説明

水抜き装置

水抜き配管(4)を用いて燃料タンク(2)から水(7)を除去する方法であって、前記水抜き配管が前記水の中につかっている入口(6)と水タンク(3)に接続された出口(5)とを有している。前記方法が前記燃料タンクを燃料(30)で満たす段階を含んでおり、前記燃料が前記水に静水圧を作用し、前記静水圧が前記水を重力に打ち勝って前記水抜き配管を介して前記水タンクの中へ上昇させる。静圧の利用が水を燃料タンクの底部から取り出す簡単で信頼性のある方法を提供している。水タンクは取り出した水を後で水をエンジンに供給することにより処理するために貯蔵できるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機の燃料タンクから水を除去する方法が特許文献1に記載されている。水抜き配管が、燃料に分散された水をブースタポンプのすぐ上流側で収集している。この装置の第一の問題は、ベンチュリとジェットポンプとの複雑な装置を必要とすることである。さらなる問題は、エンジンを比較的低回転で作動させる場合水がエンジンに流入することである。このことは、エンジンの運転効率を低下させる。さらなる問題は、飛行中に燃料タンクから水を完全に除去できないことである。
燃料タンクから水を除去する方法が特許文献2に記載されている。水配管が水を燃料タンクからエンジンに供給している。エンジンの速度が最小閾値を越えると、水配管におけるバルブが開かれる。というのは、エンジンが比較的高速で運転されている場合、エンジンに流入する水はエンジンの運転性能に著しい影響を与えないからである。特許文献2における方法の問題は、エンジン速度の測定装置及びバルブへの連通管を設置しなければならないことである。これらの二つの要素は損傷のリスクをかかえ、そして連通管は流体気密でかつ本質的に安全に燃料タンクから引き出さねばならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4809934号明細書
【特許文献2】米国特許第6170470号明細書
【0004】
飛行機の燃料装置において特に困難なことは、飛行機が離陸してしまうと大気温度が−30〜−40℃に低下し、燃料中の水が約20分後に凍結することである。水が凍結してしまうと、着陸時にタンクが暖まるまで水はタンクに閉じ込められている。従って、水は、20分以内に除去されないと、数回を越える飛行にわたって徐々に蓄積され問題を発生するか、又は手動によりドレンされねばならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の実施形態は、水抜き配管を用いて燃料タンクから水を除去する方法であって、水抜き配管が水の中につかっている入口と水タンクに接続された出口とを有している方法において、方法が燃料タンクを燃料で満たす段階を含んでおり、燃料が水に静水圧を作用し、静水圧が水を重力に打ち勝って水抜き配管を介して水タンクの中へ押し上げる方法である。
【0006】
本発明の第二の実施形態は、水抜き配管を用いて燃料タンクから水を除去するための水抜き装置であって、水タンクと、水タンクに接続された出口を有している水抜き配管とを備えている水抜き装置において、水抜き配管が入口を有していて、入口は使用する場合、水抜き配管の出口の下方の燃料タンクの底部における水の中につかっている、水抜き装置である。
【0007】
静水圧を利用することは、燃料タンクの底部から水を除去する簡単で安全な方法を提供する。水タンクに貯蔵した水は後で処理することができる。
【0008】
水抜き配管の入口は補給時に燃料タンクにおいて水がたまる場所に配置される。一般に燃料タンクの最下点である。
【0009】
水は、逆止め弁により、又は水抜き配管の出口を水タンクの最下点より上に配置することにより水タンク内に閉じ込められる。後者において、水抜き配管は水タンクの壁面である底壁面又は側壁面を貫通している。
【0010】
燃料タンクは完全に充填されるか、又は一部が充填されることは理解できるであろう。燃料タンクが水抜き配管の出口の上方にまで充填される限り、水を水タンクの中へ流入させるのに十分な静水圧が作用される。
【0011】
水は、定期的に水タンクを単純にドレンすることで除去することができる。しかしながら、メンテナンスの問題があって、定期的に手動でドレン操作を行なわねばならないことであり、そのメンテナンスの間隔は水タンクのサイズに依存するものであり、又比較的大きな水タンクが必要とされる。
【0012】
好ましくは、水タンクからの水はエンジンに供給され静水圧に利用される。このことが、手動によるドレン操作を不要にし、比較的小さな水タンクを可能にしている。
【0013】
