説明

水分散型粘着剤

【課題】 高温時での高い保持力と非極性被着体への高い接着性と局面反発性を両立させる粘着性能を有する水分散型粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】 ビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体との(共)重合体からなる粒子(a)の水分散系からなり、かつ、前記粒子の表面に凸部(b)を有する水分散型粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ、ラベル、シートあるいは両面テープ等の各種粘着性加工品における粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着加工品に関するもので、より詳しくは、高温時における高い保持力及び非極性被着体への高接着力と局面反発性に優れる水分散型粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、粘着剤分野においては公害規制、安全衛生、省資源等の面からの無溶剤化の要望により、従来の主体であった溶剤型粘着剤から水性分散型粘着剤に置き換わりつつある。しかしながら水分散型粘着剤は粘着性能上、未だ溶剤型の水準まで到達しておらず、高度な粘着性能を要求される用途には従来通り溶剤型粘着剤が使用されており、水分散型粘着剤の更なる改良が切望されているのが現状である。水分散型粘着剤の大きな欠点の一つとして、粘着物性のバランスをとることが非常に困難であるという問題がある。即ち実用上重要な粘着性能である曲面接着性において、この向上を図ろうとした場合、一般的に凝集力(保持力)特に高温における保持力、或はタックを犠牲にしなければならず、粘着性能を高水準でバランス良く保つことは困難である。
【0003】
従来上記のような問題点に対して、主に水分散型アクリル系粘着剤において改良検討が行われてきたがこれまで有効な手段を見い出すに至っていない。例えば、特開昭63−234076号には水性分散型アクリル系粘着剤において特定の平均粒子径を有する粒子を特定割合で混在させる組成物が開示されている。しかしながら本発明者らの知見によると前記提案のように同一組成共重合物での粒子径分布が単に2ピークとなる粒子の混在だけでは高水準での粘着特性のバランスをとることは不十分である。
【特許文献1】特開昭63−234076号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような従来の水分散型粘着剤の欠点を克服する、高温時での高い保持力と非極性被着体への高い接着性と局面反発性を両立させる粘着性能を有する水分散型粘着剤組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らはこれらの問題点を解決するため、水分散型における粒子形態が粘着性能に及ぼす影響が極めて大きいことに着目して鋭意研究を行った結果、ビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体との(共)重合体からなる粒子(a)の表面に凸部を有する水分散型粘着剤が、高温時での高い保持力と非極性被着体への高い接着性と局面反発性を両立させることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
ビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体との(共)重合体からなる粒子(a)の水分散系からなり、かつ、前記粒子の表面に凸部(b)を有する水分散型粘着剤
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水分散型粘着剤は、高温時での高い保持力と非極性被着体への高い接着性及び局面反発性を両立させた粘着製品を得ることができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0009】
本発明における粒子(a)を構成するビニル単量体としては、具体的には、例えばメチル−、エチル−、n−プロピル−、イソプロピル−、n−ブチル−、イソブチル−、sec−ブチル−、tert−ブチル−、n−アミル−、イソアミル−、n−ヘキシル−、シクロヘキシル−、ヘプチル−、オクチル−、2−エチルヘキシル−、2−エチルオクチル−、デシル−、ドデシル−、オクタデシル−、ラウリル−、ステアリル−、等のアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルを含む単量体が挙げられ、これらは単独で、或いは2種類以上混合して用いることができるが、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜10のものが用いられ、更に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜8の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を2種類以上混合して用いられる。アルキル基の炭素数が長くなりすぎると、重合反応がスムーズに進行しない傾向がある。
【0010】
またこれらビニル単量体とともにこれと共重合可能な他の単量体も使用できる。具体的には水酸基を含有する単量体として例えば2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタアクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタアクリレート、カルボキシル基を含有する単量体として例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、グリシジル基を含有する単量体として例えばグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルシンナート、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノエポサイド、アミド基を含有する単量体として例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、スルホン酸基を含有する単量体として例えばスチレンスルホン酸及びその塩類、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸及びその塩類、アリルスルホン酸及びその塩類、メタアリルスルホン酸及びその塩類、等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種類以上混合して用いることができる。
