説明

水切り方法および水切り装置

【課題】溶剤組成物に短時間で多量の水が混入しても懸濁が生じにくく、あるいは懸濁を短時間で解消することができ、連続的に安定した良好な水切り性能を維持することができる水切り方法および水切り装置を提供する。
【解決手段】本発明の水切り方法は、表面に水が付着した物品を、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物中に浸漬し、付着した水を離脱させる浸漬工程と、前記物品から離脱した水を含有する溶剤組成物を浸漬工程から取り出す浸漬液取出工程と、物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物中に気体を吹き込む曝気工程と、曝気された前記溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離工程と、前記分離工程で水が分離された前記溶剤組成物を、前記浸漬工程に供給する回収送液工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の表面に付着した水を除去し乾燥する水切り方法、および水切り装置に関する。なお、本明細書において、水切りとは、水が表面に付着した物品から水を離脱させて除去することを意味し、いわゆる水切り乾燥、脱水、乾燥といった態様を含むものである。
【背景技術】
【0002】
通常、半導体の製造に使用されるウエハ、フォトリソグラフィ工程で使用されるマスク、メッキ製品、レンズ等の光学部品、液晶表示装置部品、および各種電子部品に用いられる物品は、その製造工程において、純水等の水で洗浄されたり、水系洗浄剤、準水系洗浄剤で洗浄された後に純水等の水で濯がれて清浄化される。このとき、水が十分に除去されずに物品の表面に残存すると、乾燥後に物品の表面が不均一になり、しみの発生による外観不良や、後工程での表面処理の不均一、あるいは錆の発生による性能不良等が起こる可能性がある。そのため、物品の表面から完全に水を除去することが重要である。
【0003】
この水の除去(水切り)方法として、被洗浄物品を、水を除去し得る溶剤に浸漬し引き上げた後、溶剤を乾燥させる方法が知られている。この方法に用いられる溶剤としては、ハイドロクロロフルオロカーボン類(以下、HCFC類ともいう。)、ハイドロフルオロカーボン類(以下、HFC類ともいう。)、ハイドロフルオロエーテル類(以下、HFE類ともいう。)等の含フッ素炭化水素類に、アルコール類を添加した組成物が提案されている。
【0004】
しかし、このような溶剤組成物は、初期の水切り性能は良好であるものの、連続的に長期間使用すると、溶剤組成物中に水が取り込まれ懸濁するという問題があった。すなわち、物品から除去された水が溶剤組成物中に混入した場合、大部分の水は、比較的大きな液滴を形成して浮上し分離するか、あるいは溶剤組成物に溶解するが、微量の水は微細な液滴となって溶剤組成物中に存在する。そして、この微細な液滴は、初期には液の循環などによって撹拌混合され、分散するかまたは溶剤組成物に溶解して消失する。しかし、長期間使用するにしたがって、微細な液滴は数が増加する。これらの液滴は微細であるため浮上速度が小さく、容易に浮上分離せずに溶剤組成物中に安定的に浮遊する。この安定的に浮遊する微細な液滴が懸濁を引き起こすと考えられる。
【0005】
懸濁状態の溶剤組成物では、このような微細な液滴が広範囲に分散した状態となっている。この状態の溶剤組成物に物品を浸漬すると、物品を引上げる際に懸濁した溶剤組成物が物品表面に付着して持ち出される。そして、乾燥する際に溶剤のみが先に蒸発するため、懸濁していた液滴が物品の表面にしみを発生させる。
【0006】
さらに、物品を溶剤組成物に浸漬する際に、短時間で効率良く水切りを行う目的で、超音波洗浄、揺動洗浄、噴流洗浄のような強制的に溶剤組成物を撹拌する方法を採ることがある。また、浸漬槽の液面に浮上した水を除去する目的で、溶剤組成物を循環させる手段を設けることがある。そのため、水を含む溶剤組成物が強制的に撹拌され、懸濁がさらに激しくなる。また、この懸濁状態の溶剤組成物が水切り装置内を循環すると、懸濁が溶剤組成物全体に及んで懸濁の解消がより難しくなるため、さらに物品表面にしみが発生しやすくなるという問題があった。
【0007】
この問題を解決する方法として、水切り処理後の溶剤の流路に、溶剤は通すが水は通さない多孔質フッ素樹脂ペーパを配置し、溶剤中に浮遊分散した水の通過を阻み、水分離を行う方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、HCFC類、HFC類、およびHFE類と、アルコール類とを必須成分とする溶剤組成物を用いて水切りを行う方法において、水が混入した溶剤組成物をコアレッサ方式のフィルタに通過させて分離する工程を備える水切り方法が提案されている(特許文献2参照)。しかし、これらの方法では、多量の水が短時間に混入した場合、水を十分に分離することができず、懸濁を解消することができない場合があった。
【特許文献1】特開2002−355502号公報
