説明

水冷媒加熱器およびそれを用いる水冷媒温水器

【課題】ヒートポンプ式のノンフロン冷凍機において、加熱器を実現する。
【解決手段】低圧下の水冷媒19を周囲の熱で蒸発させることで飽和乾き蒸気を得る蒸発器11と、飽和乾き蒸気を断熱圧縮することで高温高圧の過熱蒸気を生成するルーツ圧縮機12と、過熱蒸気を冷却することでその冷却液を加熱する凝縮器13と、凝縮器13で過熱蒸気を凝縮して得られた過冷却液(水冷媒)20を蒸発器11へ戻すリターン管路14とを含み、水を冷媒として用いるヒートポンプ式のノンフロン冷凍機において、プール排水およびシャワー排水の排熱回収に使用するために、蒸発器11を熱交換器25を介して温水排水槽5に接続し、凝縮器13を熱交換器21を介してプール3に接続し、プール3の貯留水4を加熱する。したがって、水冷媒の利点を生かしながら、加熱器1を実現することができる。また、給排水の温度差が少ないプールは、水冷媒加熱器1に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を冷媒として用いる新規な水冷媒加熱器およびそれを用いる水冷媒温水器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機や空調機などのヒートポンプ動作を行う機器において、オゾン層破壊への対応から、冷媒がフロンから代替フロンへ移り、さらに地球温暖化への対応から、自然冷媒、その中でも安全な水へと一部の用途で切替わりつつある。その水を冷媒に用いた従来技術は、たとえば特許文献1で示される。その特許文献1の従来技術によれば、低圧の蒸発器において、熱源液としての水冷媒に周囲の熱を吸熱させて蒸発させることで得られた飽和乾き蒸気を、圧縮機によって断熱圧縮することで高温高圧の過熱蒸気を生成し、その過熱蒸気を凝縮器において冷却することでその冷却液に放熱を行い、凝縮して得られた高圧の過冷却液を膨張弁を通過させることで湿り蒸気に変換して再び前記蒸発器に戻して液体とすることで、蒸発器で冷却を行うようにした冷凍システムが提案されている。そして、特許文献1では、さらに冷媒が温度によって密度の殆ど変化しない水であることを利用して、蒸発器と凝縮器との差圧を両者の位置水頭の高さの差で発生させることで、前記膨張弁を不要にし、制御やメンテナンスを簡略化することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−97989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、冷房・冷凍の用途ばかりである。一方で、本件発明者の知見により、加熱にも前記水冷媒の利点を生かすことが可能であることが明らかになった。
【0005】
本発明の目的は、水冷媒の利点を生かしながら、加熱器を実現することができる水冷媒加熱器およびそれを用いる水冷媒温水器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水冷媒加熱器は、排熱回収用の熱交換器と、熱源液としての水冷媒を低圧下に置き、前記熱交換器からの熱によって蒸発させる蒸発器と、前記蒸発器からの水蒸気を断熱圧縮する圧縮機と、前記圧縮機からの高温高圧の水蒸気を冷却液で冷却することで凝縮させるとともに、前記冷却液を加熱する凝縮器と、前記凝縮器で加熱された冷却液を導入して加熱対象を加熱する負荷機器と、前記凝縮器で凝縮された水を再び前記蒸発器へ戻すリターン管路と、前記圧縮機をバイパスするバイパス管路および流量制御弁と、前記蒸発器および凝縮器に設けられる温度センサと、前記温度センサの検出結果に応答し、前記蒸発器側の水冷媒の温度が前記凝縮器側の水冷媒の温度より予め定める温度以上高い場合には、前記弁を開放する制御装置とを含むことを特徴とする。
【0007】
