説明

水洗式便器用の吸気装置

【課題】吸気装置を簡易に組み込むことができるようにする。
【解決手段】洗浄水の通過により発生した負圧に基づいて外気を取り込み、タンク20内に空気圧を作用させるようにした吸気装置は、流路の一部が絞られたエゼクタ30を有する。エゼクタ30はその軸線方向と直交する方向にエアー吸引部39が突出している。外気に開放可能な第3開閉弁V3の側面には逆止弁111が嵌合し、逆止弁111の接続口116にエアー吸引部39が嵌合する。エゼクタ30はタンク20内に突っ込まれ、第3開閉弁V3はエゼクタ30と反対側の面がブラケット304の位置決め片310に当接することで、エゼクタ30及び第3開閉弁V3は嵌合方向に関して位置決めがなされるため、両者の間に特別な固定手段を用いなくとも嵌合状態を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水洗式便器用の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器本体に対する洗浄効果を高めるための方式の一つに、給水経路途上で流速を増速させ、これによって生じた負圧を利用する方式が知られている。その一例として、下記特許文献1のものを挙げることができる。このものは、水封部の下流側に負圧を作用させて水封部内の水を積極的に下流側に引っ張る、というサイホン現象の支援を行う方式である。具体的には、給水管にバイパス路を接続するとともに、このバイパス路内に流路面積を絞ったスロートを形成しており、洗浄水がスロートを通過する過程でブース内を負圧化し、さらにブース内に設けられたベローズを介して水封部の下流側の空気を吸引する構造が採用されている。
【特許文献1】特開平7−54388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このものでは負圧発生させている機構(スロート)と、ここで生じた負圧を水封部の下流側に作用させるのに関与する機構(ブース)を含め、これらの相互間、さらにはそれぞれを水洗式便器のシステム中へ組み込むのに際し、全て配管を用いての接続によっている。このような配管を用いて接続する方式は、配管同士の接続の際のねじ締め作業を強いられたりして作業に手間取る。また、接続に必要な部品点数の増加によって構造も複雑化する、といった問題もある。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、水洗式便器中に簡易に組み込むことができる吸気装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水洗式便器用の吸気装置は、給水経路へ洗浄水を通過させることにより内圧降下を誘起させ、これによって発生した負圧により外気を取り込み、洗浄水に空気を混入させるようにした水洗式便器用の吸気装置であって、給水経路が軸方向に沿って形成されるとともにその途中に流路が絞られた絞り部が形成された本体とこの本体の側面に設けられ給水経路に連通するエアー吸引部とを有するエゼクタと、このエゼクタの軸方向と交差する方向から組み付けられエアー吸引部と嵌合可能な接続部を有してエアー吸引部を外気に連通可能とするエアー開放弁と、エゼクタとエアー開放弁とが取り付けられる相手部材と、
この相手部材に形成されエゼクタとエアー開放弁とを組付け方向に関してそれぞれ位置決めをすることにより、エアー吸引部と接続部とを嵌合状態に保持する位置決め部とを備えてなる構成としたことを特徴とする。
【0006】
このような構成である本発明の水洗式便器用の吸気装置では、エゼクタとエアー開放弁とは、その取り付け相手となる相手部材の位置決め部により、組付け方向に関して共に位置決めされた状態で取り付けられる。このことによって、エアー吸引部と接続部とはねじ止め等の特別な固定手段を設定しなくとも、嵌合状態を維持することができる。したがって、部品点数が削減され、かつメンテナンス作業も効率よく行うことができる。
【0007】
また、エアー吸引部と接続部との嵌合部には、エアー開放弁側へ洗浄水が流れ込むのを阻止する逆止弁が、取り外し可能に組み込まれていることが好ましい。
【0008】
このようにすれば、逆止弁を、単なる嵌め合いがなされているだけのエアー吸引部と接続部との間に組み込むものとなるから、逆止弁の組付け・取り外しの作業も簡単に行うことができる。
【0009】
さらに、エアー開放弁と外気とを連通させる経路中にサイレンサを設けるようにしてもよい。
そのようにすれば、エアー開放弁が開放してエゼクタ内に外気が取り込まれるときの吸気音をサイレンサによって緩和させることができる。