【0011】
さらに、他の単量体としては上記のビニル単量体の他に、必要に応じて2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体及びその他のモノエチレン性不飽和単量体等を共重合しても良い。
【0012】
まず、2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、具体的には、例えばブタジエン、ジビニルベンゼン、(ポリ)エチレングリコールジアクリレート、(ポリ)エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種類以上混合して用いることができる。
【0013】
その他のモノエチレン性不飽和単量体としては、例えば酢酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、塩化ビニル、ビニルピロリドン等のビニル系単量体が挙げられる。
【0014】
ビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体を主成分とし、これに各々異なる官能基を有するエチレン性不飽和単量体を2種以上、必要に応じて2個以上のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体及びその他のモノエチレン性不飽和単量体(以下アクリル系単量体と称す)の共重合体を製造する方法としては、特に制限はないが、通常、公知の乳化重合法に従って行うことで十分であり、特殊な方法を必要とするものではない。すなわち、水、上記ビニル単量体混合物、界面活性剤、連鎖移動剤(重合度調節剤)、ラジカル重合開始剤を基本構成とする乳化重合法である。
【0015】
まず、界面活性剤としては、具体的には例えば脂肪酸石鹸、ロジン石鹸、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジアルキルアリールスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンコポリマー等のノニオン性界面活性剤が挙げられ、通常アニオン性界面活性剤単独またはアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤の混合系で用いられる。さらに必要に応じて、ラジカル重合性の界面活性剤またはカチオン性界面活性剤を用いることができる。
【0016】
また、連鎖移動剤としては、具体的には例えば、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール等のメルカプタン類、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0017】
また、ラジカル開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル等のアゾビス化合物等が挙げられるが、特に過硫酸塩が好ましい。
【0018】
本発明の乳化重合において、重合温度は60〜90℃の範囲が一般的であるが、重亜硫酸ソーダ、アスコルビン酸(塩)、ロンガリット等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせた低温レドックス重合を用いることもできる。また必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、りん酸水素ナトリウム等のPH調節剤、あるいはPH緩衝剤等の重合調節剤を添加することもできる。
【0019】
また本発明の水分散型粘着剤は、アルカリ中和を行うことによって安定性を向上させることもできる。中和剤としては例えばアンモニア水溶液、水酸化ナトリウム等の水酸化物、アミン等を用いることができる。
【0020】
上記乳化重合により得られる共重合体粒子の体積平均粒子径としては、通常30〜3,000nmであり、好ましくは200〜1,000nmであり、より好ましくは300〜700nmである。30nm未満では粘度が上昇し、固形分(濃度)が十分に高められなく、3000nmを超える場合は粒子の沈降等の問題が生じる場合がある。
【0021】
本発明に用いられる凸部(b)の有機物及び/又は無機物とは、水に不溶な有機物及び/無機物をコロイド状態で水に分散させたものであれば特に制限はないが、有機物の例としては、例えばアクリル系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ブタジエン系樹脂、ゴム系樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、粘着付与樹脂、等が挙げられる。
【0022】
又、無機物の例として、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、非晶質シリカ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、アルミナ、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、珪藻土、ハイドロタルサイト等が挙げられる。
【0023】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンを主成分にした有機系粒子が好ましい。
【0024】
凸部(b)の平均の長さと粒子(a)の体積平均粒子径との比(凸部(b)の平均の長さ/粒子(a)の体積平均粒子径)は、0.01〜1.0の範囲で有り、好ましくは0.05〜0.8の範囲であり、より好ましくは0.2〜0.6の範囲である。0.01未満の場合、或いは1.0を超える場合は保持力と接着力の両立が出来なくなる。
【0025】
凸部(b)の形成方法としては、凸部(b)となりうる有機物及び/又は無機物の存在下で、粒子(a)を重合すること又は、粒子(a)の重合下に凸部(b)となりうる有機物及び/無機物を存在させる事などの手法を用いることができる。
【0026】
以上のようにして得られた水分散型粘着剤は、要求される物性や性能を付与するために、粘着剤の分野で使用されている種類及び量の配合剤を、本発明の効果を損なうことのない範囲で、必要に応じて添加することができる。
【0027】
添加できる配合剤としては、例えば増粘剤、機械的安定性付与剤、粘着付与剤、レベリング剤、濡れ剤、造膜助剤、架橋剤、防腐剤、防錆剤、顔料、充填剤、分散剤、凍結防止剤、消泡剤等が挙げられ、これらは単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用する事ができる。
【実施例】
【0028】

