説明

気道陽圧支援を使用して肺疾患を治療するためのシステム及び方法

喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する方法が提供されており、当該方法は、複数の呼吸周期の間、陽圧支援を患者の気道に送達するステップ、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期における患者の吸気相の少なくとも一部の間に陽圧支援の圧力レベルを自動的に変えるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喘息、COPD、又は、気道に影響を与える他の肺疾患等の肺疾患を治療するためのシステム及び方法に関し、特に、気道陽圧支援(positive pressure airway support)を使用してそのような肺疾患を治療するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
喘息は、空気を肺の中及び肺から外に運ぶ管である、気道としても知られる人間の気管支に影響を与える慢性の肺疾患である。喘息を有した人々は、はれ及び余分な粘液の産生の結果として炎症を起した気道を有している。喘息を有した人々の気道は、運動、ほこり、又は、タバコの煙のようなものに対しても過度に敏感である。この過敏さは、喘息を有した人間が運動又は呼吸をする際に、気道を囲む平滑筋が気道を内側に締め付ける原因となる。気道炎症と筋肉の締め付けとの組み合わせは、気道を狭め、空気が気道を通り抜けるのを困難にする。結果として、喘息を有した人々は、一般的に喘息発作と呼ばれる、喘鳴、胸部絞扼感、息切れ、及び、咳嗽の再発期間を経験する。
【0003】
一般的に、喘息は、以下の2つの方法のうちどちらか又は両方の方法において薬物を用いて治療される。第1の方法は、レスキュー薬として一般的に知られるものを利用する。レスキュー薬は、急な発作の症状を直ちに止めることが必要とされる時に投与される。第2の方法は、コントローラー薬として一般的に知られるものを使用して、喘息を管理する、及び、発作が生じるのを防ぐよう試みる。そのようなコントローラー薬は、一般的に、発作が生じたかどうかに関係なく毎日服薬され、喘息と付随した気道炎症を治療するよう試みる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
喘息の治療に対する薬物の使用は多くのケースにおいて効果的であると証明されてきたけれども、一部の人々は、薬物に対して完全には反応しない、及び/又は、有害な副作用を被る。さらに、一般に、大多数の医師及び/又は喘息患者は、効果的であるのに必要とされる最小限の薬物用量を利用することを好む。このように、喘息及び/又はCOPD等の気道に影響を与える他の肺疾患を治療するために、薬物と組み合わせて、及び/又は、(少なくとも部分的に)薬物の代わりに使用されることになるさらなる治療方法の必要が常にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
別の実施形態において、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する方法が提供されており、当該方法は、複数の呼吸周期の間、患者の気道に陽圧支援を送達するステップ、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期における患者の吸気相の少なくとも一部の間、陽圧支援の圧力レベルを自動的に変えるステップを含む。圧力レベルを自動的に変えるステップは、所定の制限内で圧力レベルを擬似ランダムに変えるステップ、又あるいは、所定のスキームに従い圧力レベルを変えるステップを含み得る。さらに、当該方法は、前記いくつかの呼吸周期における患者の呼気相のうち少なくとも一部の間に、陽圧支援の第2の圧力レベルを自動的に変えるステップも含む。
【0006】
さらなる別の実施形態において、本発明は、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する方法を提供し、当該方法は、複数の呼吸周期の間、患者の気道にバイレベル陽圧支援を送達するステップ、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期の間に、バイレベル圧力支援の吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの差を自動的に変えるステップを含む。1つの特定の実施形態において、前記差は、所定の制限内で差を擬似ランダムに変えることによって自動的に変えられる。別の実施形態において、前記差は、それに限定されることはないが所定のレベルのパターン等の所定のスキームに従い差を変えることによって自動的に変えられる。別の特定の実施形態において、バイレベル陽圧支援療法は、差が自動的に変えられる前記いくつかの呼吸周期とは異なる前記呼吸周期のうち初回の呼吸周期の間に、所定のベースラインIPAPレベル及び所定のベースラインEPAPレベルを有する。差を変えるステップは、IPAPレベルのみを変えるステップ、又あるいは、IPAPレベル及びEPAPレベルのうちどちらか又は両方のレベルを変えるステップを含み得る。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療するための圧力支援システムを提供しており、当該システムは、圧力発生システム、圧力発生システムに動作可能に結合された患者回路、及び、圧力発生システムに動作可能に結合された制御装置を含む。制御装置は、複数の呼吸周期の間に患者回路を介して陽圧支援を患者の気道に送達する、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期における患者の吸気相の少なくとも一部の間に陽圧支援の圧力レベルを自動的に変えるために、圧力発生システムを制御するよう適応される。前記制御装置は、所定の制限内で擬似ランダムに圧力レベルを自動的に変えるよう適応させることができるか、又あるいは、前記制御装置は、所定のスキームに従い圧力レベルを自動的に変えるよう適応させることができる。また、前記制御装置は、前記いくつかの呼吸周期における患者の呼気相のうち少なくとも一部の間に、陽圧支援の第2の圧力レベルを自動的に変えるようさらに適応させることができる。
【0008】
さらに別の実施形態において、本発明は、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療するための圧力支援システムを提供しており、当該システムは、圧力発生システム、圧力発生システムに動作可能に結合された患者回路、及び、圧力発生システムに動作可能に結合された制御装置を含む。前記制御装置は、複数の呼吸周期の間に、患者回路を介してバイレベル陽圧支援を患者の気道に送達する、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期の間に、バイレベル陽圧支援の吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの差を自動的に変えるために、圧力発生システムを制御するよう適応される。
