説明

水槽内の水質改良方法とそのための水質改良器

【課題】本発明は、ビル、マンション、ホテル、集合住宅等に設けられている受水槽や給水槽や高架水槽など水槽内の水の水質改良方法とそのための水質改良器に関する。特に、本発明は、水を活性化するトルマリンや紫外線が当ると有機物を分解除去して浄化する酸化チタン系光触媒を利用して水槽内に貯留している水質改良をせんとするものである。
【解決手段】
トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水質改良材を水中に浮遊させることができる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器を、水槽内に収納されている水中に浮遊させ、水の対流と水質改良器の回遊により水質改良材と水との接触が良好になるようにしたことを特徴とする水質改良方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、マンション、ホテル、集合住宅等に設けられている受水槽や給水槽や高架水槽など水槽内の水の水質改良方法とそのための水質改良器に関する。特に、本発明は、水を活性化するトルマリンや紫外線が当ると有機物を分解除去して浄化する酸化チタン系光触媒を利用して水槽内に貯留している水質改良をせんとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トルマリンや酸化チタン系光触媒には、水を浄化したり水質改良したりする機能を有することは知られている。すなわち、トルマリンは、一般に電気石と称されているように永久電極を有し、0.06ミリアンペアの微弱電流を発生し続けている。この特性により水を電気分解したり、水のクラスターを分解して水を活性化したり、吸着、反発作用により脱臭効果や抗菌効果を発揮したりする。またトルマリン鉱石の界面活性効果により水分中の汚れを分離したり、弱アルカリ化によって水質調整したり、トルマリン鉱石からのミネラルの溶質作用により水をミネラル化したりするなどの水質改良をすることが知られている。
【0003】
また、酸化チタン系光触媒は、光(紫外線)が当るとその表面から電子が飛び出し、このとき電子が抜けた穴(正孔)は、プラスの電荷を帯びており、強力な酸化力をもち、水中にある水酸化イオンなどから電子を奪い、非常に不安定な状態のOH
ラジカルになる。当該OHラジカルは強力な酸化力を持つため、近くの有機物から電子を奪い自分自身が安定になろうとする。電子を奪われた有機物は結合を分断され、分解して二酸化炭素や水となって大気中に発散していく。このようにして酸化チタン系光触媒は、その強力な酸化力により、水中に融解している有機物を分解、除去して浄水する効果が生ずるのである。
【0004】
このようなトルマリンや酸化チタン系光触媒の機能を利用して、水を活性化したり、浄化したり、水質改良する装置は、従来から種々開発されている。例えば、
【0005】
(イ)トルマリンを利用したものとしては、特許第3283231号「洗車機用水質改良装置」、特開2000−202463号「水又は温水の対流浄化・活性化装置」、(ロ)光触媒を利用したものとしては、特開2005−254100号「水質の浄化に用いる光触媒」、特開2000−244694号「酸化チタン光触媒コーティングを備える回転部材を用いる水質汚染浄化装置」、(ハ)トルマリンと酸化チタン系光触媒とからなる水質改良材を利用したものとして特開2005−13974号「水質改良器」、
特開2004−243294号「水質改良装置」などがそれである。
【0006】
【特許文献1】特許第3283231号
【特許文献2】特開2000−202463号
【特許文献3】特開2005−254100号
【特許文献4】特開2000−244694号
【特許文献5】特開2005−13974号
