説明

水供給装置、及び雪解け水の製造方法

【課題】LED発光時の発熱を活用し、より良質の水供給を図ることができる水供給装置、雪解け水の製造方法を提供する。
【解決手段】LED配設部120内壁に配設された紫外線LED発光時の発熱を雪解け水取得部110へと伝達し、開口111から浸入する雪解け水を取得する。紫外線LED内壁に配設された紫外線LEDにより、雪解け水に対する殺菌作用が働くように構成すれば、さらに好ましい。雪解け水は、水取り出し部140から取り出され、容器141内に溜まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水供給装置、及び雪解け水の製造方法に関し、特に、雪解け水を得る水供給装置、及び雪解け水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発展途上国では、安心な飲料水を供給することが、いまだ難しい状態にあり、飲料水による感染症等の病気が問題となっている。より良質な水を提供するべく、紫外線を用いた水の殺菌が種々検討されており、例えば特許文献1には、紫外線ランプを用いた水処理装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−273967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、水の生理活性が5量体と6量体とで異なること、雪解け水の生理活性が高いことなどが報告されている。しかしながら、特許文献1の技術では、雪解け水を得ることは困難である。
【0005】
本願発明は、上記の点に鑑み、より良質な水を得ることが可能な水供給装置、及び雪解け水の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決するために、本発明に係る水供給装置は、LEDの発光時に生じる発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得ることを特徴としている。
【0007】
本発明においては、LED(発光ダイオード)の発光時の発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得る。近年、水の生理活性が5量体と6量体とで異なり、雪解け水は高い生理活性を有することが報告されており、本発明の水供給装置により、より良質の水を得ることが可能となる。生理活性が失われない場合に限定はされないが、前記雪解け水が生理活性を失わないように設計すれば、より好ましい。
【0008】
LEDとして紫外線LEDを用いることができる。得られた雪解け水に対し、前記紫外線LEDによる殺菌作用が働けば、より好ましい。
前記水供給装置は、内壁にLEDが配設されたLED配設部と、前記LED発光時の発熱が伝達される雪解け水取得部とを含み、前記雪解け水取得部に設けられた開口から浸入した雪解け水が、前記LED配設部内壁を通過する構成とすることができる。
【0009】
前記LEDが筐体内壁に配設され、当該筐体に設けられた開口から雪解け水が浸入する構成とすることもできる。この構成は、例えば雪解け水の供給プラントなどに適用することができる。規模の大きい雪解け水供給プラントであれば、LED以外の他の発熱手段を設ける構成としても良い。筐体外部から浸入した雪解け水が、紫外線LEDに曝される構成であれば、殺菌作用も期待でき、好ましい。雪解け水の供給状況をモニターし、LEDの点灯、消灯や、前記他の発熱手段の駆動状況などを制御する構成とすることもできる。
【0010】
本発明に係る雪解け水の製造方法は、LEDの発光時に生じる発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得ることを特徴としている。LEDとして紫外線LEDを用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水供給装置等によると、LED発光時の発熱を活用して、雪解け水を得るため、LED発光時の発熱を有効活用でき、また、より良質の水供給を図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態における水供給装置の概略構成の一例について説明するための模式図である。
【図2】図1のA−A線矢視断面図である。
【図3】雪山300に積もった雪310に巨大な雪解け水取得プラント200が埋め込まれるような実施形態の一例を例示する模式図である。
【図4】中規模の水供給装置の一例について説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施の形態における水供給装置の概略構成の一例について説明するための模式図である。
【0014】
図1に示されるように、水供給装置100は、雪解け水取得部110、紫外線LED配設部120、取っ手130、水取り出し部140を含む。取っ手130には、紫外線LEDの発光をオン、オフするスイッチ131が取り付けられている。
【0015】
雪解け水取得部110、紫外線LED配設部120は、熱伝導性が良く、紫外線LED発光時の発熱を雪解け水取得部110に伝達することが可能な材料、構造で構成される。
【0016】
雪解け水取得部110の上側には、雪解け水を取得するための開口111が複数設けられている。開口111の数、大きさなどは、紫外線LED発光時の発熱量、取得する雪解け水の量などに応じて適宜設計することができる。紫外線LEDによる殺菌作用が働くように、取得水量を調整することもできる。開口の形状が円形に限定されないことは勿論である。開口は、雪解け水取得部110の上側だけでなく、下側にも設ける構成としても良い。なお、LEDとしては、発光時に発熱するものであれば良く紫外線LEDに限定はされない。