上記の構成によれば、低圧下の水冷媒を周囲の熱によって蒸発させることで飽和乾き蒸気を得る蒸発器と、前記飽和乾き蒸気を断熱圧縮することで高温高圧の過熱蒸気を生成する圧縮機と、前記過熱蒸気を冷却することでその冷却液を加熱する凝縮器と、前記凝縮器で過熱蒸気を凝縮して得られた過冷却液を再び前記蒸発器の底部へ戻すリターン管路とを含み、水を冷媒として用いるヒートポンプ式のノンフロン冷凍機において、従来では、負荷機器は蒸発器に接続されて、冷房・冷凍用途であったのを、本発明では、前記蒸発器には排熱回収用の熱交換器を接続し、熱源液としての前記水冷媒を前記熱交換器からの熱によって蒸発させるとともに、負荷機器を凝縮器に接続し、その冷却液を用いて、負荷機器では加熱対象を加熱する。
【0008】
したがって、水冷媒の利点を生かしながら、加熱器を実現することができる。また、たとえばプール排水やシャワー排水などの排熱源を総て前記排熱回収用の熱交換器に通すことで、排熱回収が可能になり、比較的低温の排水であっても有効に利用することができ、省エネ効果を得ることができる。
【0009】
また、蒸発器側の熱源液の温度が高い場合には、制御装置は、バイパス管路および流量制御弁を介して、蒸発器からの蒸気を凝縮器へ直接送るヒートパイプのような動作を行わせ、通常通り凝縮器側の冷却液を加熱するので、圧縮機を停止またはその回転を低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0010】
また、本発明の水冷媒加熱器では、前記制御装置は、前記蒸発器側の水冷媒の温度が前記凝縮器側の水冷媒の温度より予め定める温度以上高い場合には、前記弁を開放するとともに、前記圧縮機を停止させ、前記予め定める温度より低い場合には、前記弁を遮断するとともに、それらの温度差に応じた速度で前記圧縮機を回転させることを特徴とする。
【0011】
上記の構成によれば、熱源液の温度が高い場合には、圧縮機を停止またはその回転を低下させることができ、一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0012】
さらにまた、本発明の水冷媒加熱器では、前記圧縮機はルーツ圧縮機であることを特徴とする。
【0013】
上記の構成によれば、前記ルーツ圧縮機は、特に水を冷媒とする場合に、高効率で好適である。また、逆転可能であることから、四方弁が不要となってシンプルな構成とすることができるとともに、加熱対象の温度が高すぎる場合には、前記逆転させることで冷却を行うこともできる
【0014】
また、本発明の水冷媒温水器は、前記の水冷媒加熱器において、前記凝縮器の冷却液が水であることを特徴とする。
【0015】
上記の構成によれば、ノンフロンで、ヒートポンプにつき高効率、さらにシンプルな温水器を実現することができる。
【0016】
さらにまた、本発明の水冷媒温水器では、前記熱交換器は前記熱源液にプール排水の熱を供給し、前記凝縮器における冷却液からはプール貯留水に熱を供給することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、プール貯留水の量は常に一定で、かつ排水分を補充する場合、たとえば31℃の温水プールの水温、すなわち排水の温度に対して、補充する水の温度差は、夏場で10℃以下、冬場でも20℃程度と、温度差が小さい。
【0018】
したがって、前記ヒートポンプ式の水冷媒温水器を高効率で使用することができ、その用途としてプールは極めて好適である。また、水温が80℃以上等であれば、冷媒として炭酸ガス等の使用も可能になるが、上記20〜30℃程度の水温は、温度域からも水冷媒温水器を高効率で使用することができ、好適である。
【0019】
また、本発明の水冷媒温水器は、前記プール排水にシャワー排水を合わせて貯留する温水排水槽をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