好ましくは、水タンクの容量は燃料タンクの容量の0.1%未満であって、水タンクを手動でドレンする場合には、水タンクの容量は燃料タンクの容量の0.5%のオーダ(1%未満が望ましい)である。
【0014】
装置は自動車の燃料装置にも使用できるが、一般に燃料タンクは飛行機の燃料タンクである。
【0015】
装置が飛行機の燃料タンクから水を除去するように形成されている場合、水出口配管の入口は飛行機の飛行方向に対して水タンクの後方に向かってオフセットしている。その結果、飛行機が上向くと水は水出口配管の入口に向かって流れる。この場合、水出口配管の入口は、水タンクの最下点より上に配置されていることが好ましい。このことは、飛行機が水平な場合水が水出口配管に流入することを防止している。
【0016】
同様に、装置が飛行機の燃料タンクから水を除去するように形成されている場合、水抜き配管の出口が飛行機の飛行方向に対して水タンクの前方に向かってオフセットしている。その結果、飛行機が着陸する場合、燃料は水抜き配管に向かって流れ燃料タンクの中に流入するので、装置は自吸式となっている。
【0017】
好ましくは、水抜き配管の出口は、飛行機の飛行方向に対して水出口配管の入口の前方に向かって配置されており、前述の両者の利点を有している。
【0018】
好ましくは、水タンクの容量が一回の飛行当りに蓄積されると予想される水の最下体積の約2〜5倍の容量を有している。燃料体積に対する水体積の割合は40ppm(0.004%)であって、8000lの燃料タンクに対して一回の飛行当り蓄積される水は0.32lであり、水タンクは0.6〜1.5lの水を保持できるよう寸法決めされている。
【0019】
飛行機に装置を設置する場合、飛行機の有効ピッチの増加に応答して及び/又は飛行機の有効ピッチの減少に応答して水出口配管のバルブが開かれる。
【0020】
有効ピッチの増加に応答してバルブが開く場合、バルブはエンジンの速度測定装置の代わりとなる。というのは、離陸時に飛行機の有効ピッチに応答して自動的にバルブが開くからである。離陸時には、エンジン速度が比較的速いので、水はエンジンの運転性能に対して著しい影響を与えることなくエンジンに供給される。
【0021】
飛行機の燃料装置において特に困難なことは、飛行機が離陸してしまうと大気温度が−30〜−40℃に低下し、燃料中の水が約20分後に凍結することである。水が凍結してしまうと、着陸時にタンクが暖まるまで水はタンクに閉じ込められている。従って、水は、20分以内に除去されないと、数回を越える飛行にわたって徐々に蓄積され問題を発生するか、又は手動によりドレンされねばならない。従って、離陸時にエンジンに水を供給することのさらなる利点は、水が凍結する前に水を取り除くことができることである。
【0022】
有効ピッチの減少に応答してバルブが開く場合、飛行機の着陸時に水タンク(離陸時に水はエンジンに供給されてしまっているので、燃料だけが充填されている)を空にすることができ、次回の燃料補給操作の準備をすることができる。
【0023】
バルブが閉状態で水出口配管における水の流れを遮断し、そして正の開状態及び負の開状態でバルブには水が流れるようになっていて、バルブの有効角度の増加に応答してバルブは閉状態から正の開状態に変化し、バルブの有効角度の減少に応答してバルブは閉状態から負の開状態に変化する。代りに、サーモスタット制御バルブが水出口配管と並列に設置されていてもよくて、温度が所定の値より下がるとサーモスタット制御バルブが開となる。
【0024】
水タンクがその最上部に開口を有していて、その開口は使用時に燃料が水タンクに流入することを可能にしている。
【0025】
本発明の実施形態において、H/A1/2の値は2より大きくて、好ましくは4より大きい。これが水タンクにおける水頭を最大にし、静水圧が水を水タンクから流出させるのに利用されている。本発明の実施形態において、水タンクは飛行方向に長くて、H/A1/2の値は1より小さい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、飛行機を図示している。
【図2】図2は、水抜き装置と協働している燃料タンクの概略図である。
【図3】図3は、水抜き装置と協働している燃料タンクの概略図である。
【図4】図4は、水抜き装置と協働している燃料タンクの概略図である。
【図5】図5は、水抜き装置と協働している燃料タンクの概略図である。
【図6a】図6aは、振子を備えたバルブの詳細図である。
【図6b】図6bは、振子を備えたバルブの詳細図である。
【図6c】図6cは、振子を備えたバルブの詳細図である。
