説明

水性塗料用樹脂組成物

【構成】 (A)ジグリシジルアミノ基が芳香環構造又は脂環構造の炭素原子に結合した化合物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級ミン化合物および(C)フェノール性水酸基含有官能基を含有するフェノール化合物を反応せしめることにより得られる第1級水酸基含有カチオン性樹脂を主成分として含有する水性塗料用樹脂組成物。
【効果】 本樹脂組成物は水分散性、浴安定性、顔料分散性等に優れ、特にカチオン電着塗料用として有用である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は水性塗料用樹脂組成物に関し、特に水分散性、浴安定性、顔料分散性などにすぐれ、カチオン電着塗料用樹脂組成物として有用な水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】カチオン電着塗料用基体樹脂としては、たとえば、高分子量(数平均分子量で約1000以上)のジエポキシドに第2級アミン(例えば、ジエタノールアミン、メチルエタノールアミン、ジエチルアミンなど)を反応させることにより得られるアミン付加エポキシ樹脂が一般的に用いられている。該アミン付加エポキシ樹脂は、ブロックポリイソシアネート化合物などと架橋反応硬化し、その塗膜は防食性にすぐれているが、カチオン性基として第3級アミノ基をもっているために、酸による部分中和程度では水分散性が不十分であって、一方、全中和すると電着塗料浴のpHが下がりすぎ、設備の腐食能力が低下するという問題点を有している。ブロックポリイソシアネート化合物などの架橋剤は、基体樹脂中の第1級水酸基とすみやかに反応して架橋硬化することは広く知られている。しかしながら、ビスフェノールA型のグリシジルエーテルを基本骨格とするカチオン電着塗料用基体樹脂に第1級水酸基を導入するためにアルカノールアミン(第2級アミン)を使用すると、前記のように樹脂の水分散性が低下する。
【0003】また、1分子中に3個以上のエポキシ基を有するポリエポキシド(エポキシ当量100〜1000)とポリフェノール(例えば、アルキレンジフェノール)との反応生成物もカチオン電着塗料用基体樹脂として試みられたが、該反応生成物は高粘度化もしくはゲル化しやすいので実用的でない。さらに、上記ポリエポキシドにアミン化合物を付加したものは塩基濃度が部分的に高くなり、塗膜の耐食性が低下するので好ましくない。
【0004】また、脂環式骨格にエポキシ基が結合したポリエポキシドに第1級水酸基含有第1または2級アミンを反応させることにより得られるカチオン電着塗料用基体樹脂も知られており、このものは酸による部分中和での水分散性が優れているが、ポリエーテル化により多官能化するため、分子量分布の調整が困難で高分子量成分が混入しやすく、これを用いると、高粘度高分子量樹脂によって塗面平滑性が低下するという欠陥がある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そのため従来より、第2級アルカノールアミンを用いて第1級水酸基を導入することができ、樹脂生成反応中に粘度上昇やゲル化がなく、かつ、酸による部分中和段階での水分散性にすぐれ、しかも、塗面平滑性および耐食性も良好な水性塗料用樹脂組成物の開発が強く望まれている。
【0006】本発明の目的は、合成反応中に高粘度化やゲル化などせず、部分中和での水分散性にすぐれ、しかも、塗面平滑性や防食性などにもすぐれた、特にカチオン電着塗料用樹脂として有用な水性塗料用樹脂組成物および該組成物を用いたカチオン電着塗料を提供することである。
【0007】本発明の上記の目的は以下の■〜■に記載する水性塗料用樹脂組成物、カチオン電着塗料等により達成することができる。
【0008】■ (A)下記式(1)
【0009】
【化3】


【0010】で示されるジグリシジルアミノ基が芳香環構造又は脂環構造の炭素原子に結合した化合物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級アミン化合物および(C)下記式(2)
【0011】
【化4】


【0012】(式中、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R3〜R6は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、アリル基またはハロゲン原子を表わす)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を含有するフェノール化合物を反応せしめることにより得られる第1級水酸基含有カチオン性樹脂(I)を主成分とすることを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
【0013】■ 上記の第1級水酸基含有カチオン性樹脂(I)とブロックイソシアネート化合物、ポリエポキシド化合物および1分子中に炭素−炭素不飽和基を2個以上有する化合物から選ばれる少なくとも1種の硬化剤(II)とを主成分とするカチオン電着塗料(III)。
【0014】■ 上記の第1級水酸基含有カチオン性樹脂(I)と硬化剤(II)との部分的反応生成物よりなることを特徴とする自己硬化性塗料用樹脂組成物(IV)。
■ 上記の自己硬化性塗料用樹脂組成物(IV)を主成分とするカチオン電着塗料(V)。
【0015】■ 上記の第1級水酸基含有カチオン性樹脂(I)または自己硬化性塗料用樹脂組成物(IV)と顔料(G)とを主成分とする顔料ペースト(VI)。
【0016】■ 上記のカチオン電着塗料(III)またはカチオン電着塗料(V)で塗装された製品。
【0017】以下に、本発明の樹脂組成物、カチオン電着塗料および顔料ペーストについてさらに詳細に説明する。
【0018】(A)成分: 下記式(1)で示されるジグリシジルアミノ基が芳香環構造又は脂環構造の炭素原子に結合した化合物。
【0019】
【化5】