【特許文献6】特開2004−243294号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水槽内に収納されている水の水質をトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材を用いて改良せんとするものである。当該水質改良材のトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒は、前述したようにその物性そのもので自然に水質改良をするものである。このようにトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒は、人工的にエネルギーを供給しなくても良いので、経済的であるという長所があるが、その効果がまろやかで弱く貯溜している水全体の水質改良をするには、時間がかかる欠点がある。そのため、従来例においても水を効率よく品質改良するための工夫がなされている。
【0008】
例えば前記特許文献1、特許文献2の場合は、トルマリンを収納した容器を流水通路に設けてトルマリンと流水とを積極的に接触させようとしており、特許文献3は、水に対流と攪拌を意識的に起こすように構成することにより水圧と接触効率の良さにより水質改良効果を高めるようにしている。また、特許文献4,5の場合は、水槽内の水を浄化するためトルマリンと酸化チタン系光触媒を組み合わせることによる相乗作用により、少しでも水質改良効果をあげようとしている。しかし、流水通路での水質改良材との接触は、瞬間的な接触にすぎず水質改良を確実におこなうには充分ではない。意識的に水に対流と攪拌を起こして接触効率を高めようとすれば、そのためのエネルギー供給が必要となり経済的負担が高くなる。また、特許文献5,6の場合のようにトルマリンと酸化チタン系光触媒を単に組み合わせただけでは水質改良の効率がそれほど良くなるわけではなく満足できるものではない。
【0009】
本発明は、水槽内で貯留状態となっている水の水質改良を効率的におこなうための技術である。水が水槽内に貯留しているときは、ほとんど動くことがなく水が流入する時と流出してくる時に多少対流が起るだけである。このような滞留状態で動かない水全体の水質を効率よく改良するのは難しい。なぜなら水質改良材であるトルマリンも酸化チタン系光触媒も水と接触する表面か接触しそうな表面近傍だけで水質改良作用を起すものであり、離れたところにある水の水質改良作用は起らないからである。また、トルマリンも酸化チタン系光触媒も水質改良作用はまろやかで強くはないので、水槽内に水質改良材を入れただけでは滞留している水全体を効率良く水質改良するのには時間がかかる難点がある。
【0010】
本発明は、このような技術的課題を解消するために、水質改良材を水中に浮遊させ、当該水質改良材が自動的に動き回るように構成することにより、水と水質改良材とが効率的に接触するようにし、これによって水槽内の水質改良効果を高めるようにしたものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
【0012】
特許を受けようとする第1発明は、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水質改良材を水中浮遊させることのできる浮力を有する浮力体を備えた水質改良器を、水槽内に収納されている水中に浮遊させ、水の対流と水質改良器の回遊により水質改良材と水との接触が良好になるようにしたことを特徴とする水質改良方法である。
【0013】
当該第1発明は、水槽内に収納されている水の水質改良方法である。本発明の第1の特徴は、水質改良器に浮力体を備えたことであり、第2に、水質改良材としてトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体としたものを用いた点にある。水質改良器に浮力体を備えたことにより水質改良材を水槽内に収納されている水中に浮遊させ、水の対流と水質改良器の回遊により水質改良材と水とが接触する機会が多くなるようにして、滞留中の水全体を効率的に水質改良するようにした水質改良方法である。