【図7a】図7aは、別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図7b】図7bは、別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図7c】図7cは、別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図8a】図8aは、さらに別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図8b】図8bは、さらに別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図8c】図8cは、さらに別の振子を備えたバルブの詳細図である。
【図9a】図9aは、本発明における別の実施形態による水抜き装置を図示している。
【図9b】図9bは、一対のスクリーンを備えた水抜き装置である。
【図10a】図10aは、飛行機の上昇飛行時における水抜き装置を図示している。
【図10b】図10bは、飛行機の水平飛行時における水抜き装置を図示している。
【図10c】図10cは、飛行機の下降飛行時における水抜き装置を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1において、飛行機100が一対の翼を担持している胴体102を備えていて、左翼は符号103で図示されている。翼各々がエンジンを支えていて、左側のエンジンは符号104で図示されている。各エンジン用の燃料は中央タンク及び一つ以上の翼タンクに貯蔵されている。
【0029】
翼タンク2の一方に取り付けられた水抜き装置1が図2に図示されている。水抜き装置は水タンク3と水抜き配管4とを有していて、水抜き配管4は水タンク3の底部における出口5と、燃料タンク2の底部にたまっている水7につかっている入口6とを有している。水タンク3は、一般に直径が60mmで長さが0.4mの垂直パイプであって、頂部は開口している。
【0030】
逆止め弁8が水タンクに取り付けられていて、ピボット9を有していて、図2において逆止め弁8は閉の状態を図示しており、水抜き配管4の出口5を閉じている。なお、他のタイプの逆止め弁を使うことができるので、図2−5は単に例示することを目的としたものである。例えば、逆止め弁は円錐状のシートに取り付けられたコンククロジュア部材(conc closure member)を備えていてもよくて、そのコンクが開、閉位置に移動する。
【0031】
図2−4はタンク2内の燃料30のレベルがそれぞれ低、中、高の場合を図示している。燃料タンクが充満されると、燃料は重力による静水圧を燃料タンクの底部にたまっている水7に作用する。この静水圧が重力にさからって水を水抜き装置ライン4及び逆止め弁8を介して、水タンク3の中へ押し上げ、水は図3に図示するように燃料タンクの底部からほぼ完全に排除される。燃料タンクが充填されつづけると、燃料の泡が水を通過し(泡は図3において符号31で図示されている)水タンク3の最上部における層32に集まる。
【0032】
燃料のレベルが水タンク3の最上部に達すると、燃料は水タンクの最上部の開口33を介して水タンクの中へ流入し、図4に図示するように水タンクに充填される。
【0033】
図2において、水出口配管10が水タンク3の底部から延伸している。水出口配管は水タンク3における入口11と、燃料取り出し管14及びポンプ入口配管13に接続された出口12とを有している。燃料取り出し管14が燃料タンクにおける入口15を有していて、入口15は水抜き配管の入口6より高い位置に配置されている。入口6,15は、それぞれフィルタ又はストレーナ16,17を有している。
【0034】
ポンプ入口配管13はポンプ21に接続されている。ポンプ出口配管22は、ポンプとエンジン104(図1参照)を接続していて循環配管23がポンプから燃料タンクにおけるバルブ24に接続されている。ポンプ21の吐出し量を減らす(de-rate)ために、バルブ24を開くことができ、ポンプ21のポンプ出口配管22をバイパスする際の運転が可能になる。
【0035】
水出口配管10におけるバルブ20が図3−5に図示されていて、詳細が図6a−cに図示されている。
【0036】
バルブ20が、軸41により支持体(図示せず)に対して回動する振り子(pendulum)40を有している。軸41はカム42を支持している。水出口配管10におけるチャンバ43が入口44及び出口45を有している。ゲート46がチャンバ43の中に取り付けられ、そして図6aに図示する閉位置と図6b及び6cに図示する開位置との間で移動する。閉位置において、ゲート46はチャンバ43の入口44及び出口45を遮断し、開位置において、ゲート46は、図6b及び6cに図示するようにバルブを介して流体が流れることを可能にしている。
【0037】
ゲート46が、圧縮コイルばね48によりカム42に対し付勢された従動子47を有している。
【0038】
