説明

気管内チューブ等の気道デバイスを監視するための装置及び方法

【課題】カフの圧力変化に伴う気道デバイスの位置ずれをなくすこと。
【解決手段】気道デバイス(14)は、例えば手術中の人工換気のために、患者の開いた気道を維持するために用いられ、膨張可能カフ(26)を含み、これが患者の気道(24)内の所定位置にある場合に膨張する。膨張したカフ(26)は、デバイス(14)を患者の気道(24)内の所定位置に維持するためのシールを提供し、汚染した口腔咽頭分泌物が患者の肺に漏れるのを防ぐ。膨張可能カフ(26)における圧力を監視及び制御するための方法及び装置(10)は、一実施形態において、設定点圧力の周辺の圧力を制御しつつ、患者の呼吸サイクル中の封止圧力の損失を防ぐ。他の実施形態において、この方法及び装置は、カフ(26)を含むデバイス(14)の圧力系における漏れ、圧力系における遮断、及び/又は使用中の気道デバイス(14)の異常位置を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物又は人の患者において開いた気道を維持するための気管内チューブ又は他の咽頭(pharyngeal)/喉頭部(laryngeal)デバイス等の気道デバイスの監視に関する。
【背景技術】
【0002】
気道内チューブ又は同様の気道デバイスは、例えば手術中の人工換気のために、患者の開いた気道を維持するために用いられる。通常、このデバイスは膨張可能カフ(cuff)を含み、これが患者の気道内の所定位置にある場合に膨張する。膨張したカフは、気道デバイスと気道を取り囲む組織との間のシール(seal)を形成し、これによって患者の気道内の所定位置にデバイスを維持すると共に、感染した口腔咽頭分泌物が患者の肺に漏れるのを防ぐ。
【0003】
WO−A−99/33508号は、喉頭マスク気道デバイスのカフにおける圧力を監視するため、及び膨張したカフを狭い公差内の予め設定した圧力に維持するための監視システムを含む装置について記載している。具体的には、この装置は、膨張したカフを組み込んだ閉鎖系内の圧力を定期的に測定し、測定した圧力を予め設定した圧力と比較して、差及びその極性を求める。次いで、この装置は、閉鎖系内の圧力を制御して、差をゼロまで低減させる。WO−A−99/33508号の開示は、引用により、本願にも含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、WO−A−99/33508号に記載された既存の装置よりも優れた改良を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様によれば、本発明は、気道デバイスの膨張可能シールの圧力を監視するための方法を提供する。この方法は、膨張可能シールの圧力を示す圧力値を受信することと、受信した圧力値を予め選択された所望の圧力値と比較することと、受信した圧力値と予め選択された圧力値との間の差が予め定義された公差よりも大きい場合、膨張可能シールの圧力を変更して差を小さくすることと、を含み、圧力を変更するステップが、受信した圧力値と所望の圧力値との間の差に依存するレートで実行されることを特徴とする。
【0006】
従来技術の技法においては、通常、設定点からの圧力偏差を補正するために迅速に応答する。しかしながら、呼吸サイクル中に、患者の気道からの胸郭内及び気管内圧力の結果として、膨張可能シールの周期的な圧力変化が生じる。ある状況においては、正常な周期的変化の結果として生じる圧力偏差を補正するために即座に応答することによって、膨張圧力は、気道によってシールを生成するのに必要な最小値よりも低下することがある。このため、分泌物がシールを通り過ぎて患者の肺まで漏れ、気道デバイスを押しのける危険が高まる。
【0007】
従って、本発明は、この問題を最小限に抑えるために、所望の圧力からの圧力の偏差又は変化の検出に応答して圧力を変更するレートを制御する。このため、偏差を補正するために即座に圧力を変更する代わりに、所望の圧力値からの測定圧量値の偏差に応じたレートで、圧力を調整する。調整レートは、更に、閾値によって制限される。圧力調整レートを制御することによって、所望の値からの偏差を補正するのに要する時間は長くなる。典型的に、調整レートは、吸気又は呼気の通常の時間期間に対応するか又はこれより長い間隔にわたる遅延を生じる。これは、呼吸サイクルに関連した最大の圧力偏差を表す。
【0008】
一実施形態においては、圧力変更レートは、測定圧力値と所望の値との間の差の二乗に依存する。
【0009】
例えば、ピストンを用いて閉鎖体積系の体積を変更し、従って圧力を変更する実施形態においては、ピストンを、以下の式によって定義されるレートNで移動させる。
【0010】
【数1】

【0011】
ここで、P1は実際の測定された圧力であり、
Sは設定点又は所望の圧力であり、
*は乗算器の演算であり、
Rは規制定数である。
【0012】
一実施形態においては、レートNは、ピストンを駆動するステッパモータによって動かされる1秒当たりのステップ数に対応する速度である。
【0013】
レートNは、予め決定された最大閾値速度に左右される場合がある。このため、計算されたレートNが閾値よりも大きい場合、ピストンを制御して閾値レートで動かす。
【0014】
通常、測定された圧力が設定点/所望の圧力よりも高い場合、モータは、圧力を下げるためにピストンをレートNで後方に駆動し、測定された圧力が設定点よりも低い場合、モータは、圧力を上げるためにピストンをレートNで前方に駆動する。
【0015】
一実施形態において、測定された圧力を、定期的な時間間隔、例えば0.1から2.5秒の範囲の時間間隔で受信し、体積、従って圧力の変化のレートを再計算し調整する。一実施形態では、レートは0.5秒に1度再計算される。
【0016】
第2の態様によれば、本発明は、膨張可能シールを用いた気道デバイスの位置の変化を検出するための方法を提供する。この方法は、膨張可能シールの圧力を示す受信した圧力値を予め定義された圧力値と比較して差を求めることと、差が予め決定された時間期間にわたって予め決定された量よりも大きい場合に、気道デバイスの位置の検出された変化を示すことと、を含む。
【0017】
気管内チューブのような気道デバイスの位置の変化は、医療的又は外科的処置の間に生じる可能性があり、隠れて見えないことがある(すなわち、患者を監視しているものによって検出することができない)。かかる変化は抜管を引き起こす恐れがあり、これによって気管内チューブカフは患者の喉頭又は上部気道内に意図せずに引き込まれる。しかしながら、喉頭体積は、通常は気管のものより相当に大きいので、具体的には著しい圧力低下である変化を監視することによって、本発明に従って、かかる隠れた抜管を検出することができる。
【0018】
一実施形態においては、予め定義された圧力値は、予め選択された所望の圧力値の予め定義された公差内である以前の圧力値である。別の実施形態では、予め定義された圧力値は、予め選択された所望の圧力値である。
【0019】
一実施形態においては、予め決定された量は、予め定義されたの圧力値のある割合である。一実施形態では、予め決定された量は、予め定義された圧力値の20%であるので、受信された圧力値が予め決定された時間期間にわたって予め定義された圧力値の80%未満である場合に、位置の変化が検出される。
