説明

水処理システム

【課題】システムの運転状況に応じて薬剤を適切に供給することができる水処理システムを提供する。
【解決手段】冷却塔110と、循環水ラインL110と、補給水ラインL120と、スケール防止剤供給手段134と、防食剤供給手段135と、循環水W110の電気伝導率を検出する電気伝導率測定手段133と、ブローダウン実行手段と、計時手段と、計時手段による計時がブロー待機時間に達した場合に、ブローダウン実行手段を作動させるブローダウン制御手段と、(i)循環水W110の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達していない場合は、補給水W120の流量に比例した量のスケール防止剤及び防食剤を供給させ、(ii)循環水W110の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達した場合には、補給水W120の流量に関係なく、スケール防止剤及び防食剤を供給させる水質制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却塔と被冷却装置との間で循環水を循環させる水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
商業ビル、工業プラント等においては、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置(冷却負荷装置)を冷却するために、冷却水が用いられる。冷却水は、その節約を図る観点から、冷却塔で冷却しながら循環して用いられる(以下、循環する冷却水を適宜に「循環水」ともいう)。水処理システムにおいて、循環水は、循環水ライン(循環水供給ライン及び循環水回収ライン)を介して、冷却塔と被冷却装置との間を循環する。
【0003】
循環水は、冷却塔で冷却される際にその一部が蒸発する。このため、循環水を継続的に循環させると、循環水の濃縮度が徐々に高くなり、水質が悪化する。そこで、循環水の水質を改善するために、外部から定期的に新鮮な水(補給水)を補給すると共に、濃縮度の高い循環水の一部を外部に排出して循環水を希釈する、いわゆるブローダウンが実行されている。また、循環水の水質を保つために、循環水への薬剤の供給(通称「薬注」)が行われている。
【0004】
従来、循環水の濃縮が進行して、電気伝導率が設定値より高くなった場合にブローダウンを実行する水処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、ブローダウンで排出される循環水の流量、すなわち補給水の流量に比例した量の薬剤を循環水に供給する、いわゆる流量比例薬注制御が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−63746号公報
【特許文献2】特開2008−249275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した水処理システムにおいて、蒸発損失量の少ない低負荷運転が続くと、循環水の濃縮が進行しにくくなるため、ブローダウンが長時間実行されない状態となる。このため、電気伝導率によるブローダウン制御と流量比例薬注制御とを組み合わせた場合、循環水に薬剤が長時間供給されない状態となる。循環水に薬剤が長時間供給されないと、循環水の水質が徐々に悪化する。また、循環水の濃縮がある程度進行した状態で長時間滞留すると、配管系の内壁等においてスケールが成長する可能性がある。
【0007】
また、上述した水処理システムに、薬剤の供給と停止を所定時間毎に交互に繰り返す、いわゆるタイマ薬注制御を組み合わせることも考えられる。しかし、タイマ薬注制御では、薬剤の濃度を一定以上に保つために、薬剤を過剰に供給する必要がある。このため、薬剤が無駄に消費され、運転コストが高くなる。
【0008】
このように、従来の水処理システムにおいては、システムの運転状況に応じて薬剤を適切に供給することができないため、配管系において腐食、スケール堆積、スライム付着等のトラブルを起こしやすいという課題があった。
【0009】
従って、本発明は、システムの運転状況に応じて薬剤を適切に供給することができる水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被冷却装置へ供給する循環水を冷却する冷却塔と、循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、補給水を前記冷却塔内に供給する補給水ラインと、循環水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給手段と、循環水に防食剤を供給する防食剤供給手段と、循環水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段と、補給水を前記冷却塔内に補給しながら、循環水の一部を前記冷却塔及び/又は前記循環水ラインから排出するブローダウンを実行するブローダウン実行手段と、前記ブローダウン実行手段においてブローダウンを実行してからの経過時間を計時する計時手段と、前記計時手段による計時が予め設定されたブローダウン待機時間に達した場合、又は前記電気伝導率測定手段で測定された電気伝導率が予め設定された電気伝導率閾値に達した場合に、前記ブローダウン実行手段を作動させるブローダウン制御手段と、(i)循環水の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達していない場合は、補給水の流量に比例した量のスケール防止剤を前記スケール防止剤供給手段から供給させると共に、補給水の流量に比例した量の防食剤を前記防食剤供給手段から供給させる処理を実行し、(ii)循環水の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達した場合には、補給水の流量に関係なく、スケール防止剤を前記スケール防止剤供給手段から供給させると共に、補給水の流量に関係なく、防食剤を前記防食剤供給手段から供給させる処理を実行する水質制御手段と、を備える水処理システムに関する。
【0011】
また、前記ブローダウン制御手段は、系内の物理量を用いて循環水の濃縮度を演算し、当該濃縮度の演算値に比例してブローダウンの実行時間を設定することが好ましい。
【0012】
また、循環水の入口温度を測定する第1温度測定手段と、循環水の出口温度を測定する第2温度測定手段と、を更に備え、前記ブローダウン制御手段は、前記第1温度測定手段で測定された入口温度と前記第2温度測定手段で測定された出口温度との差に基づいて、ブローダウンの実行時間を設定することが好ましい。
