説明

水圧試験対象管の水切り装置

【目的】 水平方向の管の両端を閉塞したうえで管内に加圧水を充水することで水圧試験する場合に、水圧試験後の排水の際における管の下部外面への水の伝わりを防止できるようにする。
【構成】 水圧試験後の管10の開口端の下端縁に案内部材30が接触する。この案内部材30は、管10内から前記開口端を経て流出する管内水を下方に案内する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水圧試験対象管の水切り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】上水道用の鋳造管などを鋳物工場で製造した場合には、管壁にピンホールやクラックなどの欠陥があると好ましくないので、製造工場内でその存在の有無を検査することが一般に行われている。この検査の際には、水平方向に支持した管の両端を面板などで閉塞したうえで、管内に加圧水を充水して、水圧試験を行う。管壁に欠陥があると、その部分から水漏れが生じる。
【0003】この水漏れがあった場合には管の表面が濡れるため、目視や、画像処理技術を利用した漏水検査装置などでその濡れを観察することで、欠陥の存在を調べることができる。
【0004】この濡れの観察は、通常、管内水を排出した後の工程で行われる。管内水を排出する場合には、管の両端を閉塞する面板を取り外してその両端開口から排水するのが普通である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、特に排水が進むことで管内水の量が低下して排出水の水勢が弱くなると、図6に示すように管1の開口端における下部外面を伝うように水2が流れることが多い。この結果、具体的には開口端から50〜300 mm程度の範囲において管1の外面が濡れ、上述の漏水検査装置における誤検査の原因になるという問題点がある。
【0006】そこで本発明はこのような問題点を解決し、水圧試験後の排水の際における管の下部外面への水の伝わりを防止できるようにすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、水圧試験後の管の開口端の下端縁に接触して、管内から前記開口端を経て流出する管内水を下方へ案内する案内部材を設けたものである。
【0008】
【作用】このような構成によれば、特に排水が進んで管の開口端から流出する水の勢いが低下した場合において、この水は案内部材に案内されて下方へ導かれるため、管の下部外面を伝わって流れることなく管外へ排出される。
【0009】
【実施例】図1において、10は遠心鋳造された鋳鉄製の管であり、鋳造作業後の処理のために水平方向に搬送される。この管10は、その一端に受口12を有するとともに、その他端に挿口14を有する。16は水圧試験位置であり、面板18だけを図示した水圧試験装置が設けられている。水圧試験位置16に隣接する位置には排水位置20が設置されている。22は搬送台車で、管10を水平方向に支持した状態で、この管10を水圧試験位置16から排水位置20に向けて搬送可能である。水圧試験位置16から排水位置20にわたる範囲における管10の両端に対応した位置には、管10内からの排水を受けるための水受けパン24が設けられている。
【0010】図2および図3に示すように、搬送台車22は、管10の口径に応じてこの管10を水圧試験装置に対応した位置へ昇降させるリフタ26と、管10の受口12側および挿口14側を独自に昇降可能に支持する一対の管受け台28、28とを有している。そして、これら管受け台28、28は、図2に示すように水圧試験位置16では管10を水平方向に支持可能であるとともに、図3に示すように排水位置20では、受口12側を持ち上げて、挿口14側が低くなるように管10を傾斜状態に支持可能である。
【0011】図1および図3〜5に示すように、排水位置20には、三角板状の案内部材30が設けられている。この案内部材30は、この案内部材30を水平方向に貫通する軸体32によって立て向きに支持され、かつ軸体32のまわりに回転自在とされるとともに、自重によって三角形の一つの頂点34が上部に位置する姿勢となるように軸体32にて支持されている。この案内部材30は、図示のように管10の挿口14の開口端の下縁部に接触可能である。
【0012】このような構成において、水圧試験位置16に管10が搬入されると、この管10は、その両端が面板18にて閉塞されるとともに、その内部に加圧水が供給されて所定の水圧試験が行われる。
【0013】水圧試験が終了すると、管10内が大気に開放されてその圧力が低下し、また両面板18が取り外されて、内部の水が受口12および挿口14の開口端から水受けパン24に向けて勢い良く排出される。かつ同時に管10は、搬送台車22の管受け台28、28により支持されて、この台車22の走行により排水位置20へ向けて移動される。この移動の途中においても、水受けパン24へ向けて勢い良く管内水の排出が持続される。
【0014】排水位置20に到達すると、搬送台車22により管10がわずかに降下され、図4に示されるように、挿口14の開口端の下端縁が三角形状の案内部材30の頂点34の近傍に接触される。すると、図4に示されるように、挿口14の開口端から流出する水36は、この案内部材30を伝わって下方へ流れ、水受けパン24内へ流下する。
【0015】かつ図3に示されるように一方の管受け台28により管10の受口12が持ち上げられ、管10は挿口14側が低くなるように傾斜される。すると案内部材30は、図5R>5に示されるように、その頂点34の近傍が挿口14の開口端に接した状態を自重により維持したまま、管10の傾斜に対応して軸体32のまわりに僅かに回転される。
【0016】このように管10を傾斜させることにより、管10内の底部に残っていた水が挿口14の開口端を経て効果的に流出する。そして、このときも、図5に示されるように排出水36は案内部材30を伝わり、水受けパン24内へ流出する。
【0017】このように案内部材30を設けたことにより、特に排水が進むことで管10内の水の量が低下して排出水36の水勢が弱くなった場合でも、この排出水36は確実に案内部材30に案内される。このため、この排出水36が管1の開口端における下部外面を伝うように流れることがなく、この部分に濡れが発生することが確実に防止される。
【0018】管10内の水が排出されたなら、この管10は管受け台28、28により再び水平方向に支持され、排水位置20から搬出されて図外の漏水検査装置へ送られる。
【0019】
【発明の効果】以上述べたように本発明によると、水圧試験後の管の開口端の下端縁に接触して、管内から前記開口端を経て流出する管内水を下方へ案内する案内部材を設けたため、特に排水が進んで管の開口端から流出する水の勢いが低下した場合において、この水を案内部材より案内して下方へ導くことができるため、この水が管の下部外面を伝わって流れてその部分を濡らすことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の水圧試験対象管の水切り装置の設置状況を示す平面図である。
【図2】図1の水圧試験位置の状況を示す正面図である。
【図3】図1の排水位置の状況を示す正面図である。
【図4】本発明の一実施例の水切り装置を示す拡大図である。
【図5】図4の装置の動作を説明する図である。
【図6】従来技術の問題点を説明するための管端部の断面図である。
【符号の説明】
10 管
20 排水位置
28 管受け台
30 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 水平方向の管の両端を閉塞したうえで管内に加圧水を充水することで水圧試験された管から、水圧試験後に管内水を排水する際の水切り装置であって、水圧試験後の管の開口端の下端縁に接触して、管内から前記開口端を経て流出する管内水を下方へ案内する案内部材を設けたことを特徴とする水圧試験対象管の水切り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平7−98261
【公開日】平成7年(1995)4月11日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−244114
【出願日】平成5年(1993)9月30日
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)