説明

水底布設用長尺体からの落下物の回収装置

【課題】海底ケーブル等の長尺体を撤去回収する際に生ずる鎧装鉄線等の落下物を、当該長尺体の撤去回収作業に合わせて補集し回収することが可能で、その補集・回収効率も高い水底布設用長尺体からの落下物の回収装置を提供する。
【解決手段】海底ケーブル2の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部43を有すると共に海底ケーブル2から落下する鎧装鉄線を補集可能な袋体42から主として成り、袋体42の開口部43側は錘48が取り付けられて海底に接することができる程に相対的に重い構成となっており、海中において、海底ケーブル回収船1から、海底ケーブル2の回収側とは反対側にて開口部43が海底ケーブル2側を向くようワイヤ51、51で吊り下げられたものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、海底等の水底に布設されたケーブル等の長尺体を撤去、回収する際に当該長尺体から落下した鎧装鉄線等の落下物を回収するのに好適な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
海底ケーブルを海底に布設するにあたりケーブルコアを保護するために、特許文献1に示されるように、ケーブルコアの周囲に複数の鎧装鉄線から成る鎧装部を設けている。
【0003】
一方、海底ケーブルの平均的寿命は例えば30年前後が中心とされているため、少なくとも寿命に至る前までの周期で既設の海底ケーブルを撤去して新たな海底ケーブルを布設する必要があり、海底ケーブルの回収作業は、例えば、特許文献2及び3に示されるような海底ケーブル回収船を用いて行われる。
【0004】
もっとも、海底ケーブルの鎧装部を構成する鎧装鉄線は、潮流による起電力等に基づく電食作用より損傷しているので、上記の海底ケーブル回収船を使用しての海底ケーブルの回収作業では、損傷した鎧装鉄線の一部が海底ケーブルを巻き取る際に落下し、海底に残置される可能性がある。これに伴い、例えば、海底ケーブルの回収後に、休漁中の沖合底曳網船等に依頼して海底ケーブルが布設されていたルートに沿って底曳網をかけることで、残置された鎧装鉄線を回収する作業が行われていた。
【特許文献1】特開平8−88916号公報
【特許文献1】特開平11−234835号公報
【特許文献2】特開2000−139013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、底曳網による回収では、海底から隆起した岩や海底面の起伏した形状等により網が浮き上がり、海底に残置された鎧装鉄線の回収が不十分となるという不都合を有する。また、海底ケーブル回収後に鎧装鉄線の回収を改めて行うと、海底ケーブルの撤去作業に要する総合的な時間が長期化するという不具合もある。
【0006】
そして、このような回収漏れの鎧装鉄線が海底に存在すると、通常の底曳網漁の際に、当該鎧装鉄線が底曳網に掛かって底曳網の装置を損傷させてしまい、これに伴い、底曳網船の船主や船員等に底引き網装置の補修費や補修が完了するまでの休業補償費等を支払わなければならないので、多額の金銭的負担が発生するおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、海底ケーブル等の長尺体を撤去、回収する際に生ずる鎧装鉄線等の落下物を、当該長尺体の撤去、回収作業に合わせて補集、回収することが可能で、その補集、回収効率も高い、水底布設用長尺体からの落下物の回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る水底布設用長尺体からの落下物の回収装置は、水底布設用長尺体を巻き上げるための動力を提供する動力源と、巻き上げられた前記水底布設用長尺体を適宜巻き取る巻取装置又はターンテーブルとを少なくとも備える水底布設用長尺体の回収装置と組み合わせることで用いられ、前記水底布設用長尺体の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部と前記開口部の軸方向側とは外れた位置に開口して前記水底布設用長尺体を挿通可能な引出口とを有すると共に前記水底布設用長尺体からの落下物を捕集可能な袋体を備え、この袋体の開口部側は水底に接することができる程に相対的に重い構成となっており、水中において、前記開口部から前記袋体内に挿入された前記水底布設用長尺体を前記引出口から前記袋体外に引き出して成ることを特徴としている(請求項1)。