説明

水冷媒冷凍システム

【課題】システムの省エネルギー化を図り、キャビテーションを防止した水冷媒冷凍システムを提供する。
【解決手段】冷媒として水を用い、冷媒が蒸発器2、圧縮機3、凝縮器4の順に循環する回路からなる冷凍機5に対し、蒸発器2の冷媒が室内負荷に供給され蒸発器2に戻される冷水系回路7と、凝縮器4の冷媒が冷却塔9で冷却され凝縮器4に戻される冷却水系回路10とが接続された水冷媒冷凍システム1である。
冷水系回路7において、室内負荷から蒸発器2に戻される流路と蒸発器2から室内負荷に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプ11が配設され、冷却水系回路10において、冷却塔9から凝縮器4に戻される流路と凝縮器4から冷却塔9に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプ12が配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒として水を用いた水冷媒冷凍システムに係り、詳しくは冷凍機と、冷水系回路及び冷却水系回路との圧力差を利用してエネルギーを回収するようにした水冷媒冷凍システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、冷媒として水を用いた水冷媒冷凍システムとしては、図3に示されるように、冷媒が蒸発器51、圧縮機52、凝縮器53の順に循環する回路からなる冷凍機54に対し、前記蒸発器51の冷媒が送り配管を通って室内負荷に供給され、戻り配管を通って蒸発器51に戻される冷水系回路55と、前記凝縮器53の冷媒が送り配管を通って冷却塔56で冷却され、戻り配管を通って凝縮器53に戻される冷却水系回路57とが接続された水冷媒冷凍システム50が知られている(例えば下記特許文献1参照。)。
【0003】
かかるシステム50では、冷凍機54、冷水系回路55及び冷却水系回路57の全ての回路に共通して冷媒として水を用い、蒸発器51及び凝縮器53において直接熱交換を行っているため、各回路間の熱交換の必要がなくなり、熱交換による熱損失がなく熱効率に優れたシステムとなる。
【0004】
前記冷凍機54においては、蒸発器51内での冷媒の蒸発温度に見合うように図示しない真空ポンプによって蒸発器51内が真空状態に維持されるとともに、その他の凝縮器53や配管系内が真空状態になっている。このため、冷水系回路及び冷却水系回路の一部も真空圧となり、この冷水系回路及び冷却水系回路に設置されたポンプやバルブなどにおいてキャビテーションが生じやすくなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−97989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなキャビテーションを防止するには、冷水系回路及び冷却水系回路を正圧とし、冷水系回路・冷却水系回路を循環する冷水と冷凍機を循環する冷水との間で熱交換を行う熱交換器を設置する必要があった。
【0007】
しかしながら、水冷媒冷凍システムにこのような熱交換器を設置すると、本システムの特徴である各回路に共通して水冷媒を使用することによる熱効率の向上という効果が発揮されなくなり、熱交換器での熱損失が生じるため、システムの省エネルギー化が図れないという問題があった。
【0008】
そこで本発明の主たる課題は、システムの省エネルギー化を図り、キャビテーションを防止した水冷媒冷凍システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、冷媒として水を用い、冷媒が蒸発器、圧縮機、凝縮器の順に循環する回路からなる冷凍機に対し、前記蒸発器の冷媒が室内負荷に供給され蒸発器に戻される冷水系回路と、前記凝縮器の冷媒が冷却塔で冷却され凝縮器に戻される冷却水系回路とが接続された水冷媒冷凍システムであって、
前記冷水系回路において、前記室内負荷から蒸発器に戻される流路と前記蒸発器から室内負荷に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプが配設され、
