説明

水処理カートリッジ

水処理カートリッジ(10)は、従来の水フィルタハウジング(110)に嵌入して、水処理化学物質、特に二酸化塩素の消毒量を、水処理システム又はユニット・プロセスへと放出するように適合されたカートリッジである。該カートリッジ(10)は、不活性な充填材と、水に接触すると二酸化塩素を放出する化学組成物との混合物で好ましくは構成される、水処理媒体(38)で満たされている。水中に放出される二酸化塩素の濃度、ならびに放出の持続時間は、充填材の選択ならびに水処理媒体(38)中の該充填材の量によって変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の処理及び消毒に関する。より詳細には、本発明は、水に接触すると二酸化塩素を放出する乾燥粉末を用いる水処理カートリッジである。この粉末は、標準的な給水システムフィルタカートリッジ・ハウジングに嵌入するように適合されたカートリッジ内に収められる。
【背景技術】
【0002】
微生物が暗い湿潤環境で繁殖することは、生物科学の既成の事実である。温度の影響はあるが、通常の周囲温度は、生物学的成長を促すのに十分である。そのような生物学的成長には、バクテリア、ウイルス、かび(molds)、白かび(mildews)、シスト(cysts)、菌類などが含まれる。
【0003】
設計上、流体処理システムは、生物学的成長にきわめて適した暗い湿潤環境で密閉されている。水処理システム及び施設では、一番の懸案事項である。
【0004】
微生物は、源水から水処理システムに侵入する。都市用水、地下水、又は地表水に、微生物を完全に含まないものは存在しない。一旦、水処理システム内に入ると、微生物は、繁殖する。その成長は、システムの定期的かつ体系的な使用によって検査されるにすぎず、それは微生物を洗い流す、又は一時的に消毒製品を流入させるものである。自治体の給水システムは、通常、供給水に注入される少量の塩素によって処理される。
【0005】
しかし、通常の水処理法は、一般に、微生物を完全に排除することはできない。成長を検査することはできるが、微生物は、生き残ることが可能であり、程度の差はあっても、水の条件が許す限り繁殖可能である。
【0006】
微生物が生き残るための臨界的な仕組みは、「生物膜(バイオフィルム)」として知られる。生物膜は、バクテリアが給水システム内のパイプ及び容器の壁面に付着するときに形成される。バクテリアは、バクテリアを給水システムの内表面すべてにわたって固定でき、かつバクテリアを化学物質の攻撃から保護できる、ぬるぬるした膠状の物質を排泄する。生物膜は、単一種のバクテリアによって形成されることもあるが、生物膜に、バクテリアに加えて菌類や藻類などの多くの種が含まれることの方が多い。
【0007】
生物膜は、化学物質及び他の方法によって攻撃かつ低減できるが、排除することは非常に困難である。生物膜は、一般に排除されないので、処理後、未来の微生物成長のための種をもたらす。
【0008】
二酸化塩素(ClO2)は、生物膜を排除することで知られる数少ない物質の1つである。このClO2の特質が、消毒(sanitization)に好ましい選択にしている。残念なことに、最近までClO2は、生成が困難で、時には危険なこともあり、使用時点で生成する必要があった。
【0009】
1970年3月16日にS.Rakに発行された米国特許第3627133号は、水軟化装置とブライン再生タンクとの間の流体フローラインに挿入される塩素発生器を開示している。該塩素発生器は、電気分解的に塩素を発生して、再生サイクル中に水軟化装置を消毒する。
【0010】
1980年10月14日にF.Hoeschlerに発行された米国特許第4228000号は、再生サイクル中の所定の時間に所定量の消毒剤を自己再生式水処理装置へと分配する、消毒剤供給装置を開示している。
【0011】
1999年3月16日にF.Labergeに発行された米国特許第5882588号は、給湯システムを消毒するプロセスを開示している。開示されているプロセスは、一般に、処理タンクへと引き込まれる水にオゾンを含んだガスを導入することを開示している。オゾンを含んだガスで水が処理された後、処理された水が給湯システムへと供給される。
【0012】
2000年2月22日にM.Labibらに発行された米国特許第6027572号は、流体ライン及び配管から生物膜ならびに残屑を除去する方法を開示している。水と、1つもしくは複数の界面活性剤と、好ましくは過酸化水素源と、任意に小さな不活性固体粒子との水溶液を、生物膜及び残屑を軟化させて配管から洗い流す乱流を該配管内に作り出すため、加圧ガスとともに通すことによって、小口径の配管が清浄化される。