【0010】
さらにまた、エゼクタが取り付けられる相手部材は、便器本体に接続されるタンクであり、位置決め部はタンクの壁面に開口しエゼクタの本体を軸方向から位置決め状態で挿通させる流入口であり、一方、エアー開放弁が取り付けられる相手部材は、エアー開放弁を便器本体に対して直接あるいは間接的に取り付けを行うためのブラケットに一体に形成されエアー開放弁における接続部とは反対側の面に当接する位置決め片であるものとしてもよい。
【0011】
このような構成によれば、エゼクタはタンクに対して取付けがなされ、エアー開放弁は便器本体へのブラケットに対して取付けがなされ、それぞれ別個の相手部材によって組付け方向への位置決めがなされる。したがって、単一の相手部材によって位置決めを行うとした場合には、エゼクタとエアー開放弁とを予め接続状態にした後に位置決めを行わねばならず、作業手順が拘束されてしまうが、請求項4の発明のような別個の相手部材にすればエゼクタとエアー開放弁との接続作業をそれぞれの相手部材に位置決めした後に行うことも可能であり、作業手順の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図4によって説明する。まず、図1によって、本実施形態の洋風水洗式便器全体の概略構成を説明する。図中、1は便器本体であり、上部内周にリム3を有している。便器本体1は便鉢2の下端から便鉢2の裏面側で後方に延びる上昇流路を有し、便鉢2の下方には上昇流路を含む水封部4が形成されている。便器本体1の上昇流路は接続管と接続されており、接続管内には便器排水路5、滞留部6及び排水口7が形成されている。
【0013】
便器本体1が据え付けられるトイレルームの床面又は壁面から引き出された水道管には止水栓V5が備えられ、止水栓V5には導水管10が接続されている。導水管10には上流側から順に、ストレーナ装置11(止水弁とストレーナとを内蔵する。)、定流量弁12、第1開閉弁V1、バキュームブレーカ13が配されている。導水管10においてバキュームブレーカ13の下流側には洗浄水を通過させつつ負圧を発生させるエゼクタ30が接続されている。
【0014】
後に改めて詳述するが、エゼクタ30内に設けられた給水経路14の一部は経路面積が絞られて絞り部15となっていて、この絞り部15を洗浄水が通過するときに内圧降下を誘起させて負圧を生じさせる。一方、エゼクタ30の他端側は洗浄水を貯留するためのタンク20内へ挿入され接続がなされている。タンク20内はエゼクタ30の端部が突っ込まれる流入室25と、この流入室25と底部において連通し便器本体1のリム3の内側へ通じる送出管40の端部が突っ込まれる流出室26とに簡易的に仕切られている。流入室25の内部は第2開閉弁V2を介して大気に開放及び閉止可能となっている。この実施形態では、流入室25はさらに簡易的に二室に仕切られ、図示中央の室はエゼクタ30(詳細にはエゼクタ30に接続されたノズル50)から吐出される洗浄水によって旋回流を生じさせる旋回室29なっている。
【0015】
エゼクタ30の側面には絞り部15の下流側へと通じるエアー吸引部39が設けられている。エアー吸引部39は、絞り部15を洗浄水が通過することに伴って発生した負圧により外部から空気を吸引する。エアー吸引部39は逆止弁111を介して導圧路110へと通じている。逆止弁111は洗浄水が導圧路110側へ流入するのを阻止する一方で、導圧路110側からエゼクタ30側へのエアーの進入を許容する。
【0016】
導圧路110には上記負圧を蓄えておくための負圧蓄圧タンク70が接続されている。導圧路110は途中で分岐しており、第3開閉弁V3を介して外気に連通可能である。導圧路110は他にも分岐箇所があり、第4開閉弁V4を介して吸引タンク80へ通じている。吸引タンク80内は可撓性を有する隔膜83によって第1室81と第2室82との二室に区画され、第1室81は第4開閉弁V4へと通じており、第2室82は吸引路90によって便器排水路5に接続されている。隔膜83は第1・第2の両室を相互に連通し合わない密封状態を確保し、汚物を含んだ洗浄水や臭気が負圧蓄圧タンク70やエゼクタ30側へ入り込む事態を確実に阻止している。
【0017】
なお、第1乃至第4開閉弁V1〜V4は電磁弁であり、図示しない制御装置によって開閉動作(動作タイミングと動作時間)が制御されるようになっている。
【0018】
上記した水洗式便器の作動の概要を説明する。非洗浄時には、第1乃至第3開閉弁V3はいずれも閉弁状態にある。このときには、タンク20内に洗浄水が貯留され、吸引タンク80内の隔膜83は吸引タンク80内の下壁面側に垂れている。