【0009】
従って、本発明は上記の態様及び利点全てを実質的に達成するということがここで明らかになるはずである。本発明のさらなる態様及び利点は、以下に続く説明において明記され、部分的に説明から明らかであるか、又は、本発明の実行によって学ぶことができる。さらに、本発明の態様及び利点は、特に付随の特許請求の範囲に指摘された手段及び組み合わせによって実現並びに得ることができる。
【0010】
付随の図面は、本発明の現在好ましい実施形態を例示しており、上記で与えられた一般的な説明、及び、以下に与えられる詳細な説明と共に、本発明の原理を説明するよう役に立つ。図面を通じて示されているように、類似の参照番号は、類似又は対応する部分を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】バイレベル陽圧支援システムによって出力された、典型的な先行技術の圧力曲線である。
【図2】本発明における1つの非限定的な実施形態による圧力支援システムである。
【図3A】バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明における1つの特定の非限定的な実施形態による喘息を治療する方法を示した流れ図である。
【図3B】バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明における1つの特定の非限定的な実施形態による喘息を治療する方法を示した流れ図である。
【図3C】バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明における1つの特定の非限定的な実施形態による喘息を治療する方法を示した流れ図である。
【図4】図3A、3B、及び、3Cの方法から生じ得る例証的な圧力曲線である。
【図5】バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明の別の実施形態による喘息を治療する方法を示した流れ図である。
【図6】図5の方法から生じ得る例証的な圧力曲線を示している。
【図7】図5の方法から生じ得る例証的な圧力曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書において利用される場合、2つ以上の部品若しくは構成要素が共に「結合される」という記述は、その部品が、直接、又は、1又は複数の中間にある部品若しくは構成要素を介して、連結されるか又は共に作動することを意味するものとする。
【0013】
本明細書において利用される場合、「いくつか」という用語は、1又は1以上の整数(すなわち複数)を意味するものとする。
【0014】
喘息は、平滑筋細胞の化学的欠乏(すなわち、p38MAPK及びHSP27の抑制)及び動的な平滑筋拡張の欠乏(すなわち、気道の過度な制限を生じる機械的撹乱の損失及び制限のない筋短縮)両方の結果であるということが仮定されてきた。わかりやすい英語において、これは、正常な人々の上気道は、その上気道の平滑筋が、筋肉を延ばす原因である鍵となる蛋白質を処理することができるため、及び、さらに変えられた呼吸パターン(すなわち、深い吸気とより浅い吸気との正常な組み合わせ)によって気道の筋肉を機械的に操作するため、開いたまま維持されていることを意味している。喘息持ちの個人において、ある理由のため、これらの鍵となる蛋白質の処理は抑制され、その気道の筋肉をより短くする(より締め付ける)。喘息持ちの個人は、おそらく、たった今記述した短い筋肉状態のため、同じ呼吸の動的範囲を有しもしない。
【0015】
上昇した圧力にて呼吸用気体の流れを患者の気道に提供する陽圧支援システムはよく知られている。そのような圧力支援の1つの形状は、バイレベル陽圧支援療法として知られている。バイレベル陽圧支援療法において、患者に送達される気体の圧力は患者の呼吸周期と共に変わる。特に、吸気気道陽圧(IPAP)は、患者の呼吸周期のうち吸気相の間に提供され、呼気気道陽圧(EPAP)は、患者の呼吸周期のうち呼気相の間に提供される。EPAPはIPAPよりも低いため、患者は、IPAP圧力と比較して比較的低い圧力に対して吐き出し、その結果、患者に対する快適さを増す。Murrysville,PaのRespironics,Inc.社によって製造される圧力支援装置のBiPAP(登録商標)及びBi−Flex(登録商標)ファミリーは、種々の形状のバイレベル陽圧支援療法を提供する圧力支援装置の例である。さらに、全内容を本願に援用する、米国特許第5,433,193号;第5,313,937号;第5,239,995号;第5,148,802号;第6,532,960号;及び、第6,640,806号;を含めたいくつかの米国特許が、バイレベル陽圧支援システムを詳細に記載している。
【0016】
上記のように、バイレベル陽圧支援システムは、(その用語が本明細書において使用される場合)患者の気道に、吸息のうち少なくとも一部の間にIPAPレベルの圧力を、及び、呼息のうち少なくとも一部の間にEPAPレベルの圧力を提供する。図1は、例証的なバイレベル陽圧支援システムによって出力される典型的な圧力曲線5を概略的に描いている。患者の呼吸周期のうち呼気相の間に、圧力曲線5は、呼気圧力(EPAP)10にある。呼息の終わり、すなわち、患者の呼吸周期のうち次の吸息相の開始にて、圧力曲線5は、吸気圧力(IPAP)15まで変わる。システムが吸気の終わりを検出する場合、すなわち、次の呼息相の開始にて、圧力曲線5は、より低い呼気圧力(EPAP)10まで戻り、循環が再度始まる。EPAP10とIPAP15との圧力における差は、図1においてΔPとして示されている。図1に見られるように、そこに示された例証的な圧力波形において、この圧力変化は、(即座ではなく)徐々に生じ、患者の快適さを改善するのに寄与している。この漸進的な推移の効果は、システムの圧力がEPAP10からIPAP15まで増えるのにかかる時間によって測定され、バイレベル圧力支援システムの「立ち上がり時間」と呼ばれる。同様に、IPAP15からEPAP10までの即座の推移ではなく、図1は、IPAP15からEPAP10までのシステム圧力の漸進的な推移を示している。この漸進的な推移の効果は、システム圧力がIPAP15からEPAP10まで減るのにかかる時間によって測定され、バイレベル圧力支援システムの「立ち下がり時間」と呼ばれる。さらに、EPAP10からIPAP15まで、及び、IPAP15からEPAP10までの推移は、図1(並びに、本明細書においてどこか他で記述されている図4、6、及び、7)において指数関数的な勾配として示されているけれども、それは、単に例証的であり、勾配は、直線でもあり得る(固定率の推移)か、又は、1つの全般的に一定のレベルから別のレベルまで(方形波を含めた)いかなる他の推移波形でもあり得ると理解されるべきであると意味する。
【0017】