【0013】
1991年4月10日に公開されたP.Ripletによる欧州特許出願EP0421737A1は、緩衝された水性媒体中で、安定な前駆体を遷移金属と接触させることを伴う、二酸化塩素発生方法を開示している。また、安定な前駆体と遷移金属とを含有する組成物も開示されている。
【0014】
1999年3月31日に公開されたG.Littlejohnによる英国特許出願GB2329589Aは、二酸化塩素源をある試薬と混合することによって二酸化塩素生成を伴う消毒方法を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述した発明及び特許には、単独でも、又は組み合わせでも、ここに請求する本発明を記述すると見なされるものはない。ゆえに、前述の問題を解決する水処理カートリッジが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、水処理カートリッジである。該カートリッジには、密閉された上端部を画定する上壁を有する中空円筒状のカートリッジ本体が含まれる。該カートリッジ本体は、底端部を有する。該上壁は、それを貫通して形成された水出口孔を有する。平らなディスクが、カートリッジ本体内部で上壁に接して配置される。この平らなディスクは、支持ショルダを形成する。該ディスクは、それを貫通して形成された水通過孔を有する。流出側フィルタディスクが、カートリッジ本体内部で支持ショルダに接して配置される。カートリッジ本体の底端部に被せて、エンド・キャップが取り付けられる。該エンド・キャップは、流体がカートリッジ本体内に該エンド・キャップを通過するように適合され、その中に画定された少なくとも1つの流体通路を有する。入口フィルタディスクが、エンド・キャップによって支持される。該入口フィルタディスクは、エンド・キャップ内に画定された流体通路を覆う。カートリッジは、カートリッジ本体内に収められた、少なくとも1つの活性な水処理化学物質を含む水処理媒体を有する。水流がカートリッジ本体内部の水処理媒体を通過するときに、少なくとも1つの水処理化学物質が水中に放出されて、水処理カートリッジから下流の給水システムを処理する。
【0017】
添付図面全体にわたって、類似の参照文字は、一貫して対応する特徴を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
水処理カートリッジは、給水システムの安全かつ容易な二酸化塩素処理及び消毒を促進する。水処理カートリッジは、水処理システムよりも前に、ライン内に又は補助バイパス・ライン上に置かれた、従来のフィルタカートリッジ・ハウジング内で使用される。そのようなシステムは、性質及び機能が様々であり、しばしば「ユニット・プロセス」と呼ばれる。カテゴリー分けすれば、ユニット・プロセスには、ろ過、軟化、脱塩、逆浸透、ナノろ過、ウルトラろ過、脱気、除鉄、中和、及び他のタイプの水処理システムが含まれる。水処理カートリッジは、これらのユニット・プロセスすべてに対して適用可能性を有する。水処理カートリッジは、また、介在するもしくは中間にある水処理機器なしに、単独での配管又は配水管系への適用も企図される。
【0019】
水処理カートリッジは、不活性な充填物とともに、活性な水処理化合物などの水処理媒体を収めるように適合される。好ましい活性な水処理化合物は、水に接触すると二酸化塩素を放出する化合物である。水処理媒体は、カートリッジを安全に取り扱うことができるように、漏れ防止(spill‐proof)式に水処理カートリッジ内に収められる。活性な水処理化合物は、その使用によって不活性な材料へと還元されるので、水処理カートリッジを安全に取り扱い、処分することができる。
【0020】
使用時には、水処理カートリッジは、従来のフィルタカートリッジに替わって、水フィルタハウジング内に入れられる。水がフィルタハウジング内を流れるとき、この水は、水処理カートリッジ内を流れる。水処理媒体は、二酸化塩素などの水処理化学物質を水中に放出する。
【0021】
水処理媒体中の充填材の量及びタイプを変えると、水中に放出される水処理化学物質の濃度、ならびに放出の持続時間を変化させることができる。
【0022】