【0020】
予め決定された時間は、典型的に15秒から2分の範囲内であり、一実施形態では60秒である。
【0021】
一実施形態においては、この方法は、膨張可能シールの圧力を示す、予め選択された所望の圧力値の予め定義された公差内の第1の圧力値を受信することと、その後、予め決定された時間間隔で更に別の圧力値を定期的に受信することと、各受信した更に別の圧力値を第1の圧力値と比較して差を求めることと、この差が予め決定された量よりも大きい場合、予め決定された時間期間にわたってタイマを開始することと、タイマが切れる前に更に別の定期的に受信した圧力値が前記予め選択された圧力値の前記予め定義された公差内にない場合、気道デバイスの位置の検出された変化を指示することと、を含む。
【0022】
他の実施形態においては、受信した圧力値と予め定義された圧力値との間の差を計算する必要がないことは認められよう。受信した圧力値は、予め定義された圧力値の予め決定された割合(例えば予め定義あれた圧力値の80%)に対応する最小値と比較して、受信した値が最小値未満である場合に、タイマを開始する。
【0023】
第3の態様によれば、本発明は、膨張可能気道デバイスからの流体の漏れを検出する方法を提供する。この方法は、膨張可能気道デバイスについての圧力値を受信することと、受信した圧力値及び予め決定された数の以前に受信した圧力値を用いて計算した値の統計的平均値を計算することと、統計的平均値が閾値平均値を超えた場合、気道デバイスからの流体の漏れを示すことと、を含む。
【0024】
一実施形態においては、受信した及び以前に受信した圧力値を用いて計算した値は、膨張可能気道デバイス内の流体の体積又は圧力の変化のレートを表す値である。好ましくは、体積又は圧力の変化のレートは、膨張可能気道デバイスの圧力を上げるための変化に対応する。
【0025】
気道デバイスのシールを膨張させ加圧するために用いられる流体の漏れは、気道デバイスの適正な機能に悪影響を及ぼす恐れがある。従って、可能な限り、膨張流体の漏れを監視して検出し、これらを手作業で補正可能とすることが重要である。これは、本発明に従って、膨張可能シールの圧力を監視することによって達成可能である。
【0026】
気道デバイスの使用中に、気道デバイスに漏れが存在する場合がある。かかる漏れは、手術中の穿孔によって引き起こされる場合があり、又は圧力系における接続部から緩やかな漏れがある場合もある。本発明によれば、気道デバイスの使用中に漏れが生じた場合、これを検出するには、各々が以前に受信した対応する数の圧力値に依存する多数の値の統計的平均値を計算し、これを閾値の統計的平均値と比較すれば良い。例えば、この値は、本発明の第1の態様に従って求めたように、体積又は圧力の計算された変化レートとすることができる。平均値が閾値を超える場合、これは、圧力を所望の圧力まで上げるために直前の時間間隔で著しい変化が必要であったことを示し、このため流体の漏れがあり得ることが表される。
【0027】
第4の態様によれば、本発明は、膨張可能気道デバイスからの流体の漏れを検出するための方法を提供する。この方法は、膨張可能気道デバイスについての圧力値を定期的に受信することと、受信した圧力値を予め決定された最小圧力値と比較することと、受信した圧力値が予め決定された最小圧力値未満である場合、気道デバイスからの流体の漏れを示すことと、を含む。
【0028】
一実施形態においては、予め定義された最小圧力値は、予め選択された所望の圧力値の予め決定された割合であり、例えば予め選択された圧力値の50%である。
【0029】
気道デバイスを最初に患者内に導入して膨張させる場合、所望の圧力値が達成されるまで圧力調整を行う。この後、圧力値を定期的に監視して、圧力の急激な低下を検出する。本発明によれば、測定された圧力値が予め選択された圧力値の予め決定された割合、例えば50%未満である場合、これは、圧力系からの流体の急激な損失を示し、従って漏れが検出される。
【0030】
第5の態様によれば、本発明は、膨張可能気道デバイスの圧力系における遮断を検出するための方法を提供する。この方法は、膨張可能気道デバイスについての圧力値を受信すると共に現在のアクティビティを計算することと、現在のアクティビティが予め決定された時間期間にわたってアクティビティについての閾値未満である場合、気道デバイスの圧力系における遮断を示すことと、を含む。
【0031】
一実施形態においては、アクティビティは、受信した圧力値を所望の又は平均圧力値と比較して差を計算することによって算出される。次いで、アクティビティは、差及び以前に受信した圧力値を用いて計算された予め決定された数の差の統計的平均値として求められる。
【0032】
ある状況において、気道デバイスの閉鎖体積圧力系内に固体材料が挿入されることがある。これによって遮断が生じて、圧力監視システムの適正な機能に悪影響を及ぼす場合がある。遮断が起こると、圧力は著しく静的になり、換気に関連した通常の圧力の周期的変化が検出されない。本発明は、圧力の所望の値からの偏差平均値が、予め決定された時間期間にわたって閾値未満である場合に、気道デバイスの圧力系における遮断を検出する。閾値は、通常、呼吸サイクルの結果として生じることが予想される予め決定された時間期間にわたる偏差平均値よりも小さい。
【0033】
第6の態様によれば、本発明は、実行された場合に、本発明の第1、第2、第3、第4、及び第5の態様のいずれか1つ以上の方法を実行するプログラム命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体を提供する。
【0034】
本発明の第7の態様によれば、本発明は、本発明の第1、第2、第3、第4、及び第5の態様のいずれか1つ以上の方法を実行するために構成されたプロセッサ手段を含む装置を提供する。
【0035】
当業者には認識できることであるが、本発明の第1、第2、第3、第4、及び第5の態様の各々は、組み合わせて用いることができ、典型的には、コンピュータプロセッサ上で実行されるソフトウェアの形態で実施される。本発明の方法は、ハードウェアの形態でも等しく辞し可能であることは認識されよう。
【0036】
本発明の他の所望の及び任意のフィーチャ及び利点は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
これより、本発明の実施形態について、添付図面を参照して一例として記載する。
【0038】
【図1】患者内の所定位置にある気道デバイスに結合された、本発明の一実施形態に従った装置の概略斜視図である。
【図2】図1の装置を示す概略ブロック図である。
