説明

水冷ケーブル

【課題】可撓性を向上することができる水冷ケーブルを提供する。
【解決手段】複数本の電線11A・11B・11C・11Dと、複数本の電線11A・11B・11C・11D同士を仕切るセパレータ12と、電線11A・11B・11C・11D及びセパレータ12を被覆する被膜13と、を備え、被膜13の内部に冷却水を通過させて複数本の電線11A・11B・11C・11Dを冷却する水冷ケーブル10であって、被膜13は、塩化ビニルで構成され、被膜13の外側の一部には、補強部14がらせん状に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷ケーブルの構造の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷ケーブルは、ポータブルガンまたは電気炉等の給電ケーブルとして用いられている(例えば、特許文献1)。ポータブルガンは、作業者が手に持って溶接作業(スポット溶接)を行う装置である。水冷ケーブルは、通電時における電線の温度上昇を少なくするために、ケーブル内部の電線を冷却水で冷却するように構成されている。ポータブルガンが使用される時には、水冷ケーブルの内部に冷却水を通過させ、電線が冷却された状態で通電がなされる。
【0003】
ところで、ポータブルガンによる溶接作業では、作業者がポータブルガンの位置又は姿勢を変更しつつ溶接作業を行う必要がある。しかし、水冷ケーブルは、硬質ゴムの被膜によって被覆されているため可撓性が低く、容易に曲げる、または、捩じる等の挙動ができない。そのため、作業者は、容易にポータブルガンの位置又は姿勢を変更することができない。そこで、水冷ケーブルの可撓性を向上して、ポータブルガンの操作性を向上させることが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−163581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、可撓性を向上することができる水冷ケーブルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、複数本の電線と、前記複数本の電線同士を仕切るセパレータと、前記複数本の電線及び前記セパレータを被覆する被膜と、を備え、前記被膜の内部に冷却水を通過させて前記複数本の電線を冷却する水冷ケーブルであって、前記被膜は、塩化ビニルで構成され、前記被膜の外側の一部には、補強部が設けられるものである。
【0008】
請求項2においては、請求項1に記載の水冷ケーブルであって、前記補強部は、前記被膜に対してらせん状に設けられるものである。
【0009】
請求項3においては、請求項1または請求項2に記載の水冷ケーブルであって、前記被膜は、無色透明に構成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水冷ケーブルによれば、可撓性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るポータブルガンの全体的な構成を示した構成図。
【図2】本発明の実施形態である水冷ケーブルの軸方向の断面図及び径方向の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を用いて、本発明の実施形態に係るポータブルガン100について説明する。
なお、図1では、点線は空気供給回路のエアホース131を示し、1点鎖線は給電回路の水冷ケーブル10または電源ケーブル122を示している。また、図1の下方には、例えば、スポット溶接による溶接作業の1例として、ポータブルガン本体110によって板金201と板金202との溶接を行う様子が示されている。
【0013】
ポータブルガン100は、自動車工場において、車体200の製造工程で板金同士のスポット溶接を行うときに用いられている。ポータブルガン100は、作業者が手に持って溶接作業(スポット溶接)を行う装置である。スポット溶接とは、例えば、車体200を構成する板金201と板金202とを圧着しつつ電流を流し、その抵抗熱で金属を溶かして接合する溶接方法である。
【0014】
ポータブルガン100の構成について説明する。
ポータブルガン100は、ポータブルガン本体110と、給電装置120と、空気圧供給装置130と、を具備している。
【0015】