上記の構成によれば、プール排水よりも10℃以上温度の高いシャワー排水の排熱も回収することができるとともに、温水排水槽で貯留することで、短時間に集中的に生じるシャワー排水から、プール貯留水を緩やかに長時間加熱することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の水冷媒加熱器は、以上のように、低圧下の水冷媒を周囲の熱によって蒸発させることで飽和乾き蒸気を得る蒸発器と、前記飽和乾き蒸気を断熱圧縮することで高温高圧の過熱蒸気を生成する圧縮機と、前記過熱蒸気を冷却することでその冷却液を加熱する凝縮器と、前記凝縮器で過熱蒸気を凝縮して得られた過冷却液を再び前記蒸発器の底部へ戻すリターン管路とを含み、水を冷媒として用いるヒートポンプ式のノンフロン冷凍機において、従来では、負荷機器は蒸発器に接続されて、冷房・冷凍用途であったのを、本発明では、前記蒸発器には排熱回収用の熱交換器を接続し、熱源液としての前記水冷媒を前記熱交換器からの熱によって蒸発させるとともに、負荷機器を凝縮器に接続し、その冷却液を用いて、負荷機器では加熱対象を加熱する。
【0022】
それゆえ、水冷媒の利点を生かしながら、加熱器を実現することができる。また、たとえばプール排水やシャワー排水などの排熱源を総て前記排熱回収用の熱交換器に通すことで、排熱回収が可能になり、比較的低温の排水であっても有効に利用することができ、省エネ効果を得ることができる。
【0023】
また、蒸発器側の熱源液の温度が高い場合には、制御装置は、バイパス管路および流量制御弁を介して、蒸発器からの蒸気を凝縮器へ直接送るヒートパイプのような動作を行わせ、通常通り凝縮器側の冷却液を加熱するので、圧縮機を停止またはその回転を低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0024】
また、本発明の水冷媒加熱器は、以上のように、前記制御装置は、熱源液の温度が高い場合には、圧縮機を停止またはその回転を低下させる。
【0025】
それゆえ、一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0026】
さらにまた、本発明の水冷媒加熱器は、以上のように、前記圧縮機をルーツ圧縮機とする。
【0027】
それゆえ、特に水を冷媒とする場合に、高効率で好適である。また、逆転可能であることから、四方弁が不要となってシンプルな構成とすることができるとともに、加熱対象の温度が高すぎる場合には、前記逆転させることで冷却を行うこともできる。
【0028】
さらにまた、本発明の水冷媒加熱器は、以上のように、前記圧縮機をバイパスするバイパス管路および流量制御弁を設け、前記蒸発器側の冷却液の温度が高い場合には、前記バイパス管路および流量制御弁を介して、蒸発器からの蒸気を凝縮器へ直接送るヒートパイプのような動作を行うことで、通常通り凝縮器側の冷却液を加熱する。
【0029】
それゆえ、圧縮機を停止またはその回転を低下させることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0030】
また、本発明の水冷媒温水器は、以上のように、前記の水冷媒加熱器において、前記凝縮器の冷却液を水とする。
【0031】
それゆえ、ノンフロンで、ヒートポンプにつき高効率、さらにシンプルな温水器を実現することができる。
【0032】
さらにまた、本発明の水冷媒温水器は、以上のように、前記熱交換器は前記熱源液にプール排水の熱を供給し、前記凝縮器における冷却液からはプール貯留水に熱を供給する。
【0033】
それゆえ、プール貯留水の量は常に一定で、かつ排水分を補充する場合も補充する水との温度差が小さく、前記ヒートポンプ式の水冷媒温水器を高効率で使用することができ、用途としては極めて好適である。
【0034】
また、本発明の水冷媒温水器は、以上のように、前記プール排水にシャワー排水を合わせて貯留する温水排水槽をさらに備える。
【0035】
それゆえ、プール排水よりも温度の高いシャワー排水の排熱も回収することができるとともに、温水排水槽で貯留することで、短時間に集中的に生じるシャワー排水から、プール貯留水を緩やかに長時間加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の一形態に係る水冷媒加熱器を用いる水冷媒温水器の全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1は、本発明の実施の一形態に係る水冷媒加熱器1を用いる水冷媒温水器2の全体構成を示す図である。この水冷媒温水器2は、プール3の温水生成装置として用いられる。この水冷媒温水器2は、大略的に、前記水冷媒加熱器1と、その水冷媒加熱器1で生成された温水と前記プール3の貯留水4との間で熱交換を行うための第1の熱交換器21と、その第1の熱交換器21の1次側の水冷媒を循環させるポンプ22と、2次側のプール貯留水4を循環させるポンプ23および濾過器24と、別途設けられる温水排水槽5と、その温水排水槽5の温排水29と前記水冷媒加熱器1の水冷媒19との間で熱交換を行うための第2の熱交換器25と、その第2の熱交換器22の1次側の温排水を循環させるポンプ26と、2次側の水冷媒20を循環させるポンプ27とを備えて構成される。