【図3】本発明の実施形態の方法を実施する、図1の制御及び監視装置を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に従った、気道デバイスにおける圧力を制御するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図5A】本発明の第2の実施形態に従った、気道デバイスの位置的変化を検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図5B】本発明の第2の実施形態に従った、気道デバイスの位置的変化を検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図6A】本発明の第3の実施形態に従った、気道デバイスの圧力系における漏れを検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図6B】本発明の第3の実施形態に従った、気道デバイスの圧力系における漏れを検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に従った、気道デバイスの圧力系における漏れを検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に従った、気道デバイスの圧力系における遮断を検出するために実行される方法ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態の以下の説明において、説明する監視及び制御装置は、気道デバイスの膨張可能シールを含む閉鎖体積圧力系を含む。説明する実施形態においては、適切な気道デバイスの一例として、気管内チューブについて説明する。実施形態の少なくともいくつかを、喉頭マスク気道デバイス等の他の形態の気道デバイスと関連付けて実施可能であることは、当業者には認識されよう。更に、閉鎖体積系の使用が有利であるが、実施形態の少なくともいくつかを、気道デバイスの膨張可能シールの圧力を監視及び制御するための他の系と関連付けて用いることも可能である。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態に従った圧力制御及び監視装置10を示す。これは、患者16内で開いた気道を維持する際に用いるために位置決めされる気道デバイス14の可撓性膨張/収縮給気ライン12に接続されている。
【0041】
気道デバイス14は、気道チューブ18を含み、この近位端20は、患者の肺に対する外部換気又は麻酔供給部に接続するためのものであり、遠位端22は、人又は動物の患者の気管24内に挿入するためのものである。図1に示すように、チューブ18の遠位端22は、弾性的に可撓性の材料の膨張可能/収縮可能リング又はカフ26によって一定間隔を空けて取り囲まれている。カフ26は、可撓性の弾性的に変形可能な材料から形成され、図1には膨張した状態で示し、気道デバイス14と、患者16の周囲の身体構造すなわち気管24の壁との間に、シールを形成する。
【0042】
気道デバイス14の構造は従来のものであり、当技術分野において周知である。適切な気道内チューブの例は、Portex
Soft Seal気管チューブ及びLoTrach気管切開チューブを含む。
【0043】
通常、気道デバイス14のカフ26は、図1に示すように、いったん患者内に位置決めされると、手動で膨張される。その後、気道デバイス14を、装置10の膨張/収縮給気ライン12に接続することによって、圧力監視及び制御システム10が利用可能となる。
【0044】
図2は、膨張/収縮給気ライン12に着脱可能に接続するように適合された空気制御ポート30を含む圧力監視及び制御システム10のコンポーネントを概略的に示す。細長い可撓性接続又は拡張ライン12’(図1)は、一端において、制御ポート30に着脱可能に接続され、他端において、逆止弁12’’のコネクタ端部に接続可能である。このように、空気ライン12,12’は、以下で説明するように、気道デバイス14の膨張可能カフ26及び装置10の筐体内の空気変位機構に連通した圧力系の連続的に開いた通路を提供する。
【0045】
空気変位機構は、PTFE等の低摩擦材料の本体32の形態のシリンジを含み、これは、ピストン36と相互作用するための開いた(又は末端)端部を有する円筒形内腔34を有する。本体32は、フレームに固定され、空気制御ポート30への直接ラインに対するポート接続40を有する閉じた(又は先頭)端部まで、長手方向に延出する。この直接ラインにおいて、シリンダ34と気道デバイス14の膨張可能/収縮可能カフ26との間で、いずれかの方向に膨張空気が通る場合には、第1の通常は閉じたソレノイド弁V1を開いた状態に作動しなければならない。
【0046】
ピストン36は、支持及び案内手段(図示せず)に強固に取り付けられて、円筒形内腔34を通ってピストン36を長手方向に駆動することを可能とし、内腔の中央軸と精密に位置合わせされている。ピストン36は、ステップモータ44によって駆動される。モータ44は、図3に示すように、モータコントローラ及びドライバ手段48の制御のもとで4つの入力端子の各々の相対励起の差異(variance)によって精密な方向性制御を有する。モータコントローラ及びドライバ手段48は、プロセッサ50(図示せず)からのコマンドに応答して動作して、シリンジ本体32と気道デバイス14のカフ26との間に形成された閉鎖体積系の体積を変更することによって、カフ26における圧力を変更する。具体的には、カフ圧力偏差の調整は、閉鎖体積系内の空気の変位を増分することによって行われ、各増分(モータ44のステップに対応する)は、例えば約0.0005mlずれる。これによって、高い精度で圧力調整を行うことができる。
【0047】
本発明の装置は、閉鎖体積系における瞬間圧力を測定する。具体的には、装置10は、第1及び第2の圧力センサPS1、PS2を含み、これらは、シリンダ出口ポート40と通常は閉じた第1のソレノイド弁V1との間のラインにおける気圧を冗長的に監視するように接続されている。このため、エラーの場合を除いて、第1及び第2のセンサPS1、PS2は、同一の圧力読み取り値を生成しなければならない。第2の通常は閉じたソレノイド弁V2は、シリンダポート40と第1のソレノイド弁V1との間の空気ラインに接続しているものと図示されている。弁V2は、開いた状態へと作動すると、その開放空気端部から、シリンダポート40から第1のソレノイド弁までの空気ラインまでの経路を確立するので、弁V1が閉じた不作動状態にあり弁V2がその開放状態に作動された状態では、円筒形内腔34内でピストン36が右−左へ(後方へ)変位すると、閉鎖体積圧力系内への新鮮な(周囲)空気の流入が誘導される。同様に、2つの弁V1及びV2が同じ状態にある場合に(V2が作動され、V1がその通常閉じた状態にある)、内腔34内でピストン36が左−右へ(前方へ)変位すると、系から過剰な空気又は気体が放出される。
【0048】
また、同様にして、弁V2がその通常閉じた状態にあり弁V1がその開放状態に作動された状態では、ピストン36が右−左へ(後方へ)変位すると、気道デバイス14のカフ26から膨張空気が引き出され(従ってこれが収縮し)、弁V2が不作動で弁V1が作動された同じ状態で、ピストン36が左−右へ(前方へ)変位すると、気道デバイスの膨張可能カフ26に膨張空気が供給され、これによって圧力が上昇する。
【0049】
弁V1及びV2の作動のために必要な制御信号は、従来の技法に従って、(以下で説明する図3に示すように)装置10のプロセッサ50からプログラムシーケンス信号によって供給される。
【0050】
