説明

水処理システム

【課題】薬剤の過剰な供給を抑制することができる水処理システムを提供する。
【解決手段】冷却塔110と、循環水ラインL110と、薬剤を循環水ラインL110に供給する定量吐出ポンプ手段152と、循環水W110の溶存薬剤量を検出する薬剤量検出手段134と、(i)循環水W110の溶存薬剤量が第1溶存薬剤量C1未満の場合には、定量吐出ポンプ手段152の吐出回数を最大吐出回数Smaxに設定する処理、(ii)循環水W110の溶存薬剤量が第1溶存薬剤量C1以上且つ第2溶存薬剤量C2未満の場合には、定量吐出ポンプ手段152の吐出回数を最大吐出回数Smaxよりも少なく且つ最小吐出回数Sminよりも多い回数に設定する処理、及び(iii)循環水W110の溶存薬剤量が第2溶存薬剤量C2以上の場合には、定量吐出ポンプ手段152による薬剤の供給を停止させる処理、を実行する薬剤供給制御手段101と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔と被冷却装置との間で循環水を循環させる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業ビル、工業プラント等においては、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置(冷却負荷装置)を冷却するために、冷却水が用いられる。冷却水は、その節約を図る観点から、冷却塔で冷却しながら循環して用いられる(以下、循環する冷却水を適宜に「循環水」という)。循環水は、循環水ライン(循環水供給ライン及び循環水回収ライン)を介して、冷却塔と被冷却装置との間を循環する。
【0003】
水処理システムにおいて、循環水を継続的に循環させると、循環水の水質が徐々に悪化し、冷却能力を低下させる種々の水トラブルが発生する。そこで、循環水の水質を改善するために、スライムコントロール剤、防食剤、スケール防止剤等の薬剤を主に循環水ラインに供給(以下、適宜に「薬注」ともいう)することが行われている。
【0004】
循環水ラインへの薬剤の供給方式として、薬剤の供給と停止を所定時間毎に交互に繰り返す、いわゆるタイマ薬注方式が知られている。また、循環水ラインを流通する循環水のORP(酸化還元電位)値をセンサで測定し、酸化型のスライムコントロール剤からなる薬剤の供給量を自動的に調整する方式が知られている。この方式は、循環水のORP値が薬注開始水質に達したら薬剤の供給を開始し、その後、循環水のORP値が薬注停止水質に達した時点で薬剤の供給を停止するというものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−254083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したタイマ薬注方式では、一定以上の薬剤濃度を確保するためには、薬剤を過剰に供給する必要があるため、ユーザの経済的な負担が大きくなる。一方、循環水のORP値に応じて薬剤の供給量を自動的に調整する方式では、タイマ薬注方式に比べて薬剤の過剰な供給を抑制できる。しかし、一般に循環水ラインの経路は長いため、その経路の一部に薬剤を供給しても、すぐにORP値に反映されることはない。このため、ORP値が所定値以上になるまで連続して薬剤を供給すると、結果的に薬剤の供給が過剰となる場合がある。
【0007】
従って、本発明は、薬剤の過剰な供給を抑制することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被冷却装置へ供給する循環水を冷却する冷却塔と、循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、薬剤を設定された単位時間当たりの吐出回数に基づいて前記循環水ラインに供給する定量吐出ポンプ手段と、前記循環水ラインを流通する循環水に含まれる薬剤の量を溶存薬剤量として検出する薬剤量検出手段と、(i)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が、薬剤の単位時間当たりの吐出回数を増加させる溶存薬剤量の下限閾値である第1溶存薬剤量を下回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させる処理、(ii)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第1溶存薬剤量を上回り、且つ薬剤の単位時間当たりの吐出回数を減少させる溶存薬剤量の上限閾値である第2溶存薬剤量を下回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数よりも少なく且つ最小吐出回数よりも多い回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させる処理、及び(iii)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第2溶存薬剤量を上回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段による薬剤の供給を停止させる処理、を実行する薬剤供給制御手段と、を備える水処理システムに関する。
【0009】
また、前記水処理システムにおいて、前記薬剤供給制御手段は、前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第1溶存薬剤量と第2溶存薬剤量との略中間値を上回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数と最小吐出回数との略中間となる回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、薬剤の過剰な供給を抑制することができる水処理システムを提供することができる。その結果、循環水中の薬剤濃度を適正範囲に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の水処理システムを示す概略構成図である。
【図2】実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【図3】水処理システム100の制御部102が薬剤供給装置150から循環水ラインL110への薬剤の供給を制御する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】水処理システム100の制御部102がブロー処理を実行する場合の全体的な処理手順を示すフローチャートである。
【図5】水処理システム100の制御部102が第1ブロー処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】水処理システム100の制御部102が第2ブロー処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の水処理システム100の概略構成について説明する。図1は、本実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態の水処理システム100は、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置131を冷却するために、循環水W110(冷却水)を循環させるシステムである。循環水W110は、その節約を図る観点から、冷却塔110で冷却しながら循環して用いられる。本実施形態における冷却塔110は、いわゆる開放式冷却塔である。
【0014】
本実施形態の水処理システム100は、主な構成として、冷却塔110と、被冷却装置131と、電気伝導率測定装置133と、薬剤量検出手段としての残留塩素測定装置134と、薬剤供給装置150と、システム制御装置101と、を備える。また、水処理システム100は、循環水ラインL110と、補給水ラインL120と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1では、電気的な接続の経路を破線で示している。