【0017】
図2は、図1のA−A線矢視断面図である。同図では、図1に示される開口111の一部の図示を省略している。同図の例では、紫外線LED発光のための電池121を、取っ手130内に配しているが、電池の配置位置はこれに限定されない。電池の種類が、太陽電池も含め、何でも良いことは勿論であるし、商用電源を用いることもできる。取っ手130は、紫外線LED122からの発熱に影響されないような材料で構成することが好ましい。なお紫外線LED122の点灯回路は図示を省略しているが、任意の位置、形態で設けることができる。
【0018】
雪解け水取得部110の先端は、雪解け水取得部110を雪中に挿入しやすくするためにエッジ112が設けられている。ユーザは、取っ手130により、雪解け水取得部110を雪中に押入することができる。エッジはなくても良いし、内向きでも外向きでも良い。効率的に雪中に押入するためにスクリュー状としても良い。雪解け水取得部110が雪中に押入された状態でスイッチ131をオンとすると、紫外線LED配置部120内壁に配設された紫外線LED122が発光する。雪中に押入する前にスイッチ・オンとしても良いことは勿論である。スイッチ131の位置は任意である。紫外線LED122としては、例えば、UVA、UVB、UVC、あるいは二種、三種を混合して配設することができる。個数は特に限定されないが、雪解け水を効率的に得るために適切な発熱量が得られるように適宜設計することができる。また、取得した雪解け水に対して殺菌作用が働くような個数、配置位置とすれば、より好ましい。
【0019】
紫外線LED122が発光した際の発熱が、雪解け水取得部110に伝達されて、雪解け水取得部110周辺の雪が溶け、雪解け水として、開口111から雪解け水取得部110内に流入する。近年、水の生理活性が5量体と6量体とで異なること、雪解け水は生理活性が高く、沸騰させてしまうと生理活性が失われてしまうことなどが報告されている。紫外線LED122による発熱量、雪解け水取得部110に伝達される熱量、雪を溶かすための熱量については、紫外線LED122の種類、数、あるいは開口111の数、大きさなどを適宜調整して設計することが可能であり、熱により雪解け水の生理活性が失われない程度に調整すれば、より好ましい。
【0020】
開口111から流れ込んだ雪解け水は、図2中矢印A方向、さらには矢印B方向へと、紫外線LED配設部120内を流れて紫外線LED122からの紫外線に曝され、水取り出し部140で取り出される。紫外線LED配設部120外周部は、ユーザが火傷等しないように、適切な材料でカバーする構成としても良い。図1の例では、水取り出し部140に接続された容器141内に雪解け水142が溜まるようにしているが、雪解け水の貯蔵は容器141のような形態に限定されず、袋を取り付けてもよい。容器の大きさに限定はないが、雪解け水142が満杯となってもユーザが負担を感じない程度とすることができる。取り出された雪解け水は、状況により、そのまま利用することもできるし、飲用等に適するように、フィルタ等を通過させたり、更なる殺菌処理を行うようにしても良い。雪解け水の用途は、飲用の他、化粧品、入浴剤、洗剤等、種々考えられるところである。用途に応じ、添加物等を加えることも可能であろう。
【0021】
以上に説明したように、本実施の形態の水供給装置によれば、LED発光時の発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得る。紫外線LEDを用いれば、紫外線LEDによる殺菌作用も期待でき、より良質の水供給を図ることもできる。
【0022】
なお、本発明は、図1に例示したような小型の水供給装置に何ら限定されず、例えば雪山に巨大なプラントを構築し、パイプラインで発展途上国に水を供給することも可能である。例えば、図3に模式図を示すように、雪山300に積もった雪310に巨大な雪解け水取得プラント200が埋め込まれるような構成とする。雪解け水取得プラント200内部には紫外線LEDが配されるとともに、複数の開口201が設けられて雪解け水を取得する。紫外線LEDが配設された筐体部分にも開口を設けて、雪解け水を取得することができる。本発明の基本は、LEDからの発熱の有効活用にあるが、大規模なプラントとなれば、紫外線LEDからの発熱を活用するだけではなく、他の発熱手段による発熱を利用する構成としても良い。開口201から浸入した雪解け水が、紫外線LEDからの紫外線に曝される構成とすれば、殺菌作用も期待でき、より好ましい。雪解け水の供給状況をモニターし、紫外線LEDの点灯、消灯や、前記他の発熱手段の駆動状況などを制御する構成とすることもできる。
【0023】
水供給プラントは、雪山中に構築する実施形態に限定されない。例えば雪を運搬してきて水供給プラントに投入するような実施形態も可能である。
【0024】
得られた雪解け水は、例えばパイプライン210を通して発展途上国に提供することも可能であり、汚れた水による病気、といった問題の解決を図ることもできる。雪解け水の供給先が発展途上国に限られないことは勿論である。パイプライン210内壁にも紫外線LED等を配して、さらに殺菌を図っても良い。雪解け水はパイプライン経由ではなく、容器に貯蔵して輸送することもできる。飲用等に適するように、フィルタ等を通過させても良い。用途に応じて添加物等を加えることもできる。
【0025】
また、本願発明の範囲が上記に説明した実施形態に限定されることはなく、例えば、雪解け水取得部110を雪中に押入しやすくするように工夫された形態や、雪解け水が流れやすくするよう工夫されたような実施形態、水取り出し部140から雪解け水を取り出しやすくするように工夫されたような実施形態も本願発明の範囲に含まれる。
【0026】
