説明

水溶性タンパク質の回収方法および装置

【課題】動物性食品の処理液に含まれる水溶性タンパク質を効率的に回収する。
【解決手段】回収装置10は対となって配置される電極21,22が配置された加熱器11a〜11cを有している。加熱室23内においては処理液Lが流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持した状態のもとで、電極21,22に通電することにより、処理液の中の水溶性タンパク質の凝集物が生成される。凝集物は加熱器11a〜11cの内周面に付着することなく、加熱室23内に塊状となって生成され、凝集物はフィルタ27により処理液Lから回収される。上流側よりも下流側の加熱器の温度を高めることにより、分子量が相違する水溶性タンパク質が分別回収される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類の晒し液や畜肉の浸漬液などのように動物性食品の処理液に含まれる水溶性タンパク質を回収する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類のすり身食品などの加工食品を製造する際には、魚介類は洗浄処理や晒し処理されている。食品加工工場においては、これらの処理液をそのまま廃棄することができないので、廃液処理施設により浄化して外部に排出する必要がある。豚肉や牛肉などの畜肉を素材としてハムを製造する場合には、畜肉素材に調味料を染み込ませるために浸漬液が使用されている。この浸漬液も浸漬処理後には廃液となっており、廃液処理施設により浄化して外部に排出するようにしている。このため、魚介類や畜肉などの動物性食品を素材とする加工食品を製造する食品加工工場においては、食品素材の処理液を浄化するために、多大な費用をかけて廃液処理施設を設置する必要がある。
【0003】
廃液処理施設の製造費用や維持管理費用が高価になる理由としては、動物性食品の処理液にタンパク質が含まれていることがある。廃液にタンパク質が含まれていると、ゴミなどの異物のみが含まれた排水を処理する場合と相違して、廃液処理施設の構造や処理工程が複雑となることが避けられない。
【0004】
動物性食品の処理液には、水溶性タンパク質が多く含まれていることから、処理液中から水溶性タンパク質を分離して回収する方法が検討された。処理液から水溶性タンパク質を回収することができれば、簡単な構造の廃液処理施設によって迅速に廃液処理を行うことができるだけでなく、回収された水溶性タンパク質を補助食品として製品化しその需要を満たすことが可能となる。
【0005】
水に溶解しない筋原繊維を含む食肉を可溶化することにより食肉自体を素材とした水溶性食肉調整品としては、特許文献1に記載されるものがある。この調整品は、細切りにした食肉に低濃度の食塩水を加えて撹拌粉砕し、これを遠心分離して凝集物を除去した溶液を濃縮することにより製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−144097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
食品加工工場において食品素材の洗浄や晒し処理のために使用された処理液は、動物食品に含まれる水溶性タンパク質を含んでいる。この水溶性タンパク質は加熱すると変性して凝集物となることから、処理液を加熱処理すれば、処理駅から水溶性タンパク質を分離して回収することができる。凝集物となるタンパク質は、加熱温度に応じて分子量が相違するので、処理液の加熱温度を変えることによって特性が相違したタンパク質に分別して回収することができる。
【0008】
処理液を加熱して温度調整する方法としては、加熱容器の中に処理液を投入し、加熱容器をガスバーナーなどの加熱手段を用いて加熱する方法が考えられる。しかし、このような外部から容器を加熱する方法では、処理液自体の熱伝導により処理液が外側部から中心部に向けて加熱されることになるので、処理液が外側部と中心部とで大きな温度差が生じている。そのため、処理液を加熱することによって特性が相違したタンパク質を分離して回収するための微妙かつ正確な温度制御ができない。加熱処理液の外側部分と中心部との大きな温度差を解消する方法としては処理液を十分に撹拌する方法が考えられる。しかし、撹拌しても直接加熱される外縁部との温度差を解消することはできない。
【0009】
比較的温度制御が容易な加熱方法としては、目的温度に制御された熱水が循環するようにした熱交換機を使用して処理液を加熱する方法が考えられている。しかし、原理的には容器外部から熱を加える方式であるため、厳密には外縁部との温度差を解消することはできない。さらに、このような加熱方式では、加熱容器の内面にスカムと言われる変性タンパク質の凝集物が付着してしまう現象が発生する。また、スカムは最も早く高温になりタンパク質の変性凝固が起こる外縁部で生成するため、処理液を激しく撹拌しても加熱容器の内面に凝集物が付着する現象の発生を防止することはできなかった。
【0010】
このように、加熱容器の内面に凝集物がスカムとなって付着すると、これを洗浄除去する必要があり、効率的に水溶性タンパク質を分離、回収することができない。
【0011】