【0038】
水冷媒加熱器1の構造は、前記特許文献1などと同様であり、熱源液としての水冷媒19を低圧下に置き、蒸発させる蒸発器11と、前記蒸発器11からの水蒸気を断熱圧縮するルーツ圧縮機12と、前記ルーツ圧縮機12からの高温高圧の水蒸気を冷却液である水で冷却することで凝縮させるとともに、前記水を加熱して前記温水を生成する凝縮器13と、前記凝縮器13で凝縮された水冷媒20を再び前記蒸発器11の底部へ戻すリターン管路14と、前記ルーツ圧縮機12を駆動するモータ15と、運転開始にあたって、前記蒸発器11から凝縮器13内を真空引きする真空ポンプ16と、前記ルーツ圧縮機12をバイパスして、前記蒸発器11から凝縮器13を直結することができるバイパス管路17およびそれに介在される流量制御弁18とを備えて構成される。
【0039】
上述のように構成される水冷媒温水器2において、温水排水槽5には、プール3から溢れ出たプール貯留水4が上部側から流入するとともに、フィルタ28を介して、シャワー排水が同様に上部側から流入している。その温水排水槽5の温排水29における上層の比較的温度の高い水がポンプ26によって吸い込まれ、前記第2の熱交換器25を介して該温水排水槽5の底部側に循環される。一方、前記水冷媒加熱器1の蒸発器11の底面に貯まった水冷媒19は、ポンプ27によって吸い出され、前記第2の熱交換器25を介して該蒸発器11に循環される。こうして、蒸発器11では、低圧下の水冷媒19が、第2の熱交換器25を介する、すなわち温水排水槽5の排熱によって蒸発されることで、飽和乾き蒸気となる。
【0040】
前記蒸発器11からの飽和乾き蒸気は、ルーツ圧縮機12において断熱圧縮され、高温高圧の過熱蒸気となる。前記ルーツ圧縮機12からの過熱蒸気は、凝縮器13において前記第1の熱交換器21からの水で冷却されて液体の水冷媒20に戻り、該凝縮器13の底面に貯まる。このとき、第1の熱交換器21からの水が加熱され、その熱は該第1の熱交換器21において、加熱対象であるプール貯留水4を加熱する。前記凝縮器13で凝縮した水冷媒20は、リターン管路14を介して、前記蒸発器11の底面に循環される。
【0041】
したがって、本発明の水冷媒加熱器1は、水を冷媒として用いるヒートポンプ式のノンフロン冷凍機の構成を用い、注目すべきは、第2の熱交換器25を蒸発器11に接続して、プール排水やシャワー排水の排熱回収を行うとともに、負荷機器となる第1の熱交換器21を凝縮器13に接続し、その冷却液を用いて、第1の熱交換器21では加熱対象であるプール貯留水4を加熱することである。このように構成することで、水冷媒の利点を生かしながら、加熱器を実現することができる。
【0042】
また、圧縮機としてルーツ圧縮機を用いることで、前記のように特に水を冷媒とする場合に、高効率で好適である。また、逆転可能であることから、四方弁が不要となってシンプルな構成とすることができるとともに、加熱対象、すなわちプール貯留水4の温度が、夏場等で高すぎる場合には、前記逆転させることで冷却を行うこともできる。
【0043】