【0015】
冷却塔110は、被冷却装置131を冷却するための循環水W110を冷却する設備である。冷却塔110は、塔本体111と、散水部112と、貯留部116と、ルーバ118と、ファン120と、上部開口部121と、ファン駆動部122と、を備える。
【0016】
塔本体111は、冷却塔110の外郭を形成する筐体である。塔本体111の上部には、複数の散水部112、ファン120、上部開口部121及びファン駆動部122が設けられている。塔本体111の下部には、貯留部116が設けられている。塔本体111の側部には、ルーバ118が設けられている。
【0017】
散水部112は、被冷却装置131を冷却する循環水W110を冷却するために、循環水W110を散布する部位である。散水部112は、循環水回収ラインL112(後述)を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を、塔本体111の内部に散布(散水)する。
【0018】
散水部112は、上部水槽113と、散水口114とを備える。上部水槽113には、循環水回収ラインL112(循環水ラインL110)が接続されている。上部水槽113は、循環水回収ラインL112を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を貯留する。散水口114は、上部水槽113に貯留された循環水W110を散布するために上部水槽113の下側に形成されたノズルからなる。
【0019】
貯留部116は、散水部112から散布された循環水W110を貯留する部位である。貯留部116は、塔本体111の下部に設けられている。散水部112から下方に向けて散布された循環水W110は、塔本体111の内部を落下する過程において、温度の低い外気E1(後述)と熱交換することにより冷却される。貯留部116の底部には、循環水ラインL110の循環水供給ラインL111(後述)が接続される。貯留部116に貯留された循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して被冷却装置131へ供給される。
【0020】
ルーバ118は、塔本体111の内部へ外気(エア)E1を導入するための通気孔である。塔本体111の外部の外気E1は、ルーバ118を介して塔本体111の内部へ導入される。
【0021】
上部開口部121は、塔本体111の上部に形成された開口部である。上部開口部121は、塔本体111の内部に位置する外気E1を塔本体111の外部に排出する。上部開口部121から排出されたエアを「排気E2」ともいう。
【0022】
ファン120は、上部開口部121に配置されている。ファン120は、ファン駆動部122の回転軸(符号略)と連結されている。ファン120は、回転することにより内部に負圧を発生させ、ルーバ118から塔本体111の内部へ外気E1を導入すると共に、塔本体111の内部に導入された外気E1を、上部開口部121を介して塔本体111の外部に排出させる。
【0023】
ファン駆動部122は、ファン120を回転させる駆動源である。ファン駆動部122は、モータ(不図示)により構成される。ファン駆動部122は、ファン120の上方に配置されている。ファン駆動部122は、システム制御装置101と電気的に接続されている。ファン駆動部122の運転(駆動及び停止)、回転速度の調整(変速)等は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0024】
循環水ラインL110は、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるラインである。循環水ラインL110は、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110から被冷却装置131へ供給する循環水供給ラインL111と、循環水W110を被冷却装置131から冷却塔110の散水部112へ回収する循環水回収ラインL112と、から構成される。
【0025】
循環水供給ラインL111は、冷却塔110の貯留部116と被冷却装置131との間を接続するラインである。循環水供給ラインL111は、貯留部116に貯留された循環水W110を被冷却装置131に供給することができる。
【0026】
循環水供給ラインL111の途中には、循環水ポンプ132が接続されている。循環水ポンプ132は、循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)の上流側から下流側へ向けて、循環水W110を送り出すことができる。循環水ポンプ132は、システム制御装置101と電気的に接続されている。循環水ポンプ132の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0027】
循環水供給ラインL111の接続部J112には、測定ラインL113の上流側の端部が接続されている。また、循環水供給ラインL111の接続部J114には、第2温度センサ136が接続されている。第2温度センサ136は、冷却塔110の貯留部116から送り出された循環水W110の温度(以下、「出口温度TP2」という)を測定する温度測定装置である。第2温度センサ136は、システム制御装置101と電気的に接続されている。第2温度センサ136で測定された循環水W110の出口温度TP2は、システム制御装置101へ送信される。
【0028】
循環水回収ラインL112は、被冷却装置131と冷却塔110の散水部112との間を接続するラインである。循環水回収ラインL112は、被冷却装置131において熱交換により加温された循環水W110を、冷却塔110の散水部112へ回収することができる。循環水回収ラインL112の下流側は、分岐部J111において複数のラインに分岐している。分岐したラインは、複数の散水部112にそれぞれ接続されている。
【0029】
また、循環水回収ラインL112の接続部J115には、第1温度センサ135が接続されている。第1温度センサ135は、冷却塔110の散水部112へ回収される循環水W110の温度(以下、「入口温度TP1」という)を測定する温度測定装置である。第1温度センサ135は、システム制御装置101と電気的に接続されている。第1温度センサ135で測定された循環水W110の入口温度TP1は、システム制御装置101へ送信される。
【0030】
被冷却装置131は、循環水W110による冷却が必要な熱交換器等の各種装置である。被冷却装置131は、例えば、各種の化学プラントのターボ冷凍機や吸収冷凍機、建築物の空調用冷却機、食品工場の冷水製造機や真空冷却機等である。被冷却装置131は、内部に循環水流路(不図示)を備える。
【0031】
被冷却装置131において、循環水流路の一方の端部には、循環水供給ラインL111の下流側の端部が接続されている。また、被冷却装置131において、循環水流路の他方の端部には、循環水回収ラインL112の上流側の端部が接続されている。従って、循環水流路は、循環水供給ラインL111及び循環水回収ラインL112と共に、冷却塔110の塔本体111と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるための循環経路を形成する。
【0032】
電気伝導率測定装置133は、循環水W110の電気伝導率を測定する装置である。電気伝導率測定装置133は、測定ラインL113を介して、接続部J112において循環水ラインL110に接続されている。また、電気伝導率測定装置133は、システム制御装置101と電気的に接続されている。電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率は、システム制御装置101へ検出信号として送信される。電気伝導率測定装置133は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で電気伝導率を測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0033】