雪解け水の取得は、図1のようなハンディタイプや、図3のような水供給装置(プラント)に限らず、中規模の装置に適用することも可能である。図4は、中規模の水供給装置の一例について説明するための斜視図である。
【0027】
図4の例では、ケーシング400にパイプ410が取り付けられて、パイプ410先端部分に雪解け水取得部420が設けられる。雪解け水取得部420には、開口421が複数設けられており、開口421から雪解け水が得られる。得られた雪解け水は、パイプ410を伝わって、ケーシング400内の水収容器(不図示)に溜められる。雪解け水取得部420先端にエッジを設けても良いのは図1の例と同様である。ケーシング400の寸法に特に限定はないが、例えば高さ80cm〜1m、幅50〜60cm、長さ60〜80cm程度が想定できる。パイプ410の材料、内径にも特に限定はないが、例えば内径20cm程度が想定できる。LEDによる発熱に影響されない材料を用いることは好ましいことと考えられる。
【0028】
この実施形態では、雪解け水取得部420が筐体に相当し、雪解け水取得部420の内壁に紫外線LED(不図示)が配設される。雪解け水取得部420を構成する材料、紫外線LEDの種類や数、位置、開口の形状、大きさ、開口の数、位置に何ら限定はなく、LEDからの発熱を活用できれば良い。開口421部分には紫外線LEDを配さず、開口421部分の手前(ケーシング側)に紫外線LEDを配設して、開口421部分へと発熱を伝達する構成でも構わない(この場合には、開口421の手前部分が紫外線LED配設部となる)。
【0029】
雪解け水取得部420にセンサを設け、雪解け水取得部420が、雪が存在する方向へと動くように制御する構成も可能である。図4の例では、パイプ410には、ジャバラ状になされて、曲がることが可能な部分が設けられている。また、ケーシング400の底には、車輪401が取り付けられており、雪のある方向へと自動的にケーシング400が移動するような構成とすることもできる。雪解け水取得部420の移動制御や、ケーシング400の移動制御を実現する構成は、従来の技術を適用すれば良い。制御等のための電源としては、リチウムイオン電池などの二次電池を用いることもできるし、商用電源でも構わない。紫外線LED以外の発熱手段を設けても良い点も、上記他の実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、例えば、水を供給する水供給装置等に適用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100 水供給装置
110 雪解け水取得部
111 開口
112 エッジ
120 紫外線LED配設部
121 電池
122 紫外線LED
130 取っ手
131 スイッチ
140 水取り出し部
141 容器
142 雪解け水
200 雪解け水取得プラント
201 開口
210 パイプライン
300 雪山
310 雪
400 ケーシング
401 車輪
410 パイプ
420 雪解け水取得部
421 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LED(発光ダイオード)の発光時の発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得る
ことを特徴とする水供給装置。
【請求項2】
前記水供給装置は、
内壁にLEDが配設されたLED配設部と、
前記LED発光時の発熱が伝達される雪解け水取得部とを含み、
前記雪解け水取得部に設けられた開口から浸入した雪解け水が、前記LED配設部内壁を通過する
ことを特徴とする請求項1に記載の水供給装置。
【請求項3】
前記LEDが筐体内壁に配設され、
当該筐体に設けられた開口から雪解け水が浸入する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の水供給装置。
【請求項4】
前記雪解け水が生理活性を失わない
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の水供給装置。
【請求項5】
前記雪解け水に対し、前記LEDから放射された光による殺菌作用が働く
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の水供給装置。
【請求項6】
前記LEDは紫外線LEDを含む
ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の水供給装置。
【請求項7】
さらに、LED以外の発熱手段を備える
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の水供給装置。
【請求項8】
LED(発光ダイオード)の発光時の発熱を活用して雪を溶かし、雪解け水を得る
ことを特徴とする雪解け水の製造方法。
【請求項9】
さらに、LED以外の発熱手段による発熱も利用する
ことを特徴とする請求項8に記載の雪解け水の製造方法。
【請求項10】
得られた雪解け水をLEDからの光に曝す
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の雪解け水の製造方法。
【請求項11】
前記LEDは紫外線LEDを含む
ことを特徴とする請求項8から10のいずれかに記載の雪解け水の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−153444(P2011−153444A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14882(P2010−14882)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(310008136)
【Fターム(参考)】