説明

水回りユニット

【課題】浴室、シャワー室、洗面室またはトイレ等の水回り部を、使用しないときは可能な限りコンパクトに配置し、使用するときは広くゆったり利用できるようにした水回りユニットを提供する。
【解決手段】玄関1と当該玄関1を中央にその両側にシャワー室2とトイレ3を対称に配置する。シャワー室2の外壁7と間仕切り壁6の内側にそれぞれ内壁9と内壁10、そして床11をそれぞれ設ける。トイレ3の外壁7と間仕切り壁6の内側にそれぞれ内壁9と内壁10、そして床11を設ける。シャワー室2の内壁9、10、床11および妻壁12を玄関1側に引き出せるように構成する。トイレ3の内壁9、10、床11および玄関側の妻壁14を玄関1側に引き出せるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は居室、廊下、玄関または叩きに接して配置され、浴室、シャワー室、洗面室またはトイレとして利用される水回りユニットに関し、例えばワンルームマンションや独身寮などのような住戸床面積の狭い建物の水回り部に利用される。
【背景技術】
【0002】
いわゆるワンルームマンションや独身寮などの住戸は、一般に限られた空間内で居室部分を可能な限り広くする一方、浴室、洗面、トイレ、キッチン等の水回り部は可能な限り狭くコンパクトに配置されているため、特に浴室やトイレ等の水回り部の利用に際しては、非常に窮屈な思いを強いられることが多い。
【0003】
このため、この種の住戸の水回り部は、例えば浴室とトイレを仕切らずに一つの空間として配置したり、あるいはトイレと洗面室は仕切るものの、双方の間仕切り壁を可動式にして二つの部屋の広さを自由に変更できるようにしたりする(特許文献1)等の工夫がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−240438号公報
【特許文献2】特開平10−184042号公報
【特許文献3】特開平08−284443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、浴室とトイレ等を仕切らずに一つの部屋に配置する方法では、特に入浴後は部屋全体がぬれ、しかも部屋全体に湯気が立ち込めるため、その直後トイレが利用しにくくなる等の課題がある。
【0006】
一方、隣接する部屋間の間仕切り壁を可動式にして双方の部屋の広さを変更できるようにした方法では、部屋の一部は双方で兼用することになることから、例えば一方の部屋の床を防水する必要がある場合、他方の部屋の床も同じように防水する必要があるため、工事費が嵩む等の課題があった。
【0007】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、シャワー室やトイレ等の水回り部の空間を、利用するときは広くゆったりした部屋として利用でき、使用しないときは可能な限りコンパクトな空間にし、その分居室部分を広く利用できるようにすることで、限られた空間を有効に活用できるようにした水回りユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の水回りユニットは、居室、廊下、玄関または叩きに接して配置され、浴室、シャワー室、洗面室またはトイレとして利用される水回りユニットであって、床および壁の一部が前記居室、廊下、玄関または叩き側に移動して広くなるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
本発明は、居室、廊下、玄関または叩きに接して配置されたシャワー室やトイレ等の水回り部が、シャワー室やトイレ等として利用するときは、床および壁の一部を居室、廊下、玄関または叩き側に移動させて広くでき、利用しないときは可能な限りコンパクトに配置して、その分居室部分が広く利用できることで、限られた空間を有効に活用することができるため、ワンルームマンション等の建物に適している。
【0010】
なお、「叩き」とは、一般には土またはコンクリートで仕上げた土間床をいうが、ここではコンクリートの上を陶磁器タイルやプラスチックタイル等のタイル類で仕上げたものや、化粧モルタル等のモルタル類で仕上げたものをいう。
【0011】
請求項2記載の水回りユニットは、請求項1記載の水回りユニットにおいて、居室、廊下、玄関または叩きを中央にして、当該居室、廊下、玄関または叩きの両側に対称に配置され、それぞれ床および壁の一部が前記居室、廊下、玄関または叩き側に移動して広くなるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0012】
請求項3記載の水回りユニットは、請求項1または2記載の水回りユニットにおいて、水回り部の床と叩きとの間に叩き側が低い段差が設けてあることを特徴とするものである。
【0013】
本発明は、水回り部と叩きとの間に、叩き側が低くなるような段差が設けられていることで、水回り部に床を設けても水回り部の床を居室や廊下などの床と高さをほぼ面一にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、居室、廊下、玄関または叩きに接して配置されたシャワー室やトイレ等の水回り部が、当該水回り部の壁および床の一部を居室、廊下、玄関または叩き側に移動させて広くなるように構成されているため、シャワー室などとして利用するときは広くゆったり利用でき、利用しないときは可能な限りコンパクトに収納できるため、限られた空間を有効に活用することがで、特にワンルームや独身寮などの建物に適している。
【0015】
また、シャワー室やトイレ等の水回り部は、床部分も壁とともに移動するように構成されているため、居室、廊下、玄関側の床がぬれてしまうこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図4は、長方形状に区画され、その一郭に水回り部としてシャワー室、トイレ、キッチンが配置された住戸の一例を示し、図において長辺方向の一端側に玄関1、当該玄関1を中央にしてその両側に水回り部としてシャワー室2とトイレ3がそれぞれ配置されている。玄関1の床は叩きになっている。