【0013】
また、循環水に殺菌剤を供給する殺菌剤供給手段を更に備え、前記水質制御手段は、(i)前記計時手段による計時が予め設定された滞留時間閾値に達していない場合は、補給水の流量に比例した量の殺菌剤を前記殺菌剤供給手段から供給させる処理を実行し、(ii)前記計時手段による計時が予め設定された滞留時間閾値に達した場合には、補給水の流量に関係なく、殺菌剤を前記殺菌剤供給手段から供給させる処理を実行することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、システムの運転状況に応じて薬剤を適切に供給することができる水処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
【図2】実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【図3】制御部102が薬注制御及びブローダウン制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】制御部102が強制薬注制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の水処理システム100の概略構成について説明する。図1は、本実施形態の水処理システム100を示す概略構成図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態の水処理システム100は、空調機や冷凍機に組み込まれた熱交換器等の被冷却装置131を冷却するために、循環水W110(冷却水)を循環させるシステムである。循環水W110は、その節約を図る観点から、冷却塔110で冷却しながら循環して用いられる。本実施形態における冷却塔110は、いわゆる開放式冷却塔である。
【0018】
本実施形態の水処理システム100は、主な構成として、冷却塔110と、被冷却装置131と、電気伝導率測定手段としての電気伝導率測定装置133と、スケール防止剤供給手段としてのスケール防止剤供給装置134と、防食剤供給手段としての防食剤供給装置135と、殺菌剤供給手段としての殺菌剤供給装置136と、第1温度測定手段としての第1温度測定装置137と、第2温度測定手段としての第2温度測定装置138と、システム制御装置101と、を備える。また、水処理システム100は、主なラインとして、循環水ラインL110と、補給水ラインL120と、を備える。なお、「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、図1では、電気的な接続の経路を破線で示している。
【0019】
冷却塔110は、被冷却装置131を冷却するための循環水W110を冷却する設備である。冷却塔110は、塔本体111と、散水部112と、貯留部116と、ルーバ118と、ファン120と、上部開口部121と、ファン駆動部122と、を備える。
【0020】
塔本体111は、冷却塔110の外郭を形成する筐体である。塔本体111の上部には、複数の散水部112、ファン120、上部開口部121及びファン駆動部122が設けられている。塔本体111の下部には、貯留部116が設けられている。塔本体111の側部には、ルーバ118が設けられている。
【0021】
散水部112は、被冷却装置131を冷却する循環水W110を冷却するために、循環水W110を散布する部位である。散水部112は、循環水回収ラインL112(後述)を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を、塔本体111の内部に散布(散水)する。
【0022】
散水部112は、上部水槽113と、散水口114とを備える。上部水槽113には、循環水回収ラインL112(循環水ラインL110)が接続されている。上部水槽113は、循環水回収ラインL112を介して被冷却装置131から回収された循環水W110を貯留する。散水口114は、上部水槽113に貯留された循環水W110を散布するために上部水槽113の下側に形成されたノズルからなる。
【0023】
貯留部116は、散水部112から散布された循環水W110を貯留する部位である。貯留部116は、塔本体111の下部に設けられている。散水部112から下方に向けて散布された循環水W110は、塔本体111の内部を落下する過程において、温度の低い外気E1(後述)と熱交換することにより冷却される。貯留部116の底部には、循環水ラインL110の循環水供給ラインL111(後述)が接続される。貯留部116に貯留された循環水W110は、循環水供給ラインL111を介して被冷却装置131へ供給される。
【0024】
ルーバ118は、塔本体111の内部へ外気(エア)E1を導入するための通気孔である。塔本体111の外部の外気E1は、ルーバ118を介して塔本体111の内部へ導入される。
【0025】
上部開口部121は、塔本体111の上部に形成された開口部である。上部開口部121は、塔本体111の内部に位置する外気E1を塔本体111の外部に排出する。上部開口部121から排出されたエアを「排気E2」ともいう。
【0026】
ファン120は、上部開口部121に配置されている。ファン120は、ファン駆動部122の回転軸(符号略)と連結されている。ファン120は、回転することにより内部に負圧を発生させ、ルーバ118から塔本体111の内部へ外気E1を導入すると共に、塔本体111の内部に導入された外気E1を、上部開口部121を介して塔本体111の外部に排出させる。
【0027】
ファン駆動部122は、ファン120を回転させる駆動源である。ファン駆動部122は、モータ(不図示)により構成される。ファン駆動部122は、ファン120の上方に配置されている。ファン駆動部122は、システム制御装置101と電気的に接続されている。ファン駆動部122の運転(駆動及び停止)、回転速度の調整(変速)等は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0028】
循環水ラインL110は、冷却塔110と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるラインである。循環水ラインL110は、貯留部116に貯留された循環水W110を冷却塔110から被冷却装置131へ供給する循環水供給ラインL111と、循環水W110を被冷却装置131から冷却塔110の散水部112へ回収する循環水回収ラインL112と、から構成される。
【0029】
循環水供給ラインL111は、冷却塔110の貯留部116と被冷却装置131との間を接続するラインである。循環水供給ラインL111は、貯留部116に貯留された循環水W110を被冷却装置131に供給することができる。