【0014】
特許を受けようとする第2発明は、一部に窓部を設け、その窓部に可視光線を遮断し紫外線だけを透過させる紫外線透過フィルターを取付けてなる水槽と、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水質改良材を水中浮遊させることのできる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器とを用意し、当該水槽内に収納されている水中に水質改良器を浮遊させ、
水の対流と水質改良器の回遊により水と水質改良材との接触を良好にするとともに、水槽内に透過した紫外線により水質改良器の酸化チタン系光触媒を活性化するようにしたことを特徴とする水質改良方法である。

【0015】
当該第2発明は、第1発明の水質改良法を強化した水質改良方法である。本発明の場合、水質改良材の一種である酸化チタン系光触媒の有機物を分解、除去して浄水する効果を高めるためには、光(紫外線)が必要である。しかし、ビル、マンション、ホテル、集合住宅等に設けられている受水槽や給水槽や高架水槽など清涼な水の場合には、水槽内に光が入り込まないように暗室にすることが要請されている。なぜなら水に光が照射されると光合成作用が起るなど水質が劣化しやすくなるからである。ところが、水質改良材である酸化チタン系光触媒は、光がないと光触媒作用がおきないものである。そのため水質改良材として酸化チタン系光触媒を使用する場合、水槽内を暗室にしていては、その浄化作用を十分に発揮させることができない。そこで、水槽の一部に窓部を設け、その窓部に可視光線を遮断し紫外線だけを透過させる紫外線透過フィルターを取付けて、水中での光合成作用を防止しながら酸化チタン系光触媒の光触媒作用を活性化させ、水の浄化を促進しようとするものである。
【0016】
特許を受けようとする第3発明は、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水中を浮遊することのできる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器である。
【0017】
当該第3発明は、第1発明又は第2発明に係る水質改良方法を実現するのに用いる水質改良器の基本発明である。水質改良材については第6発明の項で詳細に説明するので、ここでの説明は省略する。浮力体は、(a)空洞体の中に空気など水より軽い気体を封入してある場合)(b)発砲スチロールを使用する場合、(c)発砲スチロールと気体を用いて、浮力を発生させてる浮力体であれば、いずれでも良い。
【0018】
特許を受けようとする第4発明は、水中を浮遊することのできる浮力を有する球形の浮力体の外周に、網状体又は多数の透水孔を有する透水材にて、より径が大きい球形状の透水性外周壁を形成して、前記浮力体の外周と透水性外周壁との間に水質改良材収納空間を形成し、当該水質改良材収納空間を区分して複数の水質改良材収納室を区画形成するようにし、当該区画された複数の水質改良材収納室内に、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする球形の水質改良材を適度の余裕空間が生ずる量を収納し、姿勢が変化すると重力によって水質改良材が水質改良材収納室内を遊動自在なるようになし、前記透水性外周壁の適所には突起部を形成し、水流や水圧の変化によっても姿勢を変化させることができるようにしたことを特徴とする水質改良器である。
【0019】
当該第4発明は、水質改良器の具体的実施態様例である。全体形状が球形で、その中心部に浮力体が設けられており、その外周に球形の透水性外周壁により水質改良材収納空間を形成し、当該水質改良材収納空間を区分して複数の水質改良材収納室を区画形成している。当該水質改良材収納室内には、球形の水質改良材を適度の余裕空間が生ずる量が収納してあり、姿勢が変化すると重力によって収納された水質改良材が水質改良材収納室内を遊動自在なるように構成されている。しかも前記透水性外周壁の適所には突起部を形成し、水流や水圧の変化によっても球形の水質改良器が回転して姿勢を変化させることができるようにした水質改良器である。このように本発明に係る水質改良器は、わずかな水流や水圧の変化によって水中を常に回転移動するので、水と水質改良材との接触範囲が広く良好となり、水槽内に滞留中の水であっても水質改良効果を高めることができるものである。
【0020】
特許を受けようとする第5発明は、水中を浮遊することのできる浮力を有する浮力体から又は浮力体に装着した取付け枠から複数本の索条を垂下させ、当該索条のそれぞれにトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材の塊体または球形体を複数個取付けたことを特徴とする水質改良器である。
【0021】
当該第5発明は、水質改良器の第二実施態様例である。当該水質改良器は、上部に浮力を有する浮力体を設け、その浮力体から直接または浮力体に装着した取り付け枠から複数本の索条を垂下させる。その索条のそれぞれに水質改良材の塊体又は球形体を複数個取り付けてなるものである。この発明にかかる水質改良器は、水中の広い範囲で水と水質改良材との接触が実現し、効率よく水槽内の水を水質改良させることができる。
【0022】
特許を受けようとする第6発明は、水質改良材が、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とするセラミックの塊体または球形体であることを特徴とする水質改良器である。
【0023】
第6発明は、本発明に係る水質改良材の種類を特定したものである。それは、(a)トルマリンの原石をそのまま球形や粒状に整形加工して使用する場合、(b)当該トルマリンを粉末化したものを主体として、これに連結材を混合し整形したうえ、焼成してトルマリンセラミックにしたものを使用する場合、(c)酸化チタン系光触媒を整形補助材と混合したものを成形し、焼成してセラミック状の塊体や球形状にしたものを使用する場合、(d)粉末状のトルマリンと酸化チタン系光触媒と連結材を混合し成形したうえ、焼成してセラミック化したものを使用する場合、(e)トルマリンと酸化チタン系光触媒を主体とし、これに麦飯石、その他の水質改良効果のある材料を混合したものを原料として水質改良材を成形したものの全てを含むものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、エネルギーを供給しなくてもトルマリンと酸化チタン系光触媒が有する水質浄化作用に着目して、これを水質改良材として採用し、この浄化作用を効率よく発揮させるために、水と水質改良材との接触を常に良好にするように工夫した水質改良方法である。本発明の場合水槽の中に貯溜されている水中に水質改良器を浮遊させておくだけで水質改良がおこなわれるので、便利である。