残留塩素測定装置134は、循環水W110における残留塩素濃度、すなわち残留塩素量を測定することにより、後述する薬剤(塩素系のスライムコントロール剤)の溶存薬剤量を検出する薬剤量検出手段である。後述するように、本実施形態の水処理システム100において、薬剤の供給量は、残留塩素測定装置134で測定された循環水W110の残留塩素量に基づいて制御される。
【0034】
なお、残留塩素測定装置134は、測定ラインL113から循環水W110の一部を採取し、採取した循環水W110に呈色試薬を添加して反応させ、この反応による循環水W110の発色強度を測定することで循環水W110の残留塩素濃度を測定するように構成されている。このような残留塩素測定装置134は、例えば、特開2007−93398号公報等に記載されたものであり、既に知られたものである。
【0035】
残留塩素測定装置134は、測定ラインL113を介して、接続部J112において循環水ラインL110に接続されている。また、残留塩素測定装置134は、システム制御装置101と電気的に接続されている。残留塩素測定装置134で測定された残留塩素量は、システム制御装置101へ検出信号として送信される。残留塩素測定装置134は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で残留塩素量を測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0036】
薬剤供給装置150は、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110に薬剤を供給する設備である。薬剤供給装置150は、薬剤タンク151と、定量吐出ポンプ手段としての薬剤供給ポンプ152と、を備える。
【0037】
薬剤タンク151は、循環水W110の水質を改善するための薬剤として塩素系のスライムコントロール剤を貯留する容器である。スライムコントロール剤は、循環水W110中での菌類や藻類等の微生物の繁殖を抑制するための薬剤である。塩素系のスライムコントロール剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等が使用される。
【0038】
薬剤供給ポンプ152は、薬剤タンク151に貯留された薬剤を、薬剤供給ラインL130を介して、冷却塔110の貯留部116へ送り出す設備である。薬剤供給ポンプ152としては、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ等の定量吐出ポンプを用いることができる。
【0039】
薬剤供給ポンプ152は、電磁駆動力によりダイヤフラム等の弁体が往復運動することにより、薬剤を断続的に薬剤供給ラインL130(後述)に供給することができる。
【0040】
薬剤供給ポンプ152は、ショット当たりの吐出量(mL/ショット)を所定値に設定し、且つ単位時間当たりの吐出回数(ショット数/分)を増減することにより、薬剤の吐出量(mL/分)を制御することができる。単位時間当たりの吐出回数(以下、単に「吐出回数」という)は、最小吐出回数Sminから最大吐出回数Smaxまでの間で段階的に設定することができる。ショット数とは、弁体が往復運動する回数をいう。弁体の1往復が1ショットに相当する。
【0041】
薬剤供給ポンプ152は、薬剤供給ラインL130を介して、冷却塔110の貯留部116と接続されている。薬剤タンク151に貯留された薬剤は、薬剤供給ラインL130を介して、冷却塔110の貯留部116へ送り出される。
【0042】
薬剤供給ポンプ152は、システム制御装置101と電気的に接続されている。薬剤供給ポンプ152の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。後述するように、システム制御装置101は、設定した吐出回数(ショット数/分)に対応する駆動信号を薬剤供給ポンプ152に出力する。この駆動信号に基づいて、薬剤供給ポンプ152における薬剤の吐出量(mL/分)が制御される。
【0043】
一方、冷却塔110には、補給水ラインL120が接続されている。補給水ラインL120は、補給水W121を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。補給水ラインL120の上流側は、水道水や工業用水等の原水W120の供給源(図示せず)に接続された第1補給水ラインL121となっている。一方、補給水ラインL120の下流側は、接続部J121において、第2補給水ラインL122及び第3補給水ラインL123に分岐している。第1補給水ラインL121には、上流側から順に、原水ポンプ141及び原水バルブ142が設けられている。
【0044】
原水ポンプ141は、補給水ラインL120の上流側から下流側へ向けて、原水W120を送り出すことができる。原水ポンプ141は、システム制御装置101と電気的に接続されている。原水ポンプ141の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0045】
原水バルブ142は、原水ポンプ141の吐出側において、補給水ラインL120を開閉することができる。原水バルブ142は、システム制御装置101と電気的に接続されている(図示せず)。原水バルブ142における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0046】
第2補給水ラインL122の下流側の端部は、冷却塔110の塔本体111に接続されている。第2補給水ラインL122の途中には、補給水バルブ143が設けられている。補給水バルブ143は、第2補給水ラインL122を開閉することにより、貯留部116に対して補給水W121を強制的に供給する給水設備である。補給水バルブ143は、システム制御装置101と電気的に接続されている。補給水バルブ143における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0047】
第3補給水ラインL123の下流側の端部は、冷却塔110の塔本体111に接続されている。第3補給水ラインL123の下流側の端部には、給水栓144が設けられている。給水栓144は、貯留部116に貯留される循環水W110の水位(すなわち、水量)を管理するボールタップ式の給水設備である。給水栓144において、貯留部116に貯留される循環水W110の水位が低下すると、ボールタップが作動し、第3補給水ラインL123を流通する補給水W121が貯留部116に補給される。
【0048】
排水ラインL140は、貯留部116の底部に接続され、下方に延びている。排水ラインL140は、後述する第1及び第2ブロー処理において、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110を、水処理システム100の系外に強制的に排出するラインである。排水ラインL140の途中には、排水バルブ145が設けられている。排水バルブ145は、排水ラインL140を開閉することができる。排水バルブ145は、システム制御装置101と電気的に接続されている。排水バルブ145における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0049】
なお、冷却塔110には、上述した循環水ラインL110、補給水ラインL120、薬剤供給ラインL130及び排水ラインL140のほかに、オーバーフローラインL150が接続されている。オーバーフローラインL150は、補給水バルブ143を開放して補給水W121を強制的に供給した場合に、冷却塔110の貯留部116から溢れた循環水W110を、水処理システム100の系外に排出するラインである。すなわち、オーバーフローラインL150は、後述する第1及び第2ブロー処理において、排水バルブ145の開閉制御に替えて、補給水バルブ143を開閉制御することにより、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110を、水処理システム100の系外に強制的に排出するラインとして機能する。