【0019】
用便後に、使用者が洗浄スイッチ(図示しない)を操作すると、制御装置(図示しない)からの信号を受け第1開閉弁V1が開弁する。これにより、洗浄水が導水管10内を通ってタンク20内の旋回室29内に流入する。この間、洗浄水はエゼクタ30の絞り部15を通過する過程で増速されるため、エゼクタ30内では内圧降下が誘起される。その結果生じた負圧の作用により、負圧蓄圧タンク70内のエアーが導圧路110、逆止弁111を介してエゼクタ30内に吸引される。したがって、洗浄水は旋回室29内へエアーが混じりあった状態で流入する。その後、タンク20内で分離したエアーは上部に溜まって流入室25内の水面を押し下げるように作用する。一方で、負圧蓄圧タンク70内では負圧が徐々に高められてゆく。
【0020】
タンク20内への洗浄水の流入と並行して、タンク20の流出室26からは洗浄水が流出し、送出管40を介してリム3に供給される。これにより、洗浄水は便鉢2の内面に沿って旋回しながら流れ落ち、汚物を便鉢2の中央に集める。
【0021】
上記洗浄スイッチ(図示しない)の操作がなされた時点から所定時間が経過すると、制御装置により第4開閉弁V4が開弁する。このときには、第1開閉弁V1の開弁状態は維持されたままである。第4開閉弁V4の開弁に伴って負圧蓄圧タンク70内の負圧が吸引タンク80の第1室81に作用し、これと併せてエゼクタ30内では洗浄水が通過し続けていることから、エゼクタ30内で生じた負圧もまた、同様に第1室81に作用している。したがって吸引タンク80内の隔膜83は、吸引タンク80の上壁面側へ持ち上げられる。これにより、便器本体1内の便器排水路5内の空気が吸引される。このことと、タンク20から供給された洗浄水が便鉢2内の水位を水封部4よりも高くしていることによる強力なサイホンの作用により強い排出流が形成され、汚物を便器排水路5を経て排出することができる。
【0022】
第4開閉弁V4が開弁して所定時間が経過した後(便鉢2内が設定水位(最低水位よりはやや上位)にまで下がった時期に概ね合致する)、制御装置により第4開閉弁V4が閉弁され、代わって第3開閉弁V3が開弁する。この時点においても、洗浄水はエゼクタ30内を通過し続けているため、大量の外気がエゼクタ30を通してタンク20内に取り込まれる。その結果、流入室25内のエア圧が高められ、流入室25内の水面を一気に押し下げることから、流出室26からの洗浄水の流出量が急速に増加し、便鉢2内へは短時間で多量の洗浄水が供給される。かくして、便鉢2内には強力な旋回流が生じ汚物の排出が確実に行われる。
【0023】
上記のようにして洗浄水の増加工程が行われたら、一旦、第1開閉弁V1が閉じられかつ第4開閉弁V4が開かれる。これにより、エゼクタ30内での負圧発生が止むとともに、吸引タンク80の第1室81へ外気が取り込まれ、内部の隔膜83が下方へ移動する。これに伴って、第2室82内の空気が便器排水路5へ押し出されるため、便器排水路5内の水位が押し下げられサイホン作用が終了する。
【0024】
こうして隔膜83の復帰がなされたら、第1開閉弁V1が再度開かれ、第4開閉弁V4は逆に閉じられる。このときには第2開閉弁V2も開放される。すると、エゼクタ30内では負圧発生作用が再開し旋回室29内へは外気の取り込みとともに、洗浄水の流入がなされる。その結果、タンク20内の水位は洗浄開始前の水位に復帰するとともに、流出室26から洗浄水が流出することで、便鉢2内の水位も同様に復帰する。
【0025】
最後に、第1開閉弁V1が閉じられ第4開閉弁V4が開放される。これにより、外気が吸引タンク80内の第1室81内に取り込まれ、隔膜83が下方へ垂れて原状態に復帰する。その後、第2〜第4開閉弁V4も閉じられて全開閉弁が閉弁状態となり、一連の洗浄工程が終了する。
【0026】
ところで、本実施形態においては、エゼクタ30と第3開閉弁V3との接続構造が特徴的である。
【0027】
図2に示すように、便器本体1は、便鉢2の後方に収納部1Sが設けられている。収納部1Sは上方へ開放し、左右側から後面側にかけてを側壁によって取り囲むことによって形成されている。
【0028】