一方、電極が配置された加熱器内の加熱室内に処理液を供給し、電極間に電流を流してジュール熱により処理液を加熱する方法では、処理液自体の発熱により直接加熱されるため、処理液を撹拌することなく処理室内の処理液を全体的に均一な温度で加熱することができる。
【0012】
しかし、従来のジュール熱を用いた溶液の連続加熱装置では、流動する溶液により凝集物が微細な粒子となって処理液中に浮遊し、加熱容器の内面に凝集物が付着する現象の発生を防止することはできなかった。
【0013】
さらに、ジュール加熱法を用いても、水溶性タンパク質が熱変性して凝集分離することで溶液の均一性が失われると温度分布にばらつきが生じ、均一な温度制御ができなかった。このことは単純にすべてのタンパク質を凝集回収する場合には大きな問題とはならないが、温度差を利用して特定のタンパク質を分離回収する場合には問題となる。また、食品加工工場において使用される処理液は大量であり、これを処理するには処理液を連続的に処理することが望ましい。
【0014】
そこで、本発明は、水溶性タンパク質を多く含む動物性食品の処理液を任意の温度に正確に制御かつ均一に加熱するための課題、および、その際に生じるスカムの発生を防止するための課題について解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の水溶性タンパク質の回収方法は、魚介類などの動物性食品の処理液から水溶性タンパク質を分離して回収する水溶性タンパク質の回収方法であって、加熱器内の加熱室内に供給された処理液を、静止させるか若しくは流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持した状態のもとで、前記加熱室内に対となって配置された複数の電極を介して処理液に通電し、タンパク質の変成温度に処理液を加熱する加熱工程と、前記加熱工程における処理液の発熱により生成された水溶性タンパク質の凝集物を、分離手段により処理液から分離する分離工程とを有し、処理液から水溶性タンパク質を凝集させて回収することを特徴とする。
【0016】
本発明の水溶性タンパク質の回収方法は、相互に加熱温度が相違する複数の前記加熱器に対して加熱温度が低い前記加熱器から加熱温度が高い前記加熱器に処理液を順次搬送するとともに、各々の前記加熱器において凝集物となった水溶性タンパク質を分離手段により分離し、変性温度に応じて分子量が相互に相違する複数種類の水溶性タンパク質を分別して処理液から回収することを特徴とする。本発明の水溶性タンパク質の回収方法は、前記加熱器内にその下側から処理液を供給し、前記加熱器内の処理液の表面全体に一体となって凝集されたに水溶性タンパク質を前記加熱器の表面からオーバーフローさせて前記分離手段に搬送することを特徴とする。本発明の水溶性タンパク質の回収方法は、絶縁性部材からなり前記加熱室を形成する管状部材と、当該管状部材に対をなして設けられる複数の環状電極とを有する加熱器に、前記加熱室内における処理液が乱流状態となる流速で処理液を前記加熱器の上流端から供給し、前記加熱器の下流端において処理液の搬送方向に対して直角の方向に一体となって凝集された水溶性タンパク質を前記下流端から前記分離手段に搬送することを特徴とする。
【0017】
本発明の水溶性タンパク質の回収装置は、魚介類などの動物性食品の処理液から水溶性タンパク質を分離して回収する水溶性タンパク質の回収装置であって、対となって配置される複数の電極が配置され、処理液を静止させるか若しくは流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持する加熱室を有する加熱器と、前記電極を介して処理液に電力を供給し、処理液を発熱させて処理液に含まれる水溶性タンパク質を変性温度に加熱する電源ユニットと、前記加熱器において処理液の発熱により生成された水溶性タンパク質の凝集物を処理液から分離する分離手段とを有し、処理液から水溶性タンパク質を凝集させて回収することを特徴とする。
【0018】
本発明の水溶性タンパク質の回収装置は、処理液中の水溶性タンパク質を凝集させる低温側の加熱器と、当該低温側の加熱器よりも高い温度で処理液を加熱して前記低温側の加熱器により生成された水溶性タンパク質の凝集物よりも変性温度が高い水溶性タンパク質を凝集する高温側の加熱器とを有し相互に加熱温度が相違する複数の加熱器と、それぞれの加熱器から搬出された処理液から水溶性タンパク質の凝集物を処理液から分離する複数の分離手段とを有し、変性温度に応じて分子量が相互に相違する複数種類の水溶性タンパク質を分別して処理液から回収することを特徴とする。本発明の水溶性タンパク質の回収装置は、加熱器内にその下側から処理液を供給し、前記加熱器内の処理液の表面全体に一体となって凝集されたに水溶性タンパク質を前記加熱器の表面からオーバーフローさせて前記分離手段に搬送することを特徴とする。本発明の水溶性タンパク質の回収装置は、前記加熱器は、絶縁性部材からなり加熱室を形成する管状部材と、当該管状部材に対をなして設けられる複数の環状電極とを有し、前記加熱室内における処理液が乱流状態となる流速で処理液を前記加熱器の上流端から供給し、前記加熱器の下流端において処理液の搬送方向に対して直角の方向に一体となって凝集された水溶性タンパク質を前記下流端から前記分離手段に搬送することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、魚介類などの動物性食品の処理液をジュール熱により発熱させて加熱することにより、加熱器内の処理液を全体的に均一かつ正確な温度に加熱することができる。これにより、処理液に含まれる水溶性タンパク質の凝集物を加熱器内において塊状に生成させることができることになり、凝集物が加熱器の内面に付着することがなく、処理液からこれに含まれる水溶性タンパク質を効率的に回収することができる。