【0050】
次に、図2を参照して、本実施形態の水処理システム100の制御に係る機能について説明する。図2は、本実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【0051】
システム制御装置101は、本実施形態の水処理システム100における各部の動作を制御する。図2に示すように、システム制御装置101は、例えば、ファン駆動部122、循環水ポンプ132、原水ポンプ141、補給水バルブ143、排水バルブ145及び薬剤供給ポンプ152に電気的に接続される。
【0052】
また、システム制御装置101は、水処理システム100の各測定装置と電気的に接続され、これら測定装置から測定情報を受信する。例えば、システム制御装置101は、電気伝導率測定装置133と電気的に接続され、電気伝導率測定装置133において測定された循環水W110の電気伝導率ECを検出信号として受信する。また、システム制御装置101は、残留塩素測定装置134と電気的に接続され、残留塩素測定装置134において測定された循環水W110の残留塩素量Cを検出信号として受信する。
【0053】
また、システム制御装置101は、第1温度センサ135及び第2温度センサ136と電気的に接続されている。システム制御装置101は、第1温度センサ135で測定された循環水W110の入口温度TP1及び第2温度センサ136で測定された循環水W110の出口温度TP2を検出信号として受信する。
【0054】
システム制御装置101において、受信した電気伝導率EC、残留塩素量C、循環水W110の入口温度TP1及び出口温度TP2は、メモリ103(後述)に記憶される。また、電気伝導率EC、残留塩素量C、入口温度TP1及び出口温度TP2は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で最新の値に順次更新される。このうち、電気伝導率ECについては、後述する第3時間帯T3の計時を開始したときの値(EC1)及び計時が終了したときの値(EC2)がメモリ103に保持される。
【0055】
システム制御装置101は、制御部102と、メモリ103と、を備える。制御部102は、水処理システム100の全体を制御する機能に加えて、後述する薬剤供給処理及びブロー処理を実行する手段として、計時部161と、薬剤供給制御手段としての薬剤供給制御部162と、濃縮度判定部163と、ブロー処理制御部164と、を備える。制御部102において、水処理システム100の全体を制御する機能、及び計時部161、薬剤供給制御部162、濃縮度判定部163及びブロー処理制御部164の機能は、CPU及び内部メモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により実現される。以下、計時部161、薬剤供給制御部162、濃縮度判定部163及びブロー処理制御部164の機能について説明する。
【0056】
計時部161は、後述するブロー処理において、第1時間帯T1、第2時間帯T2及び第3時間帯T3を計時する。第1時間帯T1は、電気伝導率ECの変化を観察する際の待機時間である。第2時間帯T2は、ブロー処理の実施時間である。第3時間帯T3は、ブロー処理を実施しない待機時間である。
【0057】
薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された残留塩素量Cが、薬剤の吐出回数を増加させる残留塩素量の下限閾値である第1残留塩素量C1を上回る場合には、薬剤供給ポンプ152から供給される薬剤の吐出回数Sを最大吐出回数Smax(100%)に設定する。そして、薬剤供給制御部162は、設定した最大吐出回数Smaxに対応する駆動信号を薬剤供給ポンプ152に送信する。これにより、薬剤供給ポンプ152は、最大吐出回数Smaxに対応した吐出量で循環水W110に薬剤を供給する。
【0058】
また、薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された残留塩素量Cが、第1残留塩素量C1と薬剤の吐出回数を減少させる残留塩素量の上限閾値である第2残留塩素量C2(>C1)との中間値を上回る場合には、薬剤供給ポンプ152から供給される薬剤の吐出回数Sを最大吐出回数Smaxと最小吐出回数Sminとの中間となる中間吐出回数Smid(50%)に設定する。そして、薬剤供給制御部162は、設定した中間吐出回数Smidに対応する駆動信号を薬剤供給ポンプ152に送信する。これにより、薬剤供給ポンプ152は、中間吐出回数Smidに対応した吐出量で循環水W110に薬剤を供給する。
【0059】
なお、第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値は、本実施形態のように、第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値(50%)であってもよいし、この中間値を基準にプラス側及びマイナス側にそれぞれ所定の範囲で設定した略中間値(例えば、45%〜55%)であってもよい。
【0060】
また、薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された残留塩素量Cが第2残留塩素量C2以上の場合には、薬剤供給ポンプ152から供給される薬剤の吐出回数Sを吐出回数Szero(0%)に設定する。そして、薬剤供給制御部162は、設定した吐出回数Szeroに対応する駆動信号を薬剤供給ポンプ152に送信する。これにより、薬剤供給ポンプ152は、循環水W110への薬剤の供給を停止する。
【0061】
濃縮度判定部163は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECが所定の閾値以上であるか否かを判定する。所定の閾値としては、例えば、循環水W110の濃縮度が高まることにより、被冷却装置131でスケール付着や腐食等の障害が発生するのを防止できる上限の電気伝導率が設定される。
【0062】
ブロー処理制御部164は、冷却塔110における循環水W110の入口温度TP1と出口温度TP2との温度差、及び濃縮度判定部163の判定結果に基づいて、第1ブロー処理及び第2ブロー処理の切り替えを制御する。第1ブロー処理とは、通常のブロー処理である。第2ブロー処理とは、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生した場合のバックアップのためのブロー処理である。これらのブロー処理については後述する。
【0063】
メモリ103は、水処理システム100の制御に必要な制御プログラムや各種データ等を記憶する。具体的には、メモリ103には、水処理システム100の制御に必要な各種機能を動作させる制御プログラム、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率EC、残留塩素測定装置134で測定された残留塩素量C、各種閾値や各種計算値等が、それぞれに割り当てられた所定の記憶エリアに記憶される。
【0064】
次に、本実施形態の水処理システム100において、薬剤供給装置150から冷却塔110の貯留部116へ薬剤を供給する場合の動作を、図3を参照しながら説明する。図3は、水処理システム100の制御部102が、薬剤供給装置150から循環水ラインL110への薬剤の供給を制御する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートの制御は、メモリ103に記憶された制御プログラムに基づいて、制御部102により実行される。また、図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム100の運転中において、繰り返し実行される。
【0065】