飛行機が水平飛行している場合、バルブ20は図3,4及び6aに図示されるように閉となっている飛行機の“有効ピッチ(effective pitch)”が7°以上に増加する場合、バルブ20は、閉状態から図5及び6bに図示されるような正の開状態(positive open configuration)になる。“有効ピッチ(effective pitch)”は、物理的なピッチ(すなわち飛行機の物理的なピッチ角度(pitch angle))と前進加速度による加速度のベクトルとの組合せとして規定される。
【0039】
バルブ20が図5に図示するように開き、水は、水タンク内の重力ヘッド(gravity head)に基づく静水圧により水出口配管10に沿って駆動されポンプ21に供給される。水を水出口配管10に沿って駆動している重力ヘッドは、水の密度が燃料の密度より大きいので相対的に大きなものである。言いかえると、重力ヘッドは水タンク3が燃料で満たされている場合に比較して大きなものとなっている。従って、少なくとも水タンク内の水のレベルが水出口配管10の出口より高いかぎり、重力ヘッドは燃料を燃料取り出し管14から駆動するというより、水を燃料ポンプに向けて駆動する傾向がある。選択的に、水出口配管10の中へ突出している誘導配管(inductor pipe、図示せず)が備えられていてもよい。このことは水出口配管10においてわずかな抵抗となりそしてベンチュリ効果による流れを強化することになる。
【0040】
図2−5に示めす配置は概略的なものである。もし、所望するすべてのピッチ角度において、かつ水タンクにおけるすべての水のレベルにおいて十分な重力ヘッドを必要とするなら、水タンク3は水出口配管10の出口12の真上に配置されていてもよい。
【0041】
水タンク3は、重力ヘッドを最大にするように背が高くて細いものにして設計される。詳しくは、Hを水タンクの高さとし、Aを水タンクの平均断面積とした場合、H/A1/2の値を大きな値とすることである。例えば、直径が60mmで高さが0.4mの円筒状の水タンクの場合H/A1/2の値は約7.5となる。
【0042】
もし水タンク3が負の重力となった場合、水は水タンク3の最上部の開口33から燃料タンク2の中へ流出し水タンクは空になる。しかしながら、水タンク3は比較的小さいので(水タンク3の容量は1lのオーダーであり、燃料タンク2の容量は8,000lのオーダーである)、このことは性能に影響は与えない。このようにして流出した水は次回の燃料補給時に取り出される。
【0043】
水タンク3の容量は、離陸及び上昇時に2〜3分当り0.5lの流量が達成できるように決定されている。この段階で水分約2500ppmの燃料がエンジンに供給される。
【0044】
離陸及び上昇後は、ポンプ21の吐出し量を減らす(de-rate)ためにバルブ24が開かれ、中央タンクのポンプがとってかわる。同時に、飛行機のピッチ角度が7°以下になると、バルブ20が図6bに図示されるようにその閉位置に近づき、燃料が燃料取り出し管14だけを介してポンプに流入される。
【0045】
飛行機が機首を下げると、飛行機の有効ピッチが5°以下となり、バルブ20は図6cに図示するように閉位置から負の開位置(negative open configuration)へと変化する。この段階で、水タンク3は空、あるいはタンクの他の部分の燃料レベルを上廻る燃料ヘッドとなっている。水タンク3の中には水はないけれど(水の大部分は離陸時エンジンに供給されてしまっている)、水タンク3にはわずかな燃料が入っている。もし大量の水が水タンクの中にあると、水は凍結し、排水バルブ20がかじりついてしまう。もし水タンクに燃料が入っていると、下降時にこの燃料はエンジンに供給され、水タンクは空になり次回の燃料補給の準備ができる。
【0046】
振り子を備えた別のバルブ20a(バルブ20の代りに使用できる)が図7a−7cに図示されている。この場合、カム及びカム従動子を使用する代りに、バルブが副連続リンク(articulated link)52により、ゲート51に連結されている。振り子50は垂直アーム55及び水平アーム56を有していて、両アームはお互いに対して固定されていて、軸57により構造体(図示せず)に対して回動される。リンク52は、その一方の端部がピボット53によりゲート51に回転可能に連結され、その他方の端部がピボット54により振り子50の水平アーム56に連結されている。ゲート51は、水出口配管から上方と下方との両側に突出しているチャンバ57の中に滑動可能に取りつけられていて、そしてゲート51は図7a−7cに図示するように三つの作動位置の間をリンク52により駆動される。
【0047】
さらに別のバルブ20b(バルブ20又はバルブ20aの代わりに使用できる)が図8a−8cに図示されている。この場合、移動するゲートの代わりに、バルブ20bがその開位置と閉位置との間で回転する閉止部材を有している。