【0020】
処理液に含まれる水溶性タンパク質の分子量によって、凝集温度が相違するので、処理液の加熱温度を相違させることにより、分子量が相違する水溶性タンパク質を分別して処理液から回収することができる。
【0021】
水溶性タンパク質を含む処理液を廃液処分するには、その廃液処理設備が高価となるとともにその維持管理に手間と費用がかかっていたが、処理液から水溶性タンパク質を回収することにより、簡単な構造の廃液処理設備により処理液を処理することができるとともに、処理液から回収された水溶性タンパク質を補助食品として製品化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態である水溶性タンパク質の回収装置を示す概略図である。
【図2】図1に示された加熱器を拡大して示す一部切欠き斜視図である。
【図3】図2の断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態である水溶性タンパク質の回収装置を示す概略図である。
【図5】本発明の他の実施の形態である水溶性タンパク質の回収装置を示す概略図である。
【図6】本発明の他の実施の形態である水溶性タンパク質の回収装置を示す概略図である。
【図7】(A)は処理液を撹拌することなく通電加熱した場合における加熱凝固物の性状を示す写真であり、(B)は処理液を撹拌して通電加熱した場合における加熱凝固物の性状を示す写真であり、(C)は処理液を撹拌することなく温浴で加熱した場合における加熱凝固物の性状を示す写真である。
【図8】(A)〜(C)は処理液をそれぞれ図7(A)〜(C)に示す条件により通電加熱した場合における加熱器の内壁面へのスカムの付着状況を示す写真である。
【図9】(A)〜(C)は処理液をそれぞれ図7(A)〜(C)に示す条件により通電加熱した場合における加熱中の処理液の温度変化を示す温度特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
水溶性タンパク質の回収形態としては、処理液を静止ないしほぼ静止した状態のもとで通電加熱する形態と、処理液を加熱器に搬送供給しながら通電加熱する形態とがある。
【0024】
実験によると、処理液を全体的に均一かつ静止状態ないしほぼ静止した状態で加熱すると、処理液の温度分布はほぼ一定になり、水溶性タンパク質は処理液の中で一体的(均質)に固まった状態となって凝集した。これにより、凝集物は加熱器の内面に付着することなく、スカムが発生しなかった。これに対し、撹拌等により処理液を撹拌させて静止状態とすることなく通電加熱した場合は、凝集物が溶液から分離し、温度差およびスカムが発生した。
【0025】
一方、処理液を搬送しながら通電加熱する場合においては、実験によると、処理液が層流状態となる速度で加熱器内に供給しながら通電加熱すると、凝集物が加熱器の内壁面に付着するのに対し、乱流状態となる速度で処理液を加熱器に供給すると、加熱器の内壁面には凝集物が付着しないということが判明した。
【0026】
したがって、処理液を静止状態ないしほぼ静止した状態で加熱するか、あるいは溶液の静止構造を維持したままゆっくりと搬送加熱することで、タンパク質を溶液から分離させないで変性させ、プリン状の凝固物を得ることができる。処理液を静止状態で加熱を行う場合には複数のバッチ処理装置を組み合わせることで連続処理を行うことができる。
【0027】
一方、処理液を連続的に搬送しながら加熱処理する場合には、処理液を乱流状態となる流速で高速に移動させることで、ミクロ的には激しく撹拌しているものの、マクロ的には均質、静止構造を維持したままの流動を擬似具現(流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持した状態)することで水溶性タンパクの凝集分離後も均一加熱を実現することができる。
【0028】
本発明は上述のような知見に基づいてなされた水溶性タンパク質の回収技術であり、この回収技術を具体化した実施の形態を示す図面に基づいて、本発明を詳細に説明する。
【0029】
図1に示される回収装置10は3台の加熱器11を有しており、図1においては3台の加熱器11に上流側から下流側に向けて符号a〜cが付されている。それぞれの加熱器11は、図2および図3に示されるように、内部に沈殿室12が形成された沈殿槽13を有している。この沈殿槽13は直方体形状となっており、前後の側壁14a,14bと左右の側壁14cと天壁14dと底壁14eとを有している。天壁14dには供給管15が上下方向に取り付けられ、この供給管15は下端部で沈殿室12に連通し、上端部には注入口16が設けられている。魚介類などの動物性食品を洗浄したり、晒したりするために使用された処理液Lは、注入口16から供給されて沈殿槽13内の沈殿室12に供給される。沈殿室12内に供給された処理液Lは、この中に一時的に貯留された状態のもとで、処理液L内に混入されたゴミなどの異物が沈殿して底壁14eに堆積することになる。