【0030】
循環水供給ラインL111の途中には、循環水ポンプ132が接続されている。循環水ポンプ132は、循環水ラインL110(循環水供給ラインL111、循環水回収ラインL112)の上流側から下流側へ向けて、循環水W110を送り出すことができる。循環水ポンプ132は、システム制御装置101と電気的に接続されている。循環水ポンプ132の運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0031】
循環水回収ラインL112は、被冷却装置131と冷却塔110の散水部112との間を接続するラインである。循環水回収ラインL112は、被冷却装置131において熱交換により加温された循環水W110を、冷却塔110の散水部112へ回収することができる。循環水回収ラインL112の下流側は、分岐部J111において複数のラインに分岐している。分岐したラインは、複数の散水部112にそれぞれ接続されている。
【0032】
被冷却装置131は、循環水W110による冷却が必要な熱交換器等の各種装置である。被冷却装置131は、例えば、各種の化学プラントのターボ冷凍機や吸収冷凍機、建築物の空調用冷却機、食品工場の冷水製造機や真空冷却機等である。被冷却装置131は、内部に循環水流路(不図示)を備える。
【0033】
被冷却装置131において、循環水流路の一方の端部には、循環水供給ラインL111の下流側の端部が接続されている。また、被冷却装置131において、循環水流路の他方の端部には、循環水回収ラインL112の上流側の端部が接続されている。従って、循環水流路は、循環水供給ラインL111及び循環水回収ラインL112と共に、冷却塔110の塔本体111と被冷却装置131との間で循環水W110を循環させるための循環経路を形成する。
【0034】
電気伝導率測定装置133は、循環水W110の電気伝導率ECを測定する装置である。電気伝導率測定装置133は、測定ラインL113を介して、接続部J112において循環水供給ラインL111に接続されている。また、電気伝導率測定装置133は、システム制御装置101と電気的に接続されている。電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECは、システム制御装置101へ検出信号として送信される。電気伝導率測定装置133は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で電気伝導率ECを測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0035】
スケール防止剤供給装置134は、循環水W110へスケール防止剤を供給する装置である。スケール防止剤供給装置134は、スケール防止剤供給ラインL131を介して、接続部J115において循環水供給ラインL111に接続されている。スケール防止剤は、水中でのスケールの成長、或いは配管表面等へのスケールの堆積を防止するために用いられる薬品である。ここで利用可能なスケール防止剤としては、例えば、カルボン酸系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、ホスホン酸系キレート剤、カルボン酸系キレート剤等を挙げることができる。
【0036】
防食剤供給装置135は、循環水W110へ防食剤を供給する装置である。防食剤供給装置135は、防食剤供給ラインL132を介して、接続部J116において循環水供給ラインL111に接続されている。防食剤は、主に配管系等における全面腐食、或いはピッチング等の部分腐食の発生を抑制するために用いられる薬品である。ここで利用可能な防食剤としては、例えば、ケイ酸塩、亜硝酸塩、亜鉛塩、モリブデン塩、ホスホノカルボン酸塩、ベンゾトリアゾール誘導体等を挙げることができる。
【0037】
殺菌剤供給装置136は、冷却塔110の貯留部116へ殺菌剤を供給する装置である。殺菌剤供給装置136は、殺菌剤供給ラインL133を介して、接続部J117において循環水供給ラインL111に接続されている。殺菌剤は、水中における微生物の繁殖を抑制するために用いられる薬品であり、スライムコントロール剤とも呼ばれる。ここで利用可能な殺菌剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等のハロゲン系酸化剤、過酸化水素等の酸素系酸化剤、イソチアゾリン系化合物、カルバメート系化合物等を挙げることができる。
【0038】
スケール防止剤供給装置134、防食剤供給装置135及び殺菌剤供給装置136は、それぞれ薬剤タンク及び薬剤供給ポンプ(図示せず)を備えている。薬剤供給ポンプは、薬剤タンクに貯留された薬剤を循環水供給ラインL111へ送り出す設備である。薬剤供給ポンプとしては、ダイヤフラムポンプ、プランジャーポンプ、ベローズポンプ等の定量吐出ポンプを用いることができる。
【0039】
薬剤供給ポンプは、電磁駆動力によりダイヤフラム等の弁体を往復運動させることにより、薬剤を断続的に循環水W110に供給することができる。また、薬剤供給ポンプは、ショット当たりの吐出量[mL/ショット]を所定値に設定し、且つ単位時間当たりの吐出回数[ショット/分]を増減することにより、薬剤の吐出流量[mL/分]を制御することができる。ショット数とは、弁体が往復運動する回数をいう。弁体の1往復が1ショットに相当する。
【0040】
薬剤供給ポンプは、システム制御装置101と電気的に接続されている。薬剤供給ポンプの運転(駆動及び停止)は、システム制御装置101から送信される駆動信号により制御される。
【0041】
第1温度測定装置137は、被冷却装置131から冷却塔110へ回収される循環水W110の温度(以下、「入口温度TP」という)を測定する装置である。第1温度測定装置137は、測定ラインL134を介して、接続部J113において循環水回収ラインL112に接続されている。また、第1温度測定装置137は、システム制御装置101と電気的に接続されている。第1温度測定装置137で測定された循環水W110の入口温度TPは、システム制御装置101へ送信される。第1温度測定装置137は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で循環水W110の入口温度TPを測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0042】