図3は、例えば図1に示すように、気道デバイス14のカフ26の膨張圧力を監視及び制御するための装置10の論理コンポーネントを示す。装置10は、プロセッサ50を含み、これは、本発明の実施形態の1つ以上の方法に従って、第1及び第2の圧力センサPS1、PS2からの入力信号を受信し、ステップモータコントローラ及びドライバ48ならびに弁V1及びV2に制御信号を供給し、信号をユーザインタフェース52に出力して、選択し測定した圧力値等の情報を供給し、警報指示を供給する。
【0051】
当業者には認識できることであるが、プロセッサ50は、本発明の実施形態に従った方法を実行するためのプログラム命令を実行するプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ等を含むことができる。あるいは、プロセッサ50の機能性の一部は、例えばWO−A−99/33508号に記載されたように、ハードウェアにおいて好都合に実施することができる。
【0052】
装置10は、WO−A−99/33508号に記載された装置と同様に動作する。具体的には、システムの始動、フェ−ルセーフ、及び通常のシステム制御動作は、WO−A−99/33508号に記載されたものと類似しており、そのため、本明細書において詳細には記載しない。
【0053】
上述したように、装置10は、気道デバイスカフ26の膨張圧力を監視し規制する。患者は通常、機械的に換気される。すなわち、患者の換気は、気道チューブ18を介して正の圧力をかけた結果であり、これは間欠的陽圧換気、つまり、「IPPV(intermittent positive-pressure ventilation)」とも称される。このため、装置10は、中線圧力値を中心とした圧力の変動(oscillations)を測定する。これらの振動は、呼吸サイクルに相当し、典型的な麻酔をかけた成人患者では毎分約12サイクルである。従って、自発的にしろIPPVによってにしろ、気道チューブ14を介した呼吸流は、カフ26に圧縮/膨張の規則的なサイクルがかかるという効果を有する。この結果、この圧縮/膨張によって引き起こされた弾性的に変形可能なカフ26の体積変化により、圧力は周期的に変化する。
【0054】
WO−A−99/33508号の既知のシステムは、設定点(中線に対応する)を中心とした公差帯内で圧力差が検出された場合には圧力調整を実行せず、上述の変動を許容するが、このシステムは、これらの公差外の圧力差が検出された場合にすぐに応答する。具体的には、システムは、ピストン36を制御して、適切な距離だけすぐに変位して設定点からの測定偏差について補正を行うようにする。しかしながら、この場合、呼吸サイクルによって引き起こされる変化のために、カフ26における圧力が設定点の周囲の公差帯を行き過ぎる(overshoot)か又は届かなくなる(undershoot)場合がある。この結果、カフ圧力が、シールを生成するのに必要な最小圧力よりも低くなって、分泌物の漏れ及び気道デバイスの移動が生じる恐れがあり、又は、最大圧力を超えて、患者を負傷させる危険がある場合がある。
【0055】
図4は、本発明の第1の実施形態に従った、上述のデバイスの閉鎖体積系の圧力を調整するための方法を実施するプロセッサ50が実行するステップを示すフロー図である。この方法は、予め決定された公差帯から外れた、所望の圧力からの偏差について補正を行う一方で、膨張圧力が、気道にシールを生成するために必要な最小値を下回らないことを確実とする。具体的には、この方法は、検出された圧力偏差に応じて圧力が変更されるレートを制御して、患者の呼吸サイクルに関連した通常の圧力変化の結果として生じる偏差を許容する。
【0056】
従来のシステム起動手順に従って、気道デバイス14の膨張可能カフ26の圧力P1が、予め選択された設定点圧力値を中心とする予め定義された公差帯内で確立された後に、この方法が開始する。当業者には認められるであろうが、設定点は、子供、男性及び女性の成人等、異なる患者について通常用いられる多数の可能な中線圧力値から、オペレータが選択する。この実施形態においては、オペレータによって、20、30、50、及び50mmHgのカフ圧力値が選択可能であるが、この装置は、選択される他の適切な圧力値を提供することも可能である。
【0057】
従って、ステップ405において、この方法は、装置10の第1及び第2の圧力センサPS1、PS2の一方から、膨張可能カフの圧力P1に対応した測定圧力値を受信する。ステップ410において、この方法は、測定圧力値P1を選択した設定点値Sと比較して、差(P1−S)を求め、この差が予め定義された公差帯(例えばS+/−0.5mmH2O(mmHg))内であるか否かを検討する。一方において、ステップ410が、測定圧力値P1が予め定義された公差帯内にあると判定すると、この方法はステップ405に戻って、次のサンプリングされた圧力値を待つ。一方、ステップ410が、測定圧力値P1が設定点値についての予め定義された公差帯内にないと判定すると、この方法は引き続きステップ415に進んで、圧力の変更のレートを決定して、この差を補正する。具体的には、例示する実施形態において、ステップ415は、ステッパモータ44によって駆動されるピストン36の速度Nの値を計算する。ここで、Nは、以下の式を用いた、ステッパモータの1秒当たりのステップ数である。
【0058】
【数2】

【0059】
ここで、Nはステップ数であり、
1は実際の測定された圧力であり、
Sは設定点又は所望の圧力であり、
*は乗算器の演算であり、
Rは予め決定された規制定数である。
【0060】
規制定数は、圧力の規制を円滑にし、系の変動を防ぐために用いられる。
【0061】
一実施形態においては、速度Nの値は、ステッパモータ44の1秒当たりのステップ数Nについての予め定義された最大閾値Tによって制限される。一実施形態では、Tは毎秒2000ステップである。このように速度を制限することによって、確実に反応時間は常に遅延され、これによって、圧力が公差帯を通り過ぎたり届かなかったりすることがないことが確実となる。このため、ステップ415で閾値を超える値Nが算出された場合には、代わりに閾値Tをモータ速度Nについて用いる。
【0062】
次に、ステップ420において、この方法は、ピストンの動きの方向を判定するために、サンプリングされた圧力P1が設定点値よりも大きいか否かを判定する。ステップ420が、圧力P1が設定点よりも大きいと判定した場合、この方法は引き続きステップ425に進んで、ステッパモータコントローラ及びドライバ48に信号を送信し、ステッパモータ44を制御して、ピストン36を速度Nで円筒形内腔34内で後方に駆動させ、閉鎖体積圧力系の体積を増大させ、従ってこの系における圧力を低下させ、これによって膨張可能カフ26における圧力を低下させる。あるいは、ステップ420が、圧力P1が設定点未満であると判定した場合、この方法は引き続きステップ430に進んで、ステッパモータコントローラ及びドライバ48に信号を送信し、ステッパモータ44を制御して、ピストンを速度Nで円筒形内腔34内で前方に駆動させ、閉鎖体積圧力系の体積を低減させ、従ってこの系における圧力を上昇させ、これによって膨張可能カフ26における圧力を上昇させる。
【0063】