【0025】
特にトルマリンを用いて水質改良した場合には水槽から水を配水する管の赤錆を除去し配管を清掃する効果も生じる。

【0026】
第2発明は、更に酸化チタン系光触媒をより活性化するため水槽の一部に窓を設けて、紫外線だけを通過させる紫外線フィルターを設けた点が大きな特徴である。

【0027】
第3発明〜第6発明の水質改良器の特徴は、第1に浮力体を設けて、水質改良材を浮遊させるようにすることであり、第2に水質改良材と水を少しでも広く且つ効率的に良くなるように工夫した点にある。第3発明の場合は、球形にしてさらにそれが回転し易い構造にすることにより水との新しい接触が起こりやすくして、効率的な水質改良をするようにしたものである。また、第4発明は、垂下索条に水質改良材を水中に広く展開するように配設し、それが揺動することにより広く効率的に水と接触し、効率よく水質改良する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
一部に窓部を設け、その窓部に可視光線を遮断し紫外線だけを透過させる紫外線透過フィルターを取付けてなる水槽と、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水中を浮遊することのできる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器を用意し、その水質改良器を、水槽内に収納されている水中に浮遊させ、水の対流と水質改良器の回遊により水と水質改良材との接触を良好にするとともに、水槽内に透過した紫外線により水質改良器の酸化チタン系光触媒を活性化して効率よく水質改良をするようにしたことを特徴とする水質改良方法である。
【0029】
以下、本発明にかかる水質改良方法と水質改良器を図示実施例に基づいて説明する。図1は、第1発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図であり、図2は、第2発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図である。図3は、水質改良器の一実施例を示す斜視図であり、図4は、図3に示す水質改良器の透水性外周壁をはずした状態でその区分された水質改良材収納室に水質改良材が収納されている状態を示す斜視図である。図5は、図3に示す水質改良器の構造を示す縦断説明図である。図6は、図3に示す水質改良器の区分された水質改良材収納室を示す一部切欠した説明図である。図7は、水質改良器の他実施例を示す斜視図である。図8は、実施例1の水質改良器を水中に沈めた場合に当該水質改良器に働く力について示す説明図であり、図9は、実施例1に係る球形の水質改良器の外部に設置された突起部により右方向に回転した場合の水質改良器周りの流線である。
【実施例1】
【0030】
図1は、第1発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図である。図中1は水槽であり、2はその水槽1内に貯溜されている水であり、3は水槽1への水の供給口で4は水槽1から水を配水する配水口である。水中に浮遊する球形体は、第4発明に係る水質改良器5aである。当該球形の水質改良器5aは、常時浮遊しながら不規則に回転し姿勢が変化するようになっている。

【0031】
図2は、第2発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図である。図中1は水槽であり2は、その水槽内に貯蔵されている水であり、3は水槽への水の供給口で、4は水槽から水を配水する配水口である。図1との相違点は、水槽1の天井面に装着されている入り口のキャップ6に、窓7が形成されており、その窓には、紫外線だけを通過させることのできる紫外線フィルター8が取り付けられている。尚、図中13は水槽1の外部に設けた室内照明用のランプである。水槽1内の貯溜水に浮かんでいるのは、第5発明に係る水質改良器5bである。当該水質改良器5bは、水中を浮遊することのできる球形の浮力体9の周囲に装着した取付け枠10から複数本の索条11,11、…を垂下させ、当該索条11,11、…のそれぞれにトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材12,12,12、…の塊体または球形体を各複数個づつ取付けてなるものである。この水質改良器5bの場合には、水質改良材12,12,12、…が水深の浅いところから深いところまで広く分散して広い範囲で水とよく接触するので、水質改良効果が効率的であり、貯溜水全体を品質改良するのに適している。しかも対流が起これば水質改良器5b自体が移動するし、垂下した策条11,11,11、…尚、が揺動するので、水質改良効果がより良好となる。