【0020】(A)成分において、式(1)中の窒素原子(−N<)は、芳香環もしくは脂環構造を構成する炭素原子に直接結合していることが好ましいが、メチレン基(−CH2−)を介して結合していても差支えはない。
【0021】かかる(A)成分の化合物は、例えば芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環など)を構成する炭素原子に1個以上のアミノ基(−NH2)が直接結合した芳香族アミンまたは炭素数4〜10の脂環族(例えばシクロヘキサンなど;縮合環も含む)を構成する炭素原子にアミノ基(−NH2)が直接結合した脂環族アミンと、エピハロヒドリン(例えばエピクロルヒドリン)とを、アルカリ金属水酸化物水溶液の存在下で反応せしめることによって調製することができる。
【0022】(A)成分の調製に用いうる上記芳香族アミンとしては、芳香環の炭素原子に結合したアミノ基を1分子中に2個以上有する化合物が好適に使用され、例えば、1個の芳香環に2個以上のアミノ基が結合した化合物や、1個の芳香環に1個のアミノ基が結合したものをアルデヒド類もしくはケトン類などで重縮合させることにより得られる芳香環に結合したアミノ基を1分子中に2個以上有する化合物などがあげられる。1個の芳香環に2個以上のアミノ基が結合した化合物としては、例えば、メタキシレンジアミン、フェニレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、ジアミノベンズアニリド、ジアニシジン、1,5−ナフチレンジアミン、ジアミノフェニルエーテル、3,5−ジアミノクロロベンゼン、3,3−ジクロロ−4,4′−ジアミノビフェニル、3,3′−ジメチルベンジジンなどがあげられ、また、1個の芳香環に1個のアミノ基が結合した化合物としては、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、p−エチルアニリン、p−クレシジン、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、o−アニシジン、p−アニシジン、ナフチルアミンなどがあげられる。これらの化合物とアルデヒド類(例えば、ホルムアルデヒドなど)もしくはケトン類(例えば、アセトン)などとの重縮合は、例えば塩酸、りん酸、硫酸などの無機酸またはパラトルエンスルホン酸、しゅう酸などの有機酸または酢酸亜鉛などの有機金属塩などの触媒を用いて行うことが好ましい。その重縮合の繰り返し単位の数は一般に1〜40、特に1〜20の範囲内にあるのが好ましい。かくして得られる重縮合物としては、ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジエチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジクロロ−4,4′−ジアミノジフェニルメタンなどがあげられる。
【0023】また、脂環族炭素原子に2個以上のアミノ基(−NH2)が直接結合してなる脂環族アミンとしては、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンなどがあげられる。
【0024】上記(A)成分の化合物は、例えば、上記の芳香族アミンおよび/または脂環族アミンにエピハロヒドリン(例えば、エピクロルヒドリンなど)を、アルカリ金属水酸化物水溶液の存在下で反応させることによって得ることができる。
【0025】該(A)成分は、上記式(1)で示されるグリシジルアミノ基にもとずくグリシジル基を1分子中に2.5個以上、特に好ましくは3〜10個有しており、またエポキシ当量は100〜2000、特に200〜600の範囲内にあることが好ましく、さらに数平均分子量は蒸気圧浸透法で測定して200〜8000の範囲内にあることが好ましい。
【0026】(A)成分における上記グリシジル基はその一部が活性水素含有化合物で変性されていてもよく、かかる活性水素含有化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール類;ダイマー酸、ステアリン酸、オレイン酸、大豆油脂肪酸などの脂肪酸;酢酸、ぎ酸、ヒドロキシ酢酸などの有機酸;アルキルアルコール、セロソルブ、カービトールなどのアルコール類;などがあげられる。この中、フェノール類が好ましく、特にビスフェノールが適している。また、この変性反応には、硼ふっか亜鉛やテトラメチルアンモニウムクロリドなどを触媒として使用することが好ましい。活性水素含有化合物による変性量は、数平均分子量からもとめた分子1モルに対し、活性水素含有基が1〜1.5モルの割合となる範囲内が好ましい。変性後の(A)成分は、エポキシ当量が150〜2000、特に200〜600の範囲内にあることが好ましく。数平均分子量は上記範囲内であればよい。
【0027】(A)成分としては、市販のものを使用することができ、例えば、MY720(日本チバガイギー社製、商品名、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン)、MY722(日本チバガイギー社製、商品名、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン)、ELM−120(住友化学社製、商品名)、ELM−100(住友化学社製、商品名)、TETRAD−X(三菱瓦斯化学社製、商品名、N,N,N′,N′−テトラグリシジルm−キシリレンジアミン、エポキシ当量101)、TETRAD−C(三菱瓦斯化学社製、商品名、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量101)などがあげられる。このうちTETRAD−XおよびTETRAD−Cは、式(1)中の窒素原子がメチレン基を介してベンゼン環に結合したものである。
(B)成分: 第1級水酸基を1分子中に少なくとも1個有する第1級もしくは第2級アミン化合物。この成分は、上記(A)成分と反応して、(A)成分に第1級水酸基と塩基性基(カチオン性基)とを導入するのに役立つ。
【0028】(B)成分のアミノ基と(A)成分の式(I)のグリシジル基との反応によって第1級水酸基と塩基性をもつカチオン性樹脂が生成するが、このカチオン性樹脂は、従来のビスフェノールA型エポキシ樹脂との反応生成物と比べて、部分中和や高pHにおいても水分散性およびつきまわり性が著しく優れており、しかも形成塗膜の硬化性や防食性などが低下することが全くない。
【0029】(B)成分の化合物としては、次に例示する化合物があげられる。
【0030】■ モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、モノブタノールアミンなどの第1級アルカノールアミン。
【0031】■ N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジ−n−(またはiso)−プロパノールアミン、ジブタノールアミンなどの第2級アルカノールアミン。
【0032】■ 上記第1級アルカノールアミンとα,β−不飽和カルボニル化合物との付加物(第2級アルカノールアミン)。例えば、モノエタノールアミンとN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの付加物、モノエタノールアミンとヒドロキシブチル(メタ)アクリレートとの付加物など。
【0033】■ ヒドロキシエチルアミノエチルアミンのような第1、2級アルカノールアミン。
【0034】■ ヒドロキシアミン、ヒドロキシエチルヒドラジンおよびヒドロキシブチルヒドラジンから選ばれる少なくとも1種とケトン化合物(例えば、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジブチルケトン、ジプロピルケトンなど)との縮合物(第2級アルカノールアミン)。
【0035】■ 下記式(3)で示される、1分子中に1級水酸基、2級アミノ基およびアミド基が併有するアミン化合物。
【0036】
【化6】


【0037】(式中、nは1〜6の整数であり、R11は水酸基および/または重合性不飽和基を含有してもよい炭素数4〜36の炭化水素鎖を表わす)
上記式(3)で示されるアミン化合物は、例えば、N−ヒドロキシアルキルアルキレンジアミンと炭素数5〜37のモノカルボン酸とを脱水縮合反応させることによって得ることができる。該ジアミンとしては、例えば、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、N−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N−ヒドロキシエチルブチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルペンチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルヘキシレンジアミンなどの第1級水酸基を含有する第1、第2ジアミンが好適である、また、モノカルボン酸としては、例えば、椰子油脂肪酸、ひまし油脂肪酸、米ぬか油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸、脱水ひまし油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、あまに油脂肪酸、桐油脂肪酸などの混合脂肪酸;カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノール酸、リノール酸、リノレイン酸、エレオステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸などがあげられる。
【0038】上記式(3)で示されるアミン化合物を得るための上記ジアミンとモノカルボン酸との反応は、該両成分をほぼ等モル比で混合し、トルエン、メチルイソブチルケトンなどの有機溶媒を用いて規定量の反応生成水を除去し、減圧法などで残存有機溶剤を除去することによって行なうことができる。かくして得られるアミン化合物は、一般に、アミン価(2級アミン)が88〜350、特に120〜230の範囲内にあり、また水酸基価(好ましくは1級水酸基)が44〜350、特に60〜230の範囲内にあることが好ましい。
【0039】上記(B)成分として例示した上記■〜■において、■、■および■の第1級アルカノール第2級アミンが好ましい。特に、式(3)で示されるアミン化合物(特にヒドロキシエチルアミノエチル脂肪酸アミド)とジエタノールアミンとを併用することが、塗面の平滑性および耐蝕性などを向上させるので好ましい。該アミン化合物(特にヒドロキシエチルアミノエチル脂肪酸アミド)とジエタノールアミンとの比率は、該両成分の合計重量にもとずいて、前者が30〜80重量%、後者が70〜20重量%であることが好ましい。
【0040】(C)成分: 下記式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を含有するフェノール化合物。
【0041】
【化7】


【0042】(C)成分の化合物としては、具体的には、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどの多価フェノール化合物;フェノール、ノニルフェノール、α−またはβ−ナフトール、p−tert−オクチルフェノール、o−またはp−フェニルフェノールなどのモノフェノール化合物などがあげられる。
【0043】本発明いおいて、(C)成分として前記式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物を用いると、塗膜の防食性を一層向上させることができる。式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物の数平均分子量は、特に制限されないが、一般には500〜20000、特に800〜3000の範囲内にあることが好ましい。また、該化合物は1分子あたり式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を一般に0.3〜2個、さらに0.5〜1.5個、特に0.8〜1.2個含有することが好ましい。
【0044】さらに式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物(C成分)としては、下記式(4)で示される化合物もまた好適に使用することができる。
【0045】
【化8】