図3に示すように、ステップST101において、薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された循環水W110の残留塩素量Cを取得する。
ステップST102において、薬剤供給制御部162は、取得した残留塩素量Cが、薬剤の吐出回数を増加させる残留塩素量の下限閾値である第1残留塩素量C1以下か否かを判定する。このステップST102において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量C≦第1残留塩素量C1である(YES)と判定した場合には、処理はステップST103へ移行する。また、ステップST102において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量C>第1残留塩素量C1である(NO)と判定した場合には、本フローチャートの処理は終了する(ステップST101に戻る)。
【0066】
ステップST103(ステップST102:YES判定)において、薬剤供給制御部162は、薬剤供給ポンプ152の吐出回数Sを最大吐出回数Smax(100%)に設定する。
ステップST104において、薬剤供給制御部162は、設定した最大吐出回数Smaxにより薬剤供給ポンプ152を駆動する。これにより、冷却塔110の貯留部116には、薬剤供給ポンプ152から最大吐出量で薬剤が供給される。
【0067】
ステップST105において、薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された循環水W110の残留塩素量Cを取得する。
ステップST106において、薬剤供給制御部162は、取得した残留塩素量Cが、第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値以上か否かを判定する。このステップST106において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量Cは第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値以上である(YES)と判定した場合には、処理はステップST107へ移行する。また、ステップST106において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量Cは第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値未満である(NO)と判定した場合には、処理はステップST104に戻る(最大吐出量での薬剤供給を継続する)。
【0068】
ステップST107(ステップST106:YES判定)において、薬剤供給制御部162は、薬剤供給ポンプ152の吐出回数Sを中間吐出回数Smid(50%)に設定する。
ステップST108において、薬剤供給制御部162は、設定した中間吐出回数Smidにより薬剤供給ポンプ152を駆動する。これにより、冷却塔110の貯留部116には、薬剤供給ポンプ152から最大吐出量及び最小吐出量の中間の吐出量で薬剤が供給される。
【0069】
ステップST109において、薬剤供給制御部162は、残留塩素測定装置134で検出された循環水W110の残留塩素量Cを取得する。
ステップST110において、薬剤供給制御部162は、取得した残留塩素量Cが、第2残留塩素量C2以上か否かを判定する。このステップST110において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量C≧第2残留塩素量C2である(YES)と判定した場合には、処理はステップST111へ移行する。また、ステップST110において、薬剤供給制御部162が、残留塩素量C<第2残留塩素量C2である(NO)と判定した場合には、処理はステップST108に戻る(中間吐出量での薬剤供給を継続する)。
【0070】
ステップST111(ステップST110:YES判定)において、薬剤供給制御部162は、薬剤供給ポンプ152の吐出回数Sを吐出回数Szero(0%)に設定する。これにより、薬剤供給ポンプ152の運転が停止する。この薬剤供給ポンプ152の停止は、残留塩素量Cが再び第1残留塩素量C1以下となるまで(すなわち、ステップST101でYES判定となるまで)継続される。
【0071】
次に、本実施形態の水処理システム100において、循環水W110のブロー処理を実行する場合の動作について説明する。まず、ブロー処理の概略について説明する。
【0072】
循環水W110は、冷却塔110で冷却される際にその一部が蒸発する。水処理システム100の運転中において、冷却塔110では、循環水W110の蒸発が繰り返される。このため、循環水W110の濃縮度は、徐々に高くなる。循環水W110の濃縮度が高くなると、循環水W110に含まれる腐食性イオンやスケール発生因子等の不純物の濃縮度も高くなる。循環水W110の濃縮度が所定の閾値以上に高くなると、被冷却装置131においてスケール付着や腐食等の障害が発生する可能性が高くなる。
【0073】
これを防止するため、水処理システム100の運転中は、循環水W110の濃縮度を常に監視する必要がある。通常、循環水W110の濃縮度が高くなると、電気伝導率も高くなる。従って、循環水W110の電気伝導率ECを定期的に測定することにより、循環水W110の濃縮度を間接的に判定することができる。ブロー処理制御部164は、濃縮度判定部163において、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECが所定の閾値以上であると判定された場合に、後述するブロー処理を実行する。
【0074】
ブロー処理では、循環水W110の排水及び補給を、同時又は連続して実施する。循環水W110を排水する場合、次のいずれかの方法によって行われる。
(強制排水ブロー)
ブロー処理制御部164は、排水バルブ145を開状態として、冷却塔110の貯留部116に貯留された循環水W110の一部を排水ラインL140から外部に排出する。循環水W110の一部が排出されると、貯留部116の水位が低下するため、給水栓144のボールタップが作動し、新たな補給水W121が第3補給水ラインL123を通じて補給される。なお、この強制排水ブローを実施する場合には、補給水バルブ143は閉状態のままとし、開閉操作は行わない。
【0075】
(強制補水ブロー)
ブロー処理制御部165は、補給水バルブ143を開状態として、第2補給水ラインL122を通じて新たな補給水W121を貯留部116に強制的に補給する。補給水W121が補給されると、貯留部116の水位が上昇するため、溢れた循環水W110がオーバーフローラインL150から外部に排出される。なお、この強制補水ブローを実施する場合には、排水バルブ145は閉状態のままとし、開閉操作は行わない。
【0076】
ブロー処理時に新たに補給される補給水W121は、濃縮の進んだ循環水W110よりも電気伝導率が低いため、循環水W110の電気伝導率を全体的に下げることができる。上記ブロー処理は、水処理システム100の運転中に定期的に実施される通常のブロー処理である。本実施形態では、このブロー処理を「第1ブロー処理」という。
【0077】
一方、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生した場合(又はシステム制御装置101との間で断線が発生した場合)には、正しい電気伝導率ECが検出されなくなり、検出される値が常に零又は固定値になることが考えられる。このような場合には、循環水W110の濃縮度が高いにもかかわらずブロー処理が実施されないため、被冷却装置131に不具合が発生するおそれがある。
【0078】