以下に実施例、及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、例中の部は質量部を、%は質量%をそれぞれ表す。

さらに各物性値の測定は次の方法で行った。

i)固形分(単位:%)
水分散型粘着剤組成物約2gをシャーレに精秤し、105℃で3時間乾燥後再び精秤し、次式により算出した。
【0029】
固形分(%)=(A−B)/A×100
ここで、Aは乾燥前の重量であり、Bは105℃で3時間乾燥した後の重量である。

ii)粒子径(μm)
大塚電子(株)製LPA−3100を使用し、動的光散乱方式により測定した体積平均粒子径

iii)粘着シートの作成
剥離紙に乾燥重量で約20g/mとなる様に塗工し、100℃で3分乾燥させた後、上質紙(55K連量)に転写させ粘着物性測定用試料を作成した。

iv)粘着物性評価方法
a)接着力
幅25mm、長さ150mmの試験片を23℃−50%RHの雰囲気下において2kg重量のゴムロールを用いて、厚み5mm×幅50mm×長さ125mmのステンレス板(SUS)、ポリエチレン板(PE)に300mm/分の速さで圧着後、30分間23℃−50%RHの雰囲気下に放置後、JIS Z0237に準拠し180°ピール強度を測定した。
b)凝集力
JIS Z0237に準拠し、幅25mm、長さ150mmの試験片を23℃−50%RHの雰囲気下において2kg重量のゴムロールを用いてステンレス鋼板(SUS304)に接着面積が25mm×25mmになる様に圧着した接着サンプルを圧着30分後に70℃の雰囲気中に垂直に吊し、試験片の下端に1kgの分銅を掛け静置させ分銅が落下するまでの時間或いは1440分後のズレ幅を測定した。
c)ボールタック(J−Dow法)
23℃−50%RHの雰囲気下において、試験片幅50mm、長さ250mmをJIS Z0237に準拠し、測定を行った
d)局面反発性
直径10mmのポリエチレン製円筒を被着体とし、幅10mm、長さ20mmの試験片を23℃−50%RHの雰囲気下で長さ方向を円周と平行に接着し、2日後に剥離長さを測定した。剥離長さが0.5mm未満を○、0.5mm以上1mm未満を△、1mm以上を ×で表示した。