本明細書においてより詳細に記述されているように、本発明は、種々の実施形態において、陽圧支援療法、好ましくは、バイレベル陽圧支援療法を使用した、喘息及びCOPD等の気道に影響を与える肺疾患の治療を定めている。特に、本発明は、陽圧支援療法、好ましくは、バイレベル陽圧支援療法を利用して、喘息持ちの個人等、気道に影響を与える肺疾患を被る個人に共通の、上気道の筋肉の機械的撹乱の問題及び欠乏症に取り組む。特に、一実施形態において、本発明は、陽圧支援療法、好ましくは、バイレベル陽圧支援療法を使用して、それに限定されることなく、上気道の抵抗又は肺圧縮率等の患者の肺の機構を示すパラメータを決定し、次に、前記決定されたパラメータに基づき、陽圧支援療法の設定(例えば、吸気相のうち少なくとも一部の間の圧力レベル、又は、IPAP及びEPAPの設定等)を決定及び変更することによって、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する。別の実施形態において、本発明は、陽圧支援療法、好ましくは、バイレベル陽圧支援療法を使用して、陽圧支援療法のセッションの間に利用される(吸気相のうち少なくとも一部の間の圧力レベル、又は、IPAP及びEPAPの範囲の設定等の)陽圧支援療法の設定を動的及び好ましくは擬似ランダムに変えることによって、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する。本明細書において記述された陽圧支援療法の方法は、好ましは、それに限定されることなく、毎日1又は複数回等、規則的に個人によって使用され、個人が最近いかなる急性症状を被っているかどうかには関係なく、個人の状態を治療するよう意図される。治療の目標又は目的の1つは、個人のコントローラー薬及び/又はレスキュー薬の必要性を減らすことである。
【0018】
上記のように、好ましい実施形態において、患者に提供される陽圧支援は、バイレベル陽圧支援である。従って、例及び説明のそれぞれに対して、以下で記述される特定の実施形態(図2から7)は、そのようなバイレベル陽圧支援を利用する。しかし、それは限定的であると意味していないこと、並びに、吸気相のうち少なくとも一部の間、及び、おそらく患者の呼気相のうち少なくとも一部の間にも提供される他の形状の陽圧支援(すなわち、使用者に送達される圧力が大気圧を超える他の治療上の波形)も熟慮されることを理解されたい。図2は、1つの特定の非限定的な実施形態による圧力支援システム50の概略図であり、当該システムは、本明細書に記述されているように、喘息又はCOPD等の肺疾患を治療するためにバイレベル陽圧支援療法を提供するよう適応させることができる。図2を参照すると、圧力支援システム50は、従来のCPAP又はバイレベル圧力支援装置に使用される送風装置等の気体流発生装置52を含み、該装置は、例えば、酸素若しくは空気の加圧されたタンク、周囲大気、又は、その組み合わせ等、いかなる適切な供給源からも、全般的に矢印Cによって示された呼吸用気体を受ける。気体流発生装置52は、比較的高い及び低い圧力、すなわち、周囲大気の圧力に全般的に等しい又はそれを超えた圧力にて患者54の気道に送達するために、空気、酸素、又は、その組み合わせ等、呼吸用気体の流れを生じる。全般的に矢印Dによって示されている加圧された呼吸用気体の、気体流発生装置52からの流れは、送達導管56を介して、いかなる知られた構造の呼吸用マスク又は患者界面体58までにも送達され、前記界面体は、一般的に、呼吸用気体の流れを患者の気道に連絡するために、治療の間、患者54によって装着されるか、さもなければ、患者54に取り付けられる。送達導管56及び患者界面装置58は、一般的に、ひとまとめにして患者回路と呼ばれる。
【0019】
図2の示された圧力支援システム50は、患者54を圧力支援システム50に接続する送達導管56のみを患者回路が含むことを意味するシングルリムシステムとして知られたものである。それ自体、矢印Eによって示されているように、吐き出された気体をシステムから放出するために、送達導管56において排気口57が提供されている。排出口57は、送達導管56内に加えて、又は、送達導管56内の代わりに、患者界面装置58内等、他の位置にて提供することができるということに留意するべきである。排出口57は、気体が圧力支援システム50から放出されることになる所望の様式に応じて広範ないろいろの構成を有することができるということも理解されるべきである。
【0020】
本発明は、圧力支援システム50が、患者54に接続された送達導管及び排出導管を有した2リムシステム(two−limb system)であり得ることも意図する。2リムシステムにおいて、排出導管は、患者54からの排出気体を運び、さらに、患者54から遠位の端部にて排出弁を含む。そのような実施形態における排出弁は、一般的に、呼気終末陽圧(PEEP)として一般的に知られる所望のレベル又は圧力を当該システムにおいて維持するよう積極的に制御される。
【0021】
さらに、図2に示された圧力支援システム50の例示された例証的な実施形態において、患者界面体58は鼻マスクである。しかし、患者界面体58は、鼻/口マスク、鼻枕、又は、適したガスフローコミュニケーション機能を提供するいかなる他の装置も含み得るということを理解されたい。また、本発明の目的に対して、「患者界面体」という表現は、送達導管56、及び、加圧された呼吸用気体の供給源を患者に接続するいかなる他の構造体も含み得る。
【0022】
例示された実施形態において、圧力支援システム50は、送達導管56内に提供された弁60の形状で圧力制御装置を含む。弁60は、患者54に送達される、流れ発生装置52からの呼吸用気体の流れの圧力を制御する。本発明の目的のために、流れ発生装置52及び弁60は、患者に送達される気体の圧力及び/又は流量を提携して制御するよう作用するため、ひとまとめにして圧力発生システムと呼ばれる。しかし、単独又は圧力制御弁と組み合わせて流れ発生装置52の送風速度を変える等、患者に送達される気体の圧力を制御するための他の技術が本発明によって意図されるということが明らかになるはずである。従って、弁60は、患者54に送達される呼吸用気体の流れの圧力を制御するのに使用される技術に応じて任意である。弁60が除かれる場合、圧力発生システムは、流れ発生装置のみに相当し、患者回路内の気体の圧力は、例えば、流れ発生装置52のモータ速度を制御することによって制御される。
【0023】