水底布設用長尺体は、例えば海底ケーブル等である。落下物は、例えば鎧装部のうち電食で損傷した鎧装鉄線等である。動力源は、例えば無限軌道(キャタピラ)式ブレーキ装置やターンテーブルが有する動力源等である。無限軌道(キャタピラ)式ブレーキ装置は、水底布設用長尺体の巻取りに制動をかけるブレーキ装置としても機能する。袋体は網状をなしている。袋体の開口部側を水底に接することができる程に相対的に重くする手段として、例えば錘が開口部に取り付けられたものとなっている。これらは、後述する水底布設用長尺体からの落下物の回収装置でも同様である。
【0009】
これにより、袋体の開口側を水底に接することができる程に相対的に重くすることにより、水底の起伏した形状や岩に影響を受けて水底から浮き上がるのを回避されるので、袋体に入る前に水底布設用長尺体から水底に落下した落下物は開口部から袋体内に効率良く補集される。また、水底布設用長尺体は、水中のうち最も落下物が発生しやすい海面への浮き上がり開始位置にて袋体で覆われることで、この袋内で水底布設用長尺体から落下した落下物はそのまま袋体により補集される。そして、これらの落下物の補集は、水底布設用長尺体の撤去、回収作業と合わせて行われる。
【0010】
また、この発明に係る水底布設用長尺体からの落下物の回収装置は、水底布設用長尺体を巻き上げるための動力を提供する動力源と、巻き上げられた前記水底布設用長尺体を適宜巻き取る巻取装置又はターンテーブルとを少なくとも備える水底布設用長尺体の回収装置と組み合わせることで用いられ、前記水底布設用長尺体の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部を有すると共に前記水底布設用長尺体からの落下物を捕集可能な袋体を備え、この袋体の開口部側は水底に接することができる程に相対的に重い構成となっており、水中において、前記水底布設用長尺体の回収装置が設置された水上移動体から、前記水底布設用長尺体の回収側とは反対側にて、前記開口部がこの水底布設用長尺体側を向くよう複数の線状部材で吊り下げられていることを特徴としている(請求項2)。水上移動体とは、例えば海底ケーブル回収船である。
【0011】
これにより、袋体の開口部を水底に接することができる程に相対的に重くすることにより、水底の起伏した形状や岩に影響を受けて水底から浮き上がるのを回避されるので、水上移動体の前方で巻き上げられる水底布設用長尺体から水底に落下した落下物は、開口部から袋体内に効率良く補集される。そして、これらの落下物の補集は、水底布設用長尺体の撤去、回収作業と合わせて行われる。
【0012】
そして、前記袋体は、前記開口部の開口縁から引出口の開口縁までに延びる切欠きを有し、この切欠きは開閉手段により開閉自在であることを特徴としている(請求項3)。これにより、切欠きを開いて袋体内に水底布設用長尺体を収納し、水底布設用長尺体の一方が開口部から出て、水底布設用長尺体の他方が引出口から出るように切欠きを閉じることで、水底布設用長尺体の長手方向の途中の任意の場所において、袋体を装着することができる。
【0013】
また、請求項2、請求項3に記載の水底布設用長尺体からの落下物の回収装置にあっては、前記水底布設用長尺体にはこの水底布設用長尺体からの落下物を回収容易な方向に可変するための方向変更用器具が取り付けられていることを特徴とする(請求項4)。これにより、水底布設用長尺体から落下した落下物を袋体のネットから抜け出ない方向に変更することができ、落下物の補集、回収効率をより一層向上させることができる。
【0014】
