説明

水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法

【課題】エアーモーター駆動の水中作業機が動けない水深20mを超える水底でも走行が可能で、水底の堆積汚泥等を攪拌、耕耘し、また改善効果が期待できない場合はこれを吸引回収し、水底環境を改善できる経済性に優れ取り扱いも簡便な機材、方法を提供する。
【解決手段】水圧モーターによって海底等の水底地盤上を走行できる装置と前記水圧モーターを駆動する圧力水の流量、圧力を水上の船舶等より加減することにより遠隔操縦し、水底の堆積汚泥を攪拌、耕耘することにより水中の酸素と接触させ、有機物等の分解を促進さる、また耕耘しても改善できない汚泥土砂等を吸引し、水上の母船上のタンク等に回収するなどして、水底土壌環境を改善する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧モーターによって海底等の水底地盤上を走行できる装置と前記水圧モーターを駆動する圧力水の流量、圧力を水上の船舶等より加減することにより遠隔操縦し、海底などの水底地盤を攪拌、耕耘する装置を備え水底土壌を改善し、また水上の船舶等より圧搾空気をホース等を介して機体内に導き、機体内部の水圧を外部の水圧より高く保つことで機体内部への浸水を防ぎ、この圧搾空気を機体外部に接続され水面まで届く長さの導管内に導き噴出させ、この導管を空気の浮上により揚水する所謂エアーリフトポンプとして作動させ水底に堆積している有機性泥等の汚泥を吸引、回収し水底の土壌、水質等の環境を改善する装置とその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、湖や沿岸海域において陸域から流入する有機物やその他の汚染物質などが水底に堆積し、環境の悪化を招き、水産資源の減少などの問題を発生させている。また海面養殖場の海底などでは、養殖魚の排泄物、餌の残渣などが堆積しより深刻な問題となっている。
【0003】
また、水底において堆積した有機性汚濁物質等は酸素から遮断されるため、硫化水素などの還元性無機物へと変化しさらに水底環境を悪化させ、また有機物の分解のため水中の溶存酸素が大量に消費され貧酸素水塊と呼ばれる酸素が少なく従って生物が生息できない水塊が作られる。このためこれらの水底を耕耘・攪拌するなどして酸素と接触させ好気状態として有機物の分解を促進させることが水底環境の改善に有効であるとされている。
【0004】
干潟等、干出する場所では耕耘機等で土壌を攪拌、耕耘することが行われ、水中には種々の曝気装置でエアーレーションが行われている。また、船舶により鋤状のものを曳航し水底を耕耘することも小規模ながら行われている。しかしながら、いずれも沿岸の陸上よりごく近距離の範囲でしか出来ないが、沖合いの比較的水深の深い水底に貧酸素水塊が存在し、有機性の浮泥が堆積し環境悪化の原因となっている。この様な貧酸素、浮泥堆積の問題を抱える比較的深い水深の水底を走行できる作業機は従来、電気、油圧等により駆動されるものであったが、いずれも万一破損した場合、水中環境に与える影響は重大である。
【0005】
これらの改善策として、特許3806761号として登録されているエアーモーター駆動の水中作業機とその方法およびこれを使用した水底浄化装置とその方法が開示されているが、エアー駆動のため万一の場合でも水中環境に影響を与えないが、駆動のための圧搾空気を作るコンプレッサーは通常7気圧程度の圧力であり、エアーモーターを駆動した後水中でスムースに排気するためには外水圧が2気圧程度までの必要があり水深20mまでに運動可能な水深が限られるが、汚泥が堆積するなど問題となっている海域、養殖場などは水深50m程度の場所も多い。また水深50m程度の海底には日光もほとんど届かず、水圧により溶存する酸素も限られており攪拌、耕耘しても改善効果が期待できない場合も考えられる。
【特許文献1】特願2003−124987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、エアーモーター駆動の水中作業機が動けない水深20mを超える水底でも走行が可能で、水底の堆積汚泥等を攪拌、耕耘し、また改善効果が期待できない場合はこれを吸引回収し、水底環境を改善できる経済性に優れ取り扱いも簡便な機材、方法が求められている。あわせて、環境改善のための機器であるから万が一にも環境を害することが無いことも重要である。本発明はかかる事情を鑑みてなされたもので、水底を自力走行し、簡易に遠隔操縦可能な小型軽量の海底走行作業機であって、水底を攪拌、耕耘し又は堆積している汚泥等を吸引、回収して水底環境を改善する水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的に沿う第1の発明に係る水圧駆動式海底走行作業機は圧力水により回転する水圧モーターを原動機とし、水底の軟弱な地盤上でも推進可能な無限軌道等の動輪を駆動して走行する作業機で、水上の船舶等に設置した圧力水発生ポンプより圧力水をホース等で送り駆動する。