説明

水溶液の蒸発濃縮装置

〔目的〕 写真処理廃液等の廃液となる水溶液を蒸発濃縮する蒸発濃縮装置を提供する。
〔構成〕 濃縮釜1に二重とした廃液を一定量入れる加熱室2にヒートポンプ4を構成する凝縮器5を冷却室3に蒸発器6を収容し、この凝縮器と第一蒸発器間に介在する減圧装置を、並列となる2個の冷媒用電磁弁32,33つき抵抗の異なる2個の減圧装置器17,18とし、前記蒸発器(第二蒸発器)6の出入口の温度を検出し、蒸発器6内で冷媒が蒸発を完了しているかどうかを判断し、前記電磁弁32,33を制御することで、圧縮機20の液圧縮運転の防止が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は写真処理廃液等の水溶液の蒸発濃縮装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来知られている水溶液の蒸発濃縮装置としては、例えば、ハロゲン化銀写真感光材料の写真処理工程にて生ずる処理廃液(現像,定着,水洗等の処理廃液)を、活性汚泥法,蒸発法,電解酸化法,イオン交換法,逆浸透法,化学的処理法などの公知の公害処理方法を施してから廃棄するようにしているが、未だ確実な処理方法を得るには至っていない。ここで、本件出願人等が先に提案した写真処理廃液の蒸発濃縮装置もあるが、この蒸発濃縮装置は上部を連通した加熱手段を配設する蒸発濃縮室(カラム)とこの内側に冷却手段を配設する冷却凝縮室(カラム)を同心的とした二重の気密室構成とし、この加熱手段をヒートポンプの凝縮器とし冷却手段を蒸発器とし、且つこの凝縮器(加熱部熱交換器)と蒸発器(冷却部熱交換器)を構成するコイルは、双方とも同一の所定間隔(ピッチ)をもたせた螺旋巻き構造となっている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記蒸発濃縮装置では第一蒸発器の前段に介在する減圧装置が単一の抵抗となるキャピラリーチューブの構造をもたせただけのため、運転初期の水溶液の加熱時と、水溶液が蒸発し凝縮する濃縮運転時という二つの異なった状況下において、同一の冷凍サイクルをとることになり、水溶液の加熱時には蒸発器での熱交換不足により、蒸発器で蒸発を完了しない冷媒が圧縮機に戻り、液圧縮の心配があった。従来は圧縮機の液圧縮と云うことは考慮されず、初期運転にあって第二蒸発器の出入口に温度差が生じなく、即ち、加熱室の温度が十分上がっていないとき液冷媒のまま圧縮機に戻り液圧縮状態となる。
【0004】本発明は上記実情に鑑み、第一蒸発器に臨む減圧装置を、抵抗の異なる二つの減圧装置を並列とし第二蒸発器内の冷媒の蒸発が完了しているかどうかで切替え、運転初期の廃液加熱時冷媒量を減じるようにし、前記課題を解決する水溶液の蒸発濃縮装置を提供することを目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、加熱室及び冷却室を有する濃縮釜と、圧縮機,凝縮器,減圧装置及び蒸発器を接続してなるヒートポンプと、加熱室に水溶液を供給する供液装置と、濃縮釜内部を減圧する脱気装置とを備え、ヒートポンプの凝縮器を加熱室に配置すると共に、蒸発器を冷却室に配置してなる水溶液の蒸発濃縮装置において、蒸発器の出口側の冷媒温度が入り口側の冷媒温度より高いときにはヒートポンプの冷媒流量を大きくし、それ以外のときにはヒートポンプの冷媒流量を小さくする冷媒流量調整手段を備えたものである。
【0006】
【作用】上記のような構成のため、運転初期の廃液加熱時、濃縮釜内にあって冷却部熱交換器となる第二蒸発器の出入口の温度差を検出し、出口側の温度から入口側の温度を引いた値が零より大きい場合、冷媒用電磁弁の切替えで減圧抵抗の小さな減圧装置を選定し、前記温度差が零又は負側になったときは減圧抵抗の大きな減圧装置を通過するように選定することにより、冷媒流量を調整し液冷媒が圧縮機に戻ることがなく、適切な冷媒循環量を得る。