【0048】
バルブ20bが円筒状の閉止部材61に取り付けられた振り子60を備えていて、閉止部材61は水出口配管10における円筒状チャンバ62に収容されている。閉止部材61は一対のチャンネル63,64を備えていて、図8b及び8cに図示するように、水出口配管に対する振り子の角度が+7°又は−5°に達すると、一対のチャンネル63,64は、それぞれチャンバ62の入口、出口に整列する。説明を明確にするために、水出口配管10、チャンバ62及び閉止部材61は振り子60に対して垂直及び平行に図示されているけれど、実際には、振り子に対して水平及び直角な方向となっている。また、チャンネル63,64の角度のずれは、図8a−8cに誇張して図示されている。実際には、チャンネルは所定の作動をするために狭角度で延在している(チャンバ62と閉止部材61とは水出口配管10に対してより大きい)。
【0049】
図6a−6cに図示するバルブ20の利点を図7a−7c及び図8a−8cに図示するバルブと比較すると以下のとうりである。
1.バルブの開閉特性は、カム42の形状及び/又は寸法及び/又は位置を調節することにより容易に調節することができる。
2.ゲート46が二つの作動位置しか有していないので、チャンネル43を比較的コンパクトなものにすることができる。
3.振り子は、メンテナンスのためにバルブから容易に分離することができる。
4.もし、飛行機のピッチがオーバーシュートした場合(すなわち、ピッチが+7°より大きくなるか、又は−5°より小さくなる場合、又は急加速あるいは急減速があった場合)でも、バルブの作動に影響はない。
【0050】
別の実施形態において(図示せず)、数個の水タンクすべてが、一つの共有の振り子を備えたバルブ20を介してエンジンと平行に連結されていてもよくて、水タンク各々はそれぞれの水抜き配管及び水出口配管を有している。
【0051】
さらに別の実施形態において(図示せず)、サーモスタット制御のドレンバルブが振り子を備えたバルブ20,20a又は20bと共に配管に設けられていてもよい。サーモスタット制御バルブは、飛行機の巡行高度で生じる温度が2℃以下になると開らくようになっている。このバルブが、すべての水を水タンクから排除することを保証している。選択的に、サーモスタット制御のバルブは振り子を備えたバルブ20,20a,20bの下降時の作動に置きかえてもよい。すなわち、振り子を備えたバルブ20,20a,20bは正の開位置とだけになる同様の振り子を備えたバルブと置きかえてもよい。サーモスタット制御のバルブは、例えば車のエンジンのバルブを開くサーモスタット又はバイメタルに使用されているワックスタイプバルブ(wax-type valve)である。
【0052】
図9aは、本発明のさらなる実施形態である水抜き装置70を図示している。水抜き装置は水タンク71と、水タンクの底壁面73を貫通する水抜き配管72とを有している。燃料タンクが充満されると、燃料は重力による静水圧を燃料タンクの底部にたまった水に作用する(図示せず)。この静水圧が重力に打ち勝って水を水抜き配管72の及び水タンク71の中に押し上げる。
【0053】
図2に図示する実施形態と比較して、水抜き配管72の出口74は逆止め弁を有していない。代りに、出口74を底壁面73の上方にかつ水タンクの最下点より高く位置決めすることにより、水が水抜き配管に逆流することを防止している。出口74は十分に高い位置に位置決めされていて、燃料タンクからの水すべてが水タンクの中へ流入されても、水のレベルが出口74の下になるようになっている。出口74は十分に下方に位置決めされているので、燃料のヘッドによる静水圧は水を水タンクの中へ流入させるのに十分なものとなっている。
【0054】
水抜き配管に逆止め弁がないので、図2の実施形態と比較して単純で、信頼性の高いものとなっている。
【0055】
水抜き配管における湾曲した案内壁面76は水タンクの底部の方向に向けて配向されている。このことにより、水が水タンクの最上部からあふれ出すのを防止し、そして水を水タンクの底部73に向けて案内するようになっていて、底部73は、燃料タンクの最下点及び水出口配管75の入口76に向かって傾斜している。水出口配管75は、図2における水出口配管10と同様にピッチ調節バルブ(図示せず)を介してポンプ入口配管(図示せず)に接続されている。
【0056】
図9bは図9aの実施形態の修正であって、燃料から水滴を分離する穴あけスクリーン77を設けたものである。間隙78は空気だまりを防止するためにスクリーンの最上部に設けたもので、間隙79は水を水出口配管に導びくためにスクリーンの底部に設けたものである。
【0057】