前記冷却水系回路において、前記冷却塔から凝縮器に戻される流路と前記凝縮器から冷却塔に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプが配設されていることを特徴とする水冷媒冷凍システムが提供される。
【0010】
上記請求項1記載の発明では、水冷媒冷凍システムにおいて冷凍機では蒸発器での蒸発温度に見合うように真空圧力を維持する必要がある一方で、冷水系回路及び冷却水系回路ではポンプの圧力により正圧となることから、これらの冷凍機と冷水系回路・冷却水系回路との間を冷媒が流通する際の圧力差を利用して動力を回収する動力回収ポンプを備えている。このため、各動力回収ポンプで回収した動力を給水ポンプの動力源として利用することができ、システムの省エネ運転が可能になるとともに、エネルギーの有効利用が図れるようになる。
【0011】
また、冷水系回路及び冷却水系回路の冷媒を循環させる冷水ポンプ及び冷却水ポンプの前段にそれぞれ補助ポンプを設けるとともに、これらの補助ポンプの駆動源として前記動力回収ポンプで回収した動力を用いた場合には、冷水ポンプ及び冷却水ポンプの吸込側を正圧とすることができ、これらのポンプにおけるキャビテーションを防止することができるようになる。
【0012】
請求項2に係る本発明として、前記冷水系回路において、前記室内負荷から前記蒸発器に戻される流路の途中に前記動力回収ポンプが配設されるとともに、前記蒸発器から室内負荷に送られる流路の途中に前記動力回収ポンプによって回収された動力を駆動源とするポンプが配設され、
前記冷却水系回路において、前記冷却塔から前記凝縮器に戻される流路の途中に前記動力回収ポンプが配設されるとともに、前記凝縮器から冷却塔に送られる流路の途中に前記動力回収ポンプによって回収された動力を駆動源とするポンプが配設されている請求項1記載の水冷媒冷凍システムが提供される。
【0013】
上記請求項2記載の発明は、具体的な動力回収ポンプとこれによって回収された動力を駆動源とする補助ポンプの配設位置を規定したものである。
【発明の効果】
【0014】
以上詳説のとおり本発明によれば、システムの省エネルギー化を図り、キャビテーションを防止した水冷媒冷凍システムが提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る水冷媒冷凍システム1のシステム構成図である。
【図2】フリークーリング運転時のシステム構成図である。
【図3】従来の水冷媒冷凍システム50のシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0017】
本発明に係る水冷媒冷凍システム1は、図1に示されるように、冷媒として水を用いたものであって、この冷媒が蒸発器2、圧縮機3、凝縮器4の順に循環する回路からなる冷凍機5に対し、前記蒸発器2の冷媒が冷水ポンプ6によって送り配管を通って室内負荷(図示せず)に供給され、熱交換が行われた後、戻り配管を通って蒸発器2に戻される冷水系回路7と、前記凝縮器4の冷媒が冷却水ポンプ8によって送り配管を通って冷却塔9に供給され、該冷却塔9で冷却された後、戻り配管を通って凝縮器4に戻される冷却水系回路10とが接続された回路構成とされている。
【0018】
更に、冷水系回路7において、室内負荷から蒸発器2に戻される流路と蒸発器2から室内負荷に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプ11が配設されるとともに、冷却水系回路10において、冷却塔9から凝縮器4に戻される流路と凝縮器4から冷却塔9に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプ12が配設されている。
【0019】
より詳細には、冷水系回路7において、室内負荷から蒸発器2に戻される流路(戻り配管)の途中に動力回収ポンプ11が配設されるとともに、蒸発器2から室内負荷に送られる流路(送り配管)の途中であって、冷水ポンプ6より前段に、動力回収ポンプ11によって回収された動力を駆動源の一部又は全部とする補助冷水ポンプ13が配設されている。また、冷却水系回路10において、冷却塔9から凝縮器4に戻される流路(戻り配管)の途中に動力回収ポンプ12が配設されるとともに、凝縮器4から冷却塔9に送られる流路(送り配管)の途中であって、冷却水ポンプ8より前段に、動力回収ポンプ12によって回収された動力を駆動源の一部又は全部とする補助冷却水ポンプ14が配設されている。