【0007】
【実施例】以下、本発明を実施例の図面に基づい説明すれば、次の通りである。
【0008】図1は蒸発濃縮装置の概略図面を示し、1は上方が互に連通し同心的二重構造となる加熱室2と冷却室3を形成した濃縮釜で、この廃液貯留となる加熱室2内にヒートポンプ4の凝縮器5を収容し、冷却室3内には蒸発器6を収容する。この場合、加熱管となる凝縮器5の螺旋状コイルピッチは少なくとも貯留廃液の液面付近を密着巻きとすると共に、該凝縮器5の下端出口部には細管7が上方から挿入される配管をし液冷媒のみが流れるようにし、且つ蒸発器6の凝縮管の螺旋状コイルピッチは前記凝縮器5のコイルピッチよりも粗な螺旋巻きとし、冷却室3の空間を有効に活用し液滴の落下時間を長くしている。8は廃液タンク9に接続した給液装置で、先端を加熱室2の上部に導き、加熱室2の底部の一端には濃縮液用排出口10を設けている。11は濃縮液タンク。12は冷却室3の底部の凝縮液回収口3aに接続したエジェクタ配管で、該エジェクタ配管12を脱気装置13となるエジェクタ14に接続すると共に、このエジェクタ14は一端をエジェクタ用水タンク15の水面内に臨む配管と、該水タンク15より導出のエジェクタ用ポンプ16を備えた配管の先端を他端に接続する循環回路を構成している。また、水タンク15には前記凝縮器5から導出の配管に並列接続した大なる抵抗をもつ減圧装置17と小なる抵抗をもつ減圧装置18の先端を連結した冷却手段となる第一蒸発器19を収容し、該第一蒸発器19の先端を冷却室3の蒸発器6の上端に接続し、且つ蒸発器6の下端から導いた配管を圧縮機20に接続し、この圧縮機20をファン21で冷却する第一凝縮器22から前記凝縮器5の上端に接続し、全体としてヒートポンプ4を構成する。23,24,25は廃液タンク9内に配設した廃液レベルセンサで、廃液タンク9の底まで達する廃液レベルセンサ23は基準電極で、中間の長さをもつ廃液レベルセンサ24は最低液面を示す電極で、短い長さの廃液レベルセンサ25は装置運転指示用の電極である。また、加熱室5内には廃液貯留の容器レベルセンサ26,27,28を備え、このうち長いレベルセンサ26は基準電極で、中間の長さのレベルセンサ27は沸騰液面検出の電極で、短いレベルセンサ28は液面の異常検出の電極である。29は濃縮釜1に設置した大気開放用電磁弁で、その手前側の配管部に容器内圧力スイッチ30を取付けている。31は水タンク15内に配設したフロートスイッチである。32,33は前記減圧装置17,18のそれぞれの前段に設けた冷媒用電磁弁。34,35は凝縮水タンク36内に挿通する満水レベルセンサである。37は給液装置8に設けた廃液吸引用電磁弁である。Th1 は凝縮器5の出口側の配管に設けた冷媒凝縮温度検出器、Th2 は圧縮機20の出口側に設けた吐出ガス温度検出器、Th3 は加熱室2の容器側部に差込んだ廃液温度検出器、Th4 は第一蒸発器19の前部又は後部の配管に設けた冷媒蒸発温度検出器、Th5 は蒸発器6の出口側の配管に設けた冷媒蒸発温度検出器である。
【0009】次にこの作用を説明すると、先ず蒸発濃縮装置の運転に際し電源を投入すると(電源ON)、図2に示すフローチャートのように常時制御がきき始める。この状態ではヒートポンプ4の減圧装置17,18の前段の冷媒用電磁弁32,33のどちらかが開いている。また、この時点では冷却室3側の蒸発器6の前後位置に有する冷媒蒸発温度検出器Th4,Th5 が、Th5 −Th4 >0以上の条件を満たさないため、減圧抵抗の大きい減圧装置17の電磁弁32を開く。