ステップ425又は430のいずれかの後に、この方法はステップ405に戻って、次のサンプリングされた圧力値を待つ。通常、P1の圧力値は、例えば0.5秒に1度のように規則的な時間期間で定期的に受信される。他の実施形態においては、サンプル間の時間期間について他の値を使用可能であり、結果としてピストンの速度を計算するための式の変更も使用可能であることは認められよう。しかしながら、上述の式(1)を用いた体積/圧力の変更のレートの計算と組み合わせて、0.5秒に1度圧力をサンプリングすることは、良好な結果を生じることがわかっている。なぜなら、速度Nが再計算されるのは、圧力を補正するための以前に計算したステップ数の半分のみが完了した後だからである。
【0064】
従って、本発明のこの実施形態の方法は、系の圧力を周期的にサンプリングして、測定圧力と予め定義された最大閾値に左右される所望の圧力(すなわち設定点)との間の差に依存する反応速度によって変更に応答する。このため、閉鎖体積系における圧力の規制は、ピストン速度を変更することによって連続的に変動され、これによって圧力の変化を引き起こす。この方法は、実際の圧力と設定点圧力との差が大きい場合には高速でピストン36を駆動し、いったん測定圧力が設定点圧力に近付くとピストン速度を下げる。このため、検出された圧力偏差に応じて圧力変化レートを制御することによって、いっそう円滑な圧力規制が達成される。圧力を徐々に変更して、所望の圧力からの偏差を補正することによって、瞬間的な変更を行うことに関連した問題を防ぐことができる。
【0065】
図5Aは、本発明の別の実施形態に従った、膨張した気道デバイス14の位置の変化を検出するための方法を実施するプロセッサ50が実行するステップを示すフロー図である。先に説明したように、気管内チューブ等の気道デバイスの位置の変化は、医療的又は外科的処置の間に生じる可能性がある。かかる変化は抜管を引き起こす恐れがあり、これによって気管内チューブカフは患者の喉頭又は上部気道内に意図せずに引き込まれる。喉頭体積は、通常は気管のものより相当に大きく、従って、典型的に20%以上の圧力低下のような著しい圧力低下を監視することによって、かかる隠れた抜管を検出することができる。
【0066】
この方法は、従来のシステム起動手順に従って、気道デバイス14の膨張可能カフの圧力P1を、予め選択した設定点圧力値を中心とした予め定義された公差帯内に最初に確立した後、開始する。当業者には認められるであろうが、設定点は、子供、男性及び女性の成人等、異なる患者について通常用いられる多数の可能な中線圧力値から選択される。この実施形態においては、オペレータによって、20、30、40、及び50mmHgのカフ圧力値が選択可能であるが、この装置は、選択される他の適切な圧力値を提供することも可能である。
【0067】
従って、ステップ505において、この方法は、装置10の第1及び第2の圧力センサPS1、PS2の一方から、膨張可能カフの圧力P1を示す測定圧力値を受信する。ステップ510において、この方法は、測定圧力値P1を選択した設定点値Sと比較して差を求め、この差が予め定義された公差帯内であるか否かを検討する。ステップ510が、測定圧力値P1が予め定義された公差帯内にないと判定すると、この方法はステップ505に戻る。あるいは、ステップ510が、測定圧力値P1が予め定義された公差帯内にあると判定すると、この方法は引き続きステップ515における第2の段階に進む。
【0068】
ステップ515において、この方法は、装置10の第1及び第2の圧力センサの一方から、更に別の測定圧力値P2を受信する。ステップ520は、更に別の測定圧力値P2を以前に測定した圧力値P1と比較して差を求め、この差が、この場合は以前に測定した圧力値P1の20%である予め決定された量よりも大きいか否かを検討する。この予め決定された量は、同様に、例えば15%から30%の範囲内のような以前の測定値の異なる割合、設定点の対応する割合、又は固定的な予め決定された圧力差(例えば10から25mmHg)としても良いことは認識されよう。
【0069】
ステップ520が、差が20%より大きくないと判定すると、この方法はステップ515に戻る。あるいは、ステップ520が、差が以前の測定圧力値P1の20%(あるいは設定点値又は固定的な圧力差)より大きいと判定すると、この方法は引き続きステップ525に進む。
【0070】
当業者には認識できることであるが、測定圧力値を以前の測定値と比較して差を求め、次いで差を閾値と比較するのではなく、ステップ520では、測定圧力値P2を予め決定された最小圧力値と比較して同じ結果を得ることも同様に可能である。例えば、最小圧力値は、前の予め決定された圧力値P1の80%とすることができる。この場合、ステップ520は、P2をP1の80%と比較し、P2がP1の80%以下であるか否かを判定し、そうである場合にはステップ525に進む。
【0071】
ステップ525において、この方法はタイマを開始させる。この実施形態ではタイマを60秒にセットするが、実施形態において、例えば15秒から20分の範囲のように、タイマの代替的な持続時間も使用可能であることは認識されるであろう。
【0072】
ステップ525において開始させたタイマが動作している間、この方法は引き続きステップ530に進んで、次に測定された圧力値PNを受信する。ステップ535において、この方法は、次に測定された圧力値PNを設定点値と比較して差を求め、この差が予め定義された公差帯内であるか否かについて検討する。ステップ535で、測定圧力値PNが設定点値を中心とした予め定義された公差帯内にあると判定した場合、この方法は引き続きステップ540に進んでタイマを停止させる。次いで、方法はステップ515に戻る。あるいは、ステップ535において、測定圧力値PNが予め定義された公差帯内にないと判定した場合、方法は引き続きステップ545に進んで、タイマが切れたか否かを検討する。タイマが切れていない場合、方法はステップ530に戻って、次の測定圧力値PNを受信する(上述したように、通常、圧力値は、例えば0.5秒に1度のように定期的な時間間隔でサンプリングされている)。あるいは、タイマが切れている場合、方法は引き続きステップ550に進んで、気道デバイスの位置の著しい変化を判定し、「異常位置警報」を活性化する。
【0073】
異常位置警報を活性化するステップ550は、1つ以上の信号を供給して、装置10の筐体上に形成されたユーザインタフェース52上で可聴警報及び/又は視覚警報を発することができる。
【0074】
ステップ550の後、方法は停止するが、いったん気道デバイス14が再位置決めされて装置10がリセットすると、繰り返すことができる。
【0075】
いくつかの実施形態において、図5Aの方法は、測定圧力が所望の圧力値の50%以上等の著しい量だけ低下した場合に自動的に警報を活性化する方法と関連付けて用いることも可能であることは認識されよう。かかる方法については、以下で図7に関連付けて記載する。
【0076】
図5Bは、図5Aの方法が実施するアルゴリズムを示すフロー図である。
【0077】
図6は、本発明の別の実施形態に従った、膨張可能気道デバイスの閉鎖体積圧力系からの、典型的に空気である流体の漏れを検出するための、第1の方法を実施するプロセッサ50が実行するステップを示すフロー図である。
【0078】
気道デバイスの膨張可能シールに加圧するために用いられる空気又は他の流体の漏れは、圧力監視及び制御システム10の適正な機能に悪影響を及ぼす恐れがある。従って、可能な限り、漏れを監視して検出し、これらを手作業で補正可能とすることが重要である。これは、本発明に従って、膨張可能シールの圧力を監視することによって達成可能である。