図10a−10cは本発明における水抜き装置80のさらなる実施形態を図示している。水抜き装置は水タンク81と水抜き配管82とを備えていて、水抜き配管82は図9aに図示する水抜き配管72と同様に水タンクの底壁面83を貫通して延伸している。
【0058】
水出口配管84はポンプ入口(図示せず)に接続している。しかしながら、図2における実施形態と比較して、水出口配管にはピッチ調節バルブは必要としない。
【0059】
水出口配管84の入口は水タンクの後方に向かってオフセットしていて、そして水タンクの最下点より高い位置に配置されており、スタブ又はダム87が入口と水タンクの壁面83の底壁面との間に備えられている。その結果、図10aに図示するように飛行機が着陸時及び上昇時に機首を上げると、水のレベルがスタブ87の最上部を越えて、水出口配管84の中へ上昇する。
【0060】
同様に、水抜き配管82の出口は水タンクの前方に向かってオフセットしていて、水タンクの最下点より高い位置に配置されており、入口と水タンクの壁面83との間にスタブ又はダム88を備えている。その結果、飛行機のピッチが、図10cに図示するように下向きになると、燃料のレベルがスタブ88の最上部を越えて水抜き配管82及び燃料タンク89の中へ上昇する。
【0061】
従って、図10a−10cの装置はピッチの調節バルブなしに作動することができる。この装置のさらなる利点は、着陸時に図10a−10cに図示するようにタンクのほとんどの燃料が空になるように自吸式となっている。水タンクを上から見ると広い面積であって、着陸時又は離陸時のピッチ角度の効果を最大にするために、飛行方向に長くなっている。水タンクは長くて平たんなので、水頭は前の実施形態よりも小さく、そしてこのためにポンプ入口でのさらなる吸引力を発生させるために吸引チューブが必要とされる。燃料補給時に静水圧が水抜き配管82及び水出口配管84から水タンク81の中へ流れをもたらすように、水出口配管における逆止め弁85は必要である。逆止め弁85がないと、燃料が水出口配管84を逆流し(燃料が軽いので)そして水が燃料タンクにたまる。
【0062】
一つ以上の好適な実施形態を参照して本発明を説明したけれども、特許請求の範囲に規定されている本発明の範囲を逸脱することなく、多くの変更又は修正が、行なわれてもよいことが理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水抜き配管を用いて燃料タンクから水を除去する方法であって、前記水抜き配管が前記水の中につかっている入口と水タンクに接続された出口とを有している方法において、
前記方法が前記燃料タンクを燃料で満たす段階を含んでおり、前記燃料が前記水に静水圧を作用し、前記静水圧が前記水を重力に打ち勝って前記水抜き配管を介して前記水タンクの中へ押し上げる、
方法。
【請求項2】
さらに、前記水を前記水タンクからエンジンの燃料配管へ送り込むために、前記静水圧を利用する段階を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記燃料タンクが飛行機の燃料タンクである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
さらに、水を前記水タンクから水出口配管を介してエンジンに送り込む段階を含んでいる、請求項1−3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
さらに、前記飛行機の有効ピッチの増加に応答して、前記水出口配管におけるバルブを開く段階を含んでいる、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、前記飛行機の有効ピッチの減少に応答して、前記水出口配管における前記バルブを開く段階を含んでいる、請求項3−5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水抜き配管を用いて燃料タンクから水を除去するための水抜き装置であって、
水タンクと、前記水タンクに接続された出口を有している水抜き配管とを備えている水抜き装置において、
前記水抜き配管が入口を有していて、前記入口は使用する場合、前記水抜き配管の前記出口の下方の前記燃料タンクの底部における水の中につかっていて、静水圧が前記水を重力に打ち勝って前記水抜き配管を介して前記水タンクの中へ押し上げる、
水抜き装置。
【請求項8】
さらに、前記水抜き配管における逆止め弁を備えている、請求項7に記載の水抜き装置。
【請求項9】
前記水抜き配管の前記出口が、前記水タンクの最下点より上に配置されている、請求項7に記載の水抜き装置。
【請求項10】
前記水抜き配管は前記水タンクの壁面を貫通している、請求項9に記載の水抜き装置。
【請求項11】