更に、請求項2、請求項3、請求項4に記載の水底布設用長尺体からの落下物の回収装置にあっては、前記袋体を前記水上移動体から線状部材で吊り下げた際に前記開口部よりも水上移動体側となるように攪拌器具を前記線状部材に配したことを特徴とする(請求項5)。これにより、水底に沈んだ状態の落下物を水中に浮き上がらせて、袋体の開口部からの落下物の補集、回収効率をより一層向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、請求項1に記載の発明によれば、袋体の開口部が水底に接することができる程に相対的に重くなっていることで、水底の起伏した形状や岩に影響を受けて水底から浮き上がるのを回避されるため、袋体に入る前に水底に落下した落下物は開口部から袋体内に効率良く補集されるので、鎧装鉄線等の落下物の回収を効率よく且つ十分に行うことが可能である。また、水底布設用長尺体が、水中のうち最も落下物が発生しやすい海面への浮き上がり開始位置にて袋体で覆われており、この袋内で水底布設用長尺体から落下した落下物はそのまま袋体により補集される。これに伴い、落下物が水底に残置して、底曳網に掛かって底曳網の装置を損傷させることを回避することができ、当該底曳網の装置の補修費や漁船の船主や船員への補償費などで多額の金額の負担が発生するのを防止することができる。また、水底布設用長尺体から落下した落下物の回収作業は、水底布設用長尺体の回収作業と合わせて行うことができるので、作業全般の必要時間の短縮化を図ることが可能である。
【0016】
特に請求項2に記載の発明によれば、袋体の開口部が水底に接することができる程に相対的に重くなっていることで、水底の起伏した形状や岩に影響を受けて水底から浮き上がるのを回避されるため、水上移動体の前方で水底布設用長尺体から水底に落下した落下物は開口部から袋体内に効率良く補集されるので、鎧装鉄線等の落下物の回収を効率よく且つ十分に行うことが可能である。これに伴い、落下物が水底に残置して、底曳網に掛かって底曳網の装置を損傷させることを回避することができ、当該底曳網の装置の補修費や漁船の船主や船員への補償費などで多額の金額の負担が発生するのを防止することができる。また、水底布設用長尺体から落下した落下物の回収作業は、水底布設用長尺体の回収作業と合わせて行うことができるので、作業全般の必要時間の短縮化を図ることが可能である。
【0017】
特に請求項3に記載の発明によれば、水底布設用長尺体からの落下物の回収装置を構成する袋体に対し、切欠きを開いて袋体内に水底布設用長尺体を収納し、水底布設用長尺体の一方が開口部から出て、水底布設用長尺体の他方が引出口から出るように切欠きを閉じることで、水底布設用長尺体の長手方向の途中の任意の場所において、当該袋体を装着することができるので、袋体の脱着作業の容易化を図ることができる。
【0018】
特に請求項4に記載の発明によれば、水底布設用長尺体からの落下物の回収装置を構成する袋体が、水中において、前記水底布設用長尺体の回収装置が設置された水上移動体から、前記水底布設用長尺体とは反対側にて、前記開口部がこの水底布設用長尺体側を向くよう複数の線状部材で吊り下げられている場合には、水底布設用長尺体から落下した落下物を袋体のネットから抜け出ない方向に変更することができ、落下物の補集、回収効率をより一層向上させることができる。
【0019】
特に請求項5に記載の発明によれば、水底布設用長尺体からの落下物の回収装置を構成する袋体が、水中において、前記水底布設用長尺体の回収装置が設置された水上移動体から、前記水底布設用長尺体とは反対側にて、前記開口部がこの水底布設用長尺体側を向くよう複数の線状部材で吊り下げられている場合には、水底に沈んだ状態の落下物を水中に浮き上がらせて、袋体の開口部からの落下物の補集、回収効率をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、この発明の実施形態について図面により説明する。
【0021】
図1において、水底布設用長尺体を回収するための水上移動体の一例として、海底ケーブル回収船1が示されている。この海底ケーブル回収船1は、海底ケーブル2を回収するためのもので、海上に浮揚可能な船体3を有し、この船体3には、回転シーブ4、ブレーキ装置6及び巻取装置13から主としてなる海底ケーブル回収装置が設けられている。
【0022】
このうち、海底ケーブル2は、図示しないが、ケーブルコアの周囲に、当該ケーブルコアを保護するために複数の細長い鎧装鉄線を組み合わせて成る鎧装部を設けた公知のものである。
【0023】
回転シーブ4は、船体3の船首に回転自在に設けられるもので、巻き上げられた海底ケーブル2がこの回転シーブ4の側周面に掛け回された後、ブレーキ装置6側に案内される。