【0030】
供給管15に隣り合って天壁14dには加熱器本体17が上下方向に取り付けられており、内部は沈殿室12に連通している。加熱器本体17は前後の側壁18a,18bと左右の側壁18cとを有し、横断面が四辺形となっている。加熱器本体17の前後の側壁18a,18bの内面には、図示しない絶縁部材を介して板状の電極21,22が相互に対向し合うように取り付けられている。電極21,22は、チタンやステンレスなどの導体により形成されており、沈殿槽13の天壁14dよりも寸法H1だけ高い位置となっており、加熱器本体17の内部空間のうち電極21,22の間の空間が加熱室23となっている。なお、それぞれの電極21,22を左右の側壁18cの内面に相互に対向させて取り付けるようにしても良い。
【0031】
加熱器本体17の上端部には加熱器本体17の正面側の側壁18aから突出して流出口24が設けられている。沈殿室12内の処理液Lは沈殿室12から加熱器本体17内に流入して上端部に向かい、流出口24からオーバーフローして外部に流出することになる。流出口24からの処理液Lの流出速度は、外部から注入口16に供給される処理液Lの注入量により設定される。供給管15の横断面積は、加熱器本体17の横断面積よりも小さく設定されており、加熱器本体17の加熱室23内を上方に向けて流れる処理液Lの流速は、供給管15内を流れる処理液Lの流速よりも低くなる。
【0032】
対をなす2つの電極21,22は電源ユニット25が接続されており、この電源ユニット25からは2つの電極21,22が相互に逆極性となるように高周波電流が供給される。これにより、処理液Lは加熱室23内を上昇移動しながら、ジュール熱が発生して通電加熱される。
【0033】
加熱器本体17は、沈殿室12を介して供給管15に連通しており、注入口16の液面は流出口24の液面よりも寸法H2だけ高い位置となるように注入口16が設けられている。この高低差H2により加熱室23内の処理液Lにより加わる静圧により処理液Lが流出口24からオーバーフローすることになる。この高低差H2を設定することにより、加熱室23内の処理液Lはゆっくりとした速度で、加熱室23の横断面全体が均一な速度となって上昇することになる。沈殿室12の容積は加熱器本体17の容積よりも大きく設定されており、しかも加熱器本体17内における沈殿室12と加熱室23との間の上下寸法H1の部分は整流室26となっており、処理液Lが整流室26の部分を通過することによって、加熱室23内における処理液Lの流れの均一度がより高められている。
【0034】
このように、加熱室23内に上方に向けて流れる処理液Lを、これの流れ方向を横切る方向の加熱室23の横断面における流速を均一に保持した状態のもとで、電極21,22に電源ユニット25から電力を供給すると、加熱室23内の処理液Lがジュール熱により発熱して変成温度まで高められ、加熱室23の上端部側には水溶性タンパク質の凝集物が寄せ集められた状態となって生成される。凝集物は加熱室23内で寄せ集められて豆腐状ないしプリン状に塊状となるので、電極21,22や加熱器本体17の内周面にスカムが付着することがない。しかも、加熱室23内の処理液Lは上方に向かう程、温度が高められるので、塊状の凝集物は上昇対流によって安定した状態となって、下からの圧力によりトコロテン式に上方に押し出されるようにして移動することになる。
【0035】
図1に示されるように、それぞれの加熱器11に隣接されてフィルタ27が分離手段として配置されており、加熱器11により生成された塊状の凝集物は処理液Lとともに流出口24から排出されて搬送流路28によりフィルタ27に供給される。ただし、流出口24から直接フィルタ27に凝集物と処理液Lとを供給するようにしても良い。図1に示す回収装置10は3台の加熱器11を有し、上流側のフィルタ27により凝集物が回収された後の処理液Lは、搬送流路29により下段側の加熱器11に送られるようになっている。それぞれのフィルタ27により凝集物は捕捉されて凝集物を含む処理液Lは、凝集物と処理液Lとに分離され、処理液Lのみが搬送流路29に設けられたポンプ31により下流側の加熱器11に供給される。
【0036】
加熱変性により凝集物となる水溶性タンパク質は、その分子量によって加熱温度が相違している。図1に示すように3台の加熱器11を有する回収装置10においては、上流側のフィルタ27により凝集物が回収された後の処理液Lを、搬送流路29を介して上流側の加熱器11aから順次下流側の加熱器11b,11cに送ることができる。したがって、それぞれの加熱室23の温度を相違した温度に設定することによって、それぞれのフィルタ27により捕捉される水溶性タンパク質の凝集物を、加熱器の内面にスカムを付着させることなく、相互に分子量が相違するものに分別することができる。例えば、図1に示す第1段目の加熱器11aにより処理液Lを60℃に加熱すると、この温度で凝集する水溶性タンパク質を処理液Lから回収することができる。この凝集物が除去された処理液Lを第2段目の加熱器11bにより75℃に加熱すると、この温度で凝集する水溶性タンパク質を処理液Lから回収することができる。さらに、この凝集物が除去された処理液Lを第3段目の加熱器11cにより90℃に加熱すると、この温度で凝集する水溶性タンパク質を処理液Lから回収することができる。このように、凝集物を分別回収するには、上流側から下流側の加熱器に向かうに従って加熱温度を高くすることになる。