さらにまた、前記ルーツ圧縮機12をバイパスするバイパス管路17および流量制御弁18を設けることで、前記蒸発器11側の冷却液、すなわち温水排水槽5の温排水29の温度が高い場合には、前記バイパス管路17および流量制御弁18を介して、蒸発器11からの蒸気を凝縮器13へ直接送るヒートパイプのような動作を行うことで、通常通り凝縮器13側の冷却液、すなわちプール貯留水4を加熱することができる。具体的には、制御装置40は、蒸発器11および凝縮器13に設けた温度センサ41,42によって水冷媒19,20の温度をそれぞれ検出し、蒸発器11側の水冷媒19の温度が凝縮器13側の水冷媒20の温度より予め定める温度α、たとえば3℃以上高い場合には、前記流量制御弁18を開放するとともに、ルーツ圧縮機12を停止し、そうでない場合には、流量制御弁18を遮断するとともに、ルーツ圧縮機12を、温度差に応じた速度で回転させる。このように構成することで、温排水29の温度が高い場合には、ルーツ圧縮機12を停止またはその回転を低下させることができ、一層の省エネルギー化を図ることができる。
【0044】
また、前記凝縮器13の冷却液が水であることで、ノンフロンで、ヒートポンプにつき高効率、さらにシンプルな温水器2を実現することができる。
【0045】
さらにまた、この水冷媒温水器2では、前記蒸発器11の冷却液にはプール3の温排水29から熱を供給しており、前記凝縮器13における冷却液からはプール貯留水4に熱を供給している。したがって、プール貯留水4の量は常に一定で、かつ排水分を補充する場合、たとえば31℃の温水プールの水温、すなわち排水の温度に対して、補充する水の温度差は、夏場で10℃以下、冬場でも20℃程度と、温度差が小さい。これによって、前記ヒートポンプ式の水冷媒温水器2を高効率で使用することができ、その用途としてプール3は極めて好適である。また、水温が80℃以上等であれば、冷媒として炭酸ガス等の使用も可能になるが、上記20〜30℃程度の水温は、温度域からも水冷媒温水器2を高効率で使用することができ、好適である。
【0046】
また、前記プール排水にシャワー排水を合わせて貯留する温水排水槽5をさらに設けることで、プール排水よりも10℃以上温度の高いシャワー排水の排熱も回収することができるとともに、温水排水槽5で貯留することで、短時間に集中的に生じるシャワー排水から、プール貯留水4を緩やかに長時間加熱することができる。
【0047】
さらにまた、図1の例では、温水排水槽5の温排水29における下層の比較的温度の低い水をポンプ31によって吸い出し、第3の熱交換器32を介して該温水排水槽5の上部側に循環させる一方、前記第3の熱交換器32にポンプ33によって温水を供給する空冷ヒートポンプ34をバックアップ用に設けている。これによって、冬季などで前記温排水29の温度が充分に上がらなくても、プール3には、たとえば前記31℃の必要な温度の温水を供給することができる。その場合、第3の熱交換器32は、蒸発器11の水冷媒19に対して、直接熱交換を行うようにしてもよい。
【0048】
また、前記熱交換器21,25,32は、液体と液体との熱交換を行うので、プレート式が好ましいが、シェルアンドチューブ式等、他の構造の熱交換器が用いられてもよい。さらにまた、第1の熱交換器21の1次側を直接プール3内の貯留水4に浸漬してもよく、同様に、第2の熱交換器25の2次側を直接温水排水槽5内の温排水29に浸漬してもよい。
【0049】
さらにまた、図1の構成でも、前記特許文献1と同様に、冷媒が温度によって密度の殆ど変化しない水であることを利用して、蒸発器11と凝縮器13との差圧を両者の位置水頭の高さの差で発生させることで、リターン管路14の膨張弁を不要にし、制御やメンテナンスを簡略化しているけれども、前記膨張弁が用いられてもよい。
【0050】
ここで、ヒートポンプは、前記のように小さな温度差を変化させるのが得意であるが、殺菌や乾燥などのために高温、たとえば80℃以上の温水が必要になる食洗機などに用い、受け入れた水道水の予熱に使用しても、後にヒータなどでその高温の温水を生成するにあたって、適温まで昇温させるのに必要なエネルギーを劇的に削減することができる。したがって、本発明の水冷媒加熱器1は、前記プール3の温水生成装置としだけでなく、他の用途にも用いることができる。
【0051】
ここで、特開2004−257677号公報には、夏期にはコジェネからの電源供給で水冷媒冷凍機で冷房を行い、冬季にはコジェネの排熱を利用して暖房を行うことが示されているが、水冷媒冷凍機を加熱に使用することは、記載も示唆もない。また、特開2004−69087号公報には、コジェネの排熱を利用して吸収式冷凍機を動作させ、その冷熱で水冷媒冷凍機の凝縮器の冷却を行い、シャーベットアイスを生成することが示されているが、この先行技術にも、水冷媒冷凍機を加熱に使用することは、記載も示唆もない。
