説明

水中用履物

【課題】 水が防水服の内部へ侵入するのを防止することのできる水中用履物を提供する。
【解決手段】 サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服2と共に着用するものであり、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成されたブーツ状である。胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11で底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に、防水服と共に着用する水中用履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーフィン、ダイビングあるいはカヌー等のいわゆる水中スポーツを行う際には、通常、保温と安全を目的として、防水服と共にクロロプレン等の無数の独立気泡を有する生地で形成した水中用履物を着用する。
【0003】
こうした水中用履物のうち、所定の形状に裁断した複数の発泡体生地片を貼り合わせて、ブーツ状に形成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−59465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした従来の水中用履物は、その履き口部と防水服の裾口を単に重ねているに過ぎないので、水が裾口から防水服の内部や水中用履物の内部へ侵入してしまうといった問題がある。水が防水服の内部へ侵入してしまうと保温性が低下するなどの問題が発生するので好ましくない。
【0005】
本発明はこうした問題に鑑み創案されたもので、水が防水服の内部へ侵入するのを防止することのできる水中用履物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
用語の定義:防水服とはウェットスーツ等の防水服を意味する。
【0007】
図1乃至図9を参照して説明する。請求項1に記載の水中用履物1は、サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服2と共に着用する、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成されたブーツ状である。そして、前記胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11で底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、前記防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としたものである。
【0008】
請求項2に記載の水中用履物1は、サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服2と共に着用する、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成されたブーツ状で、かつ、伸縮性を有する複数の発泡体生地片Pを、その裁断面F同士を貼り合わせて形成したものである。
【0009】
そして、前記胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11で、前記裁断面F同士の貼り合わせによって底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、前記防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12とした。また、前記発泡体生地片Pの少なくとも踵部24側の貼り合わせ部Sを、足首部13よりも下位または爪先部23側に設けた。
【0010】
請求項3に記載の水中用履物1は、請求項2に記載の発明において、二層構造の収納部12を形成する二つの筒壁11の裁断面Fの肉厚を、それに貼り合わされる一層構造の他部位の裁断面Fの肉厚と略等しく設定したものである。
【0011】
請求項4に記載の水中用履物1は、サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服2と共に着用する、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成されたブーツ状で、かつ、伸縮性を有する複数の発泡体生地片Pを貼り合わせて形成したものである。
【0012】
そして、前記胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11のうち、内側の筒壁11aの下端部に形成したテーパー状の裁断面Fを、外側の筒壁11bに貼り合わせて底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、前記防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の水中用履物1は、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成し、胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11で二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としたので、水が防水服2の内部および水中用履物1自体の内部に侵入するのを防止することができる。
【0014】
すなわち、防水服2の裾口2aの外周面は外側の筒壁11bの内周面に密着し、また、裾口2aの内周面は内側の筒壁11aの外周面に密着するので、この二つの密着面が水の通過を阻止する。また、収納部12の底部12aは密閉されているので、この底部12aから防水服2の内部および水中用履物1の内部に水が侵入することもない。これにより、水の侵入を未然に防止することができる。
