説明

水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造

【課題】水洗便器用タンクと便器の接続構造を改良することにより、極めて防露性能が高く、耐久性に優れた水洗便器用タンクを提供する。
【解決手段】 水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造であって、前記水洗便器用タンクは底面に第一の排水口を設けた陶磁器製外槽と、前記陶磁器製外槽内に収納され、底面に第二の排水口を設けた断熱性内槽と、前記断熱性内槽内に収納され、底面に第三の排水口が設けられた防水性内槽とを備え、前記水洗便器用タンクと前記水洗便器とを接続する接続配管を、前記第一の排水口、前記第二の排水口および前記第三の排水口を貫通させて接続し、前記第一の排水口と前記接続配管との間、および前記第二の排水口と前記接続配管との間に熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱構造体が気密状態で介在されていることを特徴とする水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器用タンクに係り、特に水洗便器用タンクと水洗便器の接続部の構造を改善することにより、防露性能を高めたものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等のトイレルームには水洗便器用タンクが設置されているが、このような水洗便器用タンクは、貯水温と外気温の温度差により、タンク表面に結露が発生しやすい。また一般に、水洗便器用タンクには、表面硬度が高い、半永久的に退色がない、給水率が0である等の理由で陶磁器が用いられているが、陶磁器の熱伝導率は1.5W/m/Kと比較的大きく、これが結露発生の大きな要因になっている。さらに、多くの日本のトイレルームは床が木材であることから、結露水が落下すると床材の腐食や劣化につながるという問題がある。
【0003】
そこで、これまでにも、結露を防止するために、断熱性能を向上させた給水タンクが提案されている。例えば、特許文献1の水洗便器用タンクは、陶磁器製のタンク本体と、樹脂発泡体層と、防水性被膜層と、を有している。ここで、熱伝導率の低い樹脂発泡体層を設けることで、タンク内部の水温を外部に伝えにくくし、結露を防止している。また、特許文献2では、陶磁器製の外部タンクと発泡スチロール製の内部タンクとの間に空気層を設け、発泡スチロールに加え、空気層の断熱効果も利用している。
【0004】
【特許文献1】特開平5−79081
【0005】
【特許文献2】実開平6−35374
【0006】
しかし、これら特許文献1及び特許文献2に開示された従来の水洗便器用タンクには、以下のような課題があった。
【0007】
図1に示した従来の水洗便器用タンク(ア)は、陶磁器製タンク本体(イ)と、樹脂発泡体層(ウ)と、防水性の樹脂水槽(エ)と、排水部(オ)とからなる。これらの材質の熱伝導率を比較すると、陶磁器は1.5W/m/K、樹脂発泡体層は0.033W/m/K、樹脂内槽に使用される一般樹脂は0.2W/m/Kであり、陶磁器の熱伝導性は非常に良い。すなわち、陶磁器では一部でも冷えた部位があれば、広範囲に渡って冷えが伝わるという特性がある。
ここで、給水時は貯水時と比較して、水が流れているため、防水性の樹脂水槽(エ)、及び排水管(ケ)における水との接触面で熱伝達率があがり、特に冷えが陶磁器製タンク本体(イ)に伝わりやすくなる。このとき、便器へ水を給水する排水管(ケ)は、全体が熱伝導率の低い材質で覆われていないため、陶磁器製タンク本体(イ)に冷えが伝達されやすい部位(カ)があった。よって、陶器製タンク本体(イ)の下部を中心として、冷えが矢印(キ)に示すように広がっていた。その結果、樹脂発泡体層(ウ)を内部に収納しているにも関わらず、陶磁器製タンク本体(イ)の下部を中心として、結露が発生しやすい状態であった。
【0008】
また排水部(オ)において、通常はゴムパッキン(ク)によりシールを行っている。しかし、陶磁器製タンク本体(イ)の寸法は、陶磁器の特性により、固体ごとに数%のばらつきがあり、均一なシール性能を確保できていなかった。よって、水蒸気が排水部(オ)の隙間に浸入し、再び冷やされることにより、内部で結露が発生していた。