説明

水平多関節ロボット

【課題】アーム内部のベルトにかかっている張力を容易にチェックできる水平多関節ロボットを提供する。
【解決手段】第2腕部9を移動するロボット1であって、第2腕部9の構造を維持するアーム基台9eと、アーム基台9eに設置され第4プーリー30と第4プーリー30を駆動する第4モーター28とを有する第2の駆動部50と、
第2の駆動部50に駆動される第3プーリー27を有する被駆動部51と、
第4プーリー30と第3プーリー27とに設置され動力を伝達する上下用ベルト31と、を有し、アーム基台9eは凹部9cを有し、上下用ベルト31は凹部9cから露出する場所に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平多関節ロボットにかかり、特に動力を伝達する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットとして複数のアームが水平関節を介して順番に連結されるスカラーロボットが特許文献1に開示されている。このようなスカラーロボットのアームの先端には回転駆動及び上下駆動される上下回転軸が設けられている。この上下回転軸に取り付けられる各種ハンドにより被対象物の組み立てや搬送作業が行なわれる。スカラーロボットは水平多関節型ロボットとも言われる。
【0003】
アームは箱状の基台を有し、上下回転軸を駆動するためのモーター、プーリー、ベルト等の駆動装置がアーム内に収納されている。そして、モーターの駆動軸と上下回転軸を駆動するユニットにはプーリーが設置されている。そして、プーリー間にベルトがかけられており、モーターが発生する駆動力を伝達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−101907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アームにモーター、上下回転軸、ベルトを設置した後にベルトにかかる張力を調整する。ベルトにかかる張力が弱いときベルトがプーリーから外れる。また、ベルトにかかる張力が強いとき、ベルトの寿命が短くなる。従って、ベルトにかかる張力を適正な範囲に調整する必要がある。ベルトにかかる張力を調査するとき、ベルトを押して変形具合を確認する。ベルトがアーム内にあるとき、アームの側面が障害物となりベルトを押し難くなっており、ベルトの変位を測定し難くなる。そこで、ベルトにかかっている張力を容易にチェックできる水平多関節ロボットが望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
本適用例にかかる水平多関節ロボットは、アームを移動する水平多関節ロボットであって、前記アームの構造を維持するアーム基台と、前記アーム基台に設置され駆動プーリーと前記駆動プーリーを駆動するモーターとを有する駆動部と、前記駆動部に駆動される被駆動プーリーを有する被駆動部と、前記駆動プーリーと前記被駆動プーリーとに設置され動力を伝達するベルトと、を有し、前記アーム基台は凹部を有し、前記ベルトは前記凹部から露出する場所に位置することを特徴とする。
【0008】
本適用例によれば、アーム基台にはモーターと駆動プーリーとが設置されている。そして、モーターは駆動プーリーを回転する。駆動プーリーにはベルトが設置され、駆動プーリーはベルトに動力を伝達する。ベルトは被駆動プーリーに設置され、ベルトにより被駆動プーリーに動力が伝達される。
【0009】
アーム基台は凹部を有している。これにより、アーム基台の断面係数が大きくなっているのでアーム基台は曲げ難くなっている。そして、ベルトは凹部から露出する場所に位置している。従って、ベルトを押し易くなっており、ベルトを押したときの変位を測定し易くなっている。その結果、ベルトにかかっている張力を容易にチェックすることができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、前記駆動部は前記モーターを支持する支持部を備え、前記支持部は前記駆動プーリーが前記凹部から露出する場所に位置するように前記モーターを支持することを特徴とする。
【0011】
本適用例によれば、支持部がモーターを支持している。そして、支持部は駆動プーリーが凹部から露出する場所に位置するようにモーターを支持している。従って、駆動プーリーが凹部から露出する為、ベルトを凹部から露出させることができる。
【0012】
[適用例3]