【0020】
本水冷媒冷凍システム1では、冷凍機5が蒸発器2での冷媒の蒸発温度に見合うように真空圧力を維持する必要がある一方で、冷水系回路7及び冷却水系回路10では正圧となることから、これらの冷凍機5と冷水系回路7、冷却水系回路10との間を冷媒が流通する際の圧力差を利用した動力回収ポンプ11、12を備えているため、各動力回収ポンプ11、12で回収した動力を補助冷水ポンプ13又は補助冷却水ポンプ14の動力源等として利用することができ、システムの省エネ運転が可能になるとともに、エネルギーの有効利用が図れるようになる。
【0021】
各構成要素について具体的に説明すると、
前記蒸発器2は、例えば大気圧より低い減圧状態(真空状態)の蒸発器2内で冷媒を蒸発させ、そのときの蒸発潜熱を周囲から吸収することによって、周囲の水冷媒を冷却するものである。この蒸発器2での蒸発温度に見合う真空圧力を維持するため、図示しない真空ポンプによって真空状態に維持されている。蒸発器2には、底部に溜まった冷却された冷媒を室内負荷に送る送り配管が接続されるとともに、室内負荷から蒸発器2に戻り、蒸発器2内に冷媒を散水することにより冷媒を蒸発させる戻り配管が接続されている。
【0022】
前記凝縮器4は、圧縮機3で圧縮された高温・高圧の冷媒蒸気に対し、冷却水回路10の戻り配管を通って戻された冷媒を散水することにより、冷媒蒸気を冷却して再液化させるものである。凝縮器4には、底部に溜まった再液化された冷媒を冷却塔9に送る送り配管が接続されるとともに、冷却塔9で冷却された冷媒が戻される戻り配管が接続されている。
【0023】
前記圧縮機3は、ターボ式、ルーツ式、スクリュー式、軸流式など公知の水蒸気圧縮機を用いることができる。前記圧縮機3は、インバータ制御により、回転数が制御可能とされたものを用いることが望ましい。これにより、冷水系回路7において蒸発器2の送り配管の冷媒の温度と戻り配管の冷媒の温度との温度差に応じて回転数を制御して、冷凍機の冷凍能力の制御を行うことが可能となる。
【0024】
前記冷却塔9は、密閉式の冷却塔が好ましく、冷媒が通る冷却水管を冷却塔内に配管し、この管外側で冷却用の外気と散布水を散水して冷媒の冷却を行うものである。なお、冷却塔9には開放式のものを使用することもできる。
【0025】
次に、動力回収ポンプ11、12について説明する。冷水ポンプ6又は冷却水ポンプ8によって高圧で送られた冷媒は、室内負荷又は冷却塔9などによって圧力が低下するものの蒸発器2や凝縮器4の真空状態に比べれば比較的高圧に保たれているため、そのまま蒸発器2や凝縮器4に排出するにはエネルギーロスが大きい。このため、蒸発器2や凝縮器4に排出する手前の戻り配管にそれぞれ、動力回収ポンプ11、12を設け、比較的高圧の冷媒によって動力回収ポンプ11、12を駆動して、そのエネルギーを回収するようにしている。回収されたエネルギーは、例えば動力回収ポンプ11、12の回転軸を、蒸発器2や凝縮器4の送り配管に設けられた補助ポンプ13、14の駆動用のモータに連結又は直結することにより、補助ポンプ13、14の駆動用に利用され、エネルギーの有効利用が図れるようになる。また、補助冷水ポンプ13を設けることにより、冷水ポンプ6の吸込側の圧力が増加するため、キャビテーションが防止できるようになる。冷却水ポンプ8でも同様の効果がある。
【0026】
数値を例示してより詳細に説明すると、図1に示されるように、冷水系回路7において、例えば冷水ポンプ6で吸い込み側の圧力100kPaを500kPaに加圧して送水し、冷水系回路(主に室内負荷等)での圧力損失が400kPaとすると、戻り冷水の圧力は100kPaとなる。一方で、蒸発器2内では蒸発温度を20℃とすると圧力は−99kPa(101.3−2.3kPa)であるので、圧力差ΔPは199kPaとなる。また、蒸発器2で冷却された冷水を送水するには−99kPaの蒸発器2から100kPaの送り配管へ送水する必要があり、その圧力差は199kPaである。従って、199kPaの圧力差の動力を動力回収ポンプ11で回収して、補助冷水ポンプ13で199kPaの送水をすればよいので、理論的には補助冷水ポンプ13のモータ動力が不要となる。しかし、実際には機械損失等が生じるため外部からの動力が必要となるが、動力回収ポンプ11によって補助冷水ポンプ13の動力の大部分がまかなわれる。
