説明

水性紫外線硬化型インキ用塗工紙

【課題】 本発明は、低分子量紫外線硬化樹脂を含有する水性UV硬化型インキを使用して高膜厚のインキ皮膜を形成した場合であっても、当該インキ皮膜の密着性が良好な塗工層を有する水性UV硬化型インキ用紙を提供する。
【解決手段】 少なくとも支持体の一部に、水及びアクリレート系樹脂を少なくとも含む塗工液か、又は光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む塗工液を塗布して形成した塗工層から成り、塗工層は、分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料により溶解及び/又は浸透されることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性紫外線硬化型(以下「水性UV硬化型」という。)インキの密着性を向上させることができる塗工層を有する水性UV硬化型インキ用の印刷用塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷業界において使用する印刷インキに含まれている有機溶剤の労働衛生への影響、引火又は爆発の危険性に加えて、印刷工程での加熱乾燥時に放出される排ガス等が、光化学スモッグ等の公害原因物質となることから、規制されるようになってきた。このようなことから、印刷インキとしては、有機溶剤を削減するとともに、皮膚刺激性が低い分子量300以下の低分子量紫外線硬化樹脂(以下「低分子量紫外線硬化樹脂」という。)を含有する水性UV硬化型のインキが使用されている。
【0003】
さらに、印刷後の用紙が棒積み状態で置かれる場合に、インキの用紙への密着性が不十分であると、印刷したインキが上の紙に裏写りすることや、ブロッキングが発生することがあり、後加工時にインキが印刷面から剥離しないような性質である、すなわち、塗工層とインキとの密着性に優れた用紙が要求されている。
【0004】
しかしながら、UV硬化型インキを水性化することによって、インキ乾燥時における、水分の蒸発及び用紙への浸透により、他の硬化成分の基材への浸透が抑制され、基材とインキとの密着性が低下するという問題点があった。基材とインキとの密着性が低下することにより、インキ転移不良、版汚れ、裏写り、画線切れ又は白点等の問題が生じる。
【0005】
近年では、低分子量紫外線硬化樹脂を含有するUV硬化型インキを使用した印刷において、印刷適性が良く、かつ、耐水性も良好となるように表面処理を施した水性UV硬化型インキ用紙が報告されている。
【0006】
その一例として、支持体の少なくとも片面に、少なくとも水溶性天然高分子及びカチオン性ポリマーを含み顔料を含まない記録層を1.0g/m〜2.5g/m設けたことを特徴とする水性UV硬化型インキ用紙がある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、あらかじめ非印刷媒体上にUV硬化型樹脂組成物を含む塗工液で塗工膜を形成し、該塗工膜にUV硬化型樹脂を含有する水性インクを付与し、紫外線を照射して水性インクを硬化させることで、被印刷媒体へのインクの付着力を向上させるインクジェット印刷方式及び印刷物がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−277892号公報
【特許文献2】特開2002−225415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の技術は、塗工層の形成に水溶性天然高分子及びカチオン性ポリマーを含有する塗工液を使用することによって、低分子量紫外線硬化樹脂を塗工層に吸着させて低膜厚のインキ皮膜を形成するものであり、高膜厚のインキ皮膜を形成した場合には、用紙に対するインキ皮膜の密着性が低くなるおそれがある。
【0010】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、低分子量紫外線硬化樹脂を含有する水性UV硬化型インキを使用して、高膜厚のインキ皮膜を形成した場合であっても、当該インキ皮膜の密着性が良好な塗工層を有する水性紫外線硬化型インキ用塗工紙に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙は、少なくとも支持体の一部に、水及びアクリレート系樹脂を少なくとも含む塗工液か、又は光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む塗工液を塗布して形成した塗工層から成り、塗工層は、分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料により溶解及び/又は浸透されることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙である。
【0012】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙は、水及びアクリレート系樹脂を少なくとも含む塗工液を塗布して形成した塗工層の塗工量が、0.01g/m以上であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙である。
【0013】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙における光重合性オリゴマーは、ウレタン系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー又はエステル系オリゴマーであることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙である。