【0032】
図3〜図6は、水質改良器5aの構造を詳細に示す図面である。図示実施例は、図3に示すようにその外周壁が透水材14として金網でできており、その表面に野球のボールの縫い目のような突起部15が形成されている。その内部構造は、図5に示したように、球形の外周壁16を有しその中央部に空気17が封入されてなる浮力体9が形成されており、その浮力体9の外周に、網状体又は多数の透水孔を有する透水材14にて、より径が大きい球形状の透水性外周壁18を形成してあり、前記浮力体9の外周壁16と透水性外周壁18との間に水質改良材収納空間19を形成する。当該水質改良材収納空間19は、図6に示すようにほぼ均一な形状と面積に区分されていて複数の水質改良材収納室20,20,20、…が区画形成されている。図6はその複数に区画された水質改良材収納室20,20,20、…の様子を示した要部切欠の斜視図である。当該区画された複数の水質改良材収納室内20,20,20、…には、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする球形の水質改良材12,12,12、…を適度の余裕空間が生ずる量づつ収納してある(図5、図4)。

【0033】
図示実施例1に係る水質改良器5aを具体的に試作し、それが水面又は水中を遊動自在隣、水質改良材12と水との接触を良好にする機能を有することを確認し、その理由について説明する。

【0034】
試作品として製造した水質改良品5aは、図5に示すように、合成樹脂製など非通気性材料により製造された、直径が20cmの球形体の中に空気などの気体を封入することにより構成された浮力体9を形成している。その浮力体9の外周に直径が24.6cmの球形状の透水性外周壁18が形成してある。当該実施例では透水性外周壁18は、金網製とした。従って当該浮力体9の外周と透水性外周壁18との間には、2.3cmの間隔をもった水質改良材収納空間19が形成されている。当該水質改良材収納空間19は、図6に示すように8つの区分された水質改良材収納室20,20,20、…が区画形成されており、当該水質改良材収納室20,20,20、…内には、図4に示すように直径が2cmの球形状のセラミックに加工した水質改良材12,12,12、…が収納されている。

【0035】
当該試作品の水質改良品5aが浮遊する浮力は、浮力体9によって得られ、これを沈めようとする重力は、収納される水質改良材12,12,12、…の総重量と透水性外周壁18の総重量との総和により得られる。また、水質改良材12,12,12、…を水中に沈めた場合、この水質改良材12,12,12、…が押しのける体積によっても浮力が生ずる。こんように実施例1の水質改良器5aを水中に沈めた場合に当該水質改良器5aに働く力については、図8に示す通りとなる。

【0036】
図8に示すように、球形体による浮力をFとし、これを沈めようとする水質改良材12,12,12、…の総重量をFとなし、この水質改良材,12,12、…により生じる総浮力をFとする。但し、解析を簡素化するため、近似的に透水性外周壁の総重量は、F,F,Fと比較して、無視すべきものとする。
球形体9による浮力Fは、数式(1)で求められる。
【0037】
【数1】