ポータブルガン本体110は、板金201と板金202とを空気圧供給装置130から供給される空気圧を用いてエアシリンダ(図示略)によって加圧しつつ、給電装置120によって供給される電流を板金201と板金202とに通電する装置である。ポータブルガン100は、吊り下げ式のポータブルガンであって、ポータブルガン本体110が上方から吊りアーム111によって吊り下げられる構成のポータブルガンである。ポータブルガン本体110は、吊りアーム111に対して姿勢角度が回動するように構成されている。
【0016】
給電装置120は、ポータブルガン本体110によって板金201と板金202とに通電するための電流をポータブルガン本体110に供給する装置である。給電装置120は、電源ケーブル122と、水冷ケーブル10と、トランス121と、を具備している。電源ケーブル122は、工場内の商用電源に接続されている。トランス121は、電源ケーブル122から供給される電流を昇流し、水冷ケーブル10に供給する装置である。水冷ケーブル10は、ポータブルガン本体110に接続されている。
【0017】
空気圧供給装置130は、板金201と板金202とを圧着するための空気圧を供給する装置である。空気圧供給装置130には、ポータブルガン本体110のエアシリンダがエアホース131によって接続されている。
【0018】
図2を用いて、水冷ケーブル10について説明する。
なお、図2(A)は、水冷ケーブル10の軸方向の断面図を示し、図2(B)は、水冷ケーブル10の径方向の一部断面図を示している。
【0019】
水冷ケーブル10の構成について説明する。
水冷ケーブル10は、電線11A・11B・11C・11Dと、セパレータ12と、被膜13と、補強部14と、を具備している。
【0020】
本実施形態の水冷ケーブル10は、4芯構造の給電ケーブルであって、電線11A・11Cがプラス側の電線であって、電線11B・11Dがマイナス側の電線である。電線11A・11Cは、端側でまとめられ、ターミナル(図示略)に接続される。同様に、電線11B・11Dは、端側でまとめられ、ターミナルに接続される。本実施形態の電線11A・11B・11C・11Dは、銅線で構成されている。
【0021】
電線11A・11B・11C・11Dは、それぞれがセパレータ12によって仕切られている。電線11A・11B・11C・11Dは、セパレータ12と共に、被膜13の内部にて、捩じられて配置されている。なお、電線11A・11B・11C・11Dが捩じられて配置されているのは、電線11A・11B・11C・11Dに流れる電流により発生するによる反発力を低減するためである。
【0022】
セパレータ12は、軸方向の断面視にて略十字形状に形成されている。セパレータ12は、電線11A・11B・11C・11Dをそれぞれ仕切っている。すなわち、隣接する電線11A・11B・11C・11Dの間には、それぞれセパレータ12が介在している。セパレータ12は、電線11A・11B・11C・11Dと共に、被膜13の内部にて、捩じられて配置されている。本実施形態のセパレータ12は、硬質ゴムで構成されている。
【0023】
被膜13は、円筒形状に形成されている。被膜13は、電線11A・11B・11C・11D及びセパレータ12を被覆するものである。本実施形態の被膜13は、塩化ビニルで構成されている。また、本実施形態の被膜13は、無色透明に構成されている。
【0024】
補強部14は、被膜13の外側(外周面)に設けられている。補強部14は、被膜13の軸方向に対してらせん状に設けられている。補強部14が形成するらせん形状のピッチ(図2(B)におけるP)は、補強部14の幅(径)の略2〜3倍とされている。補強部14は、水冷ケーブル10の径方向の断面視にて、略円形状に形成されている。本実施形態の補強部14は、硬質樹脂で構成されている。
【0025】
本実施形態の水冷ケーブル10は、被膜13の内部に冷却水を通過させて、電線11A・11B・11C・11D及びセパレータ12の隙間に冷却水が流れるように構成されている。水冷ケーブル10の冷却水の給水及び排水構造については、説明を省略する。
【0026】
水冷ケーブル10の作用について説明する。
溶接作業時には、トランス(変圧器)121によって昇圧され、水冷ケーブル10を介して大電流がポータブルガン本体110に供給される。このとき、水冷ケーブル10には、大電流が流れ、高温となるため、電線11A・11B・11C・11Dを冷却する必要がある。そのため、水冷ケーブル10の被膜13の内部に冷却水を通過させ、電線11A・11B・11C・11Dが冷却された状態で通電がなされる。つまり、水冷ケーブル10が通電されている時には、被膜13の内部にて、電線11A・11B・11C・11D及びセパレータ12の隙間に冷却水が流れる。
【0027】