第2温度測定装置138は、冷却塔110から被冷却装置131へ供給される循環水W110の温度(以下、「出口温度TP」という)を測定する装置である。第2温度測定装置138は、測定ラインL135を介して、接続部J114において循環水供給ラインL111に接続されている。第2温度測定装置138は、システム制御装置101と電気的に接続されている。第2温度測定装置138で測定された循環水W110の出口温度TPは、システム制御装置101へ送信される。第2温度測定装置138は、所定の時間間隔(又はリアルタイム)で循環水W110の出口温度TPを測定し、システム制御装置101へ送信する。
【0043】
また、冷却塔110には、補給水ラインL120が接続されている。補給水ラインL120は、補給水W120を冷却塔110の貯留部116へ補給するラインである。補給水ラインL120の上流側は、水道水や工業用水等の原水の供給源(図示せず)に接続された第1補給水ラインL121となっている。一方、補給水ラインL120の下流側は、接続部J121において、第2補給水ラインL122及び第3補給水ラインL123に分岐している。
【0044】
第1補給水ラインL121には、流量測定装置141が設けられている。流量測定装置141は、第1補給水ラインL121を流通する補給水W120の流量を測定する機器である。流量測定装置141として、例えば、流路ハウジング内に軸流羽根車又は接線羽根車(不図示)を配置したパルス発信式の流量センサを用いることができる。流量測定装置141は、システム制御装置101と電気的に接続されている。流量測定装置141で検出された補給水W120の流量は、システム制御装置101へパルス信号として送信される。
【0045】
本実施形態で用いられるパルス発信式の流量センサは、偶数枚の羽根の先端部分がN極とS極とに交互に着磁された羽根車を備え、この羽根車の回転をホールICで検出することにより、補給水W120の流速に比例した時間幅のパルス信号を出力する。ホールICは、電圧レギュレータ、ホール素子、増幅回路、シュミットトリガ回路、出力トランジスタ等がパッケージ化された電子回路であり、羽根車の回転運動に伴う磁束変化に応答して、羽根車が1回転する毎に矩形波パルス信号を出力する。羽根車が1回転するときの流量[L/パルス]は、流量センサの設計仕様により決まるため、単位時間当たりに出力されるパルス信号数[パルス/分]をカウントすることで、補給水W120の流量[L/分]を測定することが可能になる。
【0046】
第2補給水ラインL122の下流側の端部は、冷却塔110の塔本体111に接続されている。第2補給水ラインL122の途中には、補給水バルブ142が設けられている。補給水バルブ142は、第2補給水ラインL122を開閉することにより、貯留部116に対して補給水W120を強制的に供給する給水設備である。補給水バルブ142は、システム制御装置101と電気的に接続されている。補給水バルブ142における弁体の開閉は、システム制御装置101からの駆動信号により制御される。
【0047】
第3補給水ラインL123の下流側の端部は、冷却塔110の塔本体111に接続されている。第3補給水ラインL123の下流側の端部には、給水栓143が設けられている。給水栓143は、貯留部116に貯留される循環水W110の水位(すなわち、水量)を管理するボールタップ式の給水設備である。循環水W110の蒸発損失及び飛散損失により貯留部116の水位が低下すると、給水栓143のボールタップが作動し、第3補給水ラインL123を流通する補給水W120が貯留部116に補給される。
【0048】
排水ラインL130は、貯留部116の内部に立設され、下方に延びている。排水ラインL130の上流側の端部は、循環水W110の流入口144となっており、この流入口144は、給水栓143の管理水位よりも上方に開口している。一方、排水ラインL130の下流側の端部は、貯留部116の外部に通じている。排水ラインL130は、後述する通常ブローダウン制御及び強制ブローダウン制御において、補給水バルブ142を開放して補給水W120を強制的に供給した場合に、冷却塔110の貯留部116から溢れた循環水W110を、水処理システム100の系外に排出するラインである。
【0049】
次に、図2を参照して、本実施形態の水処理システム100の制御に係る機能について説明する。図2は、本実施形態の水処理システム100の制御に係る機能ブロック図である。
【0050】
システム制御装置101は、本実施形態の水処理システム100における各部の動作を制御する。図2に示すように、システム制御装置101は、例えば、ファン駆動部122、循環水ポンプ132、補給水バルブ142、スケール防止剤供給装置134、防食剤供給装置135及び殺菌剤供給装置136に電気的に接続される。
【0051】
また、システム制御装置101は、水処理システム100の各測定装置と電気的に接続され、これら測定装置から測定情報を受信する。例えば、システム制御装置101は、電気伝導率測定装置133、第1温度測定装置137、第2温度測定装置138及び流量測定装置141と電気的に接続される。システム制御装置101において、各測定装置から受信した最新の測定情報は、適宜、メモリ103に記憶される。
【0052】
システム制御装置101は、制御部102と、メモリ103と、を備える。制御部102は、ブローダウン実行手段としてのブローダウン実行部161と、計時手段としての計時部162と、ブローダウン制御手段としてのブローダウン制御部163と、水質制御手段としての薬剤供給制御部164と、を有する。制御部102におけるブローダウン実行部161、計時部162、ブローダウン制御部163及び薬剤供給制御部164の機能は、CPU及び内部メモリ含むマイクロプロセッサ(不図示)により実現される。
【0053】
ブローダウン実行部161は、ブローダウン制御部163からのブローダウン開始命令及び終了命令に応答して、循環水W110の排水及び補給水W120の補給を同時に(又は連続して)実施する。具体的には、ブローダウン実行部161は、ブローダウン開始命令を受けると、補給水バルブ142を開状態として、第2補給水ラインL122を通じて新鮮な補給水W120を貯留部116に強制的に補給する。補給水W120が補給されると、貯留部116の水位が上昇するため、流入口144から溢れた循環水W110が排水ラインL130を通じて外部に排出される。すなわち、ブローダウンが実行されると、濃縮の進んだ循環水W110の一部が補給水W120と入れ替わるため、循環水ラインL110における循環水W110の電気伝導率ECが全体的に低下することになる。そして、ブローダウン実行部161は、ブローダウン終了命令を受けると、補給水バルブ142を閉状態として、補給水W120の補給を停止させる。
【0054】