【0015】
請求項2に記載の水中用履物1は、胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11で、底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としたので、請求項1に記載の発明と同様の理由で、水が防水服2の裾口2aから内部へ侵入するのを防止することができる。
【0016】
また、この水中用履物1は、伸縮性を有する複数の発泡体生地片Pを使用して形成しているので、収納部12を防水服2の裾口2aと密着させることができ、これによっても水の侵入を防止することができる。
【0017】
また、複数の発泡体生地片Pの裁断面F同士を貼り合わせることによって底部12aを密閉した二層構造の収納部12を形成しているので、その発泡体生地片Pの有する特性によって強固な貼り合わせを行うことができる。従って、収納部12がその貼り合わせ部Sで破れてしまうことがなく、その結果、水の侵入をさらに確実に防止することができる。
【0018】
なお、収納部12の底部12aのみでなく、筒壁11における2つの半筒壁同士などの他の貼り合わせ部Sにおいても強固な貼り合わせを行うことができるので、耐久性に優れる水中用履物1とすることができる。
【0019】
さらに、この水中用履物1は、胴部10と履物本体部20との貼り合わせ部Sを、足首部13よりも下位または爪先部23側に設けている。これは、図6のXで示すように、水中用履物1を装着する際には、足の踵Hに最も大きな挿入抵抗が作用するため、水中用履物1の胴部10のうち、最も内径の小さい足首部13に貼り合わせ部Sを設けてしまうと、この貼り合わせ部Sは接着剤によって伸縮し難い部分となっているため、踵Hを挿入(および抜き出し)することができ難くなり、装着がきわめて厄介になるからである。貼り合わせ部Sを足首部13より下位(または爪先部23側)に設けることで、こうした事態を未然に回避することができる。
【0020】
請求項3に記載の水中用履物1は請求項2に記載の発明と同様の効果を発揮する。また、二層構造の収納部12を形成する二つの筒壁11の裁断面Fの肉厚を、それに貼り合わされる一層構造の他部位の裁断面Fの肉厚と略等しく設定したので、両者の裁断面Fの全体を貼り合わせることができる。従って、貼り合わせ部Sの強度をさらに高めることができる。さらに、これによって二層構造部分と一層構造部分との貼り合わせ部Sを段差のない平滑面とすることができるので、優れた履き心地と見栄えを提供することができる。
【0021】
請求項4に記載の水中用履物1は、胴部10の少なくとも上部を二つの筒壁11のうち、内側の筒壁11aの下端部に形成したテーパー状の裁断面Fを、外側の筒壁11bに貼り合わせて底部12aを密閉した二層構造に形成し、その二つの筒壁11の間を、防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としたので、水が防水服2の内部に侵入するのを防止することができる。
【0022】
また、内側の筒壁11aの裁断面Fをテーパー状としているので、外側の筒壁11bに対する貼り付け面積を大きくすることができ、強固に貼り付けることができる。また、内側の筒壁11aと外側の筒壁11bとの間に段差が形成されないので、外観を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明に係る水中用履物1の第一実施形態を、図1乃至図5に示す。これは、サーフィン、ダイビング、あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服2と共に着用するものであり、筒状の胴部10と履物本体部20とで構成したブーツ状である。この水中用履物1は、伸縮性に富む複数の発泡体生地片Pを、その裁断面F同士を貼り合わせて形成している。発泡体生地片Pは、例えば独立気泡を有するクロロプレンを使用することができる。
【0024】
また、胴部10の全体を二つの筒壁11で形成した二層構造とすると共に、履物本体部20を一層構造としている。そして、二つの筒壁11の間を、その下端の裁断面Fを履物本体部20の上端の裁断面Fに貼り合わせ、その底部12aを密閉することによって収納部12としている。この収納部12には防水服2の裾口2aを収納して、二つの筒壁11でその裾口2aを内外から密に挟持する。これにより、水が、防水服2の裾口2aから内部へ侵入するのを防止することができる。
【0025】
なお、履物本体部20は、甲部21と足裏部22を形成する二枚の発泡体生地片Pを貼り合わせることによって一層構造に形成している。従って、二層構造の胴部10との貼り合わせを良好に行うために、各筒壁11の裁断面Fの肉厚を履物本体部20の裁断面Fの肉厚の1/2に設定して両裁断面Fの肉厚を等しくし、両裁断面Fの全体を貼り合わせている(図3、4参照)。これにより、貼り合わせ部Sの強度を高めて耐久性の向上を図っている。また、貼り合わせ部Sを段差のない平滑面とすることによって履き心地と見栄えの向上を図っている。
【0026】
さらに、この水中用履物1は、胴部10と履物本体部20との貼り合わせ部Sを、足首部13よりも下位に設けている。これは、水中用履物1を装着する際には、足の踵Hに最も大きな挿入抵抗が作用するため、内径の小さい足首部13に貼り合わせ部Sを設けると、この貼り合わせ部Sは接着剤によって伸縮し難い部分となっているため、踵を挿入(および抜き出し)することができ難くなるからである。
【0027】
なお、この水中用履物1は、図5に示すように、その外側面の足裏部22、爪先部23あるいは踵部24などにゴム補強材Rを接着して、必要な補強を行って最終製品1Aとするものである。また、最終製品1Aでは、収納部12の上端部に面ファスナー製テープやバンド,紐などで構成した係止具30を設け、この係止具30を締め付けることによって水が収納部12および防水服2の内部へ侵入するのをさらに確実に防止することが好ましい。