【特許文献2】WO2005/079943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたもので、溶剤組成物に短時間で多量の水が混入しても懸濁が生じにくく、あるいは懸濁が生じても懸濁を短時間で解消することができ、連続的に安定した良好な水切り性能を維持することができる水切り方法、および水切り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の水切り方法は、表面に水が付着した物品を、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物中に浸漬し、付着した水を離脱させる浸漬工程と、前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物を、前記浸漬工程から取り出す浸漬液取出工程と、前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物中に気体を吹き込む曝気工程と、曝気された前記溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離工程と、前記分離工程で水が分離された前記溶剤組成物を、前記浸漬工程に供給する回収送液工程を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の水切り装置は、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物を貯留し、表面に水が付着した物品を前記溶剤組成物中に浸漬して付着した水を離脱させる浸漬槽と、前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物を貯留し、該溶剤組成物中に気体を吹き込む気体噴出機構を有する曝気槽と、前記気体が吹き込まれた前記溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離槽と、前記分離槽で水が分離された前記溶剤組成物を前記浸漬槽に供給する回収送液機構を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物を用いて水切りを行うにあたり、溶剤組成物に短時間で多量の水が混入しても懸濁することがなく、あるいは生じた懸濁を短時間で解消することができ、連続的に安定した良好な水切り性能を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態において使用される溶剤組成物は、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類とを必須成分とするものである。含フッ素炭化水素類は、ハイドロフルオロカーボン類(HFC類)、ハイドロフルオロエーテル類(HFE類)およびパーフルオロカーボン類(PFC類)から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、特にHFC類およびHFE類から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【0013】
HFC類として、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
HFE類として、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンが挙げられる。これらの化合物は、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。PFC類としては、例えばパーフルオロヘキサンが挙げられる。
【0015】
低級アルコール類としては、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの炭素数1から4のアルカノールが挙げられる。これらは、単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0016】
本発明において、溶剤組成物中の低級アルコール類の含有割合は、1〜20質量%とすることが好ましく、特に3〜15質量%とすることが好ましい。溶剤組成物における低級アルコール類の含有割合が小さすぎる(例えば1質量%未満)と、水が表面に付着した物品を溶剤組成物中に浸漬したときの当該物品表面からの水の離脱が困難になり、物品を引き上げたときに表面に水が残存しやすくなる。一方、低級アルコール類の含有割合が大きすぎる(例えば20質量%を超える)と、溶剤組成物が引火しやすい組成となるため、安全に取扱うことが難しくなる。また、物品の表面から離脱して浮上し分離する水には低級アルコール類の一部が抽出されるが、溶剤組成物中の低級アルコール類の含有割合が大きくなると、浮上する水に含まれる低級アルコールの濃度が高くなる。したがって、そのような低級アルコールを補填するために必要な量が増大し、さらに排出される水に含まれる低級アルコールの濃度が高くなるので、その水処理に係る負荷も増大する。
【0017】
また、前記低級アルコール類の含有割合について、HFC類またはHFE類と低級アルコール類とが共沸組成を有する場合は、蒸発する際の組成変動を抑制できることから、HFC類またはHFE類との共沸組成であるものを用いることが好ましい。
【0018】