【0052】
一方、特開2002−13787号公報には、電気式ヒートポンプチラーからの冷温水と熱交換してプール水や室内を冷却・加温することが示されている。しかしながら、この先行技術では、ヒートポンプは通常のフロン冷媒を使用していると思われ、水冷媒冷凍機を使用することは、記載も示唆もなく、またヒートポンプの排熱は通常のエアコンと同様に空気中に放熱されていると思われる。したがって、本発明では、冷媒がプールの温度範囲に適しており、効率の面で有利であるのに対して、この先行技術では必ずしもそうではなく、また排水の排熱の回収なども不可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 水冷媒加熱器
2 水冷媒温水器
3 プール
4 貯留水
5 温水排水槽
11 蒸発器
12 ルーツ圧縮機
13 凝縮器
14 リターン管路
15 モータ
16 真空ポンプ
17 バイパス管路
18 流量制御弁
19,20 水冷媒
21 第1の熱交換器
22,23,26,27,31,33 ポンプ
24 濾過器
25 第2の熱交換器
28 フィルタ
29 温排水
32 第3の熱交換器
34 空冷ヒートポンプ
制御装置
,4 温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排熱回収用の熱交換器と、
熱源液としての水冷媒を低圧下に置き、前記熱交換器からの熱によって蒸発させる蒸発器と、
前記蒸発器からの水蒸気を断熱圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機からの高温高圧の水蒸気を冷却液で冷却することで凝縮させるとともに、前記冷却液を加熱する凝縮器と、
前記凝縮器で加熱された冷却液を導入して加熱対象を加熱する負荷機器と、
前記凝縮器で凝縮された水を再び前記蒸発器へ戻すリターン管路と
前記圧縮機をバイパスするバイパス管路および流量制御弁と、
前記蒸発器および凝縮器に設けられる温度センサと、
前記温度センサの検出結果に応答し、前記蒸発器側の水冷媒の温度が前記凝縮器側の水冷媒の温度より予め定める温度以上高い場合には、前記弁を開放する制御装置とを含むことを特徴とする水冷媒加熱器。
【請求項2】
前記制御装置は、前記蒸発器側の水冷媒の温度が前記凝縮器側の水冷媒の温度より予め定める温度以上高い場合には、前記弁を開放するとともに、前記圧縮機を停止させ、前記予め定める温度より低い場合には、前記弁を遮断するとともに、それらの温度差に応じた速度で前記圧縮機を回転させることを特徴とする請求項1記載の水冷媒加熱器。
【請求項3】
前記圧縮機はルーツ圧縮機であることを特徴とする請求項1または2記載の水冷媒加熱器。
【請求項4】
前記請求項1〜3のいずれか1項に記載の水冷媒加熱器において、前記凝縮器の冷却液が水であることを特徴とする水冷媒温水器。
【請求項5】
前記熱交換器は前記熱源液にプール排水の熱を供給し、前記凝縮器における冷却液からはプール貯留水に熱を供給することを特徴とする請求項4記載の水冷媒温水器。
【請求項6】
前記プール排水にシャワー排水を合わせて貯留する温水排水槽をさらに備えることを特徴とする請求項5記載の水冷媒温水器。

【図1】
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【公開番号】特開2012−145328(P2012−145328A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−68645(P2012−68645)
【出願日】平成24年3月26日(2012.3.26)
【分割の表示】特願2007−288968(P2007−288968)の分割
【原出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000143972)株式会社ササクラ (138)