【0028】
本発明に係る水中用履物1の第二実施形態を、図7に示す。この水中用履物1の特徴は、貼り合わせ部Sを胴部10ではなく履物本体部20の甲部21に設けたことである。こうすることによって、第一実施形態と同様に、装着時(および離脱)における踵に作用する抵抗を軽減し、装着等を容易なものとしている。なお、この水中用履物1の最終製品にも、足裏部22などの必要箇所にゴム補強材Rを接着するものである。また、係止具30を取り付けることもできる。
【0029】
本発明における水中用履物1の第三実施形態を、図8および図9に示す。この水中用履物1の特徴は、胴部10のほぼ全体を二つの筒壁11のうち、内側の筒壁11aの下端部に形成したテーパー状の裁断面Fを、外側の筒壁11bの内周面に貼り合わせて底部12aを密閉した二層構造に形成したことである。そして、二つの筒壁11の間を、防水服2の裾口2aを挿入して密に挟み込む収納部12としている。
【0030】
こうした構成とすることによっても、水が防水服2の内部に侵入するのをほぼ確実に防止することができる。また、内側の筒壁11aの裁断面Fをテーパー状としているので、外側の筒壁11bに対する貼り付け面積を大きくすることができ、強固な貼り付けが可能となる。さらに、内側の筒壁11aと外側の筒壁11bとの貼り付け部分は、段差のない平滑面とすることができるので、外観の良い水中用履物1とすることができる。
【0031】
なお、この水中用履物1は、内側の筒壁11aの裁断面Fを外側の筒壁11bの内周面に貼り合わせるので、前記第一および第二実施形態のような貼り合わせ部Sが形成されない。また、その構成部位は、足首部13の下位に設ける方が良い。
【0032】
上記第一、第二および第三実施形態における水中用履物1は、いずれも、発泡体生地片Pの表面にナイロンジャージ等の伸縮性を持つ生地をラミネートすることができる。これによって、耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る水中用履物の第一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す水中用履物を構成する発泡体生地片を示す平面図である。
【図3】図1に示す水中用履物の縦断面図である。
【図4】図1および図3に示す水中用履物の断面分解構成図である。
【図5】図1に示す水中用履物の最終製品の一形態を示す側面図である。
【図6】踵に抵抗が作用する状態を示す説明図である。
【図7】本発明に係る水中用履物の第二実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係る水中用履物の第三実施形態を示す縦断面図である。
【図9】図8に示す水中用履物の断面分解構成図である。
【符号の説明】
【0034】
1 水中用履物
1A 水中用履物(最終製品)
2 防水服
2a 裾口
10 胴部
11 筒壁
11a 内側の筒壁
11b 外側の筒壁
12 収納部
12a 底部
13 足首部
20 履物本体部
21 甲部
22 足裏部
23 爪先部
24 踵部
30 係止具
F 裁断面
S 貼り合わせ部
P 発泡体生地片
R ゴム補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーフィン,ダイビング,あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服(2)と共に着用する,筒状の胴部(10)と履物本体部(20)とで構成されたブーツ状の水中用履物であって、前記胴部の少なくとも上部を二つの筒壁(11)で底部(12a)を密閉した二層構造に形成し,該二つの筒壁の間を,前記防水服の裾口(2a)を挿入して密に挟み込む収納部(12)としたことを特徴とする水中用履物。
【請求項2】
サーフィン,ダイビング,あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服(2)と共に着用する,筒状の胴部(10)と履物本体部(20)とで構成されたブーツ状で,かつ,伸縮性を有する複数の発泡体生地片(P)を,その裁断面(F)同士を貼り合わせて形成した水中用履物であって、前記胴部の少なくとも上部を二つの筒壁(11)で,前記裁断面同士の貼り合わせによって底部(12a)を密閉した二層構造に形成し,その二つの筒壁の間を,前記防水服の裾口(2a)を挿入して密に挟み込む収納部(12)とし、前記発泡体生地片の少なくとも踵部(24)側の貼り合わせ部(S)を,足首部(13)よりも下位または爪先部(23)側に設けたことを特徴とする水中用履物。
【請求項3】
二層構造の収納部(12)を形成する二つの筒壁(11)の裁断面(F)の肉厚を、それに貼り合わされる一層構造の他部位の裁断面の肉厚と略等しく設定したことを特徴とする請求項2に記載の水中用履物。
【請求項4】
サーフィン,ダイビング,あるいはカヌー等の水中スポーツを行う際に防水服(2)と共に着用する,筒状の胴部(10)と履物本体部(20)とで構成されたブーツ状で,かつ,伸縮性を有する複数の発泡体生地片(P)を貼り合わせて形成した水中用履物であって、前記胴部の少なくとも上部を二つの筒壁(11)のうち,内側の筒壁(11a)の下端部に形成したテーパー状の裁断面(F)を,外側の筒壁(11b)に貼り合わせて底部(12a)を密閉した二層構造に形成し,該二つの筒壁の間を,前記防水服の裾口(2a)を挿入して密に挟み込む収納部(12)としたことを特徴とする水中用履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−104419(P2010−104419A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−276756(P2008−276756)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【出願人】(591083439)
【Fターム(参考)】