前記水抜き配管の前記出口が、前記水タンクの底部に向けて配向されているガイドを備えている、請求項9又は10に記載の水抜き装置。
【請求項12】
さらに水出口配管を備えていて、前記水出口配管は前記水タンクに接続された入口と、使用時にエンジンの燃料配管に接続される出口とを有している、請求項7−11のいずれか一項に記載の水抜き装置。
【請求項13】
さらに、前記水出口配管におけるバルブを備えている、請求項12に記載の水抜き装置。
【請求項14】
前記水出口配管における前記バルブが、前記バルブの有効角度の変化に応じて開閉するようになっている、請求項13に記載の水抜き装置。
【請求項15】
前記バルブは前記水出口配管における水の流れを遮断する閉状態と、前記バルブを水が流れることを可能にする正の開状態及び負の開状態とを有しており、
前記バルブは、前記バルブの有効角度の増加に応答して、閉状態から正の開状態へ変化するようになっており、そして前記バルブは、前記バルブの有効角度の減少に応答して閉状態から負の開状態へ変化するようになっている、請求項14に記載の水抜き装置。
【請求項16】
飛行機の燃料タンクから水を除去するべく形成されていて、前記水出口配管の前記入口が、飛行機の飛行方向に対して前記水タンクの後方に向かってオフセットしている、請求項7に記載の水抜き装置。
【請求項17】
前記水出口配管の前記入口が、前記水タンクの最下点よりも上に配置されている、請求項16に記載の水抜き装置。
【請求項18】
さらに、前記水出口配管における逆止め弁を備えている、請求項16又は17に記載の水抜き装置。
【請求項19】
飛行機の燃料タンクから水を除去するべく形成されていて、前記水抜き配管の前記出口が、前記飛行機の飛行方向に対して前記水タンクの前方に向かってオフセットしている請求項7,16−18のいずれか一項に記載の水抜き装置。
【請求項20】
飛行機の燃料タンクから水を除去するべく形成されていて、前記水抜き配管の出口が、飛行機の飛行方向に対して前記水出口配管の前記入口の前方に配置されている請求項7,16−19のいずれか一項に記載の水抜き装置。
【請求項21】
前記水タンクがその最上部に開口部を有していて、前記開口部は使用時に燃料が前記水タンクの中へ流入することを可能にしている、請求項7−20のいずれか一項に記載の水抜き装置。
【請求項22】
Hを前記水タンクの高さとし、Aを前記水タンクの平均断面積とした場合、H/A1/2の値が2より大きい、請求項7−21のいずれか一項に記載の水抜き装置。
【請求項23】
前記H/A1/2の値が4より大きい請求項22に記載の水抜き装置。
【請求項24】
燃料タンクと、請求項7−23のいずれか一項に記載の水抜き装置とを備えている燃料タンク装置であって、
前記水抜き装置は前記燃料タンクの底部において水の中につかっている前記水抜き配管の入口と、前記入口の上方で前記水タンクに接続されている前記水抜き配管の出口とを有しており、静水圧が前記水を重力に打ち勝って前記水抜き配管を介して前記水タンクの中へ押し上げている、
燃料タンク装置。
【請求項25】
さらに、前記水タンク及び前記燃料タンクとに接続されたエンジンの燃料配管を備えている請求項24に記載の燃料タンク装置。
【請求項26】
さらに、前記水タンク及び前記燃料タンクとに接続されたポンプを備えている請求項24又は25に記載の燃料タンク装置。
【請求項27】
燃料タンクが飛行機の燃料タンクである請求項24−26のいずれか一項に記載の燃料タンク装置。
【請求項28】
前記水タンクの容量が前記燃料タンクの容量の1%未満である、請求項24−27のいずれか一項に記載の燃料タンク装置。
【請求項29】
前記水タンクの容量が前記燃料タンクの容量の0.1%未満である、請求項28に記載の燃料タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図8a−8b】
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【図8c】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【公表番号】特表2010−521356(P2010−521356A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553219(P2009−553219)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/GB2008/050156
【国際公開番号】WO2008/110838
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(508305926)エアバス ユーケー リミティド (38)