次に、半径r1の球形浮力体に直径dの小球形水質改良材12をn個収集することが出来るとすると、この数個nは数式(2)により求まる。

【0038】
【数2】

個数n個の直径dの小球形水質改良材12に働く総重量Fは、数式(3)で求められる。

【0039】
【数3】

個数n個の直径dの小球形水質改良材12に働く総浮力Fは、数式(4)で求められる。
【0040】
【数4】

従って、最終的に、水質改良器5aに働く浮力Fは、数式(5)で求められる。
【0041】
【数5】

【0042】
実施例1で記載されている試作品の水質改良器5aについて、上記の数式(1)〜(5)に基づいてその浮力について、検証する。
直径が20cmの合成樹脂製の球体として浮力体9を形成し、中に空気を封入すると、約6kg強の浮力が得られる。この場合r1=10cmである。また、水質改良材12の直径は、2cmとすると、d=2cmとなる。この数値を数式(1)
に代入すると、次の結果が得られる。
=4188.79g
このときの水質改良材収納空間19に充填される水質改良材12の個数を求めてみると、数式(2)より、次のようになる。
n=484個
従って、この数値を使うと、数式(3)〜(5)より、次の値が求となる。
=4054.75g
=2027.35g
F=2161.42g
従って、この場合得られる浮力は、F+F=6216.42gとなる。
【0043】
つまり、実施例1の浮力は6Kg強であり、充填される水質改良材12,12,12、…の個数は、484個である。この状態で、F=2162.42gであることから、理論的には、水質改良器5aは、その一部を水面上に表して浮遊することになるが、本解析では、透水性外周壁18の総重量を無視している。従って、この重量を考慮すれば、水質改良器5bが、図1の状態で、水面若しくは水中で浮遊させることができるのは明らかである。
【0044】
更に図示実施例1の場合、当該水質改良材収納空間19は、図6に示すように8つの区分された水質改良材収納室20,20,20、…が区画形成されている。当該水質改良材収納室20,20,20、…内には、直径が2cmの球形状のセラミックに加工した水質改良材12,12,12、…を全容積の70〜80%が埋まる程度(適度の余裕空間が生ずる量づつ)収納してある。従って、収納されている水質改良材12,12,12、…は、姿勢が変化すると重力によって水質改良材12,12,12、…の一部が移動して、重心を変化させるので、回転してその姿勢を変える。このように8つの水質改良材収納室20,20,20、…内で遊動自在なるように構成されているので、安定した姿勢を保ちにくく、ちょっとした刺激によってつねに姿勢を変えようとする。更に、当該透水性外周壁18の外周壁の適所には突起部15を形成し、水流や水圧の変化によっても姿勢を変化させることができるように形成したので、一定の姿勢を保持することが難しく常に水中を移動したり回転したりするので、その分だけ水質改良材12,12,12、…が水と接触する効率が良好となる(図1)。
【0045】
水質改良材12,12,12、…であるトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒は、有機質を分解したり、界面活性効果を発揮させたり、水の電気分解をしたり遠赤外線を放射したり、様々な作用を有していて、水を浄化したり、活性化したりすることが知られているが、そのような作用効果はトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒に接触した水か、その近傍でしか起こりにくい。水が静止していて動かない場合には、より離れた場所にある水の水質改良は難しく、時間がかかる。本発明のように水槽1に水を貯溜しておき、必要に応じて配水する場合に、貯溜水を効率的に水質改良する要請に応えるには、水2と水質改良材12,12,12、…との接触効率を高めることによって、実用性を確保できるようにしたものである。

【0046】
更に、実施例1に示す水質改良器5aは、透水性外周壁18の適所に突起部15を形成し、水流や水圧の変化によっても姿勢を変化させることができるように構成してある。具体的には図3に示すように、野球のボールの縫い目上に突起部15を突設形成している。この突起部15が自由浮揚を促進することを、以下解析する。