【0037】
それぞれのフィルタ27により捕捉された水溶性タンパク質は、フィルタ27内から定期的に取り出されて、乾燥工程などの次の工程に送られる。
【0038】
図1に示される回収装置10は、3台の加熱器11を直列に接続してそれぞれの加熱器11では相違した温度に処理液Lを加熱するようにしているが、1台の加熱器11により一気に処理液Lを90℃まで加熱するようにすると、それまでの温度で凝集される水溶性タンパク質を全て含む凝集物が生成される。そのような回収処理を行う回収装置10は、1台の加熱器11を有する形態となる。
【0039】
図1に示す回収装置10においては、定期的にフィルタ27を取り外す際には、加熱器11は搬送流路28,29から取り外されることになり、回収処理を停止することになるので、加熱器11の連続稼働時間を長くするには、フィルタ27を大型化する必要がある。これに対し、2台のフィルタ27を並列に接続することにより、対をなす2台のフィルタ27を交互に作動させることにより、フィルタ27を小型化しても連続的に回収処理を行うことができる。
【0040】
図4は本発明の他の実施の形態である回収装置を示す概略図であり、この回収装置は2台のフィルタ27a,27bを並列に接続するようにした形態となっており、加熱器11は上述した形態と同様となっている。図4に示されるように、搬送流路28には流路切換弁32を介して分岐部28a,28bが設けられており、それぞれのフィルタ27a,27bの下端部に接続された流出口29a,29bは流路切換弁33を介して搬送流路29に接続されている。したがって、それぞれの流路切換弁32,33を操作することにより、2つのフィルタ27a,27bのうち一方のフィルタをその内部から凝集物を取り出す際には搬送流路29から取り外され、他方のフィルタに処理液Lを供給して凝集物の回収を行うことになる。このように、2台のフィルタ27a,27bを交互に作動させることにより、それぞれのフィルタ27a,27bを小型化しても、連続的に処理液Lを処理することができる。
【0041】
図5は本発明の他の実施の形態である回収装置10を示す概略図である。この回収装置10は2台の加熱器11d,11eを有しており、それぞれの加熱器11d,11eは直方体ないし立方体形状となっている。加熱器11d,11e内には上述した加熱器と同様に相互に対向するように2つの電極21,22が配置されており、内部の加熱室23には一定量の処理液Lが収容されるようになっている。したがって、この回収装置10においては処理液Lは流れた状態ではなく、静止した状態のもとで通電加熱されることになる。加熱室23内に処理液Lを流すことなく、静止した状態のもとで通電加熱した場合にも、加熱器の内面にスカムが付着することなく、塊状に凝集物が生成される。
【0042】
2つの加熱器11d,11eに直接処理液Lを供給するために、共通の搬送流路34には流路切換弁35を介して分岐流路34a,34bが接続されている。さらに、加熱器11d,11eの底壁部に設けられた流出口36a,36bは、流路切換弁37介して共通の搬送流路36に接続され、共通の搬送流路36にはフィルタ27が接続されている。したがって、一方の加熱器により凝集物の生成操作と、凝集物が生成された後の処理液Lのフィルタへの供給操作とが行われているときに、他の加熱器に処理液Lを供給するようにすると、連続的に処理液Lから水溶性タンパク質を回収することができる。図5に示す場合には、2つの加熱器から1つのフィルタに処理液Lを供給するようにしているが、この形態においても、図4に示したように、2つのフィルタを並列に対をなして配置するようにしても良い。
【0043】
図6は本発明の他の実施の形態である水溶性タンパク質の回収装置を示す概略図であり、この回収装置10は符号f,gが付された2台の加熱器11を有している。
【0044】
それぞれの加熱器11は、処理液Lを案内する加熱室41が形成された断面円形の管状部材42を有し、管状部材42は複数のリング状の電極43とこれらの間に配置される複数の円筒体44とにより構成されている。それぞれの電極43は、上述した電極21,22と同様にチタンやステンレス等の導体により形成され、それぞれの円筒体44は樹脂などの絶縁材料により形成されている。管状部材42の両端部には流入側と流出側のジョイント部45,46が取り付けられている。それぞれの電極43には電源ユニット25がケーブルを介して接続されており、処理液Lが流れる方向に隣り合って対をなす電極43が相互に逆極性になるように電源ユニット25から高周波電流が供給される。なお、図6に示されたそれぞれの加熱器11に設けられる電極43の数は加熱温度などに応じて任意に設定される。
【0045】
上流側の加熱器11fの流入側のジョイント部45には搬送流路47を介してホッパ48が接続されており、搬送流路47にはホッパ48内に投入された処理液Lを加熱器11fおよびその下流側に加熱器11gに供給するためのポンプ31が設けられている。加熱器11fの流出側のジョイント部46には搬送流路28を介してフィルタ27が接続されており、フィルタ27の排出口は搬送流路29により下流側の加熱器11gの流入側のジョイント部45に接続されている。さらに、加熱器11gの流出側のジョイント部46には搬送流路28を介してフィルタ27が接続されている。図6に示す回収装置10は、2台の加熱器11を有しているが、加熱器の数を種々選択することによって、回収装置10を種々の形態に設定することができる。
