および前記第2の電極のうち、気流の噴出方向側に位置する電極の断面が、気流の噴出方向に徐々に広がり、かつ他方の電極に対向する側が鋭角となる形状に形成されていることを特徴とする気流発生装置。
【請求項3】
前記第2の電極の導電体の表面が誘電体で被覆されていることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項4】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に空隙が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項5】
前記第1の電極と前記第2の電極とが当接して配設されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項6】
前記電圧印加機構が、高周波電源で構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の気流発生装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載の気流発生装置を複数所定の形態に配置して構成されたことを特徴とする気流発生装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−110129(P2013−110129A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−43841(P2013−43841)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2006−183584(P2006−183584)の分割
【原出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2006−183584(P2006−183584)の分割
【原出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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