具体的な共沸組成として、以下のものが例示できる。すなわち、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン/メタノール(94質量%/6質量%)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン/エタノール(97.5質量%/2.5質量%)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン/イソプロパノール(96.6質量%/3.4質量%)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン/メタノール(94質量%/6質量%)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン/エタノール(96質量%/4質量%)、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン/イソプロパノール(96.7質量%/3.3質量%)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン/メタノール(89.2質量%/10.8質量%)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン/エタノール(91.3質量%/8.7質量%)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン/イソプロパノール(90.9質量%/9.1質量%)、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン/メタノール(92.1質量%/7.9質量%)、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン/エタノール(94.5質量%/5.5質量%)、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン/イソプロパノール(95.6質量%/4.4質量%)、パーフルオロブトキシメタン/イソプロパノール(95質量%/5質量%)。
【0019】
本発明の実施形態において使用される溶剤組成物には、各種の目的に応じてその他の成分を含有させることができる。例えば、溶解力を高めるためと揮発速度を調節するために、前記したHFC類、HFE類および低級アルコール類以外の有機溶剤(以下、他の有機溶剤という。)をさらに含有させることができる。
【0020】
他の有機溶剤としては、ハロゲン原子を含まない炭化水素類、ケトン類、ハロゲン原子を含まないエーテル類、エステル類、およびHFC類またはHFE類以外のハロゲン化炭化水素類から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。他の有機溶剤の含有割合は、溶剤組成物の水切り性能を損なわない範囲で、目的を達成できる割合とするのが好ましく、具体的には、溶剤組成物全体の1〜20質量%、特に1〜10質量%とすることが好ましい。
【0021】
ハロゲン原子を含まない炭化水素類としては、炭素数5〜15の鎖状または環状の飽和または不飽和炭化水素類が好ましく、具体的には、n−ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられる。
【0022】
ケトン類としては、炭素数3〜9の鎖状または環状の飽和または不飽和ケトン類が好ましく、具体的には、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0023】
ハロゲン原子を含まないエーテル類としては、炭素数2〜8の鎖状または環状の飽和または不飽和エーテル類が好ましく、具体的には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0024】
エステル類としては、炭素数2〜19の鎖状または環状の飽和または不飽和エステル類が好ましく、具体的には、酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。
【0025】
HFC類およびHFE類以外のハロゲン化炭化水素類としては、炭素数1〜6の飽和または不飽和の塩素化炭化水素類が好ましく、具体的には、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が挙げられる。
【0026】
次に、本発明の実施形態の水切り方法を具体的に説明する。実施形態の水切り方法は、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする前記溶剤組成物中に、表面に水が付着した物品を浸漬し、付着した水を離脱させる水切りを行う浸漬工程と、物品から離脱した水を含有する溶剤組成物中に気体を吹き込む曝気工程と、曝気された溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離工程を備えている。
【0027】