【0046】(式中、qは0〜7の整数であり、R31は活性水素含有化合物の残基を表わす)
上記式(4)において基R31の前駆体である活性水素含有化合物としては、例えば、第2級アミンのようなアミン類;フェニルフェノール、ノニルフェノールなどのフェノール類;脂肪酸などの有機酸;チオール類;アルキルアルコール、セロソルブ、ブチルセロソルブ、カービトールなどのアルコール類;無機酸;などがあげられる。このうち特に好ましいものは、ジアルカノールアミンなどの第1級水酸基を有する第2級アミン;前記式(3)で示されるアミノ化合物;ノニルフェノール、フェニルフェノール、フェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテルなどのフェノール類;ステアリン酸、オレイン酸、大豆油脂肪酸などの脂肪酸類;酢酸、ぎ酸、ヒドロキシ酢酸などの低級有機酸;などである。
【0047】(C)成分には、上記式(4)の両末端がR31または−OHのいずれか一方だけである化合物が混在してもよいが、1分子あたりのフェノール性水酸基含有官能基は一般に0.5〜1.5個、特に0.8〜1.2個の範囲内にあり、数平均分子量は500〜20000の範囲内にあることが好ましい。
【0048】前記式(2)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を有する化合物〔(C)成分〕は、例えば、ビスフェノール型グリシジルエーテル、ビスフェノール型ジフェノールおよび活性水素含有化合物(例えば、第2級アルカノールアミンなど)を、必要に応じて触媒や溶媒の存在下に、30〜300℃、好適には70〜180℃の温度で反応させることによって得ることができる。また、この反応において、さらに下記の成分を併存させることも可能である。
【0049】例えば、ダイマージオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコールなどのポリオール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルポリオール類;ポリカプロラクトンのようなポリエステルポリオール類;ポリカルボン酸類;ポリイソシアネート類;モノイソシアネート類;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド等の不飽和化合物の酸化物;アリルグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、メチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル等の水酸基を有する化合物のグリシジルエーテル;脂肪酸のような有機酸のグリシジルエステル;脂環式オキシラン含有化合物;等を併存させてもよい。更にδ−4−カプロラクトン、アクリルモノマーなどをグラフト重合させてもさしつかえない。
【0050】第1級水酸基を有するカチオン性樹脂(I):以上に述べた(A)成分、(B)成分および(C)成分を反応させることによって得られる。該カチオン性樹脂(I)の数平均分子量は一般に1000〜20000、特に1500〜10000の範囲内にあることが好ましく、水酸基当量は一般に250〜2000、特に300〜700の範囲内にあることが好ましい。また、アミン価は25〜200、特に50〜100範囲内にあることが好ましい。
【0051】上記(A)、(B)および(C)の3成分の反応の順序には特に制限はなく、任意の順序で反応させることができ、例えば、■(A)、(B)及び(C)成分を同時に反応させる;■(A)成分に(B)成分を反応させた後、(C)成分を反応させる;■(A)成分に(C)成分を反応させた後、(B)成分を反応させる;などの方法で反応を行なうことができ、それによってカチオン性樹脂(I)が得られる。
【0052】(A)成分と(B)成分との反応は、(A)成分のグリシジル基と(B)成分の第1級および/または第2級アミノ基との反応であって、第1級水酸基と第2級および/または第3級アミノ基などの塩基性基(カチオン性基)が生成する。特にこれらの官能基にもとずいて、本発明のカチオン性樹脂(I)は、従来のビスフェノールA形エポキシ樹脂との反応によって生成する樹脂に比べて、部分中和や高pHにおいても水分散性およびつき回り性が著しくすぐれており、しかも形成塗膜の硬化性や防食性などを低下させることがない。
【0053】(A)成分と(C)成分との反応は、(A)成分のグリシジル基と(C)成分のフェノール性水酸基との反応であって、エーテル結合が生成する。この反応を経で得られるカチオン性樹脂(I)には、原則として(A)成分が有していたグリシジル基が上記反応に消費され、殆どもしくは全く含有していない。
【0054】これらの各成分の反応比率は目的に応じて任意に選択でき、たとえば、(A)成分のグリシジル基1モルあたり、(B)成分のアミノ基と(C)成分のフェノール性水酸基との合計モル数が、一般に0.75〜1.5モル、特に0.8〜1.2モルになる割合で各成分を反応させることが好ましい。該合計モル数が0.75モルより少なくなると生成物の粘度が高くなることがあり、1.5モルより多くなると未反応のアミン基多く残存して電着特性などに悪い影響を与えるおそれがある。また、(A)成分の含有率は、(A)、(B)および(C)成分の合計重量を基準にして、一般に0.5〜75重量%、特に5〜50重量%の範囲内が適しており、その比率が0.5重量%より少なくなると水分散性が不十分となることがあり、75重量%より多くなるとアミン価が高くなり塗膜の耐蝕性が低下することがある。また、(B)成分の使用量は、生成するカチオン性樹脂(I)の水酸基当量が一般に250〜2000、好ましくは300〜700の範囲内になるように選ぶことが好ましい。該樹脂(I)の水酸基当量が250より小さくなるとアミン価が高くなり塗膜の耐蝕性が低下することがあり、2000より大きくなると硬化性が低下し塗膜の耐蝕性が低下するおそれがある。一方、(C)成分の使用量は、(A)成分1分子あたり、一般に0.05〜1.5モル、特に0.2〜1.2モルの範囲内が適している。該使用量が0.05モルより少ないと得られる樹脂水分散性が低下し、1.5モルより多くなると塗面の平滑性が低下することがある。さらに、上記各成分の反応温度は、上記■、■および■のいずれもの反応方法であっても、通常50〜300℃、特に70〜200℃の範囲内が好ましい。反応は、アルコール系、ケトン系、エーテル系などの有機溶媒の存在下で行うことができる。生成するカチオン性樹脂(I)の数平均分子量は一般に1000〜20000、特に1500〜10000の範囲内にあることが好ましい。
【0055】また、カチオン性樹脂(I)の製造にあたり、水酸基価およびアミン価を上記の範囲内に調整するために、(B)成分と共に以下に例示するその他のカチオン化剤(D)を使用することができる。該(D)成分は、上記■、■および■の反応の最初もしくは途中で使用でき、または反応後に使用してもよい。
【0056】使用しうるその他のカチオン化剤(D)としては、例えば、メチル、アミン、エチルアミン、n−又はiso−プロピルアミンなどの第1級アミン;ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミンなどの第2級アミン;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジメチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンなどがあげられ、更にアンモニア、ヒドラジン、N−ヒドロキシエチルイミダゾリン化合物などとも併用することができる。
【0057】また、その他のカチオン化剤(D)として、前記(B)成分の■を作成するのに用いた第1級水酸基を含有する第1、2級ジアミンを、第2級水酸基含有第1、2級ジアミンに置き代え、それ以外は該■を得るのと同様の方法で製造した、1分子中に第2級水酸基、第2級アミノ基及びアミド基が併存するアミン化合物も使用することができる。
【0058】さらに、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N′−ジエチルエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミンなどの第3級アミンなども(D)成分として使用でき、これらは酸で予めプロトン化し、エポキシ基と反応させて第4級塩にすることができる。
【0059】また、アミン化合物以外に、ジエチルスルフイド、ジフェニルスルフイド、テトラメチレンスルフイド、チオジエタノールなどのスルフイド類とホウ酸、炭酸、有機モノカルボン酸などとの塩をエポキシ基と反応させて第3級スルホニウム塩としたものを用いてもよい。
【0060】更に、トリエチルホスフイン、フェニルジメチルホスフイン、ジフェニルメチルホスフイン、トリフェニルホスフインなどのホスフイン類と上記の如き酸との塩をエポキシ基と反応させて、第4級ホスホニウム塩として併用することができる。
【0061】本発明では、(B)成分を用いてカチオン性基を導入することは必要であるが、(B)成分以外の上記他のカチオン化剤(D)の使用は任意である。
【0062】かくして得られる第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(I)はカチオン電着塗料用樹脂として好適に使用することができる。特に、該樹脂(I)は水分散性にすぐれているので、水分散性が不十分な有機物質や無機物質などに該樹脂(I)を配合してその水分散性を改良することができる。したがって、該樹脂(I)は、カチオン電着塗料の水分散性改良剤としても有用である。
【0063】カチオン電着塗料(III): 本発明のカチオン電着塗料(III)は、上記の第1級水酸基を含有するカチオン性樹脂(I)と硬化剤(II)との混合物を主成分とする水性塗料である。
【0064】この電着塗料(III)において使用しうる硬化剤(II)としては、それ自体既知のカチオン電着塗料用硬化剤を使用することができるが、特に、以下に述べる(II−1)ブロックポリイソシアネート化合物、(II−2)ポリエポキシド化合物、(II−3)1分子中に2個以上の不飽和基を有する化合物などが好ましい。
【0065】(II−1)ブロックポリイソシアネート化合物これは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物中の該イソシアネート基を水酸基などの活性水素含有ブロック剤でブロックしたものであって、特定の温度以上に加熱すると、このブロック剤が解離し遊離のイソシアネート基が再生し、これがカチオン性樹脂(I)の水酸基と反応して架橋硬化する。ポリイソシアネート化合物としては脂肪族系、芳香族系、芳香脂肪族系などのポリイソシアネートを使用することができ、また、ブロック剤としてはそれ自体既知のものが適用できる。さらに具体的には、特公昭52−6306号公報、特開昭47−759公報などに記載されているので、本明細書ではこれら公報を以って詳細な説明に代える。
【0066】(II−2)ポリエポキシド化合物該ポリエポキシド化合物としては下記■〜■に示すものがあげられる。
【0067】■ 下記構造式(5)で示される特定のエポキシ基を含有する化合物。
【0068】
【化9】