本適用例にかかる水平多関節ロボットは、作業軸を当該軸中心に回転および当該軸方向に往復移動させる水平多関節ロボットであって、前記作業軸を支持する支持部と、前記支持部を支持するアーム基台と、前記作業軸を回転させる動力を伝達する第1のベルトと、前記作業軸を往復移動させる動力を伝達する第2のベルトと、を有し、前記アーム基台は、当該アーム基台の外周に外周側壁部を備え、前記第1のベルト及び前記第2のベルトの少なくとも一方は、前記外周側壁部より上方に位置することを特徴とする。
【0013】
本適用例によれば、アーム基台が支持部を支持し、支持部が作業軸を支持している。そして、第1のベルトが作業軸を回転させる動力を伝達し、第2のベルトが作業軸を往復移動させる動力を伝達している。アーム基台の外周には外周側壁部が設置されている。そして、第1のベルト及び第2のベルトの少なくとも一方は、外周側壁部より上方に位置している。従って、ベルトを押し易くなっており、ベルトを押したときの変位を測定し易くなっている。その結果、ベルトにかかっている張力を容易にチェックすることができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、前記第2のベルトが、前記外周側壁部より上方に位置することを特徴とする。
【0015】
本適用例によれば、第2のベルトが、外周側壁部より上方に位置している。従って、第2のベルトにかかっている張力を容易にチェックすることができる。第2のベルトは作業軸を往復移動させる動力を伝達するベルトであり、他のベルトよりも負荷が加わるベルトとなっている。従って、第2のベルトの張力を管理することにより作業軸の動作の不具合を防止することができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかる水平多関節ロボットにおいて、前記第1のベルトを駆動する第1の駆動部と、前記第2のベルトを駆動する第2の駆動部と、前記アーム基台を覆うカバーと、を更に有し、前記アーム基台は、前記第1の駆動部及び前記第2の駆動部を固定する駆動部固定部と、前記カバーを固定するカバー固定部と、を備え、前記アーム基台はダイキャストの一体構造体であることを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、アーム基台は駆動部固定部とカバー固定部とを備えている。そして、駆動部固定部には第1の駆動部及び第2の駆動部が固定され、カバー固定部にはカバーが固定されている。そして、アーム基台はダイキャストの一体構造体となっている。従って、位置精度良く第1の駆動部、第2の駆動部及びカバーを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ロボットの構成を示す概略斜視図。
【図2】ロボットの構成を示す模式断面図。
【図3】(a)は、プーリー及びベルトの位置を示すための第2腕部の模式平面図、(b)は、第2腕部の構造を示す模式側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態におけるベルトの位置が特徴的なロボットについて図1及び図2に従って説明する。
【0020】
図1は、ロボットの構成を示す概略斜視図であり、図2は、ロボットの構成を示す模式断面図である。図1及び図2に示すように、水平多関節ロボットとしてのロボット1は平板状に形成された基台2を備えている。基台2の水平面上の1方向をX方向とする。そして、重力方向と逆の方向をZ方向とし、X方向及びZ方向と直交する方向をY方向とする。
【0021】
基台2上には本体部3が配置されている。本体部3の内部には空洞が形成されている。空洞の天井3aには第1モーター4が配置され、第1モーター4の下側には第1角度検出器5が配置されている。第1角度検出器5は第1モーター4の回転軸4aの回転角度を検出する。
【0022】
本体部3の天井3aには孔部3bが形成され、孔部3bから回転軸4aが突出して配置されている。本体部3の上側には第1減速機6が配置され、第1減速機6の入力軸には第1モーター4の回転軸4aが接続されている。第1減速機6の上側には出力軸が配置されている。そして、第1モーター4の回転軸4aの回転速度を減速した回転速度にて出力軸が回転する。第1減速機6には各種の減速機を採用することができる。本実施形態では、例えば、ハーモニックドライブ(登録商標)を採用している。
【0023】
第1減速機6の出力軸と接続して略直方体の箱状の第1腕部7が配置され、第1腕部7は回転軸4aを中心に回転させられる。第1モーター4が回転駆動させられることにより、第1腕部7が回転させられる。そして、第1腕部7が回転する角度を第1角度検出器5が検出する。
【0024】