【0024】
ブレーキ装置6は、この実施形態では、図2に示されるように、ローラー9が船体3に対し縦方向に配置されてなる一対のキャタピラ7、8により構成され、海底ケーブル2を、当該海底ケーブル2の径方向で且つ船体3の幅方向に沿うかたちで、キャタピラ7、8間に挟持する構成となっている。これにより、ブレーキ装置6は海底ケーブル2の巻上げのための動力源となる。すなわち、キャタピラ7が図2上において反時計回りに回転し、キャタピラ8が図2上において時計回りに回転することにより、当該ブレーキ装置6が動力源となって海底ケーブル2は、巻取装置13側に押し上げられる。一方、ブレーキ装置6のキャタピラ7が図2上において時計回りに回転し、キャタピラ8が反時計回りに回転することで、海底ケーブル2の押し上げが規制される。
【0025】
尚、ブレーキ装置6と巻取装置13のケーブル塔15との間の箇所において、図2に示されるように、補助動力源としてホーリングマシン10を用いても良い。このホーリングマシン10は、略水平方向に並設されたローラー11とこのローラーに対し回転を与える動力源12とで基本的に構成されている。
【0026】
巻取装置13は、水中から巻き上げた海底ケーブル2をコイル状に巻き回して回収するための装置であり、送出用部材14と、ケーブル塔15と、収納部16とで構成されている。
【0027】
このうち、送出用部材14は、その上方に海底ケーブル2が沿って動くことのできる面14aを有すると共に、ブレーキ装置6のキャタピラ7、8間の空間と連接されており、ブレーキ装置6で押し上げられた海底ケーブル2はこの送出用部材14の基部から先端部まで更に押し上げられる。ケーブル塔15は、回転棒17と斜面部18とを有して構成され、斜面部18はその上方に海底ケーブル2が沿って動くことのできる傾斜面18aを有すると共に、回転棒17により自在に回転することができる。ケーブル塔15に対する回転力は、例えば作業員がロープ5を持って引っ張ることで与えられる。収納部16は上方に開口した筒状のもので、海底ケーブル2がコイル状に巻き回して収納される。尚、収納部16の船体3から立設した壁部は海底ケーブル2からの漏油防止堤も兼ねている。
【0028】
これにより、ブレーキ装置6の押し上げ方向への稼働によって、水中から巻き上げられた海底ケーブル2は、回転シーブ4、ブレーキ装置5のキャタピラ7、8間及び巻取装置13の送出用部材14に至り、更にこの送出用部材14の先端からケーブル塔15に至るが、この際にロープ5を持ってケーブル塔15を回転させることにより、海底ケーブル2は収納部16内にコイル状に収納される。
【0029】
更に、海底ケーブル回収船1は、図4及び図5に示されるように、進行方向の前方となる海底に設置されるアンカー21、22と、進行方向の後方となる海底に設置されるアンカー23、24とを有している。このうち、アンカー21から海底ケーブル回収船1の船体3まではアンカーワイヤ25が布設されており、このアンカーワイヤ25はウィンチ26又は27により送出され又は巻取られる。また、アンカー22から海底ケーブル回収船1の船体3まではアンカーワイヤ28が布設されており、このアンカーワイヤ28はウィンチ29又は30により送出され又は巻取られる。更に、アンカー23から海底ケーブル回収船1の船体3まではアンカーワイヤ31が布設されており、このアンカーワイヤ31はウィンチ32又は33により送出され又は巻取られる。更にまた、アンカー24から海底ケーブル回収船1の船体3まではアンカーワイヤ34が布設されており、このアンカーワイヤ34はウィンチ35又は36により送出され又は巻取られる。
【0030】
ウィンチ26と27、ウィンチ29と30、ウィンチ32と33、及び、ウィンチ35と36とは、アンカーを打ち替えるために2台必要とされているもので、この実施形態では、船体3の幅方向に沿って並設される形で配された横2列方式が採られているが、必ずしもこれに限定されず、船体3の進行方向に沿って並設される縦2列方式を採っても良い。また、各ウィンチ26、27、29、30、32、33、35、36には、図示しないが、アンカーワイヤ25、28、31、34の送出及び巻取りのための回転を規制するブレーキ装置を有している。尚、37はクレーン、38は鎧装鉄線が回転シーブ4から海中に落下するのを防止するための落下防止網であり、また、海底ケーブル回収船1の周囲に配置されている4隻の船は、警戒船39である。