そこで、本実施形態の水処理システム100では、循環水W110の入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値以上ある条件下で、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECが所定値以上変化していない場合には、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生したと判断し、循環水ポンプ132が運転されている間、間欠的なブロー処理を実行するようにしている。このようなブロー処理は、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生した場合に実施されるバックアップのためのブロー処理である。本実施形態では、このブロー処理を「第2ブロー処理」という。
【0079】
以下、循環水W110のブロー処理を実行する場合の動作を、図4〜図6を参照しながら説明する。図4は、水処理システム100の制御部102がブロー処理を実行する場合の全体的な処理手順を示すフローチャートである。図5は、水処理システム100の制御部102が第1ブロー処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図6は、水処理システム100の制御部102が第2ブロー処理を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【0080】
まず、水処理システム100の制御部102がブロー処理を実行する場合の全体的な処理手順を、図4を参照しながら説明する。図4に示すフローチャートの処理は、水処理システム100の運転中において、繰り返し実行される。
【0081】
ステップST201において、ブロー処理制御部164は、循環水ポンプ132の運転中で且つブロー処理の停止中か否かを判定する。ブロー処理制御部164は、補給水バルブ143及び排水バルブ145が共に閉状態の場合には、ブロー処理の停止中と判断し、補給水バルブ143及び排水バルブ145のいずれかが開状態の場合には、ブロー処理の実行中と判断する。このステップST201において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中で且つブロー処理の停止中(YES)と判定した場合には、処理はステップST202へ移行する。また、ステップST201において、ブロー処理制御部164が循環水ポンプ132の運転中で且つブロー処理の停止中でない(NO)と判定した場合には、処理は再びステップST201に戻る。
【0082】
ステップST202(ステップST201:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、第1温度センサ135から循環水W110の入口温度TP1を、また第2温度センサ136から循環水W110の出口温度TP2を取得する。
【0083】
ステップST203において、ブロー処理制御部164は、入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値以上か否かを判定する。このステップST203において、ブロー処理制御部164が、入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値以上(YES)と判定した場合には、処理はステップST204へ移行する。また、ステップST203において、ブロー処理制御部164が入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値未満(NO)と判定した場合には、処理は再びステップST201に戻る。
【0084】
このように、入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値以上ある場合には、循環水W110の蒸発が進み、濃縮度が高くなっていると考えられるため、ブロー処理の実施を判定するステップへ移行する。一方、入口温度TP1と出口温度TP2との温度差が所定値未満の場合には、循環水W110の濃縮度が比較的低いと考えられるため、ブロー処理の実施を判定するステップへは移行せずに、濃縮度が高くなっていると考えられる状態になるまで待機する。
【0085】
ステップST204(ステップST203:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECを、電気伝導率EC1として取得する。
ステップST205において、ブロー処理制御部164は、計時部161による第3時間帯T3の計時を開始させる。
【0086】
ステップST206において、ブロー処理制御部164は、計時部161における第3時間帯T3の計時が終了したか否かを判定する。このステップST206において、ブロー処理制御部164が、第3時間帯T3の計時が終了した(YES)と判定した場合には、処理はステップST207へ移行する。また、ステップST206において、ブロー処理制御部164が、第3時間帯T3の計時が終了していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST206へ戻る。
【0087】
ステップST207(ステップST206:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECを、電気伝導率EC2として取得する。
【0088】
ステップST208において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率EC1とEC2との差が所定値以上(EC2−EC1≧所定値)か否かを判定する。このステップST208において、ブロー処理制御部164が、電気伝導率EC1とEC2との差は所定値以上(YES)と判定した場合には、処理はステップST209へ移行する。また、ステップST208において、ブロー処理制御部164が、電気伝導率EC1とEC2との差は所定値未満(NO)と判定した場合には、処理はステップST210へ移行する。
【0089】
このように、電気伝導率EC1とEC2との差が所定値以上であれば、循環水W110の濃縮の進行を反映して電気伝導率測定装置133が正常に動作していると考えられるため、通常のブロー処理を実行するステップへ移行する。一方、電気伝導率EC1とEC2との差が所定値未満であれば、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生して、例えば、検出された値が常に零又は固定値になっていると考えられるため、バックアップのためのブロー処理を実行するステップへ移行する。
【0090】
ステップST209(ステップST208:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、後述する第1ブロー処理を実行する。一方、ステップST210(ステップST208:NO判定)において、ブロー処理制御部164は、後述する第2ブロー処理を実行する。
【0091】
次に、水処理システム100の制御部102が第1ブロー処理を実行する場合の処理手順を、図5を参照しながら説明する。図5に示すフローチャートの処理は、図4のステップST209におけるサブルーチンとして実行される。
【0092】
ステップST301において、ブロー処理制御部164は、循環水ポンプ132の運転中か否かを判定する。このステップST301において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中(YES)と判定した場合には、処理はステップST302へ移行する。また、ステップST301において、ブロー処理制御部164が循環水ポンプ132の運転中でない(NO)と判定した場合には、本フローチャートの処理は終了する(ステップST201に戻る)。
ステップST302(ステップST301:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECを、電気伝導率EC3として取得する。
【0093】