第1腕部7の内部において第1モーター4と反対側の端には第2減速機8が設置されている。そして、第2減速機8の出力軸は第1腕部7と接続されている。第1腕部7の上側にはアームとしての第2腕部9のアーム基台9eが設置されている。アーム基台9eはダイキャストにて形成され底部9dの外周に図中上方に延びた外周側壁部9fが設置された凹部9cを有している。凹部9cの底部9dにおいて第2減速機8と対向する場所には第2モーター10と第2角度検出器11とがこの順に重ねて設置されている。そして、第2モーター10の出力軸10aが図中下方向に向かって配置されている。
【0025】
第1腕部7には第2減速機8と対向する場所に孔部7aが形成され、第2腕部9には第2モーター10と対向する場所に孔部9aが形成されている。そして、出力軸10aが孔部9a及び孔部7aを貫通して第2減速機8と接続している。
【0026】
第2モーター10の出力軸10aには第2角度検出器11が接続され、第2角度検出器11は第2モーター10の出力軸10aの回転角度を検出する。第2モーター10の出力軸10aは第2減速機8の入力軸と接続されている。そして、第2モーター10の回転軸の回転速度を減速した回転速度にて第2減速機8の出力軸が回転させられる。第2減速機8の出力軸と第1腕部7が接続され、第2モーター10が回転するとき第1腕部7に対して第2腕部9が出力軸10aを中心に回転させられる。
【0027】
第1モーター4及び第2モーター10は電気信号によって回転方向を制御可能であればよく、直流モーター、パルスモーター、交流モーター等の各種類のモーターを用いることができる。本実施形態では、例えば、直流モーターを採用している。第1角度検出器5は第1モーター4の駆動軸の回転角度を検出可能であれば良く、第2角度検出器11は第2モーター10の駆動軸の回転角度を検出可能であれば良い。第1角度検出器5及び第2角度検出器11には磁気式や光学式等の各種類のロータリーエンコーダーを用いることができる。本実施形態では、例えば、光学式のロータリーエンコーダーを採用している。
【0028】
アーム基台9eは第2モーター10と反対側の端には孔部9bを備え、孔部9bの図中下側には第1軸受12が設置されている。そして、孔部9bの図中上側には支持部13を介して第2軸受14が設置されている。第1軸受12及び第2軸受14を貫通して作業軸としての上下回転軸15が配置されている。そして、第1軸受12及び第2軸受14は上下回転軸15を上下動及び回転可能にしている。
【0029】
上下回転軸15には螺旋状の螺旋溝15aと上下回転軸15の軸方向に延在する一対の縦溝15bとが形成されている。第1軸受12は内輪と外輪と備え、内輪には上下回転軸15の縦溝15bに沿って転がる球が内蔵されている。そして、外輪に対して内輪を回転させるとき上下回転軸15は第2腕部9に対して回転するようになっている。
【0030】
第1軸受12と第2軸受14との間には第1軸受12の内輪と接続して第1プーリー16が配置されている。これにより、第1プーリー16を回転させることにより上下回転軸15を回転させることができる。アーム基台9eにおいて第2モーター10と上下回転軸15との中間の場所には中間プーリー17が設置されている。中間プーリー17は大径プーリー17aと大径プーリー17aより直径が小さい小径プーリー17bとが重ねられている。該中間プーリー17の中心軸17cを回転可能に保持する軸受け18が支持部19を介して第2腕部9に設置されている。支持部19は凹部9cの底部9dに設置されている。そして、小径プーリー17bと第1プーリー16とには回転用後段ベルト22が掛けられている。
【0031】
第2モーター10と軸受け18との間において支持部19上にはモーターとしての第3モーター23と第3角度検出器24とが設置されている。第3角度検出器24は第3モーター23の回転軸23aと接続され、回転軸23aの回転角度を検出する。第3モーター23の回転軸23aには駆動プーリーとしての第2プーリー25が設置されている。そして、第2プーリー25と中間プーリー17の大径プーリー17aとには回転用前段ベルト26が掛けられている。第3モーター23及び第2プーリー25等により第1の駆動部52が構成され、軸受け18及び中間プーリー17等により被駆動部53が構成されている。そして、回転用後段ベルト22及び回転用前段ベルト26により第1のベルトが構成されている。
【0032】
第3モーター23を回転させるとき第2プーリー25が回転し、第2プーリー25が回転することにより回転用前段ベルト26を介して中間プーリー17が回転する。そして、中間プーリー17が回転することにより回転用後段ベルト22を介して第1プーリー16が回転する。第1プーリー16が回転することにより第1軸受12の内輪を介して上下回転軸15が回転する。回転用後段ベルト22及び回転用前段ベルト26は上下回転軸15を回転させる動力を伝達している。従って、第2モーター10は上下回転軸15を回転させることができる。そして、第3角度検出器24は回転軸23aの回転を検出することにより、上下回転軸15の回転角度を検出可能になっている。