【0069】■ 下記構造式(6)で示される特定のエポキシ基を含有する化合物。
【0070】
【化10】


【0071】(式中、R41は水素又はメチル基を表わす)
上記■および■のポリエポキシド化合物に関しては、特開平2−255874号公報に詳しく説明されているので、本明細書では該公報の引用を以って具体的な説明に代える。
【0072】■ 下記式(7)で示されるフェノール型ノボラックグリシジルエーテル樹脂。
【0073】
【化11】


【0074】(式中、R51およびR52は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン原子を表わし;R57は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;R54およびR56は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜4のアルキル基またはグリシジルオキシフェニル基を含有する有機基を表わし;R55は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてnは1〜38の整数である)
上記式(7)において、「アルキル基」は直鎖状もしくは分岐鎖状であり、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル基などが挙げられる。また、「アリール基」は単環式または多環式のいずれであってもよく、例えば、フェニル、ナフチル基などが挙げられ、特にフェニル基が好適であり、さらに「アラルキル基」はアリール−置換アルキル基であって、例えば、ベンジル、フェネチル基などが包含され、中でもベンジル基が好ましい。
【0075】「ハロゲン原子」にはフッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子が包含される。
【0076】さらに、R54及び/又はR56によって表わされうる「グリシジルオキシフェニル基を含有する有機基」は下記式(8)
【0077】
【化12】


【0078】(式中、Wは水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表わす)で示される基を含有する有機基である。
【0079】しかして、前記式(7)において、R51およびR52としては水素原子、メチル基、塩素原子および臭素原子が好適であり、特に水素原子、メチル基および臭素原子が好ましい。また、R57およびR55としては、メチル基、tert−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子が好ましく、中でもメチル基、tert−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好適である。さらに、R54およびR56は好ましくは水素原子であり、そしてnは好ましくは特に1〜8である。
【0080】式(7)で示される樹脂の数平均分子量は、蒸気圧浸透圧法による測定に基いて、一般に、約400〜約8000、特に600〜2000の範囲内にあることが好ましい。この数平均分子量によって数平均繰返し単位数(n+2)を求めることができる。また、該樹脂は、グリシジル基を1分子あたり3.5〜10個有していることが好ましく、かつ該樹脂のエポキシ当量は、約180〜約2000、特に200〜600の範囲内にあることが好ましい。
【0081】式(7)で示されるグリシジルエーテル樹脂は、例えば、下記式(9)
【0082】
【化13】


【0083】(式中、R51、R52およびR57は前記の意味を有する)で示される2官能性フェノール化合物と、下記式(10)
【0084】
【化14】R54−CHO (10)
(式中、R54は前記の意味を有する)で示されるアルデヒド化合物および/または下記式(11)
【0085】
【化15】R54−CO−R56 (11)
(式中、R54およびR56は前記の意味を有する)で示されるケトン化合物とを縮重合反応させ、得られるフェノール型ノボラック樹脂に、さらにエピハロヒドリンを反応させて該フェノール型ノボラック樹脂にグリシジルエーテル基を導入することにより製造することができる。
【0086】また、上記フェノール型ノボラック樹脂を得るための反応中または反応後に、必要に応じて、下記式(12)
【0087】
【化16】


【0088】(式中、R61は炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アリル基またはハロゲン原子を表わし;そしてR51およびR52は前記の意味を有する)で示される1官能性フェノール化合物を末端封止剤として併用してもよい。
【0089】上記式(12)における基R61の具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、エチレン基、プロピレン基、フェニル基、ベンジル基、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などがあげられ、好ましくは、メチル基、t−ブチル基、ノニル基、フェニル基、塩素原子および臭素原子であり、特にメチル基、t−ブチル基、フェニル基および臭素原子が好ましい。
【0090】上記式(9)のフェノール化合物に対して用いる「2官能性」なる語は、式(9)において、水酸基を基準に、オルト位および/またはパラ位に水素原子が2個直接結合していることを意味する。該水素原子は上記式(10)および式(11)の化合物中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してフェノール型ノボラック樹脂を生成する。
【0091】また、式(12)のフェノール化合物に対して用いる「1官能性」なる語は、式(12)において、水酸基を基準にオルト位またはパラ位に水素原子が1個直接結合していることを意味する。該水素原子は上記式(10)または式(11)の化合物中のカルボニル基(C=O)と脱水縮合反応してフェノール型ノボラック樹脂の末端を形成する。
【0092】前記式(8)の2官能性フェノール化合物としては、たとえば、フェノール、p−プロペニルフェノール、o−ベンジルフェノール、6−n−アミル−n−クレゾール、o−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−tert−ペンチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−クロルフェノール、p−クロルフェノール、4−クロル−3,5−キシレノール、o−アリルフェノール、ノニルフェノール、o−ブロムフェノール、p−クミルフェノールなどが挙げられる。
【0093】また、式(10)のアルデヒド化合物としては、たとえば、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドなどがあげられる。また、式(10)のアルデヒド化合物としてm−またはp−ヒドロキシベンズアルデヒドを用い、式(9)のフェノール化合物との反応後に、該ヒドロキシベンズアルデヒドをエピハロヒドリンでグリシジルエーテル化してもよい。なお、上記ヒドロキシベンズアルデヒドのベンゼン核は炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。
【0094】式(11)のケトン化合物としては、たとえば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどがあげられる。さらに、2−アセチルフェニル−2−ヒドロキシフェニルプロパンを用いると、式(7)の樹脂中にグリシジルオキシフェニル基を含有する有機基を導入することができる。これにより式(8)における下記式
【0095】
【化17】