【0046】
図6に示すように、リング状の電極43を用いた加熱器11を有する回収装置10においては、管状部材42の加熱室41には処理液Lが乱流状態となるようにして処理液Lを流すことになる。処理液Lを加熱室41内にその流れが層流となる流速で流すと、加熱室41の径方向中心部の流速が最も高く、管状部材42の内周面側の流速が最も低くなるように、処理液Lの流速は径方向の位置によって相違することになる。このように、管状部材42の内周面の流速が中心部よりも低くなると、内周面側の処理液Lから水溶性タンパク質の凝集物が生成されることになり、内周面に凝集物が付着することが避けられない。
【0047】
これに対し、加熱室41内に処理液Lをこれが乱流となる流速で供給すると、加熱室41を横切る方法の横断面における流速が全体的に均一となる。これにより、処理液Lは各横断面において加熱温度が均一となり、加熱室41を流れる処理液Lからは水溶性タンパク質の凝集物が分離されて、凝集物が寄せ集められた状態となって生成される。凝集物は加熱室23内で寄せ集められて豆腐状ないしプリン状に塊状となるので、凝集物が管状部材42の内周面にスカムとなって付着することがない。
【0048】
上流側の加熱器11fにより生成されて塊状となった凝集物と処理液Lはフィルタ27にトコロテン式に供給されて、凝集物が分離回収される。上流側のフィルタ27により凝集物が分離された後の処理液Lは、下流側の加熱器11gに供給されて上流側の加熱器11fよりも高い温度に加熱され、凝集物が下流側のフィルタ27により分離回収される。図6に示すように、2台の加熱器11を有する回収装置10においては、例えば、第1段目の加熱器11fにより処理液Lを60℃程度に加熱して水溶性タンパク室の凝集物を生成し、これを1段目のフィルタ27により除去した後に、第2段目の加熱器11gにより90℃まで処理液Lを加熱して凝集物を分離することができる。
【0049】
このような管状部材42からなる加熱器11を有する回収装置10においても、加熱器の数を任意の数に設定することができる。しかも、それぞれの加熱器11から流出した処理液Lから凝集物を分離するために2台のフィルタを図4に示すように並列に配置するようにしても良い。上述のそれぞれの実施の形態においては、分離手段としてフィルタが用いられているが、分離手段として遠心分離機を用いるようにしても良い。
【実施例】
【0050】
[実施例1]
処理液として、カツオ血合い肉200gに1Lの0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えた液体を製造し、これをヒスコトロンで10秒間、4回撹拌した後に、遠心分離(12,000G)に15分かけて、上清を回収してタンパク質水溶液を得た。これにNaClを0.45Mになるように添加して処理液としての溶液とした。この溶液を図5に示されるように、板状の電極が配置された加熱器内に処理液を流すことなく、300mLずつ供給して以下の3種類の方法で水溶性タンパク質を回収した。
【0051】
第1の方法では、電極間距離を10cm、負荷電圧を100Vとして溶液を撹拌しないで静置したまま加熱した。第2の方法では、電極間距離と負荷電圧を第1の方法と同様としたのに対して溶液を撹拌しながら通電加熱した。さらに、第3の方法では、溶液を500mL用のビーカーに入れ、これを90℃ウォータバス内で加熱した。それぞれの方法において、加熱に伴う溶液の温度を測定するとともに、加熱凝固物の性状および加熱器の内壁面および電極板へのスカムの付着状況を調べた。
【0052】
図7は上述したそれぞれの方法により通電加熱した場合における加熱凝固物の性状を示す写真である。
【0053】
第1の方法により通電加熱した場合には、図7(A)に示されるように、加熱凝固物はプリン状に均一となったのに対し、第2の方法により通電加熱した場合には、図7(B)に示されるように、そして第3の方法により通電加熱した場合には、図7(C)に示されるように、それぞれ凝集物が粒子状に分散していた。
【0054】
図8は上述したそれぞれの方法により通電加熱した場合における加熱器の内壁面へのスカムの付着状況を示す写真である。
【0055】
凝集物を回収した後の壁面の状態は、第1の方法では図8(A)に示されるように、凝集物がプリン状に固形化しているため綺麗に剥離し、電極板にはスカムの付着は見られなかった。これに対し、第2の方法では図8(B)に示すように、溶液から凝固物が粒子状に分離するとともに、固着粒子を核として凝集物が成長することにより、電極板にはスカムが多く付着していた。第3の方法でも同様に図8(C)に示すように、壁面にはスカムが多く付着していた。
【0056】
図9は上述したそれぞれの方法により通電加熱した場合における加熱中の溶液温度の変化を示す温度特性図である。図9(A),(B)において、実線は電極面の温度を示し、一点鎖線は溶液の中心部の温度を示す。図9(C)において、溶液の中心の中層部の温度を示し、破線は溶液の中心の表層部の温度を示し、二点鎖線は溶液の壁側の底層部の温度を示し、実線は外部加熱用のウォータバスの温度を示す。