圧力支援システム50は、送達導管56内の呼吸用気体の流量を測定する流量センサ62をさらに含む。図2に示された特定の実施形態において、流量センサ62は、送達導管56と調和して、最も好ましくは、弁60の下流に置かれる。流量センサ62は、制御装置64に対して提供され、且つ、患者54での気体の流量を決定するために制御装置64によって使用される流量信号QMEASUREDを生じる。当然ながら、それに限定されることなく、流量を患者54にて、又は、送達導管56に沿った他の位置にて直接測定する、流れ発生装置52の作動に基づき患者の流量を測定する、及び、弁60の上流にある流量センサを使用して患者の流量を測定する等、患者54の呼吸の流量を測定するための他の技術が本発明によって意図される。制御装置64は、本明細書においてより詳細に記述される患者の呼吸の監視特徴及びその特徴に基づく呼吸用気体の流量の制御を含めた圧力支援システム50の作動を制御するためのデータ及び制御装置64により実行可能なソフトウェアに対して記憶媒体を提供するメモリ(図示せず)を含むか又はメモリに動作可能に結合された、例えば、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又は、何か他の適した処理装置であり得る。最後に、入力/出力装置66が、圧力支援システム50によって使用される種々のパラメータを設定するため、並びに、情報及びデータを、臨床医又は介護人等の使用者に対して表示する及び出力するために提供される。
【0024】
図3A、3B、及び、3Cは、バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明における1つの特定の非限定的な実施形態に従って喘息又はCOPD等の肺疾患を治療する方法を示した流れ図である。図3A、3B、及び、3Cに示された方法は、図2に示された例証的な圧力支援システム50において(又は、別の適した圧力支援システムにおいて)実行することができる。例証目的のために、当該方法は、圧力支援システム50において実行されるとして本明細書において記述される。図3A、3B、及び、3Cに示された方法において、喘息又はCOPD等の肺疾患の療法が、患者の肺の機構を示すパラメータを決定する、さらに、次に、決定されたパラメータに基づき(例えば、それに限定されることなく、IPAP/EPAPの差ΔP等の)バイレベル陽圧支援療法の設定を決定及び変更することによって提供される。図3A、3B、及び、3Cにおいて示された特定の実施形態において、使用される患者の肺の機構を示すパラメータは、患者の上気道の抵抗力である。それは、単に、使用することができる好ましいパラメータに過ぎず、限定的であると意味しないということを理解されたい。それに限定されることなく、肺圧縮率等の圧力支援システム50によって決定することができる他の適したパラメータも利用することができる。
【0025】
圧力支援システム50を使用して上気道の抵抗力及び/又は肺圧縮率を決定するためのいくつかの異なる適した方法が可能である。そのような方法は、測定された流量信号(例えば、図2のQMEASURED)に基づいた方法を含む。しかし、知られているように、上気道の抵抗力及び/又は肺圧縮率の非侵襲性の推定における最も骨の折れる問題の1つは、流量信号における筋肉圧力(Pmus)の構成要素が、一般的に、大きな推定エラーをもたらすため、測定された流量信号に対する横隔膜の筋肉圧力(Pmus)の影響の除去方法に関する。
【0026】
本発明の譲受人は、シングルコンパートメント肺モデルに基づき、且つ、バイレベル療法を使用してPmus構成要素の問題を解決する、上気道の抵抗力及び/又は肺の圧縮率の非侵襲性の推定に対する流量信号ベースの方法を開発した。特に、(2cmHO異なる)2つの異なるIPAP圧力が連続する呼吸に対して適用され、流量反応が測定されて、次に、互いから引かれる。流量反応を引くことによって、横隔膜により生じる流量の構成要素(すなわち、Pmus構成要素)が除去され、外部の供給源によって適用された圧力差の結果である信号を残す。データの最小二乗エラーの適合を次に使用して、上気道の抵抗力及び肺圧縮率を決定することができる。特に、外部の圧力供給源に対するシングルコンパートメントモデルの指数関数的流量反応の自然対数の最小二乗線形回帰分析を使用して、切片及び傾きを決定することができる。これらの値から、時定数及び肺圧縮率を決定することができ、従って、上気道の抵抗力が決定されるのを可能にする。
【0027】
本発明の譲受人は、同様の、しかし、わずかに異なる、一次シングルコンパートメント肺モデル方程式及び(吸気と呼気の間に適用される圧力の差である)圧力支援を変えることの無作為に抽出されたパターンを使用することによる肺圧縮率及び気道の抵抗力を推定する方法も開発した。この別の方法は、連続する呼吸に対する2つの異なる吸気圧力の設定に対する当該システムの容積反応の差をとることによってPmus構成要素の問題を解決する。この技術を用いて、肺圧縮率及びPmusは、差分容積信号の定常応答を使用して、又は、数値方法を介してこの定常値を概算して簡単に推定することができる。気道の抵抗力の推定は、差分容積信号における時間応答情報及び圧縮率の推定を使用することによって続くことができる。
【0028】
たった今記述した肺圧縮率及び/又は気道の抵抗力を決定する特定の方法は本明細書において記述した本発明に特に適用可能であると信じられているけれども、上気道の抵抗力及び/又は肺圧縮率を決定するいくつか他の方法が当技術分野において知られており、本発明においても利用することができる。例えば、“Method and Breathing Apparatus for Assessing Pulmonary Stress”と題された米国公開特許出願第2004/097821号は、シングルコンパートメントモデルを利用する、肺の抵抗力及び圧縮率を決定する方法を記載している。特に、シングルコンパートメントモデルの圧力及び流量に関わる方程式が、抵抗力及び圧縮率を決定するために直接使用される。これらの値は、次に、呼吸システムに存在する肺ストレスを表すストレス指標値を決定するために使用される。“Apparatus and Method for Determining Respiratory Mechanics of a Patient and for Controlling a Ventilator Based Thereon”と題された米国特許第6,257,234号は、3〜10Hz及び2〜10cmHOの範囲の強制単圧振動を使用して患者の呼吸システムの抵抗力及びエラスタンスを非侵襲的に検出する方法を記載している。抵抗力は、治療に役立つ圧力に対して少なくとも1つの強制単圧振動を重ねるよう人工呼吸器を制御し、次に、圧力−流量の関係を観察することによって検出される。エラスタンスは、呼吸システムを一時的に遮る影響を有する圧力を供給するよう人工呼吸器を制御する、呼吸システムが平衡に達するまで待つ、及び、圧力−容積の関係を評価することによって検出される。エラスタンスパラメータにおける抵抗力は、圧力、流量、及び、容積の信号から2つ以上のデータポイントを使用して計算される。“Method and Device for Controlling a Respirator for Therapeutic Treatment of Sleep Apnea”と題された米国特許第5,881,724号は、振動抵抗測定法(oscilloresistometry)により測定された圧力振幅に基づき個人の呼吸抵抗が決定される方法を記載している。特に、正弦波の流量が呼吸の流量上に重ねられ、結果として生じる圧力振動が抵抗力を決定するために使用される。“Method and Apparatus for Determining Respiratory System Resistance During Assisted Ventilation”と題された米国特許第6,837,242号は、既知の圧縮率の値及び測定された圧力、容積、及び、流量を使用して抵抗力が計算される方法を記載している。特に、抵抗力は、圧力、流量、及び、容積における撹乱の導入を介して圧力−流量の関係を見つけることによって測定される。Pmusは、全圧力、全容積、及び、全流量を使用して推定される。