溶接作業時には、作業者がポータブルガン本体110の位置又は姿勢を変更しつつ溶接作業を行う必要がある。従来、水冷ケーブルは、硬質ゴムの被膜によって被覆されているため可撓性が悪く、容易に曲げる、または、捩じる等の挙動ができなかった。そのため、作業者は、容易にポータブルガン本体110の位置又は姿勢を変更することができなかった。
【0028】
本実施形態の水冷ケーブル10は、塩化ビニル製の被膜13の外側に硬質樹脂製の補強部14をらせん状に設ける構成であるため、塩化ビニル製の被膜13部分の可撓性が高く、水冷ケーブル10を容易に曲げる、または、捩じる等の挙動ができる。そのため、作業者は、容易にポータブルガン本体110の位置又は姿勢を変更することができる。
【0029】
実際の溶接作業では、ポータブルガン本体110の位置又は姿勢を変更することによって、水冷ケーブル10が捩じられることが多い。本実施形態の水冷ケーブル10は、塩化ビニル製の被膜13の外側に硬質樹脂製の補強部14をらせん状に設ける構成であるため、特に水冷ケーブル10を容易に捩じる挙動ができる。そのため、作業者は、容易にポータブルガン本体110の位置又は姿勢を変更することができる。
【0030】
溶接作業時には、上述したように被膜13の内部に冷却水が流れる。そのため、被膜13の内部には、通常0.5MPa以上の水圧が作用している。このとき、塩化ビニル製の被膜13のみでは、0.5MPa以上の水圧に耐えることができない。しかし、本実施形態の水冷ケーブル10は、塩化ビニル製の被膜13の外側に硬質樹脂製の補強部14をらせん状に設ける構成であるため、硬質樹脂製の補強部14部分によって0.5MPa以上の水圧に絶えることができる。
【0031】
水冷ケーブル10の効果について説明する。
本実施形態の水冷ケーブル10によれば、可撓性を向上することができる。そのため、ポータブルガン本体110の操作性を向上させることができる。また、冷却水による水圧にも十分に耐えることができる。
【0032】
また、本実施形態の水冷ケーブル10の被膜13は無色透明で構成されているため、電線11A・11B・11C・11Dが断線した場合であっても、早期に断線を発見することができる。そのため、水冷ケーブル10の保全性を向上できる。
【0033】
さらに、補強部14が被膜13の軸方向に対してらせん状に設けられている構成のため、水冷ケーブル10を製造する時には、被膜13に対して1本の補強部14を巻き付けることによって水冷ケーブル10を製作できる。そのため、製造時間及び製造コストを低減できる。
【0034】
本実施形態の水冷ケーブル10は、4芯構造の給電ケーブルとしたが、これに限定されない。例えば、6芯構造の給電ケーブルとしても良い。なお、水冷ケーブル10が6芯構造の給電ケーブルのときは、セパレータ12は、軸方向の断面視にて略*形状に形成されるものとしても良い。
【0035】
本実施形態の補強部14は、水冷ケーブル10の径方向の断面視にて、略円形状に形成されているものとしたが、これに限定されない。例えば、略半円形状に形成されるものとしても良い。
【0036】
本実施形態の補強部14は、水冷ケーブル10は、硬質樹脂製のものとしたが、これに限定されない。例えば、硬質ゴム製のものとしても良い。
【符号の説明】
【0037】
10 水冷ケーブル
11A 電線
11B 電線
11C 電線
11D 電線
12 セパレータ
13 被膜
14 補強部
100 ポータブルガン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の電線と、前記複数本の電線同士を仕切るセパレータと、前記複数本の電線及び前記セパレータを被覆する被膜と、を備え、前記被膜の内部に冷却水を通過させて前記複数本の電線を冷却する水冷ケーブルであって、
前記被膜は、塩化ビニルで構成され、
前記被膜の外側の一部には、補強部が設けられる、
水冷ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の水冷ケーブルであって、
前記補強部は、前記被膜に対してらせん状に設けられる、
水冷ケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水冷ケーブルであって、
前記被膜は、無色透明に構成される、
水冷ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−33637(P2013−33637A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169163(P2011−169163)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】