【0033】
第2軸受14は内輪と外輪と備え、内輪には上下回転軸15の螺旋溝15aに沿って転がる球が内蔵されている。そして、外輪に対して内輪を回転させるとき上下回転軸15は第2腕部9に対して上下動するようになっている。
【0034】
第1軸受12と第2軸受14との間には第2軸受14の内輪と接続して被駆動プーリーとしての第3プーリー27が配置されている。これにより、第3プーリー27を回転することにより上下回転軸15を上下動させることができる。支持部19上には第3モーター23と並ぶ場所にモーターとしての第4モーター28が設置され、第4モーター28に重ねて第4角度検出器29が設置されている。第4角度検出器29は第4モーター28の回転軸28aと接続され、回転軸28aの回転角度を検出する。第4モーター28の回転軸28aには駆動プーリーとしての第4プーリー30が設置され、第4プーリー30と第3プーリー27とにはベルト及び第2のベルトとしての上下用ベルト31が掛けられている。
第4モーター28及び第4プーリー30等により第2の駆動部50が構成され、第3プーリー27、第2軸受14、上下回転軸15等により被駆動部51が構成されている。
【0035】
第4モーター28を回転させるとき第4プーリー30が回転し、第4プーリー30が回転することにより上下用ベルト31を介して第3プーリー27が回転する。そして、第3プーリー27が回転することにより第2軸受14の内輪が回転する。そして、内輪に内在する球が螺旋溝15aに沿って移動することにより上下回転軸15をアーム基台9eに対して上下動させることができる。上下用ベルト31は上下回転軸15を往復移動させる動力を伝達している。そして、第4角度検出器29は回転軸28aの回転を検出することにより、上下回転軸15の移動量を検出することができる。
【0036】
第4プーリー30の回転軸上で第4モーター28と反対側には電磁クラッチ32が配置され、電磁クラッチ32は第2支持部33により支持部19に固定されている。電磁クラッチ32は電気信号を入力して第4プーリー30を停止させる機能を備えている。電磁クラッチ32は第4プーリー30を停止させることにより上下回転軸15の上下動を停止させることができる。
【0037】
上下回転軸15の図中下側にはロボットハンド34が接続され、ロボットハンド34には一対の指部34aが設置されている。ロボットハンド34は直動機構と当該直動機構を駆動するモーターを備えている。そして、直動機構を駆動させることにより指部34a間距離を変えることが可能になっている。
【0038】
ロボット1は制御装置35を備え、制御装置35は第1腕部7、第2腕部9、上下回転軸15、ロボットハンド34の位置や角度を制御する。制御装置35は第1角度検出器5、第2角度検出器11、第3角度検出器24、第4角度検出器29、が出力する電気信号を用いてロボット1の姿勢を認識する。そして、第1モーター4、第2モーター10、第3モーター23、第4モーター28及びロボットハンド34を駆動することにより、ロボット1を所望の姿勢に制御することが可能になっている。
【0039】
第2腕部9にはカバー36が設置され、カバー36は第2腕部9に設置された各種部材に埃や塵等の異物が付着することを防止している。また、本体部3からカバー36にかけて配線チューブ37が設置されている。配線チューブ37内には各種の電線が設置されており、配線チューブ37は電線が異物に当たって断線することを防止している。
【0040】
カバー36には固定用の孔が形成され、アーム基台9eのカバー固定部55には雌ねじが形成されている。そして、カバー36はねじ54を用いてカバー固定部55に固定されている。アーム基台9eはダイキャストにて形成されている為、精度良く形状が形成されている。従って、カバー36は精度良くアーム基台9eに設置されている。
【0041】
図3(a)はプーリー及びベルトの位置を示すための第2腕部の模式平面図であり、分かりやすくするためにプーリー、上下回転軸15及び第2モーター10以外の要素を省略している。図3(a)に示すように、第4プーリー30と第3プーリー27との間には上下用ベルト31が掛けられている。第4プーリー30を回転する第4モーター28は第4モーター固定板40を介して支持部19に固定されている。第4モーター固定板40は長方形の板であり、四隅にはY方向に長い長孔40aが形成されている。そして、長孔40aを貫通してねじ41が挿入され、第4モーター固定板40が支持部19に固定されている。従って、第4モーター固定板40をY方向に移動させることにより、第4プーリー30と第1プーリー16との距離を調整することができる。そして、上下用ベルト31にかかる張力を適切な張力にした後で、ねじ41を締めることにより上下用ベルト31にかかる張力を調整することができる。