タンク20は、吊り下げフレーム300内にセットされ収納部1S内に吊り下げられた状態で支持される。吊り下げフレーム300は、上向きコの字状をなす縦フレーム301と、バンド状をなして縦フレーム301に対し水平姿勢で上下に取り付けられた一対の横フレーム302とによって構成されている。縦フレーム301の下面にてタンク20の底面が支持され、タンク20の側面に対しては縦フレーム301のうち垂直方向に伸びる一対の片(垂直片301a,301b)と両横フレーム302とによって拘束される。縦フレーム301の一方の垂直片301a(図2の奥側の片)の上部は便器本体1の前後方向へ向けて分岐されるとともに、これらの上端は前方あるいは後方へ向けて直角に屈曲して係止片303aが形成されている。また、他方の垂直片301bの上端も左方向へ向けて直角に屈曲して係止片303bを形成している。各係止片303a,303bは、収納部1Sの開口面の対向する両長辺部の上縁および一方の短辺部(図2の手前側の短辺部)の上縁にそれぞれ引っ掛けられてボルト締めがなされる。
【0029】
タンク20は吊り下げフレーム300内へ収容された後に、吊り下げフレーム300の上部に取り付けられるブラケット304によって上方への抜け止めがなされる。ブラケット304は金属製板材をプレス加工して形成したものである。その基板305には長孔である逃がし孔306が開口しており、その延び方向は
エゼクタ30と第3開閉弁V3との接続方向に沿うようにしてある。逃がし孔306の長さ方向の一端側にはエゼクタ30をねじによって固定するための一対の取付孔307が逃がし孔306を挟んで開口している。基板305において両取付孔307が形成されている側の側縁には上向きに第1装着片308が折り曲げ形成されている。第1装着片308は吊り下げフレーム300の垂直片301aの上端部内側に密着し、ねじによって締め付け固定される。基板305において第1装着片308と反対側の側縁は下向きに折り曲げられて第2装着片309が形成されている。第2装着片309は基板305から外方へ張り出すように延び、吊り下げフレーム300の他方の垂直片301bの外側面に密着し、ねじ止めによって相互の締め付け固定がなされている。これにより、タンク20は吊り下げフレーム300から上方へ外れ止めされる。
【0030】
タンク20の上蓋21には図2に示すように、送出管40が引き出され、これに隣接して第2開閉弁V2が設置されている。第2開閉弁V2の隣には図3に示すように、エゼクタ30、第3、第4開閉弁V3,V4及びサイレンサ71を一体化させた吸気ユニットUが配されている。
【0031】
エゼクタ30は図4に示すように、略円筒状の本体31を有するとともに、内部には軸心に沿って洗浄水の給水経路14が貫通して形成されている。本体31の外周面において長さ方向中央部より下方にかけての長さ範囲には格子状に凹凸部35が形成されている。本体31は、タンク20の上蓋21の流入口23を貫通してタンク20内に突っ込まれている。この実施形態においては、流入口23周りには上蓋21の内外方向に突出して接続筒部22を形成している。接続筒部22は凹凸部35のほぼ全長さ範囲を嵌合可能とする長さをもって形成されている。凹凸部35の途中にはシールリング36が嵌め付けられていて、接続筒部22の内周面に密着してシールをとっている。本体31において凹凸部35よりも下部側はタンク20内に支持されたノズル50へ突っ込まれている。但し、詳細には図示されないが、ノズル50の吐出側端部は旋回室29の壁面に沿うよう指向し、前述したように旋回室29内に旋回流を生じさせることができる。
【0032】
エゼクタ30内において洗浄水の入り口側にはスロート部材32が組み込まれている。スロート部材32は給水経路14内に同心で装入され、下端側に向けて先細りとなる円錐状の絞り部15を備えており、下方へ向けて徐々に流路面積が減少するように形成されている。絞り部15の先端(下端)は本体31に形成された狭小部33の漸減路34に臨ませてある。すなわち、給水経路14において絞り部15の出口に対向する部分は下方へ向けて徐々に流路面積が減ぜられるように形成され、最も流路径が絞られた狭小部33との間が漸減路34とされ、狭小部33より下流側は流路面積が徐々に拡大するようにしてある。かくして、洗浄水が絞り部15を通過する過程で洗浄水の流速が速められ、これによる内圧降下に伴ってエゼクタ30内に負圧を発生させることができる。
【0033】
また、エゼクタ30の側面には筒状をなすエアー吸引部39が設けられ、本体31の軸線方向と交差する方向(本実施形態では直交する方向)へ向けて突出している。このエアー吸引部39は漸減路34の入り口より僅かに上流側でスロート部材32の絞り部15の下端部に連通する箇所に配されている。
【0034】
