説明

水中採鉱機用カッターヘッド

【課題】水平方向および鉛直方向の反力を相殺することができ、掘削効率を向上させることができる水中採鉱機用カッターヘッドを提供すること。
【解決手段】水底に配置された水中採鉱機に取り付けられて、水底を掘削する水中採鉱機用カッターヘッド20であって、平面視において正多角形状をなす各辺上に配置され、その外周面にビット26を備えるとともに、第1の駆動源により第1の回転軸線周りに回転させられる円筒状のカッタードラム21と、前記正多角形状の中央部に配置されて、前記ビット26により掘削された掘削ズリを受け入れる吸込口28とを備え、前記ビット26が前記吸込口28に向かって順次進むように、前記カッタードラム21の回転方向が設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、水底鉱床を採掘する水中採鉱システムの一構成要素である採鉱機(採掘機)のブームの先端部に取り付けられて、水底鉱床を掘削する水中採鉱機用カッターヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底において掘削する掘削機(採鉱機:採掘機)としては、例えば、特許文献1に開示された無索無人水中掘削機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−212734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された無索無人水中掘削機10のラダー(ブーム)14の先端部に配置されたカッターヘッドは、ツインドラムカッタ11であり、掘削ズリが下方(海底面)に転がり落ちてしまう。そのため、上記特許文献1に開示された発明では、海底面に転がり落ちた掘削ズリを拾い集める水中ズリ処理機30が必要となり、水底鉱床を採掘する場合等には不向きである(採用することができない)。
【0005】
また、ツインドラムカッタ11では、一方向(水平方向)の掘削反力は相殺されることになるが、他方向(鉛直方向)の反力は残ることになる。他方向の反力は、掘削機を動かす力として掘削機に作用することになるので、ツインドラムカッタ11を備えた掘削機では、他方向の反力を支持するクローラやアウトリガーを大型化しなければならず、掘削機自体が大型化してしまうといった問題点があった。
【0006】
さらに、ツインドラムカッタ11では、一方のドラムカッタと他方のドラムカッタとの間に削り残し部ができてしまい、掘削効率が思わしくないといった問題点もあった。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、水平方向および鉛直方向の反力を相殺することができ、掘削効率を向上させることができる水中採鉱機用カッターヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係る水中採鉱機用カッターヘッドは、水底に配置された水中採鉱機に取り付けられて、水底を掘削する水中採鉱機用カッターヘッドであって、平面視において正多角形状をなす各辺上に配置され、その外周面にビットを備えるとともに、第1の駆動源により第1の回転軸線周りに回転させられる円筒状のカッタードラムと、前記正多角形状の中央部に配置されて、前記ビットにより掘削された掘削ズリを受け入れる吸込口とを備え、前記ビットが前記吸込口に向かって順次進むように、前記カッタードラムの回転方向が設定されている。
【0009】
本発明に係る水中採鉱機用カッターヘッドによれば、ビットにより掘削された掘削ズリは、順次吸込口に送られ、回収されることになるので、海底面に転がり落ちた掘削ズリを拾い集める水中ズリ処理機等の装置を不要とすることができる。
また、カッタードラムは、平面視において正多角形状(例えば、正方形状)をなす各辺上に配置されているので、水平方向および鉛直方向の反力を相殺することができる。
【0010】
上記水中採鉱機用カッターヘッドにおいて、カッター支持アームを介して前記カッタードラムが取り付けられるとともに、第2の駆動源により、前記正多角形状の中心を通る第2の回転軸線周りに回転させられる板状の旋回ベースを備えているとさらに好適である。
【0011】
このような水中採鉱機用カッターヘッドによれば、カッタードラムは、旋回ベースとともに正多角形状の中心を通る第2の回転軸線周りに回転させられることになるので、隣り合うカッタードラムとカッタードラムとの間の削り残し部をなくすことができ、掘削効率を向上させることができる。
【0012】
上記水中採鉱機用カッターヘッドにおいて、前記旋回ベースを、前記第2の回転軸線と直交する方向にスライドさせる第3の駆動源を備えているとさらに好適である。
【0013】
このような水中採鉱機用カッターヘッドによれば、カッタードラムは、旋回ベースとともに第2の回転軸線と直交する方向にスライドさせられることになるので、対向するカッタードラムとカッタードラムとの間の削り残し部をなくすことができ、掘削効率をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明に係る水中採鉱機は、上記いずれかの水中採鉱機用カッターヘッドを具備している。
【0015】
本発明に係る水中採鉱機によれば、掘削時における水平方向および鉛直方向の反力が相殺されることになるので、クローラやアウトリガーの大型化を回避することができ、水中採鉱機自体の大型化を回避することができる。
【0016】
本発明に係る水中採鉱システムは、上記水中採鉱機を具備している。
【0017】