実施形態の浸漬工程においては、例えば、前記した溶剤組成物を貯留した浸漬槽が使用される。そして、浸漬槽の溶剤組成物中に、表面に水が付着した物品が浸漬される。浸漬工程では、水切り効果を高めるために、溶剤組成物中で物品を揺動させることが好ましい。また、物品を溶剤組成物の液中から引き上げた後、再び溶剤組成物中に浸漬したり、あるいは浸漬と引き上げを繰り返し行うことができる。さらに、浸漬と引き上げを繰り返し行う場合には、複数の浸漬槽を並べて配置しても良い。
【0028】
浸漬工程では、物品を金属、樹脂などの高分子材料、セラミック等で作られたカゴ状の容器に入れて、あるいは竿、フック、クリップ等により保持して、溶剤組成物中に浸漬することができる。物品の形状、材質、数量に合せて種々の浸漬形態を採ることができる。物品を収容したカゴ状の容器を、溶剤組成物中で回転させたりあるいは往復動させることで、物品と溶剤組成物との接触の効率を高め、水切り効果を上げることも可能である。
【0029】
また、水切り効果を上げるために、溶剤組成物から取り出された後の物品に対して、溶剤組成物の液滴を噴きかけることもできる。さらに、物品に付着している溶剤組成物を、溶剤組成物の漏洩を抑えて短時間で乾燥させるために、浸漬槽の上部に蒸気乾燥部を設け、溶剤組成物から取り出された物品を、蒸気乾燥部で溶剤組成物の蒸気に5秒〜3分間接触させ、溶剤組成物の蒸気温度すなわち沸点まで加温する方法を採ることもできる。さらに、溶剤組成物から取り出す際の速度を調節することで、装置外への溶剤組成物の漏洩を抑えることができる。
【0030】
浸漬工程においては、こうして溶剤組成物中に物品を浸漬することにより、物品に付着した水が物品表面から離脱する。浸漬の際に、超音波洗浄、揺動洗浄、噴流洗浄の1種以上を併用して物品表面からの水の離脱を促進し、離脱に要する時間を短縮することができる。物品を溶剤組成物中に浸漬する時間は、30秒〜10分間とすることできる。
【0031】
物品表面から離脱した水の大部分は、比較的大きな液滴を形成し、溶剤組成物中を浮上し液面に達して水層(水溶液層)を形成するか、もしくは溶剤組成物中に溶解する。
【0032】
浮上した水は浸漬工程から除去されることが必要である。本発明においては、後述するように、物品から離脱した水を含有する溶剤組成物を、浸漬槽から溢流(オーバーフロー)させることで、浸漬工程から取り出すことができる。
【0033】
浸漬工程における溶剤組成物の温度は、高くすることにより(具体的には、当該溶剤組成物の沸点よりも15℃低い温度から沸点未満、特に沸点よりも10℃低い温度から沸点未満の温度とする)、溶剤組成物の懸濁を抑制し、懸濁した場合も懸濁を解消する効果がある。なお、ここでいう沸点とは、溶剤組成物が共沸組成物または共沸様組成物である場合は、その共沸点である。また、溶剤組成物が共沸組成物ではない場合は、HFC類およびHFE類から選ばれる少なくとも1種の沸点である。
【0034】
本発明では、物品から離脱した水を含有する溶剤組成物を、前記した浸漬工程から取り出し曝気工程に送る浸漬液取出工程を設ける。浸漬液取出工程においては、例えば、新たな溶剤組成物あるいは後述する工程で水が除去された溶剤組成物を浸漬槽の底部から供給することにより、浸漬槽内の溶剤組成物に上方への流れを形成し、この液流によって水を含有する溶剤組成物を浸漬槽の上端から溢流(オーバーフロー)させる。このとき、浸漬槽の上端に堰を設け、この堰から溢流(オーバーフロー)する溶剤組成物を、次の曝気工程に送るように構成することができる。また、液面の一方から他方に向けて溶剤組成物の液流を流し、浮上した水と溶剤組成物との混合物を浸漬槽の外へ押し流す方法を採ることもできる。
【0035】
こうして、物品から離脱した水を含有する溶剤組成物は、曝気工程に送られる。曝気工程では、物品から離脱した水を含有する溶剤組成物を貯留する曝気槽内で、気体噴出機構によりこの溶剤組成物中に気体が吹き込まれる。吹き込まれた気体は、溶剤組成物や水に比べて密度が小さいので、溶剤組成物中を浮上する。このとき、溶剤組成物中に浮遊する微細な液滴が同伴され、気体とともに液面まで浮上して分離される。こうして、吹き込まれた気体とともに浮上した微細な液滴が凝集することによって、主に水からなる層が液面に形成され、溶剤組成物の懸濁が解消されるものと考えられる。
【0036】
曝気工程において、溶剤組成物中に吹き込む気体としては、空気、窒素、不活性ガス等を使用することができる。入手の容易さと装置の簡便性から、空気あるいは窒素の使用が好ましい。これらの気体の吹き込み量は、溶剤組成物1Lに対して毎分0.01〜5Lとし、この吹き込み量で0.5〜30分間吹き込むことが好ましい。溶剤組成物の温度は、常温から溶剤組成物の沸点までの範囲で設定することができる。より短時間で懸濁を解消するために、できるだけ高い温度であること好ましい。
【0037】
気体の吹き込み口(噴出口)は、曝気槽の底部に近い位置に配置することが好ましい。このように配置した場合には、吹き込まれた気体の泡(気泡)が浮上する距離が長くなり、気泡が溶剤組成物と長い時間接触するため、少ない吹き込み量であるいは短い吹き込み時間で効率良く溶剤組成物の懸濁を解消することができる。
【0038】