一方、第3、第4開閉弁V3,V4は共通のベース部材120を有しており、両開閉弁V3,V4はベース部材120の上面に対しそれぞれねじ止めによって取り付けられている。ベース部材120における第3開閉弁V3に対応した位置には下向きに膨出部121が突出している。膨出部121内には導圧路110の一部が形成されている。この導圧路110の途中には図示しない弁体が設けられ、導圧路110を開閉可能としている。ベース部材120の一方(図3の手前側:第3開閉弁V3寄り)の側縁部にはサイレンサ71が固定されている。サイレンサ71は上面に吸い込み口72を突出させており、ここから取り込まれた外気をサイレンサ71内部の消音機構(図示しない)を経てベース部材120内の導圧路110へと取り込むことができる。
【0035】
膨出部121においてエゼクタ30と対向する側の面には導圧路110と連通する円形の差込み口122が開口しており、ここには逆止弁111が組み込まれる。逆止弁111は、円筒状をなすバルブハウジング112を有しており、差込み口122内へシールリング123を介在した状態で差し込まれる。バルブハウジング112は膨出部121内の導圧路110へと通じる流入ポート113が開口しているとともに、この流入ポート113にはチェックボール114が設けられていて、チェックボール114が流入ポート113の弁座に着座することで流入ポート113を閉じ、洗浄水が第3開閉弁V3側に逆流するのを防止する。しかし、チェックボール114が弁座から離れると、流入ポート113は開放し、外気をエゼクタ30内に取り込むことができる。
【0036】
バルブハウジング112内にはチェックボール114に対する抜け止めを兼ねたフィルター115が、シールリングを介在した状態で収容されている。また、バルブハウジング112は差込み口122内に差し込まれたときに、ベース部材120から水平方向外方へ突出する長さをもって形成され、その突出端はエゼクタ30のエアー吸引部39に対する接続口116となっている。この接続口116へエゼクタ30のエアー吸引部39を正規深さまで差込んだときには、エアー吸引部39の前端にてフィルター115の後面を押し、逆止弁111全体が差込み口122内の奥壁に押し付けられる。
【0037】
上記のように構成された吸気ユニットUをタンク20に対して固定する場合には、逆止弁111を膨出部121の差込み口122を組み込んでおき、そのもとでエゼクタ30のエアー吸引部39を逆止弁111の接続口116へ差し込んでおく。このときには、エアー吸引部39と差込み口122とは単なる差込みがなされているだけで、両者の間の接続状態を固定する手立ては特には講じられていない。したがって、このときにはエゼクタ30、逆止弁111、第3開閉弁V3はこれらの組付け方向に関する変位が許容されているため、吸気ユニットUは未だ仮の組付け状態に過ぎない。
【0038】
この仮アッセンブリー状態にある吸気ユニットUを、ブラケット304上方に位置させ、エゼクタ30の下端側をタンク20の上蓋21の接続筒部22へと突っ込む。これによって、まずエゼクタ30の水平方向に関する位置決めがなされる。エゼクタ30が正規深さまで接続筒部22へ突っ込まれた状態では、逃がし孔306の内側に膨出部121の下面部が嵌め入れられる。これによって、膨出部121の側面が逃がし孔306の開口縁の両長辺部とほぼ当接する状態となり、図3におけるY矢印方向の位置決めがなされる。また、ブラケット304の側縁には第2装着片309と隣接して位置決め片310が起立しており、エアー吸引部39が逆止弁111に対して正規深さまで突っ込まれた状態では、ベース部材120においてエゼクタ30とは反対側の側面が位置決め片310の内面上部に当接するような設定となっている。かくして、ベース部材120とエゼクタ30はそれぞれ図3におけるX矢印方向に関する位置決めがなされるため、エアー吸引部39と第3開閉弁V3(逆止弁111)とは単に差し込まれるだけの関係であるにも拘わらず、この間に特別な固定手段を講じなくとも両者は正規の接続関係に維持される。したがって、これらの間の接続箇所を構成する部品点数を削減することができ、併せて作業工数も減らすことができる。また、メンテナンスも容易となる。
【0039】
また、本実施形態では第3開閉弁V3との間に逆止弁111を介在させるようにしたため、逆止弁111の組み込みにも特別な部品を必要とせず、作業性の一層の向上も図れる。
【0040】
さらに、吸気ユニットUの位置決めはタンク20の抜け止めを行うブラケット304を利用し、ここに形成された位置決め片310によって行うようにしたため、位置決めのための特別な部材も必要とせずに済んでいる。
【0041】