【0031】
上記の構成により、海底ケーブル回収船1は、以下の動作を繰り返すことにより、海底ケーブル2を回収しつつ図4及び図5で図示される矢印方向に移動する。すなわち、アンカー21、22を海底ケーブル回収船1の約200m前方の海底に設置すると共にアンカー23、24を海底ケーブル回収船1の約200m後方の海底に設置する。アンカー21とアンカー22との間、及びアンカー23とアンカー24との間も、約420mほど採る必要がある。そして、アンカー21、22については、ウィンチ26又は27の一方、ウィンチ29又は30の一方を用いて巻取り動作を行い、アンカー23、24については、ウィンチ32又は33の一方、ウィンチ32又は33の一方を用いて延伸動作を行う。次に、アンカー21、22と海底ケーブル回収船1とが相対的に一定範囲内までに近接し、アンカー23、24と海底ケーブル回収船1とが相対的に一定範囲以上に離れた場合には、アンカー21、22を打ち替えて、ウィンチ26又は27の他方、ウィンチ29又は30の他方を用いて巻取り動作を行うと共に、アンカー23、24を打ち替えて、ウィンチ32又は33の他方、ウィンチ32又は33の他方を用いて延伸動作を行う。あとはこの動作の繰り返しである。
【0032】
ところで、この実施形態では、図4乃至図6に示されるように、海底ケーブル2からの落下した鎧装鉄線を回収するための回収装置41を、海底ケーブル回収船1の進行方向の前方に有している。この回収装置41は、主に袋体42により構成されている。
【0033】
この袋体42は、鎧装鉄線を捕集可能な大きさの網目の網状をなしていると共に、その使用時において、図6(b)に示されるように、海底ケーブル2の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部43とこの開口部43の軸方向側とは外れた位置に開口して海底ケーブル2を挿通可能な引出口44とを有したものとなっている。そして、袋体42は、図6(a)に示されるように、開口部43の開口縁から引出口44の開口縁までに延びる切欠き45を有し、この切欠き45のうち開口部43側の両側に例えばホックやファスナー等の開閉器具46、47を有している。これにより、切欠き45を開いて開口部43と引出口44とを一体的な開口部として、海底ケーブル2を、開口部43から出ると共に引出口44となる部位からも出るように配置した後、切欠き45を開閉器具46、47により閉じることで、海底ケーブル2の長手方向の途中の任意の箇所において、袋体42を装着することができる。
【0034】
また、この袋体42は、図6にも示されるように開口部43に錘48が取り付けられている。これにより、袋体42は、図4に示されるように、開口部43側が海底に接することができる程に相対的に重くなることから、海底の起伏した形状や岩に影響を受けて海底から袋体42の開口部43側が浮き上がるのを回避されるので、袋体42に入る前に海底ケーブル2から海底に落下した鎧装鉄線は開口部43から袋体42内に効率良く補集される。尚、開口部43自体を相対的に重くすることで錘の役割を果たすようにしても良い。
【0035】
図7から図9において、この発明の他の実施形態が示されている。以下、この発明の他の実施形態について説明する。但し、先の実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0036】
この海底ケーブル回収船1は、先の実施形態と同様に、海底ケーブル2を回収するためのもので、海上に浮揚可能な船体3を有し、この船体3には、回転シーブ4、ブレーキ装置6及びターンテーブル50から主としてなる海底ケーブル回収装置が設けられている。
このターンテーブル50は、船体3に回動自在に取り付けられているもので、海底ケーブル2を巻き取るための動力源と海底ケーブル2を収納するための収納空間とをその内部に有している。そして、ターンテーブル50は、この実施形態では、側面に前記収納空間と連通した開口部が設けられおり、ターンテーブル50が動力源により回転して、ブレーキ装置6で押し出された海底ケーブル2が、この開口部からターンテーブル50の収納空間の下部に巻き取られ、コイル状に収納されるようになっている。もっとも、ターンテーブル50の上部に収納空間と連通した開口部を設けて、この開口部から海底ケーブル2がターンテーブル50内の収納部に巻き取られ、コイル状に収納されるようにしても良い。
