説明

水の酸化還元電位制御装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水の酸化還元電位を変化させる装置に関する。
【0002】
【従来の技術】水の酸化還元を行ってその電位を変化させ、その水を種々の産業等に利用することは知られている。例えば、農業においては、作物の鮮度保持、無農薬栽培、栽培効率の向上に役立ち、水産業においては漁貝類の鮮度保持、無薬品栽培漁業に利用されるごとくである。そして前記の酸化還元電位は、水に空気を送り込むこと、あるいは、水に音波を照射することで変化することも公知である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記の方法、即ち、水に空気を単に吹き込むだけ、あるいは音波を照射するだけでは、その結果から得られる水の酸化還元電位の変化はごく僅かであって、あまり良好な結果が得られるものではなかった。本発明は、このような点に着目し、従来より大きな酸化還元電位の変化が得られる装置を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】以上の目的を達成するため、本発明の水の酸化還元電位制御装置においては、水槽中の水に対して噴射する空気または酸素の噴射量を制御可能な空気量制御装置と、上記水に対して照射する音波の量を制御可能な音波発生量制御装置と、前記水槽内に設け、水槽内の水の酸化還元電位値を検出する酸化還元電位センサと、前記酸化還元電位センサの出力する検出値を入力され、前記検出値に対応した指示信号を前記空気量制御装置及び前記音波発生量制御装置に対して出力する酸化還元電位指示調整器と、前記酸化還元電位センサの出力する検出値を記録する酸化還元電位記録器とを備え、前記空気または酸素の噴射と前記音波の照射との両者の量を前記両制御装置により制御調整し、かつ、両者を同時に行うことにより、水の酸化還元電位を変化させるとともに、前記空気または酸素の噴射と前記音波の照射との両者の量の制御調整は、前記酸化還元電位指示調整器の出力する指示信号により行うようにする。
【0005】さらに前記酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係の設定を前記酸化還元電位記録器の記録値を基に修正し微調整するようにすることで、所望の電位値の処理水を得ることができる。
【0006】
【作用】水槽に満たされた水に対して、同時に、適正な量となるように制御調整しながら噴射及び照射される空気または酸素及び音波は、水の酸化還元電位を大幅に変化させることができ、さらに、水槽中に設けた酸化還元電位センサの検出値によって指示値を出力する酸化還元電位指示調整器は、前記の制御調整をデータに基づく確実なものとして、水の酸化還元電位を所望の値に制御する。また、酸化還元電位記録器は酸化還元電位を時間経過に従い記録するので、酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係の設定を、この記録値をもとに修正して微調整することによって所望の電位値の処理水を容易に得ることができる。
【0007】
【実施例】図1に本発明の一実施例をブロック構成図によって示す。同図において、10は水11を満たした水槽であり、1は図示しないコンプレッサ等より空気あるいは酸素を送られる空気口1aから該水槽10の側壁を貫通して空気を吹き込む量を制御するための空気制御装置、2は同様に該水槽10の側壁を通して音波を照射するための音波発生装置、3は前記音波発生装置2を制御し、その発生量を調整する音波発生量制御装置である。
【0008】4は前記水槽10の底部付近に配置される酸化還元電位センサで、水槽10に満たされた水11の酸化還元電位を検知し、そのデータを出力する。5は前記酸化還元電位センサ4が出力する酸化還元電位データを入力されて、そのデータにより、前記空気制御装置1及び音波発生量制御装置3に対し制御に必要な指示信号を出力する酸化還元電位指示調整器である。
【0009】本発明は前記のような構成によって、空気または酸素の吹き込みと、音波の照射とを同時に行うものである。
【0010】水槽10に張られた水11に対して、空気口1aから送り込まれ、水槽10の側壁を貫通して噴射される空気または酸素の噴射量を空気量制御装置1によって制御し、一方、音波発生装置2によって発生し水槽10の側壁を通して照射される音波の照射量を音波発生量制御装置3によって制御し、両者を同時に行う。
【0011】水槽10に張られた水11は、この噴射と照射とにより酸化還元電位と構造とが変化する。水11の酸化還元電位は、水槽10の底部付近に配置された酸化還元電位センサ4により検知され、そのデータは酸化還元電位指示調整器5へ送られる。
【0012】データを送られた酸化還元電位指示調整器5は、そのデータを監視するとともに、予め設定された、酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係に従って、空気制御装置1及び音波発生量制御装置3に対し制御に必要な指示信号を出力する。