実施例・比較例中で使用した単量体は、下記の略称で表す。
【0030】
2−エチルヘキシルアクリレート・・・2EHA
メチルメタアクリレート・・・MMA
アクリル酸…AA
n−ドデシルメルカプタン・・・nDM
スチレン・・・ST
イソボロニルメタクリレート・・・IBX
【0031】
[実施例1]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水262部を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、ST15部からなる単量体をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)0.15部を過硫酸アンモニウム0.075部、蒸留水7.5部に乳化分散させた単量体乳化物を30分かけて連続的に滴下し、さらに80℃で60分間反応を継続させた。次に2EHA425部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水250部に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.6%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部の平均の長さ140nmを含む体積平均粒子径420nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0032】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0033】
[実施例2]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水262部を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、IBX15部からなる単量体をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)0.15部を過硫酸アンモニウム0.075部、蒸留水7.5部に乳化分散させた単量体乳化物を30分かけて連続的に滴下し、さらに80℃で60分間反応を継続させた。次に2EHA425部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水250部に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.3%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部の平均の長さ86nmを含む体積平均粒子径387nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0034】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0035】
[実施例3]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水262部を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、EA15部からなる単量体をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)0.15部を過硫酸アンモニウム0.075部、蒸留水7.5部に乳化分散させた単量体乳化物を30分かけて連続的に滴下し、さらに80℃で60分間反応を継続させた。次に2EHA425部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水250部に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.5%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部の平均の長さ190nmを含む体積平均粒子径350nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0036】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0037】
[実施例4]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水210部、スノーテックス20L75部(日産化学工業(株)製コロイダルシリカ、粒子経40nm)を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、2EHA425部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水250部に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.1%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部にコロイダルシリカの平均の長さ40nmを含む体積平均粒子径260nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0038】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0039】
[比較例1]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水262部を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、2EHA440部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水258部に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.9%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部を含まない体積平均粒子径420nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0040】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0041】
[比較例2]
窒素導入管、攪拌機を設置した温度調節可能な反応器に蒸留水262部を仕込み窒素気流下で80℃まで昇温した後、ST15部、2EHA425部、MMA65部、AA10部、nDM0.2部からなる単量体混合物をアニオン系界面活性剤(ペレックスSSL:花王(株)製)5.0部、過硫酸アンモニウム2.5部、蒸留水258に乳化分散させた単量体乳化物を4時間で連続的に添加し、さらに80℃で3時間反応を継続し、重合を完結させた後冷却した。完結させたエマルションをアンモニア水にてPHを7.5に調整後、金網等で濾過し、固形分50.9%のアクリル共重合体エマルジョンが得られ、得られたアクリル共重合体エマルジョンの電子顕微鏡写真より、凸部を含まない体積平均粒子径411nmのアクリル共重合体エマルジョンを得た。
【0042】
さらに、上記アクリル共重合体エマルションに対し、ノプコ8034(消泡剤:サンノプコ(株)製)を0.1部、ジアルキルスルホ琥珀酸エステルナトリウム(ネオコールSW−C:第一工業製薬製)を1.0部加え、会合型増粘剤(アデカノールUH−420:旭電化工業(株)製)を23℃におけるB型回転粘度計での60回転の粘度が3000mPa・sとなる量を添加し水分散型アクリル系粘着剤を得た。
【0043】
上記実施例および比較例で得られた水分散型アクリル系粘着剤の塗工性能評価結果を表1に示した。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の水分散型粘着剤は、相反物性であるポリオレフィン等の低極性被着体に対する接着力と高温での凝集力、更には局面反発性に優れた粘着ラベル、粘着テープの製造を可能にし、従来の水分散型粘着剤が使用不能であった分野にも用途拡大が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1で得られた水分散型粘着剤の電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例1で得られた水分散型粘着剤の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体との(共)重合体からなる粒子(a)の水分散系からなり、かつ、前記粒子の表面に凸部(b)を有する水分散型粘着剤。
【請求項2】
ビニル単量体が、アクリル酸アルキルエステル、メタアクリル酸アルキルエステル又はこれらの混合物である請求項1に記載の水分散型粘着剤。
【請求項3】
粒子(a)が、30〜3,000nmの体積平均粒子径を有する請求項1に記載の水分散型粘着剤。
【請求項4】
凸部(b)の平均の長さと粒子(a)の体積平均粒子径との比(凸部(b)の平均の長さ/粒子(a)の体積平均粒子径)が、0.01〜1.0である請求項1に記載の水分散型粘着剤。
【請求項5】
粒子(a)の水分散系が、水媒体中でビニル単量体又はこれらの単量体と共重合可能な他の単量体とを重合して得られたものである請求項1に記載の水分散型粘着剤。
【請求項6】
粒子(a)が、−60〜110℃のガラス転移温度を有する請求項1に記載の水分散型粘着剤。
【請求項7】
凸部(b)が、有機物及び/又は無機物からなる請求項1に記載の水分散型粘着剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−77084(P2006−77084A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260975(P2004−260975)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】