計時部162は、ブローダウン実行部161がブローダウンを実行してからの経過時間(すなわち、滞留時間T)を計時する。計時部162は、ブローダウンの実行が終了すると計時を開始する一方、ブローダウンの実行が開始されると計時を終了する。
【0055】
ブローダウン制御部163は、冷却塔110の運転中において、所定の条件を満足した場合に、通常ブローダウン制御又は強制ブローダウン制御を行うことにより、循環水W110の一部を新鮮な補給水W120と入れ替える。通常ブローダウン制御は、冷却塔110の負荷が高い場合(蒸発損失量が多い場合)を想定した制御である。一方、強制ブローダウン制御は、冷却塔110の負荷が低い場合(蒸発損失量が少ない場合)を想定した制御である。
【0056】
(通常ブローダウン制御)
ブローダウン制御部163は、電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECが予め設定された電気伝導率閾値ECに達した場合に、ブローダウン実行部161を作動させる。電気伝導率閾値ECは、スケール防止剤及び防食剤の効果の持続性を担保できる濃縮倍数を考慮して決定される。また、本制御によるブローダウンは、予めメモリ103に設定されたブローダウンの実行時間Tに基づいて実行される。
【0057】
(強制ブローダウン制御)
ブローダウン制御部163は、計時部162による滞留時間Tの計時が予め設定されたブローダウン待機時間Tに達した場合に、ブローダウン実行部161を作動させる。また、ブローダウン制御部163は、滞留時間Tの計時中に、系内の物理量を用いて循環水W110の濃縮度αを逐次演算する。本実施形態では、循環水W110の電気伝導率ECと循環水W110の滞留時間Tとの積を濃縮度αとして演算する。そして、ブローダウン制御部163は、この濃縮度αの演算値に比例してブローダウンの実行時間Tαを設定する。ブローダウンの実行時間Tαは、濃縮度αが高くなるほど長く設定し、濃縮度αが低くなるほど短く設定する。
【0058】
更に、ブローダウンの実行時間Tαは、循環水W110の温度に基づいて補正することも可能である。この場合、ブローダウン制御部163は、第1温度測定装置137で測定された循環水W110の入口温度TPと、第2温度測定装置138で測定された循環水W110の出口温度TPとの温度差に基づいて、ブローダウンの実行時間Tαを補正する。通常、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差が大きいほど、冷却塔110における循環水W110の蒸発損失量が増える。このため、ブローダウンが実行されるまでの間(ブローダウン待機中)に循環水W110の濃縮が進行する可能性がある。そこで、ブローダウン制御部163では、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差が予め設定された基準値よりも大きい場合には、濃縮度αに基づいて設定したブローダウンの実行時間Tαに予め設定された時間値を加算する。これにより、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差が大きい場合には、ブローダウンの実行時間Tαが更に長くなる。このため、循環水W110の濃縮倍率をより確実に下げることができる。
【0059】
薬剤供給制御部164は、冷却塔110の運転中において、補給水流量比例薬注制御を行う。また、薬剤供給制御部164は、冷却塔110の運転中において、所定の条件を満足した場合に、補給水流量比例薬注制御に替えて、一時的に強制薬注制御を行う。補給水流量比例薬注制御は、冷却塔110の負荷が高い場合(循環水W110の滞留時間が比較的短い場合)を想定した制御である。一方、強制薬注制御は、冷却塔110の負荷が低い場合(循環水W110の滞留時間が比較的長い場合)を想定した制御である。
【0060】
(補給水流量比例薬注制御)
薬剤供給制御部164は、循環水W110の濃縮度αが予め設定された濃縮度閾値αに達していない場合は、補給水W120の流量に比例した量のスケール防止剤及び防食剤を、それぞれスケール防止剤供給装置134及び防食剤供給装置135から供給させる処理を実行する。また、計時部162による計時Tが予め設定された滞留時間閾値Tに達していない場合は、補給水W120の流量に比例した量の殺菌剤を殺菌剤供給装置136から供給させる処理を実行する。
【0061】
補給水流量比例薬注制御においては、薬剤供給制御部164は、流量測定装置141で測定される補給水W120の流量[L/分]に比例した吐出流量[mL/分]の駆動信号を薬剤供給ポンプに出力する。つまり、ブローダウン待機中には、循環水W110の蒸発損失及び飛散損失に応じて第3補給水ラインL123を流れる補給水W120の流量に比例した吐出流量で薬剤が供給される。一方、ブローダウン実行中には、第2補給水ラインL122を流れる補給水W120の流量に比例した吐出流量で薬剤が供給される。
【0062】
(強制薬注制御)
薬剤供給制御部164は、循環水W110の濃縮度αが予め設定された濃縮度閾値αに達した場合には、補給水W120の流量に関係なく、スケール防止剤及び防食剤を、それぞれスケール防止剤供給装置134及び防食剤供給装置135から供給させる処理を実行する。また、計時部162による計時Tが予め設定された滞留時間閾値Tに達した場合は、補給水W120の流量に関係なく、殺菌剤を殺菌剤供給装置136から供給させる処理を実行する。
【0063】
強制薬注制御おいては、流量測定装置141により補給水W120の流通が検出されているか否かに関らず、予め設定された吐出流量[mL/分]の駆動信号を薬剤供給ポンプに出力する。本制御では、駆動信号の出力が所定時間[分]行われることにより、長時間滞留している循環水W110に対して一定量[mL]の薬剤が供給される。
【0064】
濃縮度閾値αは、一点の設定とする必要はなく、他段階に設定することができる。例えば、前述の通常ブローダウン制御又は強制ブローダウン制御が実行された後に、濃縮度閾値αの初期値をΔαに設定し、第1回目の強制薬注制御の実行時期を設定する。そして、第1回目の強制薬注制御の終了時点で、現在の濃縮度閾値αにΔαを加算して、第2回目の強制薬注制御の実行時期を設定する。第3回目以降も同様に、現在の濃縮度閾値αにΔαを加算し、次回の強制薬注制御の実行時期を設定する。濃縮度閾値αをこのような手順で設定することにより、循環水W110の濃縮度αがΔα分高まる毎に、スケール防止剤及び防食剤を強制に薬注させることが可能になる。
【0065】