【0014】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙は、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む塗工液を塗布して形成した塗工層の塗工量が、0.6g/m以上であることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙である。
【0015】
さらに、本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙は、偽造防止印刷物を作製する際の基材として用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明における水性UV硬化型インキ用塗工紙は、水性UV硬化型インキを使用して高膜厚のインキ皮膜を形成した場合において、インキ皮膜の密着性が良好な水性UV硬化型インキ用塗工紙を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0018】
本発明の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙の塗工層は、水とアクリレート系樹脂を少なくとも含む塗工液か、又は光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む塗工液から形成され、当該塗工層がインキに含まれる分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料により溶解及び/又は浸透されることによって、インキ皮膜の密着性が良好となるものである。
【0019】
(アクリレート系樹脂)
アクリレート系樹脂は、メタクリル酸、メタクリル酸エステル(例えば、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸エチル(EMA)等)、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、アクリル酸、アクリル酸エステル(例えば、アクリル酸メチル(MA)、アクリル酸エチル(EA)等)、アクリロニトリル、アクリルアミド等の単量体から得られる単独重合体及び共重合体並びにこれらの単量体と共重合し得る他の単量体(例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル又はスチレン等)との共重合体が挙げられる。
【0020】
(アクリレート系樹脂を含有する塗工液)
アクリレート系樹脂を含有する塗工液の形態は、ラテックス、エマルション又は溶液等の液体であり、30℃における塗工液の粘度が、100Pa・s以下であれば特に限定されることはない。100Pa・sを超えた場合は、塗工液が支持体に定着しないため、塗工又は印刷不良が発生しやすくなる。溶液としては、少なくとも水を含み、アクリレート系樹脂の硬化性及び流動特性等に悪影響を与えない範囲で水と相溶性を有する有機溶媒を使用することができる。水は、水道水、蒸留水又はイオン交換水等を使用することができ、含有不純物がアクリレート系樹脂を含有する層を形成する液の硬化性及び流動特性等に悪影響を及さなければ特に制限はない。また、水と相溶性を有する有機溶媒としては、エタノール又はプロパノール等を使用することができる。なお、必要に応じて、顔料、ワックス、消泡剤、光重合開始剤及び界面活性剤等の公知の添加剤を適宜配合しても良い。
【0021】
(光重合性オリゴマー)
光重合性オリゴマーとしては、ウレタン系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー又はエステル系オリゴマー等が挙げられる。
【0022】
(光重合性モノマー)
光重合性モノマーは、公知の単官能光重合性モノマー又は多官能光重合性モノマーを使用することができる。単官能光重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、(メトキシ)ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
多官能光重合性モノマーとしては、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキシド)付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキシド)付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0024】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としては、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸エステル、アルコキシアセトフェノン、ベンゾフェノン及びベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4−ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾイン誘導体等の公知の光重合開始剤を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
(光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含む塗工液)
光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含む塗工液の形態は、ラテックス、エマルション等の液体であり、30℃における塗工液の粘度が100Pa・s以下であれば特に限定されることはない。100Pa・sを超えた場合は、塗工液が支持体に定着しないため、塗工又は印刷不良が発生しやすくなる。また、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤から成る塗工液には、必要に応じて、顔料、ワックス、消泡剤、光重合開始剤及び界面活性剤等の公知の添加剤を適宜配合しても良い。