気体の噴出口の形状、配置の態様などは特に限定されない。簡易的に細径のチューブ、ホース等を溶剤組成物中に挿入し、その先端から気体を噴出させる方法や、配管の途中に細径(直径0.5〜10mm程度)の孔を開け、そこから気体を噴出させる方法などを採ることができる。また、このような気体の噴出口の配置密度は、例えば曝気槽の底部に配置する場合、水平方向の断面積(水平断面積)10cm当たり1個以上とすることが好ましく、水平断面積10cm当たり2個以上、すなわち水平断面積5cm当たり1個以上配置することがより好ましい。さらに、気体の噴出口の数を多くし、あるいは噴出口の配置密度を高くして、溶剤組成物の液全体に気体を均等に吹き込むことにより、少量の吹き込み量で懸濁を解消することができる。
【0039】
気体の噴出口から噴出する気泡の径は、1〜50mmとすることが好ましく、1〜20mmとすることがより好ましい。さらに、気体の噴出口に、例えば多孔質ガラスから成るボール状のフィルタ(ガラスボールフィルタ)を設置し、気泡をより小さくすることで気体の吹き込み量を低減することができる。気泡の径が小さいと溶剤組成物との接触面積が増加するため、少量の吹込み量で懸濁を解消する効果が発揮される。
【0040】
曝気工程で、溶剤組成物中に吹き込まれた気体は液面の上方から排出される。このとき、溶剤組成物の蒸気を同伴するため、曝気槽内の溶剤組成物にロスが生ずるおそれがある。このロスを削減するため、曝気槽の上部に溶剤回収装置を設置し、気体中の溶剤組成物の蒸気を回収することができる。
【0041】
分離工程では、曝気工程で気体を吹き込まれた(曝気された)溶剤組成物が、比重分離法によって、主に水の層(水溶液層)と溶剤組成物の層との2層に分離される。比重分離は、曝気された溶剤組成物を静置する分離槽内で行なわれる。なお、この分離槽は、曝気槽と別に設けてもよいが、曝気槽をそのまま分離槽として使用してもよい。すなわち、曝気された溶剤組成物を曝気槽内にそのまま静置し、比重分離法による水分離を行ってもよい。
【0042】
本発明で使用される溶剤組成物は水よりも比重が大きいうえに、溶剤組成物を構成するHFC類、HFE類に水はわずかしか溶解しない。したがって、水分離槽に導入された水を含有する溶剤組成物を静置すると、アルコール類の溶解した主として水から成る上層(水溶液層)と、溶剤組成物からなる下層(溶剤組成物層)との2層に分離する。静置時間は、通常1分〜20分間程度で十分である。2層に分離した後、下層の溶剤組成物は回収送液工程に送られ、上層(水溶液層)は排出される。なお、上層(水溶液層)は、アルコール類、微量のHFC類またはHFE類を含むため、蒸留やパーベーパレーションなどの手段を用いてこれらを回収し、再利用してもよい。
【0043】
回収送液工程では、分離工程で水が分離・除去された溶剤組成物が、回収送液機構により浸漬槽に供給される。回収送液機構はポンプ等を備えることができる。水が分離・除去された溶剤組成物を浸漬槽に供給することで、浸漬槽内の溶剤組成物に上方への液流が形成される。そして、浸漬槽内の物品から離脱した水を含有する溶剤組成物は、分離工程で水が除去された溶剤組成物に置換される結果、浸漬工程で水切り性能を維持することが可能となる。
【0044】
次に、本発明の水切り方法を実施するための水切り装置について説明する。図1は本発明の水切り装置の一例である。この水切り装置は、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物1を貯留し、物品2の表面から付着した水を離脱させる(水切りを行う)浸漬槽3と、物品2から離脱した水を含有する溶剤組成物1を貯留し、この溶剤組成物1中に気体を吹き込む気体噴出機構4を有する曝気槽5と、曝気槽5で気体を吹き込まれた溶剤組成物1から水を比重分離法により分離する分離槽6とを備えている。また、分離槽6で水が分離・除去された溶剤組成物1を浸漬槽3に供給する回収送液機構7を有している。
【0045】
浸漬槽3においては、表面に水が付着した物品2が溶剤組成物1中に浸漬され、物品2表面から付着した水が離脱される。物品から離脱した水を含有する溶剤組成物1は、浸漬槽3から溢流(オーバーフロー)させることによって取り出され、曝気槽5に供給される。
【0046】
曝気槽5に設けられた気体噴出機構4は、気体導入配管4aとその中間部に設けられた複数の気体噴出口4bから構成され、気体噴出口4bが曝気槽5の底部に位置するように配置されている。
【0047】
曝気槽5で気体を吹き込まれた溶剤組成物1は、曝気槽5から溢流(オーバーフロー)させることによって分離槽6に送られる。送られた溶剤組成物1は、分離槽6内で静置されることによって、上層である水層(水溶液層)と下層である溶剤組成物の層との2層に分離される。なお、図1では、分離槽6が曝気槽5と別に設けられているが、曝気槽をそのまま分離槽として使用してもよい。すなわち、曝気された溶剤組成物を曝気槽内にそのまま静置し、比重分離法による水分離を行ってもよい。
【0048】
分離槽6で水が分離・除去された下層の溶剤組成物1は、回収送液機構7のポンプ7aにより溶剤回収路7bを通って浸漬槽3に戻される。
【0049】
このような水切り装置を用いて行われる本発明の実施形態の水切り方法によれば、浸漬工程で溶剤組成物に多量の水が短時間で混入しても、溶剤組成物が懸濁することがなく、あるいは懸濁が生じても懸濁を短時間で解消することができ、連続的に安定した良好な水切り性能を長期間維持することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。実施例1,2および比較例1,2においては、図2に示す水切り装置を用いて水切り洗浄の試験を行なった。なお、図2において、図1と同一の部分には同一の符号を付す。