【0027】
一方、冷却水系回路10においても同様に、冷却水ポンプ8で吸い込み側の圧力100kPaを300kPaに加圧して送水し、冷却水系回路(主に冷却塔9)の圧力損失が200kPaとすると、戻り冷却水の圧力は100kPaとなる。一方で凝縮器4内では凝縮温度を33℃とすると圧力は−96.3kPa(101.3−5kPa)であるので圧力差ΔPは196.3kPaとなる。この圧力差分の送水をするために動力回収ポンプ12を利用することにより、使用電力が最小となる。
【0028】
ところで、本水冷媒冷凍システム1では、蒸発器2近傍の戻り配管を流通する冷媒の温度が送り配管を流通する冷媒の温度と同等以下のとき、図2に示されるように、圧縮機3を停止して冷凍機5を稼働することなく、冷却塔9によって冷媒を冷却するフリークーリング運転に切り換える制御を行うことができる。
【0029】
このような水冷媒冷凍システム1としては、図1及び図2に示されるように、冷水系回路7の戻り配管から分岐して冷却水系回路10の冷却塔9への供給配管に至るバイパス路15を設けるとともに、冷却水系回路10の冷却塔9から凝縮器4に至る管路の途中から分岐して冷水系回路7の送り配管に至るバイパス路16を設け、且つ前記バイパス路15、16にそれぞれバルブ17、18を設けるとともに、前記冷水系回路7の分岐点から蒸発器2に至る途中及び前記冷却水系回路10の分岐点から凝縮器4に至る途中にそれぞれバルブ19、20を設けておき、システムの省エネ化を図るため、外気湿球温度が低いとき、図2に示されるように、圧縮機3を停止して冷凍機5を運転しないとともにバルブ17、18を開、バルブ19、20を閉とし、戻り配管の冷媒がバイパス路15を通って冷却塔9に送られ、冷却塔9の運転のみで所定の冷水温度に冷却された後、バイパス路16を通って送り配管に送られるフリークーリング運転を可能としたものである。
【符号の説明】
【0030】
1…水冷媒冷凍システム、2…蒸発器、3…圧縮機、4…凝縮器、5…冷凍機、6…冷水ポンプ、7…冷水系回路、8…冷却水ポンプ、9…冷却塔、10…冷却水系回路、11・12…動力回収ポンプ、13…補助冷水ポンプ、14…補助冷却水ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒として水を用い、冷媒が蒸発器、圧縮機、凝縮器の順に循環する回路からなる冷凍機に対し、前記蒸発器の冷媒が室内負荷に供給され蒸発器に戻される冷水系回路と、前記凝縮器の冷媒が冷却塔で冷却され凝縮器に戻される冷却水系回路とが接続された水冷媒冷凍システムであって、
前記冷水系回路において、前記室内負荷から蒸発器に戻される流路と前記蒸発器から室内負荷に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプが配設され、
前記冷却水系回路において、前記冷却塔から凝縮器に戻される流路と前記凝縮器から冷却塔に供給される流路との圧力差を利用した動力回収ポンプが配設されていることを特徴とする水冷媒冷凍システム。
【請求項2】
前記冷水系回路において、前記室内負荷から前記蒸発器に戻される流路の途中に前記動力回収ポンプが配設されるとともに、前記蒸発器から室内負荷に送られる流路の途中に前記動力回収ポンプによって回収された動力を駆動源とするポンプが配設され、
前記冷却水系回路において、前記冷却塔から前記凝縮器に戻される流路の途中に前記動力回収ポンプが配設されるとともに、前記凝縮器から冷却塔に送られる流路の途中に前記動力回収ポンプによって回収された動力を駆動源とするポンプが配設されている請求項1記載の水冷媒冷凍システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−24510(P2013−24510A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161689(P2011−161689)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)