【0017】
また、当該水回り部に接してキッチン4、当該キッチン4の奥に居室5が玄関側から住戸の奥の方に順に配置され、キッチン4と居室5は一つの空間に連続している。また、シャワー室2、トイレ3、キッチン4および居室5と玄関1との間には、玄関1側が低くなるような段差が設けられている。
【0018】
シャワー室2およびトイレ3とキッチン4は、間仕切り壁6によって仕切られ、間仕切り壁6の中央に玄関からキッチン4そして居室5に通じる出入り口8が設けられている。
【0019】
また、シャワー室2の外壁7の内側と間仕切り壁6の内側に、外壁7および間仕切り壁6とは別に内壁9と内壁10がそれぞれ設けられ、また床スラブとは別に床11が設けられ、当該内壁9、内壁10、床11および玄関1側の妻壁12は一体に構成されている。また、内壁10にはキッチン4側からシャワー室2に出入りするための扉付きの出入り口13が設けられている。
【0020】
一方、トイレ3の間仕切り壁6の内側にも内壁10が設けられ、また床11が設けられ、当該内壁10、床11および玄関1側の妻壁14も一体に構成されている。また、内壁10にはキッチン4側からトイレ3に出入りするための扉付きの出入り口15が設けられている。
【0021】
なお、トイレ3の外壁7側の内壁を省略したのは、シャワー室2のように水でぬれることがないためであり、特に必要であれば設けてもよい。
【0022】
このような構成において、シャワー室2およびトイレ3の壁と床はそれぞれ、手動または電動モータ等の動力を利用して玄関1側にスライドまたは滑走して移動し、また元の状態に戻るようになっている。
【0023】
なお、この場合の移動方法としては、例えば床または天井に敷設されたレールにガイドされて単にスライドする方式、またはレールの上を車輪が滑走する方式などが利用できる。
【0024】
このような構成において、例えばシャワー室2を利用するときは、シャワー室2の内壁9、10、床11および妻壁12を玄関1側に引き出す。そして、出入り口13の扉を開け、キッチン4側からシャワー室2内に入り、シャワーを浴びることができる。
【0025】
一方、トイレ3を利用するときは、シャワー室2の内壁9、10、床11および妻壁12を元の状態に戻し、トイレ3の内壁9、10、床11および妻壁14を玄関1側に引き出す。そして、出入り口15の扉を開け、キッチン4側からトイレ3内に入り、トイレを利用することができる。
【0026】
そして普段、シャワー室2の内壁9、10、床11および妻壁12と、トイレ3の内壁9、10、床11および妻壁14は、それぞれシャワー室2とトイレ3内に収納しておけば、玄関1は特に問題なく利用することができる。
【0027】
なお、図5(a),(b)は、シャワー室2を利用する際に、玄関1側に引き出した部分2Aとシャワー2との間にカーテン等の簡易な仕切り部材16を取り付け、玄関1側に引き出した部分2Aを脱衣室として利用するようにしたものである。
【0028】
この例によれば、脱衣室2Aを確保できることで、キッチン4側からシャワー室2に直接入るようなことは避けられ、とかく脱衣室など設けられないワンルームマンション等の住戸に適している。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】長方形状に区画され、水回り部としてシャワー室、トイレ、キッチン等が配置された住戸の一例を示す基準階の平面図である。
【図2】図1における水回り部を示し、(a)はシャワー室およびトイレが使用されていない状態を示す斜視図、(b)はシャワー室が使用されている状態を示す斜視図である。
【図3】図1における水回り部を示し、(a)はシャワー室およびトイレが使用されていない状態を示す平面図、(b)はシャワー室が使用されている状態を示す平面図である。
【図4】図1における水回り部を示し、(a)はシャワー室およびトイレが使用されていない状態を示す平面図、(b)はトイレが使用されている状態を示す平面図である。
【図5】図1における水回り部を示し、(a)はシャワー室およびトイレが使用されていない状態を示す平面図、(b)はシャワー室が使用されている状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 玄関
2 シャワー室
3 トイレ
4 キッチン
5 居室
6 間仕切り壁
7 外壁
8 出入り口
9 内壁
10 内壁
11 床
12 妻壁
13 扉付き出入り口
14 妻壁
15 出入り口
16 仕切り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
居室、廊下、玄関または叩きに接して配置され、浴室、シャワー室、洗面室またはトイレとして利用される水回りユニットであって、床および壁の一部が前記居室、廊下、玄関または叩き側に移動して広くなるように構成されてなることを特徴とする水回りユニット。
【請求項2】
居室、廊下、玄関または叩きを中央にして、当該居室、廊下、玄関または叩きの両側に対称に配置され、それぞれ床および壁の一部が前記居室、廊下、玄関または叩き側に移動して広くなるように構成されてなることを特徴とする請求項1記載の水回りユニット。
【請求項3】
叩きとの間に叩き側が低い段差が設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の水回りユニット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−303130(P2007−303130A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131762(P2006−131762)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(592040826)住友不動産株式会社 (94)
【Fターム(参考)】