【0051】
この水切り装置は、槽内に含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物1を貯留し、表面に水が付着した物品2から付着した水を離脱させる(水切りを行う)浸漬槽3と、物品2から離脱した水を含有する溶剤組成物1を貯留し、この溶剤組成物1中に気体を吹き込むとともに、気体が吹き込まれた溶剤組成物1を静置して比重分離を行う曝気・分離槽8と、曝気・水分離槽8で水が分離された溶剤組成物1を蒸留して溶剤を回収する蒸留槽9を備えている。また、曝気・分離槽8で水が分離・除去された溶剤組成物1を、ポンプ7aにより溶剤回収路7bを通って浸漬槽3に供給する回収送液機構7を有している。
【0052】
浸漬槽1の底部には、物品2からの水の離脱を促すために、超音波発振器10が設置されている。また、曝気・分離槽8には、気体噴出機構4として、先端にガラスボールフィルタ4cが取り付けられたSUS304製のチューブが配置されている。さらに、浸漬槽3と曝気・分離槽8および蒸留槽9にはそれぞれヒータ11が付設されており、これらのヒータ11の通電を制御することで、各槽内に収容された溶剤組成物1の温度を個別に調整するように構成されている。
【0053】
浸漬槽3内の溶剤組成物1は、回収送液機構7によって曝気・分離槽8から水が分離・除去された溶剤組成物1が供給されることにより、仕切り板12で仕切られた流路へ溢れ出し、仕切り板12の底部から曝気・分離槽8内へ流れ込み、循環するように構成されている。
【0054】
曝気・分離槽8内で曝気後静置された溶剤組成物の一部は、底部が連通した仕切り板15で仕切られた流路へ流入し、さらに仕切り板15の上部から溢れて蒸留槽9内へ流れ込む。蒸留槽9では、ヒータ11での加熱によって溶剤の蒸気が発生し、この溶剤の蒸気は蒸留槽9の上部に設置された冷却管13により冷却・凝縮され、樋14を経て曝気・分離槽8に戻される。そして、曝気・分離槽8内の溶剤組成物1が、仕切り板15を経て蒸留槽9にオーバーフローすることにより、蒸留槽9での溶剤の蒸発分を補うように構成されている。物品2bを浸漬槽3から引上げた後溶剤組成物1の蒸気に曝して蒸気温度に加熱することにより、その後水切り装置から取り出す際の乾燥時間を短縮できる。
【0055】
実施例1
溶剤組成物1としてAE−3100E(旭硝子(株)の商品名:2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタンとエタノールとの共沸混合物)80kgを、図2に示す水切り装置の浸漬槽3、曝気・分離槽8および蒸留槽9に4:3:2の割合で分けて注入した。また、各槽のヒータ11に通電して、浸漬槽3および曝気・分離槽8内の溶剤組成物1を45℃に加熱するとともに、蒸留槽9内の溶剤組成物1を54℃に加熱し、沸騰状態が維持されるようにした。曝気・分離槽8の下部から抜き出した溶剤組成物1を、送液量が約8L/分のポンプ7aによって浸漬槽3に供給し、これらの槽の間を溶剤組成物1が循環するようにした。さらに、曝気・分離槽8内に配置された気体噴出機構4のSUS304製チューブに、空気を1L/分の流量で10分間吹き込み、ガラスボールフィルタ4cから溶剤組成物1内に気泡を噴出させた。こうして1時間程度運転を続けた。
【0056】
次に、表面に水が付着した物品2として、洗浄済のガラス板(50mm×50mm×2mm)10枚を洗浄用治具に入れ、室温の純水に約10秒間浸漬した後引き上げたものを用いた。この物品2を浸漬槽3に投入し、超音波発振器10により周波数40kHz、出力200Wの超音波を照射しながら、溶剤組成物1中に2分間浸漬した。次いで、溶剤組成物1から引き上げられた物品2bを浸漬槽3の上部に保持した。こうして、蒸留槽9から発生する溶剤組成物の蒸気に1分間曝して、水切りを行った。引き上げ直後のガラス板の表面を目視で観察して水の付着の有無を確認したところ、水の付着は見られなかった。これを5分に1回のペースで8時間繰返し実施した。1時間ごとに10分間前記の要領で空気の吹き込みを繰返し行なった。8時間経過後も、浸漬槽3内の溶剤組成物1に懸濁は見られず、また最後に水切りを行なったガラス板も、表面に水の付着が見られなかった。
【0057】
比較例1
図2に示す水切り装置において、曝気・分離槽8内で曝気を行わずに、水を含む溶剤組成物1をそのまま放置した。それ以外は実施例1と同様にして、ガラス板の水切りを行った。水切り開始の初期においては、浸漬槽1から引き上げられた直後にガラス板が乾燥して、しみの発生が見られなかった。しかし、水切り開始から3時間を越えた時点で、浸漬槽3内の溶剤組成物1が少しずつ懸濁し始め、水切り操作の繰返しとともに懸濁が激しくなり、次第に浸漬槽3内の溶剤組成物1全体に懸濁が広がった。さらに曝気・分離槽8内の溶剤組成物1も懸濁し始め、水切り装置全体に懸濁状態が拡大した。ガラス板表面の水の付着については、3時間を越えた頃から、一部のガラス板で水切り後も水の付着が見られ始め、4時間経過の時点では、浸漬槽3から引き上げられた全てのガラス板に水が付着していた。その後8時間まで同様の操作を繰り返したが、懸濁は解消されず、ガラス板への水の付着が見られた。