さらにまた、本実施形態ではエゼクタ30側はタンク20によって位置決めを行い、第3開閉弁V3側はブラケット304の位置決め片310によって位置決めを行うようにしている。つまり、エゼクタ30と第3開閉弁V3とは別個の相手によって位置決めを行うようにしている。仮に、同一の相手によって位置決めを行うようにした場合には、エゼクタ30と第3開閉弁V3とを予め正規の接続状態にしてから当該同一の相手部材によって位置決めされねばならない、といった作業手順の拘束を受ける。しかし、本実施形態のように、別個の相手部材によって個別に位置決めされるようにすれば、エゼクタ30と第3開閉弁V3とを相手部材に別個に仮付けしておき、エゼクタ30と第3開閉弁V3を接続しつつ各相手部材の位置決め固定を行うといった作業手順を選択することも可能となるなど、作業手順選択の自由度が高まる、といった効果も得られる。
【0042】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0043】
(1)本実施形態ではエゼクタ30の位置決めはタンク20側へ突っ込むことによって行ったが、ブラケット304の逃がし孔306によって行っても良い。また、必ずしも逃がし孔306によらず、エゼクタ30を貫通させる専用の孔を利用してもよい。
【0044】
(2)エゼクタ30とベース部材120側との接続作業順は本実施形態のものに限らず、変更可能である。例えば、エゼクタ30をタンク20に突っ込んだ後にベース部材120との接続を行う作業順の採用も可能である。
【0045】
(3)エゼクタ30と第3開閉弁V3との接続にあたり、必ずしも逆止弁111を介在させる必要はなく、直接に接続するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】洋風水洗式便器の模式図
【図2】同じく部分分解斜視図
【図3】エゼクタ及び第3開閉弁の組付け構造を示す分解斜視図
【図4】同じく組付け状態を示す断面図
【符号の説明】
【0048】
1…便器本体
14…給水経路
15…絞り部
20…タンク(相手部材)
22…接続筒部(位置決め部)
23…流入口
30…エゼクタ
31…本体
39…エアー吸引部
111…逆止弁
116…接続口(接続部)
304…ブラケット(相手部材)
310…位置決め片(位置決め部)
V3 …第3開閉弁(エアー開放弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水経路へ洗浄水を通過させることにより内圧降下を誘起させ、これによって発生した負圧により外気を取り込み、洗浄水に空気を混入させるようにした水洗式便器用の吸気装置であって、
前記給水経路が軸方向に沿って形成されるとともにその途中に流路が絞られた絞り部が形成された本体とこの本体の側面に設けられ前記給水経路に連通するエアー吸引部とを有するエゼクタと、
このエゼクタの軸方向と交差する方向から組み付けられ前記エアー吸引部と嵌合可能な接続部を有して前記エアー吸引部を外気に連通可能とするエアー開放弁と、
前記エゼクタと前記エアー開放弁とが取り付けられる相手部材と、
この相手部材に形成され前記エゼクタと前記エアー開放弁とを前記組付け方向に関してそれぞれ位置決めをすることにより、前記エアー吸引部と前記接続部とを嵌合状態に保持する位置決め部とを備えてなることを特徴とする水洗式便器用の吸気装置。
【請求項2】
前記エアー吸引部と前記接続部との嵌合部には、前記エアー開放弁側へ前記洗浄水が流れ込むのを阻止する逆止弁が、取り外し可能に組み込まれていることを特徴とする請求項1に記載の水洗式便器用の吸気装置。
【請求項3】
前記エアー開放弁と外気とを連通させる経路中にサイレンサが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の水洗式便器用の吸気装置。
【請求項4】
前記エゼクタが取り付けられる前記相手部材は、前記便器本体に接続されるタンクであり、前記位置決め部は前記タンクの壁面に開口し前記エゼクタの前記本体を軸方向から位置決め状態で挿通させる流入口であり、
一方、前記エアー開放弁が取り付けられる前記相手部材は、前記エアー開放弁を前記便器本体に対して直接あるいは間接的に取り付けを行うためのブラケットに一体に形成され前記エアー開放弁における前記接続部とは反対側の面に当接する位置決め片であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の水洗式便器用の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−261169(P2008−261169A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105478(P2007−105478)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】