【0096】(式中、R54およびR56は前記の意味を有する)の少なくとも一部を下記式
【0097】
【化18】


【0098】の基にすることができる。
【0099】さらに、エピハロヒドリンには、たとえば、エピクロルヒドリン、エピグロムヒドリンなどが包含される。
【0100】上記式(9)のフェノール化合物に式(10)のアルデヒド化合物および/または式(11)のケトン化合物を縮重合反応させることによりフェノール型ノボラック樹脂が得られる。この縮重合反応はそれ自体既知の通常のフェノール型ノボラック樹脂の製造方法に準じて行うことができる。具体的には、回分式または特開昭51−130498号公報などに記載の連続法などにより行なうことができる。たとえば、各成分を、前記式(7)における繰返し数(n)が1〜38の範囲内で、しかも数平均分子量およびエポキシ当量が前記した範囲内に包含されるような比率で配合し、かつ反応させることによってフェノール型ノボラック樹脂が得られる。この反応において、塩酸、燐酸および硫酸などの無機酸;パラトルエンスルホン酸およびしゅう酸などの有機酸;酢酸亜鉛などの金属塩などの触媒を使用することもできる。
【0101】フェノール型ノボラック樹脂の製造において、必要に応じて、上記式(9)のフェノール化合物と、式(10)のアルデヒドおよび/または式(11)のケトン化合物との縮重合反応中またはその後に、前記式(11)の1官能性フェノール化合物を末端封止剤として反応させることができる。
【0102】上記式(11)の1官能性フェノール化合物としては、具体的には、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、2,4−ジクロルフェノール、2,4−ジブロモフェノール、ジクロルキシレノール、ジブロモキシレノール、2,4,5−トリクロロフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノールなどが挙げられる。
【0103】式(12)のフェノール化合物と、上記式(9)のフェノール化合物、式(10)のアルデヒド化合物および/または式(11)のケトン化合物との縮重合反応は上記と同様にして行なうことができる。式(12)のフェノール化合物を併用して得られるノボラック型フェノール樹脂も前述のノボラック型フェノール樹脂の範ちゅうに包含される。
【0104】式(7)で示されるフェノール型ノボラックグリシジルエーテル樹脂は、前記のフェノール型ノボラック樹脂中のフェノール性水酸基にエピハロヒドリンを反応せしめて、グリシジルエーテル化することによって得られる。具体的には、例えば、フェノール型ノボラック樹脂をエピハロヒドリンに溶解し、この溶液にアルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に添加し、その反応系の水および未反応のエピハロヒドリンを蒸留除去することによって得られる。この蒸留した液からエピハロヒドリンを分離し再使用することができる。この反応は、例えば、ジオキサン、ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒の存在下で行なうことが好ましい。
【0105】式(7)のフェノール型ノボラックグリシジルエーテル樹脂は、上記のごとくにして製造することができるが、市販されているものを使用してもよく、市販品として、たとえば、フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物としては、DEN−438およびDEN−439〔ダウケミカル日本(株)製、商品名〕;クレゾール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物としては、EPICRON N−695〔大日本インキ(株)製、商品名〕、ESCN−195XHH〔住友化学(株)製、商品名〕、EOCN−102S、EOCN−1020およびEOCN104S〔日本化薬(株)製、商品名〕:ブロム変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物としては、BREN−S〔日本化薬(株)製、商品名〕:長鎖アルキル変性フェノール型ノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル化物としては、ESMB−260〔住友化学(株)製、商品名〕などがあげられる。
【0106】■ 芳香環の炭素原子に直接結合している下記式(13)
【0107】
【化19】


【0108】(式中、R65は水素原子、グリシジル基または炭素数1〜20のアルキル基を表わす)で示されるグリシジルアミノ基にもとずくグリシジル基を1分子中に2個以上有する化合物。
【0109】上記式(13)の化合物は、1分子中に芳香環とグリシジル基とを有し、該グリシジル基は上記式(13)のグリシジルアミノ基によって導入され、しかも式(13)における上記窒素原子(N)は該芳香環の炭素原子に直接結合しており、このものは、前記カチオン性樹脂(I)の、調製に用いる(A)成分と一部重複する。上記式(13)の化合物は、一般に、アニリン誘導体のアミノ基(−NH2)にエピハロヒドリン(好ましくは、エピクロルヒドリン)を、アルカリ金属水酸化物溶液などの触媒の存在下で、脱ハロゲン化水素(縮合)反応させることによって得ることができる。この反応はそれ自体既知の方法で行なうことができる。この反応において、理論的にはモル比で、アミノ基1モルあたりエピハロヒドリンを1モル反応させると、該アミノ基には1個のグリシジル基が導入され、そして、該アミノ基には1個の水素原子が残存結合しており、この水素原子が前記式(13)におけるR65の水素原子に相当する。そして、この反応において、エピハロヒドリンを2モル反応させると、該アミノ基に2個のグリシジル基が導入され、このうち1個のグリシジル基が式(13)におけるR65に相当する。ここでアニリン誘導体は、広義に、ベンゼン環やナフタレン環などの芳香環の環炭素原子に直接結合したアミノ基(−NH2)を1個または2個以上有する化合物を意味するものであり、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、p−エチルアニリン、p−クレシジン、2,4−キシリジン、3,4−キシリジン、o−アニシジン、p−アニシジン、ナフチルアミンなどのベンゼン環やナフタレン環の環炭素原子にアミノ基(−NH2)が1個直接結合してなるモノアニリン誘導体;フェニレンジアミン、2,4−トルイレンジアミン、ジアミノベンズアニリド、ジアニシジン、ジアミノジフェニルエーテル、3,5−ジアミノクロロベンゼン、3、3′−ジメチルベンジジン、1,5−ナフチレンジアミンなどのベンゼン環やナフタレン環の炭素原子にアミノ基(−NH2)が2個直接結合したジアニリン誘導体;などがあげられる。
【0110】また上記のモノアニリン誘導体およびジアニリン誘導体に、たとえば塩酸、燐酸、硫酸などの無機酸;パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸;酢酸亜鉛などの金属塩などを触媒とし、アルデヒド類(例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなど)やケトン類(例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)を反応させて、複数の芳香環がメチレン基などによって結合してなる重縮合体であってもよく、この重縮合は芳香環の繰返し単位が2〜40、とくに2〜20の範囲内が好ましい。かかる重縮合の具体例として、ジアミノジフェニルメタン、3,3−ジメチル−4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3−ジエチル−4,4−ジアミノジフェニルメタンなどがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0111】上記のごとく得られる式(13)の化合物は、そのグリシジル基の一部に、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、ノニルフェノール、フェノールなどのフェノール類;ダイマー酸、ステアリン酸、オレイン酸、大豆油脂肪酸などの高級脂肪酸;酢酸、ぎ酸、ヒドロキシ酢酸などの有機酸;アルキルアルコール、セロソルブ、カービトールなどのアルコール類;などから選ばれる1種以上を反応させて変性してもよい。このうちフェノール類および高級脂肪酸類が特に好ましい。この変性にあたって、硼ふっ化亜鉛やテトラメチルアンモニウムクロリドなどの触媒を用いることが好ましい。
【0112】前記式(13)の化合物は、蒸気圧浸透法で測定した数平均分子量が一般に約200〜8000、特に500〜5000の範囲内にあり、またエポキシ当量が一般に100〜2000、特に100〜600の範囲内にあることが好ましい。かかる式(13)の化合物として、市販品を使用することが可能であり、例えば、GAN〔日本火薬(株)製、N,N−ジグリシジルアニリン〕、GOT〔日本火薬(株)製、N,N−ジグリシジル−O−トルイジン〕、MY720〔日本チバガイギー社製、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン〕、MY722〔日本チバガイギー社製、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン〕などがあげられる。
【0113】(III−3):1分子中に2個以上の炭素−炭素不飽和基(好ましくはα,β−不飽和基)を有する化合物。
【0114】そのような化合物には下記(1)および(2)に示すものがあげられる。
【0115】(1)1分子あたり平均2個以上の下記式(14)で示される3−アルコキシアルキル−3−(メタ)アクリロイルウレイド基を有し、かつ数平均分子量が800〜50000の範囲内にある樹脂。
【0116】
【化20】


【0117】(式中、R71は水素原子又はメチル基を表わし;R72は炭素数1〜4のアルキレン基を表わし;そしてR73は炭素数1〜10のアルキル基を表わす)
(2)ポリイソシアネート化合物と該イソシアネート基反応性水素原子および下記構造式(15)で示される官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとの反応により得られる遊離イソシアネート基を実質的に有しない、1分子中に、α,β−エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物、並びにポリイソシアネート化合物と該イソシアネート基反応性水素原子および下記構造式(15)で示される官能基を有するα,β−エチレン性不飽和モノマーとの反応により得られる遊離イソシアネートを有する化合物と1級、2級アミノ基及び/または水酸基を有する樹脂との反応によって得られる1分子中にα,β−エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物。
【0118】
【化21】