【0047】
図9は、球形の水質改良器5aの外部に設置された突起部15により右方向に回転した場合の水質改良器5a周りの流線である。このように球体が回転すると、流速が流れの一方の側で速く、反対側で遅くて物体を回る閉曲線に沿って流速を積分した値が0でない場合には、早いほうに揚力が作用する。この傾向は、速い側では流感が補足なり、圧力が小さくなるのに反して、遅い側では流管が太くなり、圧力が大きくなることによる。これは、マグナス(Magnus)効果と呼ばれ、流れの中で球などを回転させると、表面が流れの方向に回っている側に地からが作用し、その方向に球体が運動する現象となる。本発明に係る水質改良器5aは、前記のように野球ボール状突起を有している。この突起が非軸対象形となっていないため、流速のある流体中では、流線の様々な粗密により、種々な回転をなし、この回転により得られた力により様々な方向に浮遊することを可能とする。故に、本発明による水質改良器5aは、遊動自在となり、水質改良材と水との接触を良好ならしめることができるのである。
【実施例2】
【0048】
実施例2は、図7に示したような垂下数式の水質改良器5bの実施例図7に示したとおり上部に水中を浮遊することのできる浮力を有する球形の浮力体9を設けておき、この周辺に取付け枠10を装着しておき、この取り付け枠10から複数本の索条11,11,11、…を垂下させ、当該索条11,11,11、…のそれぞれにトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材12,12,12、…の塊体または球形体を複数個取付けてなる水質改良器5bである。この水質改良器5bは、水槽の浅いところから深いところまで、水質改良材12,12,12、…を拡散して配設することにより、水との接触効率を高めるようにしたことが特徴である。しかも本発明に係る水質改良器5bは、構造が簡単で製造し易く、しかも浮力体により水槽内を回遊自在にできるので、水槽全体の水質改良効率が相当に高く実用性がある。
【0049】
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】第1発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図である。
【図2】第2発明に係る水質改良方法を示す縦断説明図である。
【図3】水質改良器の1実施例を示す斜視図である。
【図4】図3に示す水質改良器の透水性外周壁をはずした状態でその区分された水質改良材収納室に水質改良材が収納されている状態を示す斜視図である。
【図5】、図3に示す水質改良器の構造を示す縦断説明図である。
【図6】図3に示す水質改良器の区分された水質改良材収納室を示す一部切欠した説明図である。
【図7】水質改良器の他実施例2を示す斜視図である。
【図8】実施例1の水質改良器を水中に沈めた場合に当該水質改良器に働く力について示す説明図である。
【図9】球形の水質改良器の外部に設置された突起部により右方向に回転した場合の水質改良器周りの流線である。
【符号の説明】
【0051】
1:水槽
2:水
3:供給口
4:配水口
5a:水質改良器
5b:水質改良器
6:キャップ
7:窓
8:紫外線フィルター
9:浮力体
10:取り付け枠
11:索条
12:水質改良材
13:室内照明用のランプ
14:透水材
15:突起部
16:外周壁
17:空気
18:透水性外周壁
19:水質改良材収納空間
20:水質改良材収納室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水質改良材を水中に浮遊させることができる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器を、水槽内に収納されている水中に浮遊させ、水の対流と水質改良器の回遊により水質改良材と水との接触が良好になるようにしたことを特徴とする水質改良方法。
【請求項2】
一部に窓部を設け、その窓部に可視光線を遮断し紫外線だけを透過させる紫外線透過フィルターを取付けてなる水槽と、
トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水質改良材を水中浮遊させることのできる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器とを用意し、
当該水槽内に収納されている水中に水質改良器を浮遊させ、
水の対流と水質改良器の回遊により水と水質改良材との接触を良好にするとともに、
水槽内に透過した紫外線により水質改良器の酸化チタン系光触媒を活性化するようにしたことを特徴とする水質改良方法。
【請求項3】
トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材と、当該水中を浮遊することのできる浮力を有する浮力体とを備えた水質改良器。
【請求項4】
水中を浮遊することのできる浮力を有する球形の浮力体の外周に、網状体又は多数の透水孔を有する透水材にて、より径が大きい球形状の透水性外周壁を形成して、前記浮力体の外周と透水性外周壁との間に水質改良材収納空間を形成し、当該水質改良材収納空間を区分して複数の水質改良材収納室を区画形成するようにし、
当該区画された複数の水質改良材収納室内に、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする球形の水質改良材を適度の余裕空間が生ずる量を収納し、姿勢が変化すると重力によって水質改良材が水質改良材収納室内を遊動自在なるようになし、
前記透水性外周壁の適所には突起部を形成し、水流や水圧の変化によっても姿勢を変化させることができるようにしたことを特徴とする水質改良器。
【請求項5】
水中を浮遊することのできる浮力を有する球形の浮力体から又は浮力体に装着した取付け枠から複数本の索条を垂下させ、当該索条のそれぞれにトルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とする水質改良材の塊体または球形体を複数個取付けたことを特徴とする水質改良器。
【請求項6】
水質改良材が、トルマリンおよび/または酸化チタン系光触媒を主体とするセラミックの塊体または球形体であることを特徴とする水質改良器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−279325(P2008−279325A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123864(P2007−123864)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(507150242)
【Fターム(参考)】