【0079】
気道デバイスの使用中に、気道デバイスに漏れが存在する場合がある。かかる漏れは、手術中の穿孔によって引き起こされる場合があり、又は圧力系における接続部から緩やかな漏れがある場合もある。本発明によれば、気道デバイスの使用中に漏れが生じた場合、これを検出するには、各々が以前に受信した対応する数の圧力値に依存する多数の値の統計的平均値を計算し、これを閾値の統計的平均値と比較すれば良い。例えば、この値は、本発明の第1の態様に従って求めたように、体積又は圧力の計算された変化レートとすることができる。平均値が閾値を超える場合、これは、圧力を所望の圧力まで上げるために直前の時間間隔で著しい変化が必要であったことを示し、このため流体の漏れがあり得ることが表される。
【0080】
これは、図6の方法において実施される。この方法は、装置10の従来のシステム起動手順の間及び/又は後に実行される。具体的には、ステップ605において、この方法は、装置10の第1及び第2の圧力センサPS1、PS2の一方から、膨張可能カフ26の圧力に対応した測定圧力値PNを受信する。ステップ610において、この方法は、測定圧力値PNを選択した設定点値と比較して差を求め、この差が予め定義された公差帯内にあるか否かを検討する。ステップ610が、測定圧力値PNが設定点値を中心とした予め定義された公差帯内にあると判定すると、方法はステップ615において値Nをゼロにセットする。次いで、方法はステップ605に戻り、予め定義されたサンプリング周期の後に、次のサンプリング圧力値を受信する。あるいは、ステップ610において、測定圧力値PNが予め定義された公差帯内にないと判定されると、方法は引き続きステップ615に進む。
【0081】
ステップ620において、方法は、体積、従って圧力の変化のレートを求めて、差を補正する。具体的には、例示した実施形態において、ステップ615は、例えば上述の式(1)を用いて、ステッパモータの1秒当たりのステップ数Nに対応した、ステッパモータ44が駆動するピストン36の速度の値を計算する。
【0082】
ステップ625において、方法は、測定圧力値PNが設定点又は所望の圧力値よりも大きいか否かを判定する。測定圧力値PNが設定点又は所望の圧力値よりも大きい場合には、設定点圧力を超えており、漏れがない可能性があり、いくつかの実施形態では方法を停止することができる。しかしながら、本実施形態においては、ステップ625で、測定圧力値PNが設定点又は所望の圧力値よりも大きいと判定された場合、方法はステップ628において値Nを負にセットする。あるいは、測定圧力値PNが設定圧力値未満である場合、Nの値は正であり、方法は引き続きステップ630に進む。
【0083】
ステップ630では、以前の予め決定された数のサンプル、例えば、以前の20サンプル(すなわちPNについて計算したNの値及び以前の19サンプル圧力値について計算したNの値)について、体積/圧力の変化のレートの統計的平均を計算する(例えば中間平均値として計算される)。ステップ635において、方法は、ステップ630で計算した平均値を予め定義された閾値と比較する。閾値は、患者における通常の使用中に発生する圧力低下に応じた圧力規制の無効動作を示す最小平均値である。好適な実施形態においては、閾値は400であり、呼吸サイクルの10秒にわたる通常のNの平均値を表す(Nは膨張(正)、収縮(負)、及び静的ステップを含む)。閾値の値は、オペレータによって調整可能とすることができ、小さい漏れを検出するために低くするか、又は著しい漏れのみを検出するために高くすることができる。
【0084】
ステップ635で、平均値が閾値未満であると判定された場合、方法はステップ605に戻る。あるいは、ステップ635で、平均値が閾値よりも大きいと判定された場合、方法は引き続きステップ640に進む。
【0085】
ステップ640は、気道デバイスの閉鎖体積圧力系において漏れがあることを示し、このため「漏れ警報」を活性化する。
【0086】
漏れ警報を活性化するステップ640では、1つ以上の信号を供給して、装置10の筐体上に形成されたユーザインタフェース52上で可聴警報及び/又は視覚警報を発することができる。これらの警報は、オペレータに信号を送信して、閉鎖体積圧力系における接続部をチェックし、空気の損失を補修するように求める。
【0087】
ステップ640の後、方法は停止する。方法は、いったん装置10がリセットされたら繰り返すことも可能である。
【0088】
図6Aの方法では、計算された値Nについて平均値を求め、これを閾値と比較したが、他の実施形態においては、平均測定圧力値等の他の値を使用可能であることは認識されよう。平均値を用いることによって、この方法は、呼吸又は換気サイクルに関連した通常の圧力変動を考慮に入れる。
【0089】
図6Bは、図6Aの方法によって実施されるアルゴリズムを示すフロー図である。
【0090】
図7は、本発明の別の実施形態による、膨張可能気道デバイスから、典型的に空気である流体の漏れを検出するための、別の方法を実施するプロセッサ50が実行するステップを示すフロー図である。
【0091】
前述のように、本発明の装置の使用中に、例えば手術中の穿孔によって気道デバイスに漏れが存在する場合がある。本発明によれば、気道デバイスの使用中に漏れが生じた場合、これは、膨張可能気道デバイスの圧力値が最小圧力未満に急激に低下することを監視することによって、検出可能である。通常、最小圧力値は、気道デバイスの所望の又は設定点圧力の50%である。
【0092】
これは、図7の方法において実施される。この方法は、装置10のセットアップ手順の後、すなわち装置が正常に使用されている場合に実行される。
【0093】
ステップ705において、この方法は、装置10の第1及び第2の圧力センサPS1、PS2の一方から、膨張可能カフ26の圧力PNに対応した測定圧力値PNを受信する。
【0094】
ステップ710において、この方法は、測定圧力値PNを、この実施形態では選択した設定点値の50%に対応している予め定義された圧力値と比較して、PNが設定点値Sの50%未満であるか否かを判定する。ステップ710で、測定圧力値が設定点値の50%よりも大きいと判定された場合、方法はステップ705に戻る。あるいは、ステップ710において、測定圧力値が設定点値の50%未満であると判定された場合、方法は引き続きステップ715に進んで、気道デバイスの空気膨張システムにおける漏れが示され、このため「漏れ警報」が活性化される。
【0095】
漏れ警報を活性化するステップ715では、1つ以上の信号を供給して、装置10の筐体上に形成されたユーザインタフェース52上で可聴警報及び/又は視覚警報を発することができる。これは、図6のステップ635のものと同一又は異なる警報とすることができる。これは、オペレータに信号を送信して、閉鎖体積圧力系における接続部をチェックし、空気の損失を補修するように求める。
【0096】
ステップ715の後、方法は停止する。方法は、いったん装置10がリセットされたら繰り返すことも可能である。
【0097】
図8は、本発明の更に別の実施形態による、膨張可能気道デバイスの圧力系における遮断を検出するための方法を実施するプロセッサ50が実行するステップを示すフロー図である。