この時、圧力水の圧力、流量を調整することにより遠隔操縦され、また、水圧モーターを駆動した後の圧力水は水上の船舶などの母船上のタンクに戻り、圧力水発生ポンプに吸引されこの機構内を循環する。この機構内を循環する圧力水の水圧を外水圧より高く保って、外部の清浄でない水の浸水を防ぎ、これらの構造を簡易な物とし、かつ圧力水を排出しない循環式であるため外水圧が高い50m程度の水深の水底も支障なく走行できる。第2の発明に係る海底走行作業機は第1の発明に係る海底走行作業機において、同じく水圧モーターにより回転する攪拌、耕耘機又は海底走行作業機に牽引される攪拌、耕耘機を備え、堆積汚泥を攪拌、耕耘することにより水中の酸素と接触させ、有機物等の分解を促進させ、水中、土中の生物を活性化し水底環境の改善を図ることが出来る。
【0008】
そして、第3の発明に係る水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法は、第1〜第2の発明に係る水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法において、水上の船舶等より圧搾空気をホース等を介して水圧駆動式海底走行作業機の機体内に導き、機体内部の気圧を外部の水圧より高く保つことで機体内部への浸水を防ぐことで機体の防水機構をパッキンなどの簡便なものとすることが出来、この圧搾空気を機体外部に接続され水面まで届く長さの導管内に導き噴出させ、この導管を圧搾空気の浮上により上昇水流が出来、揚水する所謂エアーリフトポンプとして作動させ、水底に堆積している耕耘しても改善できない汚泥土砂等を吸引し、水上の母船上のタンク等に回収することができる。
【0009】
そして、第4の発明に係る水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法は、第1〜第3の発明に係る水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法において走行用の原動機として最低2基の水圧モーターを使用しそれぞれ左右の動輪を個別に回転させることで直進、旋回等を行なう。この時水上の船舶等よりホースで送る圧力水の圧力、流量をバルブ等で個別に増減することで本機を遠隔操縦することが出来、従来の油圧、電気を使用する水中作業機のように複雑、脆弱な機構を必要とせず、万一の破損時でも流失するのは清浄な水のみであり、環境を汚濁することがない。また単純な構造故小型軽量化でき経済的であり、バルブ等の操作のみで操縦できるので特別な技術を要しない。またこの様な特徴から水中で行なう各種の調査、作業にも使用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法は外水圧が高い50m程度の水深の水底も支障なく走行でき、堆積汚泥を攪拌、耕耘することにより水中の酸素と接触させ、有機物等の分解を促進させ、水中、土中の生物を活性化し水底環境の改善を図る。また、水底に堆積している耕耘しても改善できない汚泥土砂等を吸引し、水上の母船上のタンク等に回収することができる、加えて複雑、脆弱な機構を必要とせず、万一の破損時でも流失するのは清浄な水のみであり、環境を汚濁することがない、また単純な構造故小型軽量化でき経済的であり、バルブ等の操作のみで操縦できるので特別な技術を要しない。またこの様な特徴から水中で行なう各種の調査、作業にも使用できるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明装置の1実施例の全体説明図であって、1は、本発明装置の水圧駆動式海底走行作業機本体であり2は水圧モーターであり各種の構造、馬力のものが市販されており説明を省く。4は圧力水発生ポンプでありこれも高圧洗浄用など貯水タンクを備えたものが市販されておりこの説明も省略する、この圧力水発生ポンプから4の圧力水入力ホースを通って圧力水が水圧モーターに供給されこれを駆動する、圧力水は5の圧力水戻りホースから圧力水発生ポンプにもどる。
【0013】