諸図では、水処理カートリッジは、全体的に10として示されている。水処理カートリッジ10は、従来の水ろ過器に代わって、従来の水フィルタハウジングに嵌入するように設計される。水処理カートリッジ10は、水フィルタハウジングを通過する、したがって水処理カートリッジ10を通過する水中に水処理化学物質を放出するために使用される。好ましい実施形態では、水処理カートリッジ10は、水中に二酸化塩素(ClO2)を放出するために使用される。ただし、水処理カートリッジ10を使用して多種多様な流体処理物質を供給できることが明らかになる。
【0023】
図1〜4を参照すると、水処理カートリッジ10は、上端部22と底端部24とを有する中空のカートリッジ本体20を備える。上壁26が上端部22を密閉しており、一方、底端部24は、開口している。水処理カートリッジ10から水を流せるように、上壁26内に水出口孔28が形成される。カートリッジ本体20の上壁26上には、ガスケット52が配置される。
【0024】
カートリッジ本体20の上端部22のところで、カートリッジ本体20内に、流出側フィルタディスク36が配置される。カートリッジ本体20内で上壁26に隣接して配置された支持ショルダ32が、流出側フィルタディスク36を上壁26からいくらか後方に離隔する。支持ショルダ32は、カートリッジ本体20の一体部分として形成することができ、又は、図示したように平らなディスクにすることができる。支持ショルダ32を貫通して、水通過孔34が形成されている。
【0025】
カートリッジ本体20の底端部24上に配置されたエンド・キャップ40は、その中に画定された少なくとも1つの流体通路47を有する。流入側フィルタディスク48が、エンド・キャップ40上で支持されて、流体通路47すべてを覆っている。
【0026】
図示した実施形態では、図2及び図4から最もよくわかるように、エンド・キャップ40は、カートリッジ本体20の底端部24に取り付けられた環状リング42を備える。中央円筒部44が、リング42内で複数のスポーク46によって堅く支持される。中央円筒部44は、密閉された最上部と、開口した底部とを有する。開口した底部は、リング42の下方に延びる。流入側フィルタディスク48が据付孔50を有するので、該流入側フィルタディスク48を中央円筒部44の周りに据え付けて、流体通路47を覆わせることができる。
【0027】
ここで図5を見ると、水処理カートリッジ10の機能及び使用をさらに理解することができる。水処理カートリッジ10は、水処理媒体38で満たされている。水処理媒体38は、少なくとも1つの活性な水処理化学物質を備える。水処理媒体38は、さらに充填材を含むことができる。好ましい実施形態では、活性な水処理化学物質は、水に接触すると二酸化塩素を放出する特性を有する化学組成物である。水に接触すると二酸化塩素を放出する、様々な化学組成物が知られている。そのような組成物のいくつかは、乾燥粉末又は顆粒状の形態で市販されている。例示的な二酸化塩素生成組成物は、Bio‐Cide International製のPerloxである。
【0028】
使用時には、水処理媒体38で満たされた水処理カートリッジ10が、従来の水ろ過器の代わりに、従来の水フィルタハウジング110内に入れられる。中央円筒部44が、ハウジング110のサンプ(sump)112の底部に見られる支柱114上に嵌合することがわかる。ハウジング110の最上部120に見られる水出口122は、水処理カートリッジ10の最上部に嵌入し、ガスケット52及び上壁26を貫通して延びている。ここで、支持ショルダ32が、流出側フィルタディスク36を水出口122の端部よりも奥に変位させる働きをすることがわかる。中央円筒部44は、水処理カートリッジ10のエンド・キャップ40をサンプ112底部の上方に位置決めして、水が流体通路47内及びカートリッジ本体20内を自由に流れるようにする。矢印Wは、水の流れを示す。
【0029】
水が水処理媒体38を通って流れるときに、水処理化学物質が水中に放出される。水処理化学物質を取り込んだ水は、水処理カートリッジ10の最上部から水出口122を通って流れ出て、処理されている給水システムに到達する。
【0030】
流入側及び流出側フィルタディスク48、36は、水処理媒体38をカートリッジ本体20内で保持すると同時に、水を通過させ、水処理媒体38の漏出の危険をなくしている。したがって、水処理カートリッジ10は、安全かつ容易に取り扱うことができる。
【0031】
水中に放出される水処理化学物質の濃度、ならびに放出の持続時間は、不活性な充填材の選択、ならびに水処理媒体38中で使用される不活性な充填材の量によって変化させることができる。
【0032】
水との接触によって二酸化塩素を生成するために使用される様々な化学組成物は、その使用によって不活性になるので、水処理カートリッジ10を容易かつ安全に処分できるものにしている。
