説明

水洗便器

【課題】 射水孔より洗浄水を射水する際に、洗浄水と置換されて吸込まれる空気の激しい吸込み音を防止する。
【解決手段】 給水源に連通して便器本体5の上縁部にリム通水路1が形成され、リム通水路1に水路方向に間隔を隔てて設けられた射水孔3より洗浄水がボウル部2に射水される水洗便器である。射水孔3の孔横断方向において凸部又は凹み部となって射水される水と空気の置換に際して射水孔への空気の吸引抵抗となる抵抗部4を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗便器に関し、詳しくは、射水孔より洗浄水を射水する際に、洗浄水と置換されて吸込まれる空気の吸込み音に起因する騒音を防止しようとする技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、図6に示すように、給水源に連通して便器本体5の上縁部にリム通水路1が形成され、リム通水路1に水路方向に間隔を隔てて設けられた射水孔3より洗浄水がボウル部2に射水される水洗便器A’においては、射水孔3の数を制限して個々の射水孔3における射水圧及び水量を多くしてボウル部2の洗浄性を高めるものである。(例えば、特許文献1参照)
上記特許文献1に示される水洗便器A’においては、個々の射水孔3からの射水圧及び水量を充分なものにすることに起因して、射水孔3から洗浄水の射水が終える時期に、リム通水路1の内部圧P2と大気圧P1とにおいて大きな差が生じて射水される水と空気の置換が生じるのであり、この場合、空気が射水孔3に吸引されるときに、図7(a)(b)に示すように、水膜Cを破って空気が激しく吸込まれる吸込み音が発生し、水膜Cを破る吸込み音が中空となっているリム通水路1を伝わって騒音となるのである。水膜Cを破壊する空気の吸込み音はリム通水路1の上流側ほど顕著である。
【特許文献1】特開平5−214758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ボウル部の洗浄を良好におこなうことができながら、洗浄水と置換される空気の吸込み音をなくして静かな水洗便器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明においては、給水源に連通して便器本体5の上縁部にリム通水路1が形成され、リム通水路1に水路方向に間隔を隔てて設けられた射水孔3より洗浄水がボウル部2に射水される水洗便器であって、射水孔3の孔横断方向において凸部又は凹み部となって射水される水と空気の置換に際して射水孔への空気の吸引抵抗となる抵抗部4を形成していることを特徴とするものである。
【0005】
このような構成によれば、射水孔3において凸部又は凹み部となっている抵抗部4において射水される水と空気の置換に際して吸引抵抗となり、空気が射水孔3の水膜Cを破って勢いよく吸引されることによる発音を抑制することができ、静かな水洗便器として水洗便器の品質を高めることができる。
特に、リム通水路1の最上流部の射水孔3に抵抗部4を形成すると効果的である。
【発明の効果】
【0006】
要するに本発明は、射水孔の横断方向において凸部又は凹み部となる抵抗部が空気の吸引抵抗となり、空気が射水孔の水膜を破って勢いよく吸引されることを抑制することができ、射水された洗浄水と置換される空気の吸込み音を防止して騒音を抑制し、静かな水洗便器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0008】
図1は一部省略した斜視図であり、図2は全体斜視図である。水洗便器Aは、便器本体5に温水洗浄便座装置8を取付けていて、温水洗浄便座装置8には、便座6及び便蓋7が回動自在に取付けられている。
【0009】
便器本体5の上縁部にはトンネル状のリム通水路1が環状に形成されていて給水源に連通されている。給水源は、例えば、直結される水道管、または、水道水が一定量貯水されるロータンク等がある。リム通水路1には適宜の間隔を隔て、例えば、射水方向の前方で統一性をもって斜め下方に向けられて射水孔3…が形成され、環状のリム通水路1よりの水勢ができるだけ衰えないように、かつ、多数の射水孔3から射水された全体の洗浄水が渦巻き流となってボウル部2を良好に洗浄するようにしている。
【0010】
図4(a)(b)に示すように、射水孔3はリム通水路1を一段下げた形で、射水方向の前方で斜め下方に向けられている。射水孔3の先端部の孔横断方向において凸部又は凹み部となって射水孔3への空気の吸引抵抗となる抵抗部4を形成している。本実施の形態においては、射水孔3の先端部の横断面形状が略ハート形となっていて、ハート形の上中央部が抵抗部4となって垂下している。
【0011】
射水孔3に抵抗部4を形成する形状は、例えば、図5(a)に示す菱形や、同図(b)に示すかぎ穴形や、同図(c)に示すだるま穴形等種々変更することができるものである。
【0012】
このような構成によれば、射水孔3の先端部で孔横断方向において凸部又は凹み部となっている抵抗部4が吸引される空気の抵抗となり、図4(c)のように、吸い込まれる空気は気泡状となって、常時、洗浄水と空気を置換させることができるのであり、射水孔3のリム通水路1側の圧力P2と射水孔3の外側の大気圧P1との間に圧力差が生じることがなく、したがって、従来のように、空気が射水孔3の水膜を破って勢いよく吸引されることによる発音を抑制することができ、射水された洗浄水と置換される空気の激しい吸込み音を防止することができ、静かな水洗便器Aとして商品価値を高めるのである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態を示す一部省略した斜視図である。
【図2】同上の全体斜視図である。
【図3】同上の部分拡大斜視図である。
【図4】(a)は図3のX−X線断面図、(b)は部分斜視図、(c)は説明図である。
【図5】(a)(b)(c)は同上の他の実施の形態の概略断面図である。
【図6】従来例の概略断面図である。
【図7】(a)(b)は従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0014】
1 リム通水路
2 ボウル部
3 射水孔
4 抵抗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水源に連通して便器本体の上縁部にリム通水路が形成され、リム通水路に水路方向に間隔を隔てて設けられた射水孔より洗浄水がボウル部に射水される水洗便器であって、射水孔の孔横断方向において凸部又は凹み部となって射水される水と空気の置換に際して射水孔への空気の吸引抵抗となる抵抗部を形成して成ることを特徴とする水洗便器。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−2491(P2006−2491A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181644(P2004−181644)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】