6は空圧コンプレッサーでありこれも市販されている汎用のものであり説明を省く、これより7の機体内部圧を高める圧搾空気用ホースを通じ水圧駆動式海底走行作業機の機体内に圧搾空気を送り、機体内の気圧を外水圧より高く保つことで機体内部への駆動軸受け等からの浸水を防ぎ、機体の防水機構をパッキンなどの簡便なものとすることが出来る。また8のエアーリフト用圧搾空気ホースを通じ、10の導管ホース内の下部、水底近くに圧搾空気を噴出させる。これにより圧搾空気は導管ホース内を加速しながら浮上し、導管ホース内の水もこれにつれて上昇する所謂エアーリフト効果により、導管ホースがエアーリフトポンプとなって9のエアーリフトポンプ吸い込み口から水底の堆積汚泥等を吸引し、導管ホースを通って11の貯留タンク内に回収される。12は母船として使用する漁船などの小型船舶であって、13は海底走行作業機揚収用クレーンでこれにより水圧駆動式海底走行作業機を水底まで吊降ろし、また母船上に揚収する。14は水面であり15は水底地盤面を示している。
【実施例2】
【0014】
図2は、本発明装置の1実施例の圧力水系統説明図であって16は市販品において圧力水発生ポンプに付属している水タンクで19の圧力水発生ポンプ駆動用原動機により駆動される18圧力水発生ポンプ本体が17のサクションホースを通じ水を吸引し圧力水として4の圧力水入力ホースを通って2の水圧モーターを回し、20の駆動輪を回転させ無限軌道等の動輪を回転させ本発明の海底走行作業機を走行させる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
湖や沿岸海域において陸域から流入する有機物やその他の汚染物質などが水底に堆積し、環境の悪化を招き、水産資源の減少などの問題を発生させている。また海面養殖場の海底などでは、養殖魚の排泄物、餌の残渣などが堆積しより深刻な問題となっている。これら水底の汚泥等を攪拌、耕耘し又は吸引回収して水底の環境を改善することは水産資源の回復、多様化に資することとなり、また経済的で水底環境を害することの無い水圧駆動式海底走行作業機は、他の水底における作業にも使用でき多様な用途が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法の実施方法を示した全体説明図である。(実施例1)
【図2】水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法の実施方法を示した圧力水系統説明図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0017】
1 水圧駆動式海底走行作業機本体
2 水圧モーター
3 圧力水発生ポンプ
4 圧力水入力ホース
5 圧力水戻りホース
6 空圧コンプレッサー
7 機体内部圧を高める圧搾空気用ホース
8 エアーリフト用圧搾空気ホース
9 エアーリフトポンプ吸い込み口
10 導管ホース
11 貯蓄タンク
12 母船
13 海底走行作業機揚収用クレーン
14 水面
15 水底土壌面
16 水タンク
17 サクションホース
18 圧力水発生ポンプ本体
19 圧力水発生ポンプ駆動用原動機
20 駆動輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水圧モーターによって海底等の水底地盤上を走行できる装置と前記水圧モーターを駆動する圧力水の流量、圧力を水上の船舶等より加減することにより遠隔操縦し、前記水圧モーターを駆動する圧力水の圧力を走行する水深における外水圧より常に高く保つことにより機構内に外部の清浄でない水の浸入を防ぐことを特徴とした海底走行作業機。
【請求項2】
請求項1記載の海底走行作業機において、海底等の水底地盤を攪拌、耕耘する装置を備えることを特徴とする水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法
【請求項3】
請求項1記載および請求項2の水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法において、水上の船舶等より圧搾空気をホース等を介して機体内に導き、機体内部の気圧を外部の水圧より高く保つことで機体内部への浸水を防ぎ、この圧搾空気を機体外部に接続され水面まで届く長さの導管内に導き噴出させ、この導管を空気の浮上により揚水する所謂エアーリフトポンプとして作動させ水底に堆積している土砂等を吸引、回収することを特徴とする水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2および請求項3に記載の水圧駆動式海底走行作業機において、走行のための原動機として複数の水圧モーターを備え、これを駆動するために水上の船舶、基地等よりホース等を通じて送る圧力水の流量、圧力をそれぞれの水圧モーター個別に加減又は遮断あるいは流方向を逆転することにより、発停、方向転換、前後進等の操縦を行うことを特徴とする水圧駆動式海底走行作業機及びこれに付属する水底浄化装置とその方法。

【図1】
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【図2】
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