【0057】
第1の方法では図9(A)に示されるように電極面と溶液の中心部の温度に差はなく、電極面と溶液は同様に上昇した。一方、第2の方法では、図9(C)に示されるように、タンパク質が凝固し始める温度(58℃)までは第1の方法と同様に電極面と溶液の中心部の温度は同じように上昇したが、58℃以上では、タンパク質が凝固し始めると凝固タンパク質が溶液から分離するために均一性が失われ、温度上昇に差が見られた。第3の方法は、外部加熱であるため、直接熱が伝わる外部は温度上昇が速いが、熱の伝わりの遅い内部では温度上昇は極めて緩慢であり、部位により温度差が大きかった。
【0058】
[実施例2]
魚肉の晒し液を処理用の溶液としてこれを加熱することにより、溶液から水溶性タンパク質を回収した。加熱器11としては、上述した実施例と同様に板状の電極が配置されたものを使用し、加熱室内に処理液を流すことなく、500mLの溶液を収容した状態で電極に通電して溶液を加熱した。溶液の温度が50℃になるまで加熱したところ、加熱器の内周面に付着することなく、凝集物が液面側に生成された。このようにして加熱凝集された水溶性タンパク質をフィルタにより濾過して回収した。新たな溶液を同様の加熱器により55℃になるまで加熱して、凝集された水溶性タンパク質をフィルタにより濾過して回収した。この操作を90℃まで5℃刻みで繰り返した。
【0059】
それぞれの溶液の全タンパク質と凝集された水溶性タンパク質をビューレット法により測定し、全タンパク質に対する加熱凝集タンパク質の割合を凝集タンパク質の凝集率として求めた。その結果、加熱温度を60℃、75℃、90℃とした場合に加熱凝集率に違いが見られたので、これらの3種類の温度における凝集タンパク質の分子量をSDS−PAGE電気泳動法により測定した。
【0060】
電気泳動パターンは、60℃では29KDaの分子量を持つタンパク質が見られ、それよりも大きい分子量のタンパク質は存在しなかった。一方、75℃では29KDaに加えて36.5KDa付近の分子量を持つタンパク質が見られた。さらに、90℃では29KDaと36.5KDaに加えて、55KDaと97KDa付近の分子量を持つタンパク質が存在していた。このように、溶液をジュール加熱すると、加熱器には水溶性タンパク質の凝集物が付着することなく、加熱温度により分子量が相違する水溶性タンパク質の凝集物を分別して処理液Lから回収することができた。
【0061】
したがって、加熱器11を図1に示すように、直列に3台連結して、第1段目の加熱器11aにより60℃にまで処理液Lを加熱すると、29KDaの分子量の水溶性タンパク質を処理液Lから分離回収することができる。この分子量の水溶性タンパク質をフィルタ27により分離した後の溶液を、第2段目の加熱器11bにより75℃に加熱すると、36.5KDaの分子量の水溶性タンパク質を溶液から分離回収することができる。次いで、第3段目の加熱器11cにより残りの溶液を90℃に加熱すると、55KDaおよび97KDaの分子量の水溶性タンパク質を処理液Lから分離回収することができる。
【0062】
[実施例3]
溶液として、カツオ血合い肉100gに500mLの0.05Mリン酸緩衝液(pH7.0)を加えた液体を製造し、これをヒスコトロンで10秒間、4回撹拌した後に、遠心分離(12,000G)に15分かけて、上清を回収してこれにNaClを0.45Mになるように添加して処理液Lとした。
【0063】
この溶液を上述した実施例1と同様の加熱器により液温が55℃に到達するまで加熱してから、加熱凝集したタンパク質を遠心分離により回収した。この凝縮物を55℃加熱凝集タンパク質とする。
【0064】
次に、別な新たなカツオ血合肉の晒し液を同様の加熱器に500mL供給し、液温が64℃に到達するまで加熱してから、加熱凝集されたタンパク質を遠心分離機により回収した。さらに、加熱凝集されたタンパク質が回収された後の残りの処理液Lを同様の加熱器により液温が90℃に到達するまで加熱し、30分保持してから、加熱凝集されたタンパク質を遠心分離機により回収した。これを65−90℃加熱凝集タンパク質とする。
【0065】
このようにして回収された2種類のタンパク質の分子量をSDS−PAGEにより測定し、Scion社の画像解析ソフトにより各バンドの濃度を算出した。また、鉄含有量を原子吸光法により測定した。その結果、55℃加熱凝集タンパク質は、97KDa(濃度16.9%)、40KDa(濃度40.9%)および16KDa(濃度17.7%)付近の分子量を持つタンパク質で構成されており、鉄含有量は4.8mg/100gであった。一方、65−90℃加熱凝縮タンパク質は、16KDa(濃度66.9%)付近に分子量をもつタンパク質を主体とし、鉄含有量は16.6mg/100gであり、このタンパク質の主成分はミオグロビンであると考えられる。
【0066】
したがって、加熱器を2段階直列に配置した形態の回収装置を用いることにより、カツオ血合肉の晒し液から比較的高タンパク質群とミオグロビンを主成分とする比較的低分子のタンパク質を分別回収することができた。
【0067】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。加熱器の形状としては、加熱室内の処理液に対して全体的に均一に加熱することができるのであれば、上述した形態に限られることはない。