【0058】
実施例2
溶剤組成物として、AC−2220(旭硝子(株)の商品名:1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサンとエタノールとの共沸混合物)を用いた以外は実施例1と同様にして、水切りを行った。初期および8時間運転後のガラス板の表面に水の付着は見られず、水切り装置(浸漬槽3および曝気・分離槽8)内の溶剤組成物に懸濁は起こらなかった。
【0059】
比較例2
図2に示す水切り装置において、曝気・分離槽8内で曝気を行わず、水を含む溶剤組成物1をそのまま放置した。それ以外は実施例2と同様にして、ガラス板の水切りを行った。水切り開始の初期においては、浸漬槽3から引き上げられた直後にガラス板が乾燥して、しみの発生が見られなかった。しかし、水切り開始から5時間を越えた時点で、浸漬槽3内の溶剤組成物1が少しずつ懸濁し始め、水切り操作の繰返しとともに懸濁が激しくなり、次第に浸漬槽3内の溶剤組成物1全体に懸濁が広がった。さらに曝気・分離槽8内の溶剤組成物1も懸濁し始め、水切り装置全体に懸濁状態が拡大した。ガラス板表面の水の付着については、5時間を越えた頃から、一部のガラス板で水切り後も水の付着が見られ始め、6時間経過の時点では、浸漬槽3から引き上げられた全てのガラス板に水が付着していた。その後8時間まで同様の操作を繰り返したが、懸濁は解消されず、ガラス板への水の付着が見られた。
【0060】
実施例3
容積3Lのビーカーに溶剤組成物であるAE−3100Eの2kgを入れ、これに40gの純水を添加した。このビーカーを、水を張った卓上超音波洗浄機に入れ、液温を45℃に保持した。次いで、周波数35kHz、出力200Wの超音波を4〜12分間照射し、溶剤組成物に懸濁を発生させた。
【0061】
次に、懸濁が生じた溶剤組成物中に、室温の乾燥空気を木下式ガラスボールフィルタG1を通して表1に示す流量で吹き込み、気泡を発生(バブリング)させた。このとき気泡の大きさは直径1〜3mmであった。この状態で表1に示す通気時間だけ保持した後、通気(吹き込み)を終了し、そのまま静置した。そして、懸濁が解消するまでに要した時間を計測した。なお、懸濁の解消は以下に示すような基準で判断した。すなわち、10ポイントの黒色ゴシック体文字を印字した白地の印刷物をビーカーの下に置き、溶剤組成物の液面の上方からビーカー底面を通して文字を観察した。そして、文字の線が鮮明に見えるようになった時点で、懸濁が解消されたものと判断した。
【0062】
こうして計測された懸濁解消までの時間を、表1に示す。溶剤組成物は懸濁が解消して透明な状態となり、液面の一部に分離した水溶液層が見られた。
【0063】
比較例3
実施例3と同様にして懸濁を発生させた溶剤組成物を用意し、そのまま2時間以上静置したが、懸濁は解消せず、白濁した状態のままであった。
【0064】
実施例4
吹き込む乾燥空気の流量を0.5L/分、通気時間を8分間とした以外は、実施例3と同様にして試験を行った。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0065】
実施例5
吹き込む気体として乾燥空気の代わりに乾燥窒素を用い、通気時間を6分間とした以外は、実施例3と同様にして試験を行った。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0066】
実施例6
木下式ガラスボールフィルタG1を通さずに、ガラス管から直接乾燥空気を吹き込み、通気時間を6分間とした。それ以外は実施例3と同様にして試験を行った。このとき発生する気泡の大きさは直径8〜15mmであった。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0067】
実施例7
溶剤組成物としてAC−2220を使用し、純水の添加量を24gとした。また、溶剤組成物中への通気時間を4分間とした。それ以外は実施例5と同様にして試験を行った。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0068】
比較例4
溶剤組成物としてAC−2220を使用し、これに24gの純水を添加し実施例3と同様にして懸濁を発生させた。この溶剤組成物をそのまま2時間以上静置したが、懸濁は解消せず、白濁した状態のままであった。
【0069】
実施例8
溶剤組成物としてNOVEC HFE−71IPA(住友スリーエム(株)の商品名:パーフルオロブトキシメタンとイソプロパノールとの混合溶剤組成物)を用い、純水の添加量を20gとした。また、通気時間を8分間とした。それ以外は実施例3と同様にして試験を行った。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0070】
比較例5
溶剤組成物としてNOVEC HFE−71IPAを使用し、これに20gの純水を添加し実施例3と同様にして懸濁を発生させた。この溶剤組成物をそのまま2時間以上静置したが、懸濁は解消せず、白濁した状態のままであった。
【0071】
実施例9