【0029】
図3A、3B、及び、3Cを参照すると、そこに示された方法が次に記述される。以下でより詳細に記述されているように、その方法は、正常な無病(例えば、喘息ではない)状態を表すベースラインの上気道の抵抗力の範囲が確立されたことを仮定している。そのベースラインの抵抗力の範囲は、例えば、臨床医によって予め設定するか、又は、患者が疾患(例えば喘息)の症状を被らない時間の間にいくつかの抵抗力測定を行うことによって圧力支援システム50により確立することができる。さらに、図3A、3B、及び、3Cに示された方法は、ベースラインIPAP及びEPAPレベルでのベースラインレベルのバイレベル陽圧支援が、好ましくは、臨床医によって圧力支援システム50内に入力されることによって確立されたことも仮定する。このように、ベースラインのバイレベル陽圧支援は、例えば図1に示されたように、ベースラインIPAP/EPAPの差ΔPを有するであろう。以下でより詳細に記述されるように、本発明の方法に従い治療の間に患者に対して提供される実際のバイレベル陽圧支援は、行われる特定の気道の抵抗力測定に基づき、このベースライン療法辺りで、及び、このベースライン療法と比較して変えられる。
【0030】
図3Aを参照すると、当該方法はステップ100にて始まり、ステップ100では、患者54は、必要とされた様式で患者界面体58を付け、ベースラインIPAP及びEPAPレベルでのバイレベル陽圧支援が、圧力支援システ50によって提供される。図3A、3B、及び、3Cに示された方法の特定の実施形態は、抵抗力の測定が行われ、支援のレベルが変えられる前に、最初の治療期間に対してこのベースラインレベルの支援を提供する。従って、ステップ105では、最初の治療期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。そのような最初の治療期間は、例えば、5から10分間であり得る。ステップ105での答えがノーである場合、当該方法はステップ100まで戻る。しかし、ステップ105での答えがイエスである場合、最初の治療期間が経過されたことを意味し、次に、ステップ110にて、圧力支援システム50は、例えば、それに限定されることなく、本明細書のどこか他で記述された方法の1つを使用して患者54の気道の抵抗力を決定する。次に、ステップ115にて、測定された気道の抵抗力が予め確立されたベースラインの範囲内にあるかどうかに関して決定がなされる。答えがイエスである場合、次に、ステップ120にて、予め設定された全治療期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。その予め設定された全治療期間は、本発明の治療が最新の治療セッションにおいて提供されることになる全期間である。ステップ120での答えがイエスである場合、次に、治療は終了し、バイレベル陽圧支援は、圧力支援システム50によってもはや提供されない。しかし、ステップ120での答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ100まで戻る。
【0031】
図3Aにおいて見られるように、ステップ115での答えがノーである場合、決定された気道の抵抗力は予め確立された正常なベースラインの範囲内にはないことを意味し、次に、当該方法は、図3Bにおいて示されたステップ125まで進む。以下でより詳細に記述されるように、図3A、3B、及び、3Cに示された当該方法の実施形態は、ある予め設定された最大レベルまでIPAP/EPAPの差を増やすことができる。従って、ステップ125にて、最新のIPAP/EPAPの差が予め設定された最大のIPAP/EPAPの差に等しいかどうか(すなわち、最大のIPAP/EPAPの差が達成されたかどうか)に関して決定がなされる。ステップ125での答えがノーである場合、次に、ステップ130にて、IPAP/EPAPの差は、所定の量だけ増やされる。例えば、これは、IPAPレベルを上げ且つEPAPレベルを下げることによって、IPAPレベルのみを上げることによって、又は、EPAPレベルのみを下げることによって実行することができる。上げる量は、圧力支援システム50の入力/出力装置66を使用して臨床医によって設定されることが好ましい所定のステップの量である。図3A、3B、及び、3Cに示された実施形態において、IPAP/EPAPの差が増やされる毎に、当該治療は、所定の一時停止期間中、一時停止することを可能にされる。その所定の一時停止期間は、例えば、それに限定されることなく、患者の1又は複数の呼吸周期であり得る。従って、ステップ135では、所定の一時停止期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ135まで戻る。しかし、答えがイエスである場合、次に、ステップ140にて、好ましくは本明細書に記載の方法の1つに従い気道の抵抗力が再度決定される。次に、ステップ145にて、決定された気道の抵抗力が所定のベースラインの範囲内にあるかどうかに関して決定がなされる。ステップ145での答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ125まで戻る。しかし、ステップ145での答えがイエスである場合、次に、当該方法は、以下でより詳細に記述されるステップ150まで進む。
【0032】
ステップ125を再度参照すると、答えがイエスである場合、最新のIPAP/EPAPの差は最大のIPAP/EPAPの差に等しいことを意味し、当該方法は、ステップ155まで進む。ステップ155では、患者は、(例えば、喘息の薬等)その薬物が提供されている治療を増すよう通知される。例えば、患者54は、患者界面体58を一時的に外し、レスキュー薬を投与することができる。薬物が送達された後、患者54は、患者界面体58を再び取り付ける。あるいは、噴霧器等の薬物送達装置を、例えば、それに限定されることなく、どちらも本願の譲受人によって所有され、全内容を本願に援用する“Medication Inhaler Mixer”と題された米国特許第5,297,543号、及び、“Nebulizer Drug Delivery Device for Ventilator”と題された米国公開特許出願第2006/0201500号に記載されているように、患者界面体58に結合することができる。そのような実施形態において、ステップ155では、圧力支援システム50は、治療が続けられる場合に、自動的に薬物送達装置に薬物を患者54まで送達させる。次に、(実行には関係なく)ステップ155に続いて、当該方法は、ステップ160まで進み、最大IPAP/EPAPの差でのバイレベル陽圧支援療法が、所定の期間続けられる。その後、ステップ165にて、気道の抵抗力が再び決定される。次に、ステップ170にて、決定された抵抗力が所定のベースラインの範囲内にあるかどうかに関して決定がなされる。答えがノーである場合、次に、ステップ175にて、全治療期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。答えがイエスである場合、次に、治療は終了する。しかし、答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ160まで戻る。しかし、ステップ170での答えがイエスである場合、所定の気道の抵抗力はベースラインの範囲内であることを意味し、次に、当該方法はステップ150まで進む。