このような内部結露は、樹脂発泡体層(ウ)に水が浸入し、樹脂発泡体層(ウ)の断熱性能の劣化や、強度劣化につながっていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、水洗便器用タンクと便器の接続構造を改善することにより、極めて防露性能の高い水洗便器用タンクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の接続構造は、水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造であって、前記水洗便器用タンクは底面に第一の排水口を設けた陶磁器製外槽と、前記陶磁器製外槽内に収納され、底面に第二の排水口を設けた断熱性内槽と、前記断熱性内槽内に収納され、底面に第三の排水口が設けられた防水性内槽とを備え、前記水洗便器用タンクと前記水洗便器とを接続する接続配管を、前記第一の排水口、前記第二の排水口および前記第三の排水口を貫通させて接続し、前記第一の排水口と前記接続配管との間、および前記第二の排水口と前記接続配管との間に熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱構造体が気密状態で介在されていることを特徴とする。このように構成されていることにより、次の効果が得られる。貯水時には、陶磁器製外槽と防水性内槽の間に、常に断熱性内槽が介在しているため、陶磁器製外槽に水の冷えが伝わるのを防ぐことができる。そして、便器への給水時には、陶磁器製外槽と排水管の間に、断熱構造体が介在しているため、やはり陶磁器製外槽に水の冷えが伝わるのを防ぐことができる。さらに、断熱構造体は、陶磁器製外槽と排水管の間に気密状態で介在しているため、排水口を通じて陶器製外槽の内部に水蒸気が浸入することがなく、内部結露を防ぐとともに、断熱性内槽の耐久性を高めることができる。これらにより、極めて防露性能が高く、耐久性に優れた水洗便器用タンクを提供することができる。
【0011】
請求項2記載の接続構造は、請求項1記載の配管の接続構造において、前記断熱構造体が弾性体であることを特徴とする。このように構成されていることにより請求項1記載の効果に加え、以下の効果が得られる。断熱構造体が弾性体であるため、陶磁器製外槽の寸法にばらつきがあっても、容易に排水管と排水口との間に気密に装填することができ、施工性にも優れる。
【発明の効果】
【0012】
以上、本発明によれば、極めて防露性能が高く、耐久性に優れた水洗便器用タンクを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明における水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造について説明する。まず、第1実施例を図2の断面図に示す。図2に示した水洗便器用タンク1Aは、陶磁器製外槽2Aと、断熱性内槽3Aと、防水性内槽4Aと、陶磁器製外槽の排水口21Aと、断熱性内槽の排水口31Aと、防水性内槽の排水口41Aと、を連通させ、内部に配水管51Aを貫通させた排水部5Aと、からなる。そして、排水部5Aは、排水管51Aと、ゴムパッキン52Aと、陶磁器製外槽の排水口21Aかつ断熱性内槽の排水口31Aかつ防水性内槽の排水口41Aと排水管51Aとの間に、気密に装填された熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱性構造体53Aと、を有した構造となっている。なお、便器は排水部5Aと連通するように接続されるが、ここでは省略する。
【0014】
上記のように構成された水洗便器用タンク1Aを便器と接続することにより、貯水時には、断熱性内槽3Aにより、陶磁器製外槽2Aへ冷えが伝わるのを防ぎ、給水時には、断熱性内槽3Aと断熱性構造体53Aにより、陶磁器製外槽2Aへ冷えが伝わるのを防ぐ。特に、給水時には、水が流れることにより、防水性内槽4A、及び排水管51Aにおける水との接触面で熱伝達率があがるが、この熱伝達率は、流速が増すほど大きくなる。よって、排水管51Aにおける熱伝達率は、非常に大きいため、断熱性構造体53Aを設けることによる断熱効果は高い。
【0015】
さらに、断熱性構造体53Aは、排水部5Aにおいて気密に装填されているため、水蒸気が排水口(21A、31A、41A)を通じて浸入するのを防ぐことができる。その結果、断熱性内槽3Aに水が浸入することもなく、耐久性に優れる。
【0016】
ここで、断熱性内槽3Aは、熱伝導率が極めて低い樹脂発泡体が好ましいが、断熱効果があるものならば、それ以外であってもよい。また、防水性内槽4Aは、ポリプロピレン等の樹脂で成形した水槽にすると水圧に対する強度が確保できるが、塩ビ等の防水性被膜層であってもよい。すなわち、断熱性内槽3Aと防水性内槽4Aは、両者で断熱、防水、構造体としての機能が備わっていればよい。
【0017】
また、断熱性構造体53Aの材質としては、樹脂発泡体、ウレタンフォーム、ゴムスポンジ、等が挙げられる。ここで、断熱性構造体53Aを断熱性内槽3Aと同一の材質とし、断熱性内槽3Aと一体成形にしてもよい。もしくは、断熱性構造体53Aを弾性体のゴムスポンジとしてもよい。ゴムスポンジは、独立気泡のため、熱伝導率、吸水性が低いだけでなく、引き裂き強度にも優れる。さらに、弾性体であるため、寸法のばらつきが大きい陶磁器に対しても、便器側から挿入することで、容易に気密状態にすることができる。