ステップST303において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率EC3とブロー処理を開始する上限閾値である電気伝導率ECth1とを比較し、電気伝導率EC3が電気伝導率ECth1以上か否かを判定する。このステップST303において、ブロー処理制御部164が、電気伝導率EC3は電気伝導率ECth1以上(YES)と判定した場合には、処理はステップST304へ移行する。また、ステップST303において、ブロー処理制御部164が電気伝導率EC3は電気伝導率ECth1未満(NO)であると判定した場合には、本フローチャートの処理は終了する(ステップST201に戻る)。
【0094】
ステップST304(ステップST303:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、ブロー処理(循環水W110の排水及び補給)を開始する。
ステップST305において、ブロー処理制御部164は、循環水ポンプ132の運転中か否かを判定する。このステップST305において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中(YES)と判定した場合には、処理はステップST306へ移行する。また、ステップST305において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中でない(NO)と判定した場合には、ステップST308へ移行する。
【0095】
循環水ポンプ132の運転が停止すると、循環水W110が循環しなくなる。このため、ブロー処理を開始した後に循環水ポンプ132の運転が停止した場合には、ステップST108へ移行して、ブロー処理を終了する。
ステップST306(ステップST305:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECを、電気伝導率EC4として取得する。
【0096】
ステップST307において、ブロー処理制御部164は、電気伝導率EC4とブロー処理を終了する下限閾値である電気伝導率ECth2とを比較し、電気伝導率EC4が電気伝導率ECth2未満か否かを判定する。このステップST307において、ブロー処理制御部164が、電気伝導率EC4は電気伝導率ECth2未満(YES)であると判定した場合には、処理はステップST308へ移行する。また、ステップST307において、ブロー処理制御部164が、電気伝導率EC4は電気伝導率ECth2以上(NO)であると判定した場合には、処理はステップST304へ戻る。
【0097】
このように、ブロー処理の開始後に取得した電気伝導率EC4が電気伝導率ECth2未満の場合には、循環水W110の濃縮度が十分に低くなったと考えられるため、ブロー処理を終了するステップへ移行する。一方、電気伝導率EC4は電気伝導率ECth2以上の場合には、循環水W110の濃縮度が未だ高いと考えられるため、ブロー処理を継続するステップへ移行する。
【0098】
ステップST308(ステップST305:NO判定又はステップST307:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、ブロー処理を終了する。これにより、本フローチャートの処理は終了する(ステップST201に戻る)。
【0099】
次に、水処理システム100の制御部102が第2ブロー処理を実行する場合の処理手順を、図6を参照しながら説明する。図6に示すフローチャートの処理は、図4のステップST210におけるサブルーチンとして実行される。
【0100】
ステップST401において、ブロー処理制御部164は、循環水ポンプ132の運転中か否かを判定する。このステップST401において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中(YES)と判定した場合には、処理はステップST402へ移行する。また、ステップST401において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST405へ移行する。
【0101】
ステップST402(ステップST401:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、ブロー処理(循環水W110の排水及び補給)を開始する。
ステップST403において、ブロー処理制御部164は、計時部161による第4時間帯T4の計時を開始させる。
【0102】
ステップST404において、ブロー処理制御部164は、計時部161における第4時間帯T4の計時が終了したか否かを判定する。このステップST404において、ブロー処理制御部164が、第4時間帯T4の計時が終了した(YES)と判定した場合には、処理はステップST406へ移行する。また、ステップST404において、ブロー処理制御部164が、第4時間帯T4の計時が終了していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST401へ戻る。
【0103】
一方、ステップST405(ステップST401:NO判定)において、ブロー処理制御部164は、計時部161による第4時間帯T4の計時及びブロー処理を終了した後、本フローチャートの処理は終了する(ステップST201に戻る)。
【0104】
上述したように、循環水ポンプ132の運転が停止すると、循環水W110が循環しなくなる。このため、ブロー処理を開始した後に循環水ポンプ132の運転が停止した場合には、ステップST405へ移行して、第4時間帯T4の計時及びブロー処理を終了する。
ステップST406(ステップST404:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、ブロー処理を終了する。
【0105】
ステップST407において、ブロー処理制御部164は、循環水ポンプ132の運転中か否かを判定する。このステップST407において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中(YES)と判定した場合には、処理はステップST408へ移行する。また、ステップST407において、ブロー処理制御部164が、循環水ポンプ132の運転中でない(NO)と判定した場合には、処理はステップST410へ移行する。
【0106】
ステップST408(ステップST407:YES判定)において、ブロー処理制御部164は、計時部161による第5時間帯T5の計時を開始させる。
ステップST409において、ブロー処理制御部164は、計時部161における第5時間帯T5の計時が終了したか否かを判定する。このステップST409において、ブロー処理制御部164が、第5時間帯T5の計時が終了した(YES)と判定した場合には、処理はステップST401へ戻る。また、ステップST409において、ブロー処理制御部164が、第5時間帯T5の計時が終了していない(NO)と判定した場合には、処理はステップST406へ戻る。
【0107】
ステップST410(ステップST407:NO判定)において、ブロー処理制御部164は、計時部161による第5時間帯T5の計時を終了し、本フローチャートの処理は終了する(ステップST201に戻る)。
【0108】
上述したバックアップのための第2ブロー処理では、第4時間帯T4において、ブロー処理が実行される。また、第5時間帯T5において、ブロー処理の実行が停止される。このように、第2ブロー処理においては、循環水ポンプ132の運転が停止するまで、間欠的にブロー処理が実施される。
【0109】
上述した本実施形態の水処理システム100によれば、例えば、次のような効果を奏する。
本実施形態の水処理システム100は、循環水W110に含まれる残留塩素量が、第1残留塩素量C1未満、第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間、及び第2残留塩素量C2以上のいずれかにあるかを判定し、その判定結果に応じて薬剤供給ポンプの吐出回数(供給量)を設定する薬剤供給制御部162を備える。
【0110】