また、滞留時間閾値Tについても、一点の設定とする必要はなく、他段階に設定することができる。例えば、前述の通常ブローダウン制御又は強制ブローダウン制御が実行された後に、滞留時間閾値Tの初期値をΔTに設定し、第1回目の強制薬注制御の実行時期を設定する。そして、第1回目の強制薬注制御の終了時点で、現在の滞留時間閾値TにΔTを加算して、第2回目の強制薬注制御の実行時期を設定する。第3回目以降も同様に、現在の滞留時間閾値TにΔTを加算し、次回の強制薬注制御の実行時期を設定する。滞留時間閾値Tをこのような手順で設定することにより、循環水W110の滞留時間TがΔT分長くなる毎に、殺菌剤を強制的に薬注させることが可能になる。
【0066】
次に、本実施形態の水処理システム100において、制御部102がブローダウン及び薬剤供給処理を実行する場合の動作を、図3及び図4を参照しながら説明する。図3は、制御部102が薬注制御及びブローダウン制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。また、図4は、制御部102が強制薬注制御を実行する場合の処理手順を示すフローチャートである。図3及び図4に示すフローチャートの制御は、メモリ103に記憶された制御プログラムに基づいて、制御部102のブローダウン制御部163及び薬剤供給制御部164により実行される。また、図3に示すフローチャートの処理は、水処理システム100の運転中において、繰り返し実行される。
【0067】
図3に示すように、ステップST101において、薬剤供給制御部164は、補給水流量比例薬注制御を実行する。すなわち、薬剤供給制御部164は、流量測定装置141で測定される補給水W120の流量[L/分]に比例した吐出流量[mL/分]の駆動信号を、スケール防止剤供給装置134、防食剤供給装置135及び殺菌剤供給装置136の各薬剤供給ポンプに出力する。これにより、補給水W120の補給に同期して、循環水W110にスケール防止剤、防食剤及び殺菌剤が供給される。
【0068】
ステップST102において、ブローダウン制御部163は、電気伝導率測定装置133で測定された循環水W110の電気伝導率ECを取得する。
ステップST103において、ブローダウン制御部163及び薬剤供給制御部164は、計時部162で計時された滞留時間T(ブローダウン実行後の経過時間)を取得する。
【0069】
ステップST104において、ブローダウン制御部163は、前のステップで取得した電気伝導率EC及びに滞留時間Tに基づいて、循環水W110の濃縮度αを演算する。具体的には、電気伝導率ECと滞留時間Tの積を求め、この演算値を濃縮度αとする。
【0070】
ステップST105において、ブローダウン制御部163は、ステップST103で取得した滞留時間Tが予め設定したブローダウン待機時間Tに達したか否かを判定する。このステップST105において、ブローダウン制御部163が、滞留時間Tがブローダウン待機時間Tに達した(YES)と判定した場合には、循環水W110が長時間入れ替わらず、水質の汚濁が進んでいる状態であるため、処理はステップST106へ移行する。また、ステップST105において、ブローダウン制御部163が、滞留時間Tがブローダウン待機時間Tに達していない(NO)と判定した場合には、循環水W110が入れ替わってから時間が経っておらず、水質の汚濁は進んでいない状態であるため、処理はステップST110へ移行する。
【0071】
ステップST106(ステップST105:YES)において、ブローダウン制御部163は、強制ブローダウンの実行時間Tαを設定する。この実行時間Tαは、ステップST104の処理で得られた濃縮度αの演算値に比例して設定される。
【0072】
ステップST107において、ブローダウン制御部163は、強制ブローダウン制御を行うため、ブローダウン実行部161を作動させる。このステップST107において、ステップST106で設定した実行時間Tαが経過するとブローダウンは終了し、処理はステップST108へ進む。
【0073】
ステップST108において、ブローダウン制御部163は、滞留時間閾値Tを初期値であるΔTにリセットする。
ステップST109において、ブローダウン制御部163は、濃縮度閾値αを初期値であるΔαにリセットする。
【0074】
ステップST110(ステップST105:NO)において、ブローダウン制御部163は、ステップST102で取得した電気伝導率ECが予め設定した電気伝導率閾値ECに達したか否かを判定する。このステップST110において、ブローダウン制御部163が、電気伝導率ECが電気伝導率閾値ECに達した(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮が進んでいる状態であるため、処理はステップST111へ移行する。また、ステップST105において、ブローダウン制御部163が、電気伝導率ECが電気伝導率閾値ECに達していない(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮が進んでいない状態であるため、処理はステップST113へ移行する。
【0075】
ステップST111(ステップST110:YES)において、ブローダウン制御部163は、通常ブローダウンの実行時間Tを取得する。この実行時間Tは、例えば、装置管理者がユーザーインターフェース(不図示)を介してメモリ103に入力した設定値である。
【0076】
ステップST112において、ブローダウン制御部163は、通常ブローダウン制御を行うため、ブローダウン実行部161を作動させる。このステップST112において、ステップST111で設定した実行時間Tが経過するとブローダウンは終了し、処理はステップST108へ進む。
【0077】
ステップST113(ステップST110:NO)において、薬剤供給制御部16は、強制薬注制御を実行する。薬剤供給制御部164が強制薬注制御を実行する場合の具体的な処理手順は、後述する。強制薬注制御の実行が終了すると、処理はステップST101へ戻る。
【0078】
次に、図4を参照して、強制薬注制御の処理手順を説明する。図4に示すように、ステップST201において、薬剤供給制御部164は、図3のステップST103で取得した滞留時間Tが予め設定した滞留時間閾値T(初期値:ΔT)に達したか否かを判定する。このステップST201において、薬剤供給制御部164が、滞留時間Tが滞留時間閾値Tに達した(YES)と判定した場合には、循環水W110が長時間入れ替わらず、殺菌剤の効能が低下している状態であるため、処理はステップST202へ移行する。また、ステップST201において、薬剤供給制御部164が、滞留時間Tが滞留時間閾値Tに達していない(NO)と判定した場合には、循環水W110が入れ替わってから時間が経っておらず、殺菌剤の効能が維持されている状態であるため、処理はステップST203へ移行する。