【0098】
上述したように、ある状況において、圧力監視及び制御装置10に取り付けられた気道デバイス14の閉鎖体積圧力系内に、固体材料が挿入されることがある。これによって、典型的に膨張ライン12に遮断が生じて、監視及び制御装置10の適正な機能に悪影響を及ぼす場合がある。遮断が起こると、圧力は著しく静的になり、換気に関連した通常の圧力の周期的変化が検出されない。本発明は、圧力の所望の値からの偏差平均値(本明細書では「アクティビティ」と称する)が、予め決定された時間期間にわたって閾値未満である場合に、気道デバイスの圧力系における遮断を検出する。閾値は、通常、呼吸サイクルの結果として生じることが予想される予め決定された時間期間にわたる圧力偏差平均値よりも小さい。
【0099】
この方法は、以下のように、典型的には1.25秒に1度、アクティビティの値を定期的に計算する。ステップ805において、装置10の第1及び第2の圧力センサPS1、PS2の一方から、膨張可能カフ26の圧力を示す瞬時圧力値PNを受信する。ステップ810において、測定圧力値と予め定義された(又は予め計算された)平均圧力値との差を求め、ステップ815において、この差を循環バッファに記憶する。このバッファは、現在の、及び、予め決定された数の以前に計算した圧力差(この場合は合計10の値)を記憶する。ステップ820は、循環バッファに記憶された値の中間平均値としてアクティビティ値を計算する。
【0100】
この中間平均値は、呼吸サイクルから通常に生じるアクティビティを示すものである。具体的には、通常動作の間、患者の自発呼吸又は機械的換気の適用のいずれかによって、設定点値の周囲に周期的な正及び負の圧力変動が生じる。各サイクル中、設定点からの圧力差は、0.5から3〜5cmH2O(1mmHg=1.395mmH2O)まで変動し得る。
【0101】
この方法は、タイマを用いて、アクティビティレベルが著しい時間期間にわたって閾値未満であり、遮断を示すか否かを判定する。通常、タイマは、アクティビティについて低い方の閾値によってトリガされて(例えば低い方の閾値は3である)、3分間(180秒間)動作するが、1から5分間の他の時間期間も可能である。タイマがリセットされることなく切れた場合、遮断警報を活性化する。しかしながら、タイマが切れるまでにアクティビティが高い方の閾値(例えば8)を超えた場合には、タイマはリセット又は停止される。
【0102】
遮断警報は、1つ以上の信号を供給して、装置10の筐体上のユーザインタフェース52上で可聴警報及び/又は視覚警報を発することができることは、認識されよう。これは、オペレータに信号を送信して、閉鎖体積圧力系における遮断をチェックするように求める。
【0103】
再び図8を参照すると、ステップ825は、タイマが切れたか否かを判定し、切れた場合には、ステップ830において遮断警報フラグをセットして、遮断警報を起動する。ステップ830の後、この方法は、ステップ835において、現在のアクティビティ値を高い方の閾値と比較して、アクティビティが高い方の閾値よりも大きいか否かを判定する。高い方の閾値は、呼吸サイクルに関連した通常の圧力変動を示すアクティビティのための値である。アクティビティが高い方の閾値よりも大きい場合、遮断は存在しない。この場合、アクティビティは、空気が膨張ライン12を通過することを実証するのに充分である。一実施形態においては、高い方の閾値の値は8である。従って、ステップ835が、アクティビティが高い方の閾値よりも大きいと判定した場合、ステップ840は続いてタイマをリロードする。
【0104】
一方、ステップ825で、タイマが切れていないと判定された場合、ステップ850は、遮断警報フラグをリセットし、ステップ855は、現在のアクティビティが低い方の閾値よりも大きいか否かを判定する。一実施形態においては、低い方の閾値は3である。ステップ855が、アクティビティ値が低い方の閾値よりも大きいと判定した場合、アクティビティは、高い方の閾値によって示される通常アクティビティレベルよりも低く、ステップ860は、続いて遮断タイマをリロードする。
【0105】
記載したデバイス及びその使用方法は、気管内チューブ等の気道デバイスのカフ圧力のコントローラとして作用する。本発明の態様を組み込んだデバイスは、以下の機能の1つ以上を実行する。
【0106】
a)通常の呼吸の動きからは生じない定期的に測定される圧力変化に応じて、制御されたレートで圧力補正を実行して、圧力を所望の範囲内に維持するようにする(行き過ぎたり届かなかったりすることを防ぐ)。
【0107】
b)圧力系における漏れを監視し、漏れが検出された場合には警報を発する。
【0108】
c)部分的又は完全な抜管を招く気道デバイスの正しい位置からの偏差を監視し、異常位置が検出された場合には警報を発する。
【0109】
d)圧力系における遮断を監視し、遮断が検出された場合には警報を発する。
【0110】
これらの機能は、WO−A−99/33508号に開示されたもの等、従来技術のデバイスの既存の機能と組み合わせて含ませることができる。
【0111】
このデバイスは、限定ではないが、診断チェック、モータ及び弁の動作及び制御、ならびに圧力測定を含む全てのタスクを実行するマイクロプロセッサ50によって制御される。通常、デバイスは、圧力指示及び警報のためのグラフィックディスプレイを含むユーザインタフェース52、ならびに、高度な監視及び制御のためデータを出力し、これによって異なる民生用ソフトウェアパッケージによるデータ評価を可能とするインタフェースを有する制御ユニットを含む。
【0112】
その通常の規制モードにおいて、系の圧力サンプリングは0.5秒に1度行われ、これによって、サンプル間に充分な時間を与えて、設定点圧力に対する評価を実行し、パルス列の形態で制御信号をモータコントローラに発して、ピストンを駆動して閉鎖体積系内で空気を変位させ、このため、圧力を実質的に設定点圧力に変更する。
【0113】
上述した本発明のいくつか又は全ての態様を組み込んだシステムは、患者に対する外科的処置の間に麻酔専門医に対する大きな支援となる。具体的には、かかるシステムは、いくつかの同時に動作するアルゴリズムを提供して、リアルタイムで又はリアルタイムに近い状態で、気道デバイスの動作ステータスを処理し、いずれかの不都合な変化について麻酔専門医に対して聴覚的に及び/又は視覚的に警報を与える。
【0114】
当業者には認められるであろうが、記載した実施形態には、様々な変更及び変形を行うことができる。添付の特許請求の範囲に規定されるように、本発明の範囲内に該当する全てのかかる変更、変形、及び均等物を含むことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気道デバイスの膨張可能シールの圧力を監視するための方法であって、
前記膨張可能シールの前記圧力を示す圧力値を受信するステップと、
前記受信した圧力値を予め選択された所望の圧力値と比較するステップと、
前記受信した圧力値と前記予め選択された圧力値との間の差が予め定義された公差よりも大きい場合、前記膨張可能シールの前記圧力を変更して前記差を小さくするステップと、
を含み、
前記圧力を変更する前記ステップが、前記受信した圧力値と前記所望の圧力値との間の差に依存するレートで実行される、方法。