【0119】上記化合物(2)の具体的な説明は特公昭55−30753号公報に記載されているので、ここでは該公報の引用をもって詳細な記述に代える。
【0120】カチオン電着塗料(III)において、カチオン性樹脂(I)と硬化剤(II)との混合比率は、使用目的等に応じて広範囲にわたり変えることができるが、例えば、該両成分の合計重量にもとずいて、一般にカチオン性樹脂(I)は30〜90%、特に50〜80%の範囲内、そして硬化剤(II)は70〜10%、特に50〜20%の範囲内とするのが好ましい。
【0121】また、該塗料(III)において、カチオン性樹脂(I)の水分散化又は水溶化を容易ならしめるために、該樹脂(I)の塩基は基の一部もしくは全部を、ぎ酸、酢酸、乳酸、酪酸、プロピオン酸などの酸成分で中和しておくことが好ましい。
自己硬化性塗料用樹脂(IV):この樹脂(IV)はカチオン性樹脂(I)と硬化剤(II)とを部分反応させることによって得られる。この自己硬化性樹脂(IV)を主成分とするカチオン電着塗料(V)はさらに硬化剤を配合することなく、このままで加熱により塗膜を架橋硬化させることができる。
【0122】ここで用いられる硬化剤(II)の種類には特に制限はないが、一般には部分反応が容易に行われる部分ブロックポリイソシアネート化合物が好ましい。しかして、自己硬化性塗料用樹脂(IV)は、ポリイソシアネート化合物1分子中に存在する2個以上のイソシアネート基の1個を残して、それ以外の全てをブロック剤でブロックしてなる部分ブロックポリイソシアネート化合物の遊離のイソシアネート基を、カチオン性樹脂(I)に不活性有機溶媒中で40〜200℃の温度において遊離のイソシアネート基が殆どまたは全くなくなるまで反応させることによって得られる。
【0123】部分ブロックポリイソシアネート化合物とカチオン性樹脂(I)との配合比率は、硬化性等を考慮し目的に応じて広い範囲にわたり変えることができるが、一般には、カチオン性樹脂(I)に含まれる第1級、第2級アミノ基と水酸基との合計モル数に対する部分ブロックポリイソシアネート化合物のモル数の比が0.4〜1.50の範囲内となるようにするのが好ましい。
【0124】また、自己硬化性塗料用樹脂(IV)は、カチオン性樹脂(I)に、α,β−不飽和二重結合を導入したものであってもよく、そのような樹脂(IV)は、ポリイソシアネート化合物1分子中に存在する2個以上のイソシアネート基の1個を残して、それ以外の全てのイソシアネート基をα,β−不飽和二重結合と水酸基または第2級アミド基などの活性水素とを有する化合物〔たとえば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メチロール(メタ)アクリルアミド、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドなど〕と反応することにより得られる、1分子中にα,β−不飽和二重結合と1個のイソシアネート基とを有するモノイソシアネート化合物を、カチオン性樹脂(I)に含まれる第1級、第2級アミノ基および水酸基のいずれかもしくはすべてに反応させることによって得ることができる。この場合、α,β−不飽和二重結合の導入量は、該樹脂固形分中、α,β−不飽和二重結合当量が200〜2000の範囲内となるようにするのが特に好ましい。
【0125】カチオン電着塗料(V):このカチオン電着塗料(V)は自己硬化性塗料用樹脂(IV)を前記酸性化合物でプロトン化したものを主成分とし、これを水に溶解もしくは分散することによって得られる。硬化剤(II)は不要であるが、必要に応じて配合しても差支えない。
【0126】本発明のカチオン電着塗料(III)および(V)は、カチオン性樹脂(I)、および自己硬化性塗料用樹脂(IV)のいずれかを主成分としているが、さらに必要に応じて体質顔料、防食顔料、分散剤、はじき防止剤、硬化促進剤などを配合することができる。このうち、顔料は下記顔料分散ペースト(VI)を用いて配合することが好ましい。
【0127】顔料分散ペースト(VI):この顔料分散ペースト(VI)は、カチオン性樹脂(I)および自己硬化性塗料用樹脂(IV)から選ばれる少なくとも1種と顔料(着色顔料、体質顔料、防食顔料など)とを水中で混合分散することにより得ることができ、さらに必要に応じてさらに、可塑剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤などを含有していてもよい。
【0128】これらの各成分の混合分散は、ボールミル、サンドミル、クロウルス(Crowles)溶解機、連続分散機などを用いて行なうことができ、顔料を所望のサイズに分散し、上記樹脂によって湿潤させることが好ましい。分散後、顔料の粒子サイズは、10ミクロン以下(ヘルマン・グラインド・ゲージの度数で約6〜8)であることが好ましい。この分散は水中で行うことが好ましい。この場合、前記酸性化合物で、カチオン性樹脂(I)および自己硬化性塗料用樹脂(IV)中の塩基性基の一部もしくは全部を中和しプロトン化し水分散液としておくことが好ましい。酸性化合物の添加量は、これらの樹脂の中和価がKOH(mg/g)換算で一般に5〜200、特に10〜150の範囲内なるように調整することが好ましい。顔料分散ペースト(VI)の水性分液中の水含有率は特に制限されないが、通常約20〜80重量%の範囲内が好ましい。
【0129】顔料分散ペースト(VI)における上記顔料の種類には特に制限はなく、例えば、カーボンブラック、チタン白、鉛白、酸化鉛、ベンガラなどの着色顔料;酸化アンチモン、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミニウムシリカ、炭酸マグネシウム、マグネシウムシリカ、クレー、タルクのような体質顔料;クロム酸ストロンチウム、クロム酸鉛、塩基性クロム酸鉛、鉛丹、ケイ酸鉛、塩基性ケイ酸鉛、リン酸鉛、塩基性リン酸鉛、トリポリリン酸鉛、ケイクロム酸鉛、黄鉛、シアナミド鉛、鉛酸カルシウム、亜酸化鉛、硫酸鉛などの防食顔料があげられる。これらの顔料と塗料用樹脂との比率は、通常、固形分重量比で2/1〜7/1の範囲内が好ましい。
【0130】以上に述べた如くして調製されるカチオン電着塗料(III)および(V)は、適当な導電性基体(被塗物)にカチオン電着塗装し、その塗膜を例えば80〜250℃、好ましくは120〜160℃の温度で加熱硬化させることができる。特に、本発明のカチオン電着塗料による電着塗膜を160℃以下の低温で十分に硬化させるには、鉛化合物、ジルコニウム化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、マンガン化合物、銅化合物、亜鉛化合物、鉄化合物、クロム化合物、ニッケル化合物、スズ化合物などから選ばれる1種もしくは2種以上の触媒を添加することが有効である。これら金属化合物の具体例としては、例えば、ジルコニウムアセチルアセトナート、コバルトアセチルアセトナート、アルミニウムアセチルアセトナート、マンガンアセチルアセトナートなどのキレート化合物;β−ヒドロキシアミノ構造を有する化合物と酸化鉛(II)とのキレー化反応生成物;2−エチルヘキサン酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸鉛、安息香酸鉛、酢酸鉛、乳酸鉛、ギ酸鉛、グリコール酸鉛、オクチル酸ジルコニウムなどのカルボキシレート;などが挙げられる。
【0131】上記金属化合物は、カチオン性樹脂の固形分に対する金属含有率が一般に10重量%以下、好ましくは0.5〜5重量%となるような量で使用することができる。本発明によって得られるカチオン電着塗料は、カチオン性樹脂中の水分散性を付与するカチオン性基が第3級アミノ基であっても、低中和での水分散性に優れているため、高pH、高つきまわり性が得られる。また、該カチオン性樹脂(I)には第1級水酸基を有する化合物を多量に反応させることができるため、種々の硬化形成において有用な官能基である第1級水酸基を該樹脂中に多数導入することができ、硬化性が向上し、陰極電着塗装用として好適な樹脂組成物を提供することができる。
【0132】本発明のカチオン電着塗料を用いて導電性基体上に電着塗膜を形成する方法は特に制限されるものではなく、通常のカチオン電着塗料条件を用いて行なうことができる。例えば、該電着塗料に、必要に応じ顔料、硬化触媒、その他の添加剤を配合し、浴濃度(固形分濃度)5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%及び浴pH5〜8、好ましくは5.5〜7の範囲内のカチオン電着浴を調製する。その際、被塗物をカソードとし、アノードとしてはステンレス又は炭素板を用いるのが好ましい。電着塗装条件は、とくに制限されるものではないが、一般的には、浴温:20〜30℃、電圧100〜400V、好ましくは200〜300V、電流密度:0.01〜3A/dm2、通電時間:1〜5分、極面積比(A/C):2/1〜1/2、極間距離:10〜100cm、撹拌状態で電着することが望ましい。形成される電着塗料の膜厚は厳密に制限されないが、一般的には、硬化塗膜にもとずいて3〜200μの範囲内が適している。塗装後、電着浴から被塗物を引上げ、水洗してから、必要に応じて風乾し、通常70〜250℃、好ましくは120〜160℃の範囲内の温度で加熱硬化させることが好ましい。さらに、本発明のカチオン電着塗料(III)および(V)は、カチオン性樹脂(I)および自己硬化性樹脂(IV)を用いているため、水分散性、貯蔵安定性、浴安定性、耐食性、平滑性などがすぐれている。
【0133】本発明によって提供されるカチオン電着塗料は、カチオン性樹脂中の水分散性を付与するカチオン性基が第3級アミノ基であっても、低中和での水分散性に優れているため、高pH、高つきまわり性が得られる。また、該カチオン性基には第1級水酸基を有するものを多量に使用することができるため、種々の硬化形式において有用な官能基である第1級水酸基を多数導入でき、硬化性が向上し、陰極電着塗装用として好適な樹脂組成物を提供することができる。
【0134】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下において、「%」および「部」は特にことわらない限りいずれも重量基準である。
【0135】I.製造例1)アミン化合物(B)の製造(B−1):温度計、撹拌機、還流冷却器および水分離器を取り付けた反応容器に、ステアリン酸285部とヒドロキシエチルアミノエチルアミン104部およびトルエン80部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し必要に応じてトルエンを除去し温度を上げながら反応水18部を分離除去した後残存するトルエンを減圧除去しアミン価150、凝固点76℃のアミン化合物(B−1)を得た。
【0136】(B−2):(比較例用)
撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を備え付けたフラスコに、モノエタノールアミン39部を仕込み、60℃に保ちながら、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド100部を滴下し、60℃で5時間反応させ、アミン化合物(B−2)を得た。
【0137】(2)フェノール化合物(C)の製造(C−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ジエタノールアミン105部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部およびエチレングリコールモノブチルエーテル330部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−1)を得た。
【0138】(C−2):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、フェニルフェノール170部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部、テトラメチルアンモニウムクロリド0.2およびエチレングリコールモノブチルエーテル346部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−2)を得た。
【0139】(C−3):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、オレイン酸280部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部、テトラメチルアンモニウムクロリド0.2部およびエチレングリコールモノブチルエーテル374部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−3)を得た。
【0140】(C−4):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、前記アミン化合物(B−1)370部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル760部、ビスフェノールA456部およびエチレングリコールモノブチルエーテル397部を添加し、150℃でエポキシ基残量が0になるまで反応し、固形分含有率80%の(C−4)を得た。前記一般式(IX)のqは約3である。
【0141】(3)硬化剤(II)の製造(II−1):トリレンジイソシアネート174部に、50℃で2時間かけて、エチレングリコールモノエチルエーテル268.5部を滴下し、更に80℃で3時間保温して80%の固形分の硬化剤(II−1)を得た。
【0142】(II−2):温度計、撹拌機、還流冷却器および滴下ロートを取り付けた反応容器に、イソホロンジイソシアネート222部とメチルイソブチルケトン83.4部とジブチルチンジラウレート0.1部およびハイドロキノンモノメチルエーテル1部を仕込み、100℃でヒドロキシエチルアクリレート116部を滴下しNCO価112になるまで反応させて硬化剤(II−2)を得た。
【0143】(II−3):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、EPICLON N−695〔大日本インキ(株)、エポキシ当量213、n=7〕1917部、エチレングリコールモノブチルエーテル590部、ノニルフェノール440部およびテトラメチルアンモニウムクロリド0.2部を仕込み、ポエキシ当量が350になるまで150℃で反応させて硬化剤(II−3)を得た。
【0144】(II−4):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、EPICLON N−695〔大日本インキ(株)、エポキシ当量213、n=7〕1917部、エチレングリコールモノブチルエーテル620部、トール油脂肪酸560部およびテトラメチルアンモニウムクロリド0.2部を仕込み、ポエキシ当量が370になるまで150℃で反応させて硬化剤(II−4)を得た。
【0145】(II−5):EHPE−3150〔エポキシ当量180、ダイセル化学工業(株)製〕100部をとエチレングリコールモノブチルエーテル25部を100℃で加熱溶解し、固形分80%、ポエキシ当量180の硬化剤(II−5)を得た。
【0146】(II−6):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、ESMB−260〔住友化学(株)、エポキシ当量260〕100部を、エチレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱溶解し、硬化剤(II−6)を得た。
【0147】(II−7):撹拌機、温度計および還流冷却器を取付けたフラスコに、MY720〔日本チバガイギー(株)、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−ジアミノジフェニルメタン〕100部およびエチレングリコールモノブチルエーテル25部を仕込み、加熱溶解し、不揮発分80%、エポキシ当量115の硬化剤(II−7)を得た。
【0148】(II−8):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、イソフオロンジイソシアネート666部、パラベンゾキノン11.4部およびジブチルスズジラウレート11.4部を仕込み、120℃に昇温保持しながら、N−n−ブトキシメチルアクリルアミド471部を滴下、反応させNCO価が110になった時点でトリメチロールプロパン134部を添加し、120℃で反応させNCO価が0になった時点でエチレングリコールモノブチルエーテル295部を加え硬化剤(II−8)を得た。
【0149】II.実施例実施例1カチオン性樹脂(I−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、TETRAD−C〔エポキシ当量102、三菱瓦斯化学(株)製、A成分〕404部、エチレングリコールモノブチルエーテル180部、ジエタノールアミン(B成分)315部およびフェノール化合物(C−3)1870部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し150℃で反応させ、エポキシ基残量が0になったことを確認して、カチオン性樹脂(I−1)を得た。このものの固形分含量率は80%、アミン価は76、第1級水酸基当量は369および(A)成分含有率が30.1%であるカチオン性樹脂(I−1)を得た。
【0150】実施例2〜5カチオン性樹脂(I−2)〜(I−6)を含む樹脂組成物:撹拌機、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、下記表1に示す(A)、(B)、(C)成分および溶剤を仕込み、混合撹拌しながら徐々に150℃で反応させ、エポキシ基残量が0になったことを確認して反応を終了し、カチオン性樹脂(I)を得た。
【0151】
【表1】