【0033】
ステップ145での肯定的な答え、又は、ステップ170での肯定的な答え(どちらも、最新の決定された抵抗力がベースラインの範囲内にあることを意味する)の結果として達することができるステップ150にて、バイレベル陽圧支援療法が、従って最新のIPAP/EPAPの差にて提供される。さらに、そのレベルの治療が、所定の一時停止期間提供される。従って、ステップ180にて、一時停止期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ150まで戻り、治療は続けられる。しかし、ステップ180での答えがイエスである場合、一時停止期間が経過したことを意味し、次に、当該方法は、図3Cのステップ185まで進む。
【0034】
ステップ185にて、IPAP/EPAPの差は、所定のステップの量だけ減らされる。このステップは、事実上、ステップ130の逆であり、反対の様式で行われることが好ましく、(上記の)上昇に使用される特定の実行に応じて、所定のステップの減少を達成するために、IPAPレベルを減らすことができ且つEPAPレベルを増やすことができるか、IPAPのみを減らすことができるか、又は、EPAPレベルのみを増やすことができるということを意味している。次に、ステップ190にて、所定の一時停止期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ190まで戻り、事実上、一時停止期間の終了を待つループを生じる。しかし、ステップ190での答えがイエスである場合、一時停止期間が経過したことを意味し、次に、ステップ195にて、患者54の気道の抵抗力が、本明細書のどこか他で記述されたように決定される。ステップ200にて、決定された抵抗力が所定のベースラインの範囲内にあるかどうかに関して決定がなされる。ステップ200での答えがノーである場合、次に、当該方法は図3Bのステップ130まで戻り、IPAP/EPAPの差が上記のように増やされる。しかし、ステップ200での答えがイエスである場合、次に、ステップ205にて、ベースラインIPAP及びEPAPレベルが達成されたかどうかの決定がなされる。ステップ205での答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ185まで戻り、IPAP/EPAPの差が、上記の所定のステップによってさらに減らされる。ステップ205での答えがイエスである場合、治療のベースラインレベルが達成されたことを意味し、次に、当該方法は図3Aのステップ100まで戻り、上記のように処理が続けられる。
【0035】
従って、要するに、本発明の態様に従い、さらに、図3A、3B、及び、3Cの特定の例証的な実施形態において示されているように、気道の抵抗力の測定値は、ベースラインと比較して気道の抵抗力における増加を示す(その増加は、患者54の当該システムの悪化を示す)ため、IPAP/EPAPの差は、所定の増分又は大きさで増やされる。IPAP/EPAPの差は、患者の気道の抵抗力が改善されるまで、又は、所定の最大IPAP/EPAPの差に達するまで増やされ続ける。最大IPAP/EPAPの差が、患者54の気道の抵抗力における所望の改善もなく達する場合、次に、患者54は、(例えば、喘息の薬等)その薬物を用いてバイレベル陽圧支援療法を増すよう通知される(あるいは、本明細書において記述されているように、統合された送達装置によって薬物を自動的に投与することができる)。患者54の気道の抵抗力が、増加したIPAP/EPAPの差を用いて改善することができる場合、次に、治療は、その設定にて所定の期間一時停止され、その後、IPAP/EPAPの差は段階的様式で減らされる。IPAP/EPAPの差が減らされる時に患者の気道の抵抗力が正常であり続ける場合、ベースラインレベルに達するまで減らされる。さもなければ、IPAP/EPAPの差の減少の間に気道の抵抗力が正常値から離れる場合、次に、IPAP/EPAPの差は、事実上、正常な気道の抵抗力を再度確立するために再び増やされる。
【0036】
図4は、図3A、3B、及び、3Cに示された方法に従ってバイレベル陽圧支援療法を患者54に提供することができる例証的な圧力曲線225を示している。図4において見られるように、圧力曲線225は、ベースラインバイレベル陽圧支援療法が提供される区分230及び235、IPAP/EPAPの差が増やされる区分240、並びに、IPAP/EPAPの差が減らされる区分245を含む。例証目的のため、気道の抵抗力を決定する1又は複数の方法から生じる変形を含み得る圧力曲線225の区分は省かれる。さらに、圧力曲線225は、図3A、3B、及び、3Cに示された方法から生じ得る1つの例証的な可能性ではあるが、多くの他の変形が可能であると正しく理解されるはずである。
【0037】
さらに、図3A、3B、及び、3Cに示された特定の実施形態において、利用される患者の肺の機構を示すパラメータは、上気道の抵抗力である。しかし、それは、限定的であると意味しているわけではなく、代わりに、それに限定されることなく、肺圧縮率を含めた他のそのようなパラメータも、本発明の範囲から逸脱することなく利用することができると理解されたい。
【0038】
さらに、図3A、3B、及び、3Cに示された特定の実施形態において、患者の肺の機構を示すパラメータが、(固定時間を有することが好ましい)結果として生じる治療とは別のステップにおいて決定される。しかしこれは問題でなければならない。代わりに、患者の肺の機構(例えば、抵抗力又は肺圧縮率)を示すパラメータを治療の間に決定することができ、圧力を、リアルタイムで同時に修正/用量設定することができる。
【0039】