そのため、循環水W110から検出される残留塩素量が、吐出回数を減少させる上限閾値以上となる前に、循環水W110に供給する薬剤の量を適切に制御することができる。従って、循環水W110への薬剤の供給と停止とを所定時間毎に交互に繰り返すタイマ薬注方式や、循環水W110から検出した残留塩素量が所定値以上となるまで薬剤を供給し続ける方式に比べて、薬剤の過剰な供給を抑制することができる。その結果、循環水W110中の薬剤濃度を適正範囲に維持することができる。
【0111】
また、本実施形態の水処理システム100では、薬剤供給ポンプ152として、定量吐出ポンプを用いている。このため、薬剤の供給量を、単位時間当たりの吐出回数(ショット数/分)として定量的に制御することができる。
【0112】
また、本実施形態の水処理システム100において、ブロー処理制御部164は、循環水W110の冷却塔110における入口温度TP1と出口温度TP2との差が所定値以上あり、且つ第3時間帯T3の前後における電気伝導率EC1とEC2との差が所定値未満であると判定した場合には、バックアップのための第2ブロー処理を実施する。
【0113】
そのため、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生し、検出される電気伝導率ECが常に零又は固定値になった場合でも、確実にブロー処理を実施させることができる。従って、濃縮度の高い循環水W110が被冷却装置131に供給され、被冷却装置131にスケール付着や腐食等の障害が発生することを抑制することができる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
本実施形態では、薬剤の吐出回数Sを、Szero(0%)、Smid(50%)、Smax(100%)の3段階に設定する例について説明した。これに限らず、吐出回数を0%、25%、50%、75%、100%のように、更に細かく設定してもよい。また、第1残留塩素量C1と第2残留塩素量C2との中間値を目標値とし、循環水W110から検出される残留塩素量がこの目標値となるように、薬剤供給ポンプ152の吐出回数SをPI制御(連続運転)してもよい。
【0115】
本実施形態では、薬剤として塩素系のスライムコントロール剤を使用する場合の薬剤量検出手段として、循環水W110の残留塩素量を測定する残留塩素測定装置134を用いた例について説明した。これに限らず、薬剤量検出手段は、循環水W110に供給される薬剤に応じて適宜に選択される。例えば、薬剤として塩素系以外の酸化型のスライムコントロール剤(例えば、過酸化水素等の酸素系酸化剤)を使用する場合には、循環水W110の酸化還元電位を酸化還元電位測定装置で測定することにより、薬剤量を間接的に検出することができる。
【0116】
また、酸化型以外のスライムコントロール剤、防食剤、スケール防止剤等を使用する場合には、薬剤に配合したトレーサー物質の循環水W110中の濃度を測定することにより、薬剤量を間接的に検出することができる。トレーサー物質としては、例えば、塩化リチウム等のリチウム塩、ピレンスルホン酸等の蛍光化合物、特定波長に吸収を持つ色素等が利用可能である。これらのトレーサー物質を検出するための薬剤量検出手段としては、それぞれイオン電極式のリチウムイオン濃度測定装置、蛍光強度測定装置、透過光強度測定装置が挙げられる。
【0117】
なお、酸化型以外のスライムコントロール剤、防食剤及びスケール防止剤は、種々の公知物質を使用することができる。酸化型以外のスライムコントロール剤としては、イソチアゾリン系化合物、カルバメート系化合物等が例示される。また、防食剤としては、ケイ酸塩、亜鉛塩、モリブデン塩、ベンゾトリアゾール誘導体等が例示される。更に、スケール防止剤としては、カルボン酸系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ホスホン酸系キレート剤、カルボン酸系キレート剤等が例示される。
【0118】
本実施形態では、薬剤を薬剤供給装置150から冷却塔110の貯留部116へ供給する例について説明した。これに限らず、薬剤を循環水ラインL110へ直接供給するように構成してもよい。すなわち、薬剤を最終的に循環水ラインL110へ供給することができれば、薬剤を供給する位置は、冷却塔110(散水部112、貯留部116)及び循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)のいずれであってもよい。
【0119】
本実施形態において第2ブロー処理が実行された際に、水処理システム100の管理者に対して、電気伝導率測定装置133に故障等の不具合が発生したことを警報等により通知してもよい。
本実施形態においては、冷却塔110を開放式冷却塔として構成した例について示したが、これに限らず、冷却塔110を密閉式冷却塔として構成してもよい。
【符号の説明】
【0120】
100 水処理システム
101 システム制御装置
102 制御部
103 メモリ
110 冷却塔
112 散水部
116 貯留部
131 被冷却装置
132 循環水ポンプ
133 電気伝導率測定装置
134 残留塩素測定装置(薬剤量検出手段)
135 第1温度センサ
136 第2温度センサ
150 薬剤供給装置
161 計時部
162 薬剤供給制御部(薬剤供給制御手段)
163 濃縮度判定部
164 ブロー処理制御部
L110 循環水ライン
L111 循環水供給ライン
L112 循環水回収ライン
L120 補給水ライン
L130 薬剤供給ライン
L140 排水ライン
W110 循環水
W121 補給水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却装置へ供給する循環水を冷却する冷却塔と、
循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、
薬剤を設定された単位時間当たりの吐出回数に基づいて前記循環水ラインに供給する定量吐出ポンプ手段と、
前記循環水ラインを流通する循環水に含まれる薬剤の量を溶存薬剤量として検出する薬剤量検出手段と、
(i)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が、薬剤の単位時間当たりの吐出回数を増加させる溶存薬剤量の下限閾値である第1溶存薬剤量を下回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させる処理、(ii)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第1溶存薬剤量を上回り、且つ薬剤の単位時間当たりの吐出回数を減少させる溶存薬剤量の上限閾値である第2溶存薬剤量を下回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数よりも少なく且つ最小吐出回数よりも多い回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させる処理、及び(iii)前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第2溶存薬剤量を上回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段による薬剤の供給を停止させる処理、を実行する薬剤供給制御手段と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記薬剤供給制御手段は、前記薬剤量検出手段で検出された溶存薬剤量が第1溶存薬剤量と第2溶存薬剤量との略中間値を上回る場合には、前記定量吐出ポンプ手段から供給される薬剤の単位時間当たりの吐出回数を最大吐出回数と最小吐出回数との略中間となる回数に設定すると共に、設定した吐出回数により前記定量吐出ポンプ手段から前記循環水ラインに薬剤を供給させる請求項1に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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