【0018】
また、本実施例では、排水管51Aを防水性内槽4Aと別体で設けたが、防水性内槽4Aをポリプロピレン等の樹脂で成形した場合、一体で成形してもよい。
【0019】
次に本発明の第2実施例を図3の断面図に示す。ここで、第1実施例と同一の構成要素は、同一の番号を付して詳細な説明は省略する。本実施例の水洗便器用タンク1Bは、第1実施例とほぼ同様の構成要素からなり、第1実施例と比較すると、断熱性内槽3Bと、防水性水槽4Bとの間に空気層6を設けていることを特徴とする。さらに、本実施例では、水洗便器用タンク1Bと便器を固定する固定部7を示した。固定部7は、固定具71と、固定具71と陶磁器製外槽2Bとの間に、気密状態に装填された断熱性構造体53Bと、を有している。
【0020】
上記のように構成された水洗便器用タンク1Bを便器と接続することにより、第1実施例で述べた効果に加え、下記のような効果が得られる。本実施例の水洗便器用タンク1Bでは、固定具71の周囲にも断熱性構造体53Bを装填しているため、固定具71を通じて陶器外槽2Bに冷えが伝わるのを防ぐことができる。ここで、固定具71が固定金具であり、その一部が水に接している場合には特に有効である。また、固定部7から、水蒸気が陶器外槽2B内に浸入するのを防ぐため、さらに水洗便器用タンク2Bの耐久性を高めることができる。
【0021】
また、本実施例では空気層6を陶磁器製外槽2B内に設けたが、このように水洗便器用タンク1Bにおいて、空気層の断熱効果を利用してもよい。
【0022】
以上、具体例を参照しつつ、水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造について述べ、排水部及び固定部において、冷えの伝達、及び水蒸気の浸入を防ぐ効果について説明した。すなわち、本実施例で示したように水洗便器用タンクと便器とを接続することにより、極めて防露性能が高く、耐久性に優れた水洗便器用タンクを提供することができる。しかし、本発明は、これら具体例に限定されるものではない。例えば、便器側に接続構造が形成されているようなものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の水洗便器用タンクと便器の接続構造を説明する図。
【図2】本発明における水洗便器用タンクと便器の接続構造を示す第1実施例の図。
【図3】本発明における水洗便器用タンクと便器の接続構造を示す第2実施例の図。
【符号の説明】
【0024】
ア…従来の水洗便器用タンク本体
イ…従来の陶磁器製タンク
ウ…従来の樹脂発泡体層
エ…従来の樹脂水槽
オ…従来の排水部
カ…従来の排水部における熱伝達促進部位
キ…冷え
ク…ゴムパッキン
ケ…排水管
1(1A〜1B)…水洗便器用タンク
2(2A〜2B)…陶磁器製外槽
21(21A〜21B)…陶磁器製外槽の排水口
3(3A〜3B)…断熱性内槽
31(31A〜31B)…断熱性内槽の排水口
4(4A〜4B)…防水性内槽
41(41A〜41B)…防水性内槽の排水口
5(5A〜5B)…排水部
51(51A〜51C)…排水管
52(52A〜52B)…ゴムパッキン
53(53A〜53B)…断熱構造体
6(6B)…空気層
7(7B)…固定部
71(71B)…固定具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造であって、前記水洗便器用タンクは底面に第一の排水口を設けた陶磁器製外槽と、前記陶磁器製外槽内に収納され、底面に第二の排水口を設けた断熱性内槽と、前記断熱性内槽内に収納され、底面に第三の排水口が設けられた防水性内槽とを備え、前記水洗便器用タンクと前記水洗便器とを接続する接続配管を、前記第一の排水口、前記第二の排水口および前記第三の排水口を貫通させて接続し、前記第一の排水口と前記接続配管との間、および前記第二の排水口と前記接続配管との間に熱伝導率が0.1W/m/K以下の断熱構造体が気密状態で介在されていることを特徴とする水洗便器用タンクと水洗便器とを接続する接続構造。
【請求項2】
前記断熱構造体は、弾性体であることを特徴とする請求項1記載の接続構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−291518(P2006−291518A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111719(P2005−111719)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】