さらに、図2、3A、3B、及び、3Cに示された特定の実施形態において、患者の肺の機構を示すパラメータが、圧力支援システム50によって決定される。これは、単に1つの特定の実施形態に過ぎない。あるいは、患者の肺の機構を示すパラメータの決定は、別の(圧力支援システム50の外部の)装置によって達成する、及び、圧力支援システム50まで有線又は無線で送ることができる。例えば、治療の効果を決定するために喘息患者によって使用される装置である手で持てるサイズの(持ち運びできる)肺活量計を利用して、患者の肺の機構を示すパラメータを決定し、本明細書のどこか他で記述された方法において使用するために、その決定されたデータを圧力支援システム50まで、その一部として提供された適切なインターフェースを介して自動的に送ることができる。さらなるもう1つの方法として、肺活量計等の別の装置によって決定されたデータは、本明細書のどこか他で記述された方法において使用するために、キーパッド又はタッチスクリーン等の適したユーザーインターフェースを使用して圧力支援システム50内に、(自動的に送られることに対立するものとして)手動で入力することができる。
【0040】
さらに別の特定の実施形態において、モデム、メモリーカード、又は、他のデータ接続方法のような装置を使用して、患者のケア提供者まで、所定の期間の圧縮率及び治療の効果(例えば、1又は複数の日数にわたる呼吸抵抗力又は肺圧縮率)に関するデータを送ることができる。さらに、別の特定の実施形態において、圧力支援システム50は、どのくらいよく肺を広げているかを使用者に示すフィードバック要素を有することができる。例えば、「治療の効果」のフィードバック要素は、数字及び/若しくは図表を用いて、圧力支援システム50の一部として提供されたディスプレイ上で表示することができる、並びに/又は、圧力支援システム50の一部として提供されたスピーカー等のフィードバック装置を使用した聴覚によるフィードバックの形状で提供することができる。フィードバックの1つの方法は、所定の期間にわたり治療から生じる、又は、標的一回換気量を満たす若しくは超える使用者の増加する(又は減少する)一回換気量を示すことができる。当技術分野において知られているように、一回換気量は、呼吸周期の部分を介した気流をまとめることによって決定することができる。
【0041】
図5は、バイレベル陽圧支援療法を使用した、本発明の別の実施形態による喘息を治療する方法を示した流れ図である。図5の方法は、図2に示された例証的な圧力支援システム50において(又は、別の適した圧力支援システムにおいて)実行することができる。図5に示された方法では、喘息の治療が、ベースラインレベルと比較して、患者54に提供されるIPAP/EPAPの差を周期的に変更することによって提供されている。言い換えると、IPAP及びEPAPの設定の範囲は、この実施形態において、患者の上気道の筋肉を動的に処置するよう変えられる。好ましくは、特定のIPAP及びEPAPの設定(すなわち、特定のIPAP/EPAPの差)が、擬似ランダムに決定及び設定される。あるいは、特定のIPAP及びEPAPの設定は、患者の上気道の筋肉における適した動的処置を提供する、ある所定のスキーム(例えば、予め設定されたパターン等)に従って変えることができる。
【0042】
図5を参照すると、当該方法はステップ250にて始まり、そこではバイレベル陽圧支援が、所定のベースラインレベル(すなわち、所定のベースラインIPAP及びEPAPレベルにて)にて圧力支援システム50によって患者54に提供される。好ましくは、そのベースラインレベルは、圧力支援システム50の入力/出力装置66を使用して臨床医によって確立される。図5に示された実施形態において、そのベースラインバイレベル陽圧支援療法は、ここでも圧力支援システム50の入力/出力装置66を使用して臨床医によって確立されることが好ましい所定の最初の治療期間中提供される。従って、ステップ255では、その最初の治療期間が経過したかどうかに関して決定がなされる。答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ250まで戻り、ベースライン治療は続けられる。しかし、ステップ255での答えがイエスである場合、次に、ステップ260にて、IPAP/EPAPの差が、(特定の所定の安全な限界値内で)擬似ランダムに、又は、制御装置64によって記憶される所定のスキームに従って変更される。図5に示された実施形態において、新たなIPAP/EPAPの差での新たなバイレベル陽圧支援療法が、特定の一時停止期間中提供されている。従って、ステップ260に続いて、当該方法は、一時停止期間が経過されたかどうかに関して決定がなされるステップ265まで進む。ステップ265での答えがノーである場合、次に、当該方法はステップ265まで戻る。しかし、ステップ265での答えがイエスである場合、一時停止期間が経過したことを意味し、次に、当該方法は、所定の全治療期間が経過したかどうかに関して決定がなされるステップ270まで進む。好ましくは、図5の治療が提供されることになる合計時間を示すその所定の全治療期間は、圧力支援システム50の入力/出力装置66を使用して臨床医及び/又は患者54によって確立される。ステップ270での答えがノーである場合、治療が続けられることを意味し、次に、当該方法は、IPAP/EPAPの差が再び変更されるステップ260まで戻る。ステップ270での答えがイエスである場合、全治療期間が経過したことを意味し、次に、治療は終了する。このように、図5の方法は、ベースライン治療の最初の期間の後で、所定の治療期間が経過するまで、患者54に提供されるIPAP及びEPAPの設定を周期的に変えて、バイレベル陽圧支援療法を生じる。
【0043】
ステップ265の一時停止期間は、例えば、患者54の1つの呼吸周期の長さに等しくあることができ、その場合、IPAP/EPAPの差は呼吸毎に変わるか、又あるいは、患者54の多数の呼吸周期を含むことができ、その場合、IPAP/EPAPの差は、いくつかの呼吸周期の間同じまま残り、次に、いくつかの呼吸周期の間新たなレベルに変わる等変化する。
【0044】
図6及び7は、図5に示された方法から生じ得る例証的な圧力曲線275及び280をそれぞれ示している。図6及び7において見られるように、圧力曲線275及び280は、ΔPによって示されたベースラインIPAP/EPAPの差、ΔP、ΔP、及び、圧力曲線280の場合にはΔPによって示された変わるIPAP/EPAPの差を含む。ここでも、それぞれ図6及び7において示された圧力曲線275及び280は、単に例証的であると意味し、限定的であるとは意味しない。従って、他の方法で変わるIPAP/EPAPの差を有した他の圧力曲線も、図5に示された方法から生じることができ、従って、本発明の範囲内である。
【0045】
本発明の好ましい実施形態が記述及び例示されてきたけれども、これらは、本発明の例証であり、限定するとして考慮されないことを理解されたい。追加、削除、置換、及び、他の修正を、本発明の真意又は範囲から逸脱することなく行うことができる。例えば、本明細書においてどこか他で開示された実施形態は、喘息の治療に関して記述されてきた。しかし、本明細書において記述された当該方法及びシステムは、それだけに限られないが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)等の気道に影響を与える他の肺疾患を治療するよう利用することができる。従って、本発明は、前述の記載によって限定されるとして考慮されないが、付随の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0046】