本発明に係る水中採鉱システムによれば、海底面に転がり落ちた掘削ズリを拾い集める水中ズリ処理機等の装置が不要となり、水中採鉱機自体の小型化が図られることになるので、水中採鉱システム全体の簡素化を図ることができ、製造コストを低減させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る水中採鉱機用カッターヘッドによれば、水平方向および鉛直方向の反力を相殺することができ、掘削効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを下方から見た斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを側方から見た断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを下方から見た平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを具備した水中採鉱機を構成要素とする水中採鉱システムの一具体例を示す概念構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドについて、図1から図4を参照しながら説明する。図1は本実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを下方から見た斜視図、図2は本実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを側方から見た断面図、図3は本実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを下方から見た平面図、図4は本実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッドを具備した水中採鉱機を構成要素とする水中採鉱システムの一具体例を示す概念構成図である。
【0021】
本実施形態に係る水中採鉱機用カッターヘッド(以下、「カッターヘッド」という。)20は、例えば、図4に示すような水底鉱床Gを採掘する水中採鉱システム1の一構成要素である水中採鉱機(水中採掘機)2のブーム3の先端部に取り付けられて、水底鉱床Gを掘削するものである。
水中採鉱システム1は、水中採鉱機(以下、「採鉱機」という。)2と、揚鉱装置4と、採鉱母船5とを備えている。
採鉱機2は、カッターヘッド20と、ブーム3と、クローラを有する走行装置6と、スラリーポンプ7と、フレキシブルな吸入管8とを備えている。そして、カッターヘッド20で掘削された水底鉱床Gは、海水と一緒に吸入管8を介してスラリーポンプ7に吸引され、スラリーとなって後述のスラリーホース9内に圧送(送出)される。
なお、吸入管8は、ブーム3内および採鉱機2の本体内に配置され、その一端は、後述するカッターヘッド20吸入口に接続され、その他端は、スラリーポンプ7の吸入口に接続されている。
【0022】
揚鉱装置4は、フレキシブルなスラリーホース9と、高圧水中ポンプ(図示せず)を備えた水中ポンプユニット(サブシーポンプユニット)10と、揚鉱管11とを備えている。そして、スラリーポンプ7およびスラリーホース9を介して水中ポンプユニット10まで揚げられたスラリーは、水中ポンプユニット10を構成する高圧水中ポンプにより揚鉱管11内に圧送(送出)される。
【0023】
採鉱母船5には、スラリー処理システム(図示せず)が搭載されており、水中ポンプユニット10および揚鉱管11を介して採鉱母船5まで揚げられたスラリーは、スラリー処理システムにより水底鉱床Gとそれ以外のものとに分離される。そして、水底鉱床Gは回収され、それ以外のものは海中に棄てられる。
【0024】
図1から図3の少なくとも一つの図に示すように、カッターヘッド20は、四個のカッタードラム21と、旋回ベース22と、油圧(ロータリー)スイベル23と、カッタードラム用油圧モータ(第1の駆動源)24と、(第1の)旋回ベース用油圧モータ(第2の駆動源)25とを備えている。
カッタードラム21は、カッタードラム用油圧モータ24により、(第1の)回転軸線(中心軸線)C周りに自転する円筒状の部材であり、その外周面には、複数個(本実施形態では十二個)のビット26が螺旋状に配置されている。また、カッタードラム21は、平面視において正方形状をなす各辺上に回転軸Cが位置するようにして配置されているとともに、カッター支持アーム27を介して旋回ベース22に取り付けられている。一方、ビット26は、線対称に配置されて対向するカッタードラム21の外周面に、螺旋(配列)方向が逆向きになるように、すなわち、線対称に配置されて対向する(対辺上に配置された)カッタードラム21を回転させたときに、線対称に配置されたビット26が順次出てくるように配置されている。
【0025】
旋回ベース22の中央部には、一端(図2において下端)に吸込口28を有する排出管29が貫通しているとともに、旋回ベース用油圧モータ25の回転軸30に固定された小(平)歯車31と噛合する大(平)歯車32が配置されている。
なお、大歯車32は、旋回ベース22の上面に固定され、旋回ベース22および大歯車32は、排出管29に対して回転(公転)できるようになっている。
【0026】
油圧スイベル23は、固定部23aと回転部23bとを備え、固定部23aは、図示しないフレーム(サポート部材)を介して排出管29に固定され、回転部23bは、パイプフレーム33を介して大歯車32に固定されている。そして、油圧スイベル23の回転部23bおよびパイプフレーム33は、旋回ベース22および大歯車32とともに、排出管29に対して回転(公転)できるようになっている。