【0152】表−1において、ELM−434:N,N,N′,N′−テトラグリシジル−4,4′−メチレンビスベンゼンアミン(エポキシ当量116、住友化学工業(株)製)
ELM−120:N,N−ジグリシジルアミノフェニルグリシジルエーテル(エポキシ当量128、住友化学工業(株)製)
TETRAD−X:N,N,N′,N′−テトラグリシジルm−キシリレンジアミン(エポキシ当量101、三菱瓦斯化学(株)製)
TETRAD−C:1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(エポキシ当量101、三菱瓦斯化学(株)製)
実施例6カチオン性樹脂(I−6):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ELM−434(エポキシ当量116、住友化学工業(株)製、)464部、エチレングリコールモノブチルエーテル461部、ジエタノールアミン210部、アミノ化合物(B−1)371部およびビスフェノールA798部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0153】その後、ジエタノールアミン294部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル1710部およびエチレングリコールモノブチルエーテル501部を添加し、150℃で5時間反応させエポキシ基残量が0であることを確認し固形分80%、アミン価85、第1級水酸基当量363、(A)成分含有率12%のカチオン性樹脂(I−6)を得た。
実施例7自己硬化性塗料用樹脂(IV−1):撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ELM−434(エポキシ当量116、住友化学工業(株)製、)464部、メチルイソブチルケトン461部、ジエタノールアミン210部、アミノ化合物(B−1)371部およびビスフェノールA798部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0154】その後、ジエタノールアミン294部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル1710部およびメチルイソブチルケトン501部を添加し、150℃で5時間反応させエポキシ基残量が0であることを確認した。
【0155】次に、硬化剤(II−2)2239部を添加し、80℃でNCO価が0になるまで反応させ、エチレングリコールモノブチルエーテル1410部添加し、メチルイソブチルケトン1410部を加熱減圧除去し、固形分80%、アミン価58、第1級水酸基当量1064、(A)成分含有率7%、α,β−不飽和2重結合当量1064の自己硬化性塗料用樹脂(IV−1)を得た。
【0156】比較例1撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ジエタノールアミン21部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル950部、エポキシ当量340のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル340部、およびビスフェノールA456部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、120℃で反応させ、エポキシ当量が980であることを確認した後、エチレングリコールモノブチルエーテル492部を添加し、100℃に保ちならがジエタノールアミン158部及びアミノ化合物(B−2)43部を添加し、粘度上昇が止るまで反応させ、固形分80%、アミン価57、第1級水酸基当量532の比較用樹脂(I−■)を得た。〔(A)成分無し〕。
【0157】比較例2撹拌機、温度計、滴下ロートおよび還流冷却器を取付けたフラスコに、ELM−434(エポキシ当量116、住友化学工業(株)製、)464部、エチレングリコールモノブチルエーテル461部、ジエタノールアミン315部およびアミノ化合物(B−1)371部を仕込み、混合撹拌しながら徐々に加熱し、150℃で反応させ、エポキシ基残量が0であることを確認した。
【0158】その後、ジエタノールアミン189部、エポキシ当量190のビスフェノールAジグリシジルエーテル1710部、ビスフェノールA798部およびエチレングリコールモノブチルエーテル501部を添加し、150℃で5時間反応させエポキシ基残量が0であることを確認し、固形分80%、アミン価85、第1級水酸基当量363、(A)成分含有率12%の比較用樹脂(I−■)を得た。〔(C)成分使用せず〕。
【0159】実施例8顔料分散ペースト(VI−1):上記カチオン性樹脂(I−1)10部にチタン白(石原産業(株)製、タイベックCR93)20部、カーボン(三菱化成(株)製、MA−7)2部、トリポリリン酸アルミ(帝国化工(株)製、Kホワイト84)4部、クレー(ジークライト化学(株)製、ジークライト)24部、酢酸0.4部および脱イオン水39.6部を加えて練り合わせた後、ガラスビーズ200部を加えてペイントシェーカーで分散し、粒ゲージでの粗粒子が10μ以下の固形分58%の顔料分散ペースト(VI−1)を得た。
【0160】実施例9〜16、比較例3〜4上記カチオン性樹脂に硬化剤および中和剤を表2の配合によって加え、十分に撹拌しながら脱イオン水を加えて固形分30%のエマルションを得た。
【0161】表2に示す触媒と顔料分散ペースト(VI−1)75部とを予め混合し、これを得られた上記エマルション333部に配合し、ついで脱イオン水を加え固形分含有率20%の電着塗料を得た。
【0162】
【表2】
表 2 実施例 カチオン 脱イオン 性樹脂 硬化剤 中和剤 触媒種 触媒量 9 I-1 95.3 II-7 29.7 蟻酸 1.2 207.1 オクテン酸鉛 2.6 10 I-2 93.7 II-1 31.3 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 11 I-2 93.7 II-2 31.2 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 12 I-3 75.0 II-3 50.0 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 13 I-4 69.0 II-8 56.0 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 14 I-5 93.7 II-5 31.3 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 15 I-6 81.0 II-6 44.0 蟻酸 1.2 207.1 オクテン酸亜鉛 2.6 16 I-6 75.0 II-4 50.0 酢酸 1.6 204.1 オクテン酸鉛 2.6 17 I-1 125 酢酸 1.6 204.1 〃 2.6 比較例 3 I-■ 93.7 II-5 31.3 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 4 I-■ 93.7 II-5 31.3 蟻酸 1.2 207.1 〃 2.6 オクテン酸鉛 (鉛含有率 38%)
オクテン酸亜鉛(亜鉛含有率 18%)
性能試験実施例9〜17および比較例3〜4で得た電着浴を用いて、リン酸亜鉛処理板および無処理鋼板に、25℃の浴温で100Vから250Vまでの電圧で3分間電着し、150℃で30分間焼きつけて得られる塗板のうちより硬化塗膜厚20μの塗板を選択し、塗膜性能試験に供した。試験結果を表3に示す。
【0163】
【表3】