本出願は、2008年12月19日に出願した米国仮特許出願第61/139,064号に基づく優先権を主張するものであり、全内容を本願に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺疾患を治療する方法であって:
複数の呼吸周期の間、患者の気道に陽圧支援を送達するステップ;及び、
前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期における前記患者の吸気相の少なくとも一部の間、前記陽圧支援の圧力レベルを自動的に変えるステップ;
を含む方法。
【請求項2】
前記圧力レベルを自動的に変えるステップが、所定の制限内で前記圧力レベルを擬似ランダムに変えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記圧力レベルを自動的に変えるステップが、所定のスキームに従い前記圧力レベルを変えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記いくつかの呼吸周期における前記患者の呼気相のうち少なくとも一部の間に、前記陽圧支援の第2の圧力レベルを自動的に変えるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記送達するステップが、複数の呼吸周期の間、前記患者の気道にバイレベル陽圧支援を送達するステップを含み、前記自動的に変えるステップが、前記いくつかの呼吸周期の間に、前記バイレベル陽圧支援の吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの差を自動的に変えるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記差を自動的に変えるステップが、所定の制限内で前記差を擬似ランダムに変えるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記差を自動的に変えるステップが、所定のスキームに従い前記差を変えるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記差が自動的に変えられる前記いくつかの呼吸周期とは異なる前記呼吸周期のうち初回の呼吸周期の間に、前記バイレベル陽圧支援療法は、所定のベースラインIPAPレベル及び所定のベースラインEPAPレベルを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記差を自動的に変えるステップが、前記IPAPレベルのみを変えるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記自動的に変えるステップが、前記IPAPレベル及び前記EPAPレベルのうちどちらか一方又は両方を変えるステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記肺疾患が喘息である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記肺疾患がCOPDである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
肺疾患を治療するための圧力支援システムであって:
圧力発生システム;
該圧力発生システムに動作可能に結合された患者回路;及び、
前記圧力発生システムに動作可能に結合された制御装置;
を含み、
前記制御装置は、複数の呼吸周期の間に前記患者回路を介して陽圧支援を患者の気道に送達する、及び、前記呼吸周期のうちいくつかの呼吸周期における前記患者の吸気相の少なくとも一部の間に前記陽圧支援の圧力レベルを自動的に変えるために、前記圧力発生システムを制御するよう適応される、システム。
【請求項14】
前記制御装置が、所定の制限内で擬似ランダムに前記圧力レベルを自動的に変えるよう適応される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記制御装置が、所定のスキームに従い前記圧力レベルを自動的に変えるよう適応される、請求項13に記載のシステム。
【請求項16】
前記制御装置が、前記いくつかの呼吸周期における前記患者の呼気相のうち少なくとも一部の間に、前記陽圧支援の第2の圧力レベルを自動的に変えるようさらに適応される、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記制御装置は、前記複数の呼吸周期の間に、前記患者回路を介してバイレベル陽圧支援を患者の気道に送達する、及び、前記いくつかの呼吸周期の間に、前記バイレベル陽圧支援の吸気気道陽圧(IPAP)レベルと呼気気道陽圧(EPAP)レベルとの差を自動的に変えるために、前記圧力発生システムを制御するよう適応される、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御装置が、所定の制限内で擬似ランダムに前記差を自動的に変えるよう適応される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記制御装置が、所定のスキームに従い前記差を自動的に変えるよう適応される、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記差が自動的に変えられる前記いくつかの呼吸周期とは異なる前記呼吸周期のうち初回の呼吸周期の間に、前記バイレベル陽圧支援療法が所定のベースラインIPAPレベル及び所定のベースラインEPAPレベルを有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記制御装置が、前記IPAPレベルのみを変えることによって前記差を自動的に変えるよう適応される、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御装置が、前記IPAPレベル及び前記EPAPレベルのうちどちらか一方又は両方を変えることによって前記差を自動的に変えるよう適応される、請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−512686(P2012−512686A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−541651(P2011−541651)
【出願日】平成21年11月21日(2009.11.21)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055258
【国際公開番号】WO2010/070497
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)