【0079】
ステップST202(ステップST201:YES)において、薬剤供給制御部164は、殺菌剤を殺菌剤供給装置136から強制的に薬注させる。すなわち、薬剤供給制御部164は、補給水比例薬注制御を一時的に中断して、予め設定された吐出流量[mL/分]の駆動信号を殺菌剤供給装置136の薬剤供給ポンプに出力する。ステップST202において、駆動信号の出力が所定時間行われると、処理はステップST203へ進む。
【0080】
ステップST203において、薬剤供給制御部164は、殺菌剤の次回の強制薬注時期を設定する。具体的には、薬剤供給制御部164は、現在の滞留時間閾値TにΔTを加算して新たな滞留時間閾値Tを演算し、この演算値を次回の強制薬注制御の実行時期に設定する。
【0081】
ステップST204(ステップST201:NO)において、薬剤供給制御部164は、図3のステップST104で演算した濃縮度αが予め設定した濃縮度閾値α(初期値:Δα)に達したか否かを判定する。このステップST204において、薬剤供給制御部164が、濃縮度αが濃縮度閾値αに達した(YES)と判定した場合には、循環水W110の濃縮の進行及び/又は滞留の長期化が起こり、スケール防止剤及び防食剤の効能が低下している状態であるため、処理はステップST205へ移行する。また、ステップST204において、薬剤供給制御部164が、濃縮度αが濃縮度閾値αに達していない(NO)と判定した場合には、循環水W110の濃縮の進行や滞留の長期化が起こっておらず、スケール防止剤及び防食剤の効能が維持されている状態であるため、本フローチャートは終了し、処理は図3のステップST101へ戻る。
【0082】
ステップST205(ステップST204:YES)において、薬剤供給制御部164は、スケール防止剤をスケール防止剤供給装置134から強制的に薬注させると共に、防食剤を防食剤供給装置135から強制的に薬注させる。すなわち、薬剤供給制御部164は、補給水比例薬注制御を一時的に中断して、予め設定された吐出流量[mL/分]の駆動信号をスケール防止剤供給装置134及び防食剤供給装置135の各薬剤供給ポンプに出力する。ステップST205において、駆動信号の出力が所定時間行われると、処理はステップST206へ進む。
【0083】
ステップST206において、薬剤供給制御部164は、スケール防止剤及び防食剤の次回の強制薬注時期を設定する。具体的には、薬剤供給制御部164は、現在の濃縮度閾値αにΔαを加算して新たな濃縮度閾値αを演算し、この演算値を次回の強制薬注制御の実行時期に設定する。これにより、本フローチャートは終了し、処理は図3のステップST101へ戻る。
【0084】
上述した本実施形態の水処理システム100によれば、例えば、次のような効果を奏する。
本実施形態の水処理システム100は、計時部162による計時Tが予め設定されたブローダウン待機時間Tに達した場合、又は電気伝導率測定装置133で測定された電気伝導率ECが予め設定された電気伝導率閾値ECに達した場合に、ブローダウン実行部161を作動させるブローダウン制御部163を備える。
【0085】
そのため、循環水W110の電気伝導率ECが通常のブローダウンを実行させる電気伝導率閾値EC未満であっても、ブローダウンが所定時間実行されない場合には、強制的にブローダウンが実行される。これによれば、循環水W110の濃縮がある程度進行した状態で長時間滞留することがないため、配管系の内壁等におけるスケールの成長を抑制することができる。
【0086】
また、本実施形態の水処理システム100は、循環水W110の濃縮度αが予め設定された濃縮度閾値αに達していない場合は、補給水W120の流量に比例した量のスケール防止剤をスケール防止剤供給装置134から供給させると共に、補給水W120の流量に比例した量の防食剤を防食剤供給装置135から供給させ、循環水W110の濃縮度αが予め設定された濃縮度閾値αに達した場合には、補給水W120の流量に関係なく、スケール防止剤をスケール防止剤供給装置134から供給させると共に、補給水W120の流量に関係なく、防食剤を防食剤供給装置135から供給させる薬剤供給制御部164を備える。
【0087】
これによれば、循環水W110の濃縮度αが濃縮度閾値α未満の場合には、補給水比例薬注制御により循環水W110にスケール防止剤及び防食剤が供給される。そのため、冷却塔110の運転負荷が高い場合に、継続的な薬注によってスケール防止剤及び防食剤の効能を維持することができるので、配管系に腐食やスケール発生等のトラブルが発生するのを抑制することができる。一方、循環水W110の濃縮度αが濃縮度閾値α以上の場合には、強制薬注制御により循環水W110にスケール防止剤及び防食剤が供給される。そのため、冷却塔110の運転負荷が低い場合に、循環水W110の濃縮の進行及び/又は滞留の長期化が起こり、スケール防止剤及び防食剤の効能が低下した状態となっても、配管系に腐食やスケールの発生等のトラブルが発生するのを抑制することができる。
【0088】
従って、本実施形態の水処理システム100によれば、システムの運転状況に応じて薬剤を適切に供給することができる。
【0089】
また、本実施形態の水処理システム100において、ブローダウン制御部163は、循環水W110の濃縮度αが高くなるほど強制ブローダウンの実行時間Tαを長く設定し、濃縮度αが低くなるほど強制ブローダウンの実行時間Tαを短く設定する。これによれば、循環水W110の濃縮度αが高い場合には、ブローダウンによる排水量が相対的に多くなるので、循環水W110の濃縮倍率を確実に下げることができる。また、循環水W110の濃縮度αが低い場合には、ブローダウンによる排水量が相対的に少なくなるので、ランニングコストに影響する補給水W120の消費量を必要最小限に止めることができる。
【0090】
また、本実施形態の水処理システム100において、ブローダウン制御部163は、濃縮度αに基づいて設定した強制ブローダウンの実行時間Tαを、循環水W110の温度に基づいて補正する。すなわち、ブローダウン制御部163は、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの温度差が基準値よりも大きい場合には、濃縮度αに基づいて設定した強制ブローダウンの実行時間Tαに予め設定された時間値を加算する。これにより、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差が大きい場合には、強制ブローダウンの実行時間Tαが更に長くなる。このため、循環水W110の濃縮度αをより確実に下げることができる。
【0091】