【0026】
(支持体)
本発明における塗工液を塗布する支持体は、木材や非木材パルプから成る紙か、合成繊維から成る合成繊維紙や不織布か、又はフィルム等の塗工層を形成することができるシート状のものであれば特に限定はない。ただし、液体吸収性を有する紙、合成繊維紙又は不織布等の繊維状の材料から形成される基材の方が好ましい。また、支持体が塗工液をはじく場合には、均一な塗工層を形成することができない可能性があり、好ましくない。
【0027】
木材や非木材パルプから成る紙とは、各種木材を原料とするKP及びSP等の化学パルプか、GP、TMP及びCTMP等の機械パルプか、又は古紙再生パルプ等のパルプから成る上質紙や再生紙等、更には、ケナフ、麻、アバカ及び木綿等の非木材から成る紙や、顔料やバインダーを塗工した塗工紙等であり、特に限定されるものではない。
【0028】
支持体中に内添又は塗工される填料、顔料又はサイズ剤は、特に限定されず、公知の填料、顔料又はサイズ剤を使用することができる。公知の填料としては、例えば、クレー、炭酸カルシウム又は二酸化チタン等が挙げられる。また、公知の顔料としては、例えば、クレー、炭酸カルシウム、シリカ又は有機顔料等が挙げられる。公知のサイズ剤としては、ロジン系サイズ剤、AKD又はASA等が挙げられる。
【0029】
(塗工層の形成)
塗工層は、必要に応じて支持体の片面、支持体の両面又は支持体の一部に付与することができる。支持体への塗工層の形成は、塗工液を支持体に対してサイズプレス、ブレード塗工、ロール塗工、エアナイフ塗工又はバー塗工等の公知の塗工方法を用いるか、スクリーン印刷、フレキソ印刷又はグラビア印刷等の公知の印刷方法を用いるか、含浸により付与し、付与後、塗工液を乾燥することにより固着させるか、又は紫外線を照射して硬化することにより形成される。なお、アクリレート系樹脂を含有する塗工液の乾燥は、水及び溶剤蒸発方式により行われる。一方、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含む塗工液の硬化は、紫外線照射方式により行われる。
【0030】
(水及び溶剤蒸発方式による塗工層の形成)
水及び溶剤蒸発方式とは、アクリレート系樹脂を水分散した塗工液を熱風乾燥、IR乾燥又はドラム乾燥等により、塗工液の水分を蒸発させて、アクリレート系樹脂を支持体に乾燥固着させる方式である。
【0031】
アクリレート系樹脂を支持体に固着して塗工層を形成する場合は、塗工液の固化後における塗工層の塗工量が片面0.01g/m以上120g/m未満であり、好ましくは、0.50g/m以上である。塗工層の塗工量が0.01g/m未満では、インキと塗工層との十分な密着性が得られず、好ましくない。さらに、支持体中の繊維や填料が表層に露出している場合には、これらがインキに取られ、インキの転移不良、画線切れ、白点の発生又は版汚れ等の問題が生じる可能性がある。また、塗工層の塗工量が120g/mを超えた場合は、塗工液が固化せず、印刷又は塗工不良や、乾燥又は硬化不良が発生する。
【0032】
(紫外線照射方式による塗工層の形成)
紫外線照射方式とは、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤から成る塗工液を支持体に塗工した後に公知の水銀灯、メタルハライドランプ又はLED等の光源により紫外線を照射し、ラジカル重合により光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤から成る塗工液の紫外線硬化性成分を高分子化させて硬化する方式である。
【0033】
光重合性オリゴマー及び光重合性モノマー、光重合開始剤から成る塗工液を硬化して塗工層を形成する場合は、塗工層の塗工量が片面0.6g/m以上120g/m未満であり、好ましくは、1.2g/m以上である。塗工層の塗工量が0.6g/m未満では、用紙表面が露出してしまい、インキと塗工層との十分な密着性が得られない。さらに、支持体中の繊維や填料がインキに取られ、インキの転移不良、画線切れ、白点の発生又は版汚れ等の問題が生じる可能性がある。また、塗工層の塗工量が120g/mを超えた場合は、塗工液が硬化せず、印刷又は塗工不良や、乾燥又は硬化不良が発生する。
【0034】
(分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料)
分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料としては、アクリロイルモルフォリン、N‐ビニルピロリドン、N‐ビニルホルムアミド、イソボニルアクリレート及びシクロへキシルアクリレート等の低分子量紫外線硬化性材料がある。該成分は、皮膚刺激性が低く、本発明の塗工層への浸透及び/又は溶解性が高く、インキ中に配合することによって、密着性を向上することができる。分子量が300を超えた場合は、塗工層への浸透及び/又は溶解性が低下し、密着性が低下する。なお、塗工層への浸透の評価は、前述した低分子量紫外線硬化性材料を数滴滴下し、10秒以内における塗工層の滲出の有無により行う。また、溶解性の評価は、前述した低分子量紫外線硬化性材料を数滴滴下し、数秒内における溶解の有無により行う。
【0035】
本発明の水性紫外線硬化型インキ用紙は、高膜厚なインキ皮膜の印刷画線の形成及び密着性が良好であるため、第1の画線と第2の画線をそれぞれ異なる角度で配置して背景部と潜像部を形成し、当該印刷物を傾けることにより潜像画像を視認することができる印刷物(例えば、特許第4374446号公報)に当該発明のインキ用紙を使用し、水性UV硬化型インキを用いても水を含まないUV硬化型インキと同等に高膜厚であるため、当該印刷物を傾けることにより潜像画像を視認することができる。また、紙に対する密着性の良好な偽造防止効果の高い印刷物を作製することができるため、環境上及び労働衛生上良好である。