【0037】
そして、海底ケーブル2からの落下した鎧装鉄線を回収するための回収装置41は、海底ケーブル回収船1の進行方向の前方側の方向変更用器具55と、海底ケーブル回収船1の進行方向の後方側の袋体42及び攪拌器具52とで構成されている。
【0038】
このうち、袋体42は、鎧装鉄線を捕集可能な大きさの網目の網状をなしていると共に、海底ケーブル2の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部43を有したものとなっている。そして、開口部43には錘48が取り付けられて、袋体42の開口部43側が海底に接する程に相対的に重くなっている。また、開口部43は海底ケーブル回収船1の船尾から延びるワイヤ51、51と連結されており、これにより袋体42は開口部43が海底ケーブル2側を向いた状態で海底ケーブル回収船1と共に移動する。
【0039】
攪拌器具52は、ワイヤ51と51との間に掛け渡されたロープ53とこのロープ53に設けられた多数の線状体54とで構成されたブラシ状のもので、この線状体54が海底面に接することで、海底面が攪拌されて鎧装鉄線が海中に浮き上がり、袋体42への鎧装鉄線の回収を容易にしている。
【0040】
方向変更用器具55は、図9に示されるように、2つの径寸法の異なる環状部材56と、この環状部材56、57間に架設された線状部材58とで構成されている。環状部材56、57の双方とも海底ケーブル2の外径よりも大きな内径寸法を有している。また、線状部材58は、例えば鉄等で構成されている鉄線で、例えば約1mの長手方向寸法を有していると共に、先端が環状部材57よりも突出して突起58aを形成している。これにより、方向変更用器具55を海底ケーブル2に外装した場合には、方向変更用器具55の突起部58aが海底に落ちた鎧装鉄線を袋体42で回収可容易な向きに変更することが可能であるので、鎧装鉄線の回収効率が更に向上する。
【0041】
尚、巻取装置13を有する海底ケーブル回収装置と海底ケーブル回収船1の進行方向の前方側に配された袋体42で主としてなる回収装置41、ターンテーブル50を有する海底ケーブル回収装置と海底ケーブル回収船1の進行方向の前方側に配された方向変更用器具55及び海底ケーブル回収船1の進行方向の後方側に配された袋体42、攪拌器具52からなる回収装置41の組み合わせで説明したが必ずしもこれに限定されない。例えば、
巻取装置13を有する海底ケーブル回収装置と海底ケーブル回収船1の進行方向の前方側に配された方向変更用器具55及び海底ケーブル回収船1の進行方向の後方側に配された袋体42、攪拌器具52からなる回収装置41の組み合わせであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、この発明に係る水底布設用長尺体からの落下物の回収装置が用いられる海底ケーブル回収船の概略構成を示す平面図である。
【図2】図2は、ブレーキ装置及びホーリングマシンの概略構成を説明するための平面図である。
【図3】図3は、巻取装置の概略構成を説明するための側面図である。
【図4】図4は、同上の海底ケーブル回収船での水底布設用長尺体からの落下物の回収装置の使用の一例を示す側面図である。
【図5】図5は、同上の海底ケーブル回収船での水底布設用長尺体からの落下物の回収装置の使用の一例を示す平面図である。
【図6】図6は、水底布設用長尺体からの落下物の回収装置の主要な器具である袋体の構成を示す説明図であり、図6(a)は、袋体が海底ケーブルを装着するために開口部と引出口とが連通した状態となっていることを示す平面図で、図6(b)は、ファスナー等の締結手段により閉じることで開口部と引出口とが非連通となった状態を示す平面図である。
【図7】図7は、海底ケーブル回収船での水底布設用長尺体からの落下物の回収装置の使用例のうち図7とは異なる例を示す側面図である。