【請求項2】
圧力値を受信する前記ステップが予め定義された時間間隔で定期的に実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め定義された時間間隔が0.1から2.0秒の範囲内である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記圧力を変更する前記ステップが、前記受信した圧力値と前記予め選択された圧力値との間の前記差の二乗に依存するレートで実行される、請求項1、2、又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記圧力を変更する前記ステップが、閉鎖体積圧力系の体積を変更することによって実行され、体積の前記変更が、
【数1】


に比例するレートで実行され、
ここで、Nは体積の変更の前記レートであり、
1は実際の測定された圧力であり、
Sは設定点又は所望の圧力であり、
*は乗算器の演算であり、
Rは規制定数である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記圧力を変更する前記ステップが、予め決定された閾値レートに更に限定されたレートで実行される、前出の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
膨張可能シールを用いた前記気道デバイスの位置の変化を検出するための方法であって、前記膨張可能シールの前記圧力を示す受信した圧力値を予め定義された圧力値と比較して差を求めることと、前記差が予め決定された時間期間にわたって予め決定された量よりも大きい場合に、前記気道デバイスの位置の検出された変化を示すことと、を含む、方法。
【請求項8】
前記予め定義された圧力値が、予め選択された所望の圧力値の予め定義された公差内の以前の圧力値である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記予め決定された量が前記予め定義された圧力値のある割合である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記予め決定された量が前記予め定義された圧力値の15%から25%の範囲内であり、好ましくは20%である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記予め決定された時間が15秒から1分の範囲内である、請求項7から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記膨張可能シールの圧力を示す、予め選択された所望の圧力値の予め定義された公差内の第1の圧力値を受信することと、
その後、予め決定された時間間隔で更に別の圧力値を定期的に受信することと、
各受信した圧力値を予め決定された圧力値と比較して差を求めることと、
前記差が予め決定された量よりも大きい場合、予め決定された時間期間にわたってタイマを開始することと、
前記タイマが切れる前に前記更に別の定期的に受信した圧力値が前記予め選択された圧力値の前記予め定義された公差内にない場合、前記気道デバイスの位置の検出された変化を指示することと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記予め決定された圧力値が前記予め選択された値又は前記第1の圧力値のいずれかである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
膨張可能シールを用いた前記気道デバイスの位置の変化を検出するための方法であって、前記膨張可能シールの前記圧力を示す受信した圧力値を予め定義された圧力値と比較することと、前記圧力値が予め決定された時間期間にわたって前記閾値を超えた場合に、前記気道デバイスの位置の検出された変化を示すことと、を含む、方法。
【請求項15】
膨張可能気道デバイスからの流体の漏れを検出する方法であって、
前記膨張可能気道デバイスについての圧力値を受信することと、
前記受信した圧力値及び予め決定された数の以前に受信した圧力値を用いて計算した値の統計的平均値を計算することと、
前記統計的平均値が閾値平均値を超えた場合、前記気道デバイスからの流体の漏れを示すことと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記受信した及び以前に受信した圧力値を用いて計算した前記値が、前記膨張可能気道デバイス内の流体の体積又は圧力の変化のレートを表す値である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
膨張可能気道デバイスからの流体の漏れを検出するための方法であって、前記膨張可能気道デバイスについての圧力値を定期的に受信することと、前記受信した圧力値を予め決定された最小圧力値と比較することと、前記受信した圧力値が前記予め決定された最小圧力値未満である場合、前記気道デバイスからの流体の漏れを示すことと、を含む、方法。
【請求項18】
前記予め定義された最小圧力値が、予め選択された所望の圧力値の予め決定された割合であり、例えば前記予め選択された圧力値の50%である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
膨張可能気道デバイスの圧力系における遮断を検出するための方法であって、前記膨張可能気道デバイスについての圧力値を受信すると共に現在のアクティビティを計算することと、前記現在のアクティビティが予め決定された時間期間にわたってアクティビティについての閾値未満である場合、前記気道デバイスの前記圧力系における遮断を示すことと、を含む、方法。
【請求項20】
膨張可能気道デバイスの圧力系における遮断を検出するための方法であって、前記膨張可能気道デバイスについての受信した圧力値を予め決定されたか又は平均の圧力値と比較して差を計算することと、前記差及び以前に受信した圧力値を用いて計算された予め決定された数の差の統計的平均値を計算することと、前記統計的平均値を閾値平均値と比較し、前記統計的平均値が予め決定された時間期間にわたって前記閾値未満である場合、前記気道デバイスの前記圧力系における遮断を示すことと、を含む、方法。
【請求項21】
実行された場合に請求項1ないし20のいずれか1項以上の方法を実行するプログラム命令を含むコンピュータ読み取り可能媒体。
【請求項22】
請求項1ないし20のいずれか1項以上の方法を実行するために構成されたプロセッサ手段を含む装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−56211(P2013−56211A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−276789(P2012−276789)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2010−524580(P2010−524580)の分割
【原出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(506225824)インディアン オーシャン メディカル インコーポレイテッド (7)