【0010】ここにおいて、運転スイッチをONとする。ここでは電磁弁32,33の選択だけである。この状態では圧縮機20がONとならない(圧縮機20をONにするには一定の条件を満たす必要がある)。先ず廃液タンク9の液面を廃液レベルセンサ25で検出し十分は廃液が有るかどうかを判断し、運転立上げに進む。即ち、ここでは図3に示す詳細のように大気開放用電磁弁29を閉じ、エジェクタ用ポンプ16を回転し、ここでエジェクタ14が作動して濃縮釜1内の減圧が開始される。このポンプ16の回転と同時にON時間のタイマーが掛かる。この場合、加熱室2内は空であるために容器レベルセンサ27がOFFで、給液装置8の電磁弁37を開き、前記濃縮釜1内の減圧開始に起因しては廃液を廃液タンク9より吸い上げて給液する。但し、この給液は間歇的に行い廃液の泡立てを阻止すると共に、電極の洗浄にもなる。ここで加熱室2に所定量の廃液が溜まれば前記廃液吸引用電磁弁37がOFFとする。また、この時前記タイマーの一定時間内に圧力スイッチ30がONしないときは機器停止を行う。即ち、濃縮釜1内の圧力が規定圧力に達しないと(容器内圧力スイッチ30がONしないと)減圧異常と云うことで機器が停止し圧力異常を表示する。この容器内圧力スイッチ30のONで始めて前記圧縮機20がONする。
【0011】この様に、圧縮機20が回転すればヒートポンプ4にあって冷媒が流れ定常運転になる。この場合、第一凝縮器22に対するファンモータ制御は図5に示すように廃液温度Th3 が35℃以下のときはファンモータ38をOFFとし、40℃以上のときはファンモータ38をONとする。実際には運転立上がりにはファンモータ38はOFFで、廃液温度が上がって行き定常な運転状態になる。
【0012】而して、圧縮機20が駆動し冷媒が第一凝縮器22を経て濃縮釜1の加熱室2の凝縮器5に流れるため、該凝縮器5での熱交換にて加熱室2内の廃液が加熱され低温沸騰する。この場合、凝縮器5のコイルピッチは少なくとも液面付近で密となり伝熱面積が集中的となっているので良好な沸騰が起こる。この蒸発した水蒸気は外周位置の冷却室3に流れ蒸発器6の凝縮管にて冷却凝縮され水滴として回収される。このとき、蒸発器6のコイルピッチは粗となっているため、水蒸気の落下時間が長く、不凝縮ガスを吸収し易い。ここで、冷却室3の底部に溜まった廃液の凝縮水をエジェクタ用水タンク15に導き、該水タンク15の凝縮水はオーバーフローにて別途の凝縮水タンク36に排出する。この様に、加熱室2にあっては廃液が順次濃縮されて行く。
【0013】この後、廃液レベルセンサ24で液面検出をし量が減ると電磁弁37を開き新しい廃液を補充する。即ち、運転中は基準液面に合うように液面が制御される。圧力スイッチ30は常に安全スイッチとして働き、圧力をみて立上げのときの圧力のディファレンシャルを検出し70トールでONして運転し、運転中100トールぐらいで異常とする。廃液の濃縮が進んで初期(ヒートポンプの限界)の判定下にある冷媒凝縮温度検出器Th1 で第二の凝縮器5の出口冷媒温度を拾い、この冷媒凝縮温度検出器Th1 は濃縮が進めばが廃液の沸点上昇によって温度が上がる。例えば、通常運転だと冷媒凝縮温度検出器Th1 の温度が50℃ぐらいで、廃液の温度35〜40℃ぐらいで、濃縮が進行してくると冷媒温度が上がって行く。冷媒凝縮温度検出器Th1 がある温度(例えば62℃)以上になったら機器停止を行ない濃縮完了を表示する。
【0014】要は、減圧装置17,18の電磁弁32,33の制御は圧力スイッチ30が入る前であっても温度条件が、図6に示すように冷媒温度がTh5 −Th4 >0の条件で開閉が決まる。エジェクタ用ポンプ16の回転にて濃縮釜1内の減圧を行う。所定の減圧力になったら圧縮機20が自動的に入りファンモータ制御を行って加熱室2内の廃液温度を35〜40℃に設定し廃液を低温沸騰させるようにする。ヒートポンプ4の圧縮機20の吐出カス温度検出を温度検出器Th2 で行い異常を検出する(図7参照)。