【0036】
また、本発明の水性紫外線硬化型インキ用紙に、光輝性顔料を含有する水性紫外線硬化型インキを使用して印刷した場合には、高膜厚の印刷画線に光輝性顔料がリーフィング(配向性)することによって、印刷物をわずかに傾ければ光輝性顔料の特有な効果である干渉光(虹彩色)が生じるため、第1の画線と第2の画線をそれぞれ異なる角度で配置して背景部と潜像部を形成し、当該印刷物を傾けることにより、任意の階調の潜像画像を視認することができる印刷物(例えば、WO2003/013871号公報)に使用し、水性インキを用いても水を含まないUV硬化型インキと同等の偽造防止効果の高い印刷物を作製することができる。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明の水性UV硬化型インキ用塗工紙について具体的な実施例を挙げ、詳細に説明する。
【0038】
(塗工紙P
重合したアクリレート系樹脂を水分散した塗工液としては、アクリレート系ラテックス(日本ゼオン株式会社製)を使用した。アクリレート系ラテックスを室温(20℃)において5分間かくはんし、バーコータにより支持体である非塗工紙に塗工した後、熱風乾燥して塗工層を形成し、水性UV硬化型インキ用塗工紙Pを作製した。アクリレート系ラテックスの塗工量は、1.0g/mとした。
【0039】
(塗工紙P
光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤から成る塗工液としては、UV VECTA カートン 墨(T&K TOKA社製)を使用した。印刷適性試験機(Model MPT8C 熊谷機械工業製)により塗工した後、紫外線を照射することにより硬化させて塗工層を形成し、水性UV硬化型インキ用塗工紙Pを作製した。なお、塗工量は、1.2g/mとした。
【0040】
(比較塗工紙P
比較例1として、アクリレート系樹脂を含まないスチレン・ブタジエン系ラテックス(日本ゼオン株式会社製)を使用した。スチレン・ブタジエン系ラテックスを室温(20℃)において、5分間かくはんし、バーコータにより支持体である非塗工紙に塗工した後、熱風乾燥して、塗工層を形成して比較塗工紙Pを作製した。比較塗工紙Pの塗工量は、1.0g/mとした。
【0041】
(比較塗工紙P
比較例2として、紫外線硬化性材料と光重合開始剤を含まない酸化重合型インキ(大日本インキ製)を使用した。酸化重合型インキを、印刷適性試験機(Model MPT8C 熊谷機械工業製)により塗工層を形成して比較塗工紙Pを作製した。比較塗工紙Pの塗工量は、1.2g/mとした。
【0042】
本発明の水性UV硬化型インキ用塗工紙の評価は、以下のように行った。
【0043】
実施例中の%は、すべて重量%を示す。 印刷方式は、スクリーン印刷とし、250線のメッシュ(オープニング72μm、版厚47μm)を使用した。水性UV硬化型インキは、ウレタン系オリゴマーを40重量%、N‐ビニルホルムアミドを16重量%配合した水性UV硬化型インキを使用した。顔料は、メルク社製「Iriodin211(商品名)」を15重量%配合した。その他、光重合性モノマー、界面活性剤及び光重合開始剤を配合した。スクリーン印刷後、紫外線を照射してインキ皮膜を硬化し、印刷画線を爪で強く引っ掻き、密着性試験を評価した。インキ皮膜は、10μmとした。紫外線照射条件は、120W/cmのメタルハライドランプ1灯の出力を3.6kW、印刷物からの照射距離を14cmに調整し、印刷物の搬送速度を22m/minとした。
【0044】
インキ皮膜の密着性は、印刷物の画線を爪で強く引っ掻き、画線の脱離を評価した。評価結果を表1に示す。
○:画線の脱離なし。
×:画線の脱離あり。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、本発明の実施例によれば、紫外線硬化性に優れ、耐久性に優れるインキを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体の一部に、水及びアクリレート系樹脂を少なくとも含む塗工液か、又は光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む塗工液を塗布して形成した塗工層から成り、
前記塗工層は、分子量300以下の低分子量紫外線硬化性材料により溶解及び/又は浸透されることを特徴とする水性紫外線硬化型インキ用塗工紙。
【請求項2】
水及びアクリレート系樹脂を少なくとも含む前記塗工液を塗布して形成した前記塗工層の塗工量が、0.01g/m以上であることを特徴とする請求項1記載の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙。
【請求項3】
前記光重合性オリゴマーは、ウレタン系オリゴマー、エポキシ系オリゴマー又はエステル系オリゴマーであることを特徴とする請求項1記載の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙。
【請求項4】
光重合性オリゴマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を少なくとも含む前記塗工液を塗布して形成した前記塗工層の塗工量が、0.6g/m以上であることを特徴とする請求項1又は請求項3記載の水性紫外線硬化型インキ用塗工紙。

【公開番号】特開2012−144816(P2012−144816A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2889(P2011−2889)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(303017679)独立行政法人 国立印刷局 (471)
【Fターム(参考)】