【0164】試験方法安定性: 固形分含有率30%エマルションを30℃で15日間密閉貯蔵し、貯蔵前後のエマルション粒径の変化をコールター社ナノサイザーN−4を用いて測定した。粒径が0.3μ以下では水分散性が優れているといわれている。
【0165】pH: JIS K−0802−83のpH自動計測器を用いてJIS Z−8802−78の測定方法を用いて測定した。
【0166】塗面平滑性:前記した条件で塗装焼き付け硬化した塗膜面を目視で判断した。
SST: 耐ソルトスプレー性前記した塗装条件で20μを得る電圧で試験塗料を塗装し、160℃で20分間焼き付けた塗装板をJIS Z2871の手法に従って試験し、塗膜のカット(線状切傷)部からのクリーク巾片側2.0mm以内及びカット部以外の塗膜のフクレが8F(ASTM)以下の時合格とした。試験時間は1000時間であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)下記式(I)
【化1】


で示されるジグリシジルアミノ基が芳香環構造又は脂環構造の炭素原子に結合した化合物、(B)第1級水酸基を含有する第1級もしくは第2級アミン化合物および(C)下記式(2)
【化2】


(式中、R1およびR2は同一もしくは相異なり各々水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R3〜R6は同一もしくは相異なり各々水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、芳香族基、アリル基またはハロゲン原子を表わす)で示されるフェノール性水酸基含有官能基を含有するフェノール化合物を反応せしめることにより得られる第1級水酸基含有カチオン性樹脂を主成分として含有することを特徴とする水性塗料用樹脂組成物。
【請求項2】 (A)成分が、エポキシ当量が100〜2000でありかつ1分子中に式(1)のグリシジルアミノ基にもとずくグリシジル基を平均2.5〜10個有する化合物であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項3】 (C)成分が、式(2)のフェノール性水酸基含有官能基を1分子あたり平均0.5〜1.5個含有しかつ、数平均分子量が500〜20000である化合物である請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項4】 (C)成分を、(A)成分1モルあたり0.05〜1.4モルの割合で付加反応せしめることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項5】 請求項1記載の第1級水酸基含有カチオン性樹脂および硬化剤を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料。
【請求項6】 硬化剤が、ブロックイソシアネート化合物、ポリエポキシド化合物および1分子中に炭素−炭素不飽和基を2個以上有する化合物から選ばれる請求項4記載のカチオン電着塗料。
【請求項7】 請求項1記載の第1級水酸基含有カチオン性樹脂と硬化剤との部分的反応物よりなることを特徴とする自己硬化性塗料用樹脂組成物。
【請求項8】 請求項7記載の自己硬化性塗料用樹脂組成物を主成分とすることを特徴とするカチオン電着塗料。
【請求項9】 請求項1記載の第1級水酸基含有カチオン性樹脂または請求項7記載の自己硬化性塗料用樹脂組成物と顔料とを主成分とすることを特徴とする顔料ペースト。
【請求項10】 請求項6記載のカチオン電着塗料または請求項8記載のカチオン電着塗料で塗装された製品。