【0027】
カッタードラム用油圧モータ24は、油圧スイベル23を介して採鉱機2から供給された作動油によりカッターヘッド20を回転軸線C周りに回転(自転)させる油圧モータであり、各カッターヘッド20の内部に収容されている。また、カッタードラム用油圧モータ24の回転方向は、ビット26により掘削された水底鉱床Gが吸込口28に向かうように、すなわち、カッタードラム21の外周面に配置されたビット26が、吸込口28に向かって順次進むように、言い換えれば、対辺上に配置されたカッタードラム21を回転させたときに、線対称に配置されたビット26が下方から見て外側から内側に順次進み出てくるように設定されている。
【0028】
旋回ベース用油圧モータ25は、油圧スイベル23を介して採鉱機2から供給された作動油により旋回ベース22を排出管29の中心軸線(長手方向軸線:第2の回転軸線)周りに回転(公転)させる油圧モータであり、旋回ベース22の上面に立設されている(本実施形態では、旋回ベース22の上面で、かつ、対向する位置に二個配置されている)。旋回ベース用油圧モータ25の回転軸30には、前述の大歯車32と噛合する小歯車31が固定されており、小歯車31が一方向(図3において太い実線矢印で示す方向)に回転させられると、カッタードラム21、カッター支持アーム27、旋回ベース22、大歯車32、パイプフレーム33、および油圧スイベル23の回転部23bが一方向に回転させられ、小歯車31が他方向に回転させられると、カッタードラム21、カッター支持アーム27、旋回ベース22、大歯車32、パイプフレーム33、および油圧スイベル23の回転部23bが他方向に回転させられるようになっている。
なお、旋回ベース用油圧モータ25は、前述のフレーム(サポート部材)に固定され、排出管29および油圧スイベル23の固定部23aと同様、回転(公転)しないようになっている。
【0029】
本実施形態に係るカッターヘッド20によれば、ビット26により掘削された掘削ズリは、順次吸込口28に送られ、回収されることになるので、海底面に転がり落ちた掘削ズリを拾い集める水中ズリ処理機等の装置を不要とすることができる。
また、カッタードラム21は、平面視において正方形状をなす各辺上に配置されているので、水平方向および鉛直方向の反力を相殺することができる。
また、カッタードラム21は、旋回ベース22とともに排出管29の中心軸線(正多角形状の中心を通る第2の回転軸線)周りに回転させられることになるので、隣り合うカッタードラム21とカッタードラム21との間の削り残し部をなくすことができ、掘削効率を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
例えば、旋回ベース22を、排出管29の中心軸線と直交する方向にスライドさせる(第2の)旋回ベース用油圧モータ(第3の駆動源)を備えているとさらに好適である。
このようなカッターヘッドによれば、カッタードラム21は、旋回ベース22とともに排出管29の中心軸線と直交する方向にスライドさせられることになるので、対向するカッタードラム21とカッタードラム21との間の削り残し部をなくすことができ、掘削効率をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0031】
1 水中採鉱システム
2 (水中)採鉱機
20 (水中採鉱機用)カッターヘッド
21 カッタードラム
22 旋回ベース
24 カッタードラム用油圧モータ(第1の駆動源)
25 (第1の)旋回ベース用油圧モータ(第2の駆動源)
26 ビット
27 カッター支持アーム
28 吸込口
C (第1の)回転軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底に配置された水中採鉱機に取り付けられて、水底を掘削する水中採鉱機用カッターヘッドであって、
平面視において正多角形状をなす各辺上に配置され、その外周面にビットを備えるとともに、第1の駆動源により第1の回転軸線周りに回転させられる円筒状のカッタードラムと、
前記正多角形状の中央部に配置されて、前記ビットにより掘削された掘削ズリを受け入れる吸込口とを備え、
前記ビットが前記吸込口に向かって順次進むように、前記カッタードラムの回転方向が設定されていることを特徴とする水中採鉱機用カッターヘッド。
【請求項2】
カッター支持アームを介して前記カッタードラムが取り付けられるとともに、第2の駆動源により、前記正多角形状の中心を通る第2の回転軸線周りに回転させられる板状の旋回ベースを備えていることを特徴とする請求項1に記載の水中採鉱機用カッターヘッド。
【請求項3】
前記旋回ベースを、前記第2の回転軸線と直交する方向にスライドさせる第3の駆動源を備えていることを特徴とする請求項2に記載の水中採鉱機用カッターヘッド。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の水中採鉱機用カッターヘッドを具備していることを特徴とする水中採鉱機。
【請求項5】
請求項4に記載の水中採鉱機を具備していることを特徴とする水中採鉱システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−236619(P2011−236619A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108314(P2010−108314)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】