【0042】
第1プーリー16と中間プーリー17との間には回転用後段ベルト22が掛けられている。中間プーリー17を保持する軸受け18は軸受固定板42を介して支持部19に固定されている。軸受固定板42は長方形の板であり、四隅にはY方向に長い長孔42aが形成されている。そして、長孔42aを貫通してねじ41が挿入され、軸受固定板42が支持部19に固定されている。従って、軸受固定板42をY方向に移動させることにより、第1プーリー16と中間プーリー17との距離を調整することができる。そして、回転用後段ベルト22にかかる張力を適切な張力にした後で、ねじ41を締めることにより回転用後段ベルト22にかかる張力を調整することができる。
【0043】
中間プーリー17と第2プーリー25との間には回転用前段ベルト26が掛けられている。第2プーリー25を回転する第3モーター23は第3モーター固定板43を介して支持部19に固定されている。第3モーター固定板43は長方形の板であり、四隅にはY方向に長い長孔43aが形成されている。そして、長孔43aを貫通してねじ41が挿入され、第3モーター固定板43が支持部19に固定されている。従って、第3モーター固定板43をY方向に移動させることにより、中間プーリー17と第2プーリー25との距離を調整することができる。そして、回転用前段ベルト26にかかる張力を適切な張力にした後で、ねじ41を締めることにより回転用前段ベルト26にかかる張力を調整することができる。
【0044】
図3(b)は第2腕部の構造を示す模式側面図であり、カバー36を設置していない状態を示している。第2腕部9には凹部9cが形成されており、凹部9cの底部9dに支持部13、支持部19及び第2モーター10が設置されている。そして、第4プーリー30、第3プーリー27及び上下用ベルト31は凹部9cから露出する場所に位置している。さらに、中間プーリー17の大径プーリー17a、第2プーリー25及び回転用前段ベルト26も凹部9cから露出する場所に位置している。従って、第2腕部9をX方向から見るとき、回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31を視認することができる。
【0045】
アーム基台9eには支持部19と対向する場所に柱状の駆動部固定部56が立設されている。そして、駆動部固定部56には雌ねじが形成され、駆動部固定部56に支持部19がねじ54にて固定されている。駆動部固定部56とアーム基台9eとはダイキャストの一体構造となっている。従って、駆動部固定部56は位置精度良く形成されている。従って、第4モーター28及び第4プーリー30が構成する第2の駆動部50や第3モーター23及び第2プーリー25が構成する第1の駆動部52は位置精度良く設置されている。
【0046】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31は凹部9cから露出している。回転用後段ベルト22、回転用前段ベルト26、上下用ベルト31の張力を測定するとき、各ベルトに所定の荷重を加え各ベルトの変位を測定することにより各ベルトにかかる張力を検出する。回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31は凹部9cから露出しているため、容易に荷重を加えることができる。そして、近接センサー等の変位計を用いることにより、回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31の変位を容易に測定することができる。
【0047】
(2)本実施形態によれば、支持部13は第3プーリー27が凹部9cから露出するように第2軸受14を支持している。そして、支持部19は第2プーリー25、第4プーリー30、中間プーリー17の大径プーリー17aが凹部9cから露出するように軸受け18、第3モーター23、第4モーター28を支持している。これにより、確実に回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31を凹部9cから露出させることができる。
【0048】