溶剤組成物としてVertrelXE(三井・デュポンフロロケミカル(株)の商品名:1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタンとエタノールとの混合溶剤組成物)を用い、通気時間を6分間とした。それ以外は実施例3と同様にして試験を行った。表1に示した懸濁解消時間で溶剤組成物の懸濁は解消し、透明な状態となった。
【0072】
比較例6
溶剤組成物としてVertrelXEを使用し、これに40gの純水を添加し実施例3と同様にして懸濁を発生させた。この溶剤組成物をそのまま2時間以上静置したが、懸濁は解消せず、白濁した状態のままであった。
【0073】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、IC、LSI等の半導体の製造に使用されるウエハやフォトリソグラフィ工程で使用されるマスク、メッキ製品、レンズ等の光学部品、液晶表示装置部品、各種電子部品等の各種用途に用いられる物品であり、金属、プラスチック、ガラス、セラミックス等から成る物品の水切り洗浄において、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の水切り方法を実施するための水切り装置の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例の水切り洗浄の試験を実施するための水切り装置を示す図である。
【符号の説明】
【0076】
1…溶剤組成物、2…物品、3…浸漬槽、4…気体噴出機構、4a…気体噴出口、4c…ガラスボールフィルタ、5…曝気槽、6…分離槽、7…回収送液機構、8…曝気・分離槽、9…蒸留槽、10…超音波発振器、11…ヒータ、12,15…仕切り板、13…冷却菅、14…樋。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に水が付着した物品を、含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物中に浸漬し、付着した水を離脱させる浸漬工程と、
前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物を、前記浸漬工程から取り出す浸漬液取出工程と、
前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物中に気体を吹き込む曝気工程と、
曝気された前記溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離工程と、
前記分離工程で水が分離された前記溶剤組成物を、前記浸漬工程に供給する回収送液工程
を備えることを特徴とする水切り方法。
【請求項2】
前記浸漬液取出工程は、前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物をオーバーフローさせる工程を有することを特徴とする請求項1記載の水切り方法。
【請求項3】
前記含フッ素炭化水素類は、ハイドロフルオロカーボン類および/またはハイドロフルオロエーテル類であることを特徴とする請求項1または2記載の水切り方法。
【請求項4】
前記ハイドロフルオロカーボン類は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の水切り方法。
【請求項5】
前記ハイドロフルオロエーテル類は、2,2,2−トリフルオロエトキシ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン、パーフルオロブトキシメタン、パーフルオロブトキシエタンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の水切り方法。
【請求項6】
前記曝気工程で前記溶剤組成物中に吹き込む気体は、空気または窒素であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の水切り方法。
【請求項7】
含フッ素炭化水素類と低級アルコール類を必須成分とする溶剤組成物を貯留し、表面に水が付着した物品を前記溶剤組成物中に浸漬して付着した水を離脱させる浸漬槽と、
前記物品から離脱した水を含有する前記溶剤組成物を貯留し、該溶剤組成物中に気体を吹き込む気体噴出機構を有する曝気槽と、
前記気体が吹き込まれた前記溶剤組成物から水を比重分離法により分離する分離槽と、
前記分離槽で水が分離された前記溶剤組成物を前記浸漬槽に供給する回収送液機構
を備えることを特徴とする水切り装置。
【請求項8】
前記気体噴出機構は、前記曝気槽に貯留された前記溶剤組成物の液面下に配設された気体噴出口と、該噴出口に配置された多孔質のガラスフィルタを有することを特徴とする請求項7記載の水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−36076(P2010−36076A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199862(P2008−199862)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】