【0033】
本発明の好ましい諸実施形態は、水処理システムを消毒する水処理カートリッジを提供する。該水処理カートリッジは、水処理システムに二酸化塩素を導入することによって該水処理システムを消毒することができる。該水処理カートリッジは、既存の標準的な水フィルタハウジングと互換性がある。該水処理カートリッジは、安全かつ容易に使用することができる。
【0034】
本発明が以上の実施形態だけに制限されず、冒頭の特許請求の範囲内にあるすべての実施形態を包含することを理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による水処理カートリッジの断面図である。
【図2】本発明による水処理カートリッジの分解組立斜視図である。
【図3】上端部の方を見ているときの、本発明による水処理カートリッジの斜視図である。
【図4】底端部の方を見ているときの、本発明による水処理カートリッジの斜視図である。
【図5】典型的な水フィルタハウジング内で示す、本発明による水処理カートリッジの断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状のカートリッジ本体が、密閉された上端部を画定する上壁と底端部とを有し、前記上壁が、それを貫通して形成された水出口孔を有しており、
平らなディスクが、前記カートリッジ本体内部で前記上壁に接して配置され、支持ショルダを形成し、前記ディスクが、それを貫通して形成された水通過孔を有しており、
流出側フィルタディスクが、前記カートリッジ本体内部で前記支持ショルダに接して配置されており、
エンド・キャップが、前記カートリッジ本体の前記底端部に被せて取り付けられ、前記エンド・キャップは、流体が前記カートリッジ本体内に前記エンド・キャップを通過するように適合され、その中に画定された少なくとも1つの流体通路を有しており、
入口フィルタディスクが、前記エンド・キャップによって支持され、前記入口フィルタディスクが、前記エンド・キャップ内に画定された前記少なくとも1つの流体通路を覆っており、
水処理媒体が、前記カートリッジ本体内に収められた、少なくとも1つの活性な水処理化学物質を含んでおり、
水流が前記カートリッジ本体内部の前記水処理媒体を通過するときに、少なくとも1つの水処理化学物質が水中に放出されて、前記水処理カートリッジから下流の給水システムを処理する水処理カートリッジ。
【請求項2】
前記カートリッジ本体の前記上壁の上に配置された出口ガスケットをさらに備える、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項3】
前記エンド・キャップが、
前記カートリッジ本体の前記底端部に取り付けられた環状リングと、
密閉された上端部と開口した底端部とを有する中空の中央円筒部と、
前記中央円筒部から前記環状リングに放射状に延びる複数のスポークとを備えており、前記スポークが前記環状リングを前記中央円筒部の周りで堅く支持する、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項4】
前記中央円筒部の前記底端部が前記環状リングの下方に延びている、請求項3に記載の水処理カートリッジ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの活性な水処理化学物質が、水に接触すると二酸化塩素を放出する特性を有する化学組成物を含む、請求項1に記載の水処理カートリッジ。
【請求項6】
前記水処理媒体が不活性な充填材をさらに含む、請求項1に記載の水処理カートリッジ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−501703(P2007−501703A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523398(P2006−523398)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026294
【国際公開番号】WO2005/016832
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(506047916)
【氏名又は名称原語表記】KNAPP, Ian, M.
【出願人】(506047927)
【氏名又は名称原語表記】MORRIS, David, B.
【Fターム(参考)】