(3)本実施形態によれば、上下用ベルト31が、外周側壁部9fより上方に位置している。従って、上下用ベルト31にかかっている張力を容易にチェックすることができる。上下用ベルト31は上下回転軸15を上下に往復移動させる動力を伝達するベルトである。ロボットハンド34が物品を把持するとき、上下回転軸15には上下回転軸15、ロボットハンド34及び把持する物品の荷重がかかる。従って、上下用ベルト31には、回転用後段ベルト22及び回転用前段ベルト26よりも負荷が加わるベルトとなっている。従って、緩みやすい上下用ベルト31の張力を管理することにより確実に被駆動部51の動作の不具合を防止することができる。
【0049】
(4)本実施形態によれば、アーム基台9eは駆動部固定部56とカバー固定部55とを備えている。そして、駆動部固定部56には第1の駆動部52及び第2の駆動部50が固定され、カバー固定部55にはカバー36が固定されている。そして、アーム基台9eはダイキャストの一体構造体となっている。従って、位置精度良く第1の駆動部52、第2の駆動部50及びカバー36を固定することができる。
【0050】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、回転用前段ベルト26及び上下用ベルト31が凹部9cから露出していた。これに加えて、回転用後段ベルト22を凹部9cから露出させてもよい。このとき、回転用後段ベルト22にかかる張力も測定しやすくすることができる。
【符号の説明】
【0051】
1…水平多関節ロボットとしてのロボット、9…アームとしての第2腕部、9c…凹部、9d…底部、9e…アーム基台、9f…外周側壁部、13,19…支持部、15…作業軸としての上下回転軸、22…第1のベルトとしての回転用後段ベルト、23…モーターとしての第3モーター、25…駆動プーリーとしての第2プーリー、26…第1のベルトとしての回転用前段ベルト、27…被駆動プーリーとしての第3プーリー、28…モーターとしての第4モーター、30…駆動プーリーとしての第4プーリー、31…ベルト及び第2のベルトとしての上下用ベルト、50…第2の駆動部、51,53…被駆動部、52…第1の駆動部、55…カバー固定部、56…駆動部固定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アームを移動する水平多関節ロボットであって、
前記アームの構造を維持するアーム基台と、
前記アーム基台に設置され駆動プーリーと前記駆動プーリーを駆動するモーターとを有する駆動部と、
前記駆動部に駆動される被駆動プーリーを有する被駆動部と、
前記駆動プーリーと前記被駆動プーリーとに設置され動力を伝達するベルトと、を有し、
前記アーム基台は凹部を有し、前記ベルトは前記凹部から露出する場所に位置することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項2】
請求項1に記載の水平多関節ロボットであって、
前記駆動部は前記モーターを支持する支持部を備え、前記支持部は前記駆動プーリーが前記凹部から露出する場所に位置するように前記モーターを支持することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項3】
作業軸を当該軸中心に回転および当該軸方向に往復移動させる水平多関節ロボットであって、
前記作業軸を支持する支持部と、
前記支持部を支持するアーム基台と、
前記作業軸を回転させる動力を伝達する第1のベルトと、
前記作業軸を往復移動させる動力を伝達する第2のベルトと、を有し、
前記アーム基台は、当該アーム基台の外周に外周側壁部を備え、前記第1のベルト及び前記第2のベルトの少なくとも一方は、前記外周側壁部より上方に位置することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項4】
請求項3に記載の水平多関節ロボットであって、
前記第2のベルトが、前記外周側壁部より上方に位置することを特徴とする水平多関節ロボット。
【請求項5】
請求項3または4に記載の水平多関節ロボットであって、
前記第1のベルトを駆動する第1の駆動部と、
前記第2のベルトを駆動する第2の駆動部と、
前記アーム基台を覆うカバーと、を更に有し、
前記アーム基台は、前記第1の駆動部及び前記第2の駆動部を固定する駆動部固定部と、前記カバーを固定するカバー固定部と、を備え、
前記アーム基台はダイキャストの一体構造体であることを特徴とする水平多関節ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−6238(P2013−6238A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140629(P2011−140629)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】