【0013】指示信号を入力された空気制御装置1は、前記指示信号に従い、水槽10の側壁を貫通して噴射される空気または酸素の噴射量を調整し、所定の量とし、音波発生量制御装置3も前記指示信号に従い、水槽10の側壁を通して照射される音波の照射量を調整し、所定の量とする。その結果、水槽10に張られた水11の酸化還元電位は所定の値のものが得られる。
【0014】水槽10に張られた水11の酸化還元電位は酸化還元電位記録器6により、時間経過に従い記録される。前記酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係の設定は、この記録値を元に修正して微調整することができる。
【0015】図2に、本発明を実施した装置による水処理の結果を示してある。同図の曲線Aによれば、一般の水道水と同等のジア塩素酸水を処理した場合、当初、+700mVをオーバーしていた電位は、本発明の装置によって空気噴射と音波照射とを同時に行うことにより、時間経過とともに変化し、処理後は+50mVにまで達していることが理解できる。
【0016】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、水の酸化還元電位制御装置において、空気または酸素の噴射と、音波の照射とを同時に行い、両者の量をそれぞれ調整可能とし、水槽中に設けた酸化還元電位センサの検出値によって指示値を出力する酸化還元電位指示調整器は、前記の制御調整をデータに基づく確実なものとして、水の酸化還元電位を所望の値に制御することができる。さらに酸化還元電位記録器によって酸化還元電位を時間経過に従い記録するようにしたので、酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係の設定をこの記録値をもとに修正して微調整し、所望の酸化還元電位値の水を容易に得られるものとなった。
【0017】従って、薬品を使用せずに水の酸化還元電位を変化させることが出来るので、無薬品でなければならない微生物の殺菌増殖を自由に行うことが可能となり、有機物の酸化分解を促進することができ、無薬品で動植物の健全育成が可能となる。さらに、動植物の増体率、飼料効率、肥料効率が上がり生産性が向上する。
【0018】しかも、装置は取扱いが簡単で維持管理にも時間がかからず、健康で安全な住環境が維持できる効果もあるものである。
【0019】そして、この装置により得られた水は、農業においては、作物の鮮度保持、無農薬栽培、栽培効率の向上に役立ち、水産業においては魚貝類の鮮度保持、無薬品栽培漁業に効果的に利用することができる。
【0020】また、畜産業においても、家畜の無薬品飼育、畜産公害を防ぐ環境改善、畜産品の鮮度保持に有効であり、一般の食品についても鮮度保持に役立つ。
【0021】さらに、上水産業においては、飲料水、汚水の処理性能を向上させる。また、酒類等の醸造産業においては、品質、生産性を向上させ、医学、薬学の分野においても補助飲料水として役立ち、工業においては、工業用水の改質、改善に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のブロッイク構成図である。
【図2】本発明の装置により得られた処理水の酸化還元電位値のグラフである。
【符号の説明】
1 空気(または酸素)量制御装置
1a 空気(または酸素)口
2 音波発生装置
3 音波発生量制御装置
4 酸化還元電位センサ
5 酸化還元電位指示調整器
6 酸化還元電位記録器
10 水槽
11 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水槽中の水に対して噴射する空気または酸素の噴射量を制御可能な空気量制御装置と、上記水に対して照射する音波の量を制御可能な音波発生量制御装置と、前記水槽内に設け、水槽内の水の酸化還元電位値を検出する酸化還元電位センサと、前記酸化還元電位センサの出力する検出値を入力され、前記検出値に対応した指示信号を前記空気量制御装置及び前記音波発生量制御装置に対して出力する酸化還元電位指示調整器と、前記酸化還元電位センサの出力する検出値を記録する酸化還元電位記録器とを備え、前記空気または酸素の噴射と前記音波の照射との両者の量を前記両制御装置により制御調整し、かつ、両者を同時に行うことにより、水の酸化還元電位を変化させるとともに、前記空気または酸素の噴射と前記音波の照射との両者の量の制御調整は、前記酸化還元電位指示調整器の出力する指示信号により行われ、さらに前記酸化還元電位値と、空気または酸素の噴射量及び音波の照射量との関係の設定を前記酸化還元電位記録器の記録値によって修正調整することを特徴とする水の酸化還元電位制御装置。

【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2745449号
【登録日】平成10年(1998)2月13日
【発行日】平成10年(1998)4月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−177707
【出願日】平成6年(1994)7月7日
【公開番号】特開平8−19780
【公開日】平成8年(1996)1月23日
【審査請求日】平成7年(1995)9月5日
【出願人】(391039586)株式会社ミカサ (3)
【参考文献】
【文献】特開 昭49−6764(JP,A)
【文献】実開 昭49−55756(JP,U)