また、本実施形態の水処理システム100において、薬剤供給制御部164は、計時部162による計時Tが予め設定された滞留時間閾値Tに達していない場合は、補給水W120の流量に比例した量の殺菌剤を殺菌剤供給装置136から供給させ、計時部162による計時Tが予め設定された滞留時間閾値Tに達した場合には、補給水W120の流量に関係なく、殺菌剤を殺菌剤供給装置136から供給させる。
【0092】
これによれば、循環水W110の滞留時間Tが滞留時間閾値T未満の場合には、補給水比例薬注制御により循環水W110に殺菌剤が供給される。そのため、冷却塔110の運転負荷が高い場合に、継続的な薬注によって殺菌剤の効能を維持することができるので、循環水系における微生物の繁殖を抑制することができる。一方、循環水W110の滞留時間Tが滞留時間閾値T以上の場合には、強制薬注制御により循環水W110に殺菌剤が供給される。そのため、冷却塔110の運転負荷が低い場合に、循環水W110の滞留の長期化が起こり、殺菌剤の効能が低下した状態となっても、循環水系における微生物の繁殖を抑制することができる。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0094】
本実施形態では、循環水W110の電気伝導率ECと循環水W110の滞留時間Tとの積を濃縮度αとして演算する例について説明した。これに限らず、循環水W110の電気伝導率ECと補給水W120の電気伝導率ECとに基づいて循環水W110の濃縮倍率を演算し、この濃縮倍率を濃縮度αとして用いてもよい。
【0095】
本実施形態では、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差が予め設定された基準値よりも大きいに場合には、濃縮度αに基づいて設定した強制ブローダウンの実行時間Tαに予め設定された時間値を加算する例について説明した。これに限らず、循環水W110の入口温度TPと出口温度TPとの差に基づいて、ブローダウンの実行時間Tαを設定してもよい。
【0096】
本実施形態では、薬剤としてのスケール防止剤、防食剤及び殺菌剤を、循環水供給ラインL111へ供給する例について説明した。しかし、薬剤を循環水W110へ供給することができれば、薬剤を供給する位置は限定されない。例えば、薬剤を冷却塔110の上部水槽113、貯留部116又は循環水回収ラインL112に供給してもよい。
【0097】
本実施形態においては、冷却塔110を開放式冷却塔として構成した例について示したが、これに限らず、冷却塔110を密閉式冷却塔として構成してもよい。
【符号の説明】
【0098】
100 水処理システム
101 システム制御装置
102 制御部
103 メモリ
110 冷却塔
112 散水部
116 貯留部
131 被冷却装置
133 電気伝導率測定装置(電気伝導率測定手段)
134 スケール防止剤供給装置(スケール防止剤供給手段)
135 防食剤供給装置(防食剤供給手段)
136 殺菌剤供給装置(殺菌剤供給手段)
137 第1温度測定装置(第1温度測定手段)
138 第2温度測定装置(第2温度測定手段)
161 ブローダウン実行部(ブローダウン実行手段)
162 計時部(計時手段)
163 ブローダウン制御部(ブローダウン制御手段)
164 薬剤供給制御部(水質制御手段)
L110 循環水ライン
L120 補給水ライン
L140 排水ライン
W110 循環水
W120 補給水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却装置へ供給する循環水を冷却する冷却塔と、
循環水を前記冷却塔と前記被冷却装置との間で循環させる循環水ラインと、
補給水を前記冷却塔内に供給する補給水ラインと、
循環水にスケール防止剤を供給するスケール防止剤供給手段と、
循環水に防食剤を供給する防食剤供給手段と、
循環水の電気伝導率を測定する電気伝導率測定手段と、
補給水を前記冷却塔内に補給しながら、循環水の一部を前記冷却塔及び/又は前記循環水ラインから排出するブローダウンを実行するブローダウン実行手段と、
前記ブローダウン実行手段においてブローダウンを実行してからの経過時間を計時する計時手段と、
前記計時手段による計時が予め設定されたブローダウン待機時間に達した場合、又は前記電気伝導率測定手段で測定された電気伝導率が予め設定された電気伝導率閾値に達した場合に、前記ブローダウン実行手段を作動させるブローダウン制御手段と、
(i)循環水の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達していない場合は、補給水の流量に比例した量のスケール防止剤を前記スケール防止剤供給手段から供給させると共に、補給水の流量に比例した量の防食剤を前記防食剤供給手段から供給させる処理を実行し、(ii)循環水の濃縮度が予め設定された濃縮度閾値に達した場合には、補給水の流量に関係なく、スケール防止剤を前記スケール防止剤供給手段から供給させると共に、補給水の流量に関係なく、防食剤を前記防食剤供給手段から供給させる処理を実行する水質制御手段と、
を備える水処理システム。
【請求項2】
前記ブローダウン制御手段は、系内の物理量を用いて循環水の濃縮度を演算し、当該濃縮度の演算値に比例してブローダウンの実行時間を設定する、
請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
循環水の入口温度を測定する第1温度測定手段と、
循環水の出口温度を測定する第2温度測定手段と、を更に備え、
前記ブローダウン制御手段は、前記第1温度測定手段で測定された入口温度と前記第2温度測定手段で測定された出口温度との差に基づいて、ブローダウンの実行時間を設定する、
請求項1又は2に記載の水処理システム。
【請求項4】
循環水に殺菌剤を供給する殺菌剤供給手段を更に備え、
前記水質制御手段は、
(i)前記計時手段による計時が予め設定された滞留時間閾値に達していない場合は、補給水の流量に比例した量の殺菌剤を前記殺菌剤供給手段から供給させる処理を実行し、(ii)前記計時手段による計時が予め設定された滞留時間閾値に達した場合には、補給水の流量に関係なく、殺菌剤を前記殺菌剤供給手段から供給させる処理を実行する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72629(P2013−72629A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214228(P2011−214228)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)