【0015】圧縮機20の運転開始直後は蒸発温度がTh5 −Th4 >0の条件を満たさないため、電磁弁32が開、電磁弁33が閉となり冷媒流量が小さい状態で運転され、これによって廃液が加熱されていく廃液温度が適当に上昇すると、沸騰が起こり水蒸気が多量に発生し、これにより蒸発器6内の冷媒は、蒸発を完了し大きな過熱度をもつことになる。これによってTh5 −Th4 >0の条件が満たされ電磁弁33が開、電磁弁32が閉となって冷媒流量の大きい冷凍サイクルに切り替えられる。ここで、この冷凍サイクルは沸騰・蒸発・凝縮が安定的に継続するとき、Th5 −Th4 >0を満足する様に設定されているので濃縮運転中はこの冷媒流量が大きい冷凍サイクルで運転が継続されていく。
【0016】
【発明の効果】上記のように、本発明は廃液を入れる加熱室と冷却室を形成した濃縮釜に凝縮器と蒸発器を配設し、且つ圧縮機,減圧装置を接続してヒートポンプを構成するようにし、しかも減圧装置を抵抗の大きい減圧装置と抵抗の小さい減圧装置の2個を並列とし電磁弁で切替えるようにし、該電磁弁を冷却室内の蒸発器(第二蒸発器)の出入口の温度を検出し、第二蒸発器内冷媒が蒸発を完了しているかどうを判断して制御するので、圧縮機の液圧縮運転の防止が出来、運転初期の廃液加熱時、冷媒流量を減じて液圧縮の防止ができる。また、前記制御にもかかわらず第二蒸発器内で冷媒の蒸発が完了しない状態が一定時間以上連続した場合でも、異常と検出し判断して機器を停止させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に実施例を示す概略図。
【図2】装置全体のフローチャート
【図3】図2の運転立上げ部のフローチャート
【図4】図2の定常運転部のフローチャート
【図5】ファンモータ制御のフローチャート
【図6】常時制御のフローチャート
【図7】常時検出のフローチャート
【符号の説明】
1 濃縮釜
2 加熱室
3 冷却室
4 ヒートポンプ
5 凝縮器
6 蒸発器
8 給液装置
13 脱気装置
17 抵抗の大なる減圧装置
18 抵抗の小なる減圧装置
19 第一蒸発器
20 圧縮機
21 ファン
22 第一凝縮器
27 廃液レベルセンサ
32,33 冷媒用電磁弁
37 廃液吸引用電磁弁
Th1 冷媒凝縮温度検出器
Th2 吐出ガス温度検出器
Th3 廃液温度検出器
Th4 ,Th5 冷媒蒸発温度検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 加熱室及び冷却室を有する濃縮釜と、圧縮機,凝縮器,減圧装置及び蒸発器を接続してなるヒートポンプと、加熱室に水溶液を供給する供液装置と、濃縮釜内部を減圧する脱気装置とを備え、ヒートポンプの凝縮器を加熱室に配置すると共に、蒸発器を冷却室に配置してなる水溶液の蒸発濃縮装置において、蒸発器の出口側の冷媒温度が入り口側の冷媒温度より高いときにはヒートポンプの冷媒流量を大きくし、それ以外のときにはヒートポンプの冷媒流量を小さくする冷媒流量調整手段を備えたことを特徴とする水溶液の蒸発濃縮装置。

【図5】
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【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【公開番号】特開平5−57101
【公開日】平成5年(1993)3月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−10845
【出願日】平成3年(1991)1月31日
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000001270)コニカ株式会社 (4,463)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)