【図8】図8は、海底ケーブル回収船での水底布設用長尺体からの落下物の回収装置の使用例のうち図4とは異なる例を示す平面図である。
【図9】図9は、方向変更用器具の略構成を説明するための側面図及び正面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 海底ケーブル回収船(水上移動体)
2 海底ケーブル(水底布設用長尺体)
3 船体
4 回転シーブ
5 ロープ
6 ブレーキ装置
7 キャタピラ
8 キャタピラ
9 ローラー
10 ホーリングマシン
11 ローラー
12 動力源
13 巻取装置
14 送出用部材
14a 面
15 ケーブル塔
16 収納部
17 回転棒
18 傾斜面部
18a 傾斜面
21乃至24 アンカー
25 アンカーワイヤ
26、27 ウィンチ
28 アンカーワイヤ
29、30 ウィンチ
31 アンカーワイヤ
32、33 ウィンチ
34 アンカーワイヤ
35、36 ウィンチ
37 クレーン
27 チューブ
38 落下防止網
39 警戒船
41 回収装置(水底布設用長尺体からの落下物回収装置)
42 袋体
43 開口部
44 引出口
45 切欠き
46 開閉器具
47 開閉器具
48 錘
50 ターンテーブル
51 ワイヤ(線状部材)
52 攪拌器具
53 ロープ
54 線状体
55 方向変更用器具
56 環状部材
57 環状部材
58 線状部材
58 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底布設用長尺体を巻き上げるための動力を提供する動力源と、巻き上げられた前記水底布設用長尺体を適宜巻き取る巻取装置又はターンテーブルとを少なくとも備える水底布設用長尺体の回収装置と組み合わせることで用いられ、
前記水底布設用長尺体の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部と前記開口部の軸方向側とは外れた位置に開口して前記水底布設用長尺体を挿通可能な引出口とを有すると共に前記水底布設用長尺体からの落下物を捕集可能な袋体を備え、この袋体の開口部側は水底に接することができる程に相対的に重い構成となっており、
水中において、前記開口部から前記袋体内に挿入された前記水底布設用長尺体を前記引出口から前記袋体外に引き出して成ることを特徴とする水底布設用長尺体からの落下物の回収装置。
【請求項2】
水底布設用長尺体を巻き上げるための動力を提供する動力源と、巻き上げられた前記水底布設用長尺体を適宜巻き取る巻取装置又はターンテーブルとを少なくとも備える水底布設用長尺体の回収装置と組み合わせることで用いられ、
前記水底布設用長尺体の径寸法よりも相対的に大きな内径寸法の開口部を有すると共に前記水底布設用長尺体からの落下物を捕集可能な袋体を備え、この袋体の開口部側は水底に接することができる程に相対的に重い構成となっており、
水中において、前記水底布設用長尺体の回収装置が設置された水上移動体から、前記水底布設用長尺体の回収側とは反対側にて、前記開口部がこの水底布設用長尺体側を向くよう複数の線状部材で吊り下げられていることを特徴とする水底布設用長尺体からの落下物の回収装置。
【請求項3】
前記袋体は、前記開口部の開口縁から引出口の開口縁までに延びる切欠きを有し、この切欠きは開閉手段により開閉自在であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水底布設用長尺体からの落下物の回収装置。
【請求項4】
前記水底布設用長尺体にはこの水底布設用長尺体からの落下物を回収容易な方向に可変するための方向変更用器具が取り付けられていることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の水底布設用長尺体からの落下物の回収装置。
【請求項5】
前記袋体を前記水上移動体から線状部材で吊り下げた際に前記開口部よりも水上移動体側となるように攪拌器具を前記線状部材に配したことを特徴とする請求項2、請求項3又は請求項4のいずれかに記載の水底布設用長尺体からの落下物の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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