【符号の説明】
【0068】
10 回収装置
11 加熱器
12 沈殿室
13 沈殿槽
17 加熱器本体
23 加熱室
25 電源ユニット
26 整流室
27 フィルタ
41 加熱室
42 管状部材
43 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類などの動物性食品の処理液から水溶性タンパク質を分離して回収する水溶性タンパク質の回収方法であって、
加熱器内の加熱室内に供給された処理液を、静止させるか若しくは流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持した状態のもとで、前記加熱室内に対となって配置された複数の電極を介して処理液に通電し、タンパク質の変成温度に処理液を加熱する加熱工程と、
前記加熱工程における処理液の発熱により生成された水溶性タンパク質の凝集物を、分離手段により処理液から分離する分離工程とを有し、
処理液から水溶性タンパク質を凝集させて回収することを特徴とする水溶性タンパク質の回収方法。
【請求項2】
請求項1記載の水溶性タンパク質の回収方法において、相互に加熱温度が相違する複数の前記加熱器に対して加熱温度が低い前記加熱器から加熱温度が高い前記加熱器に処理液を順次搬送するとともに、各々の前記加熱器において凝集物となった水溶性タンパク質を分離手段により分離し、変性温度に応じて分子量が相互に相違する複数種類の水溶性タンパク質を分別して処理液から回収することを特徴とする水溶性タンパク質の回収方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の水溶性タンパク質の回収方法において、前記加熱器内にその下側から処理液を供給し、前記加熱器内の処理液の表面全体に一体となって凝集されたに水溶性タンパク質を前記加熱器の表面からオーバーフローさせて前記分離手段に搬送することを特徴とする水溶性タンパク質の回収方法。
【請求項4】
請求項1または2記載の水溶性タンパク質の回収方法において、絶縁性部材からなり前記加熱室を形成する管状部材と、当該管状部材に対をなして設けられる複数の環状電極とを有する加熱器に、前記加熱室内における処理液が乱流状態となる流速で処理液を前記加熱器の上流端から供給し、前記加熱器の下流端において処理液の搬送方向に対して直角の方向に一体となって凝集された水溶性タンパク質を前記下流端から前記分離手段に搬送することを特徴とする水溶性タンパク質の回収方法。
【請求項5】
魚介類などの動物性食品の処理液から水溶性タンパク質を分離して回収する水溶性タンパク質の回収装置であって、
対となって配置される複数の電極が配置され、処理液を静止させるか若しくは流れ方向を横切る方向の横断面における流速を均一に保持する加熱室を有する加熱器と、
前記電極を介して処理液に電力を供給し、処理液を発熱させて処理液に含まれる水溶性タンパク質を変性温度に加熱する電源ユニットと、
前記加熱器において処理液の発熱により生成された水溶性タンパク質の凝集物を処理液から分離する分離手段とを有し、
処理液から水溶性タンパク質を凝集させて回収することを特徴とする水溶性タンパク質の回収装置。
【請求項6】
請求項5記載の水溶性タンパク質の回収装置において、処理液中の水溶性タンパク質を凝集させる低温側の加熱器と、当該低温側の加熱器よりも高い温度で処理液を加熱して前記低温側の加熱器により生成された水溶性タンパク質の凝集物よりも変性温度が高い水溶性タンパク質を凝集する高温側の加熱器とを有し相互に加熱温度が相違する複数の加熱器と、それぞれの加熱器から搬出された処理液から水溶性タンパク質の凝集物を処理液から分離する複数の分離手段とを有し、変性温度に応じて分子量が相互に相違する複数種類の水溶性タンパク質を分別して処理液から回収することを特徴とする水溶性タンパク質の回収装置。
【請求項7】
請求項5または6記載の水溶性タンパク質の回収装置において、加熱器内にその下側から処理液を供給し、前記加熱器内の処理液の表面全体に一体となって凝集されたに水溶性タンパク質を前記加熱器の表面からオーバーフローさせて前記分離手段に搬送することを特徴とする水溶性タンパク質の回収装置。
【請求項8】
請求項5または6記載の水溶性タンパク質の回収装置において、前記加熱器は、絶縁性部材からなり加熱室を形成する管状部材と、当該管状部材に対をなして設けられる複数の環状電極とを有し、前記加熱室内における処理液が乱流状態となる流速で処理液を前記加熱器の上流端から供給し、前記加熱器の下流端において処理液の搬送方向に対して直角の方向に一体となって凝集された水溶性タンパク質を前記下流端から前記分離手段に搬送することを特徴とする水溶性タンパク質の回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−205976(P2011−205976A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77309(P2010−77309)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【出願人】(000136642)株式会社フロンティアエンジニアリング (30)